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1948-07-02 第2回国会 衆議院 司法委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月二日(金曜日)     午前十一時十分開議  出席委員    委員長 井伊 誠一君    理事 鍛冶 良作君 理事 石川金次郎君    理事 八並 達雄君       大村 清一君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    松木  宏君       山口 好一君    池谷 信一君       石井 繁丸君    猪俣 浩三君       榊原 千代君    中村 俊夫君       吉田  安君    大島 多藏君       北浦圭太郎君  出席國務大臣         厚 生 大 臣 竹田 儀一君  出席政府委員         法務調査意見長         官       兼子  一君         法務行政長官  佐藤 藤佐君         厚生事務官   小島 徳雄君  委員外出席者         專門調査員   村  教三君         專門調査員   小木 貞一君     ————————————— 七月一日  昭和二十三年六月以降の檢事等の俸給等に関す  る法律案内閣提出)(第二一五号)  昭和二十三年六月以降の判事等報酬等に関す  る法律案内閣提出)(第二一六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  少年法改正する法律案内閣提出)(第一五  六号)  罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の  災害及び同條の規定を適用する地区を定める法  律案内閣提出)(第二〇〇号)  商法の一部を改正する法律案内閣提出)(第  二〇四号)  有限会社法等の一部を改正する法律案内閣提  出)(第二〇五号)  昭和二三年六月以降の俸給等に関する法律案  (内閣提出)(第二一五号)  昭和二十三年六月以降の判事等報酬等に関す  る法律案内閣提出)(第二一六号)     —————————————
  2. 井伊誠一

    井伊委員長 会議を開きます。  罹災都市借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案議題といたします。提案の理由につき政府より御説明を願います。條の二の規定によりますと、戰災の場合のみらなず、別に法律で指定した火災、震災、風水害その他の災害の場合にも同法の規定を適用して、かかる災害地復興の促進に資することとなつております。そして、その適用地区は同法第二十七條第二項の規定によりますと、これまた災害ごとに別に法律で定めることとなつているのであります。  昭和二十二年十月十七日山口懸下関市長府町に発生したしました火災につきまして、その被害状況及びその後の復興状況を愼重に調査檢討いたしましたところ、右災害につき同地区にも罹災都市借地家臨時処理法規定を適用することといたしますのが、同市を速やかに復興させるゆえんと考えられますので、ここに本法律案を提出いたした次第であります。  なお、從來罹災都市借地借家臨時処理法規定を、戰災地以外の災害地に適用した例に照らしますと、今回は多少罹災戸数が少いのではありますが、同市は、戰災都市として、すでにその一部に同法が適用されております関係もあり、また地元その他の意向をも汲みまして、この措置をとることを相当と考えた次第であります。  何とぞ愼重御審議の上速やかに可決せられんことをお願いいたします。
  3. 井伊誠一

    井伊委員長 それでは本案につき質疑はございませんか。それではこれをもつて質疑を終了いたします。次に討論に移ります。
  4. 石川金次郎

    石川委員 ただいま審議中であります罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條のこの災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案改正について、社会党を代表いたしまして、原案通り賛成をいたします。
  5. 中村俊夫

    中村(俊)委員 民主党を代表して本案賛成いたします。
  6. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 民主自由党を代表いたしまして、本案賛成いたす次第であります。
  7. 井伊誠一

    井伊委員長 討論は終局いたしました。  これより採決いたします。本案について原案賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  8. 井伊誠一

    井伊委員長 起立総員。よつて本案原案通り可決されました。なお本案についての委員長報告書の作製については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 井伊誠一

    井伊委員長 御異議なしと認めます。よつてさように決しました。     —————————————
  10. 井伊誠一

    井伊委員長 次に少年法改正する法律案議題として、審査を進めます。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 厚生省意見裁判所側意見と多少違うようでありまするが、本改正案の要点は、第三條の二項の犯罪少年は別として虞犯少年なんかについて、この規定のように児童相談所なんかの窓を必ず通ずるというように、一元的にしなければならぬ積極的な理由がありましたならば伺いたいと思います。
  12. 内藤文質

    内藤(文)説明員 御説明いたします。元來にの不良少年保護につきましての根本的な建前につきまして、私どもといたしましては、犯罪を犯したような少年は、元來犯罪を犯しておるのでもございますし、またその取扱いにつきましては、強い力を用いる必要がある、かように考えまして、これは当然に裁判所で取扱われて差支えないもの、かように考えたのでございます。しかしながらいまだ犯罪を犯しておらないところの不良少年、たとえばここに第三條にも出ておりまするような、保護者の正当な監督に服しない性癖があるとか、あるいはまた正当な理由がなく家庭に寄りつかない、こういうふうな者につきましては、この点むずかしい問題でございますが、裁判所という観念がなかなかいかめしい感じを與えます。これは裁判制度が変りましても、なおそういう氣持は速急には拂拭しがたいと思われるのでございますが、そういう子供につきましては、むしろ兒童福祉法によるところの温い保護、こういうことを第一義的に考えまして、まずそういう少年につきましては、とにかく兒童相談所において手がけてみて、それを兒童相談所鑑別をしてみまして、この子供はやはり裁判所の強い権限をもつて直さなければだめだと思われる、こういう子供原案の第三條第二項によりまして、知事または兒童相談所から送る、こういう建前にしております。これが兒童保護に関する最も根本的な方針ではないかと考える次第でございます。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、これは強制教育をすべき少年であるか、しからざる少年であるかというような鑑別は、裁判所よりも兒童相談所の方が適当だという御論旨なんですか。
  14. 内藤文質

    内藤(文)説明員 さようでございます。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 第二十四條を見ますと、その一項の一号に、十四歳に満たない少年は全部兒童相談所に送致するようになつておりますが、十四歳に満てない少年においても、強制教育を施す場合が多々あろうと思うのであります。これは十四歳に満たない兒童は、全部裁判所の手にかけないということはどういう理由からでありますか。
  16. 内藤文質

    内藤(文)説明員 これは十四歳未満のものにつきましては、とにかく裁判所の力による強制ということは考えない方が適当なのではないか。これをやや事例が違いますが、たしか少年院法等におきましても少年院に入れる者はおよそ十四歳以上、こういうことになつておつたと思うのであります。そういう思想から出たものであると考えます。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると十四歳未満のものは、全然裁判所関係のないことになつている。しかるに二十四條の一項の一号を見ると、十四歳未満のものも家庭裁判所へ受理して審判を開始するようになつておるのであるが、これは全然権限のないものを受理して審判をするということはどういうわけであるか。二十四條の一項の一号は今の説明ちよつと矛盾していると思う。
  18. 内藤文質

    内藤(文)説明員 この点につきましては、私どもはかように考えておるのでございます。要するに一應本人を裁判所に喚んで調査をするとか、こういう場合には、やはり強い権限をもつて行う必要があると思われます。やはり一應家庭裁判所権限においてそこまでの措置はとる必要がある、かように考えられるわけでございます。それからまた兒童相談所といたしましては、この二十四條によりまして、家庭裁判所から送致をされた場合におきましては、特にその点を強く考慮いたしまして措置する。かように考えられまするので、それらの点に実益があると解釈をしておる次第でございます。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 今の前段の説明はどうしても矛盾だと思うのです。裁判所名前を出さなければならぬ場合があり得るならば、大体十四歳未満の者については、全然裁判所に処分せられる権限がないということと、なくするということとは、少し思想的に矛盾すると思う。私どもはそういう場合があり得るから、やはり裁判所においても十四歳未満の者に対しても、処置する権限を附加した方がいいのでやないかという意見になるのであります。それは意見の相違ということになれば、それまでで、それでいいのでありますが、十四歳未満少年についても裁判所名前を利用しなければならぬことがあり得るならば、あなた方の主張はその点において一歩後退しておるのじやないかと思う。そこでなおこれを必ず兒童相談所あるいは知事から——三條の規定に戻りますが、その窓を通じてでなければ、裁判所事件を処理できないという、さような一元的なことにせずに、やはりこれは裁判所でも扱うことができるし、兒童相談所でも扱うことができるし、おのおのその具体的な事実、具体的な場合において、そこに適所な判断ができるという、ゆとりのある調子がいいのじやないか。無理にこれを一元的なしなければならぬ必要は一つもない。殊に審判あるいは少年を選別するということは、裁判所本來の專門とするところでありますから、かえつて裁判所に任せた方がいいというふうに思われるのであるが、今言つたいろいろの少年相談所の特異な性格から見て、その方が適当という場合もあり得ると思うのであります。これはやはり妥協的に、第三條の二項においても必ずこれは少年相談所からもつてこなければ、裁判所は手をつけられないというようなことにせずに、裁判所でも事件は受理し、これを処分するが、その処分するについては兒童相談所協議の上でこれを決定するというふうにやつたならば、兒童相談所側で心配しておる点もなくなるのじやないかというふうにわれわれは考えます。こういうふうに両者協議の上で事を決定するということ、言いかえれば兒童相談所は、最も慈愛の深い父母立場に立つて少年をどうすべきかということを裁判所と相談する。あなた方が引きとつてやるか、われわれの手でやつた方がいいか、あなた方はそういうことについて專門家であるが、この場合はどうしたものだろうということを両者協議してやるという、慈愛の深い父母立場少年相談所である。この慈愛深い少年相談所裁判所側協議して、これをどうするかを決定するということが、最も適切ではないかと私は考えるのでありますが、さようなことにした場合に、何かそこに弊害と申しますか、不都合なことがあるでありましようか。御意見を承りたいと思います。
  20. 内藤文質

    内藤(文)説明員 少し問題が根本的の点に遡りまして恐縮でございますが、先ほども申しましたように、私どもほんとう氣持といたしましては、要するに裁判所においては犯罪少年のみを取扱われる、そうしてその他の不良少年につきましては、兒童福祉法でやるべきで、こういうふうに根本的には考えるのでございます。しかしながらなお犯罪少年以外の不良性のある子供につきましても、ある一つの場合においてはなお裁判所の強い権力を必要とする、かようなことのあることも考えまして、この第三條の二項を、私ども妥協案と申しますが、讓歩案というと語弊がありますが、実情に即するようにもつていつた意味で、第三條の二項がはいる。それからさらに第三條の一項の第二号以下を裁判所取扱いにするということも、今申しました根本の方針からみますと、一つ実情に即せしめるための措置であると考えるのでございます。そういう意味において、さらにただいま仰せられたように、もう一段これを拡張して、第三條の第二号に掲げてある少年、しかも十八歳未満少年について、裁判所相談所と両方に権限がある。たまたま両者が打合わせることによつて事を運ぶという建前になりますことは、当初から私でもが考えております大原則に対して、あまりにそれと建前が変つてくるように思われますので、ただいま出ておる法律案原案程度が、まず実際に即したところではないかと考える次第でございます。  それから不都合という問題についても、確かに條理から考えてみますと、それほど心配する必要はないかもしれませんが、現実の問題を考えてみますと、やはり打合せということは実際においては、はたしていくばくの効果を收め得るか、かような点に私ども若干の疑問をもつような次第でございますが、これはあくまでもあまり現実というものを考え過ぎた考え方かもしれませんが、私にはそう考えられる次第でございます。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 裁判所側のお考えを承りたいと思うのですが、見えておりませんので、佐藤さんから、今の協議してやることに対して何か都合が悪いことがあるか、あるいはそのことについて反対であるかの御意見を承りましようか。
  22. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 第三條の規定につきましては、昨日も申しましたように、家庭裁判所審判対象になるものは犯罪少年、それから犯罪性の強い少年つまり罪を犯すおそれのある少年に限られておるのでありまして、この罪を犯すおそれのある少年と申しますのは、第三條の一項の二号に列挙してあるような事由があつて、しかもなおその生活環境に照らして、將來罪を犯すおそれのある少年というのでありまして、二号のイロハニに列挙してある事項があれば、ただちに虞犯少年となるわけではないのであります。イロハニというような事由があつて、しかも生活環境に照らして、將來罪を犯すおそれのある少年ということで、家庭裁判所によつて裁判されるのでありますから、そういう犯罪性のある、犯罪の傾向の強い少年は、不良少年の中でも特に程度の強い不良少年でありますから、そういう強い犯罪性のある者は、強制力を用いたいわゆる強制教育を施す方が、少年保護に適当であろうという考えのもとに、虞犯少年家庭裁判所審判対象といたしたのであります。しかしながら審判対象となるその虞犯少年裁判所に連れてくる場合に、あらかじめただいま猪俣委員から仰せになつたように、裁判所職員と、たとえば保護司と兒童相談所長と打合わせて、そうして裁判所に連れてくるというようなことになりますれば、実際の運用としてはかえつて兒童保護のために望ましいことではないというふうに考えておりますので、もしもさような修正案が現われまするならば、私どもといたしましては賛成いたしたいと考えております。
  23. 花村四郎

    花村委員 ただいまの猪俣君の質問とちよつと牽連して、厚生省政府委員に伺いたいと思いますが、先ほどの御答弁によりますると、第三條第二項に該当する少年のうちで、強制教育を受くべき性格をもつた青年は家庭裁判所審判に付し、しからざるものは兒童福祉法によつてこれを保護されるというお話であつたのでありますが、家庭裁判所審判に付する強制教育というものと、福祉法で扱うしからざる少年に対する保護処分と、どういう点が違いましようか。保護を加える点にどういう形において異なるのであるか、その点をひとつ伺いたいと思います。
  24. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 お尋ねの点につきましては、これを形式的に考えてみますると、家庭裁判所によるところの保護は、要するに裁判所の決定に基くものでございますから、その身柄等についても強制的な拘束力を有する。これに反しまして、兒童福祉法によるところの保護におきましては、そういう観念を含んでおらない、こういう点に形式的な差異は明らかにあると思うのでございます。なおこれはきわめてデリケートな問題ではございますが、感情的の問題から申しまして、裁判所ありいはまた少年院というふうなものは、現在の情勢におきましては、きわめて一般的の考えてみまするならば、やはりなおこわいところ、そこへ連れていかれたような者はよほどのたちの悪い者、かような氣持が割合と強く、またある意味におきましては、裁判所というものは今後それだけの威嚴といいますか、力と申しますか、そういうものはもつべきものであるとすら、私ども素人には考えられるのでございますが、これに対しまして兒童福祉法におきましては、兒童委員というものも元來民生委員が当るものでございますし、兒童福祉司も、元來裁判等には全然服したことのない厚生関係の者がなる、こういう意味におきまして、全体の意味合というものが、どこまでも保護の理念、しかも温かい保護ということに一貫しておるわけでございまして、こういう点に、氣分の上においても相当の差異があるのではないかと考える次第でございます。
  25. 花村四郎

    花村委員 そうしますと第三條の二項に掲げてある「罪を犯す虞のある少年」すなわち虞犯少年でありますが、この二項の虞犯少年についても福祉法で律しようと言われるのですか。この虞犯少年のうちで、しかもその程度の高いものは本法へもつてきて、しからざるものは福祉法で律することにしたいというお考えですか。
  26. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 そのような心持でございまして、要するに家庭裁判所で取扱うもの犯罪少年である。犯罪を犯していない、いわゆる虞犯少年以下のものは、兒童福祉法でやるというのが本來の建前である。ただ兒童福祉法によつては手におえないような虞犯少年、すなわち特に強い力でもつてひつぱつたり何かしなければ措置のつかないような少年、こういうものを例外的に兒童相談所長または知事から裁判所にお願いする、かような建前にいたしたいと存ずるのであります。どこまでもそういう根本的な氣持でございます。
  27. 花村四郎

    花村委員 私はただいま御説明になりました政府の方のお考え方とは少し考え方が違うのであります。要するに犯罪に関することは、すでに罪を犯した者に対し適当なる処置をせんければならぬことは、これは当然で言うまでもありませんけれども、その罪を犯すに至るまでに、犯罪予防防遏ということこそ私は最も重大であろうと思う。もちろん罪を犯した者に対する処置は言うまでもございませんが、罪を犯した者を処罰するというような考え方よりも、むしろ犯罪予防防遏という方面に、國家のすべての力を打ちこむということこそ望ましい。これは刑事政策上の見地から申しましても、犯罪犯罪予防ということとは、表裏一体をなすものであつて、不分離の関係考えなければならぬとわれわれは思う。しかもどちらが重要であるかといえば、犯罪予防防遏の面に対して國家のあらゆる力を傾倒していき、そうして犯罪未然に防ぐ、犯罪を起さぬようにする、犯罪を処罰するというような規定は、理想的からいえば、不必要になるまでに犯罪予防防遏方面をやはり強くみなければならぬ。從いまして犯罪に関する、法律の諸制度をきめてまいります場合においても、ただいま私が申し上げました原則的な考えというものは、かえてはならぬと思うのであります。こういう見地に立つて第三條を見てみます場合において、第二号の(イ)(ロ)(ハ)の條項にあてはまる性格をもつた少年であり、しかもそれが罪を犯すおそれがある少年、こういう少年に対しましては、犯罪予防見地から考え、また犯罪防遏するという見地から考えて、それに適應する保護をやはりしていかなければならぬ。保護処分をすることが必要ではないかと考えるのでありますが、むしろ兒童福祉法というものは、犯罪予防というようなことは考える必要がない、刑事政策的見地から考慮する必要はないのではないか。もちろんこれは兒童福祉法の根本的な精神から言うならば、むしろ犯罪予防防遏というようなことは考えずに、そういう刑事政策的の考え方は、犯罪を扱う裁判所の方に任せておいて、そうしてほんとう福祉法規定しているように、兒童心身ともに健やかに生れて育成されていくという、眞に兒童福祉を保障するという方面に、全力を注がるべきものであつてしかるべきものであろうと私は考えるのであります。でありますから兒童福祉法見地から考えるならば、犯罪予防に関するようなことは、全然考えてはならぬというのではないが、あまり深く考えないで、この少年將來犯罪を犯すおそれがあろうかどうかというようなことは、これは保護する上において当然考慮を拂わるべきものではありますけれども犯罪予防防遏刑事政策の域にまではいつて兒童福祉法というものが考えられるべきものでないことは、きわめて明瞭であろうと思う。そんなことを考える必要はない。しかしながら少くとも少年犯罪予防防遏というような見地から考えて、犯罪を犯すおそれのある少年、そういうものは、やはりこの刑事政策的の見地からして、裁判所考慮が拂わるべきものでありますことは当然であろうと思う。こういう意味において、この限界をはつきり区別してよかろうと思う。今厚生省政府委員が言われるように、第三條の二号の、「罪を犯す虞のある少年」であつても、その程度の強い者はこれを家庭裁判所の方にもつていく、しからざるものは福祉法で律すべきであるという考え方自体が、私は根本的に違うと思うのでありますが、その点はいかがでしよう。
  28. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 犯罪を犯しました者に対する措置よりも、犯罪未然に防止、予防、鎭圧することが必要であるということにつきましては、まつたくお説の通りであると考えるのでございます。ただ兒童福祉法は元來そういう犯罪予防を顧慮すべきものではない、かような点につきまして、ただいまも仰せられました第一條の「兒童心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるように努めなければならない。」という問題でございますが、この中には当然にその子供が悪の道に走ることなく、正しい人間に育つていくように配慮する。かような精神が含まれ、ただ物的にその子供の栄養を改善いたしましたり、それからいろいろ環境、調整したり、そういう物的な面ばかりでなく、精神的な指導をも当然この法律によつて行わなければならないものであると考えるのであります。從いましてこの法律におきましても教護院という施設がございます。この教護院におきましては、不良少年を直してやることをその目的といたしておるわけでございます。そうしてこの犯罪予防、少くとも十八歳未満少年犯罪予防、その性格の矯正、こういうことにつきましては、むしろこの兒童福祉法精神によつて行い、刑事政策的な精神によつて行うのは、むしろ万やむを得ざる場合の例外に止める。これが最も効果的ではないかと私どもとしては考えられる次第でございます。
  29. 花村四郎

    花村委員 そうすると本案の第三條第二号の「罪を犯す虞のある少年」というものの中に、こういう強い性格をもつた少年、強くない少年というような区別は一体どういうところでいたしますか。強い者については矯正せんければならぬと先ほどあなたはおつしやつたが、その罪を犯すおそれのある少年で、その度合いが強いとか弱いとかいうのは、一体何で識別するのですか。どういう者を強き者と称し、どういう者をしからざる者と言われるのか。その区別を截然とおつしやつていただきたいと思います。
  30. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 ただいまのお尋ねにお答えいたしたいと思います。この兒童福祉法規定されておりますところの兒童相談所というものは、そういうことを区別いたすことがその目的でございます。この働きを具体的に申し上げますと、たとえば一人の子供が連れてまいられましたときに、その子供精神状態は一体どういうところにあるのか。それからその身体の発育状況はどういうところにあるのか、かような点をそれぞれ專門職員が十分に檢査をいたしまして、ある者は精神薄弱兒としてそこに入れる。ある者は肢体の不自由な者としてそこに入れる。あるいはまたある者は養護院、昔の言葉でいうと孤兒院に入れる。ある者は先ほども申しました教護院に入れる。かように処置するわけでございます。その際当然にこの少年家庭裁判所の強い力によつて矯正するのが適当であるということは、十分に判断がつくものである、そのような判断をすることが、まさに兒童相談所の本來の職分である、かように考える次第でございます。
  31. 花村四郎

    花村委員 私は兒童相談所のことを聽いているのではない。兒童相談所はもちろんそうでしよう。あなたが今説明されたときに、第三條の二項にイ、ロ、ハ、ニにわけて掲げてある少年の中で、罪を犯すおそれのある少年のその度合の高い者は、矯正教育をする必要がある。しからざる者は福祉法でいくのであるから、家庭裁判所のやつかいにならないでもよいという御説明をせられたのですが、しからばあなたの言われるその罪を犯すおそれのある少年の強い度合というのは、一体何を言うのか、それをお聽きしているのです。相談所でそういう仕事をやることは、むろん福祉法を見ればわかつているので、そういうことはお聽きする必要はない。福祉法ではつきりしているからいいが、あなたの説明された罪を犯すおそれのある度合の強い性格をもつた者と、もたぬ者との判別は、一体でういう点でなさるのか、これをお聽きしているのであります。
  32. 小島徳雄

    ○小島(徳)政府委員 私参議院の方に行つておりまして、途中の経過はよくわかりませんが、今の御質問にお答えする前に、大体われわれの氣持を皆さんの方に御説明申し上げた方が、大体の筋がわかると思います。兒童相談所でやるべき仕事は非常に大きな問題で、たとえばいろいろな子供が参りますが、その子供をどういうふうに処置するかについて子供鑑別いたしまして、教護院に入れるとか、あるいは養護施設に入れるとか、あるいは精神薄弱兒とか、いろいろ科学的判別を……。
  33. 花村四郎

    花村委員 お話中ですが、繰返したことを質問していたら間に合わぬ。これを急ぐ法案だと委員長から言われているから、私の方でもがまんして簡單に質問したのでありますから、その質問にぴつたりはまるように簡單に答弁をしていただけばいいのです。私の今質問申し上げたのは、先ほど猪俣委員の質問に対して、厚生省政府委員が、第三條第二項のイ、ロ、ハ、ニにわけて掲げてある少年の中で、罪を犯すおそれのある少年はどれか。もちろん全部イ、ロ、ハ、ニが罪を犯す少年であるということになつているわけだが、この少年の中で比較的その度合の高い者は。兒童相談所の手を経て家庭裁判所にまわすことがしかるべき方法であろうと思う、そしてしからざる少年は、兒童福祉法で律せられるのが至当であると考える、こういう説明であつたように私は思うが、そうでしようね。
  34. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 度合の高いと言いますか、特に矯正力を必要とするような者——度合の高いという意味でなくして、むしろ裁判所の力を必要とする者、かような意味に私としては申し上げたつもりであります。
  35. 花村四郎

    花村委員 それではそういう意味でもよろしゆうございます。虞犯少年の中で、特に裁判所の力を必要とする少年、こういうようにお聽きしてもいいですね。そういう少年家庭裁判所で、しからざる者は福祉法で律すべきだ。第三條の二項はそういうようにお聽きしておいて局長さんもいいですね。
  36. 小島徳雄

    ○小島(徳)政府委員 よろしゆうございます。
  37. 花村四郎

    花村委員 そうすると、第三條第二項の罪を犯すおそれのある少年の中で、裁判所の力をもつてせんければならぬという少年性格は、いかなるものであり、しからざる者はどういうものであるかという区別を一体どこでつけるか。それをお尋ねしたいのです。第二項の虞犯少年の中で裁判所の力を借りなければならぬ少年と、しからざる少年とは一体どう区別されるか。
  38. 小島徳雄

    ○小島(徳)政府委員 それはお医者さんの診断と同じようなことで、裁判所というものが科学的に判断いたしまして、この子はどうしても必要だということを決定するわけでございますから、その決定によつてきまるわけでございまして、それを具体的に申すということはほとんど不可能ではないかと思う。ごく具体的な個人々々にあたつて科学的な鑑別を加えて、どうしてもこの子供強制力を必要といたすかどうかということが決定されるわけで、しからばどういう子供がそういうことになるかということは、抽象的には申し上げかねるわけでありますから、お医者さんが診断すると同じように診断をして、そこで決定をするわけであります。
  39. 花村四郎

    花村委員 それはまことに奇怪千万です。そういうことをやることは兒童相談所で当然やることで、そんなことを私は聽いているのではない。兒童相談所権限というものはちやんと福祉法規定してあるのだから、そういう権限を聽いているのではない。それでは今あなたが言われる裁判所の力を借りなければならぬ少年と、しからざる少年との区別がつかぬということであれば、この三條の第二項を論ずるわけにいかぬではないですか。その観念がはつきりしておらなければ、どういう程度の者を裁判所へもつてつて、しからざる者を福祉法にもつていくか、その限界をどういう程度できめるかという、抽象的にきめる水準がなければ、権限はないではありませんか。そうすれば第三條の権限兒童相談所へもつてつてきめるのですか。そうではないでしよう。本案をきめるときに、家庭裁判所審判に附すべき少年兒童福祉法の適用を受くべき少年とは、一体どういう水準でどういう見解できめるかということがはつきりきまらなければ、本案の適用と福祉法の適用はできぬことになるではありませんか。それでは抽象的にきめておいて、その範囲において、つまりその原則に当てはまるかどうかということを、兒童相談所できめるのではないですか。
  40. 小島徳雄

    ○小島(徳)政府委員 今の御趣旨は権限のように考えられておるようでありますが、三條の問題につきましてその点は誤解のないようにいたしたいと思います。昨日も御説明申し上げたのでありまするが、犯罪少年以外の少年につきましては、虞犯少年でもすべて相談所が扱うのであります。けれどもこの子供には強制力を発動しなければならぬと思いましても、強制力という点においては現在の憲法の精神において、裁判所という形式をとらなければ強制力は発動できない。そこでその発動を求める場合に裁判所の力を借りなければらなぬのでありますから、そこで裁判所に送置してその強制力を求める。こういうことになるのであります。
  41. 花村四郎

    花村委員 私のお尋ねしていることがよくおわかりにならぬのではないかと思う。私はそういうことをお聽きしているのではない。今権限の問題ではないと言われるのだが、第三條は権限の問題ではないですか。よく法案をごらんになればわかるので、次に掲げる少年はこれを家庭裁判所審判に付すべき少年であるか、付せざる少年であるかというこの権限について、もちろんこれは権限に関する観念も通則としてこれにはいつているのではないですか。もちろん本法を適用する対象となるべき少年の性質を、これに規定はしてあるのですが、それはとりもなおさず家庭審判所の審判に付する権限に関する規定なつておる。でありまするから、この規定のうちで、先ほどから申し上げているように、罪を犯すおそれのある少年のうちで、裁判所の力を借りなければならぬ少年と、しからざる少年とにわけられている。前者は家庭裁判所審判に付し、後者は福祉法規定を適用して保護を受くべきものであるといわれる。それでこの二項のイ、ロ、ハ、ニのうちで、裁判所の力を借りなければならぬ少年というのは一体どういうものをいうかというのです。大体その観念をおつしやつていただければいい。区別ができなければ家庭裁判所審判に付すべきか、あるいは兒童福祉法規定を適用すべきかということがわからぬと思う。
  42. 小島徳雄

    ○小島(徳)政府委員 結局第三條第二号に該当する少年につきましては、相談所でいろいろ判断して、どうしても強制力を発動しようとするその少年が、すなわちこの審判に付すべき少年、こういうふうに御解釈を願います。
  43. 花村四郎

    花村委員 罪を犯すおそれのある少年は、いかなる性格をもつたものであるかということをきめるのは、兒童相談所でなければきまらぬと、こうお聽きしているのですが、どうですか。
  44. 小島徳雄

    ○小島(徳)政府委員 相談所子供について、そういう科学的な鑑定を加えて、この子供についてはどうしても強制力を用いなければならぬという判断をした、その兒童というものがこの第二号に該当する、こういうふうに御解釈を願います。
  45. 花村四郎

    花村委員 強制力を用いなければならぬ少年と、こうあんたが言われるのだから、その少年はどういうものかという、その本体がわからなければそういうことはいえぬじやないですか。あんたの言われる強制力を用いる少年は、一体その本体はいかなるものか、こういうのです。
  46. 小島徳雄

    ○小島(徳)政府委員 それは社会事情の言葉で言うとソシアル・マークの判断の結果、どうしても強制力を用いるということの判定の下つたものが、すなわちこの少年審判所の審判に付せられる。こういうふうに解釈します。
  47. 花村四郎

    花村委員 これ以上お聽きしてもわからぬからやめておきます。もちろん兒童福祉法の総則でも規定しているように、心身ともに健やかに生れて、りつぱに育成されるという兒童福祉を保障する法律であるのでありまするから、もちろんその少年性格をまつすぐに、正しい方向へひつぱつていくような万般の保護処置を講ぜられることは当然であつて犯罪等の悪へ走らせぬという考えをもつて保護していくべきことは当然でありまするけれども、しかし犯罪予防、この子供犯罪を犯すおそれがあるかどうか、犯すおそれがあるだろうかというような、犯罪予防に関することを中心として考える場合、もちろん悪の方へ走らせないように——性格をまつすぐにもつていくというような保護教育をする場合ではありません。そういう方向にもつていくことは福祉法で明らかになつているのですが、しかしその子供の個性を取上げて、犯罪を犯すおそれがあるかどうか、犯罪を犯しはせぬか、犯すであろうというようなことを中心として考える場合においては、これはやはり刑事政策に結びつけて、それを中心として考えられることは当然であろうと思う。こういうことまでももちろん兒童福祉には関することではありまするけれども、しかし犯罪予防防遏というような点を強く考慮に入れて、子供保護教育をしていく場合においては、やはり家庭裁判所審判に付せしむることが当然ではないかと思うのであります。これは少年の場合ではなくとも、実体法でありまする刑法を論ずる場合でも、犯罪とその犯罪予防とは、不分離な関係にあつて切離すわけにいかない。先ほども私が申しましたように、むしろ罰する方よりも予防の面に力を入れることこそ望ましいという考え方からいたしますると、罪を犯すおそれのある少年福祉法から離して、当然家庭裁判所の方へもつていくのが適当であろうと思いまするが、そのもつてくるのに兒童相談所の議を経るか経ないかという手続上のことは、枝葉末節なことでどうでもいい。そういう犯罪を根本的に裁判所にもつてくるのがいいか悪いかという、まず根本理念をはつきりせんければならぬと思うのであります。先ほど厚生省政府委員の言われるように、罪を犯すおそれのある少年のうちで、その都合の高いものを裁判所の方へもつていき、しからざるものを福祉法の方へもつていくという、そういう漠然たる考えでは、犯罪予防防遏に向つて強い効果的な処置をすることのできないことは、火を見るより明らかであろうと思う。でありまするから、こういう第二項のような少年に対しては、権限爭いのような観念はやめて、ほんとう少年保護、育成に國家の強い力をもつていくのだという、公正適切な見地から考えてもらいたいと思うのですが、いかがでありましようか、御所見を伺います。
  48. 小島徳雄

    ○小島(徳)政府委員 今の問題にお答えいたします。先ほど説明申し上げて、なお納得のいかない点もありますから、これをちよつと詳しく御説明申し上げます。  第三條の二号はどういうふうに規定するかという問題につきましては、われわれとしてはもつと規定の方式につきまして、はつきりした方法を念願しておつたのであります。関係方面で第三條の規定の形式については、非常に熱心な点もありましたが、われわれの考え氣持といたしましては、こういう氣持でございます。すなわち二号は次に掲げる事由があつて、その性格または環境に照らして、刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある少年にして、兒童相談所または知事において、裁判所により強制力を発動する必要ありと認める少年、こう書けば非常にはつきりしておつたわけであります。しかし表現は二項にわけまして点でたいへんおわかりにくいと思いますが、われわれの考えといたしましては、そういう意味でありますから御了承願いたいと思います。  次に今の一般少年犯罪予防の問題についてのお話でございますが、私どもは御承知の通り少年につきましては、犯罪を犯した少年についても、普通の犯罪者と区別いたしまして、これをあるいは刑務所に入れるのではなくして、他の方法によつて保護しよう、こういうふうにまで現在の考えは進んでおる。あるいはまた本來の刑事訴訟法の改正におきましても、どこまでも人権を尊重していこう、こういう精神がすべての精神に現われておるのであります。われわれといたしましては、少年の指導の問題につきましては、刑罰法令に触れるものについては、ある程度やむを得ぬと思うのでありますが、刑罰法令に触れない少年につきましては、もつと温かい方法によつて保護したい、むろん家庭裁判所というものが、いろいろ今度民主化されます。あるいは警察というものが民主化されましても、そういうように大体の観念が、刑事犯罪を取扱うというような役所でやるようなことは、子供に與える影響が非常に大きい。すなわち社会通念といたしますと、裁判所というものは、まず第一に犯罪少年を扱うのだと、こういうふうに社会は観念しますし、警察というところは、人民の保護を扱いますが、やはり犯罪人も取扱うというふうに考える。從いましてその子供の扱い方といたしましては、そういうような普通犯罪関係ある役所が、そういう子供を扱う方が、その子供にきわめて悪い影響を與えるということを心配しておるのであります。御承知の通り終戰以來というものは、子供はたとえば上野の浮浪兒にしろ、警察がこれを捕まえまして、留置場へ一時保護するというようなやり方でやつておるのでありますが、それをすべて警察の手を離れて、兒童の問題のみを取扱う所で、ほんとうに温かい氣持子供の問題を扱つていこうとするのが、兒童福祉法精神であり、おそらく皆さんの御意見であると拜聽いたしておるのであります。從いましてわれわれといたしましては、むろん家庭裁判所も、温かい心でそういうことをやつてくれるだろうとは思つておりますけれども、社会通念といたしましては、家庭裁判所はまず第一に犯罪少年を扱うということになる。そういう所でそういう子供を扱うということは、ややもすればその子供について、あの子供犯罪的なことをやつたんじやなないかというようなことで、世間で白眼視するというようなことが起るのではないかということを、われわれは心配いたしたのであります。たとえて申しますと、不良少年を扱つておるところの少年教護院にいたしましても、すべて少年教護院という名称を避けておるのであります。家庭学校、何々学校といつて、すべて普通の学校と同樣に子供にも思わせ、世間にも思わせる。そいうい点について細心の注意を拂つて子供は自分たちは不良の子供じやないのだ、普通の子供であるというように考え、社会もそういうように考えるように扱うのが、ほんとう子供の心理をつかんだ兒童政策じやないかと考えておるのであります。從いましてその家庭裁判所というものが、普通のそういう一般兒童のみを扱う家庭裁判所ならば結構だと思いますが、一般の犯罪少年をまず取扱い、併せてその犯罪に陷るような少年を取扱うことになれば、やはり世間は裁判所というものは、そういう子供を中心に扱うのではないかというような考えをもち、從つて子供もそういうような考えをもつ、從つてそれがかえつて子供に悪い影響を與えるというような考えからいたしまして、われわれは兒童相談所というような所において——孤兒の子供もあり、いろいろの子供がありますが、すべて子供というものを、そういう温かい相談所で扱うようにした方が、子供のためにも幸福じやないかというような精神で、兒童福祉法というものはでき上つております。兒童相談所というものは、たとえば子供の問題についてはどこの縣内にもたくさんの兒童施設がありますから、その兒童施設のだれだれさんはこういう子供を扱うことが非常にうまい。從つてそういう子供はどこの施設のだれだれさんが扱うということをよく熟知しておりまして、その子供性格に應じて、環境に應じてやるようにしなければ、ほんとう兒童相談所の機能は達しないのであります。ただあそこの子供教護院に入れればよいというようなことで、ほんとう子供の指導はできないのであります。そういう意味合から兒童の將來のために、明るい政策をとることがほんとうに必要ではなすかと考えておるのであります。
  49. 花村四郎

    花村委員 もう一点最後にお聽きしたいことは、なるほど今政府委員の言われたように、温かい氣持子供に対し、そうしてなるべく裁判所といつたようなところで接することを避けたいと言われることはごもつともでありまして、われわれもそうすべきであると考えておるのであります。しかし私どもは三十年來犯罪者を扱つておるという、尊い体驗に基いて考えまする場合において、この三條の二号に盛られておりまする、こういう少年で、しかも罪を犯すおそれがある者というような少年に対しては、ただそういう温かい氣持で明るい世界へひつぱつていこうというような、情味を盛つた、情のある考え方だけでは、とかくうまくいかないものであるとわれわれは考えるのであります。でありまするから、こういう罪を犯すおそれのある少年という性格にあてはまる少年は、その軽量のいかんを問わず、犯罪予防見地からいたしまして、やはりある程度まで強制的な観護教育を加えるということでなければ、とうていそうした少年保護することはできないとわれわれは考えておるのでありまするが、政府委員は、こういう罪を犯すおそれのある少年の観護、教育等に、直接当られた経驗をもつておられまするかどうか。ただ机上の考え、机上の議論だけでは、とうてい所期の目的は達し得ないと思うのであります。それを最後につて猪俣さんにあとはお讓りいたしたいと思います。
  50. 小島徳雄

    ○小島(徳)政府委員 私自身はこういう子供についての実際の経驗はありません。われわれとしては実際に子供を扱つておる人からいろいろの話を聽き、そういう者の実情を聽いておるのであります。その点からわれわれは申し上げておるのであります。たとえて申せば、この第二号に書いてある少年というと、これはさつき委員からお話があつたように、はつきりしないのであります。自己または他人の徳性を書する行為をする性避のある少年と言えば、人々の見方によつて非常に違うのであります。そういう子供が片端から裁判所の門を初めからくぐることになれば、私どもとしては、その子供が幸福であるが、どうかということについては、非常に疑惑をもつのであります。だからわれわれとしては、まずそういうような司法の鑑別機終というものができておりますし、そこで鑑別して後に初めてそういう子供を扱うということにした方が、その子供に対して幸福な場合が往々にしてあるのではないか、かように子供の幸福ということを念願しておるのでありまして、その点は悪しからず御了承を願いたいと思います。
  51. 猪俣浩三

    猪俣委員 先ほどからの問題はいわゆる虞犯少年家庭審判所の管轄に属すべきか、あるいは少年相談所に專属せしむべきか、あるいは両者協議の上で、その処分を決定すべきか、この三つの議論にわかれていたと思うのであります。法務廳及び厚生省政府委員からはその御意見を承つたのでありますが、高等裁判所の方からもお見えになつておるようでありますから、それについての御意見を承りたいと思います。
  52. 井伊誠一

    井伊委員長 その問題は懇談会に讓りまして、一應休憩することにいたします。     午後零時三十四分休憩     午後二時三十分開議     〔以下筆記〕
  53. 井伊誠一

    井伊委員長 休憩前に引続き開会いたします。  商法の一部を改正する法律案並びに有限会社法等の一部を改正する法律案を一括議題といたします。政府委員説明を求めます。
  54. 兼子一

    ○兼子政府委員 ただ今議題となりました商法の一部を改正する法律案につきまして提案の理由を御説明申し上げます。  現行商法は、株式会社及び株式合資会社について、主として資金調達等の会社経理政策上の必要と、零細株主の便宜等に基きまして、株金分割拂の制度、すなわち株金はこれを分割して会社の設立又は資本増加の際に、第一回拂込としてその四分の一以上を拂い込むをもつて足りるものとし、残額は会社の成立した後、または資本増加の効力を生じた後、必要に應じて拂い込ませることができるものとする制度をとつておるのであります。ところでこの株金分割拂制度については、経済社会の実際に行はれている情況をみまするに、その利便よりもむしろ多くの弊害が生じておるのでありまして、未拂込株金の拂込義務の遲滯より生ずる催告、強制執行、失権手続等、分割拂より生ずる手続上の煩瑣は、まことにわずらわしく、自已資本の充実は空名に帰する場合が多く、殊に恐慌もしくは会社破産の場合における株金の徴收は、まつたく不能となつて、会社債権者に多大の損害を加える実情にありまするのみならず、増資によりまして、拂込額を異にする二種の株式を生じたとき、その拂込額のいかんにかかわらず、議決権を等しくする関係上、増資新株によつて、会社を支配するがごとき不公平を生ずる等の弊害があり、さらに未拂込株式は、投機の対象となり易く、証券取引の見地からも決して好ましいものではないのであります。しかのみならず、現在のインフレーシヨン下においては、貨幤價値の下落によりまして、現実にはほとんど株金分割拂の実数はなく、また現在主要な会社は多くその株金は全額拂込済でありまして、分割拂の制度を廃しましても、さしたる影響はないと考えられるのであります。よつて政府は株式分割拂の制度を廃止しまして、如上の弊害を一掃し、会社の資本計算を簡易ならしめ、会社の信用を高め、外資導入の一助たらしめたいと考えるのであります。以下、本改正案の重要な諸点について、簡單に御説明申し上げます。  まず第一は、ただいま申し上げました通り株式分割拂制度を廃して株金一時拂制度を採用し、これに関する第百七十條第一項及び第百七十七條第一項に必要な改正を加えました。なおその他この改正により不必要となつ規定の削除、字句の訂正等、條文の整理をいたしました。本法律案の條文の多くはこれに関するものであります。  第二は、從來株式の金額は一株五十円を下ることを得ないものとしていたのを、一株二十円を下ることができないことに改めました。これは株金分割拂の制度を廃止した結果、少額投資者の投資を困難にする虞れがありますので、一株の金額を少額にし、株式を民主化する趣旨であります。第二百二條第二項の改正規定がこれであります。  第三は、経過規定であります。まずこの法律施行の際、すでに発行せられている株金金額の拂込の完了していない株式に関するものでありますが、それらにつきましてはこの法律施行後も旧法を適用することといたしました。しかしこのような株式については、將來長く未拂込のまま残存させることは、この改正の趣旨に副いませんので、この法律施行の日から二年の内にこれらの株式を株金金額拂込済のものとかるため、会社の選択によつて未徴收の株金の拂込をなさしめるか、あるいは未拂込の部分について資本を減少する等、適当な措置を講ぜしめることといたしました。もし、二年内に会社が右の措置を講じなかつた場合にこれをどう措置するかは、今後の経済情勢の推移をよく檢討し、後に申し述べますように、会社の資本の新しい在り方について、根本的な研究を要しますので、その処置は適当な機会に、別に法律の御制定を願うことにいたしました。またこの法律施行前行われた設立または資本増加の際引受のあつた株式で、一時に全額を拂い込ませないものについても、右と同様な措置をとることといたしました外、二、三の必要な経過規定を設けてあります。なお、この改正により前に申し述べました從來の株金分割拂制度の利点が失われることとなりますので、会社の資本構成について、経済界の実情に即した新らしい制度が要求せらるるわけでありまして、この点につきましては米國などに行われておりますいわゆる授権資本制の採用等も考慮いたす必要があろうかと存じます、政府は目下鋭意成案を得べく研究準備中でございます。以上が本法律案の大要であります。  次に有限会社法等の一部を改正する法律案の提案理由を申し上げます。  今回政府におきまして株式会社及び株式合資会社の株式について、從來認められておりました株金分割拂の制度を廃止し、新に株金は全額を一度に拂込むものとする制度を採用するため、商法の一部を改正する法律を立案いたしまして、これを國会に提出し、御審議を願うこととなりましたが、これに伴い、有限会社法及び非訟事件手続法に準用又は引用せられております商法の規定中、改正を必要とするものを生じましたので、これを整理しようとするのが、この法律案目的であります。なおその結果必要と考えられます若干の経過規定も設けてございます。  何とぞ愼重御審議の上、速やかに可決せられるようお願い申し上げます。
  55. 井伊誠一

    井伊委員長 両案について御資疑はありませんか。  別に御発言もございませんようですから、質疑及び討論を省略し、ただちに採決に移りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 井伊誠一

    井伊委員長 御異議なければ、ただちに採決いたします。  まづ商法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案について原案賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  57. 井伊誠一

    井伊委員長 起立総員。よつて本案は全会一致をもつて原案通り可決せられました。  次に有限会社法等の一部を改正する法律案について採決いたします。本案について原案賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  58. 井伊誠一

    井伊委員長 起立総員。よつて本案は全会一致をもつて原案通り可決せられました。     —————————————
  59. 井伊誠一

    井伊委員長 次に本一日付託されました昭和二十三年六月以降の判事等報酬等に関する法律案、及び昭和二十三年六月以降の檢事等の俸給等に関する法律案議題といたします。まず本案について政府委員説明を願います。
  60. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 ただいま議題となりました昭和二十三年六月以降の判事等報酬等に関する法律案、及び昭和二十三年六月以降の檢事等の俸給等に関する法律案の提案理由を、便宜一括して御説明申し上げます。  政府職員の給與については、さきに、政府の提案に基き、政府職員俸給等に関する法律昭和二十三年法律第十二号)及び政府職員の新給與実施に関する法律昭和二十三年法律第四十六号)が公布施行せられ、また、裁判官及び檢察官の給與については、裁判官の報酬等に関する法律昭和二十三年法律第七十五号)及び檢察官の俸給等に関する法律昭和二十三年法律第七十六号)が制定せられておりますが、これらの法律はいずれも職員総平均の月收二千九百二十円を基準として居りますことは御承知の通りであります。しかるに最近における一般物價の高騰は、いわゆる俸給生活者の生活をいよいよ窮迫せしめておりますので、政府は一般政府職員の給與を増額して支給することを必要と認め、このほど國会に昭和二十三年六月以降の政府職員俸給等に関する法律案を提出して御審議を仰いでおりますが、この法律案職員の総平均月收三千七百九十一円を基準といたしておりますので、裁判官及び檢察官の報酬または俸給月額につきましても、一般政府職員の俸給月額と同樣に、三千七百九十一円の新基準に從つてこれを定めることといたしたく、この両法案を提出した次第であります。以下簡單に法案の内容を申し上げます。  第一條は、裁判官のうち判事、判事補及び簡易裁判所判事の報酬月額、並びに檢察官のうち檢事及び副檢事の俸給月額を、昭和二十三年六月一日にさかのぼつて、裁判官の報酬等に関する法律または檢察官の俸給等に関する法律に定める月額の十三割に相当する金額とすることを定めたものでありまして、この十三割は一般政府職員の俸給月額が二千九百二十円より三千七百九十一円への月收基準の切換により、平均十三割の増額となりますので、これにならつたものであり、また裁判官及び檢察官のうち、認証官たる最高裁判所長官、最高裁判所判事、高等裁判所長官、檢事総長、次長檢事及び檢事長の報酬または俸給については、内閣総理大臣その他の一般認証官の俸給と同樣、別途に取扱うことといたしたのであります。また第二條は判事、判事補、簡易裁判所判事、檢事及び副檢事の給與については、この法律に別段の定めのある場合を除く外、裁判官の報酬等に関する法律、または檢察官の俸給等に関する法律の例によることを定めたものであり、附則においては、この法律の施行期日及び判事及び檢事等が、昭和二十三年六月一日以後の分としてすでに支給をうけた給與に関する定めをしたものであります。  何とぞ愼重御審議の上、速やかに御可決あらんことを、お願いいたします。
  61. 井伊誠一

    井伊委員長 本案につきましては、別に問題の点もなく、御発言もございませんようですから、質疑及び討論を省略し、ただちに採決に移りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 井伊誠一

    井伊委員長 御異議なければ、採決いたします。本案について原案賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立
  63. 井伊誠一

    井伊委員長 起立総員。よつて本案は全会一致をもつて原案通り可決せられました。なおこの際お諮りいたします。本日議決した五案の報告書は、抵却情に御一任していただきたいと存じます、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 井伊誠一

    井伊委員長 御異議なきものと認めます。よつてその通りいたします。暫時休憩致します。     午後二時五十五分休憩      ————◇—————     午後三時三十五分開議
  65. 井伊誠一

    井伊委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  少年法改正する法律案議題として審査を進めます。
  66. 花村四郎

    花村委員 第十八條及び第二十三條には十四歳という制限がない。十四歳が必要ではないか。
  67. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 十四歳以下の者を必ず兒童相談所にもつてくることは問題で、少年院法ではおおむね十四歳以下のものとある。また現実も十四歳以下で審判所に入つている。かりに十四歳以下のものについて福祉措置を講ずるとしても、第二十四條二号のハによつて兒童福祉施設に送ることができる。保護処分の中に十四歳を入れる必要はない。第二十四條第一項第一号は不要と思う。また兒童相談所は決定機関であり、同じ決定機関たる家庭裁判所が、兒童相談所に送致することを保護処分の内容とすることはおかしいと思う。
  68. 石井繁丸

    ○石井委員 第三條第二項には、十八歳以下とある。四十歳以下でも、府縣知事または兒童相談所長から、家庭裁判所に送致することがあり得る。しかるに第二十四條第一項第一号によれば、家庭裁判所は、十四歳に満たない少年については、これを兒童相談所に送致することとなつているが、これはどうか。
  69. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 犯罪少年は十四歳に満たないものでも兒童相談所の門をくぐらず、裁判所が受理する。家庭裁判所は証人喚問や強制的捜査の便があり、それで調べるだけ調べて、決定は相談所でやつてもらうという考へ方がグルンドにある。
  70. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 兒童相談所目的は矯正か、教育か。
  71. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 兒童福所法第十五條規定がある。目的鑑別と相談にある。鑑別の結果、事情によつて兒童福祉司兒童委員の観察に付されるか、または教護院に入れる。單なる鑑別のみでなく、矯正保護を含んでいる。
  72. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 十四歳未満のものはよく調べた上、適所な措置をするという前提があるか。不良性がきまつてしても、なお鑑別をする必要があるか。
  73. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 少くとも満十八歳までは兒童福祉法による保護対象となる。そのうち犯罪を犯したものは裁判所権限をもつから相談所鑑別はない。虞犯少年の場合は相談所で行う。
  74. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 スリの仲間に入つていてスリをしない者も鑑別するか。
  75. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 一應鑑別をして、仲間に入つていたために矯正を必要とするときは、裁判にかける。その他適当な施設に送る。
  76. 石井繁丸

    ○石井委員 十四歳未満のものでも、質の悪いものがあり、甘くしていて逃亡するような時があると思う。適当な処理ができるか。
  77. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 十四歳未満のものについては保護処分としては強制的な方法をとるべきでない。福祉法の愛の措置によるべきである。
  78. 石井繁丸

    ○石井委員 厚生省のその意見に対して法務廳の意見はどうか。
  79. 内藤文質

    内藤(文)説明員 少年審判所はなぜ活動せねばならぬかというと、浮浪兒といえどもみだりに逮捕拘束できぬ。審判によらねば身柄を拘束することはできぬ。少年院に入つている十四歳未満のものの統計を見ますと、昭和十五年には六十七名のものが、昭和二十一年には六百五十八名に上り、さらに二十二年には千二十五名に上つており、数字からみても十四歳以下の少年を、強力な処分に付さねばならぬと思う。東京の多摩少年院には、約三十三名の十四歳以下のものがいるということである。これを考えると強制教育を施さねば、彼ら自身のためにもよくないし、また他にも害毒を及ぼすと思う。
  80. 花村四郎

    花村委員 虞犯少年福祉法で扱う保護処分に、どういう施設があり、どう運用されているか、実績を伺いたい。
  81. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 相談所で受付けると相談所長から都道府縣知事に送付し、一般の場合は教護院に收容する。教護院は各縣に一ヶ所、全國で約五十二ヶ所あり、三千名を收容する。半年から二、三年收容し、退院した後もそれぞれ十分指導する。なお教護院に送らぬものも兒童福祉司兒童委員に世話をさせる。誓約書や訓戒の措置もとりうる。
  82. 花村四郎

    花村委員 教護院の機構は如何。
  83. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 國立、都道府縣立私立とある。國立は埼玉縣にあつて、武蔵野学園で百名收容する。ここには特に悪質のものを入れている。大部分は都道府縣のもので、私立としては北海道と神奈川にある。都道府縣の教護院職員は、待遇官吏の身分をもつ。
  84. 花村四郎

    花村委員 保護処分方針は如何。
  85. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 四十六條に基いて近々でき上る予定だが、現在家族舎があり、十名から十五名分属し、職員の夫婦が泊りこみでいる。午前中は学課、午後は農業その他職業教育、体位の向上に努めている。
  86. 榊原千代

    ○榊原委員 本法第一條の目的に関連し、少年法の立つ思想的根拠を伺いたい。
  87. 内藤文質

    内藤(文)説明員 家庭裁判所の在り方、考へ方は。アメリカの標準裁判所を基準とする。日本では刑事裁判所の外廓として発達して來たところに差がある。わが國の從來の傳統のアメリカのよい点をとりいれ、理想的なものをつくろうと考えて立案したものであります。アメリカで家庭裁判所の根本的な考え方子供または子供保護する親に適当でないものがあるとき、強制力措置せねばならぬとき、家庭裁判所権限が発動するというのであります。從つて本來から言うと犯罪少年のみならず、非行のあつた少年、放任された少年に対し、また親に対して家庭裁判所が関與するのが理想と思うが、兒童福祉法があるので、犯罪少年とこれと紙一重の虞犯少年に対して手当を加える裁判所たらしめようとしている。裁判所が判断するときの基準は、犯罪行為ではなく、犯罪性が強いか弱いかにあるかのみによるのであります。虞犯少年でも犯罪少年より強くせねばならぬこともある。その鑑別は二十年の歴史をもつ少年審判所によつて適切になされ得ると思う。
  88. 山崎道子

    ○山崎道子君 國民の母の立場からお尋ねしてみたい。前國会で兒童福祉法ができたのですが、これは画期的な法律として世界中より絶讚を受けて居ります。それにもかかわらず同じ性格をもつかかる法が議論の中心になることは、遺憾であると思う。法務廳、厚生省の間に打合せがございましたか。あらゆる権威が集まつている兒童福祉委員会と了解があつたのですか。それとも法務廳が一方的になされたのですか。
  89. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 兒童福祉法のねらいの兒童福祉と、少年法のねらいとする犯罪少年虞犯少年保護とは同じであります。兒童福祉法は大部分不良でない少年対象とし、虞犯少年犯罪少年とあまり変りがない、犯罪性が外に現れているか、内にひそんでいるか、その差のみであり、かかるものについては少年法保護がされるものと考えています。
  90. 山崎道子

    ○山崎道子君 打合せがあつたかどうかそのことをお伺いしたい。
  91. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 できるだけ連絡はとりました。そのねらいは共に少年保護で目標は同じ。いわば兒童福祉法は母の愛であり、少年法の方は父の愛、二元的に行つて初めて、皆保護されるという、大きな立場に立つているのであります。ある点では妥協できぬ点もありましたが、今國会に間に合わぬので、理論的には不備な点あるも、國会の審議を煩わしたいと思つて提出した次第であります。
  92. 内藤誠夫

    内藤(誠)説明員 法務廳、厚生省間で打合わせ、結局原案で閣議決定をみたのでありまして、政府側の意見は一致したものと考えられます。
  93. 山崎道子

    ○山崎道子君 子供は神のごときもので、温かい愛の手でやりたい。若芽のごときものを嚴しい法でやるのは不賛成です。世間の見る眼、父兄の精神町影響も考え兒童福祉でやりたい。それでもどうもならぬ少年は別であります。少年審判所は二十年の経驗をもつというが、それなら旧憲法でやつていけばよい。二十年の歴史にこだわらず、新憲法の下新しく発足したい。行政整理をせねばならぬ今日、何ゆえに本建にせねばならぬのか。冷たい法のふるいをかける前に温かい愛の手でやりたい。少年審判所は後でいいと思う。
  94. 佐藤藤佐

    佐藤(藤)政府委員 山崎さんの精神については満腔の賛意を表するものであります。少年について一方兒童相談、他方家庭裁判、それぞれ保護の途を開いているが、窮局の目標は同じであります。弱い力で導くか、強い力で導くかの二つであります。すべて愛で導けるならそれに越したことはないが、たとえば上野の少年を、やわらかい手でやろうとして何度狩り込みをしたことでせう。犯罪性の強いものはとうていやわらかい手ではできません。逃げないやう、拘禁施設をするとか、規律の生活を強いるとか、職業補導をするとか、強制的にやらねば善導できぬ少年が、相当数存在するという事実は見逃がせない。この強制力を加えることは、人権に重要な関係があるので、家庭裁判所が働くのであります。また新憲法、新構想下の家庭裁判所は、愛の精神をもつてやわらかに、和やかに審判しようとするものである、普通の刑事事件を取扱うと同一の裁判所考えられては迷惑であります。
  95. 山崎道子

    ○山崎道子君 まず兒童相談所でやつてほしい。裁判所というものについて、社会通念はそこまで行つておりません。シヨツクを兒童に與えてはならぬのです。兒童福祉法は発足間なく、未だ効果はあがつていないけれども兒童福祉精神を汲んでやつていただきたい。
  96. 竹田儀一

    ○竹田國務大臣 第三條の修正が問題になつている由ですが、何とぞ原案で御賛成をお願いしたい。愛を根拠としてわれわれは改過していきたいもので民主化された裁判所ゆえ愛をもつてされると思いますが、なにしろ裁判所の門をくぐると烙印を押されたような感じがするものです。愛の手でなでまわし、どうしてもいかぬときは裁判所へ送るということで原案を御承認願いたい。子を育てるはおだてるにありというが、一面の眞理があると思われます。
  97. 花村四郎

    花村委員 少年審判所は取扱う人についても、施設についても二十五年の長きにわたる足跡は見逃すべきでない。四月一日できた不備な施設にたよるよりいいと思う。施設が十分完備したとき移したらよい。今日までの少年審判所に欠くるところがあるのだろうか。
  98. 竹田儀一

    ○竹田國務大臣 二十五年の歴史をもつ少年法に誤りありというのではありません。十二分少年への指導をされたことと思うが、厚生省教護院も決して新しいものではありません。
  99. 榊原千代

    ○榊原委員 日本の社会の現実は上野地下道の問題にしたも悪い子供がどんどん増加している。悪影響を及ぼす少年は、一刻も早く家庭裁判所で処分して、感染せんとするものを守らねばなりません。兒童福祉法も喜ぶべき法でありますが、少年法も新憲法下につくられたもの、裁判所も百八十度轉廻させて考えていかねばなりません。これからの裁判所は國民のものとなり、困つたときかけつけるところとならねばなりません。家事審判所はとても評判がよいのでございます。社会連帶から考えてこれらの子供に対し、同情し、謝罪しなければならぬと考え、その予防のために全力を捧げねばならぬと思います。
  100. 竹田儀一

    ○竹田國務大臣 裁判所の名にこだわつてむつかしく考えるは誤りと思うが、文化の低い國民の氣持では、裁判所でお取調べを受けたとなると難点がある。兒童相談所でまず一度なでてみてからとされたい。
  101. 榊原千代

    ○榊原委員 現実の問題は余裕がない。不良少年はどんどん増加している。不良化を全力をあげて防ぐため、相共に手を携えて進むべきであると思います。
  102. 竹田儀一

    ○竹田國務大臣 同感です。
  103. 花村四郎

    花村委員 子供の性行、思想、過去の経歴、將來に対する傾向、すべてこれを知るもの親にしかずと思う。その親が家庭裁判所に厄介になるのが最善と考えるとき、それをしも断わるのはでうでせうか。
  104. 竹田儀一

    ○竹田國務大臣 傾聽すべき御意見だと思います。
  105. 井伊誠一

    井伊委員長 ちよつと懇談に移ります。      ————◇—————     〔午後四時二十五分懇談会に入る〕      ————◇—————     〔懇談会後は開会に至らなかつた〕