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川合彰武君 本問題に関しましては、私は本
会議において
緊急質問をいたしまして、そうして本問題を
中心としまして現在の
警察機構あるいはまた
運用に関しまして、
政府の所見を
伺つたのでありますが、この問題は先ほど
國家警察本部の方の
説明にありました
通りに、
禍根はすこぶる深いのであります。実は昨年まだ
内務省が存置してお
つた当時、現在も
浜松警察署長をいたしております斎藤君に対しまして、私はしばしば
警告を発したのであります。今の
説明によりますならば、
從來においては
凶器をも
つて別に
乱闘の
事件はなか
つたという御
説明があ
つたのでありますが、実は昨年の九月十二日に、ほぼこれに類似する
事件があ
つたのであります。その際にいわゆる
小野組の方が
——当時は
小野組は解散されてなか
つたのでありますが、
小野組の方は
日本刀を所持いたしまして、それに対しまして
朝鮮人側は全然
凶器を所持しなか
つたのであります。ところが
朝鮮人側はなかなか勇敢な人がお
つたと見えまして、その
小野組の
抜刀隊に対しまして無手でも
つて対処し、逆に
小野組の
日本刀を八つか九つ取上げたという
事件があ
つたわけです。そうしてそのために
朝鮮人側から当時の
浜松警察署に対して、こういうようにまだ
日本刀がある。しかも
小野組ではこういうふうにして
凶器をも
つてわれわれに挑戰してきたということにな
つて、その処置に関して、私は先ほど申し上げました
通りに、思い切
つて両方を適当に抜本的に処置すべきではないかという
警告を発したのであります。はたして
日本刀が
警察署に來て、それを
凶器の
所持者として処分したかどうかということは、その後
報告を承
つておりませんが、とにかくうやむやの間に処理されたようであります。そのために、昨年の十月ごろでありますが、
署長が仲介にな
つたかどうかは存じませんけれ
ども、はるさめという大きな
やみ料理店でも
つて朝鮮人側と
小野組とが
手打をした。その
手打をするについても、はなはだナンセンスがあるわけであります。当日午後一時に両者がそこに会同することにな
つて、
小野組の方が一時からその
やみ料理店はるさめで待
つてお
つたのに、
朝鮮人側は三時か四時にな
つてようやく來た。それに対して
小野組の方が、けしからぬではないかとい
つて迫つた。ところが何を言うか、おれ
たちの來る來ないはお前
たちの干渉を受けない。おれ
たちの方が身分的な特権を得ておるのだというような、まあ笑話めいた話があ
つて、言葉をかえて申しますならば、完全に
小野組がしてやられたというかつこうにな
つたわけであります。そういうようなこと、自体は何を意味するかと申しまするならば、要するに当時の
國家警察のもとにおいても、
浜松市の
治安というものは完全に
浜松警察の
支配下になくして、今申し上げました二つの、何と申しますか、私は遺憾ながら
朝鮮人側の方に対しまして
一つの
組織があるということを認めざるを得ないと思います。今回の問題に対しまして、
朝鮮人連盟は一部
不良分子の云々ということを言
つておるのでありまして、私は
朝鮮人連盟がこれらに対しまして、
組織的な活動をしておるとは思いませんが、しかしながらいわゆる
不良分子が
一つの
組織をも
つてお
つて、しかもそれが
相当に
浜松市の
治安の問題に関しまして有力な、無形的な
発言権をも
つておるというような
状況であ
つたわけであります。その間にしばしば小ぜり合いがあ
つたわけであります。
今回の
事件の
発端と申しますのは、先ほど御
説明があ
つた、いわゆる
樂團の問題が
原因ではなくて、実はそれより約一週間前にこういう
事件があ
つたのであります。これは
各地において行われておるようでありますが、
タバコによる
賭博事件であります。この
タバコによる
賭博事件は、
最初支那人がや
つたようであります、その後漸次
朝鮮人が行
つておるというように聞いております。これは私も見たことがあるのでありますが、それが
朝鮮人であ
つたか、
支那人であ
つたか、日本人であ
つたかは存じません。しかしながら、その
タバコによる
賭博というものは、
浜松市の最も
繁華街において
相当廣範囲に行われておるようであります。それに対しまして
市民からいろいろな批判が下される。そこで
事件が始まる約一週間か、十日前に
浜松市
警察署員の約四名か、五名らしいのですが、そのうちの二人ぐらいはたしかピストルを所持してお
つたのでありますが、それが
松菱百貨店のある市の
繁華街の
中心地で
賭博をや
つておるのを
現行犯で捕えたのであります。ところがその周囲にお
つた朝鮮人に
——朝鮮人ということを言
つておりますが、はたしてどうかは存じません。とにかくその捕えたお巡りさんが、逆に殴られ、けられ、そうしてつかま
つてしま
つた。ほかの二人はそれを傍観して
むしろ署の方に向
つて逃げてお
つた態勢があ
つたらしいのです。つかま
つたと申しますか、殴られ、けられた
警察署員は、たしか入院したということを聞いております。その際に
小野君が仲にはい
つて、この身柄を預かるとい
つて預か
つたそうであります。ところが
朝鮮人側に言わせれば、
小野がこの
けんかに対して
仲裁を立てる。つまり
朝鮮人と
警察とが
けんかをするという形に見たらしいのです。そこで
小野君が
仲裁を買
つて出た、生意気だというのが
事件の
発端らしいのです。
そういうことからいたしますれば、これは実はなわ
張り爭いと同時に、も
つていかに
浜松市の
治安が、すでに
内務省存置の当時から乱れてお
つたかということを、端的に私は御了解願えると思うのであります。こういう事柄は單に
浜松だけでなくて、各所に見られるらしいのでありますが、なぜ
浜松に比較的そういう
事件が頻発し、しかもこういう大規模な
乱闘事件が起きたかと申しますに、実は
浜松がそういう
状況でありますので、
各地から
朝鮮の人々が
浜松に集ま
つてくるようであります。それと同時に、
浜松は御
承知の
通りに
織物の産地でありまして、このごろの
やみ物資としては、
織物が一番マークされておるわけでありますので、そういう
関係のあるために、非常にたくさん集ま
つてくる。そこで
朝鮮人連盟としては、そういう
不良分子に対しまして、極力自粛するような
措置を講じておるらしいのでありますが、
朝鮮人連盟の自粛の対象になり得ない
人たちが
相当におるということを
朝鮮人連盟の方も言
つております。そのためにますますこの
浜松が全國的に
事件を起し得る
可能性のある都市と化しておる。そして
市民は日夜不安のうちに暮しておる。そうして先ほど申し上げたような
タバコの
賭博とか、あるいはほかのいろいろな
事件が頻発しておるわけであります。そういうことの累積した結果が四日から六日に至る期間の
乱闘事件なのであります。
そこで私は本
会議で質問申し上げましたように、一体現在の新
警察制度のもとにおいては、こういう問題を敏速に、しかも同時にまた
禍根を絶つような抜本塞源的に
解決をする
國家の
責任当局というものの所在が明らかでない。すなわち
國家警察、あるいはその他の問題に関しまして、これを
閣議において
発言するような
責任者はどうなるかという問題と、それからまた
地方警察、
自治体警察と
國家警察の
関係が
——これは私は
警察の方にも聽いたのでありますが、どうしても
國家地方警察に
應援を頼まなければならぬ。ところが
浜松市の
公安委員は三人であります。この
公安委員の選定に対しましては、実はわれわれも
民主連盟として
市長にも
警告を発したのでありますが、結果的には、六十を過ぎたお年寄りが多い。しかも
公安委員のいろいろな
決議と申しますか、あるいはそういう
事態に應じての勧告というものは、三人集まらなければできないということにな
つておるようであります。昔ならばただちに
電話一つでも
つてそれぞれの署に対して
應援を求めることができたけれ
ども、今はまず
公安委員を召集しなければならぬ。
公安委員が自轉車でくる、そうして協議をしてという
関係上、非常にその
應援を得るまでに時間を要するということが、今後考えねばならぬ点ではないかというふうに思
つております。それと同時にまた、たとえば二百名とかあるいは四百名の
警察官が集ま
つて、ああいうときには炊出しをしなければいけない。それを
公安委員の方から
市長に要求したところが、
市長は
市議会の議決を経なければそういう費用の捻出ができないというので断
つた。それに対して何を言うかというので、
緊急措置を講じたというわけなのであります。
從つてこういうことも今後
自治体警察の
運用において考えねばならぬ問題だろう。同時にまた、私は八日に
浜松に帰りまして、よく
事情を聽いたのでありまするが、そのときにおきまして、本來ならば
市議会が
緊急市議会を開いて、いろいろ
措置を講ずべきでありましようが、それをや
つていない。それをまた、
市長にも私は会
つたわけでありますが、
市長も何だかこの問題に関しては他人事のような感じを抱いておる。そこらにまた新
警察制度というものは、当面の
責任者に対しても、まだ徹底していないというような感を深くしたわけであります。これらに対しまして、そういうような責任の所在を明らかにし、同時にまた、新
警察制度の立法の
趣旨を活かす面において、われわれは深く考えるところがなければならぬということを痛切に感じたわけであります。それと同時にただいま
樺山さんの話によりますれば、平静に帰しておると言われますが、実は九日に月村組のところに
発砲があ
つたという。同町に私の所に、昨日も
浜松から人が参
つての情報によりますれば、両者は表面的には平静を装
つておるけれ
ども、まだまだその底流においては動いておるという実情であります。
またこれに関して、
市民としての声を一應皆さん方に御紹介するならば、今言
つたような
一つの新興勢力によ
つて、市の
治安が実質上支配されておるというような
状況でありますので、そこで
市民は、
警察もあまり手を出し得ないという現状、
從つて旧封建的な
組織である、いわゆる組というような旧
小野組に対してむしろ好感を寄せておる。
小野組が新興集團勢力に対して反撃の態勢をと
つて、それを実践したということに対して、
市民はむしろこれを支持しておるというのが実情であります。そのことはいろいろ感情の面もあるでありましよう。同時にまた、單にこれは
浜松だけでなくて、随所に見られるようなことでありますけれ
ども、そういうように
市民が、
警察力ではとうていこれを抑止することができない。そこで封建的な
組織集團の力にむしろ依存したいというような氣持にな
つておるという現状は、私は
ちようど無
警察状態という言葉によ
つて浜松市の
治安状況が表現されるように思
つたわけであります。いわば
浜松市の
状況というものは、まさに戰國時代の
状況にはい
つておるということで、新
警察制度の
運用、また立法に当
つた國会としても、深く考えるところがなければならぬ。
從つて私は
國家公安委員会につきましてはもちろんのこと、この新
警察制度の立法に当られた
治安委員会におきましてぜひとも
浜松市のこの
事件をよく現地に行かれて
調査されまして新
警察制度の
運用において不備の点があるならば、是正をするように御努力を願いたいと同時に、またそういうような守勢的な点だけでは不備であるとお考えになりますならば、新しい立法をお考えになることが、この
委員会として善処せられるゆえんではないかというようなことからいたしまして、私は
浜松市の
事件の眞相をかいつまんでお話したわけであります。
なおこの
事件の眞相はもつと詳細に申しますならば、より御認識が深められると思うのでありますが、きわめてデリケートな問題を含んでおりますので、あるいは隔靴掻痒の感を懐かれると思うのでありますけれ
ども、しかしながら必ずやこの程度の
説明をも
つてしても、すべては御了解願えるだろうと思うのであります。ぜひとも当
委員会としまして現地に
委員を御派遣にな
つて眞相の
調査に当られ、そうして今言
つたように
警察制度の
運用その他の点において檢討されると同時に、新立法のもとにおきまして、深く思いをいたされんことを切望いたしまして、私の
委員外としての
発言を終る次第であります。