○安井參考人 御
審議のおじやまをしましてまことに申訳ないのでありますが、実はきよう午前中全國の知事会議を開きまして、その決定に基きまして、その決定に基きまして、この
地方財政及び出先機関に関する問題を、各政党の政務調査会並びに両院の治安及び財政に関する
委員会の方へ
事情を
陳情申し上げることにきまりまして、ただいまこちらにうかがう
委員が数名
一緒に參
つております。この機会におきまして私から一言知事会議の空氣並びに私が辞任をいたしましたことにつきましての一身上の釈明を申し上げたいと思います。
実はわれわれ三人が偶然にも一致をしてやめたのでありますが、決して三人が妥協して、共同のストライキをや
つたわけでは断じてないのであります。第一に、京都の市長は、京都より直接総理大臣のところへ、この
政府案がきまりますことを知
つた際に辞表を郵送してまい
つたのであります。私はその後京
都市長の上京を煩わして、京
都市長の心境を事こまかに
伺つたのでありますが、京
都市長の心境、あのまじめな学者的な態度のもとにおかれて、この措置をとられたことは当然だと私自身も
考え、かつまた非常にそれに感激いたしたわけであむます。
從つて私もまた静かに自分の良心に立ちかえ
つて考えましたときに、どうしても辞表を出すのが適当であると
考えて、辞表を出したわけでありますので、その間三人の問におきます偶然の結果はともかくといたしまして、三人相談して故意に辞表を出したものではないことをあらかじめ御了承願
つておきたいと思います。そこで一体なぜ辞表を出さなければならぬように
なつたかと申しますと、第一にお
考えを願いたいと思いますことは、昨年の五月、この
地方自治法を通して、
地方分権こそは新
日本民主化の発走である、新憲法の條章において明確に
地方自治に関する條章をきめ、
地方自治の充実性を
地方自治に関する憲法をも
つて規定するということまで條章で制定された、これに基いて
地方自治法というものが出されております。
地方自治法の
内容は、十分御
承知でありますように、
地方の分権、
地方の自治制を通して、ほんとうに國民の民主的政治
行政の訓練をして民主國家をつく
つていこうという、大幅な非常に飛躍した自治制の立法であるのであります。そこでそれ以來問題にな
つてきておりますものは、これだけの自治法のもとにおいて、
地方府縣市町村を通じて、自主的な、しこうして民主的な
行政をやらせるためには、また同様に財政的な
裏づけにおいて自主性をもたなければならぬ。
從來つくられておりますところの
地方財政及び
地方税制に関します立法は、多くは戰時中の遺物であ
つて、ほとんど
中央集権的なものであります。往年
地方において課税されてお
つた税種までも戰爭目的遂行の理由をも
つて國税に取上げられておるようなものも多々ある。当時
地方がも
つておりました税というものは、まことに限られた、しかも固定された、今日のような財政
事情ないしは経済
事情に対應して
地方の財政を自主的に運営していくのにはとうていたえられない税立法であ
つたのであります。そこでそのときに
政府においても
考えられ、國会においても御協賛を得ましたものが、この
地方財政委員会であるのであります。すなわち
地方財政、税制に関する自主的な立法を財政
委員会の手によ
つて立案させよう、すなわち國家公共の利益をも
考えながら、同時に
從來のように中央に偏しない、
地方自治法の精神をくみ入れて、自主的に運営できる
地方財政法、
地方税制法を立案せしめるという重大な使命をも
つておる
委員会をつくるために、その
委員会法というものが議会の協賛を経たのであります。そうして、普通でありますならば、
從來の立法にこうい
つた自治團体の代表の加わ
つておる
委員会というものを
法律で明確にして、しかも非常に有力なものにしておりますものは、おそらくはきわめて珍しいと
考えますが、それにもかかわりませず、
從來のような大藏省中心の税法の建前、財政法の立案態度であ
つてはとうてい
地方自治法の精神を体現するに足らない、同時に國家公共の利益と並行をして健全な自治制を運営する財政措置ができない、こういうことから、特に
地方自治の実態に感じて、その自治を現実に運営し、その財政運営上苦労いたしております者の体験を生かして、ここにほんとうに國の財政、
地方の財政を並行をいたして自主性を維持するような
委員会をつくろうというので、われわれはその線に沿うて選ばれたものであるのであります。從いまして、当時この
地方財政委員会法というものが
通りました時分の
地方自治團体の各層におきます空氣は、今度こそはほんとうに
地方財政というものが、
地方自治法運営の
裏づけができるような立法をしてくれるであろうということに非常に多くの期待をも
つてお
つたのであります。同時にその三人を
政府が任命するにあた
つては、
町村長会、市長会、知事の全体会議、これに対してその代表者の推薦を依頼してまい
つたのであります。その推薦に應じまして、各團体の長は集
つて協議の上、その代表者を選んで、三人を送
つた。こういう形になり、すなわち生田君と私と神戸京
都市長の三人がそれぞれの團体より選ばれて、代表としてはい
つてまい
つておるのであります。この三人を選ぶにあたりましては、各團体の長は、この財政
委員会法の制定に非常な賛意を表し、また非常な期待をも
つて、今度こそほんとうに國家公共の事業並びに
地方自治團体の財政自主化、これが都合よく解決するであろうという非常な期待をも
つてわれわれを送
つたのであります。從いまして、われわれは、ただいまも申しましたような非常な短い期間であ
つたとはいえ
ども、力の限りを盡して、國家の利益をも
考えながら、國家の財政
事情、あるいは國民
負担をも
考えながら、今日の自治
委員会案というものをつくり上げたつもりであるのであります。申すまでもなく、この自治
委員会がつくる自治財政法並びに自治税制法の狙いは、
先ほど申しましたように、單に予算をよけいくれ、金をよけいふくらしてくれという我利々々の言い方では断じてないのであります。國家財政の窮迫しておること、國民経済の逼迫しておることも十分
承知しておるのであります。それほどやぼな者ばかり出ておるとは思
つておらぬのであります。ただ狙いは、この際
地方自治法が狙
つておるところの
地方自治團体の民主的なあり方、同時にこれの民主的な
裏づけ、これを狙
つて、その自主性を強調しながら、その精神を取入れて立案をしようと思
つて苦労をしたのであります。この精神を取入れる場合に最も大切なことは、何かといえば、
從來國家に依存し、國家からあてがいぶちにな
つてお
つたところの分與税を極度に少くする、また非常に不明確な非常に基礎の不安全であります公債をできるだけ少くする、そうして逆にその
府縣の
事情に應じてそれぞれ自主的に收入を得られる方法を確立すること、こういうことであ
つたのであります。しかしながら、何と申しましても、今日國家財政が非常に窮乏し、
地方の財政また窮乏しておりますときに、何もかも全部のものを
地方團体の收入だけでや
つていこうという
考えは毛頭ありませんし、また予想もいたしません。
從つて、まずできる範囲においての最小限度のものはまず道をつけて、少くとも
地方の人々が、
地方自治というものの線に沿いまして、われわれは
行政できるのだ、政治ができるのだという氣持だけははつきり表わしていく
程度にはどうしてもいたしていきたい。かように
考えて立案をいたしたものが今回われわれのきめました財政
委員会の案であります。この財政
委員会の案は決して滿足ではありません。殊にその財政の総額に至
つて、二千億を切れるという
地方財政の総額を、
政府案によりますあの税制案によ
つて各
府縣の実際の予算を編成してみますと、
府縣、
市町村を通じていずれも非常な赤字になるのであります。本日午前中全國知事会議をや
つて、問題はそれに集中して、一体
委員会が二千億で止めたということについて、やり得る自信があるのかという
質問があらためて生れてくるほど、それほどわれわれは切り詰めた、窮屈な、まことに
府縣の
事情から言えば相済まぬけれ
ども、國民の経済の
事情を
考え、國の財政を
考えて、
委員会はかなり攻撃を受けながらも、がまんをしながらまとめてきた案であります。この案をも
つて政府と折衝をいたしまする際に、
先ほどから申し上げましたように、非常にわれわれの
考えておるところの基本的な
考え方を冐涜するような形のものにな
つてまい
つたのであります。これでは私自身といたしましても、この成案を得る
途上、各
府縣知事の強力な
意見も聽いて進めてまい
つております。今回あまりにもかけ距てのひどい、殊に精神的においても、その個々の事項においても、かけ距てのひどい時期において、推薦されて責任をも
つております私たちの立場といたしまして、このまま安閑として、さようでございますかと
言つて、留ま
つておるわけにはまいりませんので、さような
意味において、われわれの立場を明らかにしたのが、今回私のやめたわけでございます。同様なことは今生田君からも御
説明があ
つたようでありますけれ
ども、結果の上においては、同様な心境の上に立
つてやめたのであります。その後われわれは、去る十一日全体の世話人知事会議を開きまして、報告をして了解を得ると同時に、さらに
政府の最後的反省を求めるために、
政府の回答を要求した数項の要求書を提出したのでありますが、これに対して返事をもらいましたので、その返事を基礎に、全体知事会議を開いて、今後の態度をきめるように、きよう午前中相談をいたしたのであります。さらにこの問題は、
政府はもうすでによし惡しを言いながらも、一應ともかく
政府予算案を決定し、
法律案も決定して、議会に提出して、
あとはかか
つて國会の皆さんの
審議に依存するほか方法がなく
なつたので、この知事会議全体は、今日あげて國会方面の
関係部署に
事情の開陳を申し上げて、御了解を得、御協力を得るということをいたすために今日参り、その結果をも
つて、明日十時よりさらに集まりまして、問題にな
つておりまする重要な点に対する態度について、それぞれ決定をいたそう、こういうような段取りにな
つておるのであります。
法案の具体的なものについての点は、ただいま生田氏より申されましたので、重複を避けまして、
説明を差控えまするが、要は、さきに申しましたような、
地方に自主性をもたせること、この固定した、ただくれてやるというやり方の
財源でなく、自主性をも
つて処理できる
財源を認めて、そこに自治團体の自主財政の光明の一歩を認めていきたいということが主眼であります。どうかそれらの点を御了承願いまして、國会の御
審議にあたりまして、十分われわれの
意見をお取入れ願いたいと思うのであります。
なお最後に、少し端的な言い方で失礼ではありまするが、今回國会の予算を、殊に大藏省から出しておりまする税法の改正を見てみますと、所得税においても相当軽減があります。法人税においても軽減があります。殊に私はけげんに思うのですが、物品税まで減額をして、十数億の金を出しておるようであります。こういうような、一面に國家の税制においては減税をしながら、
地方自治体の税制においては、減税をいたしておるものは
一つもございませんのみならず、ただいまも
お話がありましたような、昨年の当初におきましては、わずかに百円でありました住民税を、一千円にしろというようなことにな
つておる。家屋税、地租においても同様でありまして、わずかに二十四とか四十とかいう率のものを、一度に二百、二百五十に上げるというようなことにな
つております。かようなことは、実際
自治体の責任者として、少し事務を運営した者から見ますれば、これが徴税上、今日の情勢下においていかに困難なことであるか、さようなことが全体の自治の氣持を破壞し、また社会の空氣を撹乱するかということは、およそ
考えられなければならぬとわれわれは
考える。と同時に、タバコ、酒の消費税を二〇%
地方へよこせということが、何ら税法上の矛盾はありません。この税法上の矛盾のないことを、私がこまごまと申し上げることはむだでありまして、これは税制、財政の專門家でありまする神戸教授から、はつきりとか
つての会合に御
説明を申し上げた機会があ
つただろうと思いますが、神戸博士の
説明をも
つていたしましても、酒、タバコに関する
地方消費税を設けることは、何ら税法の違反でもありませんし、税法の矛盾でもございません。われわれはその点ぐらいのことは、これを認める際に
考えずに認めたのではないのであります。この点について今なお何か議論があるといたしますれば、われわれははなはだ不可解だと
考えるのであります。そうしてかようなものこそ、その率をきめてまいりますると、世の中の需要、あるいは價格の変動によりまして、自然
地方團体の税收入というものにも幅ができてくる、ゆとりができてくる。物が高くなり、酒が高くなり、あるいは発行高が多くな
つてきて、自然その賣上げが多くなるということになりますれば、それは同時に物價騰貴というものが
地方自治團体の財政に響いてきますが、そういうものによりまするゆとりの税收入もまたおのずからはい
つてくるのであります。かような社会
事情、経済
事情に即應して、幅のある、收支の均衡のできる、ゆとりのある税源をもつ場合においてのみ、初めて
地方自治政というものは自主的に運営ができるのであります。これを何百億何千万円と、こういうふうにぴたつと限定をして、分與税なら分與税でぴたつと年度の初めに、かりに今三百六十億なり三百八十億なりにおきめを願
つて、これを各
府縣に何十億か何百億かお配りを願
つても、國民経済の
事情が固定をいたしておりません限りにおいては、そこに制限、不自由ができてくる。こういうものを、その実情に感じて
修正をしてもらおうと思いまして、大藏省に談判すれば、これは談判をするだけでも二箇月や三箇月かか
つてしまう。そのずれの間に結局災害復旧の工事費も拂えなか
つた、
職員の給料の拂えなか
つた、巡査や
教員の給料も抑えなか
つた、こういうようなことで、むだな鬪爭も起
つてくる。こういうようなめんどうな、ずれが起きないようなことを、
地方財政においても考慮することは、國家において考慮されておると同様でなければならぬ。こういう点においてわれわれははなはだあきたらないものがあるのであります。私は國会に対しまして、國家の財政と
地方の財政とを一体として、一應再檢討を願
つて、両方に都合のよいような税制、財政の決定を願えれば、この上もない仕合せだと
考えまして、今日
陳情に上
つておりますが、さいわいに数縣の知事が見えておりますので、一、二知事の
意見を述べさしていただきますれば、たいへんありがたいと思いますので、
委員長によろしくお願いいたします。