運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1948-06-08 第2回国会 衆議院 司法委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月八日(火曜日)     午前十一時零分開議  出席委員    委員長 井伊 誠一君    理事 鍛冶 良作君       花村 四郎君    松木  宏君       明禮輝三郎君    山口 好一君       池谷 信一君    石井 繁丸君       山中日露史君    打出 信行君       中村 俊夫君    中村 又一君       吉田  安君    大島 多藏君  出席政府委員         檢 務 長 官 木内 曽益君         法務廳事務官  宮下 明義君  委員外出席者         專門調査員   村  教三君         專門調査員   小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  刑事訴訟法改正する法律案内閣提出)(第  六九号)     —————————————     〔筆 記〕
  2. 井伊誠一

    井伊委員長 会議を開きます。刑事訴訟法改正する法律案を議題として質疑に入ります。
  3. 山口好一

    山口(好)委員 この改正案公判その他の過程における運用上の構想、殊に起訴状提出公判開廷までの手続被告人黙秘権運用、及び交互尋問方法について、政府構想を伺いたい。
  4. 木内曽益

    木内政府委員 本案應急措置法の線に沿い整備したものであるから、現在の判事数や設備でも、應急措置法の実績に徴して運用上さしたる支障はなく、裁判関係においては起訴状だけをまづ裁判所に提出するのであるから、從來のように公判前の記録を続むことに裁判所が力を入れることがなく、從つて公判審理回数が増加しても、開廷までの準備その他を考えれば、全体として労力、時間が長くかかることは考えられない。ただ問題は、一定の事件について弁護人をつけなければ公判を開けない場合が多くなるが、この点についても運用面で解決がつくから支障はないと思う。黙秘権の限度については、被告人陳述をするか否かは本人の任意である。又交互尋問制度については、大陸法系のよいところも取入れて、変形の制度をとつているので、一應手数がかかるとも思われるが、訴訟の進行に支障があるとは思わないと答弁した後、さらに言い渡しまでの手続きについて説明をした。
  5. 山口好一

    山口(好)委員 裁判において最も重要であることは、裁判官が一切の先入観を捨て、嚴正公平に事の眞相を確かめ、裁判をすることである。裁判長が一人で取調べ檢察官弁護人がただ補充的に尋問していたのは現行法の欠点である。被告人人権擁護するためには、当事者訴訟主義を原則とする建前に徹し、裁判長は公平な立場に立たなければならないと考える。此の点の仕組みはどうなつているか。
  6. 宮下明義

    宮下政府委員 本案ではこの点を考慮し、裁判官をまつたく白紙の状態に置くように改めた。本案手続では必ずしも被告人尋問が先行しないで、大体証人尋問から始まり、被告人陳述を求めるのはその間にはさまれると考える。証人尋問方法については、現在の弁護士の数などの点を考慮して、裁判長が骨組を形づくつた後、両当事者補充的尋問という形をとつたのであるが、しかし事件によつてむしろ最初から交互尋問を適当と考える場合もあるので、この場合裁判所及び当事者の話合いによることとし、適当な運用を期待している。なお弁護士の数が増加し、本案手続に習熟した場合に、徹底した形に移行する考えである。
  7. 山口好一

    山口(好)委員 控訴審については、基本的人権擁護する建前からも、また訴訟経済上から見ても復審制をとるのがよいのではないか。
  8. 木内曽益

    木内政府委員 本案では、第一審においてすでに証拠資料を出し盡すような制度であるから、從來と異り被告人擁護にほとんど完全するところがない。なお、控訴審においてもただ書面審理に限定せられないで、十分調査するようになつているから心配の点はないと考える。
  9. 山口好一

    山口(好)委員 本案基本的人権擁護にあまり重きを置くため、治安維持裁判適確性を欠く憾みはないか。またかかる弊害に対し、人権擁護治安維持との調和を今後どこで補整するか。
  10. 木内曽益

    木内政府委員 有罪のもの百人を逃すよりも、無この者一人を罰することが遺憾であるという考え本案の重点であり、又治安維持の問題については、警察分化によつて警察力が弱体化したが、本案では檢察官の警察官に対する一般的指示具体的指揮規定が設けられているから、司法警察力を強力に統轄し得ると考える。なお、檢察官は令状を得れば、自由に活動をすることができることになつたから、運用によつては現在以上に捜査態率をあげることができる。
  11. 中村俊夫

    中村(俊)委員 本案の中に裁判所規則という文言が見えるが、本案にあたつて規則制定委員会は進行しているのか。
  12. 宮下明義

    宮下政府委員 本案立案の際、規則制定権との関係を考慮し、手続の細部については規則を認め、基本的人権関係のある事項、及び基本的な骨格をなしている事項については、法律で定める考えで立案したが、從來應急措置法の下では、一時審理促進に関する規則制定委員会が行われたが、今回の改正については進行していないと考える。
  13. 中村俊夫

    中村(俊)委員 本案第七十六條と同じく四百七條とを比較してみると、上訴権回復については救済されるが、上告趣意書提出期間については救済規定がない。殊に上告趣意書が不可抗力のため期間失つた時には、救済規定が必要ではないか。
  14. 宮下明義

    宮下政府委員 この点については現行法にも上訴権については規定されるが、上告趣意書については法律で一定されていることをも考慮しなければならない。上告趣意書提出期間についても、上訴権回復の場合と同樣にするかどうか、その救出方法裁判所規則制定委員会において裁判所法務廳檢察廳側及び在野弁護士代表等が集まり、愼重に論議決定されるのではないかと思う。重大な問題について法律規則に讓るのでは、國会で審議ができないと思われるが、規則制定権を全然無視する法律をつくるのも憲法に副はないと考える。
  15. 井伊誠一

    井伊委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十分散会