○
鍛冶委員 簡單に
修正案の
理由を説明いたします。
大体においてただいま林君から述べられましたような点はわれわれもともに同感でありまして、できるだけ
修正をしたいと思
つておつたのであります。四囲の
事情これを許しませんので、最小限度における
修正を出したわけでありまして、なお
修正したい点は多々ありますが、現在の段階においてはこれをも
つて満足しなければならぬかと
考えておるのであります。
第一は、三十三條から三十
五條の
修正でありますが、これを要約いたしますと、弁護人の数を
制限したり、または主任弁護人をきめるというようなことを
法律によ
つて定めることはおもしろくない、こういう点からすべてこれを削除したいと思つたのでありますが、そうわけにもいかぬ
事情がありましたので、これは
裁判所の規則においてしかるべくやられてよいものだ、こういうので、
趣旨は、
訴訟法からこれを除くという
意味で、これを出したのであります。從いまして説明するまでもなくおわかりのことと思います。なお三十
五條の「
被告人の弁護人については、特別の
事情のあるときに限る。」ということは公訴が提起せられて、公判に移つた場合は、原則として
制限しない。特に
制限しなければ困るという特別の
事情のあるときに限るということを明確にしたいという
趣旨であります。
第四十八條の第三項の
修正は、公判調書はでき得るだけ早くつく
つて審理に間に合うようにつくらなければならぬという建前から
修正をしたのであります。でき得るものならば遅くとも弁論の開始前に整備して、それに基いて弁論をなす、または
裁判をするということを理想といたすのでありますが、いろいろ実際を聽いてみますと、なかなかそうもいかぬようでありますから、少くとも
判決をするまでに調書ができておらなければならぬ。その調書に現われたる
証拠をもととして
判決をしなければならぬ、こういう
意味でこの
改正をしたわけであります。
五十
一條の第二項の但書の
修正は、これはもう当然のことでありまして、
判決宣告の期日までに調書ができますとすれば、その
判決の日の調書は当然残るわけでありますから、それをここに現わしただけであります。
次に第八十九條第四号の
修正でありますが、これは保釈を拒絶する
理由の
一つとして「罪証を隠滅する虞があるとき。」と
なつておつたのであります。この虞れありというだけでありますと、あらゆる場合が含まれますので、これを
理由に保釈を拒絶せられることが多いと
考えましたので、でき得るだけこれを嚴格に定むべきものだと
考えまして、「隠滅すると疑うに足りる相当な
理由があるとき」と改めて、相当な
理由を明示し得るとき、または明示するにあらざれば拒否できないということに改めたのであります。
次に三百四十三條後段の
修正でありまするが、第三百四十三條によりますると、禁錮以上の刑に処する
判決があつた場合は、当然に保釈の
効力が消滅いたしまして、さらに
原案によりますると、第九十八條の
規定を準用してただちに收監することに
なつておるのであります。これは上訴をしたる場合等を
考えますると、はなはだおもしろくない
規定であると
考えましたので、願わくはこれを削除したいということでいろいろ盡力してみたのでありまするが、四囲の
事情これを許さないようでありますから、せめて
判決があ
つてもさらに保釈の申請ができ、保釈があり、または
勾留執行の停止の決定があつたときは、九十八條の
規定を準用しないのだということを明確にしたいと
考えまして、この
通り「あらたに保釈又は
勾留の執行停止の決定がないときに限り、第九十八條の
規定を準用する。」かように改めたわけであります。
次は三百九十三條第一項の但書でありまするが、これはできる限り
控訴審においても事実の取調べをしてもらいたい。また新たなる
証拠があればこれを取調べをしてもらうことにしなければならぬという
趣旨から、いろいろ
考えまして、これもいろいろ
努力はいたしましたが、今日の情勢上これ以上のことができませんので、せめて新しい
証拠で第一審に出さなかつたものであれば、これだけを取調べする、取調べするだけではありません。これは
職権によ
つて当然取調べできるのでありますが、当事者の申立によ
つて取調べをしなければならぬということを明示するためにやつたのであります。但しその代りここに書いてありまするように、
請求することができなかつた事由を疎明し、またその
証拠が刑の量定の不当または
判決に影響を及すべき事実の誤認を証明するために欠くことのできない場合に限るという
制限があるのでありますが、とにもかくにもこのようにして新しい
証拠があれば申立によ
つてこれを取調べてもらうという
規定にしたい。かように
考えましてこの
修正を出したわけであります。
以上簡單でありまするが、御説明いたします。