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1948-04-15 第2回国会 衆議院 治安及び地方制度委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月十五日(木曜日)     午前十一時二十四分開議  出席委員    委員長 坂東幸太郎君    理事 門司  亮君 理事 矢尾喜三郎君    理事 中島 茂喜君 理事 小暮藤三郎君       大内 一郎君    千賀 康治君       中島 守利君    笠原 貞造君       久保田鶴松君    松澤 兼人君       松谷天光光君    高橋 長治君       中垣 國男君    大石ヨシエ君       加藤吉太夫君  出席國務大臣         國 務 大 臣 船田 享二君  委員外出席者         議     員 川合 彰武君         法務廰事務官  勝尾 鐐三君         國家消防廳事務         官       酒井 吉郎君         國家地方警察本         部警視     樺山 俊夫君         專門調査員   有松  昇君 四月十三日委員竹谷源太郎君辞任につき、その補 欠として矢後嘉藏君が議長の指名で委員選任さ れた。 四月十五日小暮藤三郎君が理事選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  浜松市の治安問題に関する件  地方出先官職整理促進に関する件  消防法案起草に関する件  理事追加選任に関する件     —————————————
  2. 坂東幸太郎

    坂東委員長 これより治安及び地方制度常任委員会を開会いたします。議の前に陳情書を紹介いたします。     陳情書   政府出先機関整理調整については、数次にわたつて知事会議の要望するところを政府に具申し、政府においてもその必要性を痛感せられ、前片山首相並びに芦田首相におかれても、卒直にその実施を公約せられたのであります。しかしながら從來状態を顧みまするに、國会の公約、自治法の改正あるにも拘わらず、実情はむしろ出先機関の強化の一途をたどつておりますことは、誠に遺憾とするところであります。この事実は区々たる所管の相違、地方行政に対する認識の不十分なるため、故意にあるいは事実を知らずして地方行政の進展を抑圧するものでありまして、地方分権の大道を根本的に破壊するのみならず、地方住民の迷惑不便は極まりないものがあるのであります。地方公共團体自主性は顧みられず、國民をして徒らに機構複雑化に困惑せしめる現状では、國家再建上重要な諸施策の地方浸透が果して期し得られるか、誠に残念に堪えないのであります。   ここに全國知事は今回の知事会議機会強き決意をもちまして、新政府に対し極めて近き機会出先機関整理調整の実を率直簡明に具現せられんことを強く重ねて要望するものであります。   昭和二十三年四月七日     全國知事会議代表       東京都知事 安井誠一郎  こういう知事会議陳情書が來ておりますから御報告いたします。     —————————————
  3. 坂東幸太郎

    坂東委員長 本日の日程は、浜松市の治安問題に関し当局より説明聽取の件、地方出先官廰整理促進に関する件、消防法案起草に関する件、競犬法案起草に関する件であります。  まず地方出先官廳整理促進に関しまして、船田國務大臣から御意見を拜聽いたします。
  4. 船田享二

    船田國務大臣 ただいま委員長から御朗読になりました知事会議陳情、その他すでに皆様承知のように、地方出先機関を整理しなければならないということは、もちろん私どもも十分その必要を感じておる次第でありまして、行政調査部といたしましては、すでに前内閣時代以來たびたび案を練り直していたようでありまするが、私が行政調査部の総裁の職を汚すことになりましてから、ちようどたまたま芦田内閣成立直前に、この委員会皆様方の御決議によりまして、整理すべき出先機関の案ができ上つておりましたし、それを参照いたしまして、すでにでき上つておりました行政調査部の案を再檢討いたした次第であります。そのほかに地方行政監察委員会のいろいろな報告も大体集まりまして、その中にも地方出先機関の問題を取扱つた報告が非常にたくさんございまして、目下中央行政監察委員会でその報告をまとめまして、これについても地方出先機関の問題につきまして審議を進めつつありまするし、また他方臨時行政機構改革審議会におきましてもこの問題を取上げておるような次第でありまして、具体的にどういうようなものを廃止し、あるいは地方に委讓するかということにつきまして、大体行政調査部としての案もつくり上げまして、実は今明日中に閣議にも提出いたしまして政府の方針を決定するように促進いたしたいというふうに考えておつた次第でございます、たまたま今日そういう問題についても臨時行政機構改革審議会を招集いたしておりましたところが、急に今日臨時閣議がありまして両方重なりましたので、これからもしひまがありますれば、帰りまして閣議とも連絡をとつて行政調査部でつくりました案を審議することに、できるだけ早くいたしたいというふうに考えておる次第であります。  ただ問題は、個別的にどれこれというふうに案を立てましても、御承知のように相当範囲における統制行政が行われなければならないという今の状態におきましては、そう簡單出先機関をまつたく廃止し、あるいはその権限地方知事に委讓してしまうということもでき得ない事情もあると思われますので、そういう統制行政範囲そのものにつきまして、根本的な檢討を加えなければなりませんし、あるいはまた現在のような統制行政をそのままといたしますれば、ある特定の権限はなるべく地方に委讓いたしましても、必要な範囲においては政府との関係において昔の知事のような立場に立つという意味の、そういう趣旨の法律的な規定も必要とされる場合もあるのではないかということも考えられますので、そういう問題につきまして目下できるだけ知事とも連絡をとりまして、行政調査部の方でも審議を進めておるような次第であります。ただいずれにいたしましても、この問題は昨年以來もうすでに一年にもなつておるような次第でありまして、私ども行政調査部の方といたしましては、できるだけ早くこの案を実行に移したいという考え方から、最善の努力をいたしておる次第でありまして、近い機会において先ほど申し上げましたように閣議にもかけて、政府態度をはつきりとするように促進いたしたい、このように考えておる次第であります。  これはまたこまかいことになるかもしれませんが、皆様方の御意見をお伺いいたしたいと思いまするので、御参考がてらこの委員会で三月五日におつくりになりました廃止すべき出先機関の表と、その後行政調査部の方でいろいろと各省とも連絡をとりましてつくりました案と、もちろん大体同じ結論に達しておるのでありますが、多少食い違つております点、たとえば総理廳の中で、経済安定本部地方経済安定局物價廳地方物價事務局とか、内事局駐在員。それから農林省管内では、作物報告事務所及びその出張所と、農地事務所食糧事務所、この支所及び出張所。それから労働省部内では職業安定事務所労働基準監督署、それから地方労働局というふうなものにつきましては多少疑いがありますので、今事務当局の方でもう一度調査をさせることにいたしておりまして、できるだけこの委員会ででき上りました最終案の線に沿うように努力いたしたいと考えております。  これに対しましてこの委員会の案に列挙されておらないで問題になるのではないかというふうに行政調査部の方で考えましたものといたしましては、総理廰部内通絡調整地方事務局出張所というのがありますが、その一部つまり立川と大分と鹿兒島のおのおのの出張所と、農林省部内では、農林省水産局事務所。それから厚生部内では都道府縣貿易駐在官とか、防疫関係地方在官。それから労働省部内では婦人少年局地方駐在員というのがあります。これは一部まだ設置されておりませんが、こういうようなものが問題になるのではないかというふうに考えておるので、そういう多少の食い違いは、今のところ調査中ではありますが、大体において皆様方のおつくりくださいましたこの成案趣旨に副いまして、先ほど申し上げましたように、できるだけ早い機会政府態度をきめるように努力いたしたい、こういうように考えておる次第であります。
  5. 中島茂喜

    中島(茂)委員 ただいま御説明を承つたのでありますが、その中にもありましたように、本委員会といたしましては、三月五日に、委員会としての結論を得まして、一應総理大臣関係方面にもその意見連絡いたしておるのであります。この地方出先官廳整備につきましては、吉田内閣当時から、しばしば議会におきまして問題にされ、さらに第一回國会以來各議員から非常に強調せられた点であります。從つて委員会といたしましては小委員会を設けまして、内閣行政調査部意見も徴し、また各自治体意見も十分聽取いたしまして、数十回にわたつて委員会を開催いたしまして、その結論を得たようなわけであります。もちろんただいまの御説明にありますように、行政調査部あるいは地方自治体と本委員会との意見が食い違つておる点もあるかと考えるのでありまするが、いずれにいたしましても、速やかに行政調査部におきまして成案を得て、國会に提案されますことを希望いたすわけであります。そして地方自治体の確立を期したいかように考えておるわけでありますので、その点速やかにこの問題の解決を急がれんことを希望いたす次第であります。
  6. 坂東幸太郎

    坂東委員長 ただいま中島委員の御意見のように、当委員会は数十回の審議を経て決議を見ましたもので、なおその整備の必要あることを中島さんが申されましたが、なるべく速やかに実現されることを委員会は強く要望いたします。それでは本件はこれをもつて終ります。     —————————————
  7. 坂東幸太郎

    坂東委員長 次の日程浜松市の治安問題に関し、当局より説明聽取の件であります。國家地方警察本部警備部長樺山俊夫君から説明を承ります。
  8. 樺山俊夫

    樺山説明員 先般発生いたしました浜松市におきまする事件につきましては、新聞で報道されておりますので概略を御承知と思いますが、私から概略を申し上げたいと思います。  事件発端といたしましてその原因調査いたしましたところ、遠い原因といたしましては、昨年の五月から本年の四月に至ります間におきまして、約六回の事件が起つております。この六回の事件は、今般発生いたしました事件と比較いたしますと、比較的軽微な事件でありまして、拳銃その他の武器を使用しておりません。格闘事件中心といたしました事件でございます。  それで六回の事件はその都度一應相互の了解によりまして鎮静に帰しておりますが、今回発生いたしました事件の直接の原因といたしましては、四月四日に浜松に在住しております朝鮮人が、その経営いたしております國際マーケツトにおきましてダンス・パーテイーを開催するために、樂團を雇う計画をして契約をいたしておりましたところ、同じく浜松市におきまする小野組におきまして、やはり同じ日に自轉車競争をやるためにその樂團を借りたいという申出がありまして、樂團主宰者朝鮮人ダンスパーテイーに対しましては別の樂團をせわするという約束をいたしまして、小野組の方に出演をしたわけであります。ところが、四日になりまして朝鮮人の主催いたしますダンスパーテイーには、約束に反しまして樂團が出て來なかつた。それで朝鮮人の側が憤慨をいたしまして、これは何か小野組の側の妨害ではないかということをもちまして、小野組小野近義方に押しかけまして、洋裁店窓ガラス、店内の物品を破壊するという暴行を働いたのが事件発端であります。それに続きまして、同夜の九時五十分から十一時にわたりまして、双方の間の乱闘事件が発生いたしたのであります。その結果、大体双方約五十名ずつが拳銃を発射いたしまして、集團的な闘爭をいたしました。そのために朝鮮人側におきまして三名の負傷者を出しております。  明けて五日の日の状況でございますが、五日にはそれぞれの側に應援が参りまして、約二百名ずつの人数の対立となり、險惡状況になつてきたわけでありますが、同夜の七時二十分ごろに朝鮮人小野氏の邸宅を襲撃いたしました。それを発端といたしまして、再び市内中心地帶各所におきまして発砲事件が発生いたしました。その結果、死者五名、負傷者十四名、合計十七名の死傷者を出しております、同夜使用されたと思われます武器は、正確な数字ではございませんが、推定いたしましたところ、大体朝鮮人側におきまして二十挺、小野組の側におきまして十挺くらいの拳銃を使用したものと推定いたしております。それからその後六日、七日、八日は平静に推移をいたしまして、九日の午後八時五十分ごろに、先ほど申しました國際マーケツトを経営しております朝鮮人木村一郎方におきまして発砲事件がございました。これは双方発砲であるか、單独の発砲であるか明確でございませんが、それはそのまま平静に帰しております。その後事態は引続き平静に復しまして、現在におきましては平静に帰したと考えられます。  ただいままで申し上げましたのは事件経過概要でございますが、これに対しまして、警察側といたしましてとりました処直概要を申し上げます。  四日に事件が発生いたしまして、浜松警察署におきましては急遽署員非常召集を行いまして、浜松署員九十八名が参集をいたしました。同時に應援要請によりまして浜名地区警察——これは國家地方警察でございますが、浜名地区警察の三十五名が應援に出動いたしました。当夜の状況は大体浜松警察より出動いたしました九十八名が市内警備に当りまして、應援に参りました浜名地区警察の三十五名は警察署において待機をいたしておりました。それから五日の状況でございますが、五日におきましては総数二百六十八名の警察官が出動いたしております。これは浜松自治体警察はむろんでございますが、國家警察よりの應援を含めまして、総数これだけの警察官が出動いたしました。やはりこれも四日の夜と同じように、市内に出動いたしまして直接警備の任務に当りましたのは浜松警察署警察官でありまして、應援に参りました警察官警察署において待機をいたしておりました。  それから六日の状況でございますが、六日は先ほど申しました五日の夜の事態相当險惡でございまして、事件がこれ以上拡大いたしますと不測の事態を惹起するおそれがございましたので、應援要請を拡大いたしまして、これは浜松警察應援國家地方警察その他と合わせまして総計四百二十一名が出動いたして警備に当りました。六日の警戒はただいま申し上げましたように、相当多くの人員をもつて警戒いたしまして、当夜は無事に事件がなく経過いたしました。七日になりまして、警察官は地元の警察官應援と合わせまして二百五十五名、八日には二百名、九日と十日には百六十五名ずつ——九日、十日になりますと百六十五名の浜松自治体警察だけの警察官警備に当つたということになつております。  それから警察官が携帶いたしました武器の数は、先ほど申しました六日に四百二十一名出動いたしておりますが、この四百二十一名に対しまして七十七挺の武器を使用しております。簡單でございますが、大体経過概要を申し上げます。
  9. 坂東幸太郎

    坂東委員長 静岡縣選出川合彰武君より、委員外発言の要望がありますが、これを許可することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは川合君。
  11. 川合彰武

    川合彰武君 本問題に関しましては、私は本会議において緊急質問をいたしまして、そうして本問題を中心としまして現在の警察機構あるいはまた運用に関しまして、政府の所見を伺つたのでありますが、この問題は先ほど國家警察本部の方の説明にありました通りに、禍根はすこぶる深いのであります。実は昨年まだ内務省が存置しておつた当時、現在も浜松警察署長をいたしております斎藤君に対しまして、私はしばしば警告を発したのであります。今の説明によりますならば、從來においては凶器をもつて別に乱闘事件はなかつたという御説明があつたのでありますが、実は昨年の九月十二日に、ほぼこれに類似する事件があつたのであります。その際にいわゆる小野組の方が——当時は小野組は解散されてなかつたのでありますが、小野組の方は日本刀を所持いたしまして、それに対しまして朝鮮人側は全然凶器を所持しなかつたのであります。ところが朝鮮人側はなかなか勇敢な人がおつたと見えまして、その小野組抜刀隊に対しまして無手でもつて対処し、逆に小野組日本刀を八つか九つ取上げたという事件があつたわけです。そうしてそのために朝鮮人側から当時の浜松警察署に対して、こういうようにまだ日本刀がある。しかも小野組ではこういうふうにして凶器をもつてわれわれに挑戰してきたということになつて、その処置に関して、私は先ほど申し上げました通りに、思い切つて両方を適当に抜本的に処置すべきではないかという警告を発したのであります。はたして日本刀警察署に來て、それを凶器所持者として処分したかどうかということは、その後報告を承つておりませんが、とにかくうやむやの間に処理されたようであります。そのために、昨年の十月ごろでありますが、署長が仲介になつたかどうかは存じませんけれども、はるさめという大きなやみ料理店でもつて朝鮮人側小野組とが手打をした。その手打をするについても、はなはだナンセンスがあるわけであります。当日午後一時に両者がそこに会同することになつて小野組の方が一時からそのやみ料理店はるさめで待つてつたのに、朝鮮人側は三時か四時になつてようやく來た。それに対して小野組の方が、けしからぬではないかといつて迫つた。ところが何を言うか、おれたちの來る來ないはお前たちの干渉を受けない。おれたちの方が身分的な特権を得ておるのだというような、まあ笑話めいた話があつて、言葉をかえて申しますならば、完全に小野組がしてやられたというかつこうになつたわけであります。そういうようなこと、自体は何を意味するかと申しまするならば、要するに当時の國家警察のもとにおいても、浜松市の治安というものは完全に浜松警察支配下になくして、今申し上げました二つの、何と申しますか、私は遺憾ながら朝鮮人側の方に対しまして一つ組織があるということを認めざるを得ないと思います。今回の問題に対しまして、朝鮮人連盟は一部不良分子の云々ということを言つておるのでありまして、私は朝鮮人連盟がこれらに対しまして、組織的な活動をしておるとは思いませんが、しかしながらいわゆる不良分子一つ組織をもつてつて、しかもそれが相当浜松市の治安の問題に関しまして有力な、無形的な発言権をもつておるというような状況であつたわけであります。その間にしばしば小ぜり合いがあつたわけであります。  今回の事件発端と申しますのは、先ほど御説明があつた、いわゆる樂團の問題が原因ではなくて、実はそれより約一週間前にこういう事件があつたのであります。これは各地において行われておるようでありますが、タバコによる賭博事件であります。このタバコによる賭博事件は、最初支那人がやつたようであります、その後漸次朝鮮人が行つておるというように聞いております。これは私も見たことがあるのでありますが、それが朝鮮人であつたか、支那人であつたか、日本人であつたかは存じません。しかしながら、そのタバコによる賭博というものは、浜松市の最も繁華街において相当廣範囲に行われておるようであります。それに対しまして市民からいろいろな批判が下される。そこで事件が始まる約一週間か、十日前に浜松警察署員の約四名か、五名らしいのですが、そのうちの二人ぐらいはたしかピストルを所持しておつたのでありますが、それが松菱百貨店のある市の繁華街中心地賭博をやつておるのを現行犯で捕えたのであります。ところがその周囲におつた朝鮮人——朝鮮人ということを言つておりますが、はたしてどうかは存じません。とにかくその捕えたお巡りさんが、逆に殴られ、けられ、そうしてつかまつてしまつた。ほかの二人はそれを傍観してむしろ署の方に向つて逃げておつた態勢があつたらしいのです。つかまつたと申しますか、殴られ、けられた警察署員は、たしか入院したということを聞いております。その際に小野君が仲にはいつて、この身柄を預かるといつて預かつたそうであります。ところが朝鮮人側に言わせれば、小野がこのけんかに対して仲裁を立てる。つまり朝鮮人警察とがけんかをするという形に見たらしいのです。そこで小野君が仲裁を買つて出た、生意気だというのが事件発端らしいのです。  そういうことからいたしますれば、これは実はなわ張り爭いと同時に、もつていかに浜松市の治安が、すでに内務省存置の当時から乱れておつたかということを、端的に私は御了解願えると思うのであります。こういう事柄は單に浜松だけでなくて、各所に見られるらしいのでありますが、なぜ浜松に比較的そういう事件が頻発し、しかもこういう大規模な乱闘事件が起きたかと申しますに、実は浜松がそういう状況でありますので、各地から朝鮮の人々が浜松に集まつてくるようであります。それと同時に、浜松は御承知通り織物の産地でありまして、このごろのやみ物資としては、織物が一番マークされておるわけでありますので、そういう関係のあるために、非常にたくさん集まつてくる。そこで朝鮮人連盟としては、そういう不良分子に対しまして、極力自粛するような措置を講じておるらしいのでありますが、朝鮮人連盟の自粛の対象になり得ない人たち相当におるということを朝鮮人連盟の方も言つております。そのためにますますこの浜松が全國的に事件を起し得る可能性のある都市と化しておる。そして市民は日夜不安のうちに暮しておる。そうして先ほど申し上げたようなタバコ賭博とか、あるいはほかのいろいろな事件が頻発しておるわけであります。そういうことの累積した結果が四日から六日に至る期間の乱闘事件なのであります。  そこで私は本会議で質問申し上げましたように、一体現在の新警察制度のもとにおいては、こういう問題を敏速に、しかも同時にまた禍根を絶つような抜本塞源的に解決をする國家責任当局というものの所在が明らかでない。すなわち國家警察、あるいはその他の問題に関しまして、これを閣議において発言するような責任者はどうなるかという問題と、それからまた地方警察自治体警察國家警察関係——これは私は警察の方にも聽いたのでありますが、どうしても國家地方警察應援を頼まなければならぬ。ところが浜松市の公安委員は三人であります。この公安委員の選定に対しましては、実はわれわれも民主連盟として市長にも警告を発したのでありますが、結果的には、六十を過ぎたお年寄りが多い。しかも公安委員のいろいろな決議と申しますか、あるいはそういう事態に應じての勧告というものは、三人集まらなければできないということになつておるようであります。昔ならばただちに電話一つでもつてそれぞれの署に対して應援を求めることができたけれども、今はまず公安委員を召集しなければならぬ。公安委員が自轉車でくる、そうして協議をしてという関係上、非常にその應援を得るまでに時間を要するということが、今後考えねばならぬ点ではないかというふうに思つております。それと同時にまた、たとえば二百名とかあるいは四百名の警察官が集まつて、ああいうときには炊出しをしなければいけない。それを公安委員の方から市長に要求したところが、市長市議会の議決を経なければそういう費用の捻出ができないというので断つた。それに対して何を言うかというので、緊急措置を講じたというわけなのであります。從つてこういうことも今後自治体警察運用において考えねばならぬ問題だろう。同時にまた、私は八日に浜松に帰りまして、よく事情を聽いたのでありまするが、そのときにおきまして、本來ならば市議会緊急市議会を開いて、いろいろ措置を講ずべきでありましようが、それをやつていない。それをまた、市長にも私は会つたわけでありますが、市長も何だかこの問題に関しては他人事のような感じを抱いておる。そこらにまた新警察制度というものは、当面の責任者に対しても、まだ徹底していないというような感を深くしたわけであります。これらに対しまして、そういうような責任の所在を明らかにし、同時にまた、新警察制度の立法の趣旨を活かす面において、われわれは深く考えるところがなければならぬということを痛切に感じたわけであります。それと同時にただいま樺山さんの話によりますれば、平静に帰しておると言われますが、実は九日に月村組のところに発砲があつたという。同町に私の所に、昨日も浜松から人が参つての情報によりますれば、両者は表面的には平静を装つておるけれども、まだまだその底流においては動いておるという実情であります。  またこれに関して、市民としての声を一應皆さん方に御紹介するならば、今言つたような一つの新興勢力によつて、市の治安が実質上支配されておるというような状況でありますので、そこで市民は、警察もあまり手を出し得ないという現状、從つて旧封建的な組織である、いわゆる組というような旧小野組に対してむしろ好感を寄せておる。小野組が新興集團勢力に対して反撃の態勢をとつて、それを実践したということに対して、市民はむしろこれを支持しておるというのが実情であります。そのことはいろいろ感情の面もあるでありましよう。同時にまた、單にこれは浜松だけでなくて、随所に見られるようなことでありますけれども、そういうように市民が、警察力ではとうていこれを抑止することができない。そこで封建的な組織集團の力にむしろ依存したいというような氣持になつておるという現状は、私はちようど警察状態という言葉によつて浜松市の治安状況が表現されるように思つたわけであります。いわば浜松市の状況というものは、まさに戰國時代の状況にはいつておるということで、新警察制度運用、また立法に当つた國会としても、深く考えるところがなければならぬ。從つて私は國家公安委員会につきましてはもちろんのこと、この新警察制度の立法に当られた治安委員会におきましてぜひとも浜松市のこの事件をよく現地に行かれて調査されまして新警察制度運用において不備の点があるならば、是正をするように御努力を願いたいと同時に、またそういうような守勢的な点だけでは不備であるとお考えになりますならば、新しい立法をお考えになることが、この委員会として善処せられるゆえんではないかというようなことからいたしまして、私は浜松市の事件の眞相をかいつまんでお話したわけであります。  なおこの事件の眞相はもつと詳細に申しますならば、より御認識が深められると思うのでありますが、きわめてデリケートな問題を含んでおりますので、あるいは隔靴掻痒の感を懐かれると思うのでありますけれども、しかしながら必ずやこの程度の説明をもつてしても、すべては御了解願えるだろうと思うのであります。ぜひとも当委員会としまして現地に委員を御派遣になつて眞相の調査に当られ、そうして今言つたように警察制度運用その他の点において檢討されると同時に、新立法のもとにおきまして、深く思いをいたされんことを切望いたしまして、私の委員外としての発言を終る次第であります。
  12. 門司亮

    ○門司委員 ちよつとお伺いしたいのですが、私中途から來て説明をよく聽いておりませんので、すでにあるいは説明されたかもしれませんが、事件の発生その他については、先ほどのお話でよくわかりましたが、発生後の処置はどういうふうにしておられますか。たとえば相手方の責任者というような方たちの処置は、どういうふうにしておられますか。
  13. 樺山俊夫

    樺山説明員 先ほど警察のとりました措置の中で申し上げるのを落しておりました。ただいま御質問もございましたが警察が一番多いときには四百二十一名動員いたしまして警備に当りました。その結果押收いたしました武器は、朝鮮人の側からピストル二挺日本人側から猟銃を二挺押收いたしております。それから逮捕いたしました数でございますが、総数で十四名逮捕いたしました。その中で日本人側が七名、朝鮮人側七名を逮捕いたしております。
  14. 門司亮

    ○門司委員 もう少し突込んで伺いたいのですが、また詳細の報告はおわかりにならないかと思いますが、先ほど川合君の質問もありましたが、今後も相当調査する必要があると思いますが、こういう事件の起つたのはいろいろ原因もありましようが、新警察制度の上においてどういうふうな形でこれが現われておりますか。お氣づきの点がありましたらお話し願いたいと思います。
  15. 樺山俊夫

    樺山説明員 事件経過を考えまして、ある点は結果的な意見になると思いますが、私どもが三月七日に切りかえられました新しい警察制度のもとにおきまして、かかる不詳事が起きたのに対しまして警察側といたしましてその事件に対処いたしますためにとりました措置並びにその措置の批判につきまして、ただいま氣のついている点を申し上げますと、警察法によりますと、公安委員会の情勢により應援するということになつておりますが、浜松の例を見ますと、実際公安委員がお集まりになつたのは六日でございまして、事件発生後三日を経過しているというかつこうでございます。実際は四日に署長の計らいをもちまして應援要請をいたして應援を求めておりますが、形の上からはそれだけ遅れているということになつております。これを迅速に成規の手続を経てとるということ、これはかかる事態に対処いたします一つの大きな問題であると存じます。それから今回発生いたしました事件について應援に出ております者は、國家警察から出ている者も相当ございます。これは警察法で許されておりますように、自治体から要求がありました場合に、國家警察は応援ができるという規定になつております。それと同時に今回の場合におきましては、國家警察のみならず、他の自治体警察たとえば静岡市の警察あるいは清水市の警察というようなものが應援に出ております。これは現在の警察法規から見ますと、許されていないのでございます。私どもの現在の一應の取扱いといたしましては、これは一つの法規で許された應援でなく、市民應援という形で應援をしているという解釈で、現在のところ考えております。法律で許されておりませんことがはたして適当であるかどうかという点は考究の余地がある問題であると思います。それから國家警察應援要請によりまして出ます場合、今回の浜松事件のごときは、静岡縣の西部にありまして、從つてこういつた緊急を要する事態におきまして國家警察相当の部分の應援、出動をするという場合になりますと、相当遠い所から運んで行かなければならぬという問題があります。この問題につきましては、非常事態に対処するための常備訓練隊ということも現在考究を進めておりますか、そういうものが緊急の場合にはただちに出動できるというようなことも、考えていくことが必要であるということを痛切に感じているわけであります。  それから、これは警察制度の問題とは必ずしも直接関係がないと思いますが、私どもが今回の事件を通じまして新しい警察制度の運営上反省をし、今後考究をしていかなければならないと思いますことは、今回の事件は先ほど申したように、四月になつて突然発生した問題でなく、その前哨的な事件が昨年の五月から数回にわたつてつているわけであります。その事件の眞相を十分つかんでおらなかつたのじやないか。ほんとうの眞相をつかんで、かような場合をあらかじめ想定し、それに対して適切な警備計画を立てて、有事の場合にただちに出動でき、適切な行動ができるような計画、訓練を平素から十分積んでおく必要があるということを痛切に感じております。  その次は事件の見通しの問題でありまして、四日の晩は比較的大きな問題にならずに一應済んでおりますが、五日になつて相当大きなことになつてきておるという経過から考えまして、また警察官の出動した数、それから現他において実際警備に当つた活動の実情等から見ますと、事件の拡大の見透しというものが十分でなかつたのじやないかということも考ゑてみなければならない問題であると思います。かような点は殊に警察制度が切りかえられた直後において起つた事件であるだけに、先ほどから申し上げておる計画あるいはこの訓練について、十分の手が打たれていなかつたということがありますならば、これはまことに申訳ない問題でございまして、この点については今後は十分今回の不幸な事件を教訓として、將來努力していかなければならないと考えます。ただ御承知通りに、大体かような集國的な不法行為、あるいはまた騒擾事件が起るのは、自治体警察の区域内において起る場合がまず大多数でございます。しかも自治体警察に対しては、國家警察は平等の地位にあつて、それに対して從來のような統制はむろんできませんけれども警察法の規定によつて相互に連絡をし、助け合うという規定もあります。この規定を活用して、お互いに連絡を緊密にしてやつていく必要を、特に痛切に感ずる次第でございます。大体感じたことを申し上げました。
  16. 門司亮

    ○門司委員 われわれもこの警察法を審議するときに非常に心配したことでありますが、問題は、一つの圧力がなくなつたということだと、私は思います。從來は全部の日本の警察官が一本で指揮を受けておりましたので、たとえ少数の警察官であつても、その背後に縣下全体に一つの大きな圧力をもつてつた。今度自治体警察になつて、その圧力が非常に薄くなつてきたというのが、こういう事件を起す一つ原因だというように感じられてまいりますと、相当な考慮をしなければならないかと思う。問題は、それなら昔はこういうことがなかつたかというと、そうではありません。たとえば横浜の場合におきましても、例の鶴見の騒擾事件のごときは、從來警察制度のもとにおいてすら、やはり機関銃のようなものを公然と持ち出して小さな戰爭みたいなことを始めた事実もありますから、必ずしも私はそうではないと思います。ただ自治体警察になつたという形の上から、もう一つお聽きしておきたいと思いますことは、地方の有力者というか、ボスとの関係です。そして警察の圧力が薄くなつたことと、権限範囲というようなものが小さくなつたために、地方警察力がある種のボスにのみ利用される形がある。要するに目が届かなくなつた。同時にそれらの者のやることになかなか手がつけにくくなつたというようなことにお気づきの点があると思うのですが、この点は、どうですか。
  17. 樺山俊夫

    樺山説明員 ただいまお話になりました点は、私が申し上げるまでもなく、警察法を審議していた、だきましたときに、たとえば公安委員会制度の問題についてもいろ議論があつたことでございまして、そういう際にもそういつた懸念が非常に問題になつたことでございます。今回の事件についても、私どもといたしましては、その点を重視いたしまして、係官を早急現地に派遣いたしまして、状況調査させたのでございますが、その報告によりますと、現在のところでは、今回の騒擾事件について、そういつたいろいろな関係があるために、警察の執行力が鈍つてつたということは、私どもとしてはその形跡が認められないように考えております。ただ問題と思いますのは、警察官の士氣の問題でございます。一例を申し上げますと、五日の夜に乱闘がありました際に、國際マーケツトに対しまして小野氏の側がなぐり込みをかけておりますが、その際に現場に三十人ほどの警察官が警戒をいたしておつた。このなぐり込みに対しまして、現場におりました警察官が手をこまねいて傍観をしておりまして、手がつけられなかつたというような事実がございます。こういつた事実から考えまして、警察官の士氣というものが高揚されておらない、士氣が沮喪しているという点を私はむしろ重要な問題とて注目していきたいと思います。
  18. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 今の点に関連しますが、先ほど門司君からもお話がありましたように、こういう事件は今まででもあつたのであります。しかもそれを未然に防止することができずに、大規模の乱闘事件が起つたという問題は各地にあるのであります。この点につきましては、内務省の所管にありました警察制度の中におきましても、すでにあつたことでありまして、この点はいわゆるボスとか親分とかいうものと警察との結託の問題が取上げられるのでありまして、今警察官の士氣の問題が懸念すべき点であるというお話が部長からあつたわけでありますが、しかし一方小野組の親分小野某という人は、縣会議員であり、かつ公安委員長であるということも承つておるのであります。そういうことで、自治体警察の三十人ほどの警察官が、そのなぐり込みのときに、十分手を出すことができなかつた一つ原因ではないかと考えられるのであります。この点について、はたして士氣の問題であるか、あるいは今申したボスとか、あるいは権力者との関係で、これは手を出したならばあとがこわいというようなことで、手を出さなかつたという事実があるように私は考えるのでありますが、やはり士氣の問題であるか、勢力者との関係であるかという点を、もう一度承りたいのであります。
  19. 樺山俊夫

    樺山説明員 ただいまの点は非常に微妙な問題でありまして、士氣がなぜ沮喪しておつたかということを分析いたしますと、どういうことになるかという問題になると思いますが、先ほども申しましたように、一般的な傾向といたしまして、新しい警察制度が実施になつて自治体警察というものができました。自治体警察は、その自治体の区域における自衞的な組織ということになつております。そういつた点が警察官に対じましてどういう影響を及ぼしておるか、警察官の士氣に対してどういう影響を及ぼしておるかという点は、いろいろ考え方もございましようが、少くとも警察官の士気を非常に高揚することには役に立つていないというふうに、考えられます。ただいまのお話にありましたような、有力者に対する氣がねの問題等につきましても、これは現実に目に見ることのできない問題でございまするので、結論的にはつきり確信をもつて申し上げるところまでいかない問題であると思いますが、私ども調査いたしまして、関心をもつております点を強調いたしまして、調査をさせてまいりました結果によりますと、少くとも現在私どもといたしましては、やはり警察官の士氣が沮喪しておるということがこの問題については一番大きな原因ではなかつたかと存ずるのでありまして、有力者に対する気がねということの問題につきましては、私どもが初め考えておりました程度のものではなかつたのではないかということを今考えております。
  20. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 この点については多少見解の相違があるかと存じますが、こういう問題は各地で起る可能性あるいは危險性のある問題でありまして、本会議においても質問のあつた犬山事件、あるいは私は兵庫縣でありますが、兵庫縣などにおきましてもそういう危險件があるように先日話を聽いたのであります。むしろ大いにやれ、徹底的にやつつけろといつたようなことを叫んでおる者もありますし、また各地における親分関係も、以前の場合ですとその親分とか組というものが封建的なしきたりとか慣習というもので、だれが一番偉いのだ、その人の兄弟分はだれだ、子分はだれだということがはつきりわかつておりまして、親分が健在である限りぐつと押えるところは押えられた。しかし封建的な組なりあるいは親分に対して戰後新興親分と申しますか、新興的な組が勢力をもつてまいりまして、封建的な親分が、だんだんと勢力を失いつつある。それに乘じて新興の親分が勢力を張るという新興的な勢力と封建的な勢力との対立の問題が各地において起つています。表面的には、この問題はまだそれほど大きな問題ではありませんが今後そういう乱闘事件というものが起り得るような一つの素地がつくられつつあるということ及び民族的な問題としてこれらの新興勢力、封建的な勢力と、また民族的な問題が絡み合いまして、各地においてまさに一触即発といつた状態にあると見ていいと考えられるのであります。こういつた情勢にある場合におきまして、今度の点について特に私ども遺憾と考えられますことは、見透しが間違つていたというようなこともあるかと思いますが、すでにその兆しはあつたのでありますから、これを事前に処理する警察的な手腕と申しますか、これがどうも私どもにはなかつたように考えられる。單に浜松だけの問題でなく、各地から應援に続々と來つつあるという事態にあつたにかかわらず、警察はそれに対して手を出さなかつたということは、まことに遺憾なことでありまして、將來こういつたような乱闘事件が起りそうだという場合において、國家警察特に警備関係としては、いかなる手を打たれるか、いかなる手を打つことができるかということを、ここで明確にお示し願いたいのであります。
  21. 樺山俊夫

    樺山説明員 ただいまのお話にございました、かような乱闘事件を事前に察知して防止できる方法はないかというお話でございますが、この点は特に現在許されておる範囲においては、事前に事件を防止するということは、まず非常に局限された程度しかできないのでございまして、端的に申しますと事前防止の措置というものは、まずできないと申し上げた方がいいと考えます。ただ最近成立いたしたと思いますが、軽犯罪法によりまして、たとえば凶器を所持しておる者に対して取締りはできますが、そういつたような直接取締りの対象として許されておる事象に対しては、事前措置として措置ができますけれども、それ以外の点においては、事前的な防止の方法というものは、実際上関係者に対しまして、ある程度警告を発するという程度しかできないのであります。問題はその発生いたしました事件をいかにして急速に、最も有効適切に関係者を逮捕して、事件を早く鎮圧するかということを中心にして今後進めていかなければならないと考えます。
  22. 坂東幸太郎

    坂東委員長 なお私からも申上げますが、公安委員の制度は、單に事件が起つてしまつてからではなくして、ふだんから事件なからしむるように常動して研究しておくべきと思います。この点につきまして各地方には慣れておりませんので、この点を十分に徹底させたい。少くとも市におきましては必ず公安委員は常勤して、各市内状況を請べて、事件が起らんとすれば、起らないようにあらゆる手段をとるということ、これが公安委員の職権でなければならぬと思います。その点がなかつたことは遺憾に思います。從つて今後委員会といたしましても、全國の公安委員に対しまして、十分わかるようにする途を講じておかなければならぬ、こう考えておるわけであります。
  23. 千賀康治

    ○千賀委員 委員長の言葉で、特に当局のとるべき必要なことが忘れられておると痛感せざるを得ない事実がございます。というのは、先ほど警備部長も、警察官の士氣が高揚されることが欠けておつたということをしきりに言われますけれども一つ警察の精神だけでなしに、國民精神が高揚されておらない、民族全体が非常に萎靡沈滞をして、気絶の状態にある。ひとりこういう民族の中の警察精神が高揚されるはずがない。そこで警察精神を高揚させるならば、もう少し民族の目標というものをはつきりして、その目標に対する民族精神というものを高揚しなければ、警察つて、いつまで経つてもいくじのない腰抜けばかりの警察であるはずであります。このことに氣がつかずして單に警察を責めても、そんなものはだめです。これは私が現実に目撃した事実でありまするが、東京から國に帰る道で、三等に乘つておりました。非常なすし詰の、もうほとんど身動きも何もできない汽車の中で、まん中で五、六人の壯漢が酒に酔つぱらつてみんなの頭の上を平氣で靴で歩いて、あつちこつちはしやいでいる。それを小言を言う人は、片つ端からその壯漢にぶん毆られて、鼻血を出したり、ひどい目に遭つておる。これをながめておるわれわれの多数の同胞が、一人も異議を申さない。みな默つて、どこを風が吹くかというような顔をして、まず自分の上に災難がかからなければそれで結構だというような、非常にだらしのないかつこうでおつた。私は隅の方からこれを見で、非常に憤慨にたえなかつたのでありますがこれが今の日本人の大体の姿じやないか。こういう姿の中で警察官だけが生命を挺して、先ほど來問題になつておるような問題を処理する氣持が湧いてくるはずがない。しかしながらほんとうに日本人の氣持がさようになり、どうにも始末のつかない、いくじのない民族になり終つたかと思えば、必ずしもそうでない事実を、また汽車の中で私は目撃をしております。やはり西へ下る列車で、今度は二等車に乘つておりますと、一人の若い者が血だらけになつて二等車にころがりこんできて、われわれに救いを求めて、わしは今支那人にやられてきたのだと言つておる。ところがその人間の後からまた一人の壯漢が続いてきて、これが支那人かと思いきや、本人は、おれは日本人だ、こいつらが三人連れで今やまとなでしこを、いやがつておるのをしきりにどこかへひつぱつていこうとする、おれの目の前でこういうことをしたら許さないのだといつて、非常に大言壯語して、再びその男を毆りかかつていくというような光景があつた。汽車の中では年の若い人たちは期せずして歓声をあげて、その男の勇敢な氣持に手をあげて同調したというような光景が見えた。そんなことがよいか惡いかは別といたしまして、これは容易ならないことがこの二つの光景の中に含まれておると私は思つたのであります。今や氣絶をしておるような日本人も、やはりチヤンスがあれば、いつかは目ざめ、奮い起つ。これが必要以上に歪曲せられてその勇氣が表現されるというような場合もあるとすれば、これは今さら戰慄するようなこともなきにしもあらずと考えられるのであります。そこでこういう問題に非常に大きな危險が胚胎されておる。社会公安の大きな動揺がここにあるのだということは、これはあらゆる日本人の中で、少し思いを社会問題に馳せておるものならば、みな感じておるのだろうと思います。この点をはつきり認識するならば、すでに全日本の警察機構は、この問題に大きな手を打たなければならないし、また大きな自信と成案をもつていなければならない。そうした問題についてあなた方はどういう覚悟と方針をもつておられるか、またどうやつてこれを解決していこうという勇氣をもつておられるか、伺いたいと思います。これは決してこの部屋だけの問題ではなしに、大きな警察制度から、小さな市町村の警察制度まで、これは一貫した一つの重大な問題であると思います。この際関連をしておる問題でありますから、伺いたいと思います。
  24. 樺山俊夫

    樺山説明員 ただいま御意見通りに、警察の士氣の高揚の問題につきましては、ひとり警察官のみならず、國民全般の問題と揆を一にする問題である。從つて國民の士気の高揚をはからない以上は、ひとり警察官の士氣の高揚をはかることはむつかしいというような御意見のように拜聽いたしました。御意見はまことにその通りであると思います。ただ私ども警察といたしましては、警察の職務を執行いたします上に一番大きな中心になりますのはこの士氣の問題でございまして、ほかにもいろいろ問題がございましようが、結局士氣の高揚をはからなければ警察の完全なる仕事の遂行はできない。從いまして警察官の教養の問題が一番大きな問題として根本的には取上げられる問題であると考えます。教養問題につきましては、所管外でありまして、個人的な意見を申し上げる程度しかできませんが、しかし少くとも私ども関係しております刑事関係にいたしましても、警察官の教養ということが、やはり檢挙の能率を上げ、事態を速やかに鎮静に帰するということの根本的な問題でありますことは、疑いのない事柄であります。その意味からいたしまして、警察法におきましても、教養施設は國家で経営しておりますものを中心にして、自治体要請のありますものについては、自治体警察についても、國家の施設に併せまして教養を進めていくという行き方になつております。ただいまのお話の、しからばいかにして士氣の高揚をはかるかという問題につきましては、教養上の非常に大きな問題でございます。教養関係におきましていろいろこの問題を研究し、実施に移しているということを申し上げておきたいと思います。
  25. 千賀康治

    ○千賀委員 まだ私の質問の要点にあなたの氣持が行つておらないようですから、もう少しはつきり言いますが、この民族問題に危險が大いに胚胎されておるのだということと、われわれが問題にします少数民族は、決して全部が惡いのではない、大多数の者は非常に善良であり、殊に向うにおるよりも、まだ内地に來ておる方が幸福な上位の生活ができるということで、非常に感謝と憧憬とをもつて來ておる者が大多数でありますけれども、ごく少数の者、少数の不逞のやからは今、日本の警察制度がほとんど機能を停止して、どんなことをやつても取上げていないのだ、ということは、結局、おれたちは何らかの力のために日本人以上の位置に置かれておつて、どんなことをしても差支えないのだというような錯覚を起しておるために、少数のやからが非常にわれわれには癇癪にさわるような行動をとる。私はその少数の人間を憎むとともに、大多数のそれらの同じ民族の人々が、やがては十把一絡げになつて、われわれの憎しみを受けるであろうということを考えますと、非常に心配もし、また善良なる人々とともに、日本人の誤解がここに大きくうん釀されて、やがて大事にならないように、できるだけ日本人に正しくこうしたことを理解をさせ、またほんとうに民族の結合が正しい友愛の上になされるように、私は独りでそれらの人と努力を常にいたしておるのでありますけれども、要は不逞であり、好惡であるそうした少数の者、しかも誤解をしておる少数の者に対するあなた方の措置が、あまりにもいくじがなさ過ぎるのである、このことが大きな弊害をなしておる。それに対しまして、あなた方はもう少し正しくよみがえつた力の上において、この問題を処理する意思はないか。しからざれば、これはお互いの大きな不幸が釀されていくのだということを強調し、お伺いをするのであります。
  26. 樺山俊夫

    樺山説明員 民族的な問題につきまして、御意見、御質問がありましたが、この点は申し上げるまでもなく、私ども警察関係しております者としては、はつきり申し上げますと、職務の範囲外であります。私どもに與えられております仕事は、さような不法行為あるいはまた不羈の行為が発生いたしました場合にこれを完全に、しかも速やかに鎮圧する、あるいはまた関係者を逮捕いたしまして、これを処置をしていくということを中心に、それのみに專念するということが私どもに與えられました任務でございます。ただいまも、その点においては手ぬるいではないかというお話でございます。この点はお話にもありますように、日本人にいたしましても、あるいはまた朝鮮人にいたしましても、不法行為を敢行いたしまする者に対しましては、これはむろん差別なく強力に取締つていくという方針で進む以外にないし、またさような方針で今後も極力努力をしていきたいと考えております。
  27. 門司亮

    ○門司委員 この際先ほど社会党の川合君からお話がありましたように、この問題につきましては相当われわれの委員会は関心をもつて調査し、さらに將來に備えなければならないと思いますので、委員長において適当な人員を現地に派遣せられるように、ひとつ御処置を願いたいと思います。
  28. 坂東幸太郎

    坂東委員長 その数は何名ぐらいですか。
  29. 中島茂喜

    中島(茂)委員 五名くらいどうですか。
  30. 坂東幸太郎

    坂東委員長 では五名でいかがですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 坂東幸太郎

    坂東委員長 ではその方法をとります。  なおちよつと申し上げますが、川合さんからいろいろ実情を拜聽しまして参考になりましたが、委員会としまして警察法を審議する場合にも、種々なる点に疑問がありましたのですが、今の事件が起りましたにつきまして、委員会として十分研究しなければならぬ点もありますし、また川合さんの報告を聽いておりますと、新警察法のもとにおきまして、浜松市長のとつた行動が手ぬるい点があるように思います。また公安委員事件が起つてから招集するというそのやり方も手ぬるし、また招集を受けなければ來ないという公安委員も感心しない。そういう点において十分調査したいと思います。  それではここで休憩しまして、午後一時半から再開いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  32. 坂東幸太郎

    坂東委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  まず競犬法案起草に関する件を議題に供します。この件につきましては、また最後の動きが來ておりませんから、これは次回にしたいと思いますが、いかがでありましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それではさよう決定いたします。     —————————————
  34. 坂東幸太郎

    坂東委員長 次は消防法案起草に関する件を議題に供します。これに関しまして法務廳から意見がありますので、法務廰の勝尾鐐三君からその点につきましての説明を求めます。
  35. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 消防法案に対します法務廰の意見を申し述べます。  四点ございますが、第一点は最も新しい法案の二十六條でございます。この二十六條を拜見いたしますと、消防車が火災現場に行く途中の規定でございます。すなわち消防車が通過する際においては、他の車馬あるいは歩行者は待避しなければならないとか、あるいはサイレンを鳴らして行かなければならない、最高速度は五十五キロでなければならない、帰途は普通の交通法規に從わなければならない。この四点があげられておりますが、この点につきましては、すでに本年一月一日から施行になつております道路交通取締法の十條、十六條、十九條に全部規定されている事柄なのでございます。すなわち交通取締法十條におきましては最高速度について、十六條においては消防車その他の緊急自動車と他の普通の自動車あるいは車馬の優先順位について、さらにこの十六條に基きまして道路交通取締令の十九條に消防車の色とか、あるいはサイレンその他について、詳細な規定が設けられております。さらに道路交通取締法の十九條においては、交叉点などの附近において、消防車が來た場合には、他の車は全部停車して通路を讓らなければならないという規定がございますので、結局全部重複するわけでございます。そこで規定はなるべく重複を避ける方がよいのではないかとわれわれは考えております。また一面道路交通取締法においては、これらの点についての違反がありました場合の罰則が設けられており、またこの消防法案においても罰則が設けられております。してみますと、実際この違反が起きた場合に、どの條文を適用してよいかという点について、解釈上きわめて困難な疑問が生じますので、この規定は削除された方がよいのではないかと思料いたします。さらにこの規定は消防車が火災現場に行くまでの交通関係の規定でありますから、むしろ規定の性質といたしましては、道路交通取締法に讓られた方がよいのではないかと思料する次第であります。  第二点は新しい法案の第三十五條でございます。この三十五條の拝見いたしますと、放火の疑いのあるときは、その調査の主たる責任者は消防長または所轄消防署長とする。但し、警察官または警察吏員は犯罪を搜査し犯人を逮捕する責任を免れしめるものではない。かように英文がなつておりますが、この規定の趣旨は、但書と前段とを対照してみますと、消防吏員に対し警察官と同様の犯罪搜査の権限を與えるべきではないかという趣旨に思料されるのでございます。この点につきましては法務廳といたしまして、放火並びに失火の犯罪搜査ということは、犯罪搜査の中でもきわめて困難なのでありまして、現在の状況では、消防吏員にそこまでの権限を與えるのはどうであろうかという一つの疑問をもつておるのでございますが、その点を別にしまして、消防吏員についても警察官同様の犯罪搜査権を與えるべきであるということでありますれば、この條文の規定では不十分なのでございます。これだけの規定では單に任意的な搜査ができるというだけのことで、すなわち街の私立探偵程度の搜査しかできないということになるのでございます。從つてこれに対して警察官同様の犯罪搜査の権限を與えるためには、現在海上保安廰法などに規定されていると同様に、たとえば消防長、消防官、消防司令及び消防副司令たる消防吏員は刑法第九章に掲げる罪につき刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行い、消防手及び消防手補たる消防吏員は刑法第九章に掲げる罪につき刑事訴訟法に規定する地方警察吏の職務を行う。たとえばこういう條文を置かなければならないのでございます。從つてこの條文を置くことにいたしますれば、第三十五條を十分補えますし、さらにその前の三十一條の規定、これも必要でなくなると思料されます。すなわち三十一條は、消防吏員に対して警察官同様の搜査権限を與えないという趣旨のもとに規定されたものと思料されますので、もし三十五條をただいまのような條文に改正いたしますとすれば、三十一條も同時に削除すべきであると思料いたします。  第三点は罰則でございます。四十一條、四十二條等に、懲役及び罰金を併科するという規定がございますが、性質上この両種の刑の併科はすべきではないと思料いたします。すなわち併科規定をおくのは、普通利得犯に対して、單なる罰金あるいは体刑のみでは足りない。その利得までも没收する必要があるという場合に併科刑をおくことになつておりますので、この消防法の違反につきましては、軽いものについては罰金、重いものについては体刑、そのいずれかを選択するということで十分なのではないかと思料いたします。  第四点は、第三章の火災予防についての規定でございますが、この規定を拜見いたしますと、全部詳細なことは市町村條例で定めることになつております。從つて各市町村々々々によつてその規定のしかたにおいて違いが生ずる場合もあるのではないかと思います。その場合にそれに対して罰則がかかるわけでございますから、縣々によつて、同じ事柄がある縣では処罰され、ある縣では処罰されないというような事態も起るのではないかと思料いたします。さらにこの第三章の危險物についての規定は、性質上市町村條例に任せるべきものではないのではないかと思料いたします。從つてこの第三章の市町村條例についても原案通り政令と改めるのが至当なのではないかと思料いたします。以上四点でございます。
  36. 坂東幸太郎

    坂東委員長 今の法務廰からの説明に対しまして御質疑はありませんか。
  37. 門司亮

    ○門司委員 今の第三章の危險物の問題でございますが、これは政令に讓らなかつたというのは、政令で全体を画一的に取締ることに不都合を生ずるのではないか、いわゆる危險物の危險の範囲というものが取扱う場所において相当違うと思う。そうした場合に國全体を一つの政令で取締るということでは必要以上の取締りをするというようなことができはしないかと考えられるし、また事実上そういう危險のないような場合、たとえば非常に僻地の場合と都会の場合とはおのずからその危險の度合も違いますし、また取扱いも違いますので、それらについてはむしろ市町村條例の方が、私はいいのではないかというように考えられるのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  38. 勝尾鐐三

    ○勝尾説明員 ただいまの御意見につきましてお答え申し上げます。ただいまのような理由は私たちといたしまして十分理由のあることだと思料いたすのでございます。ただその際に各市町村がある程度罰則のかかることでございますから、連繋をとられて十分その間にあまり大きな差異がないように設けられるということが、われわれの方で罰則を適用していく場合に考慮していただきたいと思うのでございます。それは事柄の性質は違いますが、たとえば戰時中統制違反の場合に、同じ物資につきましてある縣とある縣が違つてつた場合に、ある縣では処罰されるが、ある縣では処罰されないというような事態が起きまして、遵法精神においても惡い影響もございましたし、また処罰する場合においても、そういう差異があると、かなり矛盾した感じももつたので、そういう点のおそれがないようになれば、各市町村條例で定められるということは差支えないことだと思料いたします。
  39. 千賀康治

    ○千賀委員 この案も大分回を重ねて檢討せられてきた案ではありまするが、火事の発生の原因も、かつては想像しなかつたようなところに主たる原因が伏在するようなことも発見せられてくるのであります。必ずしも私は、今からいたします質問が、この案が不備だということを言うばかりではありませんが、万全を期するならば、やはり私の言うこともどこかに相当に強度に盛り込まれなければならぬと思います。と申しますのは、私の郷里でも最近重要な建物が火事が起きて焼失をいたしております。その原因はまつたく不明でありますが、私の想像するところでは、そこの番人あるいは宿直員というような者が、電熱器を使用する、ところが電線の設計というものは、初めから燈数に應じて設計されておるのでありますが、それ以上の電熱を使用する折にはヒユーズが飛ぶようになつております。しかし近ごろ電燈会社の経営状態から見ましても、ヒユーズが飛んだといつて電話をかけてやつてもなかなか來ません。そこで來ければ手を束ねて一晩でも二晩でも電氣なしで辛抱するという結果になるので、市民は便利上の関係もあるでしようが、ヒユーズを自分でつけるのです。そのときに細いヒユーズをつければ、また電熱を使つたりしてヒユーズが切れますから、ときによれば大きな設計のヒユーズをもつてきたり、あるいは過熱をしても飛ばないような銅線でヒユーズのところをくつつけてしまつたり、こういうようなことをしてだんだん電熱器の使用が大きくなつていきます。その故障がどこに出るかといえば、街の電柱の上に立つておるトランスが燒けるというだけの收障ならば結構でありますが、家の中に工事をしてある電線の弱い箇所、これが過熱をして被覆のコールタールが燃え出し、ときによつて目にかかるときにそれが燃えるならば結構でありますが、屋根裏で燃えておると、まつたくの火災になつてから初めて氣がつく、こういうことで、最近の木造建築の火事はほとんどそれだと言つていいくらいだと思います。原因不明な木造建築の火事はこればかりだと言つていいと思うのでありますが、こういう原因に対してどう取締るか、これがこの法案だけでははつきりするところがないと思います。なるほど木造建築の使用であるとか、あるいは配置のぐあいであるとか、それぞれについて土地の警防関係、消防関係の團体等が了解ができるようにはなつておりまするけれども、私の言うような原因についてはどこでも取締りができないようであります。日本を滅ぼすごとの一番大きな火災の原因がわかつておるのに、そこのところに手を染めることができないということは、相当にこれは考えなければならぬのではないか。もちろん大きな電氣を使つて盗電をすることを予想されて電線の設計がせられるのではないのですから、その燈数に應じた電線を引くといえば、まず文句はないのでありまするが、その点については、ただに電氣を盗電するということでなしに、非常に國家の財産を喪失するという大きな危險が伴う事情であるという点から、また火災予防の方からも大きくクローズ・アツプされて取締られていかなければならない、かように思いますがしこの点についてこの法案だけで遺憾なきやどうか、当局の見解を承ります。
  40. 有松昇

    ○有松專門調査員 ただいまの御心配まことにごもつともと存じまするが、消防法案の第五條と第九條に規定がございまして、そのような場合にはこの規定の適用によりまして予防ができると存じております。第五條は「消防長又は消防署長は、防火対象物の位置、構造、設備又は管理の状況が火災予防又は火災が発生したならば人命に危險であると認めるときは、当該防火対象物の所有者、管理者又は占有者で権原を有する者に対し、当該防火対象物の改修、移轉、除去、使用の禁止、停止若しくは制限、工事の停止若しくは中止その他必要な措置をなすべきことを命令することができる。」それから第九條におきましては「かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し火災の発生の虞れのある設備の位置、構造及び管理云々の規定で大体防げる予定でございます。
  41. 千賀康治

    ○千賀委員 これはすこぶる廣汎でありまして、これは読んで字のごとくここに書いてあることを表から一筋道におもに取締られるところであろうと思います。私の言いますことは、ここにも抵触するかどうか知りませんが、いかなる方法にしろ電熱にしろ、あるいはその他いろいろ電氣の使い方があるでしようが、それをやつておるときはただちに停止をさせることができるでしようが、どこの家でも電熱を使用するということに対して、すぐ火災予防の見地で停止をさせるということまで想像してこの條項がつくられたのかどうか。今の説明ではむりにあてはめてみようというだけであつて、いつでも木造家屋で電熱を使用しておる際には、その使用する電氣のキロワツト時の計算と電線の負担力をただちに計算して止めてまわろうというそこまでの権限が今の説明だけでははつきりしておらないのじやないか。一番大きな火災の原因はここにあるのに、それがまだ閑却されておるように思うのですが、今の御説明によつては、私はこの項ではそこにいかないと思いますがいかがですか。
  42. 有松昇

    ○有松專門調査員 なおただいまの御答弁に附け加えて申し上げさしていただきますが、第四條にもこういう規定があるのであります。第四條には立入檢査をすることができるのでありまして「消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、又は消防職員をあらゆる仕事場、工場又は公衆の出入する場所に立ち入らしめて、その位置、構造、設備及び管理の状況並びに舟車若くは建築物その他の工作物に属する物の位置、構造及び管理の状況を檢査せしめることができる。」こういうような規定がございますから、それによりまして防げると思つております。
  43. 千賀康治

    ○千賀委員 これも私はおそらく電熱が予想されておるのではないと思います。しかし今指示をせられた四條とか五條とか、こういうもので將來設計以上の電流を使用する電熱器、あるいはこれに類するものは一軒々々消防手がまわつて全部これを止めて歩くということが確実にでき、またそれはこの項によつてしようという確信があれば、私は満足をするのでありますが、はたしてその確信をもつておられるかどうか、いかがでしよう。
  44. 有松昇

    ○有松專門調査員 お説の通り、この條項によつて完全に職務が執行できると思つております。
  45. 坂東幸太郎

    坂東委員長 いかがですか。ただいま法務廳の意見もありましたが、これについていかが取計らいますか、お諮りいたします。
  46. 酒井吉郎

    ○酒井説明員 消防廳からちよつと申し上げたいのですが、速記を止めていただきたい。
  47. 坂東幸太郎

    坂東委員長  では速記を止めて……。     〔速記中止〕
  48. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは速記を始めて……。  暫時休憩いたします。     午後三時十分休憩      ————◇—————     午後三時三十八分開議
  49. 坂東幸太郎

    坂東委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  消防法案起草に関する件でありますが、お聽きの通り法務廰からの意見並びに消防廰からの意見がありました。これらの点につきましては、その條文の入れ方あるいは整理等は委員長に御一任を願つて御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それではさよう決定いたします。  なお整理できますならば、関係方面に折衝いたします。その結果はなるべく早く委員会を開いてお諮りいたします。     —————————————
  51. 坂東幸太郎

    坂東委員長 理事一名増員の件でありますが、これは現在七名であります。しかしこれを八名にすることも差支えないのでありますから、一名増員の件はいかがでございましよか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは一名を増員いたします。  そこでその一名の決定でありますが、これも委員長に御一任を願いたいと思いますがいかがですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それではさよう決定いたします。  小暮藤三郎君を理事に指名いたしたいと思います。いかがですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは小暮君に決定いたします。  それでは本日はこれをもつて散会いたします。次会の日程は公報をもつてお知らせいたします。     午後三時四十一分散会