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三輪説明員 お許しを得まして、
執行法を逐條的に御
説明申上げたいと存じます。
御承知の
通り、三月七日から施行いたしました
警察法は
警察組織法でありまして、そこに掲げました
國民の
生命、
身体、
財産の
保護であるとか、
犯罪の
予防、
犯人の
逮捕であるとか、
公安の維持、その他
警察官の職責をあげておりまするけれ
ども、これを遂行いたします
手段の具体的なものについては何ら触れておりません。そこでこの
法律は、
警察官あるいは
警察吏員が
通常警察法に
規定いたしましたその
職務を
執行いたします場合に、
通常ぶつかりますいろいろな
事例をとらえまして、これに対処する手続の概要をきめたものであります。この
法律の
目的を第
一條に示してございますが、その点を明らかにいたしまして、なおこの二項で、從來ともすると
警察官が
権限を濫用するということで、非難を受ける場合もありましたので、特にここではこの各條に書いてあります
手段を、いやしくも濫用するようなことがないように、嚴重に戒めておるわけであります。
第
一條は、その
目的並びに乱用の禁止を明らかにしたわけであります。
第
二條におきまして
質問のことを書いたわけであります。
警察官等が警羅あるいは立番中におきまして、異常の
挙動その他
周囲の
事情から合理的に判断いたしまして、そこに
通りかか
つた者等が何らかの罪を犯し、あるいはこれから罪を犯すという直前にあると判断せられる、たとえば夜間なり、ごく早朝に大きな荷物を担いで、人の目に触れないようにして歩くような者がありますれば、これなどがその適例でありますが、さような者がありましたときには、これを止めて
質問することができるわけであります。のみならず
犯罪を犯した者でなくても、すでに行われました
犯罪につきまして、あるいはその場に居合わせたとか何かで、その
犯罪の
内容をよく知つていると思われるような者がありましたならば、その者についても停止させて
質問することができる。これが第
二條の一項に
規定されたわけであります。その場合で
質問いたしますことが
通常でございますけれ
ども、ある場合におきまして、
本人に不利であつたり、あるいは
白晝道路の眞中で聽くことが
交通の妨害となる、あるいはその例も少いと思いますが、たとえば猥褻の
罪等の場合に、その
被害者の婦人を
質問をするようなことがあるとすれば、これを人目につくところで聽くことははなはだ善良な
風俗を害する場合もありましようから、そのような場合であるとか、その他
公安を乱すおそれがあるような場合におきましては、当該の人に対して
附近の
警察署なり、派出所なり、
駐在所なりに同行してもらうことを求めることができるのであります。これは実力をもつて連行するというのではありませんで、そこに来てもらいたいということを求めるわけであります。しかしながら、この二つの場合におきまして
質問を受け、もしくは同行を求められた者が、
刑事訴訟に関する
法律、これは現在御
審議中であります。從いまして旧
刑事訴訟法と
刑事訴訟の
應急措置法がこれに含まれますためにこういう書き表わし方をしたのでありますが、この
法律によるかもしくはこの
法律の第三條の
精神錯乱者または
泥醉者、
意識のない人につきましては、これは
警察で
保護いたしまするから、そういう場合以外は
本人の身柄を拘束したりあるいは來てもらいたいと
思つても、いやだという場合には、なおそれでも派出所や
駐在所に連行されるとか、あるいは答えることを好まない、その点については答えたくないというにもかかわらず、なお
答弁を強要されるというようなことはないのである。
刑事訴訟に関する
規定では、
現行犯逮捕もしくは
緊急逮捕、
令状による
逮捕等とございますが、こういうものに該当いたします場合は別でありまして、この点ここに明記いたしたわけであります。第四項では、これも前申しました
刑事訴訟に関する
法律によりまして、
現行犯逮捕もしくは
緊急逮捕、
令状によつて
逮捕いたしました場合には、その者が
凶器等を所持している場合がございまするから、
逮捕いたしましたときに、その
身体について
凶器の有無を調べることができるということを明記いたしたわけであります。これも
逮捕いたします場合のみに限るわけであります。
第三條の
保護でありますが、
警察官等は、これまた異常な
挙動その他
周囲の
事情から合理的に判断をいたしまして、次の一、二と二つあげてありまするが、
精神錯乱または
泥醉のために放つておきますれば
自己の
生命を害しまたは
他人の
生命身体または
財産に
危害を及ぼすというようなおそれのある者及び
迷子、
病人、
負傷者等で、適当な
保護者等を伴わず、
應急にこれを
救護してやらなければならないと思われる者につきましては、
警察署、
病院、
精神病者收容施設、
救護施設あるいは
児童相談所というような適当なところでとりあえずの
保護をいたすという
意味であります。この場合にも、
迷子、
病人、
負傷者等で、
本人がそこに行くことを好まないと言えばそれまでのことでありますが、
精神錯乱者または
泥醉者は、
意識が不明瞭でありまして、自分でその
意思を述べることができないような場合でありまするから、これはその意にかかわらず
保護をするというわけであります。そういう
保護をいたしました場合には、
警察官等はできるだけ速やかにその
家族なり
知人なりに
通知をしなければならない。そうして引取をしていただくことは当然でありますが、その際
家族、
知人等が見つからないときは、速やかにその
事件を適当な
公衆保健もしくは
公共福祉のための
機関またはこの種の者の処置について
法令により責任を負う他の公の
機関、たとえば先ほど申しました
児童相談所とか、
精神病院であるとか、
支拂能力があれば普通の
病院の場合もありますが、
市町村長に引渡したかつこうにして、爾後の療養をさせることもありますが、そういうその後の
措置をとるわけであります。第一項の
規定で、
警察が
保護をいたしまするのは二十四時間を越えてはならないというふうに
制限を受けております。しかしながら第四項に書いてありまするように、
裁判官に
請求をいたしまして、
裁判官においてやむを得ない
事情、たとえて申しまするならば引取先はわかつているが、その
迷い子の親に
通知したが二十四時間内に渡せないというような場合がありましたならば、最高五日間を越えてはならない
限度におきまして、
許可状をいただくことができる。そうすれば引続き二十四時間を越えても
保護することができるというわけであります。しかもそれが
警察に濫用されないように、さらに第五項におきまして、
保護をした者の氏名、住所、
保護の
理由、及び引渡の時日、並びに引渡先を毎週
簡易裁判所に
通知をいたして、そういう点でも濫用を防ぐように注意をいたしたわけであります。
第四條の
避難等の
措置につきましては、非常に
條文がごたごたしておりますが、人の
生命、
身体もしくは
財産に重大な
損害を及ぼすようなおそれのあります、たとえて申しますれば、天災、事変、
工作物の損壊、
交通事故、
危險物の
爆発、
狂犬、奔馬の
類等の出現、極端な
雑踏等いろいろ
危險な
事態をなるベく具体的に書いたわけであります。かような
危險な
事態がありまする場合において、その場に居合わせた者、その事物の
管理者、
関係者等に対しまして、必要な
警告を発し、特に急を要する場合にありましては、そのままにしておくと
危害を受けるおそれがある者に対しまして、その
危害を避けさせる
限度において引き留め、避難させ、またはその場に居合わせたその
管理者、
関係者等に対しまして、
危害防止のため
通常必要と認められる
措置をとることを命じ、またはみずからその
措置をとることができる。いろいろな場合がございますが、要するに一例をあげますれば、
花火見物が極端な
雑踏と
なつて、これ以上橋の上に乘せれば当然橋が落ちて死人が出るというような危険な場合には、そこに行く者に
警告を発する、そしてなおはいつて行く者を引き留めるというような
事態もあろうかと思います。あるいは
狂犬等でありますれば、たまたまやむを得なければその
狂犬を撲殺するというような
措置をとる場合もあろうかと思いますが、そういういろいろな具体的なものを並べましたわけであります。そのような
措置をとりました場合に、
警察官等は順序を経まして、所属の
公安委員に報告をいたします。
公安委員会におきましては、他の公の
機関、あるいは
市町村でありますとかそういう
救護の
関係をやつておりますところとか、あるいは
應急の
復旧等の場合でありますれば、
土木出張所でありますとか、そういうような公の
機関に対しまして、事後必要な
措置につきまして、あるいは勧告をし、情報を提供するとか、そういうような
措置をとるわけで認めます。
第五條におきましては、
犯罪の
予防及び
制止を
規定したわけであります。
犯罪が行われましたならば、これを
逮捕するということは当然でありますけれ
ども、でき得べくんばその
犯罪の行われないうちにこれを止めることが望ましい場合が多いわけでありまして、
未遂を罰する場合でありますれば、その結果が出ない場合でも
未遂罪として
逮捕いたしますけれ
ども、その他の
犯罪につきましては、行われる前に居合わせたならばこれを
警告をする。なお、たとえば喧嘩で
相手を殴りつけてしまうというような現場に居合わせたならば、これを身をもつて
制止をするというようなことができるようにいたしたわけであります。
第六條の
立入でありますが、この第一項といたしましては、前
二條に申しました非常な
危險な
事態が発生して、
生命、
身体、
財産に
危害が切迫したという場合にありましては、その
危害を
予防する、あるいは
損害の拡大を防ぐ、あるいは
被害者を救助するというようなことのために、やむを得ないと認めまするときには、合理的に必要と判断せらるる
限度におきまして、
他人が管理いたしまする
土地、
建物、または
船車の中に
立入ることができるというふうにいたしております。この第二項におきまして、
興行場、旅館、
料理屋、駅その他多数の客の來集する場所におきましては、近ごろ殊にはなはだしいわけでありますが、非常な
犯罪の横行がありますので、そういう所に
警察官等は
犯罪の
予防または
生命、
身体、
財産に対する
危害予防というために
立入りを要求いたします場合には、正当な
理由がない限りこれを拒むことができない旨を
規定したわけであります。しかしながら、この前二項の
立入につきましても、
関係者の正当な業務をみだりに妨害することをしてはならないと
規定しております。なお、その
立入の場合におきましては、
管理者が要求いたします場合には、その
理由を告げ、
身分を示す
証票を呈示するということにいたしておるわけであります。
次に、第
七條は
武器の
使用であります。これは
メモランダムによりまして、
警察官が
武器を携行
使用することは許されておりますが、この
武器の
使用も濫用いたしますと、これは非常な
危險な場合でありますからして、
武器の
使用のあつた場合と、もしくはかりに
危害を加えてもよろしい
——危害を加えてもよろしいと申しますか、
危害を加えてはならないわけでありますが、
危害を加えてもやむを得ないと思われる場合を非常に狭く
制限をいたしたわけであります。
武器の
使用は
警察官等が
犯人逮捕もしくは
逃走の
防止、
自己もしくは
他人に対する防護または
公務執行に対する抵抗の抑止のために必要であると認められる正当の
理由ある場合におきまして、しかも必要の
限度において
武器を
使用することができるわけであります。しかしながら刑法の
正当防衛もしくは
緊急避難に該当する場合は別といたしまして、それ以外におきましては死刑または無期もしくは長期三年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪を現に犯し、もしくはすでに犯したと疑うに足りる十分な
理由のある者が、その者に対する
警察官等の
職務の
執行に対して抵抗し、もしくは逃亡しようとするとき、または
第三者が手を貸して抵抗するというような場合に限つたわけであります。第二の場合は
逮捕状によつて
逮捕するとか、あるいは
裁判官の諸種の
令状によつて
執行する場合に、やはり
本人が抵抗し、
逃走をする、あるいは
第三者がそれに手を貸すという場合に限つたわけであります。
第八條はほんの補足的な
規定でありますが、
警察官等執行法ということで、
警察官の
職務執行の
手段をきめましたけれ
ども、第
七條までは
通常行われます必要な場合をあげたわけでありまして、それ以外他の法規の
執行は、当然
警察官の
職務である場合が多いのでありますから、他の
法令に
警察官の
職務として
規定いたしましたものは、やはり
警察官の
職務なのだということで、ただこれだけが
警察官の
職務ではないと、念のためにこの補足的な
規定を加えたわけであります。
以上概略でございましたが、
説明を申し上げた次第であります。