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荻田政府委員 地方財政法を逐條的に御説明申し上げます。第一條におきまして、この法の目的を
規定したわけでございますが、この
法律の目的はすでに当初
提案理由の説明にもございました
通り、
地方公共團体財政の
運営、これに対しまする基本的原則を定める、もう
一つは國の
財政と
地方財政との
関係に関しまする基本的な原則を定める、この二つをもちまして
内容としておるわけでございます。で御
承知のように、今後この
財政の
運営というよなことにつきましても、單に
政府なりあるいは
地方團体だけの
責任においてやるべきでなく、あらゆる行政が國家の最高意思である
國会で定められた方針によ
つて運営されなければなりません。
從つてこの
財政法は
國会の定められまする、つまり
地方財政の
運営に関しまする基本原則、國と
地方財政との
関係に対しまする基本原則、これがこの
財政法をつくりましたねらいなのであります。
次に第二條におきまして
地方財政運営の基本を定めております。ここに書いてありまするように、健全な
運営に努めなければならぬ。これはわかりきつたことであります。それから次に國の政策に反したり、または國の
財政もしくは他の
地方公共團体の
財政に累を及ぼすような施策を行
つてはいけない、いかに
地方に自治が與えられたとはいえ、日本の
地方自治はいわゆる連邦國家のように主権が別にあるという
観念ではない。あくまで日本一体としての
地方自治心のでありまするから、その
地方團体の行いまする
財政も、國の政策に反して、あるいはそのために國の
財政やほかの
地方團体の
財政に迷惑をかけるようなことはいけない。それから次の第二項におきまして、國の側から
地方財政を扱うのについて、國と申しますのは、つまり
中央政府側から
地方財政を扱うのにつきまして、
地方財政の自主的でかつ健全な
運営を助長することに努める、いやしくもその自律性を損つたり、あるいは
地方公共團体に
負担を轉嫁するようなことを行
つてはいけない。
次のはさらにこのような基本原則の細目になるわけでありまするが、第三條におきまして、
予算の編成につきましての注意でありまするが、これは法令の定めるところに
從つて合理的な基準によ
つてその
経費を定める、それから歳入につきましては、あらゆる資料に基いて正確にその
財源を捕捉し、かつ経済の現実に即應してその
收入を算定し、これを
予算に出さなければいけない。
次の第四條におきまして、このできました
予算を執行するに当
つても、
経費の
支出の面におきましては、目的を達成するために必要かつ最小限度の
支出をする、常に濫費を戒ある、それから
收入につきましては、適実かつ嚴正にこれを確保する。徴收する場合、他の不当な勢力に圧倒されて、徴收すべき税を徴收しないというようなことがないようにしなければいけない。
それから第五條におきまして
地方債を出し得る場合を
規定したのでありますが、健全
財政としまして、
地方債を発行するということは、なるべく避けることは申すまでもありませんが、ただどうしても
地方團体として
地方債を発行しなければや
つていけないという場合がありまするので、それを
規定したのであります。ここに一号から五号までございまするが、これは後に申し上げまするが、現在の
地方自治法に
地方債を発行し得る場合を
規定しておりまするが、さらにそれをもう少しこまかく制限いたしまして、
地方自治法の
規定は削除しております。その第一号におきましては、これはいわゆる公営
事業の資本投下に
相当するような
起債、これは
起債によらざるを得ない。それからこれに類似するような出
資金とか貸付金の
財源にするような場合、それから第三号で
地方債の借替えのために要する
経費、つまり
地方債を借り替える場合、條件をかえなければなりませんので、十年の
起債を五年間で区切
つて出すというような場合、五年目にこれを借り替える。それから次の四号が
災害復旧あるいは
災害救助
事業、このような
災害の場合にはどうも
起債によるよりやむを得ないだろう。それから第五号、これが
一般的な
事業に対しまする分でありまして、これについて二つの制約を置いております。
一つは税の
方面から早く
地方債を起そうという場合、地租、家屋税、
事業税、府縣民税、
市町村では
市町村民税、その基本の税源がその標準賦課率あるいは賦課額の一・二倍、つまり二割だけの標準の超過課税をする場合でなければ
起債をや
つてはいけない。この場合申し上げるまでもなく、
起債は最後の手段であるのであります。経常的
経費について事を行うのは当然なのでありますが、どうしてもそれでは
財源が足らないという場合に
起債をやるのでありますから、その場合には二割
程度の制限まで課税を行う。それでもなお足らない場合に
起債に求める。つまりそれで
起債をしようと
地方團体が
考える場合に、多少むずかしくと申しますか、愼重になさしめて、
起債をなるべく避けさせるという趣旨にしたいと思
つております。第二の制約はその目的であります。これはここにありますように戰災復興
事業、学校、河川、道路、港湾等の
公共施設、そのような
建設に充てる場合であります。
第六條におきまして公営企業、いわゆる電氣とか電車とかバスとかガスとか水道、こういうような公営企業につきましては、これは独立採算制を設けるという趣旨であります。
第七條におきまして剰余金の処置でありますが、第一項につきましては、ある会計
年度において出ました剰余金は、これは
地方債を減らすために減債基金に充てる。これは國の
財政法と同様であります。第二項におきまして、公営企業におきましては、この剰余金を
一般会計に繰入れても差支えない。つまりある
程度公営
事業につきまして收益主義を加味するということになるわけであります。
第八條は財産の管理及び処分、これは國にもありますような
規定であります。
第九條以下におきまして先ほども問題にな
つておりました國と
地方との
経費の
負担の区分を置いたのであります。第九條に掲げてありますのは、たとえば
地方公共團体の
議会及び
議会の議員の選挙に要する
経費の
規定でありまして、
地方團体みずからの仕事であるから、このような
経費は
地方公共團体が全額これを
負担する。それから第十條は、國の利害にも
関係すれば、
地方公共團体自体の利害にも
関係する、相互の利害に
関係する
事業、これは國と
地方公共團体とで折半して
負担区分をきめて
負担する。たとえば義務教育に從事する職員に要する
経費、このような
経費は
両方で
負担する。それから第十一條は、これは主として國の利害のみに
関係がある、
地方團体はただその仕事を仰せつか
つておるにすぎない、こういう
事業てあります。たとえば
國会議員の選挙及び
國民投票に関する
経費、このようなもつぱら國の利害に関する
経費、これは國でもつ。第十二條におきましては、これはあたりまえのことのようでありますが、
地方團体が処理する権限のないものです。これにつきましては
地方團体は
経費を
負担する義務がない。たとえば國の機関の設置、維持及び
運営に関する
経費、こういうことをわざわざ書きましたのは、ある國の出先機関をつくるような場合、
地方團体に対して強制的に強い寄附金を求めてくる、こういうようなことを防ぐためであります。
それから次は新たな義務に伴う
財源処置、これは新しく
法律により、あるいは法令によりまして
事務を
公共團体に仰せつける、そのために
財源が要る。こういうような場合にはやはりそのために必要とする
財源についての措置を講じなければいけないのです。これは
從來地方自治法にあ
つたのでございますが、さらにここにも移したのであります。それとともに二項、三項をつけて、これの実効を期するように
考えておるのであります。
從來は第一項のような
規定を書きつ放しでありますので、こういうことが國において破られましても、切捨御免と言いますか、そのままにな
つてお
つたのであります。そこで
地方公共團体はそれに対しまして不服ある場合には
國会に
意見書を提出することができる、そうして
國会においてこれの結末をつけていただく。つまり國と
地方との爭いでありまして、結局裁定するものは
政府では裁定できないから
國会でや
つていただくよりしかたがないということであります。
十四條、十五條は
國庫負担職員
制度の設置であります。これは
從來補助職員というものが
地方にありまして、二分の一とか三分の一とかいう補助を受けまして職員が置かれております。ところがそれにつきましては、第一に補助をやることによりましてその職員の進退行動につきまして國が制約を加える、これは補助金をやるということで自治干渉の機を與えるのでおもしろくありません。また第二に
財政的見地から見ましても、非常に多い、数百にわたる項目にわかれておりますので、たとえば現在のような職員の新興のベースが引上げられます場合、初めに二分の一なら二分の一で
予算を組んでおいても、直ぐ
給與が上りますと、それでは足らなくなる。そうすると一々その項目を
予算修正しなければならない。その結果結局忘れられてしま
つて、二分の一が三分の一にも四分の一にもなるという例が多々ありますので、そういうことのないように、ここに十五條に書いてありますように、こういう職員は定員制を総理
大臣が各
大臣の要永によ
つて一本にまとめてつくる。そうしてその
予算も総理
大臣の所管に属する
予算に計上しておいて、一本に計上する。從いまして現金の交付等もスムーズにいくと思いますので、
地方がいたずらに補助金がこないで
立替えて拂うということがなくなるわけであります。
次は補助金の交付であります。十條なり十一條につきまして國が出すのは、明瞭に
負担金という名前に一應したいと思います。それに対しまして補助金は國が
負担するという義務があるというのではなく、ここに書いてありますように、その施策を行うため特別の必要があると認むるときまたは
地方公共團体の
財政上特別の必要があるとき、こういうものは補助金という名前にして交付したい、
負担金とは区別して
考えたい。
次の
負担金の
支出、これは
負担金についてその
支出方法をどうするかという問題であります。これは
地方公共團体が
事務を行
つて、その
経費を一應
支出しておるものについては、國の
負担分というものは
地方團体に対して
負担金として
支出する、逆に國がそういう
事務を執行しておる、いわゆる國直轄
事業というような場合は、
地方公共團体側から
負担金を出す。
次は國の
支出金の算定の基礎でありまして、先ほども
お話がありましたように、國が二分の一なら二分の一と言いましても、その根拠たる單價なり規模なりが十分なものでありませんと、二分の一が三分の一にも四分の一にもなる。こういうことを防ぐ
規定であります。
次は國の
支出金の
支出方法、時期の問題でありますが、これは現在でも非常に
支出金の交付が遅れて、
地方がそのために歳出現金に困るということがありますので、
支出時期が遅れないように國の
支出金は
支出しなければいけない。第二十條におきまして委託工事、國が
地方に工事を委託するような場合はやはりこの
負担金の
規定を準用する。
次の
地方公共團体の
負担を伴う法令案、これにつきましては、
從來もやはり
地方財政を扱
つておるところと相談をしてやらなければいけないということが
政府部内の訓令で出ておりますが、たびたび注意しておるのでありますが、いまだに実行されてない。
從つて地方財政を所管しておるところが知らないうちに、
地方に
負担をかけるような
法律なり
政令なりが出る。その結果
地方財政が紊乱するということがございますので、今後は
法律をも
つて明確に、
法律なり
政令を、閣議を求める前に、
内閣総理
大臣を通じて
地方財政委員会の
意見を聽かなければいけないという
規定をはつきり置いたのであります。
二十二條は
経費の見積り、つまり
予算の編成につきましても、それと同様なことをいたしたい。
二十三條は國の営造物に関しまして使用料をとる、つまり
地方團体自体の営造物でなく、國の営造物を
地方團体に管理さしておる場合には、それに対する使用料を
地方公共團体がとる、その
收入は
地方公共團体の
收入にする。次は國が
公共團体の財産を使用した場合には、適当な対價を拂わなければならぬ。
第二十五條以下は國からもらいます
負担金の使い方についての制限でありまして、國が
負担金なり補助金を出す場合には、
地方公共團体はその目的に
從つて使わなければいけない、ほかの目的に使つたり、基準以上のことをしたような場合には補助金を返させるとか、減額するということにした。なお半面
地方公共團体が
負担金を出して國に仕事をや
つてもらうという場合に、國がその
通り使わなければやはり
地方公共團体からその返還を請求する。次は同じようなことなのでありますが、配付税の減額であります。
地方公共團体が法令の
規定に違反して著しく多額の
経費を
支出したり、あるいは確保すべき
收入の徴收を怠つた場合、ある税をとらねばならぬ場合に、実行力が弱くてこれをとらない、怠
つてしまつたというような、みずから権利を放棄したという場合には、國は当該
地方公共團体に対して交付すべき
地方配付税の額を減額したり、還付を命ずることができる、ある
程度強い監督
規定であります。
二十七條以下は國と
地方團体との今まで申しましたような
関係を都道府縣と
市町村との
関係に準用したのであります。二十七、二十八、二十九、三十條は大体そういう点であります。
以下附則でございますが、この
法律は七月一日からこれを施行したい、ただ第十四條、第十五條の
規定、つまり
國庫負担地方職員制の設置につきましては明
年度から実行したい。
次の当せん金附証票の発賣、これは
從來金融緊急措置令によりまして、
地方團体——と申しましても、都道府縣がいわゆる宝くじを発行できたのでありますが、この
規定をこちらにも入れまして、この
財政法に基いて当せん金附証票の発賣ができるようにしたいと思います。ただその
内容につきましては、ただいま
國会に提出されておると思います当せん金附証票法の定めるところに從わなければならぬ。
次の三十三條は
地方債を起し得る場合の例外であります。それについて原則は第五條に書いてありますが、当分の間ここに掲げてあるような義務教育年限延長に伴う施設、いわゆる六・三制の学校の建築、
自治体警察の創設に伴う施設の
建設費、
消防の強化に伴う施設の
建設費、これらにつきましては例外的に
地方債をも
つてその
財源に充てることができる。
次は第十條の中に例外的に当分の間はいるという
経費、つまり國と
地方公共團体とが
両方で
負担する、原則的にはこういう
費用は
地方團体自体が全額
負担すべき
経費でありますが、当分の間ここに掲げてありますような義務教育年限延長に伴う施設の
建設費、つまり六・三制の学校建築に対します國の二分の一の
負担金、引揚者の援護に要する
経費、こういうものについては当分の間國と
地方團体とが
負担する。
第三十五條は、北海道に関します特例で、これは十條及び十一條の
規定にかかわらず、当分の間北海道拓殖費の
考えで
從來通り。
第三十六條は、
地方財政委員会の権限、
地方財政委員会は御
承知のように本年いつぱいの臨時的な機関でありますが、その機関のあります間は、この
法律なり、あるいはほかの
地方税法、
地方配付税法につきまして、
内閣総理
大臣の権限が書いてありますが、それに関します
内閣総理
大臣が権限を行使することについて、
地方財政委員会がこれを補佐する補助機関となる。
それから第三十七條は第十條の例外
規定でありますが、第十條によりまして、明確に、
法律をも
つて負担金を定めなければならぬということにな
つておりますが、二十四年三月三十一日まではなお
從來の例による。それまでの間において整理する。
それから三十八條は「
地方自治法の一部を次のように改正する。」この
地方自治法と
地方財政法との
関係が必ずしも明確でないのでありますが、大体
地方自治法は
地方自治に関しまする根本的な
規定でありますから、やはり
財政についても根本的な
規定はこちらに残しておく、それの運用の問題を
地方財政法で
規定する、こういう
考えでありまして、從いまして最後にございますように
地方自治法の方に、こういう一條を入れたのであります。「普通
地方公共團体の
財政の
運営、普通
地方公共團体の
財政と國の
財政との
関係等に関する基本原則については、この
法律で定めるものを除く外、別に
法律でこれを定める。」この根拠に基きまして
地方財政法をつくつたということにな
つております。なおその前に、この
財政法と多少牴触します点を最小限度直したわけであります。三條ばかりありますが、一番大きな点はこのまん中の
地方債の発行の要件を、ここに書いてありますように、
從來は「その
負担を償還するため、普通
地方公共團体の永久の利益となるべき
支出をするため、又は天災等のため必要がある場合に限り」とありましたのを、先ほど申しましたように、第五條のように明確に
規定したのであります。以上簡單でありますが、
地方財政法についての概畧の御説明を終ります。