○千賀
委員 言葉の方から先に第二の質問をいたしますが、日本が敗戰のために民主化されまして、非常に大きなシヨツクを各方面に受け、またこれを甘受しなければなりません。用語の上においても同様でありまするし、その他表現の仕方についても同様であります。天皇の一天万乘とか、あるいは天皇は十善とかいう言葉を使
つてお
つたのが、最近はあつさり天皇は民族のシンボルである、象徴であるということで、大きな革命的な変化が起きておるくらいでございます、またこの
法律の表現の用語にいたしましても、大きな革命があり、変化があ
つてもしかるべきでございます。醇の字などは、私はこの前から指摘しておりますけれ
ども、むしろこれは現在、使い得ても、あの二千数百字の範囲内にいたしましても、これはやめた方がいい字だと思います。淳風美俗ということは、明治二十年以來
法律から使われておる言葉でありまして、字だけを辞書で見れば、酒のまじりけなく、濃厚なるものとして、これを人の世にあてはめれば醇朴、いずれにしても昔の為政者、封建主義の、封建色の濃か
つたころの為政者は、民はよらしむべくして、知らしむべからず、この典型的な民をつくるために、淳風美俗などと言
つて、いわゆる
民衆指導の目標にした言葉であることは間違いありません。私らが
民衆の代表として、あなた方のや
つておることに不満があ
つてこうがみがみ言
つておることは、これは淳風美俗ではない。こういう私らのような人民をつくらないことが昔の封建
制度の
時代ではよか
つたのでしよう。見ざる、聞かざる、言わざる、この三ざるがほんとうに昔の為政者の最も好んだ愛すべき人民であり、
風俗であ
つた。これを要求したのが、淳風美俗でありましよう。今これを再び繰返しますが、淳化する、淳風美俗化するということは、使い得る字でありましても、これはやめた方がいいくらいに感ずるのですが、これをわざわざ使うというのはどういうことであるか。私が先刻來指摘しております天皇の表現の字も、無理に無理をして、シンボルである、象徴であると言うくらい、今言葉の革命のために苦心をしておるのでありまするが、こうしたわずかな言葉の端でも、ここに為政者としての、知性の閃きがなければならない。またいかにして間に合い得る言葉で表現をだんだん進化していくか、いわゆる日本語の單純化、この線に沿
つて言葉をつめて、その
一つの
制度の
目的を達しようということろに、あなた方のこれに同調する苦心が見えなければいけない。それであるのに、ただ昔の言葉を使
つて醇の字を仮名で書いてみるというようなことは、これは全然とらざるところで、今ここに使
つてある、この美風という言葉で結構であります。善良の
風俗を維持するということになさいましても、または美風の維持発展という言葉を使われましても、それはどちらでも結構でありますが、全然同じ
意味が表現できる言葉が、許される漢字の中であるのに、これをわざわざ使うというのは、いかにもあなた方の怠慢と言いましようか、あまりにも言葉に対する感受性が鈍いと言いましようか、
法律ばかり研究しておられるから石頭にな
つたのかもしれませんが、少し頭をやわらかくして、民族の大
目的に合致して
目的を達するということを
考えていただきたいと思います。「じんかい処理」のごときも同じことで、かような
趣旨から十分われわれの許されておる、使い得る漢字の中から、同じ言葉を探し出し得るのでございます。不可能だとおつしやれば、不肖でありますが、われわれいつでも御相談にものります。討論のときに修正
意見を出しても結構でございます言葉につきましては、それだけ申し上げておきます。
次に
風俗営業の根本問題であります。今当局は大体不良少年の矯導ということに重点をおいて御
答弁でありますけれ
ども、私のほんとうに憂慮するのは不良少年ではないのです。世の中の全体が滔々としてアブノーマルの傾向に滑りつつある。これをいかにして破壊させようかという点に非常に関心をも
つておるのでございます。またその一部面としては、不良少年少女あるいは浮浪兒たちの行いを正しく指導するということも、もちろんその一翼にはなりますけれ
ども、もつと大きいことは、直接にどうして彼らを惡の道に親しまないようにするかという問題でございます。そこでひとつ御参考に申し上げますけれ
ども、私は自分の郷里の方で近ごろの若い人たちが、ときに窃盗をや
つたとか、初歩の
犯罪にひつかか
つて、
警察に檢挙をせられた。親たちが飛んで來て、たいへんなことだから何とかひとつ説諭をしてくれろというような話で、その少年たちに留置場から
警察の方々の配慮で出してもら
つて考えを聽いてみますと、まことにたあいがないのであります。た
つた一人で俺もは信念をも
つてや
つたんだ、この世の中に反抗するために、この惡の道に染ま
つたんだ、首でもひつ切
つてみろ、矢でも鉄砲でもも
つてこいというような面魂の返答をする少年が一人ぐらいはあるのではないか、それを期待していたのでありますが、一人だ
つてない。これは何十人、何百人そういうのに接したかしりませんが、そういう所で会
つてみると、全部めそめそと涙を流して泣きやがる。実に、自信がないと言いますか、それほどだ
つたらなぜお前たちは惡いことをするのだと言
つても、ただ頭を下げて涙をこぼして、もう再びせぬから頼むというようなことを言うのですが、これは現在の惡に染ま
つていく少年少女がいかに自信がないか、信念がないか、いかに
考えによりどころがないか、実にあわれむべき、何と言いましようか、心の
一つの力を失
つてしま
つたというのか、これも敗戰の影響と言えば言えるでしようけれ
ども、ほんとうに人生のキヤピタルを失
つてしま
つたあわれな姿をどこにも見出すのでございます。かようなわけでありますから、官憲と言いましようか、当局と言いましようか、この方々が少しそちらに努力と心を用いて、少年少女の惡化していくことを防止しようという努力が現われますならば、おそらくこれは非常な大きな効果が現われていくのではないか、こう信じております。私は單に
風俗営業締締りということは、むしろ数からいえばそういう少年少女の数は数十パーセント内外あるかもしれませんが、むしろこれは中老以上の享楽の
対象になるような場合が多くて、取締
つても取締らなくても、日本の全体の
風俗がどうな
つていくという影響力はむしろ少くて、やはり影響の大きいのは、そういう目にあまるちまたに溢れた若い少年少女の
風俗を規正することであると思います。それに
関係してごく小さい少年のためには、三國人がやりまするばくち、いろいろな玉轉がしや各種のばくちがありますが、そういうものに対する
取締りも明示されておりません。こんなときから
法律を犯す愉快さを覚えて、その次に性の方に走
つていくという順序になるのだと思います。こういう点にももう少し断固と言いましようか、自信のある
取締りをや
つてもらいたいと思います。まあ直接にはこの
法案に
関係がないが、あるいはそこまで修正するのはちよつと筋違いかもしれませんけれ
ども、しかし
目的は同じでありまするから、その点に対して相当に愼重な立法をされたい、かような要求をいたします。また新たな立法でなくとも、これを修正される点があれば修正する、そういうところに及んでも結構でございます。
それから
風俗営業の点でありまするが、私の前の質問者の質問は、大体私らも肯綮にあた
つておると思います。私の言わんとするところもよく盡されておるのでございまするが、
公安委員会は
裁判所で言えば
裁判官の役をするところでありまして、檢事の役をするところではないと思うのです。であるのに、これに
行政長官の役もさせ、檢事の役もさせ、
裁判長の最終の審判をする役もさせる。
一つのものに二役、三役を買わせるところに不合理があ
つて、これではいたずらに紛糾を起させ、またこの
法律によ
つて、ゆえなくして苦痛を訴えるような
國民をつくるばかりであ
つて、実効をいかに期待されるか、まことにこの点については私は自信はないと思いまするが、やはり私はこの届出を受け、しかしてこれを
許可する権能をもつ者は
警察署長であ
つて、もしも
警察署長の措置に不十分なものがあり、あるいは
民衆の肯綮にあたらざるものがあるならば
公安委員会に提訴させる、どういう形で提訴するか、必ずしも提訴という字を使わなくてもいいのですが、
公安委員ははたしてその
警察署長の据置を是とするか、非とするか、かような裁きをする。こういういうことでいいと思うのであります。
一つのものに二役三役と背負わしたので、いくら議論をしてもどうしても議論が盡きない。この点について、当局がわれわれの言うところを聽けば、この
法案の
根拠は崩れるし、聽かなければ見解の相違だということで、つつぱ
つてみなければならないことにな
つてしまう。問題はそこにあると思います。この点を反省して修正をなさる御意思ありや否や、またはこの際もしもわれわれが事急を要するために、これを認めたといたしましても、將來この点を修正する意思ありやいかが、この点を伺うのでございます。
さらに、なるほど
公安委員というものは民主的にできたのには違いありません。しかしながら民主的といいましても、できるまでの経緯が民主的であ
つたというのでしよう。
市町村長が推薦した者をそこの
地方議会が承認したというのですから、民主的だと言
つてもいいのでありまするが、しからばそのできた人たちがやる仕事が將來民主的であるか、非民主的であるかということは、一々事に当
つてみなければわからない。それをいつも民主的にできたものだから、それらの人がやることがことごとく民主的だと断ずることは断じてできないのでございます。それは
公安委員の罷免もできるんだから、
そのときに
公安委員の罷免を提訴すればいいじやないか。公民の大部分に、訴えて、公民の投票によ
つてこれがきまる。これは理屈でありますけれ
ども、何も料理屋を願
つて許可されなんだ人々、大体こうした
風俗営業に陷るような人は弱勢な人なんです。強力な人ではない。こういう人たちがただちに政治的な大運動を起し得るかというと、そんなことはできやしない。できないのにそういう途をいたずらに高唱して、こういう途があるから
解決されておるのだというようなことは、これは断じてできません。それから
公安委員会のやりまする措置が民主的であるか非民主的であるか、あるいは正しいか正しくないかという点に至りましては、これはあながちみんな正しくないというわけではありませんが、正しくない場合はいくらでもあり得ると思います。この仕事を
警察がや
つてお
つた時代、私は二十年も
地方議会の議員をや
つておりまして、常にこういうことに遇
つておりまするが、私怨をも
つた業者に、自分の氣持を報ゆるために、係りの
警察官を買收しておいて、そちらの
営業の欠点をあれだこれだと訴えて、密告しておいて
処分をさして快哉を叫ぶ。あるいは自分が独占的な利益を得るというようなし方は、私
ども随所にこの目で見て來でおる。
警察官にあらずとも、一町村にわずか三人やそこらの
公安委員なら、こういうことは必ずやらないということも保証ができない。やる場合もあるかもわからぬ。そんなようなことがその町全体の民意である、最も民主的な措置であるということは断じてできない。さような場合にも、ほとんど不可能にひとしいような大がかりな反対をしなければ、これの是正ができぬというようなことは、これはどうしても
民衆のためにとらざるところであると思います。簡單に
公安委員のやることがどうしても承認ができないというような場合には、その
地方の議会に提訴し、議会でこれを大勢の頭で審議をして判決を下すというようなことをしたら、どんなものだろうか。こういう方向に修正なさる氣持はないかどうか、この点を伺います。