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1948-06-24 第2回国会 衆議院 治安及び地方制度委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十四日(木曜日)     午後一時四十一分開議  出席委員    委員長 坂東幸太郎君    理事 小暮藤三郎君 理事 千賀 康治君    理事 松野 頼三君 理事 門司  亮君    理事 坂口 主税君       大内 一郎君    大澤嘉平治君       坂田 道太君    佐藤 通吉君       中島 守利君    原田  憲君       松浦  榮君    笠原 貞造君       久保田鶴松君    松澤 兼人君       高橋 長治君    高橋 禎一君       小枝 一雄君    川橋豊治郎君  出席國務大臣         國 務 大 臣 野溝  勝君  出席政府委員         國家地方警察本         部警視     柏村 信雄君         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         文部政務次官  細野三千雄君         文部事務官   剱木 亨弘君  委員外出席者         國家地方警察本         部警視     三輪 莨雄君         参  考  人 生田 和平君         参  考  人 安井誠一郎君         参  考  人 友末 洋治君         專門調査員   有松  昇君     ————————————— 本日の会議に付した事件  警察官等職務執行法案内閣提出)(第一二四  号)  市町村立学校職員給與負担法案内閣提出)(  第一三八号)  地方財政法案内閣提出)(第一五八号)  地方配付税法案内閣提出)(第一六二号)  地方税法を改正する法律案内閣提出)(第一  六三号)     —————————————
  2. 坂東幸太郎

    坂東委員長 これより治安及び地方制度常任委員会を開会いたします。  本日の日程は市町村立学校職員給與負担法案ほか六件でありますが、まず市町村立学校職員給與負担法案審議を始めます。説明は大体済んでおりますから、これから質疑をお願いいたします。——高橋長治君。
  3. 高橋長治

    高橋(長)委員 一昨日六大都市教育組合幹部薄井政次郎ほか二十名が本委員会陳情にまいつたのでありますが、ちようど散会後でありましたので、委員長に会うべく探しているところを、たまたま私が出合わせましたので、委員長面会方を要請いたしまして、委員長のもとに陳情が行われたのでありますが、この場合委員長にお伺いいたしますが、この陳情者に代つて私から陳情要旨を御報告いたしましようか。
  4. 坂東幸太郎

    坂東委員長 どうぞお願いいたします。
  5. 高橋長治

    高橋(長)委員 ただいま陳情者の名前を申し上げました通り、六大都市教員組合最高首脳部がお見えになりました陳情要旨は、市町村立学校職員給與負担法の第一條に、「市(特別区を含む。以下同じ。)町村立小学校、中学校、盲学校及びろう学校の校長、教諭養護教諭助教諭養護助教諭、寮母、講師及び地方事務官たる職員俸給特別加俸死亡賜金、旅費、扶養手当勤務地手当、退官又は退職に関する手当、日直及び宿直に関する手当(以下俸給その他の給與という。)は、都道府縣負担とする。」こうなつておりますが、その末尾に「但し五大都市に関しては当該都市負担とする」というのを挿入していただきたいという陳情要旨でありまして、これに伴つて財源五大都市に與えていただかなかつたならば、條文だけこうなりましても、その財源裏づけが伴わなければ何にもならぬので、ぜひともこれに対する財源裏づけを願いたい、こういう陳情要旨でありますので、どうか御審議の上、適当なる解決をしていただきたい、こう思うのであります。ここに陳情者に代つて申し上げる次第でございます。
  6. 細野三千雄

    細野政府委員 陳情趣旨につきまして、政府考えの一端を申し上げたいと思います。今日本教育制度は非常な改革途上にありますので、ひとり六・三制の実施のみならず、文教委員会で御審議を願つております教育委員会法によりまして、教育行政地方分讓のちよう途上にあるのであります。この教育委員会法につきましては、目下文教委員会で愼重に御審議を願つておりまするが、教育委員会というものをまず都道府縣に置き、なお各市町村にも教育委員会を設けて、教育行政地方に分讓するのでありますが、その場合都道縣及び市は即時実施するのでありますが、町村につきましては、現在の町村財政状態などからいたしまして、今ただちに市町村にまで教育委員会を設定することは、やや時期が早いように思いますので、町村政育委員会というものは、二年後に実施しようというふうなことに政府案はなつておるのでございます。かようなわけでありまして、現在の文教委員会で一番問題となつておりまするのは、かくいたしましても、地方教育に関する何か特殊な財源がなければ運用上うまくいかぬのではないか。だからしてもしそういうふうに教育行政地方に分讓すれば、目的税としての何か教育税というふうなものでも設けて、教育に関する財源を各地方公共團体に與うべきであるというふうな論議もなされつつあるのでありまして、今の陳情の御趣旨につきましては、一應ごもつともと思いますが、そういつた教育制度改革ともにらみ合わせて考えなければなりませんので、今ただちにこれを都道府縣だけではなく、五大都市にまでこの範囲を拡げようという考え方は政府としてはもつておりませんし、教育委員会法審議の状況ともにらみ合わせなければ、この法律だけをかように修正いたしましても変なものになるのではないか、かように考えておる次第であります。
  7. 門司亮

    門司委員 ただいま高橋委員から陳情趣旨を申し述べたのでございますが、教育行政のことについて今の当局の御意見には少し腑に落ちない点があるのであります。なるほど教育委員会の設置に伴い諸般の教育行政改革が行われるということはわれわれも承知をいたしておるのでありますが、その際特に当局に考慮していただかなければなりませんのは、文化の程度に即しない画一期な日本從來教育がどういう大きな弊害を及ぼしておつたかということであります。日本は御承知のように小さな島國でありながら、非常に大きな都市をもつているのであります。これは特別の関係があるのでありますが、そういう関係をもつておりますときに、都市教育農村教育がまつたく画一的に行われているところに、日本教育方針一つの誤つた行き方があつたとわれわれは考えているのであります。こういう点からやはり教育民主化のために今回教育委員会というような制度ができ、おそらく地方自治体教育の基本となるものを委讓するというような形でほんとうに自然に即した教育が行われると考えるのでありますが、その際私ども考えていただきたいことは、先ほど陳情のありましたような趣旨のものでありまして、今日五大都市教育行政と、農村あるいはその他の小都市教育行政とはまつたく異つたものが行われなければならないのであります。かりに五大都市の例をとつてみますると、府縣におのおの視学がおつて、その視学が大体統一した教育行政についていろいろなことをやつておりますが、さらに五大都市はそれのみによつて満足教育行政が行われませんので、おのおの都市視学陣容をもつて、さらに府縣陣容よりもはるかに大きい陣容をもつて教育行政を担当しているのであります。一体都道府縣教育行政よりも大きな機構をもつて教育を運用しなければならないほど自治体教育行政の必要なときに、依然として中央集権的な教育行政が行われるというようなことは、今日のこの法律、さらに教育委員会制度等に対する立法の趣旨から言つても、ただいまのお考えについては考慮を拂つていただきたいと考えるのであります。從つてこれは單なる陳情であつたと思いまするが、当局にもう少し深く研究していただいて、もしこれを修正することに特別に当局に反対の意見がなければ、本委員会において修正をして、教育行政の全きを期したいと考えているのであります。ただ單に教育行政をそういう法案とにらみ合わしてやるというようなことだけではなくして、本質的にもう少し御答弁が願いたいと思います。
  8. 細野三千雄

    細野政府委員 今、門司委員から御指摘になりました日本從來教育制度が、非常に中央集権的であつたという弊害は、文部省当局も十分了解しております。日本軍國主義に駆り立てた一つ原因は、なんと言いましても從來教育中央集権的で、画一的で、上から詰め込むというふうな形体でありまりたことは、しばしば指摘せられておるところでありまして、このたび教育委員会法を提案いたしましたのも、かような中央集権的な教育行政を打破いたしまして、地方に分讓いたしまして、地方教育委員会がその地方に適した教育行政を行うという趣旨にほかならないのであります。  なお文部省は、今議会に教科書檢定制度というものを提案しておりまするが、これも教科書が、今まで小学校義務教育教科書が國定教科書一本であつたというようなことが、やはり教育行政中央集権を助長する原因であることに鑑みまして、このたびは檢定制度を採用いたしまして、文部省の檢定した教科書を、毎年八月各地方展示会を開いて、各地の教育委員会なり、教育関係者において、その地方に適應する教科書を選定していただく。こういうことになつておるのであります。こういういろいろの面から、從來中央集権的な教育行政を打破していきたいという考えをもつておる次第であります。現在教育委員会制度審議中でありますが、原案はとりあえず都道縣及び市に教育委員会を置き、二年後に町村に及ぼすということになつておりますが、教育委員会のお考え政府考えと多少違つておるようでありまして、これは將來どういうふうに修正になりますか、あるいは原案通りになりますか、そういつた面ともにらみ合わして給與負担のこともお考え願わなければならぬと思いますので、今のところ政府といたしましては、これに五大都市を加えるという修正にはちよつと應じかねるような事情になつておる次第であります。
  9. 坂東幸太郎

  10. 剱木亨弘

    ○剱木政府委員 ただいまの問題でございますが、政務次官から御説明申し上げましたように、教育委員会法におきましてはさしあたり市以上の、都道府縣と市に教育委員会をつくるわけでありますが、都道府縣教育委員会と市の教育委員会との間には上下関係は全然ありませんで、まつたく各自独立の機関として働くわけでございます。現在ありますように縣が市の教育を監督するというような、いわゆる上下関係には立たないのでございまして、從つてこの各教育委員会の権限といたしましては、市の教員任免権につきましては市の教育委員会が握つておるわけでございます。從つてお話がありましたように、この教育委員会ができれば、各市は市で独自の教育に対する行政ができるわけでございまして、ただその間におきまして、教員俸給負担だけが一應ただいまのところ縣になつておるわけでございます。將來この教育委員会全般の問題といたしまして、これが町村にまで全部教育委員会ができました場合に、全部市町村立学校市町村がその教員給負担するということにいたしますか。もしくはそのうちでただいまお話のありましたような五大都市とかいうような部分に限りましては、その市が負担をして、縣から独立負担の責任をもつかというようなことは、將來教育委員会の運営と同時に、地方財政の問題と絡み合わせまして十分考究をしてまいらなければなりませんばかりでなく、実際教育委員会ができますと、それに伴うところの財政的な裏づけがなければ活動はできませんので、ただいまこの地方教育財政法というようなものを急いでわれわれ研究をいたしておるのでございまして、この一貫した問題としてそれを考究していきたいというふうに考えておるのでございます。なおかつてずつと昔に、小学校教員俸給市町村において負担した場合がありまして、その際において市町村財政状態に差等があるために、教員の交流でありますとか、実際の教育実施というような面におきまして、非常に弊害があるということで縣費負担に改めたのでございまして、これをその市町村に再び還元して負担せしむるかどうかということは、根本問題として相当重要な問題であると思います。ただその際に五大都市を特別に考慮して、この際移すかどうかという問題等につきましては、なお全般の問題としてしばらく研究をさしていただきまして、その上で決定さしていただきたい。ただいまこれを五大都市に限りまして縣費負担から除くということは、財源その他いろいろな各般のものとの関連研究いたさなければなりませんので、その点はただいま政務次官が申されましたように、この法律といたしましてはただいままで政令としてありましたものを一應法律に直すという操作でございますので、この根本的な問題は私どもとしても速やかに考究いたしたいと思いますので、この法案につきましては何とぞ原案通りにお認めを願いたいと思う次第であります。
  11. 高橋長治

    高橋(長)委員 ただいま当局説明伺つたのでありますが、われわれはこれを十分納得することができませんし、なおかつ本件は他の委員会にも関連がありますので、十分研究いたしたいと思います。本日はこの委員会においては、この程度にしておきたいと思います。     〔「賛成」と呼ぶ者あり)
  12. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それではこの法律案審議はさらに継続いたしますが、今日はこの点だけで打切ります。  次に警察官等職務執行法案につきまして質疑を続行いたします。
  13. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 逐條的に一問一答の形でもつて、若干質疑をいたしたいと思います。本法案の第二條第一項末尾にあります質問ができるという場合は、この法文の建前からしますと、停止をさせて質問することができることになつておるのでありますが、歩行者を停止させて質問するという場合だけを予想しておられるのでしようか。それともまたその他の意味があるのでしようか。
  14. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 通常歩行者を予定して規定いたしておりますが、歩行者でない者を質問することは当然できると思います。
  15. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この質問はいわゆる尋問ということとどういうふうに区別があるか、御説明願いたい。
  16. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 尋問と申しますと、いかにも惡い者を問い糾すというふうに考えられますが、ここは單にその者の氏名であるとか、住所であるとか、あるいは外出の用向きであるとか、行き先であるとか、そういうものを聽くという軽い意味考え規定したものであります。
  17. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 もしこの場合質問しても答えなかつた場合にはどういうことになるのですか。
  18. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 第二條の第三項におきまして、「前二項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律又はこの法律第三條の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して派出所若しくは駐在所連行され、若しくは答弁を強要されることはない。」と明定いたしておりますので、答えない者はさらに質問を強要することはできないのであります。
  19. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第二條第二項の「警察署派出所又は駐在所同行することを求めることができる。」と規定してありまして、同様の第三項に「連行され、」と連行という言葉が出ておりますが、同行連行とはどのような区別があるのですか。
  20. 三輪莨雄

    三輪説明員 最初の同行を求むというのは、向うの意思一緒に來てもらうことを求めることでありまして、あと連行と申しましたのは、答弁を強要され、あるいは身柄を拘束されないと同じような意味で、力づくでそこまでひつぱつていかれることはないという意味を表わしますために、初めの方は同行あとの方は連行と書きわけたのであります。
  21. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そうしますと、第二條、第三項の連行というのは、從來の法制において檢束という言葉がありましたが、それと大体同じような趣旨でありますか。
  22. 三輪莨雄

    三輪説明員 この連行と申しますのは、檢束とは異りまして、第二項に書いてございます質問をいたしますために、附近派出所なり、駐在所なりに一緒に來てくれることを求めますが、もし相手がこれを拒絶した場合に、力づくでそれをそこまで連れていくことができないことを意味したのであります。檢束のごとくその身柄を二十四時間止め置くという意味は、何らここに含めたつもりはございません。ただ任意同行しない場合に、力づくでそこまでひつぱつていかれることがないということを意味したものであります。
  23. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういたしますと、刑事訴訟法のいわゆる拘引ということと同一でありましようか。
  24. 三輪莨雄

    三輪説明員 これは連行であるとか、あるいは拘引であるとか檢束であるとか、そういう処分をここで考えておるわけではありません。同行を求めて肯んじない場合に、その意思に反して連れていつてはいけないということを規定したわけでありまして、連行という処分をここに認めたわけではありません。
  25. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第三項によりますと、表面は身柄を拘束され、またはその意思に反して派出所もしくは駐在所連行されることはないというふうになつておりますけれども、この裏面解釈からいたしますと、前二項に規定するもののうち、刑事訴訟に関する法律またはこの法律第三條の規定による場合は、身柄を拘束され、またはその意思に反して派出所もしくは駐在所連行され、もしくは答弁を強要され得るというふうに思えるのでありますが、その連行というのは、結局本人意思に反してこれこれの場所に連れて行く、すなわち強制力を用いて行うというわけでありますから、結果拘引ということと区別がないことになるのではありませんか。
  26. 三輪莨雄

    三輪説明員 刑事訴訟規定による場合というのは、令状によります逮捕緊急逮捕及び現行犯逮捕のことを考えているのであります。從いまして第三項に身柄を拘束され、連行され、答弁を強要されるというふうに、一應わけて書いてございますが、ここで考えているのは刑事訴訟手続によりまする右申しました逮捕の場合には、逮捕手続として警察署連行する。それからこの第三項と申しますのは、第三條の第一号の「精神錯乱又はでい醉のため」意識不明である者につきましては、本人意思が聽けないわけでございますから、その意思にかかわらず警察署同行して保護するわけでございます。その場合のことを申しているのでありまして、強いて申せば逮捕手続の一部であるというように考えたわけであります。
  27. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 私のこの法案解釈からしますと、同行というのは任意にある場所に參ることであり、連行というのは強制力を用いて、その場所に赴かしめるというように考えておるのでありますが、大体そういう趣意に解釈してよろしゆうございますか。
  28. 三輪莨雄

    三輪説明員 そのように考えております。
  29. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第二項の規定によりますと、質問をするために本人に対して不利であり、または交通の妨害となり、善良なる風俗を破壞し、その他公安の秩序を乱すおそれがあると認められる場合においては、質問するためにその者を附近警察署派出所または駐在所、この三つの場所同行を求めることができると規定してあるにかかわらず、この三項においては、その意に反して派出所もしくは駐在所連行され、もしくは答弁を強要されることはない。そして警察署ということを抜いてありますが、その点はどういう趣旨から出たのでありましようか。
  30. 三輪莨雄

    三輪説明員 ただいまの御指摘でございますが、深い意味はございませんので、前を重ねて意味するつもりで書いてあるわけであります。
  31. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういたしますと、「その意に反して」の下に、やはり「警察署」を入れた方が適当であるとお考えですか。
  32. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 これは「その意に反して警察署派出所」とあるべきものでありまして、正誤をさしていただきたいと考えます。
  33. 坂東幸太郎

    坂東委員長 ただいまの政府の案に異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それではさよういたします。
  35. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第二條第三項の場合刑事訴訟に関する法律規定によつて身柄を拘束され派出所もしくは駐在所連行されるということは、これはここにあらためて規定しないでも当然のように思えるのでありますが、何か特別に規定を置く必要があるのでありましようか。
  36. 三輪莨雄

    三輪説明員 もとより当然のことでございまするけれども、前に質問ができ、同行を求めることができるということでありまして、これを拒んだ場合のことがございませんので、意に反してそういうことを強行することができないという旨をここに明らかにしたわけであります。
  37. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この第三項の規定によりますと、先ほどもちよつと触れましたように、反面解釈からすると答弁を強要され得る場合があるように見えるのですが、そこはいかがでございましようか。
  38. 三輪莨雄

    三輪説明員 これはもとより刑事訴訟に閥する法律、もしくはこの法律第三條の規定によらない限り、答弁を強要されることはございませんのみならず、刑事訴訟等にありましては、取調べに際してあらかじめ答弁を拒絶することができるということを告げるということまであるようでございます。もとよりそれらの規定從つてやるわけであります。ただ前に質問をすることができるとございますので、ここには念のため拒絶した者に答弁を強要しないということを明らかにしたつもりでございます。
  39. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第三條との関係においてでありますが、第三條中の保護というのはどういう内容をもつものでありますか。
  40. 三輪莨雄

    三輪説明員 これは通常常識的に考えられまする保護でありまして、ここに書いてございますように、そのままにしておきますることが、本人生命身体危害を及ぼす、あるいは第一項の場合でございますと、さらに場合によれば他人にも危害を及ぼすようなことも考えられる場合におきまして、それぞれ近くに適当な病院救護施設等がございまするならば、そこに入れて、專門家の看護のもとに保護を加え、さような施設がございません場合、もしくは泥醉者等の場合でありますれば、警察署の一室に休憩をさせ、それぞれ適当な引取手に渡すまで、そのめんどうをみるという意味で常識的に考えておるわけであります。
  41. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういう意味でありますと、本人意思に反してある場所に拉致され、本人意思に反して身柄を拘束、監禁されるというようなことは含んでいないと承つていいのでしようか。
  42. 三輪莨雄

    三輪説明員 その通りでございます。ただしこの第一項一号の場合におきましては、先ほども申したような事情でございますから、本人の意向というものが現われませんので、泥醉の場合等でございますれば、そのさめます時期まで、あるいは強度の精神錯乱でございまするならば、これはそのまま引渡すまで、これは本人意思を聞くわけにはまいりませんので、この場合は例外と申していいものであるというふうに考えます。
  43. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 今例外というふうにおつしやつたのですけれども、第三條というのは第一号、第二号に該当する場合において、これこれの場所においてこれを保護しなければならない。保護ということは第一号、第二号に該当する場合だけに関する規定のように思えるのですが、そういたしますと、先ほど説明なつたような保護内容であるとすれば、第二條第三項の「この法律第三條の規定によらない限り」云々という規定は不必要になつてくるように思いますが、いかがでありますか。
  44. 三輪莨雄

    三輪説明員 先ほども第三項のところで申し上げましたように、刑事訴訟に関する規定なり、第三條の規定なり、それによつて措置をいたすわけでありますから、第三條の第二号の場合には、本人が拒んだ場合には、もちろんその意に反して警察の欲する所に連れていく意味ではございませんけれども、第一号の精神錯乱または泥醉者の場合には、これはその意に反するといいますか、元來その意というものがはつきりいたしませんので、その場合には本人意思を聽くことなく、これを警察なり病院なりに保護するという意味でございまして、特にこの規定は第三項がございますために、第三條に書いてあることが死んで、すべてその意に反して身柄を拘束するというような意味考えたわけではございません。
  45. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第三條の第四項でありますが、「前項但書の許可状は、警察官等の請求に基き、裁判官において已むを得ない事情があると認めた場合に限り、これを発するものとし、その延長に係る期間を通じて五日をこえてはならない。」そういたしますと、だび簡易裁判所の裁判官が許可状を発布いたしました場合は、その許可に基いて、常に五日を超えない程度においては、保護して身柄を拘束する場合においてもそれを引続いてなし得る、そういうふうに考えられるのですが、その通りでありますか。
  46. 三輪莨雄

    三輪説明員 立案の時の考え方といたしましては、警察の責任におきまする保護というものは、すべて二十四時間で済ませるという考えでございましたけれども、たとえば例が少いと思いまするが、身元の名札をもつておる迷子であるとか、身元のわかつております迷子等につきまして、その保護者のもとに連絡いたしましたけれども、なお二十四時間内に引渡しをすることが距離の関係等でできないというような場合がございましたならば、その必要な時間だけ裁判官の判断を願つて許可状をいただくというふうに考えておるわけであります。
  47. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういたしますと、裁判官の許可状は、これを何日間保護することができる、すなわち何日までその効力があるということを記載するというような形において作成されるわけですか。
  48. 三輪莨雄

    三輪説明員 この書式等につきましては、裁判所となおお打合せをいたさなければならないと思いますが、私ども立案の菊持ではその事情を申し述べ、その事情に必要な時間を区切つて許可状をいただくというふうに考えております。
  49. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 その点につきましては、裁判官の見解がどのようになるかということは將來の問題でうかがい知るべくもないのでありますが、法律の建前としては、いかにもだび裁判官の許可状が発布されますと、五日間はこれを保護し得る、こういうふうに考えざるを得ないと思うのであります。そういたしますると、第三項においてせつかく警察保護は二十四時間を超えてはならないと規定されて、できるだけ短かい期間保護を與えて速やかに保護を解くという根本精神とにらみ合わせて考えますと、だび許可状を発布されたら、それが五日まで延長し得るというのでは、そこにいささか矛盾があるように考えられますので、むしろ許可状は二十四時間毎に、すなわち一日間限りというふうにして、それを更新し得る、そうして通じてたとえば本法規定のごとく五日を超えることはできないというふうに規定した方が立法技術としては適当のように思えるのでございますが、その点はいかがでございましよう。
  50. 三輪莨雄

    三輪説明員 御趣旨はよくわかりますが、技術的に申しましても、簡易裁判所等の距離等から考えまして、でき得るならばその事情が二日間であるならば二日間を限る、三日間であるならば三日間を限つて、一度に許可状をいただくということにした方が適当であると存じますし、また裁判所といたしましても、その必要の事情をよく調査されるわけでありますから、それが一日延長すればいいと考えられる場合は、五日間これを許可するというふうな意思表示をされることはあるまいというふうに考えられますので、実際の扱いではさような点に注意をいたしてやりますけれども、法文としてはこのようにしていただいておいた方が適当であろうというふうに存ずるわけであります。
  51. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第五條について質問いたします。第五條に、「警察官等は犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは」云々と規定してありますが、犯罪がまさに行われようとするというのは、いわゆる犯罪の態様の点から考えまして、これは予備あるいは着手未遂という観念との関係はどのようになるのですか。
  52. 三輪莨雄

    三輪説明員 これは一般的に考えまして、犯罪が行われた後逮捕いたしますより、犯罪が行われることを未然に防止することがより望ましいということは論のないことでありまして、警察法に基きます警察官の職務につきましても、犯罪の予防ということが特に掲げられておるのも、その点であろうと存ずるわけであります。從いまして犯罪が行われようといたしまするときに、これを警告をし、止めまして、その犯罪が行われないようにいたしますことは、警察官の常に念願いたすところでございますが、未遂等を罰します罪、予備を罰します罰につきまして、その犯罪構成要件のそれぞれ当該條文によつて逮捕をするということになりましようと思います。しかしながら犯罪には未遂を罰しない罪もございますので、その犯罪が警察官といたしまして、まさに行われようというところに至りましたならば、法律的に見まして着手と申しまするその前後を問わず警告を発し、制止をいたしまして、その犯罪が行われることを防ぐというふうな職分をここに記載した次第でございます。
  53. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういたしますと、第五條の場合は予備罪を罰せず、着手未遂を罰しない、すなわち犯罪にならない予備あるいは未遂及び予備未遂に達しない程度のものを対象とするものである。このように伺つておいていいわけでしようか。
  54. 三輪莨雄

    三輪説明員 先ほど申したような趣旨考えましたので、これは嚴格にそのようには考えておりません。たとえば予備未遂を罰する罪におきましても、嚴格な意味の着手がなくとも、それが行われそうな兆候が現われる。たとえば先般からいろいろ事件がございますが、組同士の爭いというような場合に、その兆候が現われれば、その事前にそういうことがないように警告をするということもございましようと思いますから、その意味でこれはお言葉のように嚴格な意味考えてはおらないのでございます。
  55. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第六條第二項の末尾にあります「正当の理由なくしてこれを拒むことができない」というのは、具体的にはどのような場合を考えておられるのでありますか。
  56. 三輪莨雄

    三輪説明員 ただいまのお尋ねでありますが、これは場合々々におきましていろいろその事情に應じて管理者の申すことがもつともであると思われるような例があろうかと思います。しかしながらこれはやはり客観的にその場合に立至つて正当な理由と判断されることでなければ、管理者の方で單に都合上から考えて理由を述べるということでは工合が惡いので、特に正当な理由というふうに入れたのであります。
  57. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第六條第三項の警察官等は、前二項の規定による立入に際しては、みだりに関係者の正当な業務を妨害してはならない。」という規定は刑法の公務執行妨害罪の観念とどのような関係をもつことになるのでありますか。
  58. 三輪莨雄

    三輪説明員 ただいまのお尋ねは、あるいは私のお伺い違いかと思いますけれども、これはたとえば第二項に示してございますような場合にいたしましても、第一項の緊急の場合にいたしましても、御迷惑はどうせ御迷惑でありまするけれども、しかしながらその立入りに必要な最小限度の御迷惑は当然かけると思いますが、この立入りのために相手方の正当な業務をじやまをしてはいけないということを警察官等に対しまして、訓辞的にここに附け加えたのでありますので、公務執行妨害等の関係はどういう意味のお尋ねかちよつと理解がいかないのでありますが……。
  59. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 ただいまのお答えで十分意味はわかりました。  次に第七條でありますが、武器を使用し得る場合と、そしてそれによつて人に危害を與えてはならない。すなわち危害を與え得る場合と、與え得ない場合とを定めてあるようでありますが、武器を使用することを許して、危害を與えてはならないなどという規定を設けることによつて、特別な効果があるようにお考えなのでございましようか、いかがでございましようか。
  60. 三輪莨雄

    三輪説明員 お尋ねでありますが、武器の使用ということについて、警繩、警俸を武器として使用いたしまする場合、あるいは拳銃を発射いたしまする場合にいたしましても、威嚇射撃というようなことを試みる場合が多いのでありまするが、そういうようなことでも、必要がありますればここに書いたような場合には使用ができる。実際そういうことで相手に被害を加えた場合に、その責任を問うか問わないかという限界におきましては、第一号、第二号ないし正当防衛、緊急避難等に該当しない場合におきましては、危害を加えた場合には過剰の行為といたしまして、それぞれ刑法の責任を問われるわけでございます。
  61. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 第七條の武器というのはどのようなものを指すわけでありますか。
  62. 三輪莨雄

    三輪説明員 ただいまの装備におきましては、拳銃は警察官の武器でございまするが、警棒、警繩におきましても、これを武器として使用することができるということになつておりますので、私ども考えておりますのは、拳銃、警繩、警棒というふうに考えております。
  63. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 ただいま第七條に緊急避難すなわち刑法第三十七條に該当する場合においては、人に危害を與え得る場合がある。こういうふうに見えるのでありますが、その通りでありますか。
  64. 三輪莨雄

    三輪説明員 これはきわめてまれな場合であると考えます。たとえば一例をあげますれば、花火見物のために橋に非常に多くの人が蝟集してまいりまして、これ以上人が乘れば当然壞れて非常に多くの溺死者ができる。こういうような場合に、これを制止いたしましても、なお聞かずに大勢の人が詰めかけて來るというような場合に、警繩、警棒等でこれを防ぐ場合があります。このような場合に、やむを得ず初めの方の方々に、けがを生ずるような結果に立至りましても、客観的な情勢としてやむを得なければ、これが認められるというふうに考えているわけでございます。
  65. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 そういたしますと、これは警察官等に緊急避難を認めるというような趣旨ではないわけでありますか。
  66. 三輪莨雄

    三輪説明員 その通りでございます。
  67. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この程度質問を一應打切つておきます。
  68. 松浦榮

    ○松浦(榮)委員 この法規は從來は実際上はやつていたことでありますけれども法律上は行政執行法、行政警察規則等でやつてはいけない、または規定のないことが多いのでございまして、その運用にあたつては相当に氣をつけなければならない法規だろうと思います。殊にこの同行ということは、先ほどお話では承諾同行意味であるというお話でございましたが、それはその通りでありますか、第一に聽きます。  それからかつてこの同行とかあるいは連行とかいうことは、太政官布告の警察行政規則によつて、憲法違反であるかの疑いを受けながら、それを運用しておつたのでありますが、いずれにしても、これは承諾を得たからよいのだということでやつてつた質問にしましても、連行にしましても、それを今度ははつきり明文の上に出すのでありますから、これを運用するにあたつて警察官に相当の注意を與えなければならぬと思います。その点につきましてこの法規を実施するにあたりましては、その施行の際に特に訓辞的な意味の前文なり、あるいは附帶的の警告を出した上でこの法律を施行する必要があると思います。その点について御質問いたします。  次は第四條でありますが、第四條でこの間も私質問したのでありますが、警察官はたとえば火災があつた場合に、隣の家を壞すということは、この場合はできないのでありますが、消防法によりますれば消防はできる。これはかつては民間の消防署員などに、あるいは消防團員などに家を壞すような判断を與えれば非常に弊害が多かつた。ふだん憎まれているやつを先に家をぶち壞してしまえというようなことがあるので避けられておつた。それを警察官が指導するという立場で、警察官のみに與えられた処置なのでありますが、今度は逆に警察に許さなくて消防が許されるということになるのでありますか、その点はいかがでありますか、また最近救護法との関係もあるのですが、災害救護法では、行政執行法第五條を執行するということでありますが、行政執行法は廃止になつておりますから、代執行法というものとは関係が違つていると思いますが、その点をお示し願いたいと思います。  最後に次長にお聽きしたいのですが、この問題に関連しているのでございまして、この問題の本筋でありませんが、この間許可営業について、風俗営業の許可について、公安委員にするかあるいは警察署長にするかということについて、いろいろ議論があつたのでありますが、私はこういう構想を描いているのです。  第六條の第二項に関連してちよつと質問したいのですが、これは公安委員に與えても弊害があり、また公安委員というものの使命がそういつた営業許可というような使命をもつているものではない、あくまでこれは指導監督の地位におきたい。そうかといつて警察署長に與えるならばやはり從來通り警察権を乱用する。すなわち許可をしておいて取締る。両方の権限を持たせるということは非常に大きな権限を與え過ぎる、やはり許可はほかの官職にやらしておいて許可したものを実際上見て歩く、視察し監督して歩くということが警察の民主的な一つの國家の行き方だろうと思う。そういたしますと私は英米式のライセンス・ビユーローというものがあつてしかるべきものだと思う。あるいは許可権を知事に與えるか、委員会組織をつくるかということになりますが、私の考え方は特別の委員会をつくつたらどうかと思います。その中に公安委員も入れまして、衛生の権威者、火防の権威者あるいは風俗の権威者というようなものを入れまして、一つ委員会をつくつて、その委員会が許可をする。その許可の対象には從來警察署が握つてつた興行場、旅館、料理屋あるいはその他床屋、ふろ屋、そういつたものを全部入れた一つの許可官廳、許可委員会というようなものをつくつて、それを今度は警察官が実行したらどうか、こういうような構想をもつておるのでありますが、時間がありましたならば御答弁願いたい。
  69. 溝淵増己

    ○溝淵政府委員 ただいまの御意見非常にごもつともな御意見でありますが、將來警察としましては、なるべく警察が許可をして取締りをするということは避けて、警察は取締りだけをするという方向に現に向つておるのであります。ただ警察と最も関係の深い業者だけ——御審議つております風俗営業について公安委員会が許可権をもつ制度にいたしたいと考えておるのでありますが、ただいまの委員会を全部つくるということは、何と申しますか、それぞれ取締りをしていく目標が違うのじやないか。総合的な委員会でいろいろの各業者について審査がはたしてできるだろうかという感じもいたすのでありますが、將來研究問題として十分考えてみたいと存じます。  なおこの法律の施行については、御心配のような点もありますので、われわれとしては法務廳とも十分相談をいたしまして、警察官の責任について誤りのないことを期したい、かように存じております。
  70. 松浦榮

    ○松浦(榮)委員 最後の私の構想でありますが、これはただいまお話のように、許可営業の主務官廳というものが、あるいは厚生省、あるいは建設省あるいは國家地方警察というようにありますので、なかなかその実施はむずかしいかもしれませんが、その実施機関というものは、大体末端においては一元化することができるのでありますから、これは法規をつくる上において煩雜を要するだけでありまして、その法規をつくつた曉の運用というものは非常に明朗になり、その運営に妙味を発揮することができると思いますから、ぜひともお考え願いたいと思います。
  71. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほどお尋ねの同行意味でありますが、これはお話のように同意した上の同行でございます。それから破壞消防については、議会に提出してただいま御審議中の消防組織法に規定されておりますので、警察官としてはそういう権限はないと考えております。  それから災害救助法の関係は、一應行政執行法の関係ある場合にあの規定があつたわけでありますが、行政執行法の廃止になりました後においては、主務官職において適当に法律の改正をされることになると考えます。
  72. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは本法案質疑は次会に継続します。  これより地方財政法案ほか二件の質疑に入ります。これにつきましてはさきの委員会におきまして、地方財政委員会委員三名が辞職せられ、その理由は、その委員諸君と政府側との地方財政に関する意見の食い違いであるということを聞きましたので、參考人として以上三省に御出席願つたのであります。ただいま地方財政委員でありました生田和平君がおいでになつておりますから、その辺の事情あるいは御意見を拜聽いたしたいと思います。都道府縣知事の安井君も來ております。
  73. 生田和平

    ○生田參考人 財政委員会政府との間に交渉をいたしましたことについての顛末を御報告申し上げます。  財政委員会の任務は地方財政自主化にあります。またその成案を得ましたことは政府を通じて議会に提出しなければならぬことになつております。從つて委員会の成案は委員長を通じて内閣へ詳しく報告してあると思いますが、去る六月初旬むしろ五月下旬と申してよいと思いますが、内閣と財政委員会との間で折衝いたしましたのに大きな食い違いを生じたのであります。その際委員長野溝國務大臣と種々折衝いたしましたけれども、ついに不調になりました。そこで途中において安本調停案なるものが現われて來たのであります。その安本調停案なるものが、大体内閣の意向を体して政府がこれを取入れたかつこうになつているらしいのであります、その内容は、われわれ財政委員会の主張しておりました酒、タバコ消費税二割を地方へ委讓することに反対でありまして、その総額は大体酒が五百円のときに二百四十二億円と踏んでおります。それを政府は八百円ないし九百円にいたしたようであります。その二割とすると三百二十億くらいになると思います。しかしてこれが穴埋めとして、從來住民税が一戸当り百円でありましたが、昨年税法が改正になりまして三百円、四百円まで増加せられたのでありますが、われわれ財政委員会はやむを得ざる事情考えまして八百円まで上げておつたのであります。この八百円に上げる理由は、御承知のように主食を目的とすることに対する課税を廃止しまして、これが五十五億であつたのでありますが、そのために住民税を八百円までやむを得ず上げたのであります。それから宅地に対する地租は御承知通り百分の二十四でありましたが、その他の耕地税は百分の七十二でありました。これを一律に百分の八十に増額いたしました。ところが政府案によりますと、地租及び耕地税を百分の二百、また家屋税は從來百分の七十二であつたものを百分の二百五十と訂正いたしました、また一方においてこれらの穴埋めをするために、われわれは地方債を百九十八億円と算定しておりましたのを二百八十億円以内と非常に増してきたのであります。そのほかわれわれ金融の面において地方公共團体中央金庫法案なるものをこしらえて、地方債の需要に應ずる手段といたしたかつたのであります。また災害復旧資金法を制定いたしまして、災害に対する資金の需要を急速に滿たす手段を制定いたしたいと思つたのであります。しかしこれらはいずれも政府の反対に遇いまして、延び延びになつている状態でございます。それで地方公共團体中央金庫法、災害復旧金庫法は予算には関係いたしておりませんから、載せておりませんわけであります。要するに地方財政の自主化を目的とし、またその立案は政府を通じて九十日の間に國会に提出しなければならぬという義務と責任を負つておるのでありますが、これらのことがすべて実行できなかつた。さすればわれわれは委員としての職責を全うすることができないという確信のもとに、市長代表神戸正雄君が先月二十八日でありましたか、辞表を提出し、われわれは安井君とともに、本月の五日になつて辞表を提出いたしました次第でございます。大きく衝突いたしましたのは以上の点でございます。そのうちわれわれは政府との間になお交渉の余地を残しまして、われわれの希望を政府に申し出たのでありますけれども、その回答は抽象的であつて未だ滿足する時期に達しておりません。  以上ごく簡單でありますが御説明申し上げます。何か御質疑がありますならば御答弁申し上げます。
  74. 坂東幸太郎

    坂東委員長 生田君、今辞職されておるんですか。
  75. 生田和平

    ○生田參考人 さようでございます。
  76. 坂東幸太郎

    坂東委員長 生田君に対して何か御質議がありますならば、この際御質問願います。
  77. 松野頼三

    ○松野委員 そうすると、生田委員はどうしても自分の職責上、あまりにかけ離れた意見だから、現在の政府が自分たちの意見を聽き入れないから、おやめになつたと、ただいま拜承いたしましたが、あなたのみならず、ほかの委員も御同様の意見でおやめになりましたのでしようか。
  78. 生田和平

    ○生田參考人 神戸君は独自の立場でおやめになりました。辞表の内容は大藏官僚の中央集権の弊が改まらないからというような御趣意でありまして、地方財政委員会意見が徹底しないからやめるというのであります。私もやはりこれと同様に、中央集権が改まらないで、地方分権の実があがらない。それがために政府の案によりますると、あるいは警察費、教育費のごときものの支拂いが不能に陷りはしないかという憂いが十分あるのでございます。なぜならば政府が発行いたしております地方債は、大体二百八十億ばかりになつております。そのうちの資金面の関係が、去る十五日に大藏省の預金部運用資金委員会に參りましたら、地方債に当ててあるものが上半期においてわずかに六十億円であります。これを下半期もかりに同様といたしまして、百二十億でございます。残りの百五十億ないし百六十億というものの資金の裏づけがないことがわかつたのであります。そこで私は大藏当局質問いたしまして、この資金はどうするのかと聽いてみますと、昨年度もやつておりますように、やはり六・三制及び災害資金と、郵便貯金も市町村を通じて集めさせて、その資金を振向けると言つているのであります。その資金ができた町村に対しては優先的に金をまわすのである。しからばもしその預貯金が政府の希望通りできない場合にはどうするのかと聽いてみますと、それはやはり貸すのであるけれども、後回しになるのだ、こういうのであります。そうなりますと学校の建築は事実上行えないようになるのではないか、地方は御承知通り中央と同じく最近は非常に金詰まりであります。また昨二十二年度の所得税の大幅徴收以來は、地方にはよほど金がなくなつております。また現在におきましても預貯金の奬励に應じられない村がたくさんあります。私は將來政府考えておりますようなことは不可能じやないかと思います。かりに地方資金が資金化しない場合は、町村の財政は事実上破綻に瀕しまして、警察費、教育費等は支拂ができない場合が生ずるおそれを多分にもつております。これらもやはり私の辞職の理由に織込みまして政府に提出した次第であります。
  79. 松野頼三

    ○松野委員 ただいまの御説明で大体現政府が旧態依然たる中央集権的財政、税制改革を強く主張するあまり、あなた方の主義とあまりかけ離れた政策を持つておるので、責任を感じ、また意見を異にするからおやめになつたということも重々承知いたしましたし、生田委員町村長代表として全國から御選任あらせられた委員でございますので、当然全國の町村長もあなたと同一の意見を持ち、またあなたの趣旨を十分了解しておるものと感じますが、この点も他の一切の全國の町村長諸君も了解されておられましようか。あるいはあなたの一個人の意見として行動されたとお思いになつておりましようか。
  80. 生田和平

    ○生田參考人 先月十三日に全國町村長大会を開催いたしまして、約三千の町村長が日比谷公会堂に集りました。その際の決議にも地方財政委員会の案を支持するという決議をいたしております。またその辞職問題が起りまして後に、理事会を開きまして、この経過を述べまして、理事会の承認を求めました。理事会は私の主張に全然同意の意見を表しておりました。また本日午前十時より理事会を開会、この理事会と申しますのは、九州、四國、中國、近畿というふうな各ブロツクを代表する者が一名ずつ出ている会でありますが、本日も午前十時から開会いたしましてやはり同様の支持を受けているわけであります。
  81. 松野頼三

    ○松野委員 ただいまの御説明で全國の町村長は、こぞつてこの政府の頑冥固陋なる意見に反対であるということを了承いたしましたので、これで私の質問を終ります。
  82. 坂東幸太郎

    坂東委員長 今参考人の安井誠一郎君が來ておられますから、その御意見を伺います。参考人安井誠一郎君。
  83. 安井誠一郎

    ○安井參考人 御審議のおじやまをしましてまことに申訳ないのでありますが、実はきよう午前中全國の知事会議を開きまして、その決定に基きまして、その決定に基きまして、この地方財政及び出先機関に関する問題を、各政党の政務調査会並びに両院の治安及び財政に関する委員会の方へ事情陳情申し上げることにきまりまして、ただいまこちらにうかがう委員が数名一緒に參つております。この機会におきまして私から一言知事会議の空氣並びに私が辞任をいたしましたことにつきましての一身上の釈明を申し上げたいと思います。  実はわれわれ三人が偶然にも一致をしてやめたのでありますが、決して三人が妥協して、共同のストライキをやつたわけでは断じてないのであります。第一に、京都の市長は、京都より直接総理大臣のところへ、この政府案がきまりますことを知つた際に辞表を郵送してまいつたのであります。私はその後京都市長の上京を煩わして、京都市長の心境を事こまかに伺つたのでありますが、京都市長の心境、あのまじめな学者的な態度のもとにおかれて、この措置をとられたことは当然だと私自身も考え、かつまた非常にそれに感激いたしたわけであむます。從つて私もまた静かに自分の良心に立ちかえつて考えましたときに、どうしても辞表を出すのが適当であると考えて、辞表を出したわけでありますので、その間三人の問におきます偶然の結果はともかくといたしまして、三人相談して故意に辞表を出したものではないことをあらかじめ御了承願つておきたいと思います。そこで一体なぜ辞表を出さなければならぬようになつたかと申しますと、第一にお考えを願いたいと思いますことは、昨年の五月、この地方自治法を通して、地方分権こそは新日本民主化の発走である、新憲法の條章において明確に地方自治に関する條章をきめ、地方自治の充実性を地方自治に関する憲法をもつて規定するということまで條章で制定された、これに基いて地方自治法というものが出されております。地方自治法の内容は、十分御承知でありますように、地方の分権、地方の自治制を通して、ほんとうに國民の民主的政治行政の訓練をして民主國家をつくつていこうという、大幅な非常に飛躍した自治制の立法であるのであります。そこでそれ以來問題になつてきておりますものは、これだけの自治法のもとにおいて、地方府縣市町村を通じて、自主的な、しこうして民主的な行政をやらせるためには、また同様に財政的な裏づけにおいて自主性をもたなければならぬ。從來つくられておりますところの地方財政及び地方税制に関します立法は、多くは戰時中の遺物であつて、ほとんど中央集権的なものであります。往年地方において課税されておつた税種までも戰爭目的遂行の理由をもつて國税に取上げられておるようなものも多々ある。当時地方がもつておりました税というものは、まことに限られた、しかも固定された、今日のような財政事情ないしは経済事情に対應して地方の財政を自主的に運営していくのにはとうていたえられない税立法であつたのであります。そこでそのときに政府においても考えられ、國会においても御協賛を得ましたものが、この地方財政委員会であるのであります。すなわち地方財政、税制に関する自主的な立法を財政委員会の手によつて立案させよう、すなわち國家公共の利益をも考えながら、同時に從來のように中央に偏しない、地方自治法の精神をくみ入れて、自主的に運営できる地方財政法、地方税制法を立案せしめるという重大な使命をもつておる委員会をつくるために、その委員会法というものが議会の協賛を経たのであります。そうして、普通でありますならば、從來の立法にこういつた自治團体の代表の加わつておる委員会というものを法律で明確にして、しかも非常に有力なものにしておりますものは、おそらくはきわめて珍しいと考えますが、それにもかかわりませず、從來のような大藏省中心の税法の建前、財政法の立案態度であつてはとうてい地方自治法の精神を体現するに足らない、同時に國家公共の利益と並行をして健全な自治制を運営する財政措置ができない、こういうことから、特に地方自治の実態に感じて、その自治を現実に運営し、その財政運営上苦労いたしております者の体験を生かして、ここにほんとうに國の財政、地方の財政を並行をいたして自主性を維持するような委員会をつくろうというので、われわれはその線に沿うて選ばれたものであるのであります。從いまして、当時この地方財政委員会法というものが通りました時分の地方自治團体の各層におきます空氣は、今度こそはほんとうに地方財政というものが、地方自治法運営の裏づけができるような立法をしてくれるであろうということに非常に多くの期待をもつてつたのであります。同時にその三人を政府が任命するにあたつては、町村長会、市長会、知事の全体会議、これに対してその代表者の推薦を依頼してまいつたのであります。その推薦に應じまして、各團体の長は集つて協議の上、その代表者を選んで、三人を送つた。こういう形になり、すなわち生田君と私と神戸京都市長の三人がそれぞれの團体より選ばれて、代表としてはいつてまいつておるのであります。この三人を選ぶにあたりましては、各團体の長は、この財政委員会法の制定に非常な賛意を表し、また非常な期待をもつて、今度こそほんとうに國家公共の事業並びに地方自治團体の財政自主化、これが都合よく解決するであろうという非常な期待をもつてわれわれを送つたのであります。從いまして、われわれは、ただいまも申しましたような非常な短い期間であつたとはいえども、力の限りを盡して、國家の利益をも考えながら、國家の財政事情、あるいは國民負担をも考えながら、今日の自治委員会案というものをつくり上げたつもりであるのであります。申すまでもなく、この自治委員会がつくる自治財政法並びに自治税制法の狙いは、先ほど申しましたように、單に予算をよけいくれ、金をよけいふくらしてくれという我利々々の言い方では断じてないのであります。國家財政の窮迫しておること、國民経済の逼迫しておることも十分承知しておるのであります。それほどやぼな者ばかり出ておるとは思つておらぬのであります。ただ狙いは、この際地方自治法が狙つておるところの地方自治團体の民主的なあり方、同時にこれの民主的な裏づけ、これを狙つて、その自主性を強調しながら、その精神を取入れて立案をしようと思つて苦労をしたのであります。この精神を取入れる場合に最も大切なことは、何かといえば、從來國家に依存し、國家からあてがいぶちになつてつたところの分與税を極度に少くする、また非常に不明確な非常に基礎の不安全であります公債をできるだけ少くする、そうして逆にその府縣事情に應じてそれぞれ自主的に收入を得られる方法を確立すること、こういうことであつたのであります。しかしながら、何と申しましても、今日國家財政が非常に窮乏し、地方の財政また窮乏しておりますときに、何もかも全部のものを地方團体の收入だけでやつていこうという考えは毛頭ありませんし、また予想もいたしません。從つて、まずできる範囲においての最小限度のものはまず道をつけて、少くとも地方の人々が、地方自治というものの線に沿いまして、われわれは行政できるのだ、政治ができるのだという氣持だけははつきり表わしていく程度にはどうしてもいたしていきたい。かように考えて立案をいたしたものが今回われわれのきめました財政委員会の案であります。この財政委員会の案は決して滿足ではありません。殊にその財政の総額に至つて、二千億を切れるという地方財政の総額を、政府案によりますあの税制案によつて府縣の実際の予算を編成してみますと、府縣市町村を通じていずれも非常な赤字になるのであります。本日午前中全國知事会議をやつて、問題はそれに集中して、一体委員会が二千億で止めたということについて、やり得る自信があるのかという質問があらためて生れてくるほど、それほどわれわれは切り詰めた、窮屈な、まことに府縣事情から言えば相済まぬけれども、國民の経済の事情考え、國の財政を考えて、委員会はかなり攻撃を受けながらも、がまんをしながらまとめてきた案であります。この案をもつて政府と折衝をいたしまする際に、先ほどから申し上げましたように、非常にわれわれの考えておるところの基本的な考え方を冐涜するような形のものになつてまいつたのであります。これでは私自身といたしましても、この成案を得る途上、各府縣知事の強力な意見も聽いて進めてまいつております。今回あまりにもかけ距てのひどい、殊に精神的においても、その個々の事項においても、かけ距てのひどい時期において、推薦されて責任をもつております私たちの立場といたしまして、このまま安閑として、さようでございますかと言つて、留まつておるわけにはまいりませんので、さような意味において、われわれの立場を明らかにしたのが、今回私のやめたわけでございます。同様なことは今生田君からも御説明があつたようでありますけれども、結果の上においては、同様な心境の上に立つてやめたのであります。その後われわれは、去る十一日全体の世話人知事会議を開きまして、報告をして了解を得ると同時に、さらに政府の最後的反省を求めるために、政府の回答を要求した数項の要求書を提出したのでありますが、これに対して返事をもらいましたので、その返事を基礎に、全体知事会議を開いて、今後の態度をきめるように、きよう午前中相談をいたしたのであります。さらにこの問題は、政府はもうすでによし惡しを言いながらも、一應ともかく政府予算案を決定し、法律案も決定して、議会に提出して、あとはかかつて國会の皆さんの審議に依存するほか方法がなくなつたので、この知事会議全体は、今日あげて國会方面の関係部署に事情の開陳を申し上げて、御了解を得、御協力を得るということをいたすために今日参り、その結果をもつて、明日十時よりさらに集まりまして、問題になつておりまする重要な点に対する態度について、それぞれ決定をいたそう、こういうような段取りになつておるのであります。法案の具体的なものについての点は、ただいま生田氏より申されましたので、重複を避けまして、説明を差控えまするが、要は、さきに申しましたような、地方に自主性をもたせること、この固定した、ただくれてやるというやり方の財源でなく、自主性をもつて処理できる財源を認めて、そこに自治團体の自主財政の光明の一歩を認めていきたいということが主眼であります。どうかそれらの点を御了承願いまして、國会の御審議にあたりまして、十分われわれの意見をお取入れ願いたいと思うのであります。  なお最後に、少し端的な言い方で失礼ではありまするが、今回國会の予算を、殊に大藏省から出しておりまする税法の改正を見てみますと、所得税においても相当軽減があります。法人税においても軽減があります。殊に私はけげんに思うのですが、物品税まで減額をして、十数億の金を出しておるようであります。こういうような、一面に國家の税制においては減税をしながら、地方自治体の税制においては、減税をいたしておるものは一つもございませんのみならず、ただいまもお話がありましたような、昨年の当初におきましては、わずかに百円でありました住民税を、一千円にしろというようなことになつておる。家屋税、地租においても同様でありまして、わずかに二十四とか四十とかいう率のものを、一度に二百、二百五十に上げるというようなことになつております。かようなことは、実際自治体の責任者として、少し事務を運営した者から見ますれば、これが徴税上、今日の情勢下においていかに困難なことであるか、さようなことが全体の自治の氣持を破壞し、また社会の空氣を撹乱するかということは、およそ考えられなければならぬとわれわれは考える。と同時に、タバコ、酒の消費税を二〇%地方へよこせということが、何ら税法上の矛盾はありません。この税法上の矛盾のないことを、私がこまごまと申し上げることはむだでありまして、これは税制、財政の專門家でありまする神戸教授から、はつきりとかつての会合に御説明を申し上げた機会があつただろうと思いますが、神戸博士の説明をもつていたしましても、酒、タバコに関する地方消費税を設けることは、何ら税法の違反でもありませんし、税法の矛盾でもございません。われわれはその点ぐらいのことは、これを認める際に考えずに認めたのではないのであります。この点について今なお何か議論があるといたしますれば、われわれははなはだ不可解だと考えるのであります。そうしてかようなものこそ、その率をきめてまいりますると、世の中の需要、あるいは價格の変動によりまして、自然地方團体の税收入というものにも幅ができてくる、ゆとりができてくる。物が高くなり、酒が高くなり、あるいは発行高が多くなつてきて、自然その賣上げが多くなるということになりますれば、それは同時に物價騰貴というものが地方自治團体の財政に響いてきますが、そういうものによりまするゆとりの税收入もまたおのずからはいつてくるのであります。かような社会事情、経済事情に即應して、幅のある、收支の均衡のできる、ゆとりのある税源をもつ場合においてのみ、初めて地方自治政というものは自主的に運営ができるのであります。これを何百億何千万円と、こういうふうにぴたつと限定をして、分與税なら分與税でぴたつと年度の初めに、かりに今三百六十億なり三百八十億なりにおきめを願つて、これを各府縣に何十億か何百億かお配りを願つても、國民経済の事情が固定をいたしておりません限りにおいては、そこに制限、不自由ができてくる。こういうものを、その実情に感じて修正をしてもらおうと思いまして、大藏省に談判すれば、これは談判をするだけでも二箇月や三箇月かかつてしまう。そのずれの間に結局災害復旧の工事費も拂えなかつた職員の給料の拂えなかつた、巡査や教員の給料も抑えなかつた、こういうようなことで、むだな鬪爭も起つてくる。こういうようなめんどうな、ずれが起きないようなことを、地方財政においても考慮することは、國家において考慮されておると同様でなければならぬ。こういう点においてわれわれははなはだあきたらないものがあるのであります。私は國会に対しまして、國家の財政と地方の財政とを一体として、一應再檢討を願つて、両方に都合のよいような税制、財政の決定を願えれば、この上もない仕合せだと考えまして、今日陳情に上つておりますが、さいわいに数縣の知事が見えておりますので、一、二知事の意見を述べさしていただきますれば、たいへんありがたいと思いますので、委員長によろしくお願いいたします。
  84. 松浦榮

    ○松浦(榮)委員 私は今回現われました地方税制財政の案につきまして、いろいろな不滿な点がありますので、その点については先般も委員会においてるる申し述べたところでありますが、第一大藏省がなお中央集権的な、なわ張り的な、特に地方團体に責任を轉嫁するような、ただいま安井さんからお話なつたように、その頭脳の切替えがまだ大藏当局にできておらない。そういう構想のもとに、この税制、財政の案を見まして、先般地方財政委員の方々がやめられ、その結果にもかかわりませず、この法案が現われてきましたので、先日私は野溝國務相に対して、この案は一度撤回して、そうして委員をつくり直し、その上で十分に審議をやり直して、委員会にもつてきてもらつたらどうかということを質問したのでありますが、國務相は、地方財政委員会というものは單なる補助機関である、内務大臣に代る補助機関のようなものである、從つてその審議は何ら拘束される必要がない、内閣総理大臣が地方財政委員会から出したところの案をどういうふうに訂正しようと、それは一向差支えないという御答弁であつたのであります。しかし私はその際、地方財政委員会というものは法律的に解釈すればそうであるかもしれない、しかしながらこれを政治的、社会的に見るならば、辞職をしてまでこの案に反対されておるということについては、そこに非常な無理がある、その無理を通してまでこの委員会に案を提出されるということは、われわれは責任上これをただそのまま審議するわけにいかない、こういうことを申したのであります。しかしながらどうしても國務相としては地方財政委員会の性質は、何らこの案に対して拘束をもつものではないからして、ぜひこれを審議してほしいというお話でありました。野溝國務相の立場としては、私はやむを得ないと思うのであります。それは野溝國務相は一面地方財政委員長である。從つて財政委員会の立場もある。それからまた総理大臣の補助機関でもあるという立場におられますので、両方の間に挾まつて非常に苦しんでおられると思うのであります。それでありますから、私はこの際総理大臣の御出席を願つて、そうしてこの案に対する態度に関しまして、すなわち一遍撤回して、それから審議をやり直して持つてきてもらうということについてお聽きしたいのでありますが、総理大臣をきのうからおいでを願いたいと思つて係りの方に申し出ておりますけれども、なかなか時間が許せないと見えておいでになりませんが、委員長から正式にひとつこちらへ御出席願つて、はつきりした御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  85. 小暮藤三郎

    ○小暮委員 議事進行について申し上げますが、ただいま東京都知事から御紹介がありました府縣を代表している知事の方の御意見も、この際お聽取りを願いたい。
  86. 坂東幸太郎

    坂東委員長 わかりました。
  87. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 私はみずから発言を求めて、松浦君に対する疑義の点を解いておきたいと思います。  まず第一点は、あなたは昨日の私の答弁に対して、地方財政委員会は補助機関であるというようなことを言われておりますが、私は補助機関というような言葉を言つたことはありません。速記録をごらんください。  なおもう一つの点は、あなたは地方財政法と地方税法との混同しておるのじやないかと思います。地方財政法につきましての案は財政委員会の案でございます。その点をよく御檢討おき願いたいと思います。
  88. 坂東幸太郎

    坂東委員長 なお諮りいたしますが、今ここに府縣知事諸君がおられますので、このうち一名を参考人として出席を願つて、その意見を徴することはいかがでしようか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  89. 坂東幸太郎

    坂東委員長 さよう決定いたします。
  90. 門司亮

    門司委員 昨日この税法を審議するにあたりまして、大藏大臣の出席を要求しておつたのでありますが、それに対して委員長はどういうふうにお取扱いになつておりますか。きようおいでを願えますかどうか、その点を先にお伺いしたいと思います。
  91. 坂東幸太郎

    坂東委員長 実はもちろん要求しています。今正式に呼んでおりますがまだおいでにたりませんけれども政務次官荒木萬壽夫君が來ております。  それでは茨城縣知事の友末君を参考人としてここに出席を願つて、その意見を徴します。友末君。
  92. 友末洋治

    ○友末參考人 茨城縣知事の友末洋治であります。先ほど安井東京都知事から詳しくお述べになりましたので、それに新たに附け加えるものは実はあまりないのでありますが、ごく最近において茨城縣におきましては財政調査委員会を開催いたしまして、この問題について種々意見を鬪わしたのであります。その状況の一端につきまして、御参考のために申し上げたいと思うのであります。  今地方で一番悩んでおります問題は、今後の歳出をどういうふうに抑えていくかという問題であります。すなわち給料の面におきましては、今後三千七百円ベースに引上げられるのであります。さらに物價の改訂によりまして大体七倍に引上げられるのでありますが、これを基礎にいたしまして歳出の面を種々当つてみますと、相当厖大な歳出に相なるのであります。一面歳入の面につきましても、いろいろと檢討を加えておるのでありますが、現在政府が提案されております案によつて考えてみましても、今後の地方の歳出を賄いますがためには、赤字になけまして、從來やり來つております各種の事業を打切るか、あるいは縮小せざるを得ないというような大体の見当になつておるのであります。しかも歳入の面において地方で一番心配をしております問題は、実は起債の点であります。政府としては二百七、八十億の起債を見こんでおられる模様でありますが、從來地方の起債の消化状況を見てみますと、これが完全にまいつておりません。起債のわくはもらいましても、実は資金化が容易でないのであります。しかも從來よりもかなり起債のわくを引上げられておるのでありますが、私どもの見当といたしましては、この消化はおそらく大体半分くらいしか実際の資金化は困難ではなかろうかというふうに、大体の見当をつけておるのであります。なお目下地方で一番やかましい問題は、住民税を千円に引上げるという問題であります。かような大幅な引上げは、縣ではとうてい賦課することはできないという意向が、非常に猛烈に強まつております。さらに地租あるいは家屋税の税率の大幅な引上げにつきましても、非常に大きな問題になろうといたしております。また一面電氣、ガス税につきましては、從來通りかようなものはやはりかけては困るという意見も一部にはあるような状況であります。今後政府の案通りにいたしましても、なかなか收支の均衡はとれない。しかも政府の案通りの実行ができるかどうか、おそらく実行は不可能ではないかというふうにわれわれも考えておりますし、財政調査委員会等におきましても実はさような見透し、考え方を強くもつておるのであります。そこで一番政府案に反感をもつている問題は、この案では実行不可能だということと、それからあくまでも地方の財政というものは中央集権化から一歩も抜け出ることができない。何とかして地方の財政の自主化に役立つような税源を確立しなければならぬそれがためには酒、タバコの消費税であるとか、あるいは從來府縣税でありましたところの所得税附加税、これは從來はとつてつたわけでありますが、それらのものをもとに返してもらいたい、かような氣分が非常に強いのであります。どうかこれらの点を十分お含みの上、國会におきまして今後の御審議に御協力をいただきますならば、地方といたしましてはまことに仕合せに存ずる次第もあります。地方の偽らざる実情を申し上げまして御参考に供する次第であります。
  93. 坂東幸太郎

    坂東委員長 先ほど門司君の質問にお答えいたします。北村大藏大臣には出席を要求いたしましたが、予算委員会関係できようは出られないそうですから、明日は絶対に出席を要求いたします。
  94. 松野頼三

    ○松野委員 ただいま各地方財政委員及び地方長官の意見を徴しましたけれども、さいわいにして大藏政務次官が御出席ですから、ただいまの大藏省関係の御意見をお答え願えればよいかと思います。
  95. 荒木萬壽夫

    ○荒木政府委員 ただいまの各地方長官の方々の御意見は十分に拜聽いたしました。それぞれ具体的な問題についてこの委員会での御質問がございますれば、お答えを申し上げたいと思いますが、私は今の地方長官各位のお話は謹んで拜聽いたしておればよろしい、かように考えて拜聽しておつたわけであります。当面のお話関連しますお答えといたしましては、政府としては地方財政委員会等とも十分お打合せいたしまして、政府案としてお出ししておるのでありますから、案そのものについての御審議にはお答えせねばならぬと思つておりますが、ただいまの御説明は謹んで拜聽いたしたということで御了承いただきたいと思います。
  96. 松野頼三

    ○松野委員 この案自身についての審議をする前に、この案が出るまでの過程に大きな疑問があるし、また質疑があるのでありますから、この案の説明だけでは本日はわれわれは滿足できない。もつと根本的なところに、ただいま片一方から多数の証人なりあるいは委員が御証言されましたが、案自身を審議する前においてこの疑問を解かなければ、この案の審議が進まないという状況でありますから、大藏政務次官の、この案についてならばお答えするというだけでは、はなはだどうも不都合ではないか。また審議上におきましても特に忙しい御審議ならば、前もつてここが根本的ではないかという大きな意見が出ておるのでありますから、大藏大臣をお呼びしても來られない状況ですから、さいわいにして次官御出席のとき、殊に緊急を要する法案ならば、次官において御答弁を願いたい、この趣旨において私はもう一度お願いいたしたいと思います。
  97. 荒木萬壽夫

    ○荒木政府委員 強いてへ理屈を申し上げるわけではございませんので、各地方長官方のお話は、本委員会委員の皆さまの國会における御審査の参考として御聽取に相なつたものと心得ております。從いましてただいまのお話をお取入れになりまして委員の各位からそれぞれ御質問がございますれば、お答え申さねばならぬ、かように考えているという趣旨を申し上げたわけであります。
  98. 松野頼三

    ○松野委員 それでは私の質問といたしましてあらためて申し上げますが、ただいま記憶いたしておりますところの、酒、タバコの賣上税の一割あるいは二割を地方税に委讓してはならない、あるいはできないという理論を一つ、もう一つ地方債の不安をいかなる理屈において、いかなる根拠において、いかなる数字をもつて解消し得るか、この二つをそれではまずお尋ねいたしましよう。
  99. 荒木萬壽夫

    ○荒木政府委員 酒、タバコ消費税につきましては、数次にわたつて懇談会等が行われまして論議いたされたのでございますが、要するに地方の財政も苦しいのでございますが、中央の財政も苦しい。のみならず、租税もしくは專賣益金の関係におきましては、中央財政と地方財政を通観いたしまして、適当なところで税率あるいは專賣價格を決定せねばならない、さような見解から、地方でさらにこれに消費税をかけていただくことは、租税もしくは專賣の建前上適切でない、かような結論になつて、賛意を表しかねたと承知いたしております。  第二点の起債の問題でありますが、これは今までの実績に徴しまして、先ほどお話がございましたように、なかなかむつかしいことだと存じます。二百七十億の起債が、はたしてタイムリーに起債のわくが決定し、認可はいたしましても、資金化するということがそう容易でないことは、十分に想像つくのでございますが、何とかしてあらゆる中央におきまする御協力もいたしまして、予定通りの起債が資金化するようにいたしたいということだけははつきり申し上げ得ると存じます。具体的に申し上げますと、今まで預金部資金は、いずれかといえば國債消化を第一義として運用されてまいつたのでございますが、地方財源として起債にまちます限りにおいては、この預金部資金の運用方針を、國債中心から地方債中心に変えるという建前で運用しようと思つておる次第であります。おそらくこれによりまして二百七十億の大半、百七、八十億は消化し得るのではないかという見当を立てております。さらに残りの百億くらいは、どうしましてもこれは一般市中銀行引受け、一般の資金にまたざるを得ないのでありますが、それにつきましては政府と市中銀行團との間に話合いがございまして、今後の市中銀行に期待し得ます資金の貯蓄増加高の少くとも三割五分見当は、國家財政及び地方財政の資金の需要を充たすように運用しようじやないか、そういたしましようという意味合いにおいて商談が成り立つておるのでありまして、その預金部資金及び市中銀行の資金と合わせまして、それでも初めに申し上げましたようにそう樂ではないと存じますけれども、あらゆる努力をして御期待に副わねばならぬと考えている次第でございます。
  100. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 政府においては所得税の附加税を地方税の税源としてやらせるというような考えはないかどうか。なお所得税は、御承知通りこれは所得のあつたものから租税の負担をさせるという、税としては一番理想的な税である。今度政府は所得税の税率も十分引下げ、現在の所得税におきましても申告税になつておるので、結局税率を引下げれぱ申告税は理想的に必ず正直に申告するということは当然であるのでありまして、現在の所得税法の税率も幾分引下げておるようであるが、これをもつと引下げても政府財源には何ら支障はないというようにも考えられますので、所得税に対する税率を幾分でも引下げて、これに対しての附加税を地方税として地方に代行させるというような考えをもつておみかどうかを一應政務次官にお聽きします。
  101. 荒木萬壽夫

    ○荒木政府委員 ただいまのところそういう考えはもつておりません。今後の檢討にまちましてどういう結論になりますかは別としまして、さしあたりはさような考えはもつておりません。
  102. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 先ほども茨城縣知事からも所得税の附加税の問題に対して要望もあつたようでありますが、租税はあらゆる税目を並べたといたしましても、結局所得税一本でも租税の公平な負担ということは期し得られまするので、所得税に対して附加税をするということが一番租税の國民に対する負担の公平、いわゆる租税力に対して負担をかけるということが、一番健全な方法であるというように考えられますので、政府は税の本質というものに対して十分檢討をされる必要があるのではないかというようにも考えられまするので、地方財政の分離という面から、いろいろな地方税を創設いたしておるのでありまするが、第一に申しましたような負担の公平というような面から考えますれば、所得税の附加税が一番いい例である、かように考えられるのでありまするが、これに対してなお研究する考えがあるかどうかを伺いたい。
  103. 荒木萬壽夫

    ○荒木政府委員 地方自治法が施行いたされまして、從來の自治の考え方がはつきりしたという意味において、またそれを通じまして、日本の今後のあり方が実質的に内容が充実していくだろうということは私もさように存ずるのでありますが、同時にそれを裏づけるべき財政が確立しなければ、これまた地方自治の面目もどこかへ行つてしまうということもよくわかるのであります。さような考え方からいたしまして、これまた先ほどお話も出ておりましたが、地方分與税分與金制度のごときものが、地方自治法のまともな考え方からいいまして必ずしも適切なよき方法とも考えません。しかしながら今非常に混乱しておりまする國全体の経済状態、國の財政そのものも地方財政もいわば混乱のさなかにございますので、ほんとうに理想的に申しまして、かくあるべしとする線は概念的にはわかつておりましても、実行困難だということもございましようし、いろいろな関係から多分に御不滿の点もあることも想像にかたくないのでございます。今お話のごとく所得税の附加税の制度やら、あるいはその他の独立税につきましても、今後の檢討にまちまして順を追つて理想の状態にまで迫ることの努力は惜しむべきではない。そういう見地に立ちまして、地方税制も、あるいは地方の税制と一貫して考えました中央地方の財政計画を今後立てていくべきものと考えております。
  104. 坂東幸太郎

    坂東委員長 ちよつと報告事項があります、井上知治君の補欠で本委員会委員になりました原田憲君を御紹介申し上げます。
  105. 原田憲

    ○原田委員 民主自由党所属の原由でございます、どうぞよろしくお願いいたします。
  106. 大澤嘉平治

    ○大澤委員 大藏政務次官答弁によりますと、所得税の附加税はまだ考えておらぬ。なお先ほどの松野委員の酒、タバコの地方税委讓の点も考えておらないというような答弁でありますが、そうしますとただいま全國の地方長官の意思、あるいは町村長の代表の意思、全國の市町村長の意思というものを政府は全然くみ入れないので無視して本案を國会に提出する、またこれを審議せよというような御意見のようにうかがわれますが、かように政府地方財政あるいは地方税制の問題に対して考えておられるとするならば、われわれ國民の代表としてこれを審議する上は、十分政府の眞意をもう一度大臣に聽かしてもらい、大臣の眞意を檢討し、あるいは総理大臣の眞意を檢討した上でなければこの審議を進めることはできない、かように考えます。
  107. 坂東幸太郎

    坂東委員長 明日は絶対に出席するように要求いたします。千賀康治君。
  108. 千賀康治

    ○千賀委員 地方町村長諸君からの陳情に、出先機関は絶対に廃止してこれを地方行政機構の中に組み込んでくれ、並びに六・三制の経費全部は完全に國庫負担でやつてくれなければとても地方財政は成立たない。こういう二方向の陳情が毎日はがきを見ることができないほどたくさんな数でまいります。そこできようはさいわいこの地方團体から代表として財政委員会に選ばれた方々がおられますので、お伺いをいたしますが、先ほど二千億に地方財政を切詰めた、これが最小限度である。これは地方の團体からはあまりにも委員会地方に冷た過ぎる措置であろという叱言を受けておるということを言われましたが、その二千億は、六・三制の経費というものは今地方の方が陳情してくるように、これはまつたくベースの外において計算したのが二千億になつたか、また地方出先官憲というものは悉く廃止をされたと仮定をして、その出先官憲の機構をもなお地方廳に含ましめてこれを一緒に経営していく経費も見積つて二千億になるのか、その点を伺いたいと思います。  次は特にこれは委員長に申し入れるのでございますが、ただいま野溝國務大臣が松浦君に向つて地方財政地方税制とは違うのだ、あなたの言うことはこれを混同しておるということを指摘するやの言辞をなすつたのであります。地方財政は言うまでもなく歳出歳入両方にわたり、また國家の財政ともにらみ合わせての運営についての法律でございましよう。税制というものは單に歳入の中で税金の取立に関する措置について取極めようという法律案でございます。違うといえばもちろん違いましよう。財政が大であつて税制はその一部分のベースに限られる法律であることは、もちろん言うまでもないのでありますけれども、財政、税制どちらを言いましてもよく似た言葉で、これは言葉を使いながら、さような意味がわかりつつも顛倒して使う場合もいくらでもあることはもちろんでありますが、また税制と言つてもこれは財政の一部分であるというようなことで、はつきりその使う場所区別せずして使つても、これは大したミステークではないと思うのであります。昨日の松浦君の質問も私は聽いておりましたが、別段政府に対してさほど挑戰的な敵意を持つているというような言葉で應酬もされておらなんだのでございますが、今日取立てて野溝國務大臣が松浦君に対してかような些細な点に関して挑戰的な言辞を弄するということは、まことにこれは委員会政府との間に溝を深くするものでありまして、私はさような点はどうかと思う。それで野溝國務大臣がいかなる理由をもつてかようなことを言われたかわかりませんが、少くも挑戰的な氣持があつて、かような言辞を弄するなら、われわれは再び考え直して、政府に対して挑戰的な氣持になり直そうと思います。私は特に野溝君のおるうちにこの質問をしたいと思つておりましたが、退席せられたので、委員長から私のこの質問意味を一應話していただきまして、はたしてどこに意思があつてかような些細な点まで、議員の言論に対して挑戰的な言葉を用いられたのか。これを明瞭にされたいと思います。これは委員長にそのお取計らいを一任したいと思います。
  109. 坂東幸太郎

    坂東委員長 ただいま千賀君の後段のお説、私もさよう感じております。松浦君と野溝國務大臣との見解の相違、あるいは食違いかもしれませんが、あの点につきましては、十分に討議する必要があると思いますから、明日野溝君に來てもらいまして、十分に討議をしていただきます。  なお明日大藏大臣が出ますからきようはこの程度にしまして、あすは十分質疑あるいは討議をお願いしたいと思います。いかがですか。
  110. 原田憲

    ○原田委員 先ほど大藏政務次官の話では、この地方税法を改正する法律案提出に際しまして、地方財政委員会にも話しかけたということを言われておるわけでありますが、今日安井知事あるいは生田町村会長、多数の地方長官などが來られまして陳情されております。この間に相当話しかけたと言われますが、われわれは了解に苦しむところがありますので、この際いかなることの話しかけがあつたのか、地方町村会側からお伺いしたいと思います。
  111. 生田和平

    ○生田參考人 委員会の組織は御承知通り五名でありまして、五名の多数決であります。しかし実際上は多数決でやつたことはほとんどございません。從いましてなるべく委員長委員会を代表して政府と交渉をやつております。その交渉の間において、内閣ではこういうふうな方針でやつておる。つまり安本調停案が出まして、こういうような結果になりそうだということでありました。しかし私は即座にそれは反対だ。安本調停案なるものは実質的にわれわれの主張を抹消しておるものである。これは全然同意はできぬ。そこで委員長に忠告しておくが、もしも委員長が独自の立場で、こういう案に同調しても、われわれは承認できないということはあらかじめ申し上げておく。こう言つてある次第でございます。またついでにどなたか御質問がありました出先機関の費用の問題でありますが、これは大藏次官にお尋ねかと思いますが、もし私が答弁してよろしければ説明いたします。
  112. 坂東幸太郎

    ○坂東委員 町村側の立場上、その説明をお許しいたします。
  113. 生田和平

    ○生田參考人 出先機関の費用は、負担区分の問題を取入れて、財政委員会の方で研究をいたしまして、國の事業費は國が出す、地方の事業費は地方が出すということをはつきりきめております。そこで出先機関の費用はほとんど國の負担になつております。六・三制の費用の負担町村側で調査いたしますと、昨年の千七百円ベースのときに大体六百億円と踏んでおります。ところが文部省は三百億円だと言つているのであります。ここに三百億円の開きができている。なぜその開きができておるかと申しますと、昨年度における六・三制の費用は、坪当り五千五百円と文部省は見ております。われわれの方では大体一万円かかると見ている。ここに大きな食違いがある。実際われわれが実施いたしましたのは、やはり坪当り一万円内外でできております。多小内へはいつたところもあるかもしれませんが、外へ出たところもあるんです。坪当り一万円ぐらいかかつている。政府の方では坪当り五千五百円、從つてその見積りは総体で三百億、われわれはこれを六百億と見ております。私は常にこのことについて論議をいたしているのでありますが、政府は半分だけを國庫補助だと言つている。しかしこれは実際はうそなんです。坪当り五千五百円と見て、それに対して二千七百五十円を補助している。けれども実際は一万円かかつているので、あとの七千二百五十円は地方に押しつけている。半分補助している、半分補助していると、口では言つているが、実は三分の一しか補助していない。これをあなた方はよく御記憶を願いたいと思います。政府は半分だ、半分だといつも言つている。しかし実際は今まで半分はしていない、三分の一しか補助していない。残りの三分の二に対しては貸すのであるが、これについても郵便局の貯金がなければ金は貸してくれない。なおかつその不足分は、われわれ地方民にいわゆる寄附を強要している。村々に割りつけて、地域地域に割りつけて、ほとんど租税と同様にして寄附を集めております。その代りに内閣から六・三制に対しては寄附を集めてはいかぬという指令が一回來た。するとどの金で地方学校を建てていいのかわけがわからぬ。なお本年度の起債は、六・三制の分は二百八十億のうちにはいつておじます。さよう御承知を願います。
  114. 千賀康治

    ○千賀委員 六・三制の費用を政府が三分の一出しながら、半分出しておると言つている。それには地方では不本意ながら地方の有力者から寄附を集めて、その寄附で足らざるところを充足しているから、今までやれてきたんだということは、私ども承知をいたしております。そこで政令を出してその六・三制に対しては、寄附を集めるべからずということは、一應は合理的なようでありますけれども、しからば現在ここに盛られました程度地方財政を與えるとするならば、今まで寄附に頼つてつたものにかわるべき財源がどこにあるのか。私どもは探すことができませんが、あなた方はもつと專門的に、政府とはかような点も折衝しておられたのでございましようが、政府は寄附を政令で禁止した後、どの財源から六・三制を運用していけという指示をあなた方に與えておるか示唆を與えておるか、この点につきまして詳細お伺いしたいのであります。なお政府の言うところでやつていけようとお考えになるのか、とてもやれないのか。やれないのならば、どういう理由でその財源が逼迫してやれないのか、お伺いをしたいと思います。
  115. 生田和平

    ○生田參考人 地方にただいま申し上げますような過重な負担をかけておりまするから、現在でさえ六・三制に苦しんでおる。おそらく町村が苦んでおるのは、六・三制の負担以上のものはないと思う。御承知のように米の供出が非常にむずかしい。これがために町村長が大分やめております。その次に何でやめるかというと、六・三制の金に行詰つてやめておる。おそらくそれは全國で数百人だろうと思う。さように六・三制というものが、地方では財政的に一番苦んでおる。これをどうしたらいいかということになると、われわれは全額國庫負担を終始一貫要求しておるのです。いわゆる義務教育費は優先的に國家が支出すべきものなりという原則を立てたいと思つております。もとよりわれわれは國家財政の窮乏の際に、どうしても全額もらわなければならぬとは申さぬのです。ただその原則を一應きめてもらいたい。國家財政の緊迫した情勢下におきましては、われわれも相当の負担をしても差支えないとも考えております。最近一箇月くらい前に文部大臣を訪問して、この問題について論議いたしておりましたが、憲法二十六條に、義務教育は無償ということが書いてあります。この無償という意味はどういうのかと文部大臣に聽いてみますと、それは授業料をとらないのだ、こう言われるのです。小学校の生徒から授業料をとらないことを憲法に規定したのですか、こう反問してみると、しばらくして、いやこれは思い違いだ。國の中央の学校の費用は中央が出す、國が出す。地方学校の費用は地方に出してもらいたい。しかし今地方は非常に財政が困つておるから、それを手傳う意味において半分出すのだ、こういう答弁なんです、われわれは実に意外に思つた。かような文部大臣の考え方で、表向きは半分であるが、実質は三割だけを國が補助して、七割まで地方で出しておるのだ。私は憲法学者じやありませんから、憲法がいかなる意味で書いておるか存じませんけれども、おそらくこの無償という意味には深い意味が加わつておると思うのです。單に生徒から授業料をとらないために書いたのではない。おそらくは義務教育費は國が優先的に支拂うということを暗に書いたのではないかとただいまも思つております。また地方の実際の負担力からいたしまして、どうしてもこれを全額國がもつてもらいたい。全額國がもつという原則をきめて、國家財政が苦しいのでありますから、地方でも相当の負担をしてよろしい、こういう建前をとつておる次第であります。私は國会におきましても、われわれの考えを御採用くださいまして、國家負担の振合いをどうしてもかえていただきたいと思うのであります。しからずんば町村の財政はいつまでも窮乏の一途を迫るものと確信いたしております。もしもお尋ねがありましたら、またお答えいたします。
  116. 笠原貞造

    ○笠原委員 簡單にお尋ねいたします。参考人といたしまして、もと地方財政委員会委員であられたお二方がわざわざお見えになつておりますから、一点お尋ねいたしたいと思います。それは地方財政委員会の方で、案を見ますると、三百何億という事業税が決定されておるのでありまするが、これにつきましては最近非常に医師とか助産婦、こういう方面から猛烈な反対の運動が起きてまいつております。私どう実はこの案をまだ受取つたばかりで、これから審議するので、この点は非常に参考になりますが、医師や助産婦、歯科医師、弁護士、会計士というような方面に対しまするところの事業税の問題につきまして、地方財政委員会におきまして、この案を決定なさるまでに、いろいろ御審議つたと思うのでありまするが、その御決定をなさるまでのそれに対しまする考え方をひとつ御説明願いたいと思います。
  117. 生田和平

    ○生田參考人 医者に課税をしてはいかぬというような議論ば從來からもよく聽くことなんです。また助産婦にしてもそうです。あるいは弁護士等、いわゆる自由業者は從來から課税しておりません。しておらぬということは何か理由があるからしておらぬのです。しかじ現在地方財政が非常に苦しくなつておりますし、また実質上におきましても、医者、弁護士は相当金をもうけていると思うのです。それで地方負担に参加するということは私は適当だと思いまして、この案を立て、自由業者に課税をすることに同意をいたしました。
  118. 笠原貞造

    ○笠原委員 医師や助産婦という人の反対理由を見ますと、大体は自分たちが出すのではなくて、結局は轉嫁されて、一番弱い病人とかそういう者に轉嫁されていくんだからいかないのだ。また私ども檢討いたしましても、轉嫁される事実は明白だと思うのであります。それで今御説明を聽きますと、かけなければ一番いいのでございますが、御承知通り地方財政も逼迫していることも明白でありますから、そういうような建前で地方財政には適当な財源がないからやむを得ずこういうものを設けるというようなお考えをもつて入れたというように了承していいですか。
  119. 生田和平

    ○生田參考人 そうです。
  120. 松浦榮

    ○松浦(榮)委員 出先機関の廃止につきまして昨日新聞に発表になりましたが、その問題につきまして東京都知事の安井さんから御感想を聽きたいと思います。もう一つは、安井長官でなくてもいいですが、簡易保險積立金を預金部から分離して地方債、借入金等に融通してもらいたいという陳情が各町村からたくさんきております。これに対して町村側の御意見をこの機会にお聽かせをいたたきたい。それから最後にいろいろ審議につれまして、殊に税制につきましては、政府側も委員会側も大体内容を盡した人もあり、われわれとしても大分盡した点もあるので、今後私ども考えとしては審議の順序としても、どうしても國務大臣の御出席を願わなければ、この重要問題を決するわけにいかないと思います。それでありますから、今後ぜひとも総理大臣、大藏大臣、文部大臣その他地方財政委員長たる野溝國務大臣、その他関係大臣にぜひとも出席してもらつた上で審議を願いたいと思います。委員会側も政府側も双方が納得の上ででき上つた案でなければ、私どもはこれを通すわけにはいかない、少くとも委員たる私といたしましては責任を負えない。もしそういう態度でおられますならば、今後私は出席しない。委員を辞職してもかまわぬと思います。
  121. 坂東幸太郎

    坂東委員長 本日はこの程度にいたしまして、明日午後一時から開きまして、各関係大臣の出席を求め、十分審議を遂げたいと思います。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時三十一分散会