○
齋藤(三)
政府委員 ただいま
議題に相な
つております
少年法を
改正する
法律案につきまして、
逐條的に若干御説明申し上げ、御
審議の御参考に供したいと思います。まず
活版ずりでお手もとに差上げております
法律案の内容が、第三條の第二項が落ちております以外、多数誤植、誤字がございますから、ただいま
正誤表を差上げておりますので、御訂正を願いたいと思います。それでは
逐條的に御説明申し上げます。
第一は新しく
改正される
少年の目的について
規定いたしておるのであります。非行のある
少年と申しますのは、第三條にあげております
犯罪を犯した
少年、
犯罪を犯すおそれのある
少年、両者を含んでいるのであります。それからこの
法律によりまして、
家庭裁判所というものができるのでございますが、この
家庭裁判所の
組織なり
権限につきましては、
裁判所法の
改正によ
つて、これを行いたい。そうしてこの
少年法は、その
手続を
規定するという
考えでございます。これは
裁判所法が憲法によりますすべての
裁判所の
組織なり
権限を
規定する
法律でありますので、その方面に
讓つたわけでございます。すべての
法律におきまして、
手続は
民事訴訟法なり、
刑事訴訟法でうたいまして、
裁判所の
組織権限は、
裁判所法で
規定する、こういう
建前にな
つておりまして、その
建前を踏襲している次第であります。
第二條は、
対象となります
少年及び成人の言葉の定義でございます。
現行法では、
少年を十八歳
未満ということにいたしておりますが、
終戰後の
犯罪の
状況を見ますると、十八歳、十九歳、二十歳、こういうところが非常に
犯罪が多いのであります。この
犯罪に対しまして、單なる
刑罰のみをも
つては、とうてい不十分でありますので、この
少年法によりまして、
刑罰と相並んで、
保護の力によ
つて、若い人の
犯罪をなくするようにしたい。こういう
考えで、
改正案におきましては、
少年の年齡を二十歳まで上げた次第であります。それから
保護者という言葉を使
つておりますが、この
保護者は、
法律上
監護教育の義務ある者、すなわち民法に
規定しておりまするような
親権者、後見人、あるいは
兒童福祉法により
兒童福祉施設の長が親権を行う、こういう場合には、
法律上
監護教育の義務ある者に該当すると
考えておる次第であります。それから「
少年を現に監護する者」というのは、雇主とか、こういう実際問題から現に監護している者、こういうものを指しておるのであります。
第二章は、
少年の
保護事件につきまして
手続を
規定しておるのであります。
第三條は
審判に付すべき
対象を
規定いたしております。第一号が罪を犯した
少年及び十四歳に満たないで
刑罰法令に触れる行為をした
少年、第二号が
虞犯少年を申しておりまして、
現行法では單純に、
犯罪を犯すおそれのある
少年、こういうふうに書いてありますのを、具体的にイ、ロ、ハ、ニというふうにあげまして、將來罪を犯すおそれのある
少年、こういうふうにいたしました。結局
現行法と同じように、
犯罪を犯した
少年と
虞犯少年の両者を
対象にいたしたのであります。そして第二項に、十八歳
未満の
虞犯少年は、都道府
縣知事または
兒童相談所長の
送致を受けたときに限り、これを
審判することができる、こういうふうに書いておるのであります。十八歳
未満というふうにいたしましたのは、
兒童福祉法が十八歳
未満の者を
対象にいたしておりますので、十八歳以上の
犯罪を犯すおそれのある
少年は、
兒童福祉法と
関係がございませんので、これは無條件に
家庭裁判所が
審判をなし得るような
建前をとつたのであります。この
虞犯少年の扱いについては、いろいろ問題が
考えられると存ずるのであります。第一に、
家庭裁判所というものは、必來の
裁判所とは、その処理の心構えでも、また形式におきましても、別個のものであるというふうに
考えておるのであります。それは後ほどの條文にも、そういう点が幾多出てまいりますが、要するに
少年のために
保護をする
裁判所でありまして、万事明るく、不愉快な冷たい暗い感じをもたないような
裁判所にいたしたい。從いまして、
審判の方法も非公開であり、普通の
裁判所にあるような法廷において
審理をするということは、いたさないのであります。そうして
少年につきましては、絶対に
刑罰権は行使しない
裁判所であります。
少年の
不良化の原因をつくつたような
おとなにつきましては、ある程度の
刑罰権を行使するのでありますが、
少年については、絶対に
刑罰は科さない、こういう
裁判所のでございます。要するに、
少年の
不良化を防止するのには、
犯罪を犯すに至つたその
段階まで到達した
少年を調べまして、そうしてそれの
保護処分を加えるだけでは不十分でありまして、その一歩前のところで、なるべく早く治療の手を加えたい。こういうのが
虞犯敗年を入れておる理由であります。そうして、
虞犯少年と申しましても、後ほどあとの方に出てまいります
保護処分の内容から見まして、一般の單純な不良というようなものを
考えておるのではございませんので、まつたく
犯罪に紙一重で、少護法との
関係上、
犯罪とは言いきれない、こういう場合に、
家庭裁判所が
審判をして、そうして十分科学的な
調査もし、形式を離れまして、
ほんとうにその
対象少年に適切な
保護処分を加える。必ずしもこれを全部收容して矯正するというのでありませんので、場合によ
つてはむしろその方が多いと思いますが、適当な親兄弟にかわるような
保護委員というものが
相談相手にな
つて、そうして
本人の善導をするというような
処分を
考えておる次第であります。
現行法では、十四歳
未満の者は、都道府
縣知事の
送致した場合に
限つて、現在ありまする
少年審判所が
審判をするということにな
つておりますが、今度の案では、十八歳
未満の者を全部
兒童相談所長の
送致を受けたときに
限つて審判に付する、こうな
つております。これにつきましては、実際の
審判をこれまでや
つて來られた
少年審判所長の方々も、たいへんこれでは不自由であるというようなことを申しておられます。また
弁護士会方面でも、
名古屋弁護士会では、わざわざ三十二條は削除してほしいということで、決議をなさ
つておられますので、十分この点は御
審議をいただきたいと思
つております。
第四條は
家庭裁判所の
判事補の職権について
規定しております。「第二十條の
決定以外の
裁判は、
判事補が一人でこれをすることができる。」こういうふうに
規定しておるのでありまして、第二十條の
決定というのは、
家庭裁判所の
裁判官が
審理をした結果、
犯罪の
罪質とかそういう点で、どうしてもやはり
刑罰を求めた方がよろしいという、きわめてまれなる場合には、
檢察廳にその
事件を移送するわけであります。それが二十條でありまして、その移送の
決定以外の
裁判は、
判事補が一人でこれをすることができるということで、
裁判所法の例外の
規定であります。
裁判所法の二十
七條では、
判事補は
法律上特別の定めがある場合を除いて、一人で
裁判をすることができないという
規定がありますので、それに対する
例外規定を、ここに
規定いたしたわけであります。
第五條は
保護事件の管轄でありまして、格別の御説明を申し上げることもないかと存じます。第六條、第
七條は、
事件がいかにして
家庭裁判所にかか
つてくるかという人口の問題であります。第六條は、
一般人の通告の
制度であります。「
家庭裁判所の
審判に付すべき
少年を発見した者は、これを
家庭裁判所に通告しなければならない。」これは
一般人の場合であります。第
七條は
少年保護司の
報告であります。これは
裁判所におりまする
調査をしたりいたします役人でありますが、その役人が
対象の
少年を発見した場合には、
調査の上
裁判官に
報告しろ、こういう
規定であります。
現行法では、
少年審判所自体が、
事件を発見して、そうして
自分がそれをすぐ
裁判するという
建前にな
つておりましたが、今度は從來の
行政機関でない
裁判所にいたしました
関係上、
裁判所が
自分で問題にして
自分で
審理するということは、いささか
裁判所としての
考え方として考慮すべき点があるというふうに
考えまして、
裁判官以外の者が一遍それを下調べをして、そうして
裁判官に申し出る。そうして
裁判官がそれを冷靜に判断して、
事件とすべきかすべからざるかということを調べた上、
裁判所の
事件になる、こういう
考え方でございます。
從つて、第一項において、
少年保護司が
報告する前に、
少年及び
保護者について、
十分諸般の事情を
調査することができる。こういうふうに
規定いたしたのであります。第八條は、
家庭裁判所が、ただいま申しましたように、
一般人の通告なり、
少年保護司の
報告によ
つて審判に付すべき
事件であるというふうに
考えた
事件について、
調査をする
段階にはいるわけであります。それから、関連いたしまして、
一般人の通告、
少年保護司の
報告以外に、さらに
檢事局及び
兒童相談所からくるものがあるわけであります。これは
刑事事件につきましては、
刑事事件の特別の処理になりますので、第四章以下に
規定してございます。それから第九條は
調査の方式でありまして、できるだけ科学を應用いたしまして、
本人の情状なり、性格なりを十分
調査する、こういうことを
規定いたしたのであります。現在におきましても、
少年審判所の数箇所においては、相当な
権威者をお願いしまして、かような
監別をいたしておるのであります。そうして今後はこの
監別はどこでやるかという問題でございますが、これは
少年院法に今度
規定いたしたのでありますが、
事件が
家庭裁判所にまいります。そうしてこれが窃盗であるとか、強盗であるとかいう
事件も今度はまいるわけでありまして、どうしてもやむを得ず身体を拘置して、
一定期間審判、
決定するまでの間、身柄を留めておく必要がありますので、これについては、
少年観護所、いわば
おとなにつきましては
拘束所というものにあたるのでありますが、そういうものを設ける
考えであります。アメリカにあります
デイテンシヨン・ホーム、こういうものを設けまして、そこに最高四週間だけ拘束することができる、そうしてその
少年観護所に
少年監別所というものを設けまして、その
監別所で、かような科学的な
監別をいたすことにいたしておるのでございます。
少年及び
保護者は、
家庭裁判所の許可を受けて、
附添人を選任することができる。但し、
弁護士は許可を要しない。
保護者自体も
附添人になることができる。こういう
規定であります。この
附添人は、後ほど出てまいりますが、
家庭裁判所の
決定について、今度の
改正では新しく抗告の
制度を設けました。その
抗告権を、この
附添人に認めておるのであります。
それから第十一條は、
家庭裁判所は、
事件の
調査上必要と認めるときは、
少年なりあるいはその
保護者を
裁判所に呼出すことが必要でありますので、さような場合に
呼出状を発することができる。
刑事訴訟法におきましては、
召喚状というものが大体これに対應するものであります。第二項は正当の理由がなく呼出しに應じない場合には
同行状を出す。これは令状という
考えでありまして、これによりまして場合によ
つては、
強制力を用いて
本人を
裁判所に連れてくることができる、こういう
考えであります。
第十二條は緊急の場合の
同行状であります。
第十三條は、その
同行状の執行の問題でありまして、この執行は
少年保護司が執行するのが
建前でありますが、
警察官、
警察吏員、
観察官——これは今度の議会に提案を予定して案までできておるのでありますが、事情によ
つて、まだ提案ができておりません。
保護委員会の
制度に関する
法律において
観察官というものがありますので、その
観察官及び
保護委員——現在の
制度では
少年保護司というのが全國に四千人くらいございますが、それがややこれに該当するものであります。
第十四條は
家庭裁判所は
審理の
調査の際の証人を喚んだり、鑑定を頼んだり、通訳、飜訳をする必要がございますので、その必要を認めるものでございます。第二項は現在御
審議中の
刑事訴訟法の中で
保護事件の
性質に反しない限りは、これを準用することができるという
考えであります。括弧の中は、現在まだ番号がきま
つておりませんので、それがはつきりした場合に入れたいと存じております。
第十五條は、檢証、押收、捜索、こういう
保護に関する
刑事訴訟法中必要な部分を準用できる、こういう
規定であります。後ほど申し上げますが、今度の
制度では、
檢事局、
警察から、
事件は全部
家庭裁判所にまいることにいたしております。
現行法では、
少年の
犯罪事件につきましては、
警察から
檢事局にまいりまして、
檢事局が
罪質その他から起訴すべきものは起訴し、起訴しない
処分をしたものを
少年審判所に
送致するような
制度にな
つておりましたが、今回は
少年のための特別の
裁判所をつくるのでありますから、そこで全部その選別もやるという
建前にいたし、相当悪質の
犯罪を犯したものもくることになりますので、
刑事訴訟法中の必要な部分を準用することにいたしたのであります。第十六條は
関係官應なり
民間團体の協力を求める
規定でございます。
第十
七條は、
家庭裁判所に
警察、
檢事局、
兒童相談所から
事件が送局され、あるいは第六條、第
七條にありますような
一般人の通告なり、
保護司の
認知報告による
事件がまいつた際に、場合によ
つては
事件の
性質によりまして、
観護所に入れたり、あるいは
観護所に入れない場合には、人的なひもをつける
少年保護司の
観護によりまして、この
審判を行う
期間さような
措置をとる、こういう
規定であります。そうして第二項以下は複雜な書き方をいたしておりますが、
警察、
檢事局から同行されたというような
少年につきまして、
少年観護所、
デイテンシヨン・ホームに入れなければならぬという場合には、二十四時間以内に
少年観護所に
送致するという
手続をするのであります。それから
檢察官または
司法警察官から、拘留または逮捕された
少年の
送致を受けたときも同樣である。すなわち
檢察官が
搜査段階において、
刑事訴訟法によ
つて勾留状を
裁判所から出してもら
つて、
勾留中に來た場合は、やはり二十四時間以内に、その
勾留処分は無効になりまして、二十四時間以内に
少年観護所に
送致するという
決定をいたして
デイテンシヨン・ホームに入れておく、こういう
規定であります。第三項は、その
デイテンシヨン・ホームの
收容期間で、これは二週間を超えることはできない。特に継続の必要のある場合には、一回だけ
決定をも
つてこれを更新することができる。但書は先ほど申し上げましたように、一遍
家庭裁判所の
事件になりまして、そうして事案の
性質からどうしても普通の
刑罰を科す方が相当であろう、こういう
考えから
家庭裁判所から
檢察官に移送いたします。ところが
檢察官が調べて見たけれども、その後の
状況なり、あるいは
証拠関係から嫌疑が十分でない。あるいは起訴が不相應である。しかしこの
処置をやつた方がよろしいというように
状況が変つた場合に、
檢察官から再び
家庭裁判所に逆もどりする場合があるのであります。その場合に初めの
家庭裁判所で
デイテンシヨン・ホームに入れたり、あるいは檢事が
勾留状を求めて
勾留しておつたというような場合には、
デイテンシヨン・ホームには一回しか入れられない、更新はできない、こういう
規定であります。第四項は、第四十三條というのは、
檢察官が
少年の
被疑事件を搜査する際に、
刑事訴訟法で申しますと、
勾留を求めるのでありますが、
少年については、なるべく
勾留はやらぬ方がよろしい、そうしてやむを得なければ、
少年保護司の
観護に附する
措置が第一項であります。檢事が
搜査段階において、
家庭裁判所に
デイテンシヨン・ホームに入れてくれというような
手続をいたしまして、そうして
家庭裁判所が
デイテンシヨン・ホームに入れるという
決定をいたし、そうして入れて
事件を調べてその
事件が
家庭裁判所に
送致されたときには、その
デイテンシヨン・ホームに入れるという
措置は、第二項の方で出した
措置と見る、こういう
規定であります。そうしてこの二週間の
期間は、
家庭裁判所に
檢察官から
事件が來た場合に、それから二週間というふうに起算するという
規定でございます。それから第六項は
観護の
措置は
決定をも
つて取消したり変更することができる。但し第一項第二号の
措置については、全部を通じて四週間を超えることはできない、こういう
規定であります。
第十八條は
家定裁判所が
少年の
調査をいたした結果、二十四條に
規定しておりますような
保護処分に付するよりは、事案が軽微であるとか、諸般の
状況が、
少年のために有利である。やわらかい
処置で十分であるというふうに認めたときは、
兒童福祉法の
規定でやることがよろしいのであるから、その
事件を
兒童相談所長、あるいは都道府
縣知事に
送致しなければならない。
事件が來たら全部
家庭裁判所がやるというのでなくて、
調査した結果やわらかい
処分の方がよろしいという場合は、
兒童相談所の方にお願いする。こういう
規定であります。但し
兒童相談所あるいては都道府
縣知事から
送致を受けた
事件については、さような逆もどりはできない。こういうふうにいたしておるのであります。
それから十九條は、
家庭裁判所が
調査した結果、
審判に付することができない。たとえば年齢が二十歳以上である、あるいは
審判に付するのが相当でない。要件は具えているが、
保護処分をするまでもない。こういう場合は、
審判不開始の
決定をしなければならない。この
規定であります。
第二十條は、
警察、
檢事局から全部
事件が参るのでありますが、
事件が死刑、懲役または禁錮にあたる
事件であ
つて、
調査の結果、その
罪質なり
犯罪の情状に照らして、刑事
処分が相当であるという場合には、これを管轄地方
裁判所に対應する
檢察廳の
檢察官に
送致しなければならない。但しその送
つてやろうと思うときに、十六歳に達しない場合には、
檢察官には
送致はできない。從いまして、十六歳
未満の
少年については、全部
保護処分をいたし、
刑罰は科さないという結果に相なるわけであります。
それから二十一條は、
家庭裁判所が
調査の結果、
審判を開始するのが相当であると認めたときは、
審判開始という
決定をいたすのであります。
そうして二十二條で、その
審判の方式は「懇切を旨として、なごやかに、これを行わなければならい。」「
審判は、これを公開しない。」
現行法による
少年審判所におきましても、全部非公開であり、そうして形式張つた法廷などというものは、全然もちませんで、まるいテーブルに
関係者を全部來てもらいまして、和やかにいろいろの事情を聽いて、そうして最も
本人に適切な
保護処分をする、從いましてこの
家庭裁判所は、從來外部からともすると見られがちであつた冷やかな暗いという感じを全然もたない、万事が明るい、そして子供に決して不愉快な印象を與えない、新しい日本の
裁判制度に、一つの画期的なものになるのではないかと思いますが、
裁判所というと、とかく暗い感じを受けたのですが、今度の
家庭裁判所は、家事
審判所と
少年保護裁判所を統合しまして、そうして形式張らない、具体的に常に妥当な
決定をし、氣分も非常になごやかな明るい
裁判所をつく
つていきたい。こういう
考えで、その一つの項目として二十二條が
規定とされているわけであります。
それから二十三條は、一旦
家庭裁判所は、
保護処分が必要であろうかというような
考えで、
審判開始の
決定をいたし、そうしていろいろ調べて
審判をした結果、やはりこれは
兒童福祉法の方でや
つてもらつた方がよろしいのだという場合には、その方にお願いする。それから一旦そう思
つて審判をしたが、結局
保護処分を付する必要がない、こういう場合には、
保護処分を付しないという
決定をする。たとえようは惡いのでありますが、無罪というふうに、若干にそれに当る言葉でありますが、さように
決定するわけであります。
それから二十四條は、
保護処分の内容であります。さような
審判の結果、いろいろなことを考慮して、やはり
保護処分をしなければならないという場合は、幾種類かの
保護処分をなすべきであります。第一号としまして、「十四歳に満たない
少年については、これを
兒童相談所に
送致すること。」この
規定につきましては、
十分諸般のことを御考慮の上、御
審議を願いたいのでありますが、十四歳に満たない者は、せつかく
兒童相談所から参りましても、どんなに惡い傾向がありましても、強い
保護の手は加えられないということであります。現在全國の矯正院に、都道府
縣知事が、十分やわらかい愛の
保護をや
つてみたが、どうしても効果がない、これはやはり強い父親の愛の
保護を加える方がよろしいという
考えで、
少年審判所に
送致され、そうして矯正院にはい
つておるという子供が、年々に殖えてまい
つております。統計によりますると、昭和十五年当時は十四歳
未満で矯正院にはい
つている子供は六十七人でありましたが、昭和十八年には百五十四人、昭和二十一年には六百五十八人、昭和二十二年には千二十五人、こういうことにな
つております。新聞などでも傳えられておりますように、すりの親分が未成年者を使うことが非常に得策であるいうような
考えから、俗称チヤリンコと称する若い子供のすりを使
つておる。そうしてその子供たちは、普通の
兒童相談所の收容所に入れても、すぐに出てい
つてしまう。どうしても矯正院に入れなければならぬという種類の子供が、現在でも千人以上ある。この点は
少年院法が、当初これと符節を合わせまして、十四歳以上というふうにな
つておつたのでありますが、最後に
関係方面といろいろデイスカツスをした結果、「おおむね」という文字を入れていただくことができましたので、
関係方面の意向も、現在では必ずしもかようなことにはな
つていないのではないかと推測いたします。それから十四歳以上の
少年につきましては、(イ)(ロ)(ハ)(ニ)という四種類の
処置をとることにいたしております。(イ)は地方
少年保護委員会、この
保護委員会は
犯罪者予防更生法として提案いたすべく諸般の準備を進めたのでありますが、未だ最終的にその
手続ができないのでありますが、その
犯罪者予防更生法において、全國を八箇所にわかちまして、各地方に地方
少年保護委員会というものをつくりまして、これには
関係官廳全部、及び民間の御熱心な方にもはい
つていただきまして、そうしてこの
保護委員会が強力な
保護をいたすことにな
つております。この
委員会のもとに、
保護委員という
少年保護に熱心な方をお願いしまして、その
保護委員が実際の
少年を何人かずつ分担していただきまして、
少年の
相談相手になり、遊び相手になり、そうして
少年を善導しよう、こういう
考えでございます。その
委員会にこの
観護、観察をお願いするという
規定であります。それから(ロ)、(ハ)は
兒童福祉法関係の福祉施設にお願いをする。それから(ニ)が
少年院に
送致する。こういう四つの種類を
考えて、そうして第二項におきまして、観察に付した場合及び
少年院に
送致した場合には、地方
少年保護委員会をして、家庭に行
つて、
本人に面会に行
つてやるとか、いろいろ指導をして家底の環境の調整をはかるということをいたすのであります。
それから第二十五條は
少年保護司の観察であります。
少年保護司は
保護委員会とは
関係ありませんで、この
裁判所の職員であります。
事件が
家庭裁判所にまいりました際に、
家庭裁判所は、その
処分を
決定するまで、必要がある場合には、
少年保護司の観察に付する。
少年保護司は、
本人の所に行つたり、呼んだりして、いろいろ
本人の
相談相手に
なつたりして、
本人の性格なりを十分観察して善導する。それからさような観察のことも
考えられますし、また最終の
決定をなす前に、試みに
本人に一定の善行を保証するような遵守事項をきめて、その事項を約束させる。あるいは條件をつけて親もとに引渡す。あるいは適当な施設や團体や個人に善導、輔導を委託する。そうしてしばらくその成行きを見定めまして、
保護処分の必要ありやなしや、いかなる
保護処分をなすべきかという思料を加えるのであります。
それから第二十六條は、家庭裁所がいろいろな
決定をいたします。十
七條の
兒童観察所に入れるとか、
少年保護司の観察に付する。
兒童観護所に入れるというのは、第一項第二号であります。第十八條は
兒童相談所の方に送る。それから二十條は
檢察官に逆もどりさせる。それから二十四條が最後の
家庭裁判所の
決定でありますが、さような諸種の
決定をしたときは、
少年保護司、
警察吏員、
観察官、
保護委員——観察官、
保護委員というのは、
犯罪者予防更生法で
考えております
制度であります。それから
兒童福祉司または
兒童委員をして、その
決定を執行させることができる。それからさような執行をするために必要なる場合には、
少年に対して
呼出状を出すことができる。それに應じない者には、
同行状を出すことができる。こういう
規定であります。
第二十
七條は
保護処分の継続中に、
本人に対して有罪の判決が確定したという場合には、
家庭裁判所が、事情によ
つては、前にやつた
保護処分を取消すことができる。それから
保護処分継続中に、たとえば矯正院に入れておいたところが逃亡した、そしてどこかでまた間違いを起して、別な
家庭裁判所で、別個に
保護処分の
決定がなされたという場合には、両者が競合いたしますので、その調整をしまして、新たに後に
保護処分をした
家庭裁判所が、前の
保護処分をした
裁判所の
意見を聽いて、どちらかの
保護処分の必要ないものを取消すという、こういう
規定であります。それから二十八條は
報告意見の提出であります。二十九條は委託費用。二十五條第二項第三号と申しますのは、
裁判所が最終の
決定をする前に、試みに家に帰したり、
本人に約束させたり、あるいは適当な團体なり、施設なりに補導を委託したという場合に、それによ
つて生じた費用を支給することができる。こういう
規定であります。三十條は証人、鑑定人等に支給する旅費等については、刑訴の費用に関する
規定を準用する。第二号の参考人と申しますのは、
審判になる前に、たとえば
保護司がみずから
事件を探知して、
調査をするという場合には、証人ということにはなりませんで、ちようど檢事が調べる、それに該当するわけでございます。参考人に宣誓をさせることができる。この参考人に費用を拂うことができるという
規定であります。それから第三十一條は費用徴收であります。
第三節は今回の
改正で新たに設けた
制度であります。從來の
少年法による
少年審判所におきましては、
審判所のなした
決定に対して、それを爭う途がなかつたのであります。新しい憲法の精神に即應いたしまして、抗告の
制度を認めました。そうして
少年、その法廷代理人、
附添人から二週間以内に抗告する。この場合には、
家庭裁判所は、
裁判所のランクからいいますと、地方
裁判所でありますから、管轄の高等
裁判所に抗告するということであります。「但し、
附添人は、選任者である
保護者の明示した意思に反して、抗告することはできない。」というふうにいたしました。
本人の意思に反してできるかという問題でありますが、
本人は
少年でありまして、十分
思慮分別のないことが
考えられますので、
少年の意思に反してできるということに
なつたわけであります。
第三十三條は抗告審の
裁判に関する
規定でありまして、第二項におきまして、抗告が理由あるときには、高等
裁判所は、下級審である
家庭裁判所の前
決定を取消し、
事件を元の
裁判に差しもどし、あるいは他の
裁判所に移送することを認めておるのでありますが、高等裁利所自体が
保護処分をやるということは、認めなかつたのであります。それから第三十四條は執行の停止でありまして、抗告は執行を停止する効力を認めないことにいたし、例外として場合によ
つて停止することができるというようにいたしたのであります。第三十五條は再抗告の
制度であります。これは最高
裁判所に対して、申し立てることにな
つておるわけであります。それから第三十六條は、この
法律で定めたもののほか、
審判の諸般のこまかい
手続は、高等
裁判所のルールにこれを委任したのであります。
それから第三章はこれも新たに今度の
改正で加えたものでありますが、
おとなが
少年の
不良化の原因をなしたという場合には、
家庭裁判所が
少年の
事件を扱
つておりまして、それを知る機会が非常に多い。また
少年不良化の原因をつくつたという
事件は、
少年のための
裁判所がやるのが適当であろうという
考えから、
おとなについても
家庭裁判所が、
処分ができるということにいたしたのであります。この
手続は普通の
刑事事件でありますから、
刑事訴訟法をそのまま適用されるという
考えであります。そうしてその
事件はアメリカの
法律などでは、非常に廣く
少年の
不良化の原因を與えたものは、全部
処分できるというように、非常に漠然とした廣い
規定でありますが、この法案におきましては、具体的に揚げたわけでありまして、未成年者喫煙禁止法、未成年者飲酒禁止法、労働基準法、
兒童福祉法、こういう子供を惡くするような
おとなの行為に限つたのであります。労働基準法の最低年齢であるとか、——五十六條でありますが、その他危險な業務につくことはできぬ。深夜業はいかぬというような、子供の
保護のための幾多の
規定がありますので、その違反を処罰することにいたしたのであります。
兒童福祉法三十四條と申しますのは、子供に乞食をさせたり、不具の子供を見せ物にするとか、あるいは若い女を酒席に侍らせるということを禁止しております。さような違反のあつた場合には、
家庭裁判所が
裁判をするということにいたしたのであります。それから二項は他の
犯罪と牽連
関係あるいは一行為数罪のあつた場合には、前一項に掲げた各條文を適用する。結局労働基準法で危險な業務につかせてはいかぬというのにかかわらず、つかせた結果、傷害
事件が起つた、けがをしたという場合に、過失傷害という問題が起りますので、さような場合の
規定であります。
それから三十八條は、
家庭裁判所が、
少年の
保護事件を
調査審判中にかような事犯を発見した場合には、やはり刑事訴訟の
手続によりまして、
檢察官の公訴提起を必要といたしますので、さような場合には
檢察官または
司法警察官に通知した、こういう
規定であります。
それから三十九條は、
家庭裁判所は以上申し上げましたように、大人の
事件を
裁判するのでありますが、
家庭裁判所は、一人の判事が
審判をいたします
関係上、禁錮以上の刑を科するのを相当と認めたという場合には、通常の地方
裁判所に移送する。こういう
規定であります。
それから第四章以下は從來からありました
少年法の通則で、
少年の
刑事事件の処理上、
刑事訴訟法の特例を認めております。それについての
規定でありまして、原則として從來の
法律を変更いたしておりませんが、部分的に若干変更はいたしておりますので、その変更の点だけを申し上げたいと存じます。
第四十
七條は、相当大きな点でありますが、
檢察官は、
現行法では
檢察官の認定においと起訴すべきは起訴し、不起訴にしたものを
少年審判所に
送致しておつたのでありますが。今回は全部
少年の
被疑事件について搜査を遂げた結果、
犯罪の嫌疑があるという場合には、全部
家庭裁判所に移送しなければならない。こういうことにいたしたのであります。
第四十五條第五号は、一度
家庭裁判所に送りまして、
家庭裁判所が
刑罰を科する普通の
手続の方がよろしいというふうに認めまして、
檢察官に送つた場合でありますが、これは四十五條の説明のときに申し上げたいと思います。
それから
犯罪の嫌疑がないという場合でも、
家庭裁判所の
対象中には、
犯罪の確証はないが虞犯の場合を取扱
つて管轄いたしておりますので、
犯罪の嫌疑はない、しかし
犯罪のおそれは多分にあるという場合には、これも同樣に
家庭裁判所に送らなければならない。こういう
規定であります。
それから四十五條は、
家庭裁判所が
事件の
罪質なり、
本人の情状によりまして法
処分を不適当とし、
檢察官に
送致した場合の
規定であります。その他は大体
現行法と同樣であります。ただ第三節のところをちよつとごらんいただきたいと思いますが、第三節の中に若干の変更がございます。第五十一條で「罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をも
つて処断すべきときは無期刑を科し、無期刑をも
つて処断すべきときは、十年以上十五年以下において、懲役又は禁錮を科する。」とあります。
現行法では十六歳ということに相な
つておりますが、それを十八歳まで上げたのであります。それから尊属殺の場合には、緩和しないことにしておつたのでありますが、これも今度は尊属殺の場合にもやはり死刑は科さないというふうにいたしたのであります。
大体以上が今度の
改正の要点でありまして、たいへん不十分でありましたが、一應これで説明を終りたいと思います。