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1948-04-02 第2回国会 衆議院 治安及び地方制度委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月二日(金曜日)     午後二時四分開議  出席委員    委員長 坂東幸太郎君    理事 門司  亮君 理事 矢尾喜三郎君    理事 高岡 忠弘君 理事 中島 茂喜君    理事 松野 頼三君 理事 酒井 俊雄君       大石ヨシエ君    久保田鶴松君       松澤 兼人君    坂口 主税君       千賀 康治君    大村 清一君       小暮藤三郎君    松浦  榮君       渡邊 良夫君  出席國務大臣         運 輸 大 臣 岡田 勢一君  出席政府委員         大藏事務官   平田敬一郎君         運輸事務官   大久保武雄君         運輸事務官   山崎小五郎君         國家地方警察本         部長官     斎藤  昇君  委員外出席者         運輸事務官   大見 和雄君 四月一日委員石田一松君辞任につき、その補欠と して小枝一雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月一日  海上保安廳法案内閣提出)(第二六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  海上保安廳法案内閣提出)(第二六号)  地方財政制度改革に関する件     —————————————
  2. 坂東幸太郎

    坂東委員長 これより治安及び地方制度常任委員会を開会いたします。  今日の日程は海上保安廳法案並びに地方財政制度改革に関する件であります。まず海上保安廳法案を議題に供します。岡田運輸大臣
  3. 岡田勢一

    岡田國務大臣 ただいまから海上保安廳法案提案理由について御説明申し上げます。  海上保安廳法案提案理由を、きわめて要約して申し上げますと、今日のわが國の海上における航海の安全と治安とは、終戰後諸般事情から、はなはだしい危險と不安とに暴されておるのでありますが、これに対処し得る実力のある制度組織が存在いたしておりませんので、新たにかかる制度を創設する必要があるということにあるのであります。  すなわちまずこれを航海の安全についてみますと、周囲八千海里に及ぶわが國の沿岸水域は、その特有氣象、海象から從來世界的に最も海難事故の多い水域とされていたのであります。しかしてこのような自然的惡條件は、船舶自体の構造、設備の堪航性乘組船員技倆及び船内紀律と、燈台その他の航路標識通信施設整備水路の測量、氣象観測等のいわゆる航海補助施設整備との三要件が備わることにより、初めてよくこれを克服できるのでありますが、これら三要件のうち、航海安全の客体的要件でありまする航海補助施設整備は、はなはだ不十分でありまして、わが國特有自然的惡條件と相まつて世界のダーク・シーとして今後の外國通商の上にも暗い影を投げかけているのであります。他方主体的な要件としましては、日本船舶だけについてみますに、戰時中の要請に基く船舶急速建造と、船員速成教育優秀船舶優秀船員壊滅的打撃終戰後の急激な船價高騰による優秀船建造困難等等の原因により、船員及び船員技倆が低下しておりますので、客体的惡條件を克服することができず数多くの海難事故をひき起しているのであります。しかるに海難の発生した場合における救助対策いかんと申しますと、これまた遺憾ながらはなはだ貧弱でありまして、あたら貴い人命財産を失つている現状であります。最少限度國民生活維持する上にきわめて重要な使命をもつ船舶の損失を防止し、人命財貨の安全を確保するためには、一面において船賃を改善し、船員技倆を向上させるとともに、航路標識その他の航海補助施設整備をはかり、かつ海難に備えて救助艇その他の救助施設整備充実することは、まことに喫緊の重大事であるのみならず、わが國が國際社会の一員として外國船舶日本沿海における航海を安全ならしめるためにも、必要かつ重要な國際的義務であると申さなければならないのであります。  次に海上における治安維持についてみますと、海軍の解体した今日、わが國の海上における治安維持力は、皆無と申しても差支えないのでありまして、このような事情のもとに密貿易不法國等はいよいよ増加、かつ惡質化する傾向を示しておりますし、一昨年のように不法國等伴つてコレラその他の惡疫の侵入する機会もまた増加するおそれが多くなつております、なおまた海上治安力の薄弱なのに乘じて海賊的行為、あるいは海上における経済事犯も著しく増加しているのでありますが、遺憾ながら現状におきましてはこれが取締は、税関警察海運局檢疫所水産局等の各機関が、それぞれ貧弱な船をもつて個々的にこれを行つているにすぎず、これの國家社会の秩序を乱し、または占領政策に違反する行為を抑圧し得る決定的な実力機関はい存在していないと言つても過言ではない状態であります。  海上における航海安全及び治安現状、並びにこの現状を打破しなければならない必要性は、以上申し述べた通りでありまして、ここに特に航海の安全と治安維持に仕えることを目的とする海上保安廳法案提案理由があるのでありますが、このような航海上危險治安上の不安を除くためには、まずもつて船舶通信施設その他の厖大な物的施設設備を必要とするのであります。しかしこの場合、これらの莫大な経費と資材とを要する設備を、各関係行政職がそれぞれの立場からもつことは、きわめて不経済かつ不合理でありまして、むしろ一箇の行政機関をして、航海の安全と海上治安維持のために必要とされる船艇その他の施設を一元的に管理運用せしめ、その一元的責任のもとに、航海の安全と治安維持とに関する行政事務全般にわたる包括的総合的権限を行使せしめ、税関檢疫所その他の関係行政廳との関係は、これを一般と特殊の関係において、それぞれの目的につき共助應援連絡の方法により、特殊の立場を尊重しつつ一般的立場において、より経済的合理的能率的に運営することが、経済的にも財政的にも貧弱なわが國においては最も望ましく、かつ有効であろうことは、疑いを容れないところであります。  海上保安廳法案は、このような観点からいたしまして、航海の安全と海上治安維持という二箇の、最も重大な任務をわが國現下経済的財政的基盤の上に、最も効果的に達成させようということを目的とするもので、内容的には、海上保安廳という一箇の行政官廳制度組織に関する官制法組織法たる面と、海上保安廳及びその職員のうち特定の職員職務権限に関する制度法たる面との二面の規定を中心とし、あわせて海上保安制度運用に関する海上保安委員会関係行政廳との共助に関する事項をも、その内容としているものであります。何とぞ愼重御審議下さいまして御可決あらんことをお願いする次第であります。
  4. 坂東幸太郎

    坂東委員長 この際運輸省不法入國、船舶監視本部長大久保武雄君から、この法案内容並びに関係方面との打合せ状況について御説明願いたいと思います。
  5. 大久保武雄

    大久保政府委員 この法律案は約三年前から、種々研究をいたしてまいつたのであります。その間に関係各省はもちろん、総司令部方面とも十分打合せをいたしまして、この法律案の成案を見るに至つた次第であります。  ただいま大臣からの御説明通り、この法律案の基本的なる理念として貫ぬいておりますものに二つの点があります。すなわちその一つ航海の安全であります、その一つ海上における治安維持であります。航海の安全に関しまする諸般の問題は、ただいま大臣も御説明に相なりましたが、一例を申してみますると、英米におきましては沿岸百海里について航路標識が二十二箇ありますのに対しまして、わが國におきましてはわずかに六箇にすぎない。こういうような貧弱な状況であります。また大臣も発言されました水難救済の諸施設に関しましては、八十海里もの日本沿岸に対しまして、救難所が僅かに二百九、救命艇が僅かに九十五隻といつた貧弱な状況であります。しかも船賃戰争以來非常劣惡になつておりますし、また船員技倆が低下しておる今日におきましては、航海の安全に強力なる手を打つ必要が十分追つておる次第であります。しかも今後貿易が再開せられ、諸外國との航海が非常に頻繁になる際におきまして、海上の安全を確保する諸施設維持は、日本海上産業の発展のために、まことに重大なる基盤であると申して差支えないと存ずるのであります。  次に治安維持に関しましては、大臣の御発言の通りでありますが、その筋から旧海軍の使用しておりました艦艇三十八隻の使用許可を得ております。そのうち二十八隻を現に使用いたしておるような次第であります。これを中軸といたしまして、それに小型船艇を配しまして海上治安維持につきたい、かように考えておる次第であります。この仕事を担当いたしまする職員は、法律案にもございますように、一万人以内において海上保安仕事を遂行する建前でおります。また船艇は百二十五隻、五万総トンを超えない船艇能力を持ち、また一隻の排水トン千五百トン、速力十五ノットという一つの標準によりまして、海上治安に関する船体の整備をはかる構想を持つております。なおまた海上保安に必要なる職員は、それぞれ武装をいたしまして、この海上保安任務に携ることに相なつております。海上保安に携ります地域といたしましては、港、湾、海狹その他日本國沿岸水域における海上の安全でありまして、この一つの地域的問題から、從來警察関係において行つておりました水上警察との関係が起つてまいるわけでありますが、水上に関しましては原則として、この海上保安廳がこの警察権を施行するということに相なつておるのであります。陸上の犯人が海上に逃亡いたしましたときには、その直接必要な場合にのみ水上陸上警察が出るのでありますが、その他の場合は原則として海上保安廳水上取締に当るということに相なるのであります。また漁業監視に関しましては、海上保安廳漁業監視の任に当りますし、さらに税関檢査につきましてもその任に当りますし、さらに衞生檢疫関係につきましても、その職務範囲に規定されておる次第であります。かようにいたしまして海上保安廳運輸省に設置いたしまして、海上の安全と海上治安との総合的連絡の服務に便ならしめたわけであります。  以上申しましたように、漁業におきましては農林大臣税関につきましては大藏大臣檢疫につきましては厚生大臣の、それぞれの監督を受けるように、関係の諸事項につきましては、所管の大臣監督を受けるような組織になつておりまして、運輸省外局として海上保安廳を設置する構想であります。海上保安廳機構はお手もとにお配りしてあります機構案にございますが、中央機構地方機構にわかれております。中央機構におきましては、中央海上保安廳をおきまして官房、保安局燈台局水路局をおくわけであります。但し、第二復員局行つてまいりました掃海監船に関する仕事につきましては、海上保安廳範囲内にこれを吸收をいたしまして、保安局の一部としてこれを施行実施せしめる予定をもつております。地方におきましては、お手もとにお配りしてあります地図によつて御覽くださいますように、全國に九箇所の保安本部を設置いたしております。北から申し上げますと、北海道地区において小樽、東北地区におきまして塩釜、関東地区におきまして横浜東海地区におきまして名古屋、近畿地区におきまして神戸、中國四國地区におきまして廣島、九州地区におきまして門司、さらに裏日本におきまして新潟及び舞鶴に保安本部を置きまして、海上の安全の確保に遺憾なきを期したいど考えております。そこでこの保安本部を置きました大体の目標といたしましては、陸上の諸行政廳との連絡並びに警察関係機関との連絡及び関係筋出先との連絡、さらに海上関係の部局との連絡並びに港湾の基地的重要性というものを考えまして、それぞれ全國に配置をいたした次第であります。保安本部の下に海上保安本部を設けまして、その下にさらに支部を設け、全國に約五十の基地を設定いたしまして、この海上保安職務の遂行に遺憾なきを期したいと存じておる次第であります。  以上はなはだ簡單に申し上げましたが、なおまた詳細なる諸問題、数字等につきまして、山崎政府委員から附加えて御説明申し上げることといたします。
  6. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 ただいま大臣並びに大久保政府委員より御説明を申し上げましたが、私この問題が発足いたしました当時から、この問題に関係をしておつた者でありますので、今日この法律案がかかる形式をもつて出てまいりましたまでの経過を、御審議の御参考のために一應申し上げておきます。  先ほどから大臣から御説明ありましたように、海上保安というものは交通の安全と治安という二つの面がございますが、運輸省といたしましては、大体交通安全の立場から仕事をやつております。その仕事内容を申し上げますと、大体燈台水路、それから船舶のいろいろな安全檢査船員職能試験、あるいは港におきまする工場、事務、その他いろいろありますが、そういうものが大体主な仕事であります。それから内務省は水上警察仕事海上においてやつておるわけであります。大藏省税関密貿易取締海上でもやつてつたのであります。それから農林省は漁業監督、密漁の監督というようなことをやつております。あるいはそのほか厚生省の檢疫、動植物の檢査というようなそれぞれの事務をやるために港に出先機関をもち、しかもそれを執行するために、いろいろ船通信その他の施設をもつてつたわけでありまするが、戰前におきましては、大体海軍という海上におきまする実力機関がありましたために、必要な場合には海軍にS・O・Sを出しますと、大体海軍の協力を得てそれの任務を完全にやつてつたわけでありますが、終戰後その海軍がなくなりましたために、海上治安関係に非常な空白ができてきたわけであります。こういう状況にありましたところに、わが國から引揚げました朝鮮、支那等の國民が再び日本へやつてくる。いわゆる朝鮮人の密航というものが非常に盛んになりました。それに伴いまして密貿易も多く行われるようになり、あるいはコレラ船等もやつてまいりまして、九州沿岸は非常な脅威にさらされたわけであります。これがため遂にG・H・Qにおきましても、日本政府に対しまして昭和二十一年の六月十二日に、こういう不法國船舶取締りをやるように指令が出たわけであります。この指令に基きまして海運総局に、不法國船舶監視本部ができまして、地方といたしましては、九州海運局不法國船舶監視本部というものができておりまして、現在までその仕事をやつておるわけであります。  最初この仕事をやりますにつきまして最も問題でありますのは船でありまするが、何分海運局がもつております船は、主として港内サービス用の船等ありまして、沖まで出る性能がないのであります。いろいろ関係方面折衝をしておりましたが、昭和二十二年の四月二十二日に特務駆潜艇及び特務哨戒艇海上警察目的に利用してもよろしい。なおこれは航海安全の諸般仕事にも使えという向うからの指令が出まして、現在その三十八隻のうち二十八隻をもつて海上パトロール業務をやつております。あと十ぱいは掃海用の方に從事しておりますので、これもその業務の終り次第に、こちらに來ることになつております。現在そういう状況になつております。  以上のように、とりあえず当時の海上の不安に対して暫定的な施策を講じましたが、日本といたしましてはこの海上の安全、治安維持ということにいかなる対策を講ずべきか、恒久的な対策案を考える必要に迫られておつたのでありますが、皆様も御承知の通り終戰直後日本警察制度調査研究のためにヴアレンタイン氏一行がこちらにお見えになつたのであります。その中にミールス大佐という方がおられまして、これが日本海上保安制度は、いかなる保安制度を設ければよろしいかということをレポートする使命をもつてこられたのであります。同氏はそれ以來まる一年中にわたりまして日本の実情を調査研究されまして、同氏レポートをG・H・Qに出されたわけであります。このレポートの結果もあつたと思うのでありますが、この三十八隻の特務駆潜艇特務哨海艇がこちらにくるようになりまして、日本政府といたしましては、これの運用をさらに合理的に、あるいは強力にやる必要があるというので、昭和二十二年の五月二十二日に吉田内閣の際ですが、海上保安制度確立に関する件という閣議決定をしていただきまして、運輸省外局海上保安廳、今大久保政府委員から御説明申しましたような、あの構想のもとに閣議決定をしてもらつたのであります。これをもつてG・H・Qの方に設立の申請を出しておつたのであります。その申請に基きましてG・H・Qにおきましてもいろいろ研究をされたのでありますが、日本政府で考えておる構想は、できるだけ各省立場を考えて、各省にそれぞれ海上においても実力機関をもたせる。それにプラス・アルフア的に海上保安廳の船をもつて仕事をさせるというふうな構想のもとに案が進められたのでありますが、この案に対してG・H・Qとしては、非常に不徹底である、アメリカみたような金持の國でも、なるべく海上におけるそういう取締機関というものは、合理的に一元化して実際にうまくやつておるのであるから、日本もほんとうに役所が民主的に相協力するならば、中央から地方までみな自分機関にしなくても合理的にやれるはずだという状況のもとに、最も合理的に徹底した海上取締機関を設ける方針になられまして、その線に礎つて今日提出されておる海上保安廳法案ができあがつておるのであります。それは大体G・H・Qでもいろいろ調査研究されまして、昭和二十三年三月十二日に正式に向うからそのアツプルーブの内示がありまして、その内示に基いてざらに日本政府といたしましても閣議決定をいただきまして、正式なアツプローバルをもらつたのであります。すなわち三月二十九日にアツプローバルがまいつたような次第であります。大体この法案につきましてはG・H・Qときわめて深き連絡をもちまして、また向うからの非常な強い御指導に基いてこの法案ができておるような次第でございます。  以上簡單でございますが、一應御参考までに御説明申し上げます。
  7. 坂東幸太郎

    坂東委員長 他の省との折衝は全部済んでおりますか。
  8. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 他の省との折衝は済んでおりまして、大体議会に提出するまでに次官会議、それから閣議を経まして出たわけであります。各省ともいろいろ御意見がありまして、その意見をもちましてG・H・Qともいろいろ相談いたしまして、ここに出ております法案に落ちついたのであります。
  9. 門司亮

    門司委員 この海上保委員会の構成についての御説明が願いたい。
  10. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 海上保安委員会警察公安委員会と違いまして、大体海上保安廳及び地方海上保安本部諮問機関になつております。大体先ほど申しましたように、いろいろ各省仕事関係が多いので、関係各省、それから地方有力者、そういう方面関係者をもつて委員会を構成したいと思つております。まだ具体的な編成は考えておりませんが、構想としてはそういうふうな考えをもつております。
  11. 門司亮

    門司委員 この法律できめられた港長税官長との関係でございますが、この権限はどうなつておりますか。
  12. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 この法案できめてあります港長というのは、大体港におきます交通警察執行をやるものであります。從つて税関は、密貿易取締りとか、あるいは外國から來ます輸入品に対する税を課するとかいうことをやるのでありまして、全然仕事の性格は違つております。大体港長税関との関係におきましては、税関港内におきまする業務執行等をやりまする場合に、從來税関でも船をもつておりましたが、アメリカ考え方で、アメリカでもそうやつておるというので、できるだけ港におきまする各省出先機関交通艇というものは港長で一元的にもつてつて、バス的に、税関官吏もあるいは檢疫官吏も一艇の船に乘せて、かためて船が行つて各省仕事をやつてこい、そういうふうになりますが、仕事をやる面においては、性格的には全然別個の機関であります。
  13. 門司亮

    門司委員 大体國の予算はどれくらいの額でしようか。
  14. 大久保武雄

    大久保政府委員 予算の概要は、概数を申しますと、海上保安廳全部予算が十二億円であります。これは要求額であります。そのうち海上保安に必要なる予算が四億円であります。
  15. 門司亮

    門司委員 もう一つ聽きしておきたいと思いますが、船舶に対する性能檢査に関することは保安廳でやはりやるようになるのですか。
  16. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 船舶安全檢査は、これは性格的に申しますと、やはり一つ交通安全警察でありますので、海上保安廳に属するのでありますが、これは、ほかの造船業の会社のいろいろの監督、あるいは一般船舶行政とも非常に関係が半面においてありますので、船が海上に出ましてからの安全檢査保安廳でやりますが、ドツクに上つておるときの檢査とか、建造中の檢査ということは、大体今まで通り海運局でやるということになつております。アメリカコストガードでも、コストガードでやらないで、ある民間団体、これは公共機関でありますが、それに船舶檢査はやらせております。この点は了解を得ております。
  17. 門司亮

    門司委員 なおそのことについて、突こんで聽くようですが、定期檢査あるいは特別檢査の場合も、やはり從來と同じような形で行うのでありますか。
  18. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 そうでございます。
  19. 坂東幸太郎

    坂東委員長 これで見ますと、從來水上署はなくなるわけですが、そこ不便が生じないですか。
  20. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これは、私の聞いておりますところによりますと、陸上警察においても、地方警察においては船をもたせる、しかしそれはあくまで陸上における警察の直接必要な範囲に属することであるということで、結局從來ありました水上警察みたような水上警察を專門にした警察制度は、変つてくるのじやないかというように聞いております。まだ具体的にきまつておりませんが、大体関係方面考え方ども、大きい船は海上保安廳の方にもたして、小さい船、たとえば二十トン以下くらいの船を陸上警察の方にもたせるというふうな考え方をしているようでありますが、これは何トン以上何トン以下というふうなことは、陸上警察の方とは具体的に話を進めることになつておりますが、まだ最後の決定までには至つておりません。
  21. 坂東幸太郎

    坂東委員長 船をもたせるというのは國家地方警察ですか、自治体警察ですか。
  22. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 大体私どもの聞いておりますのは、自治体警察の方には船をもたせる、それから國家地方警察についても自治体警察と同じようにもたせるというふうな御意向をもつておられるようでありますが、私どもとしては、それに対しては別に、自治体警察にはもつてつてもいいけれども國家警察にはもつてつてはならぬというようなことをうちつとも考えておらぬのであります。その点は、私どもとしましては、國家警察の方でもたれることに反対でないのであります。
  23. 坂東幸太郎

    坂東委員長 横浜とか神戸のような大きな市になりますと、海上関係が相当複雑ですから、やはり水上署を設けるとか、あるいは普通の警察でも水上関係仕事を扱わねばならぬと思いますが、そういう点について別に自治体側と相談はなかつたのですか。
  24. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 それは、たとえばある港やあるいは地方警察が船で犯罪なんか取締る場合に、それはお互いに競合することもございますが、その点はお互いに協力してこういうものをやるということになつておりまして、そういう点の競合ということはあつても差支えないというふうに考えております。
  25. 坂東幸太郎

    坂東委員長 なお、たとえば横浜でいいますと、その折衝は東京の管区本部でやるのですか。そういう折衝は何もないのですか。
  26. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 どことでございますか。
  27. 坂東幸太郎

    坂東委員長 たとえば横浜市の場合、水上署関係ですね、そういう折衝のようなことは今までないのですか。
  28. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これは、今でもこのことにつきましては各省次官会議決定しておりまして、必要なときにはその船に警察の人も乘ることもありますし、税関の人もその船に乘つてつているような状況であります。
  29. 坂東幸太郎

    坂東委員長 この法案の審議に関する委員会はこの程度にし、あとは月曜日にいたすことにいたしまして、この際暫時休憩いたします。     午後二時五十分休憩      ————◇—————     午後三時三十一分開議
  30. 坂東幸太郎

    坂東委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。
  31. 門司亮

    門司委員 一應大臣がおいでになつたら、大臣によく御相談をしようと思つてつたのでありますが、地方財政委員会の答申案がすでに政府にまわり、さらに大藏省によつてこれが檢討されておると思いますが、その地方財政委員会案が大藏省でどの程度まで今審議が進められておるか、その辺の事情を先に承つておきたいと思います。
  32. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 ただいまお尋ねの件につきましては、大分前から大蔵省といたしましても愼重に研究しつつある次第でございます。趣旨におきましては、財政委員会意見は完全に一致しております。新しい制度のもとにおきまして、地方団体が相当な新しい財源が要るということと、それから現在の経済情勢に鑑みまして地方団体の財政が、所によつては相当窮迫をきわめておるところがございますので、そういう事態に対應いたしまして、この際といたしまして適切な地方税制を樹立するということにつきましては、私どもつた地方財政委員会意見と同意見でございます。ただこれを実現するためのいろいろの方法がありまするが、その方法等につきましても財政委員会におきましては一應の案をまとめられまして、議会等にも御提出になつておることも私ども承知いたしております。このことにつきましては、目下大藏省におきましても愼重研究中でございますが、現在一番問題といたします点は、地方財政委員会の案によりますると、酒、タバコに対しまして地方団体において、國とは別に消費税を賦課するということを認めるようにという提案がありましたのでございます。その点につきましては、大藏省といたしましても愼重に研究中でございますが、御承知のように酒、タバコは從來から、國庫財政を運営いたします場合におきましての最も大きな財源といたしまして、常にこれが充実に努めてまいつたわけでございまして、御承知のように本年度といたしましても、相当巨額な歳入をこの二つ方面から確保しておるというような実情もございますので、これにつきましては從來通りやはり國庫において徴收するというのが建前として正しいのでなかろうか。こういうものにつきましてこの際地方団体に認めるということは、少し行きすぎじやなかろうかということで目下研究中でございます。  それからいま一つの問題は、入場税の委讓の問題でございますが、入場税は御承知の通り昔は地方税であつたのでございます。それを支那事変以後御承知のように國家財政の緊迫に鑑みまして、これを國において徴收することにいたしたのでございます。これをこの際といたしまして、地方団体に全面的に委譲するようにというのが、財政委員会一つの有力な提案でございました。この点につきましてもなお相当研究の余地がありはしないかというふうに考えております。それは昔のように非常に低い利率と申しますか、入場料の一割か二割程度の課税でありますれば、これはそのまま地方団体にやりましても適切ではなかろうかと思いますが、現在においては入場税の税率は十五割というきわめて高率な課税になつております。これは入場料につきましては、一方において税制額がきめてあります。その統制額というものは、これは原價計算等によつて出ていると思いますが、比較的他の物價、料金等に比べまして低くて済んでいるというような実情もあり、そこにまた高率な課税をする余地が出てきておるのではなかろうかと思いますが、十五割というような高率の課税の地方税を、そのまま地方団体に委讓するということになつてきますと、所によりましては地方団体に相当な財源がいく場合があります。そうして町村と申しますか、村費と申しますか、そういう方面についてほとんどわずかの財源しか行かない。現在は、從來の沿革等にも鑑みまして、入場税の総收入の約三割程度は分與税の財源として、分與税の配分比率に從いまして各地方団体に分與いたしております。この制度をやめまして、現在の高率の課税をそのまま当該地方団体に委讓するということになりますと、財源に非常にでこぼこを生ずるおそれがありはしないかということが一つ考えられるのでございます。その結果といたしまして、もし地方団体に委讓するということになりますと、結局結果におきまして現在國でとつておりますような收入を確保するという必要が、必ずしもなくなるというような点もありまして、全体といたしまして歳入に欠陥を生ずると申しますか、ロスを生ずるおそれがありはしないか。所によりましては百分の百五十というような高率な課税を設定しなくてもよい所も出てくるかもしれません。また実際問題といたしまして百分の百五十という課税は非常に高いので、これを引下げてもらいたいというような希望があります場合、國が徴收しております場合に比べて、なおかつこれを確保するというような見地を貫くことが、困難になるというような節もありはしないかということを考えますと、この問題も早急に、ただ地方団体に委讓するということで問題の解決は得られないのじやなかろうかということにつきまして目下研究中でございます。その他、の問題につきましては、事業税の問題とか、電気、ガス税の問題とか、各独立税等につきましても若干の研究事項が残つておりますが、私どもといたしましては、できるだけ早くこれらの政府としての案がまとまりまして、最初申し上げましたように、地方団体が新制度下におきまして、相当な財源を確保して健全な活動ができるように、研究を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。一應中間的な段階の意見を申し上げまして御参考にしたいと思うのであります。
  33. 門司亮

    門司委員 さらにそういう意見を伺つた上でお聽きしたいと思いますのは、地方団体中央金庫設置に関する案が示されておると思いますが、この案に対して大藏省はどういうふうにお考えになつておるか、その辺を一應お伺いしておきたいと思います。
  34. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 地方団体中央金庫の問題は、大藏省におきまして銀行局で所管しておりますので、私が責任のある御意見を申し述べることは差控えたいと存じまするが、大体の今までのいきさつは、私が聞いておるところによりますれば、地方団体が今非常に資金の調達に困難を感じておるということは、大藏省におきましてもよくわかつておるようでございます。ただ一時の資金調達につきまして、あるいは一時でなくて、相当長期にわたる健全な借入金等の調達につきまして、適当な金融の途を講ずる必要があるということにつきましても、これは当然のことと思いますが、大藏省としては全然異存がないように聞いております。ただこれにつきましても、いかなる方法でそういう途を講ずるかということについては、相当意見がございまして、大藏省といたしましては、現在のところ預金部の資金と申しますか、郵便貯金等が大部分でありますが、この資金の運用を適切にはかるということになりますと、大体同じような目的を達することができるのじやなかろうか。現在においてもこの預金部資金の運用につきましては、地方団体の意見をできるだけ取入れることができるように、委員会等につきましては地方団体を代表せられる方たに多数はいつていただきまして運用しておるように聞いております。ほとんど大部分の資金が、今日では地方団体の方に運用されておるように聞いておる次第でございまして、この組織をさらに改善し強化するということになりますれば、ほぼ同一の目的を達することができるのじやなかろうかというような意見のようでございます。もしも新らしくここに金融機関を設けるということになりますと、その金融機関は一体資金をどこから調達するかという難点がございまして、現在の情勢からいたしまして、地方団体がみずからの力で多額の資金を集めるということも、なかなか困難じやなかろうか。そういうことになりますと、いきおい政府から出支するか、あるいは日本銀行等から借入れるということになると思いますが、そうするとその額次第によりましては、結局その資金の調達に困難を感じまして、都合によつてはインフレ的な結果を生ずるおそれもあるのじやなかろうかといつたような点につきましても、愼重考究すべき点があるように聞いております。ただこの問題は私直接所管しておりませんので、責任のある御回答は銀行局長のおいでを願いまして、さらに確実な御意見を聽いていただければいいのじやなかろうかと存ずる次第でございますが、私が一應関與して存知しておるところを御参考に申し上げる次第でございます。
  35. 門司亮

    門司委員 さらにそれに関連いたしまして、中央にありまする起債調整委員会と同じように、地方においてもやはり起債調整委員会をこしらえるような指令が、大藏省として出してあるはずでありますが、これが未だ全國的に行渡つておりません。大体大阪、神戸等の関西方面においては相当な成績をあげておると思いますが、その他の地域においては、この地方起債調整委員会がまだでき上つていない。從つて本店銀行あるいは日本銀行の支店等を持たざる地域においては、地方債の調達に相当な困難をしておるような状態になつておると思いますが、大藏省はこれに対して指令を出しておりますので、その設置に対して慫慂されておるかどうかということについての意見を一應お聽きいたしまして、さらに具体的の質問をいたしたいと思います。
  36. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 委員会の他方における運用等につきまして、私案は詳細なことは存知いたしていないのでございますが、私の存知する限りにおきましては、とにかく預金部の資金の大部分は地方団体にこれを流す、しかもできるだけその預金の発生した地方団体に流すという方針で運用しておるように聞いております。その運用を適正ならしめるためにお話のような組織も考えまして、目下促進をはかつておるところと思うのでございますが、もちろんそういうことができました以上は、お話のごとくこの制度を全面的に活用いたしまして、円滑適正な運用をはかるべく努力していくべきじやなかろうか、それは当然ではなかろうかと、うふうに、私どもとしては考える次第でございます。ただ詳細な点になりますと、先ほども申しましたように、銀行局長をお呼び願いまして、お聽き願えれば仕合せかと思います。
  37. 門司亮

    門司委員 それでは銀行の問題につきましては、いずれ後ほどお伺いするごとにいたしまして、大藏省の今お考えになつております点についての私ども意見を一應申し上げて、さらに御答弁を願いたいと思いますが、今地方財政は極度に逼迫しておることは、おそらく大藏省は御存じのことと私は思うのであります。実際の状態を見ますと、起債の認可等は大体一箇月くらいでこれを受けておりますが、これを現金化することに非常に困難を極めております。大体各都市におきましては、二十二年度の起債額に対する三〇%ないし五〇%程度が辛うじて現金化されておつて、その他は起債の認可は受けておつても、それが現金化されていないというのが、大体地方の情勢であると見て差支えないというふうに考えられております。そこで地方においてはどういう結果を來しておるかといえば、やむを得ず今日一時借入金をもつてそのつじつまを合わしておるということになつておる。政府は預金部の金を全面的にまわすというようなお話でございますが、私は預金部その他の金が全面的にまわつておれば、こういうことはないはずであると思います。殊に地方財政の苦しいのは、その苦しい中から——預金部の利息は大体七分見当でありますが、一時借入れの場合には、どうしても九分八厘何がし、約一割近くの利息を拂わなければならぬ。しかもそれが短期間の場合においては、はなはだしいのは一箇月あるいは六十日ごとに借替えが行われなければならぬ。そこで地方財政はまつたく行き詰まつておりまして、しかも今日の情勢からいきますと、先ほど申し上げますように、地方に起債調整の委員会等があつて、銀行団と地方自治体との間に円満に話合いができて、大体のわくがきめられて、おのおのの責任の上でこれを処理していくというような機関がある所はまだしもでございますが、そういうもののない所にありましては、まつたく金融に行き詰まつてしまうというのが実情であります。さらに中央政府の從來の行き方を見れば、産業資金に対しては相当なことをお考えになつておるようでありますが、行政少いように考えられるのであります。殊にこの行政資金の長期の貸出し等につきましては、地方団体としては、政府が産業資金の面に振当てております金高の中の一割内外しか、おそらくこれに充てられていないのではないかというようなことが一應考えられるのであります。從つて地方自治体はまつたく金融の面に行き詰まつており、さらには先ほども申しますように、預金部の金であるならば大体七分くらいの利息で済むものを、普通銀行から借りておることのために、どうしても一割近い利息を拂わなければならず、しかも繰返して申し上げますように、期間はほとんど六十日が長期であつて、短かいのは一箇月で借替えが行われる。これではまつた地方仕事はできません。私どもはこういう状態であつては、いかに地方分権をいたしましても、今日の地方財政がこういう形で行われておる以上は、満足な地方行政は行われない。地方行政が行われなければ、日本の民主化と申しましても、とうてい程遠いことであつて、われわれは地方分権を行政的にいたしますと同時に、財政の面を十分に考えてやる。さらに独立の完全にできるようにしてやらなければならないのでありますが、大藏省意見といたしまして、先ほどお聽きいたしました地方団体中央金庫のごときも、政府が相当な支出をしなければできないであろうというような御意見であつたと思いますが、もちろん預金部の金が政府のお考えのように十分地方財政を賄える、地方自治団体の要求額に達することができない現状になつておりますので、これを補助する意味にいたしましても、私どもはこういうものをもちたい、そうして完全に地方自治体が財政的にも独立する機会を與えるということが私は必要じやなかろうかと思う。これは國の観点から申し上げますと、この財政面を、いわゆる國の財政面と地方の財政面とを二元化するということは、非常に行政的に困難であるというようなお考えがあるかもしれませんが、これは非常に間違つた考えではなかろうかと考えておる。地方の独立を完全にいたしますことのためには、財政面からこれをしばつてつて地方が完全自治体の要素を備えることのできない仕組をするということは、地方分権をしようとする今日の地方行政に対する逆なものの考え方であつて、私は地方が財政的にも行政的にも一日も早く独立する機会を與えることが、日本の今の行くべき一つの方針ではないかというように考えておるのであります。從つて地方団体の中央金庫等のことにつきましても、本日はおわかりにならないというようなお話でございますので、これ以上私は突込んで聽きませんが、その他の財源の問題にいたしましても、あるいは酒、タバコの問題にいたしましても、入場税の問題にいたしましても、いつまでも中央にその紐をつけておいて、そして先ほどから申し上げております意味と同じことでありますが、地方の行政の独立することを財政的にしばつてしまうというような考え方を、一日も早くやめてもらいたいと思う。そして地方の独立するように、なるたけ早く大藏省といたしましては案を拵えていただいて、國会にこれを提出していただきまして、実際的に地方が行政的にも、財政的にも独立し得る機会を一日も早く與えていただきたい。從つて、その國会にあなたの方で提案されまする時期が、大体いつごろになるかということを、一應お伺いをしておきたいと思うのであります。こういうことを私が申し上げますのは、御承知のように警察あるいは消防制度というものが地方に移讓されてまいつておるのでありますが、これは今のところは從來と同じような形の上において取扱いをされておる。しかしながら地方におきましては、その警察の廳舎を建てるとか、あるいは設備を完備することのために相当の金が要る。しかもこれは國庫でこれを負担すべき建前になつておりますが、なかなか思うようにいかない。同時に相当警察官の数が殖えております。從つてこれを全部賄つてつて、そして完全な警察権というものが自治体に移るということにいたしますために、大体七月ごろからその切替えをいたしたいという意向だと私は思いますが、それまでにこれらの問題の解決がついていないと、地方におきましても行政の立案をすることのためにも、非常に困難をいたすというようなことが考えられますので、大体いつごろ大藏省意見がまとまつて國会に提案するような運びになるか、予めその時期がおわかりでしたら、ひとつお話を願いたいと思います。
  38. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ただいまの御意見の中の、地方団体の独立性をはからなければならないということにつきましては、私ども全然異存がございません。新しい日本を建設するためには、やはり地方団体といたしまして、自己の実力をもつて十分に活動できるような基礎をつくるということは、緊急不可欠のものと考えておる次第でございます。ただそれを実現する方法といたしまして、從來からの沿革なり、あるいは今後における実際の國家財政との関係、いま一つ國民から申しますと、結局負担は國秘も地方税も同じでありまして、両者の間においてやはり制度としては、それぞれ調整をはかつて設けておくようにしないと、國民として非常にめんどうな問題が出てくるというようにも相なりますので、制度自体をお定めになります場合においては、そういう問題についても、よく御檢討の上定めていただきたいというふうに考えておる次第でございます。  なお地方団体が金繰りに非常に困つているということは、私どもたびたび聞いております。私ども主税局におきましても、独立税等についても大分このごろ、実にどうもどうであろうかというような独立税の申請も來るのでございますが、地方団体の財源の実情を考えますと、われわれは結局、どうも税としては必ずしもどうであろうかといつたものまで、実は認可をいたしておるような現状でございます。從いまして地方団体の現状に即しまして、この際お話のようなラインで根本的な解決をはかる必要のあるということについては、まつたく同感でございます。  最後に、しからば新しい制度の案をいつ出すかというお尋ねでございますが、これは私どもといたしまして、一刻も早く出すように取計らいたいと想つておるのでございますが、ただこの問題はいろいろ関係するところが廣うございまして、一方においては國税についても全面的な改正を目下立案中でございますので、國の予算についても、新しい物價なり賃金との関連において、目下來年度の予算には本格的審議を進めておるような関係もございますし、地方団体の財政整理についても、いきおいそういう点もよく併せ考えまして、できるだけ妥当な改正案ができるように取運ぶべきものではなかろうかというふうに考えておりますので、遅れておるような次第でございます。しかし私今時期をいつ何日に提案するということは申し上げかねますが、大藏省といたしましては、なるべく早く成案を得て議会に提案するようにしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  39. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 大体門司君から御質問がありましたので、簡單に二、三の点だけ御質問申し上げたいと思います。ただいま聽いておりますと、いろいろ地方に税を委讓することに難色があるようなお話でございましたが、全体として考えてみまして、いろいろ差触わりがあるということは十分わかるのであります。何の問題にいたしましても、地方制度の民主化の問題にいたしましても、あるいは警察の分権にいたしましても、考えようによれば、いろいろ問題があると思うのでありましで、それを今日まで制度の上ではとにかく、一應地方分権あるいは地方自主化ということをやつてきたのでありますから、この上は今度は財政の面において、やはりそういつた地方分権化及び民主化、自主化ということをやつていかなければならない段階に到達しておるのであります。依然としてやはり、今までのように中央集権的な考え方をもつでいたり、あるいはまた地方財政の中央依存ということを考えておつたのでは、結局佛をつくつて魂を入れないという結果になるのであります。そこでいろいろと國の財政も窮乏しておりますし、これを全面的に地方に委讓されることには困難があるということはわかるのでありますが、思い切つた措置を講じてもらわなければ、國も生きていくことができないし、地方も生きていくことができないという結果になると考えるのであります。そこで酒、タバコの消費税にいたしましても、國税として今までおとりになつていた側から言えば困難もあると思います。しかしこれはどうしても地方を生かしていかなければならない。地方を生かすことが結局國を生かすことであるというふうにお考えになりますならば、やはり酒、タバコの消費税というものも、國と地方を調整した関係において、ひとつこの際地方に御委讓が願いたい。こういう考えをわれわれとしては地方制度の民主化、分権化ということを、一昨年からずつと手がけてまいりました治安及び地方制度委員として、強い希望をもつているわけであります。入場税の問題にいたしましても、お話のごとく入場税は元來地方税であつたのであります。そこで地方の民主化ということをぜひともしていかなければならない、財政上自主化していかなければならないということであれば、一應これまで地方税として取つていたものは、まつ先にこれを地方に委讓するという立場をとつていただかなければならないと考えるのであります。なるほどその当時の入場税と現在の入場税とは、非常に額の上において違つております。しかしこれは遊興飲食税などとは違い、割合に税の捕捉が容易でありまして、比較的権限のない地方団体におきましても、入場税であれば大体國税の場合と同じように、これを捕捉して市町村の財源とすることができる。技術的に言つても非常に簡單なものでありますし、かつ先ほど來お話のありました消防であるとか、あるいは警察制度であるとかいうものの財政需要に適した税である。田舎にはそれほどの警察が必要でない代りに、入場税もあまりはいつてこない。都会においては入場税が非常にたくさんはいる、また同時に警察方面の財政需要も、それに應じて大きいということもあるのでありますから、入場税などをまつ先に地方に委讓される必要のある税目として取り上げていかなければならないと考えているのであります。これについていろいろと難色があるようでありますが、先ほど門司君のお話にもありましたように、二十三年度の予算というものは、きわめて大ざつぱな予算地方公共団体においては組んでおるのでありまして、その肉づけば結局國税の地方委讓あるいは地方税として新しく認められるものなどを持つてつて初めて財政的な裏づけができるのでありまして、ほとんどこれは旱天に慈雨を望んでいるような状態で、一日も早く地方財政としては税の委讓ということを待つているわけなのであります。三月六日までに一應國会に提出されなければならない期限附の地方財政法というものが、今日遅れているわけでありますが、なおいろいろの折衝を必要とするといたしますと、六月あるいは六月半ばごろにならなければ、本式にきまらないのではないかというふうに考えているのであります。そういうことでは昨年もそうであつたのでありますが、住民税などの徴收に非常に地方は弱りまして、その上六・三制の校舎の増築などがあつて、昨年十一月ごろまでは地方財政はまつたく疲弊困憊しておつためであります。そういうことを本年もまたやることは、中央事情もさることながら、地方事情も少しは考えていただかなければならないのでありまして、この点を十分お考えくださいまして、急速に地方財政の確立をはかつていただきたいと考えておるのであります。この点につきまして先ほど門司君の質問にありましたように、いつごろになつたら地方財政法が國会に提出され、眞に切替ができるかということをさらにお答え願いたいと考えます。
  40. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 地方団体の財政が非常に困窮しておる事情につきましては、先ほどからの御意見もございましたし、また私どもいろいろな実例について十分存知しております。從いましてこの際各般の新制度が行われるに伴いまして、地方団体につきましても、できる限り確固たる財源をもちまして、十分な活動ができるようにいたさなければならないことにつきましても、全然異存がございません。ただその方法につきまして、目下いろいろ研究中でございます。よく考えてみますと、地租、家屋税といつた不動産に対する課税という面が、いずれの國におきましても、地方税としては大部分の財源を占めるのが普通でありまして、アメリカにおきましてもプロパテイ・タツクスというものが、ほとんど町村の財政の大部分を占めており、イギリスにおいてはレートというものがございます。こういうものも不動産税をもつてほとんど占められておるという状況であります。わが國におきましても実は地租、家屋税が最初から地方団体の相当大きな財源として認めるという趣旨で、現在におきましても御承知のように、地方団体の財源に相なつておるのでありますが、この課税が一方におきまして物價統制との関係上十分な歳入をあげるに至つていない。地租や家屋税等は昔は相当な收入割合を占めていたのですが、最近ではきわめて微々たる割合しか、全体の地方税の歳入の中において占めていないというような状況でございます。しかしながら方向としては、こういうところに地方団体としても、相当の財源を確保し得る途が残されているのではなかろうかというふうに私どもも考えております。なおその他不動産取得税とか、あるいは今回新しく、あるいは今までも地方的には賦課しておりますが、電氣、ガスに対する——なかんづく電氣に対する一種の課税、こういつた方面におきましても相当な財源を確保し得る途が残されておるのではなかろうか。それから目下問題にしておりますのは、現在は営業者に限つて営業税を賦課しておりますが、この範囲を拡張いたしまして、営業者以外の独立的事業には賦課するというのも一つの方法ではなかろうかと考えておるのでございます。そういうような各般の新規財源、あるいは現在地方団体に認めております各枕掛に対する課税の拡張、そういうことにつきましてもこの際全面的に改正を加えまして、それによつてできるだけ地方団体の財政に事欠くことのないようにいたしたいというのが、私どもの第一の考えでございますが、しかし一方、地方団体の財政全体としまして相当苦しい実情もわかつておりますので、全体としてどういうようなことにもつていくかについて、目下いろいろ考えて研究いたしておる次第でございます。ただ一番大きな國税としての收入である酒、たばこの消費税及び入場税につきましては、現在の両税の実際の税率の状況あるいは國家財政との関係、あるいは委讓した後における地方団体の財政がどういう結果になるかということについて、いろいろ目下研究いたしておる次第でございまして、現在のところは、さき申しましたような意見をもつておると申し上げるよりほかないと思います。時期については、今いつまでに提出するかということは、いろいろな関係もございますので、ちよつと申し上げ難いのでございますが、私どもの氣持としては、御説のごとくなるべく早く成案を得まして提案し、速やかに御審議を得まして、來年度の地方団体の財政の経理に支障ないように取計らいたいと考えておる次第であります。なお地方税については、特に問題になる事項を除きまして、さしあたり大体各省間の意見が一致し、これから國民の面から見ましても、さほど大きな響きを與えないといつたような概については、独立税等についても、あるいは制限外の課税等についても、なるべく早く政府の方針を地方団体に通達いたしまして、財政の経理に支障なからしめるように目下取計らい中でございます。そういうことによつて懸急な措置を講じつつ、この際として將來の地方団体の独立性を確保し、十分な活動ができるように、しつかりした制度を打ち立てるべく目下研究中でございますので、今日いつ何日までに出すということは申し上げかねることを御了承願いたいと思います。
  41. 千賀康治

    ○千賀委員 昨日私はこの問題の決議案を提案した者でございますが、地方で困つておるということは皆さん言つておられますので、あまり言葉を重ねてもどうかと思いますが、一昨日、一昨々日愛知縣並びに岡崎市の方に参りまして、ちようど定例会議を済ましたところでありますので、その首脳者に状況を聽いたのでありますが、ほとんど收入に対しては自信がないから、縣会議員、市会議員に、收入に対する質問は妥協して止めてもらつて予算縣会を済ましたというような、ほとんど会議の実体を喪失したというような予算会議をやつておるのであります。いかに地方の基礎がうわついておるか、浮き上つてしまつておるかという点は申すまでもありません。ところが大藏省が今御説明なつた中でも取扱いにずいぶんちりじりばらばらな不統一な思想を露呈しておりまして、非常に不思議だと思うのがございます。たとえば月給取をやる人が一部分田畑をつくるというような場合には、その田畑の收入の大部分をやみ賣をして、その收入が得られるというような計算で課税をいたしております。これに対しては地方で、ずいぶん大きな不平が起つたりしておつて、せつかく落着きかかつた地方の情勢が、俺たちは食うために一部分百姓をやつておるけれども、これらを皆やみ賣をやつて利益を得るのだというような計算でやられたのでは困るから、少しばかりやつておる畑の耕作はもう止めたということで、せつかく足を地につけて生活し出した人たちが、流民の群にまたはいつた方がよいのだというような動揺を起しつつあります。こういうような大藏省の思想が現われているかと思うと一方家賃のごときは相当に強い統制で、從前の借家を持つている人たちは、疊をかえることができないような安い家賃で店子を入れているのに、このごろ市であるとか縣であるとかいうものが急製住宅をつくります、わずか八坪や十坪のものを百円であるとか、百五十円とか二百円近くであるとか、現在のそれらの団体がつくつた價格に即應する家賃が許されている。こういうようなわけで、民間の住居の大宗は実質を無視しまして、廣くても從前のものは安いところにいるし、狹くて不自由であつても、今つくつたものは、相手が公共団体であろうと何であろうと、すこぶる高い家賃を拂つているというようなことになつております。もしもこれらがある程度整理されまして、建築費を度外視して、住居の幸福ということを基礎にして、この家賃が再編成せられるならば、相当にここに租税の対象として余裕ができてくるのではないだろうか。地租においても同様なことが言われます。やみで貸している人は出産物の半分持つてこい、あるいは三分の一持つてこいというようなことで、わずかな面積が非常に高い代償で貸借されているのに、田畑として昔からりつぱに記帳されているものは、貸しておりましても、ほとんど税金を出すことができないような價格で抑えられている。ここにも大きな矛盾があります。いずれにいたしましても、かようなわけで、制度の矛盾のためもありますし、またやみ行為——これは廣義のやみでありますが、廣義のやみ行為のために、とるべき收入がとられずに、同時にこれに税金がかかつていかない。これで利用者は非常に不公平な位置におかれている。こういうものを整理して、正しく租税をかけることになると、相当に余裕があるのではないか。かような点を見られております。またやみ商賣等にいたしましても、相当これには考えさせられるいろいろなものがございます。こういうことは相当お考えになつているだろうと思いますがこの社会の欠陥といいましようか、病患といいましようかただ簡單に、今くらいではどうしたらいいのだということは、なかなか見きわめがつけにくい複雑な問題ではありますが、これに相当徹底したメスを加えて、ここから財源を求めようというような考えを当局はもつておられますか、伺いたいと思います。
  42. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ただいま御指摘の点は、このインフレ下におきますいろいろな矛盾を、適切に御指摘になつたことと了承いたしますが、私ども実際行政をやります場合においても、そういつた矛盾を実は痛切に感じつつ、問題の妥当な解決になかなか苦しむ場合が多いということを白状せざるを得ない実情にございます。御承知の通り、やみの課税の問題でありますが、これはほんとうのやみでありますれば、これはほんとうは没收すべきものでありまして、課税すべきものではない。ただ世の中に相当やみと申しますか、とにかくそういつた現象が行われて、それによつて相当な收入を得ているという現実がある場合におきましては、課税といたしましても、その現実に目を覆うわけにまいりませんので、やはり收入は收入といたしまして、実收入に対して課税するという建前をとらざるを得ない現状でございます。もちろんやみは絶滅すべきものでございまして、認めるべきものではないのでございますから、取締り等が徹底いたしますれば、当然没收すべきものは没收するということに相なるべき筋と考えます。從いまして課税にあたりまして、一應とにかく実際の收入をとらえて課税するわけですが、後にやみだということが判然いたしまして、没收されるということが明らかになりますれば、当然課税するという建前で進んでおる次第であります。從いまして所得税等の課税におきましては、実收入に対して課税するということは、決してやみを認めるという趣旨ではなくて、過去にそういう事実があつて、とにかくある人が一定の收入を得ているその事実に着眼しまして、それに負担してもらうというだけでございますので、課税した結果政府はやみを認めているではないか、將來やみをやらせる方針かということにつきましては、私どもは全然さようなことは考えていない、ただ過去にあつた事実をとらえまして、所得税としましては課税の対象にするということだけをいたしておるような次第でございます。やみ自体の絶滅をはかることが最も緊要なことと考える次第でございます。  それから、今さらに御指摘の地代家賃の統制でございますが、これも私若干その方面仕事もしてまいつたのでありますが、なかなかむずかしい問題でございまして、新しい家賃等につきましては、これはやはり新しい家の建築費をもとにして引合う家賃を認めるということにいたしませんと、新しい家ができませんし、これは当然のことと考えるのであります。大体そういう基準で統制額をきめております。ただ古くからある家につきましてどうするかという問題は、なかなか議論がむずかしいのでございますが、とにかく一定の時期にある額を投資しまして、その投資を一定の期間に回收するという建前にできておるわけでございます。そういう見地からいたしますると、償却等につきましても、最初に投資した額の償却を認める。あるいは実際におきましてその後一般物價が上りましても、家賃について特に値上りを認めるということは、一方からいきますとどうも家主に対して不当な利益を認めるというような議論も出てまいりまして、結局そういうものにつきましては、從來の家賃をすえおいて、その後における保險料の増加とか、あるいは実際の修繕費の増加分だけを認めまして統制額をかえていく、こういうような制度に結局においていかざるを得ぬ。ただその実際の状況から申しまして、そういう統制額と新しい家賃との間に非常にアン・バランスが生ずる、それをどういう方法で徴收するかというと、これはなかなかむずかしい問題でございまして、一番の根本的解決は、結局インフレを止めるということ以外には解決の方法はないのではないか。あるいは結局インフレを止めまして経済の安定が実現するということになりますれば、そういう際にさらに根本的に解決する方法はあろうかと思いますが、中間的な措置といたしましては、どうも御指摘のようないろいろ割切れない要素が残るということは、程度の問題としてはやむを得ないのではなかろうかと考えておる次第でございます。ただ先ほど申しましたように、不動産に対する地方の課税は、統制の関係上非常に收入が低くなつておる、財産の元本額とか、あるいはほんとうの收益力とかいつたようなものから見ますと、相当な負担を賦課してもいいのではないかというふしもありますが、他方におきまして今申しましたような事情から、地代家賃等につきましても一定の統制が行われておる。その調整をいかにはかるかというところに問題の困難性があると考えておるのでございます。從いましてその困難性を回避いたしまして、土地の收益力をとらえて課税する一方法といたしまして、実は傳えられておる土地利用税というようなものもうまく統制との矛盾を回避しつつ、土地の收金力をとらえて課税しようというのも相当理由がある提案だと私ども考えておりますが、御指摘のように経済現象が非常に変態的な條件を帶びておりまして、この調節にはむつかしい点がありますことを率直に申し上げざるを得ない実情でございます。
  43. 千賀康治

    ○千賀委員 私の指摘いたしましたようなことは、インフレのためと言えば簡單にそれだけでありますが、しかし現実はインフレのためといつて徴税をせぬでおるわけにもいかず、政治をやらぬでおるわけにもいかぬわけです。どうしてもインフレの中でも何とかしなければなりません。そこで土地利用秘はこれらの問題をよほど解決するという自信をもつておいでになるようでありますが、もしもこれを実現するとすればどんな構想でいくのか、もう少し詳しくこの際伺いたいと思います。
  44. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 土地利用税についてはなお研究中でございまして、成案を得ておるわけではございませんが、そういう課税をいたしますとすれば、こういう観点から案が立案さるべきじやないかと考えております。と申しますのは、土地の地代は小作料にしろ普通の地代にしろ、御承知の通り実際の投資額をもとにしまして從前に地代にすえおくという現象に相なつております。ところが実際の土地の收入と申しますか、力というものは、やはり一般物價の騰貴に伴つて、名目的には相当増加しておるというのが理論的ではなかろうか。そういうことに相なりますと、たとい一反歩の田でございましても、その田からできる農作物の値段が、昔に比べましてどれくらい引上げになつておるかということが一つの物さしになるかと思いますが、その一定の賃貸價格が定められました基準に対しまして、現在実際に認められておりますもの、もちろんこれは公定價格を基準にすべきものだと思いますが、價格が何倍くらいになつておるか、その倍率で賃貸價格を評價するといたしまして、その評價いたしました課税標準によりまして適当な税率で課税する、これが一つの課税方法ではなかろうか。それはひとり田畑だけではなくて、普通の宅地や家屋等につきましても、理論的には同様にあてはまることに相なるのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。ただこれは一つの課税方法もあるということでございまして、未だ成案を得て今日申し上げる段階にまいつていないことを御了承願いたいと存じます。
  45. 千賀康治

    ○千賀委員 私は終りました。
  46. 門司亮

    門司委員 この際主税局長がおいでになつておりますので、ごく簡單にお聽きしたいのであります。今度の所得税の問題で地方が非常に騒いでおりまして、到るところに反対の大会を開いて、税務署も大分迷惑しておると思いますが、この課税の標準が非常に誤つてつたということは、おそらく大藏当局もこれは認めないわけにはいかぬと私は思います。それは全部を画一的に見ておつてやみを認めないというような場合もあり、さらにやみについても先ほどのお話もありましたが、大体野菜等につきましては收穫の二割三分くらいがやみに見こんであつたことは事実であります。甘藷については一割五分くらいはやみに賣つたという仮定のもとに、大藏省が課税しておるということは私は事実だと思います。そういう課税のしかたは正直な者ほど困り、やみをやつておる者はいいが、やみをやれない、またできない者は困るということで、今後の問題は思想的に惡い影響を及ぼしておると思います。私は徴税の方法として單なる私の意見を述べるのでありますが、税務当局だけでこれを査定し審査するというのではなくて、申告制をとつておりますので、これに民間の協力を得て徴税委員会というようなものを、各町村制か各部落別くらいにこしらえていただいて、各部落ごとに公正妥当な收入をお互いの協議のもとに見積つていく。これは一つには非常に正しくやられると思います。從來町村におきまして見立割という方法があつたのでありますが、これは比較的公正に行われておつたということは言えると思います。手の少いときに、殊に経済状態がこういう乱れておるときに、課税をするときに困難を來すことは事実であります。これを一元的に役所が扱おうとするのは間違いだと思います。從つて申告制をせつかくとつておりますので、その申告制に対しては、こういう見聞の協力を得るというような方法が講ぜられれば、非常に好都合にいくのではないか。いわゆるお互いが納得の上で税額をきめていく、税率につきましては、もちろん國の必要な経費でありますので、その点までは触れる必要はないかと思いますが、収入あるいは所得の点については、そういう民主的のきめ方とか、さらに査定をしていくといういき方でいつたらどうかと思いますが、この辺に対する主税局長の御意見はいかがですか。
  47. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ただいま御指摘のことにつきましては、國会の各方面からも大分そういう意見が出ておりまして、いろいろ実情をお話申し上げておる次第でございますが、なにしろ申告課税を昨年から採用したのでございますが、新しく設けました関係で納税者の方にも趣旨がよく徹底していない、政府側もその指導に不馴れであつたというような事情も手傳いまして、その成績が非常にうまくまいらなかつたのでございます。それで予算額といたしましては、約四九〇億程度の申告所得秘を見積つておるのでございますが、これに対しまして昨年十二月までに、申告によつて納税していただいた分がわずかに六十一億、一割四、五分しか申告によつてはいつていない。その後一月には、いろいろ宣傳いたしましたし、殊に農村方面等の納税の時期もございますので、大分力をいれました結果、一月だけで八十三億というふうに大分バツクいたしたのでございますが、それにいたしましても、なお見積りに対しまして、その予定に達していないのであります。この見積りは決して過大のものではないのでございます。実は源泉課税につきましては、すでに同じベースで見積つた税額が、見積りを突破しておるという状況に対しまして、申告課税の方はさような状態である。そこで当然のことといたしまして、役所側で調べている結果に基きまして、実は二月の末から三月のはじめにかけまして一斎に更正決定をいたした次第でございます。この更正決定につきましていろいろ問題を起して、はなはだ恐縮に思つておるのでございますが、本年度といたしましては、私どもはやはりこういう途を選ばざるを得なかつたと申しますよりほかはないと思うのでございますが、多数の納税者につきまして、比較的短い期間のうちに一斎に調査をいたしまして、それで税額を決定する、こういうことをいたしたのでございます。そこでその際におきまして、お話の通り団体の意見をよく聽くということにつきましては、これは私ども一向排除するわけではなく、団体等の意見はよく聴くようにということはいたしておるのでございますが、ただこの団体を通じまして所得額をきめるという行き方は、從來は、ややともいたしますると総額を軽く見積りまして、その総額の中で納税者の税額を団体を通じて出させる、こういうことも戰時中税務署の手不足等によりまして、やむを得ずやつた時代があるのでありますけれども、こういう方法をやりますと、いきおい反面から申しますと非常に弊害もございますので、昨年申告課税制度に改めましたのを機会に、いわゆるこれは団体交渉と称しておりますが、団体交渉の方法によつて課税額をきめるという方法は、これは避けることにいたしたのでございます。それで税はあくまでもやはり税法に從つて、納税者がまず申告によつて納むべきものであるということにしました。  それから、それについて申告が違う場合におきましては、政府と納税者との間で正しい所得額なり納税額を見出して納税せしむべきものである、こういう基本観念に立ちまして、税額自体と申しますか、所得額自体の決定は、あげて政府対納税者の直接折衝に委ねるということにいたしたのでございます。その点につきましては、いろいろこれも考え方の差があろうかと思いますけれども、やはり民主化をはかりますためには、所得税といたしましても、そういう方法が方法としては正しいのではないかと考えております。ただそういうことをやりました結果、反面今度いたずらに団体の意見を排除する傾向がございまして、ところによりましては、正しい団体の意見等も頭から聽かないという節がございまして、昨年度におきましては、実際上無用な摩擦を起しておる向きが相当あるように思います。しかしこれはまた正しくないのでございまして、あくまでも納税者の実情をよく知つておられる団体の意見、あるいは団体の資料、あるいは場合によりましては、営業者等については、大体の順序等につきましても、団体の意見をよく聽いて正しい査定を行うようにということにつきましては、さように指導しておる次第でございます。農業所得の問題等につきましても、それぞれ地方においては精通者の方たが多数おられると思いますから、そういう方面意見をよく聽きまして、公平を期すべきものであるということには異見はないのでございますが、ただ査定委員会といつたような制度をつくりまして、その委員会を通じて所得額を決定するということは、やはり今の段階におきましては行き過ぎではなかろうか。所得願及び税額というものは、やはり税法に從つて、納税者が自分で計算して納むべきものであつて、それが正しいどうかは、政府と納税者との間で最終的に決定すべきものではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  48. 門司亮

    門司委員 くどいようですが、私はさらにその考え方についてのことでお伺いしておきたいと思うと同時に、意見を申し述べておきたいと思いますが、政府の考え方は、申告制にいたしましても、あるいは納税を徴收するにいたしましても、どこまでも人民が正直なことを言わないものであるという物の考え方が、非常に大きく動いておると私は思います。もし人民をほんとうに信用されるならば、正しい意見というものを反映させるために、そういう民主的の委員会をこしらえれば、お互いが納得の上で納めることができると思います。これは神奈川縣の一例でありますが、指導する面におきまして、やみも全部書いて出せと言つてああいう申告をさせたのに対しても、非常に不当な更正額が決定されてきているという事実があるのであります。こうなつてくると、正直に報告するとだめだ、どうせ更正決定が來るのだから、この辺でやつておこうじやないかというようなわけで、不正直を奨励するようなものだと思います。それと同時に、殊に農村におきましては、多くの作付をすればするほど税金が多くなつてくるのですが、農村の收益というものは非常に微妙なものであります。殊に日本のような丘陵地帶をたくさんもりております農村におきましては、ほとんど半道あるいはもつと近い距離においても、境を異にしても非常に收穫が違うのであります。それが一律一体に課けられているということになつてまいりますと、痩せた地方のところで廣い面積を耕作している者は、非常に大きな担税をしなければならないし、狹い面積で非常に地方の豊かなところを耕作している者は、割がいいというようなことになつて、農村の生産意欲を阻害することははなはだしいのであります。今日多少の開墾をしても、余計な食糧をつくり出そうという考え方をもつている農民に対しまして、殊に今度の税制の行き方は大きな衝撃を與えていると思う。これでは食糧増産どころでなくして、減反運動を口に言わなくても、おそらくそういう形が現われてくると思う。そこで私ども意見としては、先ほどから申し上げますように、そういう非常にむずかしい問題が伏在しておりますのも、單にこれが中小商工業者のような形を示しておりませんので、これを都会の中小商工業者と同じまうな角度の上で査定するということをお考えになつていると、私は農民は非常に大きな迷惑を受けると考えますので、あえてこのことを意見として強く申し上げておきたいと思います。
  49. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ただいまお述べになりました問題ですが、申告制度につきましては、実は私どもも將來におきましては、大体申告でほとんどの税は納まるようにというふうにもつていくのが理想だと考えているのであります。ただ日本の現在の実情からは、なかなかそこまでいき難い実情がございますので、やむを得ない方法としまして、更正決定をやつているという実情でございますが、今後におきましては税法の普及、宣傳その他の方法等につきましても、さらに一層の努力を拂いまして、できますならば申告によつてほとんど大部分の税が納まるという方向に税の方法をもつていくのがいいだろうと思います。ただこれはなかなか一年、二年にして実現できない問題ではあるかもしれませんけれども、あくまでもそのような方向で進んでみたいと考えている次第でございます。  また後ほどお述べになりました御意見は、これはまことにごもつともでございまして、そういう点につきましては、実は税務署で一應標準というものを定めておりますが、その標準というものは、あくまでも標準に過ぎないのでございまして、状況のよい所と状況の惡い所とは、その標準を適用する場合におきまして、適当に増補したり斟酌減をするというのが本來の建前になつているのでございます。そういう際におきまして、お話のように団体等の意見を十分に尊重して聽くということは、これは至極結構なことでございますので、そういう御意見につきましては、本年は不十分の点が多かつたと思いますが、今後十分そういう方向に進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  50. 高岡忠弘

    ○高岡委員 簡單一つお尋ねをいたしたいと思います。地方税制が画期的大改革を加えられんといたしますときに、特に大藏当局に、重点的に重大なる関心をもつて御注意を願いたいことがあるのであります。それは表日本裏日本との取扱いについてでありますが、とかく旧來國家のあらゆる施策は、裏日本の方に冷遇をしたかのごとききらいがあるのでありまして、文化において、教育において、あらゆる点において裏日本は表日本に劣つているのであります。殊にこの税制の点につきましても、裏日本、表日本を画一的に取扱われたごとき憾みをもつているのであります。申すまでもなく裏日本は概して冷害、雪害、あるいは年々大洪水を起しまして、不測の損害数億円に上り、その負担を地元においてせざるを得なし惨状を呈していることは御承知の通りであります。そこで簡單な例を申し上げますならば、たとえば一つの住宅をつくるにも、あるいは学校をつくりますにも、裏日本の方は資材、用材の規格においてすでに表日本より違うのでありまして、これらの簡單な例によりましても、裏日本の住民の負担というものは相当大きいのでございまして、たとえば同じ所得があるにいたしましても、その担税力においては数等裏日本は表日本より劣つているのでございます。今度の地方税制改革におきまして、分與税等はどういう標準によつて交付されるのでありますか。私実はまだ勉強が足りないのでございますけれども、たとえば分與税等を大幅に交付する等の方法によりまして、何とかそこに表日本裏日本の差等をつけていただくことこそ、私は税制の民主化であると確信をいたすのでありますが、承りますと、多少その取扱いにおきまして、一定の段階を大藏当局はお考えになつているやにも承つているのでありますけれども、なおこれらの点につきまして若干参考になることをお漏し願えますならば、將來の参考にいたしたいと考えるのであります。
  51. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ただいまお述べになりました裏日本方面が、表日本に比べまして担税力に劣るところがあるというような趣旨のお話は、先日來私も一、二度承つております。この調整を分與税ではかるようにという御希望も伺つているのでございますが、ただ問題は、そういう標準を分與税の中に織りこむことがいいかどうかということになろうかと思うのでございますが、地域を限りまして一定の配付標準等に特別な斟酌率を設けるというのが、一つの案のように聞いておる次第でございますけれども、実際におきまして、それではたして適実なものになるかどうかということにつきましては、相当研究を要する点が多いのじやなかろうか。現在分與秘は御承知のように大体二つにわけまして、その配付基準を設けてやつており、財政需要それから課税力等それぞれ一般的に妥当する標準を設けまして、それによつて分與税を分與するという原則的な建前になつておりますので、目下関係方面から意見が出ておりますような通りにいきますかどうか、愼重研究してみたいと考えておる次第でございます。     —————————————
  52. 坂東幸太郎

    坂東委員長 お諮りいたします。地方財政制度に関することは大体本日はこの程度にしまして、次にもとに返りまして、海上保安廳法案に関する質疑を継続いたします。最初に國家地方警察本部長官斎藤昇君、
  53. 斎藤昇

    ○斎藤政府委員 ただいま御審議になつておりまする海上保安廳の問題につきましては、かねて事務当局におきまして、いろいろ打合せをいたしました結果、これが施行につきまして、いろいろと互いに協議していかなければならぬ点が相当あるのでありますが、その最も重要な事項でありまする通常陸上勢力範囲とみられる水面におきましては、陸上警察力を行使する権限を排除しない、こういう申合せがなり立ちました。その他の点につきましても、協議整いました通り運営ができるものと考えますので、その面におきましては、この法案自身として警察といたしましては異存がございません。さような趣旨で御一審議を願います。
  54. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 大体今までお話を承つておりますと、水上警察署というものは陸上の延長という考え方ならば残るというふうに了解できるのでありますが、これはそういうことになるのでありますかどうですか、もう一度確めてみたいと思いますことと、それからもし水上警察というものが、いかなる形においても認められないということになりますと、それぞれの都市の水上警察署でもつておりました警備艇、そういうものは海上保安廳の方に移管されるものであるか、あるいは他の用途に変更して、依然として自治体がこれを所有していることができるのであるか、この二点につきまして、ちよつと関連して御質問申し上、げます。
  55. 山崎小五郎

    山崎政府委員 先ほども陸上警察海上保安廳との関係を申し上げましたように、原則的には海上警察海上保安廳がやるということになつておりますが、先ほど斎藤長官から御説明がございましたように、陸上勢力範囲陸上警察力を執行することを排除しておるのでは全然ありませんので、それは私の方でもそういう解釈をしております。それから、そういう意味におきまして船の方につきましても、陸上警察でも船をもたれると思いますが、ただその仕事の性格から船の大きさとか性能につきましては、また両者の間に意見があり得ると思いますが、そういうことにつきましては、なお具体的に國家警察の方と水上警察の方と御相談申し上げることになつております。
  56. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 ただいま國家警察というお話がありましたが、たとえば横浜市であるとか、あるいは神戸市でありますとかいうところは、地先の水面のために水上警察というものをもつているものと考えるのでありますが、これは國察警察と別に、自治警察の中にそういう水上警察という仕事が残つてくると思うのであります。もう少し明確にお話願います。
  57. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先ほど申しましたように、水上におきましては一應海上保安廳権限でありまするが、陸上に接近し、陸上の勢力範囲と認められますところにつきましては、警察権限の行使を排除しないという了解になつております。しかし自治体警察は主として主要都市に設けられておるのでありますが、これの接岸水上は最も警察としては陸上と密接な関係をもつております。さような関係からいたしまして、自治体警察は必要に應じまして今までの水上警察を残し、今までの必要な船をもつ、かように相なるだろうと考えております。國家地方警察の区域におきましては、大体対象物も少うございまするので、國家地方警察といたしましては、船はほとんどもたなくてもよいのじやないか。從つてもし余分がありますれば、これは自治体警察の必要といたしますものは、自治体警察に讓渡をいたしまするし、なほそれで余分があるという場合には、海上保安廳の方に所管替をいたしてもよろしい。かような気持でおります。いずれこれは実施にあたりましていろいろ協議をしてまいりたい、かような考えであります。
  58. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 大体ただいま齋藤長官のお話でよくわかりました。そういうようにやつていただいたら非常にけつこうでありまして、やはり京都は別でありますけれども、東京その他四大都市、そういうところでは從來からやはりそういつた制度があるのでありますし、また現実の問題として、ただちに海上保安廳連絡をつける余裕がなく、陸上の延長として水上にただちに犯人を追跡しなければならないというような、緊急やむを得ない場合も生じてくると思うのでありまして、最小限度の水上警察制度というものは、やはり保存していただきたいというような希望をもつております。ただいまの長官のお話で大体了承ができました。なるべくそういう方針で進んでいただきたいと思います。
  59. 松浦榮

    ○松浦(榮)委員 この制度アメリカのコースト・ガード制度をまねした制度のように思います。私かつて読んだことがあるのでありますが、アメリカのコースト・ガードというものは、海軍をカモフラージユしたような形のものであります。私かつて千島の方面でいろいろな問題にぶつかつたときに、アメリカのコースト・ガードが非常に働きました。ソヴイエトもやはりこういつたような施設をもつてつておりましたが、日本海軍の軍艦が堂々と出動しておつたので、あのときも私はこういつたコースト・ガードというようなものが必要ではないかと思つた一人でありました。そういうような考えのもとに、この問題を研究してみたいと思うのでありますが、コースト・ガードはその中にいろいろな権限をたくさんもつております。日本の場合におきまして、日本のいわゆる海上におけるところの保安問題というものが、從來いろいろな立場からいろいろな施設がありまして、非常にその間に複雑かつめんどうな手続やら関係がありまして、非常に一般の方が困つてつたような実情があつたのであります。一般警察の方から言えぼ、水上警察がある、また税関がある、そうかと思うと、海港檢疫所がある。あるいは水難救済所、また海事部があるというようなことで、いろいろ本省の出先機関地方にありまして、そうしていろいろな面からこの一般海上の生活をする者に対して権限をふるまうために、非常なるそこに迷惑をこうむつてつたのでありまして、これに対して統制を加えなければならない。もつと一元化した簡單施設をしなければならないということは、戰爭中などはしばしば言われておつたのであります。今度その問題が解決するという意味におきまして、この海上保安廳が一元化されて出たということは、きわめて私はいい趣旨のものであると思いますけれども、しかしこの一元化がかつての戰爭時代のように、ただ取締りの便宜のために、各官職の都合のために行われておるということになつてはいけないと思います。そういう考えのもとに行われますると、從來施設出先が活動して一元化の意味がなくなつてしまうというおそれがあるのであります。どこまでもこれが民主化さるべきために一元化されていくというものでなければならないと思います。そういう意味におきまして第一にお伺いしたいのは、普通の警察におきましては、こういつた絶大なる権限をもつておるところの警察署というものの長官は公安委員によつて任命されます。しかるにこの海上保安廳の長官というものは一本の運輸大臣の辞令によつて任命されるというような形になつているようでありますが、そういうことがいいのかどうか。やはり民主化されました公安委員というような形のものが政府から任命され、その公安委員の選考によつてこういつた絶大な権限をもつた保安廳長官というものは任命されなければならない。こういうふうに私は考えるのであります。その点についていかなる御意見をもつておるのでありましようか。  それからまた、その次にお伺いいたしたいのは、第十八條にありますが、この海上保安官というものは非常に大なる権限をもつております。船舶の進行を停止させ、またはその出発を差止めたり、航路を変更させ、または指定する港に回航させる、あるいは乘組員その他五つばかりあげております。こういつた絶大な権限を一人々々の海上保安官がもつておるのであります。從來取締り権限というものは、いわゆる行政官廳行政廳というようなものが海上保安官を統率しております。長年の経験をもつた一人の長官がおりまして、長官の命令によつてこういつた仕事ができ得るのであります。こういつた大きな統制権を一人々々の海上保安官に與えるのでありますか、そこを伺いたい、普通ならば私は海上廳といいますか、あるいは保安廳の出張所というものがありまして、そこの長官たるべき行政官廳がそういう権限をもつて、部下を指揮していかれるのが当然ではないかと思いますが、非常に大きな権限をもち、非常に廣い範囲仕事をもつておるのでありますが、その点いかがでありますか、お伺いしたいのであります。  それからもう一つは、どうせ一箇月も経過するならば厚生省の所管に属します貿易事務所、この中に含めていかれたらどうか。保安という意味はどういうふうに解釈するかしりませんが海上保安廳という場合、海上に関するあらゆる権限というようなものを一元化されまして統制して行つた方がいいのじやないか、こういうふうに考えますが、その点はいかがでありましようか。そういう点を伺つておきたいのであります。
  60. 大久保武雄

    大久保政府委員 第一の御質問の長官の任命でありますが、もちろん御説のように、任命に当りましてはつとめて民主的な方法を講じたいと思つておる次第であります。ただ海上保安廳の場合は、一般治安に関する事項のほかに、海上を安全に保安する一般海事行政に相当する面をも含んでおるのであります。かような次第で、にわかにこれが全國的にわたつて統一ある組織として動くというような関係からいたしまして、公安におきましては長官の任命というようなことに相なつておるわけ事であります。なお第二点、第三点につきましては山崎政府委員から説明いたさせます。
  61. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 保安官の権限問題でございますが、これもあまりに権限をもちすぎることはまた弊害もありますので、これは非常に研究したのでありますが、実際の海に出まして、いろいろの事故あるいは犯罪を抑えますときに、どうしてもこれくらいの方法がないと取押えに万全を期することができないということから出ておりまして、やむを得ざる限度の権限をもたしておるわけであります。先ほどから御質問の、保安官が一人でもやれるかということでございますが、法文の建前は保安官が一人でもできる建前とはなつておりますけれども、実際におきましては、保安官は大体海上に船に乘つて出まして、大体船一艘單位になつて動きますので、その中の船長が大体監視長になりますが、実際にそういう指揮を現場においていたしますのは、そこに相当老練な指揮官がおるわけでございますが、御心配のような点も相当緩和されると思つております。なお保安官はそういう問題につきましても、人格的な訓練あるいは常識というものもきわめて重要でございますので、予算におきまして警察にならいまして、特別な教育機関も設けることになりまして、大体以上の三つの点で御心配になります点は万遺憾なきを期したいと思つております。、  それから檢疫仕事もついでにやつたらどうかというお話も、ごもつともでございますが、一度檢疫仕事につきましても、大体コレラ船等を発見しますと、あるいはコレラ患者を発見しますと、それを檢疫所にまわしたり、あるいは適当な港に連れていくということはこれでやりますが、実際に檢疫官としての医師の仕事までやるのは少しむりだということから、檢疫官についてはその程度のことをやることになつております。
  62. 松浦榮

    ○松浦(榮)委員 大体わかりましたが、運営のただ一元化されたところは、その一元化によりまして、すべてのものが非常に円滑に簡單に運んでいけばいいが、それが往々にして各官廳の一元化に伴つて、かえつて煩雜化を來すような結果がなからんことを憂うるのでありまして、その点をお考え願つてこれを実施していかなければならぬと思います。なお水上警察は先ほども意見がありましたように、私はあつた方がいいのじやないか、一般陸上からの延長としてなければならぬじやないかと思つております。そういう理由等については、詳しく申しますと時間がありませんが、私の感じとしてはそういう感じをもつております。  それからもう一つ伺いたのは、ここに船舶のトン数などがありますが、日本船舶は大体において、総トン数はG・H・Qからの命令によつて制限を加えられておるはずでありますが、その中に含まれておるのは、あるいはこれだけのものが了解を得られたかどうか。またこの保安官に対しましても、日本の警備力についてはG・H・Qから相当制限を受けておるのでありますが、この人員などについても了解があるかどうかということについて伺いたいと思います。、
  63. 大久保武雄

    大久保政府委員 船舶のトン数等につきましては、もちろんこれは一般の商船以外でありまして、G・H・Q等その筋とは十分打合わせております。なお職員の数並びに装備力等につきましても、全部その筋の指示に從いまして緊密なる連絡のもとに整備され、構成されておるものであります。
  64. 千賀康治

    ○千賀委員 ちよつと伺いますが、保安官の官制は、大体今までの慣例によつてみれば、どの程度の——警部ぐらいですか、警視ぐらいですか、どの程度のものが現場の保安官になつておるかということを伺いたいと思います。
  65. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これは今までの慣例から申しますと、大体二級官、三級官であります。現在私の方でそれぞれ船で仕事に從事しております者は、大体一番年をとつたところで四十二、三から四、五の船長免状あるいは一等航海士の免状、あるいは機関長、一等機関長の免状をもつた人が多いのでありまして、学歴は大体高等商船または普通商船を出た人が保安官になつております。
  66. 千賀康治

    ○千賀委員 保安官の大乘的訓練と言いますか、これが非常に重要である。たとえば過去において一つ警察署が警部署長であれば、警部補が次席でありまして、これが現場に行きまして、大体その警察署が現場を取締る権能を行使したのであります。たとえば一つ警察をもつておる郡の代表的なお祭がある時であるとか、あるいはその地方で競馬がある時であるとか、あるいは大きな経済行為——マーケツトであるとか、それぞれの催しがされました時も、その警察署長を代表した警部補ぐらいがその現場を取締る最高の権威であります。そこでこの人らは若さの至りと申しましようか、見様によつては自分の取締りによつて國家の幸福が増進するのだという非常な勇猛心が起きて、惡く言えば点を稼ぎたがる、功労を急ぎたがるというようなことで、むしろその取締りは時宜に適せず、嚴に失し、同胞を苦しめることが、あたかも自分の任務を果すことであるかのごとくに即断をいたしまして、そんな取締ならない方がましだというような感じを、地方民に與えた例が非常にあるのであります。なおさらこの保安官のごときは海上遠く陸地を離れまして、そうした間違つた考えを起したときでも、陸地におけるような非難を受けることが少い。陸上におきますと、あまりに行きすぎればただちに民衆によつて叩き付けられるというような事態になるのでありますから、反省をする機会も非常に多いのでありますけれども一つの船で自分が最高の長官であるというような優越感をもつて海上に出ておりますと、ただ何か事故を自分が取締つてきたというようなことが報告の種になり、勝星を稼ぐというような意味になりますと、ややもすればわが同胞を過酷な取締に苦しめて成績をあげるということになりがちになりはしないか。かような点に考え及びますと、相当に保安官の人格的な訓練と申しましようか、民族のあり方全体にまで考えを及ぼして、ほんとうに民族の行進に歩調を合わせてもらう取締り方が非常に重要になつてくると思います。大乘的な見方で取締らなければならぬということになりますので、この点の誘導の仕方、訓練の仕方につきましては最も留意をしていただきたい。今おつしやるように、單に高等商船学校を出た者であるというような点だけでありますと、今まで申したように、地方において非常に取締りの首脳にある人の考え方の未熟なために民衆に迷惑をかけ、また大きな意味で國益に損害を與えることが多いのであります。この点については嚴に戒め過ちなからんことを考えでいただきたい。こういうことをお考えになつておるかどうか伺いたいる
  67. 大久保武雄

    大久保政府委員 ただいま御指摘の点は、今後海上保安廳を運営いたしますにつきまして、最も根本的な大事な問題だと考えております。私たちも海上保安官の養成、講習につきましては非常に重点をおいております。そこで、ちようど新しい保安廳のもとに警察大学がありますように、海上保安官の教育機関を設置いたしたいと考えております。もちろんこの中には海上保安官のみならず、燈台水路関係職員も含めまして、この関係職員の完全なる教育をいたしまして、ただいま御質問の御趣旨にありますように運営をいたしたい、かように存じております。
  68. 坂東幸太郎

    坂東委員長 暫時休憩いたします。     午後五時十三分休憩      ————◇—————     午後五時二十五分開議
  69. 坂東幸太郎

    坂東委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  大体質問は終りましたので、これから逐條審議に移ります。まず第一章組織について大体説明をお願いいたします。各條項について順次初めに運輸省大見事務官より朗読を願うことにいたします。     〔朗 読〕  第一章 組織第一條港、湾、海峽その他の日本國沿岸水域において海上の安全を確保し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するため、運輸大臣の管理する外局として海上保安廳を置く。    河川の口にある港と河川との境界は、別に法律でこれを定める。
  70. 坂東幸太郎

    坂東委員長 海上監視本部次長山崎政府委員
  71. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 第一條の中で問題になりますのは、沿岸水域という言葉でありますが、これは普通領海かなんかくらいな言葉じやないかという誤解がありますが、ここにありますように、港、湾、海峽その他日本國沿岸水域といつても公海も含んでおるのでありまして、極端なことを言えば、メキシコまででも行くわけでありますが、大体沿岸水域というのは、その國の一つの勢力と申しますか、船の大体多く行つておる所とか、大体そこまで漁業に出ておるとか、そういうふうに社会通念から考えてみて、公海を含めて大体勢力の及ぶ所であると考えております。  第二項に「河川の口にある港と河川との境界は、別に法律でこれを定める。」と書いてありますが、これは大体陸上警察と海の警察というものは波打際でわかれることになるわけでありますが、大体河川の口にある港につきましては、どこが境かわからないのでありまして、近く港域法という法律が出まして、港というものの境界をきめることになつております。その港域法におきまして、大体河川港につきましても港域が定まるわけでありますが、河川の口にある港についても、その境はその法によつて定めるということになる。第一條で特に御説明申し上げる点は二つの点だと思います。
  72. 千賀康治

    ○千賀委員 公海は海岸から何哩とかいうことになつているらしいですが、勢いの及ぶところ、たとえば南米へ鯨をとりに行つても、その鯨船が航海しているところはやはりその法律によつて、鯨船を取締るということになりましようか。
  73. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 大体できると思います。
  74. 松澤兼人

    ○松澤委員 先ほどの水上警察の問題でありまするが、先ほど國家警察部長官ですか、齋藤君のお話でもありましたのは、運輸省の側としましてもあれでよろしいのでしようか。
  75. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 運輸省としては差支えございません。
  76. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは第二條。     〔朗 読〕  第二條 海上保安廳は、船舶の安全に関する法令の海上だおける励行、船舶職員の資格及び定員、海難救助、海難の調査、水先人、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、水路航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帶する事項に関する事務を掌る。    從來運輸大臣官房、運輸省海運総局の長官官房、海運局船舶局及び船員局、海難審判所の理事官、燈台局水路部並びにその他の行政機関の所掌に属する事務で前項の事務に該当するものは、海上保安廳の所掌に移るものとする。
  77. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 最後の「從來運輸大臣官房」と書いてあります一番下のところに「海難審判所の理事官」とあるが、審判所の理事官のみがはいるということに了解してよろしいのでございますか。審判所そのものもやはり海上保安廳としての所管の中にはいることになりますか。
  78. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これは御質問の通り海難審判所の理事官だけがはいることになります。結局理事官というのは檢察廳的な仕事をやりますので保安廳にはいりまして、海難審判所は檢察官から独立して中立であつた方がよろしいというので、今度わかれることになつたのであります。
  79. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは第三條に移ります。     〔朗 読〕  第三條 海上保安廳のすべての職員の任免、昇任、懲戒その他人事管理に関する事項については、國家公務員法の定めるところによる。    海上保安廳職員の総数は、一万人を超えてはならない。
  80. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 海上保安廳職員の総数が一万人以内ということになつて、おりますが、海上保安廳本廳の職員の人数、その他各地方機構に配属せられるものがおわかりでございましたら、概略で結構ですからお知らせ願いたいと思います。
  81. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 今これに要します人間は、大体地方燈台とか水路を除きまして地方及び保安廳保安局だけを入れまして五千程度の人間を実は要求してあるのであります。まだこれは大藏省との査定の問題がございますので、それによつてきまりますが、大体地方の保安部あるいは保安本部というところは、どうしても最小限度小さいところで二、三十人程度、大きなところは二三百人要りますが、目下この問題につきましては、大藏省と今年度の予算につきまして折衝中でございます。
  82. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 大体五千人程度というお話でありますが、そうすると中央に置いておく人数、それから地方の人数というものは、まだおわかりになつておらないのですか。
  83. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 それはあとから詳しい表を差上げます。
  84. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 この海上保安廳及びその地方機構ができるために、現在海運局などから新しい機構の中に移つていく者が何人くらいありますか。全然そういう者はありませんか。
  85. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これは詳しく調べたものがありますけれども、数字をもつてきておりませんので、あとからお知らせいたします。
  86. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 海洋氣象台に水上部、燈台部というようなものが今ありますが、それもやはりこの燈台局の中にはいるものでしようか。やはり運輸省の管轄でございますか。
  87. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 この燈台局氣象台の関係は全然考えていないのであります。
  88. 坂東幸太郎

    坂東委員長 次に第四條。     〔朗 読〕  第四條 海七保安廳船舶は、航路標識維持し、密貿易を防止し、遭難船員に援助を與え、又は海難に際し人命及び財産を保護するのに適当な構造、設備及び性能を有する船舶でなければならない。    海上保安廳船舶は、港内艇を除いて、その隻数において百二十五隻を超えてはならず、その全トン数において五万総トンを超えてはならず、又、そのいづれも千五百排水トンを超えてはならず、又、十五ノツト以上の速力を有するものであつてはならない。    海上保安廳船舶は、番号及び他の船舶と明らかに識別し得るような標識を附し、國旗及び海上保安廳の旗を掲げなければならない。
  89. 千賀康治

    ○千賀委員 密貿易を防止ししということがありますが、密貿易をする者がだんだん惡性になつて、武器を備えた密貿易を企てるというようなときにも防止しなければならない。そうすると、この制限の中で相当な武器を積込む必要があると思いますが、そういうことはするかどうか。ずつとあとの方に、この制度海軍の再來ではないということを再確認をさせる項が一項あるようでありますが、もちろん今の世の中で、海軍として戰力を備えるには非常に優秀な武器が要るのでありますが、密貿易に対する武器などは、多少の小口径速射砲を備えるというようなことは、決してこれが海軍になるという意味ではないのですが、そういうような武器は積載をするかしないか、伺います。
  90. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 武装は、あとの十九條にありますように、海上保安官はその職務を行うため武器を携帶することができることになりまして、一般警察官と同じ武装だけはできるのであります。  その次の御質問の船の武装問題でありますが、これは私どもも実際の仕事をやる立場から、ぜひそういつた程度の威嚇砲的なものはもたないと、仕事が十分にできないのではないかと思うのでございますが、また今日の日本の國際情勢から、そこまで積むことができないのでありますが、まずスタートにおきまして、できるだけ優秀な成績をあげまして、その成績によりまして國際的な信用を得ることになりますれば、またそういうことも許してもらえるようになるのではないかと思いますが、これはまつたく希望だけでございまして、今のところは許されていないのであります。
  91. 松澤兼人

    ○松澤委員 ただいま御質問もあつたのでありますが、海上保安廳船舶はいろいろ制限を受けているわけであります。そこで、とりあえず隻数において百二十五隻、全トン数において五万総トンということになつているのでありますが、大体この制限の中において、海上保安廳が二十三年度において所有する船舶、あるいは二十四年度、二十五年度というふうに、いつころになつたら全体の隻数において百二十五隻となり、全体のトン数において五万総トンになるか。その計画及び現在ただちに使用し得る船舶の数量、あるいはトン数をお伺いしたいと思います。
  92. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 ただいま海上保安廳の船になつておりますのは、先ほど申しました第二復員局から保管轉換しました特務駆船艇が二十八隻であります。それからこれも海上保安廳の方にはいることになつておりますが、日本の掃海をやつておりまする船が——これはまだ二年ばかり掃海にかかりますが、三十隻程度の船があるわけであります、これが大体大きい船といえば大きい船です。そのほか今度第二復員局の解体に伴いまして、交通用の舟艇を約百隻ばかり保管轉換を受けました。前に海運局でもつております船が約五、六十隻あるのであります。こういうものが大体補助舟艇、交通用艇として港のランチ、あるいは先ほど申しました船の補助艇の仕事をしているのであります。ただ問題は予算が國家財政に縛られまして、もつております船が相当痛んでおるのが沢山ありまして、これの修理というものに相当かかるのであります。鋭意そういう方面にも努力をいたしておる次第であります。
  93. 千賀康治

    ○千賀委員 いま一つ伺います。先ほどの武装の点でありますが、警察官と同じ武装をした者を保安哨海に乘込ませることができるということだと、個人が拳銃をぶら下げて歩けるということのようでありますが、常識的に言つて、世界で最も劣等國といいますか、弱小國といいますか、最も原始的な海賊でもライフルくらいは皆もつておる、普通の軍用銃にひとしい精能の小銃くらいはもつておるのです。そうすると、最も無力な弱小な海賊船にでも対抗することができない、まず小銃をもつて乘込んでおる海賊船には、指をくわえて見ておるのみだということになるのですが、それで大体あなた方は満足をしておられるのかどうか、伺います。
  94. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 先ほどから申しまするように、この状態で決して満足しておるのではないのでありまして、できるだけ万全の策を講じて、今お話のありました程度の力をもちまして、そういう海賊とか、あるいは危險がありましたときにも、勇敢に仕事ができますようにしなくてはならぬということは、われわれどもも考えておりますので、機会あるごとに今後も、できるだけその実現ができますように努力いたしたいと思つております。
  95. 千賀康治

    ○千賀委員 それがなければ、現在日本沿岸密貿易で非常に問題になつておる取締りさえも不可能であると思うので、これはぜひその筋の了解を得てやつていただかなければ、佛つくつて魂入れずということになると考えられます。
  96. 松浦榮

    ○松浦委員 第四條を見ますと、海上保安廳船舶は実に万能になつております。私は船舶という問題は知識がないので、はつきりしたことは言われないのですが、言われないために御質問もするわけですが、海難に備える船舶の構造と、それから密貿易を防止したりするような船舶の構造とは違うのではないでしようか。もし違うとすれば、この第四條の條文を万能のように書いてしまうのは、どうかと思うのですが、その点はどうですか。
  97. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これは百二十五隻で五万総トンということだから、結局五万トンを百二十五で割つて四百トン程度の船を全部つくるということではありませんので、先ほどお話がありましたように、それは海難を主たる目的とした船とか、燈台に必要な船とか、それはある程度精能を考えて、向き向きの船をつくりたいと思つております。アメリカでもそういうふうになつております。
  98. 松浦榮

    ○松浦委員 第四條の第一項の文字を見ると、すべての精能を備えた、いろいろの機能を発揮するところの船舶のように読めるので、その点はどうかと私は考えます。それからサルベージとの関係はどうですか。
  99. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 サルベージは、別にこれができましてもなくなるのではありませんので、沈没船の引揚げなどはそういう会社がみなやるのでございます。
  100. 坂東幸太郎

    坂東委員長 第五條に入ります。     〔朗 読〕  第五條 海上保安廳に長官官房、水路局及び燈台局を置く。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは第六條に移ります。     〔朗 読〕  第六條 長官官房においては、左の事務を掌る。   一 職員の任免、分限、懲戒、教養、訓練その他進退身分に関する事項   二 長官の官印及び職印の管守に関する事項   三 所管行政に関する調査、企画及び考査一般並びに総合調整に関する事項   四 公文書類の接受、発送、編さん及び保存に関する事項   五 統計報告の調製に関する事項   六 経費及び收入の予算、決算、会計及び会計の監査に関する事項   七 海上保安廳の中他局の所管に属しない官有財産及び物品に関する事項
  102. 酒井俊雄

    ○酒井委員 海難に関しては現在いろいろな法制があるのでありますが、そういう法律との関係はどうなるのでありますか。
  103. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 この規定は、あくまでそういう実態的な海難とか船舶安全法とか、水先法というような、海上保安廳職務執行いたしまする根拠になる法規というものは、皆これらの法規に基いてやるのでありまして、海難につきましても、現在の法規に基いて保安廳の船がやるわけでありますから、関係というとそういうことしかないのでありますが、何かほかに……。
  104. 酒井俊雄

    ○酒井委員 海難救助法とか、海難審判に関する法律と矛盾する点はありまませんか。私も海難に関する法律をしばらく見ないので、内容をしつかり知らないのですが……。
  105. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 別に全然矛盾することはないと思います。
  106. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 第二項の「船舶の安全に関する法令の海上における励行並びに船舶職員の資格及び定員に関する事項」とありますのは、実際上は、どういうことになるのですか。
  107. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 船舶職員に関しては、現在船舶職員法というものがありまして、これに大体免状は船長以下一等航海士、二等航海士、三等航海士とあり、機関長についてもそうでございますが、そういろ免状の試験に関することがございます。それからまた船の定員と申しますのは、何トンの船には何人の技術者を乘せなければならぬということになつております。これは最低の定員であります。実際はそれ以上乘せておりますが、法律の建前からいけば、それ以下に乘せると出港ができないことになる。これは船の安全のためにそういうことをやつておるわけでありまする
  108. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 そうすると、一般船舶職員の資格、定員に関する事項を取扱うということになるわけですね。
  109. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 そうでございます。
  110. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 それからもう一つ海上における、あるいは船内における疾病等の場合においても、これはもちろん檢疫ということになると思うのですが、應念の処置としてここに規定する必要があるのじやないかと思われますことは、海上保安官の職務権限の中に「船舶檢疫若しくは調査を受けるとき云々」というような、他船との、あるいは陸地との交通を制限するというようなことがあるのであります。そこで海上保安局として、公衆衞生の点や、あるいはその他の点において急速に、いわば今までの警察的な処置をするというようなことを保安局権限として規定することがよくはないかと考えるのですが、その点はどうかということ。それから十四にある「海上保安廳の使用する基地施設」ということはどういうことを言つているのか、お伺いしたいと思います。
  111. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 船内で病氣をいたしましたときの應急措置ですが、傳染病などで檢疫法にひつかかるものは、当然保安官が檢疫所に連れて行つて船の出発を止めるということもやるのでありますが、御質問は普通の病氣を起したときの話でございますか。
  112. 酒井俊雄

    ○酒井委員 やはり傳染病等の公衆衞生の点です。
  113. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 傳染病についてはそう処置ができる建前になつております。
  114. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 それはわかつておりますが、そういう職務権限をもつている海上保安官というものは、結局保安局が所管することになる。ですから保安局権限の中にも、そういうことをうたつておいたらどうかということを言つているのですけれども、その必要がなければそれでもいいのです。
  115. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 保安官は保安局だけではなく、水路局燈台局につきましても保安官ができまするので、保安官の中にそれは要らないと思うのでありますが……。
  116. 松澤兼人

    ○松澤(兼)委員 要らないという御意見ならそれでよろしい。
  117. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 第二の御質問は十四の「基地施設」であります。これは先ほどお手もとに印刷して配つてありますが、地方保安本部、保安部、あるいは出張所というようなものを基地と申しております。またその基地におけるいろいろの施設、たとえば通施信設あるいは船のいろいろな免許などのための施設、あるいは乘組員の宿泊所など、いろいろの施設がありますが、そういうものを施設言つております。
  118. 酒井俊雄

    ○酒井委員 こまかいことですが、十二に「海上における犯人」ということがあります。先ほど、陸上警察権との競合関係について話合つておられたのを聽いておりましたが、海上における犯人というと、陸上で犯罪を犯して海上へ出た者を捜査するという意味でありますか。
  119. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これは海上における犯人の捜査ということでございまして、今御質問の陸上から逃げて來たのを海上保安廳がひつつかまえるというのでございましようから、あるいは陸上の警官が追いかけてつかまえることもございますし、あるいは海上保安官が見つけることもあります。あるいはお互いに協力を求められてつかまえることもあります。いずれにしても陸上に起つたことでも、海上に犯人が逃亡しまして、それを捜査逮捕することは保安廳がやることであります。
  120. 酒井俊雄

    ○酒井委員 先ほど聽いておると、原則として海上の犯罪に対しては、その犯人の捜査逮捕が原則だというふうに承つたのですですが、そうしてみると、海上であると海上でないとにかかわらず、犯罪を犯して海へ出たやつは、こちらでみなやつて警察の方は第二次的のものになるように受取れたのですが。
  121. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 そういうふうに解釈していません。、
  122. 酒井俊雄

    ○酒井委員 そうすれば、海上における犯罪の犯罪人とかにしないと、おかしいことになりませんか。
  123. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 海上で犯人を捜査し逮捕することは保安廳がやります。
  124. 酒井俊雄

    ○酒井委員 原則海上で犯した犯罪をやるのでしよう。
  125. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 原則はそうでしよう。陸上へ逃げてきたのを、一緒に追いかけることはちつとも差支えない。
  126. 酒井俊雄

    ○酒井委員 そうすると、原則とか事例外とかに関係なしに解釈して、陸上でやつたやつも犯人が海上へくれば……。
  127. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 その点は海上でやつて陸上へ逃げてきたのを、海上保安官が追つかけていくのも変ですから、これは陸上でつかまえるよりしようがない。これはお互いにそうした方が國家的に合理的であると思う。
  128. 酒井俊雄

    ○酒井委員 海上の犯罪は特殊の捜査方法でやるとか、いろいろ技術は私は変つてくるのではないかと思いますが、それが原則、例外の区別がないとお考えになればそれでよろしいのです。とにかく犯人が海へ出ればこちらでやる。陸へくれば陸上で捜査してやる。それが原則だということになればそれでよいと思います。しかし原則として海上で犯罪が行われた場合にはここでやるのだ。
  129. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 海上警察はこちらが原則で、しかし陸上警察が出てくることは排除するものではないということですから、これはちつとも不思議でないと思います。
  130. 酒井俊雄

    ○酒井委員 海上の犯罪に対して捜査逮捕するのが原則じやないですか。
  131. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 それももちろん原則でありますが、陸上から犯人が海へ逃げるのをとつつかまえることはかまいません。大体海上における犯罪は海上を逃げまわることが多い。陸上の犯罪は陸上を逃げまわつておることが多いと思います。しかし現場で知らないで陸へ逃げられたやつは、海上保安官がやることはできませんから。
  132. 酒井俊雄

    ○酒井委員 わかりました。
  133. 坂東幸太郎

    坂東委員長 第八條。     〔朗 読〕   水路局においては、左の事務を掌る。  一 水路の測量及び海象の観測に関する事項。  二 水路図誌及び航空図誌の調整及び供給に関する事項。  三 船舶交通の安全のために必要な事項の通報に関する事項。  四 前各号に掲げる事項の調査及び研究に関する事項
  134. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 先ほど政府委員に私はちよつと質問しましたが、こうした仕事は全部確かに海洋氣象台でやつておると存じております。そうすると仕事がダブります。しからば海洋氣象台の仕事をやめさせてこちらでするのか、それをお聽きしたいと思います。
  135. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 水路部の仕事は海洋氣象台でやつていないと思います。
  136. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 私は舞鶴へ海洋氣象台をもつてきましてよく知つております。仕事内容は全部そうです。そうすると仕事はダブります。
  137. 大見和雄

    ○大見説明員 私からちよつと申し上げます。現在運輸省の内部におきまして、一方に海象官制と、それから水路部という独立の外局がございます。その間にいずれも海象についての仕事が、あたかも重複しておるかのごとく見えますけれども、一方氣象台の方は元來、水面以上の氣象観測に関する程度において海象の観測をしておるのでありまして、一方水路部の方におきましては、水路の測量、つまり水底の模様を測量する。必要に應じて海象の観測をしておるのでありまして、現在の権限分配をそのままにここへもつてきたのでありまして、両者の権限分配は十分できておるはずであります。
  138. 坂東幸太郎

    坂東委員長 第九條。     〔朗 読〕   燈台局においては、左の事務を掌る。  一 燈台その他の航路標識の建設、保守、運用及び用品に関する事項。  二 燈台その他の航路標識の附属の設備による氣象の観測に関する事項。  三 海上保安廳以外の者で燈台その他の航路標識の建設、保守または運用を行うものの監督に関する事項
  139. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 これも中央氣象台でちやんとやつております。そうすると仕事がダブりませんか。中央氣象台をほんとうにお調べになりましたか、現にやつております。それは運輸省の管轄です。それはよくお調べになつてからこれをおつくりになりましたか。それを私はお聽きしたいと思います。
  140. 大見和雄

    ○大見説明員 この点につきましても、氣象の観測ということについては、まつたく同様でありますけれども、その上に燈台その他の航路標識の附属の設備による氣象の観測とございまして、一般氣象の観測について限定がございまして、一般的に記載された権限について、他に特別の権限を記載してある場合には、一般的なものからその特別なものが除かれるという、各省権限の調整上の原則でありまして、両者の間にまつたく重複はございません。
  141. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 私はこの法規をおつくりになる前に、氣象台とよく御相談になつて、この法規をおつくりになつたか、それをお聽きしておるのです。
  142. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 現在でも運輸省の中に氣象台はあるのでありますが、そのほかに水路部、燈台局というものは現にあるのであります。それの仕事をもつてくるのでありまして、しかもこの官制はその水路部、燈台局の官制に現在書いてあります項目を、そのままもつてきておるのであります。先ほどから氣象台の方との、ある程度重複というような点もございましたけれども、字句の解釈からいきますと、そういう誤解の起る点もありますが、大体目的が違いますので、施設もなるべく重複はしないようにわれわれは考えております。
  143. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 これは確かに中央氣象台でやつておる仕事である。だからこれをおつくりになる前に、あなた方は中央氣象台と御懇談になつてからおつくりになつたのですか。よく向う仕事をお調べになつておつくりになつたのですか。それを私は聽いておるのです。
  144. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 別に中央氣象台とは連絡はとつておりません。燈台局を入れるためにつくつたのですから、燈台局とは連絡してやつております。
  145. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 こういう重複するようなものがあつてはなりませんから、一度よく調べていただきたいと思います。これはきようどうしても上げなければならぬのですか。
  146. 坂東幸太郎

    坂東委員長 大体そうなつております。
  147. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 これは中央氣象台がやつておる仕事です。そうしたならば、また二重になるからおかしいと思います。
  148. 大見和雄

    ○大見説明員 氣象台では氣象の観測はやつておりますけれども燈台その他の航路標識の附属の設備による氣象の観測はやつていないはずでございます。ここには氣象の観測一般言つておるのではありません。その方法について限定しております。燈台その他の航路標識の附属の設備による氣象の観測であります。
  149. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 皆一切やつております。確かにやつております。しかも運輸大臣の管轄のもとに二つのものがあつたらどうするのでありますか。だから私は、確かにそうした方面をお調べになつて、その條項をおつくりになつたか否やを聽いておるのです。
  150. 大見和雄

    ○大見説明員 その点は十分檢討済みであります。それでこの燈台その他の航路標識の附属の設備というものは、海洋氣象台で別途に設けることが、非常に設備の重複を來しますので、燈台局においてみずから保有しておる設備を利用する方が便利である。だからその施設をもつておるところに、この点に関する氣象の観測をやつてもらおうということなのであります。
  151. 大石ヨシエ

    ○大石(ヨ)委員 將來必ず問題が起きます。
  152. 門司亮

    門司委員 今大石委員の疑問もありますので、できますれば当局において、中央氣象台の仕事をおやりになつておる方を、審議の終りますまでにおいでを願いまして、そうして本日この案を上げるといたしますれば、その点も明確にしておきたいと思います。さようお取計らいを願います、
  153. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それではそうしまして次に移ります。第十條。     〔朗 読〕  第十條 海上保安廳に長官一人を一置く。    海上保安廳長官は、運輸大臣の指揮監督を受け、職務を統理し、所部の職員を指揮監督する。但し、運輸大臣以外の大臣又は法務総裁の所管に属する事務については、各々その大臣又は法務総裁の指揮監督を受ける。
  154. 坂東幸太郎

    坂東委員長 よろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 坂東幸太郎

    坂東委員長 次に移ります。第十一條。     〔朗 読〕  第十一條 海上保安廳の各局に局長一人を置く。    局長は、長官の命を受け、局務を掌理し、局中各課の事務を指揮監督する。
  156. 坂東幸太郎

    坂東委員長 よろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは次に移ります。第十二條。     〔朗 読〕  第十二條 運輸大臣は、必要と認める地に事務所を置き、海上保安廳事務を分掌させることができる。
  158. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは第十三條。     〔朗 読〕  第十三條 海上保安廳水路局長は、水路告示を発することができる。
  159. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは次に第十四条。     〔朗 読〕  第十四條 第七條第二号乃至第五号及び第七号乃至第十三号に掲げる職務水路の測量、海象の観測、燈台その他の航路標識の保守及び運用並びに氣象の観測の業務を行わせるため、海上保安廳海上保安官を置く。    海上保安官は、第三條又は第三十六條の規定に從い任命された海上保安廳職員の中から、運輸大臣が、これを命ずる。
  160. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは第十五條。     〔朗 読〕  第十五條 海上保安官がこの法律の定めるところにより法令の励行に関する事務を行う場合には、その権限については、当該海上保安官は、各々の法令の施行に関する事務を所管する行政官廳の当該官吏とみなされ、当該法令の励行に関する事務に関し行政官廳の制定する規則の適用を受けるものとする。
  161. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは次に第十六條。     〔朗 読〕  第十六條 海上保安官は、第七條第四号に掲げる職務を行うため必要があるとき、又は犯人を逮捕するに当り必要があるときは、附近にある人に対し協力を求めることができる。
  162. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは第十七條。     〔朗 読〕  第十七條 海上保安官は、その職務を行うため必要があるときは、船長又は船長に代つて船舶を指揮する者に対し、法令により船舶に備え置くべき書類の提出を命じ、船舶の同一性、船籍港、船長の氏名、直前の出発地又は出発地、目的港又は目的地、積荷の性質又は積荷の有無その他船舶、積荷及び航海に関し重要と認める事項を確かめるため船舶に立入檢査をし、且つ、乘組員及び旅客に対しその職務を行うために必要な質問をすることができる。    海上保安官は、前項の規定により立入檢査をし、又は質問するときは、制服を着用し、又はその身分を示す証票を携帯しなければならない。
  163. 門司亮

    門司委員 この場合の「船舶の同一性」というのは、どういうことを意味するのでありますか。
  164. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これはたとえば船が船名を偽りまして、何々丸と言つてつても、はたしてそうであるかどうかということであります。
  165. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは第十八條。     〔朗 読〕  第十八條 海上保安官は、その職務を行うため四囲の情況から眞にやむを得ないときは、その職務執行につき他の法令に定のあるものの外、左に掲げる処分をすることができる。   一 船舶の進行を仲止させ、又はその出発を差し止めること。   二 航路を変更させ、又は指定する港に回航させること。   三 乘組員、旅客その他船内にある者を下船させ、又はその下船を制限し、若しくは禁止すること。   四 積荷を陸揚させ、又は積荷の陸揚を制限し若しくは禁止すること。   五 船舶が検疫若しくは調査を受けるとき、又は抑留され若しくは人命に対し危險であるとき、当該船舶と他船又は陸地との交通を制限し、又は禁止するごと。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは次に第十九條。     〔朗 読〕  第十九條 海上保安官は、その職務を行うため、武器を携帯することができる。
  167. 千賀康治

    ○千賀委員 この「武器」は先ほどちよつと聽いたような氣がしますが、やはり拳銃などですか。
  168. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 大体警察と同じで、拳銃であります。
  169. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは次に二十條。     〔朗 読〕  第二十條 海上保安官は、その職務を行うに当り、特に自己又は他人の生命又は身体の保護に関し、やむを得ない必要がある場合を除いては、武器を使用してはならない。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  170. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは次に移ります。第二十一條。     〔朗 読〕  第二十一條 運輸大臣は、第三條又は第三十六條の規定に従い任命された海上保安廳職員の中から、港長を命ずる。    港長は、海上保安廳長官の指揮監督を受け、港則法に規定する事務を掌る。
  171. 千賀康治

    ○千賀委員 ただいまの項で規定しております機能といいますか、任務は、大体港の中における軽微な警察事務を掌らせるもののようであります。ちようど今問題になつております中央政府の地方出先官憲の整理ということが盛んに言われておりますが、これはちようどそれと逆行しまして、運輸大臣の指揮、監督いたします出先官廳を港の中につくることに相なるのであります。私はこれはぜひ削除されるものであると思います。地方の港湾がその繁栄のために、あるいはできるだけ地方の要求に副う港であらしめるために、地方のそれぞれのローカル・カラーを発揮することが必要でありますけれども、運輸大臣の任命にかかります海上保安廳の中から港長をつくることになりますと、まことにこれは画一的に流れていつて、港のいろいろな特徴ある長所を伸ばすことにも非常に障害を来してくると思うのでございます。また船舶運営の上から申しましても、やはり港々にそれぞれ地方廳に属しまする港長がある方が適切でありまして、どうしてもかように画一に流れやすい中央官廳の出先官憲を港に新設することは、何としても民主化の時代逆行であるとも思います。政府がこの港長を、運輸大臣の管轄下にある中央海上保安廳の下に隷属せしめるということは、どういう利益を認めてやられたのか存じませんが、港湾協会等においても、この点は非常に明瞭な反対意思を表示しておるのでございます。まずこの港長を運輸大臣の管轄下に置く方がいいという意見を伺いまして、さらに私はこの点について、もつと掘り下げて私の意見を開陳いたしたいと思います。
  172. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 港長の問題につきましては、いろいろ御意見もございますことと存じますが、大体私どもが承つておるところによりますと、警察というものは、一般陸上警察、その中の経済監視所それと海上保安廳の三本建でいく、それで陸上警察につきましては、大体地方自治警察が設置されまして、それのないところに國家警察ということになると思います。しかもまた警察は、從來いろいろ司法警察以外の行政警察をやつておられましたが、これもできるだけ純粋の司法警察だけをやるという建前に警察制度が変りましたために、ここにあります港長事務のような行政警察的な事務は、大体警察から独立してやらせる。そうして海上警察としてやることになるのでありますが、また海上警察として、港長事務をやるにいたしましても、從來この事務地方でやられているのは、地方の港の経営的な立場と、交通警察的な仕事を同じ事務所や機関でやつてつたのでありますが、これがまた警察の独立性と申しますか、そういうことから、港長というものは管理者と、その管理者の施設のサービスを受けるものから、あくまで中立的な第三者的な立場で、組織においてその両者の中の円満な秩序を保つていくということが港長使命になりますので、市とか、あるいは地方で経営者が交通警察事務をやるよりも、それと独立したものにして、また独立したものとして地方的にやらないこともありませんが、独立してやるなら相当ある程度人も要ります。しかも海上保安廳は全國的に一つ警察組織、あるいは保安廳組織ができますので、そこで海上保安廳の一環としてやることが、全体的にみると合理的であり、経済的であり、業務執行もできるということで、こういうふうなあらゆる方面意見が定まつてきたわけでございます。以上お答え申し上げます。
  173. 千賀康治

    ○千賀委員 あらゆる方面意見が定まつたとおつしやるのは、それは役人の方のあらゆる意見が定まつたのだと思います。明瞭にこれは港湾協会では反対をいたしておるのでございます。また港廳というような警備の警察事務地方団体に移讓する方が経費の点で非常に安く済みますし、また水上警察のごときも、それとよく似かよつた施設をもつものが違つた系統で港にあるということになりますと、やはりここで大きな摩擦が起つてまいります。この点などもすこぶる考えなければならぬ点であると思います。かくいたしましてこの港廳というものは、どうしても地方団体に所属せしむべきであつて、この二十一條は削除するのが適当であると考えますけれども、もしもこれを削除されたとしますと、あなた方は差当り大きな障害をどこに感ずるか、私は削除されても一向あなた方の方には障害は起つてこない。この海上保安廳法案全体の機能についてちつとも故障は起つてこないと思いますが、この点はいかがお考えになりますか。
  174. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これはやはり海上治安関係をしておりまして、もう少し具体的に、説明いたしますならば、海上取締りを受けました船が、また日本全國を的にして——あるいは日本全國ではなく、ある一つ地方的な分野を超えて、地方的に見れば二つ、三つの管轄区域に関連をもつて横行しておりまして、たとえば港廳がいろいろ危險物の輸送等もし、許可、認可をやるのですが、それが不適当でございますと、よその港に行つても問題を起す、あるいは航海の途中においても問題を起すのでございまして、どうしても港廳というものは、その港自体に関係のあることもございますが、また取締りの船がそういうふうにして廣い地域に動きますので、これが各地域別に全然独立しているということになると、私どもとしては非常に困るのでありまして、大体港につきましても治安の責任は海上保安廳としてもつということになります。
  175. 千賀康治

    ○千賀委員 討論のときに私はさらに削除の意見を申し上げますので、これで一應質問を打ち切つておきます。
  176. 坂東幸太郎

    坂東委員長 それでは第二十二條。     〔朗 読〕  第二十二條 運輸大臣は、第三條又は第三十六條の規定に從い任命された海上保安廳職員の中から、海難審判理事官を命ずる。    海難審判理事官は、海上保安廳長官の指揮監督を受け、第七條第六号の事務を掌る。
  177. 坂東幸太郎

    坂東委員長 よろしうございますか。それでは第二十三條。     〔朗 読〕  第二十三條 海上保安廳職員の服務に関する規則は、國家公務員に関する法令に触れない範囲内で、運輸大臣が、これを定める。
  178. 坂東幸太郎

    坂東委員長 次に第二十四條。     〔朗 読〕  第二十四條 航路標識維持し、密貿易を防止し、及び遭難船員に援助を與えるため、海上保安廳長官は、必要に應じ船舶基地及び担任区域を定める。
  179. 坂東幸太郎

    坂東委員長 では第二十五條。     〔朗 読〕  第二十五條 この法律のいかなる規定も海上保安廳又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。
  180. 坂東幸太郎

    坂東委員長 次に第二章海上保安委員会、第二十六條。     〔朗 読〕     第二章 海上保安委員会  第二十六條 海上保安制度運用及び改善に関する事項を審議するため、海上保安廳海上保安委員会を置く。    海上保安委員会は、これを中央海上保安委員会及び地方海上保安委員会とする。    中央海上保安委員会及び地方海上保安委員会は、海上保安廳長官の諮問に應ずる外、海上保安制度運用及び改善に関し海上保安廳長官に建議することができる。
  181. 酒井俊雄

    ○酒井委員 この委員会委員の選任は、どういう形でなされる予定ですか。任命するのか、公選するのか。
  182. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 運輸大臣が任命または委嘱ということになります。
  183. 酒井俊雄

    ○酒井委員 この中にその條文がありますか。
  184. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 施行令できめることになつております。
  185. 酒井俊雄

    ○酒井委員 これは民主主義の建前上委員は公選の形にするわけにいきませんか。
  186. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 地上警察海上保安とは趣きを異にしておりまして、これは大体國家警察的な観念に立つておりますので、公選という方法も考えられますが、一應一般官吏については任命をいたしまして、民間の方については委嘱することになつておりますが、実際の委嘱の点については、できるだけ一般の民意を代表していただけますような人をと思つております。
  187. 酒井俊雄

    ○酒井委員 委員になる資格というか、どういう範囲から選ぶというような予定はないですか。
  188. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 大体官吏につきましては、先ほど申したように、税関とか警察系統、あるいは農林省系統の食糧関係、そういう関係官吏にいたしたいと思います。民間につきましては、大体多く取締の対象になりまする海上関係仕事をやつておられる方、あるいはその地方有力者というふうな、なるべくその地方意見を代表していただくような人を選びたいと思つております。
  189. 酒井俊雄

    ○酒井委員 人数とか割振りとかいうものはないですか。
  190. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 大体人数は二十四、五名程度考えております。
  191. 酒井俊雄

    ○酒井委員 二十四、五名というのは中央ですか。
  192. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 地方で大体二十名程度でございます。
  193. 坂東幸太郎

    坂東委員長 第三章、第二十七條。     〔朗 読〕     第三章 共助  第二十七條 海上保安廳及び警察行政廳税関その他の関係行政廳は、連絡を保たなければならず、又、犯罪の予防若しくは鎮圧又は犯人捜査及び逮捕のため必要があると認めるときは、相互に協議し、且つ、関係職員の派遣その他必要な協力を求めることができる。    前項の規定による協力を求められた海上保安廳警察行政廳税関その他の関係行政廳は、できるだけその求に應じなければならない。
  194. 坂東幸太郎

    坂東委員長 よろしゆうございますか。——第二十八條。     〔朗 読〕  第二十八條 前條の場合において派遣された職員は、その派遣を求めた行政廳の指揮を受けなければならない。
  195. 坂東幸太郎

    坂東委員長 第四章補則、第二十九條。     〔朗 読〕    第四章 補則  第二十九條 海上保安廳長官は、その職権の一部を所部の職員に委任することができる。、
  196. 坂東幸太郎

    坂東委員長 第三十條。     〔朗 読〕  第三十條 海上保安廳長官に事故のあるとき、又は、海上保安廳長官が欠けたときは、海上保安廳職員が、予め運輸大臣の定める順序により、臨時に海上保安廳長官の職務を行う。
  197. 坂東幸太郎

    坂東委員長 では次に移り、第三十一條。     〔朗 読〕  第三十一條 二級の運輸事務官又は運輸技官を以て充てられた海上保安官は、海上における犯罪につき刑事訴訟法第二百四十八條に規定する司法警察官の職務を行い、三級の運輸事務官又は運輸技官を以て充てられた海上保安官は、海上の犯罪につき同法第二百四十九條に規定する司法警察吏の職務を行う。
  198. 酒井俊雄

    ○酒井委員 この三十一條の中に「海上における犯罪」というふうになつております。これで見ると、前の七條に「海上における犯人」とあるのはやはり私が先ほど質問しましたように、海上の犯罪を原則として管轄するということがほんとうであつて海上の犯人というものが原則になつているのではないというふうに考えられるのだが、どうでありましよう。海上の犯人ということと、海上の犯罪ということとは、まつたくこれは意味が違います。海上の犯罪は海上において行われた犯罪である。海上の犯人ということになると、犯罪が陸上で行われたか海上において行われたかは問わないで、とにかく海上に犯人がおれば海上における犯人だということになるのですが、前の文句を書かえたらどうですか。こまかいことを言うようですが、これは権限争いなどができるのではないかと思います。前の方の海上における犯人というのは、海上における犯罪の犯人というふうにされると、はつきりすると思うのです。
  199. 山崎小五郎

    山崎(小)政府委員 これは、三十一條の方は、保安官に司法警察官の権限を與えておるのでありまして、これは結局は、今の酒井委員がおつしやいますように、海上保安艇の保安官というのは海上における犯罪だけの取締目的でありますけれども、七條の規定は、保安官はただ海上における犯罪の取締だけでなく、陸上における犯罪で、犯人が逃げたやつを取締ることもできてもいいと思うのであります。
  200. 酒井俊雄

    ○酒井委員 前の第七條第十二号は、海上における犯人の捜査及び逮捕の事柄でありますが、結局、警察権を行う根拠を三十一條で、つまり海上の犯罪に限るわけなんです。警察権を用い得るのは、海上で行われた犯罪について警察権を用い得る。陸上で行われた犯罪は警察権を用いることはできないと思うのです、これで見ると。だから原則としては、あくまで海上で行われた犯罪について警察権を用い得る。そうすると、前の七條の方もやはり、海上における犯罪のその犯人を捜査し逮捕するということでないと矛盾してまいります。陸上で行われた犯罪の犯人を捜査し逮捕する権限は三十一條によればないわけです。そうして、大体海上における犯人という意味がおかしいですよ。海上におる犯人というのならばいいが、海上における犯人というのはおかしい。海上における犯罪なら意味をなすが、海上における犯人というのは、言葉自体がおかしい。これは文字そのものがおかしいでしよう。海上における犯人か、海上におる犯人ならいいが、海上における犯人はおかしい。
  201. 坂東幸太郎

    坂東委員長 暫時休憩いたします。     午後六時四十九分休憩      ————◇—————     午後七時四十五分開議
  202. 坂東幸太郎

    坂東委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  本日は都合により散会いたしまして、月曜日の午前十時から開会しまして、さらに審議を継行いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後七時四十六分散会