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1948-06-04 第2回国会 衆議院 司法委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月四日(金曜日)     午前十一時二十一分開議  出席委員    委員長 井伊 誠一君    理事 石川金次郎君       大村 清一君    佐藤 通吉君       花村 四郎君    松木  宏君       明禮輝三郎君    池谷 信一君       石井 繁丸君    猪俣 浩三君       中村 俊夫君    中村 又一君       大島 多藏君    北浦圭太郎君  出席政府委員         法務政務次官  松永 義雄君         檢 務 長 官 木内 曽益君         法務廳事務官  野木 新一君         法務廳事務官  宮下 明義君  委員外出席者         專門調査員   村  教三君         專門調査員   小木 貞一君     ――――――――――――― 六月三日  戸籍事務の運営に関する陳情書  (第四六八号)  宮崎縣高等裁判所支部設置陳情書  (第四八六号)  軽犯罪法に関する陳情書  (第四八七号)  嘱託少年保護司に対して補導費助成に関する陳  情書  (第  四九〇号)  金澤少年審判所廳舎建設並びに少年院設置の陳  情書  (第四  九三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  刑事訴訟法を改正する法律案内閣提出)(第  六九号)     ―――――――――――――
  2. 石川金次郎

    石川委員長代理 会議を開きます。  刑事訴訟法を改正する法律案を議題とし質疑にはいります。発言は原則として通告順にこれを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 当局は新しい憲法に合わせるべく、非常にお努力なさつて案をつくられた。それに対しましては敬意を表します。ただ本法実施するにつきましては、いろいろな現実の問題が横たわつておると思います。從いましてさようなことに関しまして、およそ十点ばかり御質問申し上げたいと思うのでありますが、第一点から質問申し上げるとともに御答弁いただきまして、次に移るようにしてもらいたいと思うのであります。私は委員長から総括的な質問をするようにお話がありましたので、大体その方向で進みますが、中にはこまかいことについても一、二御質問申し上げたいと思います。なおなるべく自分意見は発表せずに、御答弁だけいただきたいと思いまするけれども、いきおいやはり意見に及ぶこともあるかも存じませんが、御了解願いたいと思います。  本法來年の一月からただちに実施することにつきまして、現実裁判所の有樣と照らし合わせまして、これがはたして可能なりや否やということにつきまして、理念はさておきまして、実際の問題といたしましてここに疑問があるのであります。そこでそれに関連いたしまして、一、二数字的に御説明していただきたいと思いまするが、もし御用意なければ次回の委員会でも差支えないと思うのであります。それは第一審裁判所律事の現在数がどのくらいになつておるか、それから事件件数がどのくらい係爭されておるか。從つて一人の判事の受け持つ件数がどのくらいになつておるか。これは現有の状況であります。それから來年の一月からこれを実施するにつきまして、われわれの見るところによれば、一審判事というものは相当増員されなければならぬと考えるのであります。一体どのくらいの増員を必要と当局は見ておるのであるか。あるいはまた廳舎増設も必要じやないかと思うのであるが、どの程度増設を見込まれておるのであるか。この不足する判事補充はどういうふうにしておやりになる予定であるか。來年と申しましても間もないことであります。つまり現在の統計的の数字、及び本法実施における際の当局の予想せる数字、さようなものをお聽かせ願いたいと思うのであります。高等裁判所判事を移動するにいたしましても、これもなかなか十分じやないと思いまするし、また司法修習生を採用して補充するといたしましてもこれも二年間修習しなければならぬのみならず、裁判所法第二十七條によりましては、修習して出た者は一人前の判事にはまだなり得ない。かような状況に際しまして本法実施しようとする際に、そこにいささかの疑義が起るのでありまして、理念としてははなはだ結構であつても、実際としては裁判所判事ないし廳舎の不足を生じて、事実問題としては裁判が非常に混乱するようなことが起りはせぬか。さような憂慮があるのでありまして、まずこの点について御答弁いただきたいと思います。
  4. 木内曽益

    木内政府委員 お答えいたします。御質問の御心配の点はまことにごもつともと考えるのであります。ただいまお話判事の現在の数とか、あるいは事件数、それから一人当りの受持件数というような点の正確な数字につきましては、今手もとに持ち合わせておりませんから、これは早急に調査いたしまして、書面で御報告申し上げることにいたします。なお一番の裁判が今回の改正案によつて非常に丁重になる結果、もちろん相当数の一審関係判事を増さなければならないとか、あるいは法廷等増設しなければならないということは、私どもの方でも考えておるのであります。それで何人くらい増員を要するかというような点につきましても、これは今のところ十分なる統計をつくつておりません。予想をつくつておりませんから、これもいずれ書面で御報告申し上げることにいたします。ただこの刑訴改正案実施されるということになりまして、從來裁判手続より非常に変りましたために、これを動かしていくということについて、いろいろの御懸念のあるのもごもつともでありまするが、まず第一に私どもの方といたしましては、とにかく一月一日までには半年の期間があるわれでありまするし、その間にできるだけの施設その他の方法を構じまして、何としてでもこれを動かしていきたいという考えをもつておるわけであります。殊に新憲法の三十一條以下の規定は、すなわち結局刑事訴訟関係する規定でありまして、とにかく憲法附属法典といたしまして、刑事訴訟法が最も重大なる法典一つであると考えておるのであります。從つて憲法趣旨実施するのは、どうしてもこれに即應した刑事訴訟法実施しなければ、その憲法考えている基本的人権の保障が全うし得ないと考えておるのであります。その意味において、一日も早くこの法案実施すべきだと考えるのでありまするけれども、しかし御心配のように、ただちに実施するということは困難であるために、ここに一月一日ということにいたしたのであります。その点におきまして、一審の調べが非常に丁寧になる結果、あるいは設備とか、ある審理につきましては、あるいは相当延びるということになり法廷等設備についても、あるいはこれで足りないのではないかということは、私ども考えているところであります。しかしながらすでに実施されておりまする應急措置法の例をもつて申しまするならば、應急措置法実施されまするときに、私もその一線扱つてつたものでありまして、一線立場から見ましても、かような方法でやつていくということは、とうてい治安の責任をもてぬのではないか。從つてかような手続でやることも、相当先へ延ばす必要があるのではないか。あるいは檢事の手も足りぬということが問題になつたのでありまするが、いよいよ実施されてみますると、なるほど急に手続が変りましたので、ちよつと一箇月かそこらの間は、いろいろ混乱と申しまするか、手違い、さような点が起きた場合もあつたのであります。しかしとにかく足りない人員で一生懸命やつていきましたところ、その後さしたる故障もなく、むしろより以上の効果をあげているような次第であります。それからまた公判関係におきましても、大体應急措置法の線を丁寧に條文化したのがこの改正案でありまして、從つてこの應急置法の線で、実際今日やつておりまする公判等を見ましても、とにかく事なく無事にやつてつておる次第であります。また一部におきましては、厖大な判事の数を必要とするというようなことを言つておる者もあるやに聞き及ぶのでありますけれども、ただ人手ばかりを考えておりまするならば、お話の運りほかの職員とは違いまして、判事とかあるいは檢事のようなものは、早急に補充のできない関係にあるので、そうすると一体何年後になつたならば、その人を充実さしてこの刑法を動かしていくかということに相なると思うのであります。そうして一方憲法の要求している基本的人権擁護の建前から見まするならば、一日も早く改正案のような手続でやつていかなければならないのであります。その点を考慮いたしまして、また應急措置法の場合の実績を考慮いたしまするならば、とにかく現状においても何とかこれを動かしていけるというふうに私ども考えておるのであります。その点を多少具体的に申し上げてみますると、一審の手続は非常に丁重になりまするか、要するに公判の開廷の数が殖えるということになるのであります。ところが從來訴訟きますると、捜査記録を全部つけて裁判所へ送つたわけでありまして、判事労力というものは公判におけるよりもより以上に、むしろ自宅等におきまして記録を精査するということに、非常な労力と日数とを要しておつたのであります。この点が今度の訴訟法になりまするとその必要がなくなるわけです。御承知の運り今度の訴訟は、判事関件に対する予断を懐かしてはいけないというので、起訴状だけをまず裁判所に送りこむということになるわけであります。公判廷それに関連する証人調べ等の場合におきましては、その前には檢事の方から調ぶべき証人、こういうのと、こういうのがあるということを申し上げまして、それに基いて証人調べをいたし、要するに法廷において初めて判事事件の内容を知つて審理を進めていくという形でありますから、かりに公判がよけい開廷するからといつても、判事は現在のまま、公判が延びただけよけい手数がかかるというものではないと思うのであります。  それからまた公判廷審理状況でありまするが、まず一例が自白している事件であるといたしまするならば、その調べ手数等におきましては、やはり現在と同じ手数でいくのじやないかと思うのであります。現在におきましても、ただ自白一本だけで裁判をしておるという場合はないのでありまして、なお他の証拠調べもするということになつておるのでありますから、この改正案では法廷における自白一本では証拠とならないということになつてつて、いかにも從來よりはめんどうな手続が必要のように見えますけれども、実際の手続運用考えてみますと、現在の公判でやつている自白事件の場合と大差ないと、かように考えるのであります。それから否認をいたしておる事件てありまするならば、現在におきましてもやはりいろいろに証人調べる等のことをいたしておるのでありまして、この点もそのために特によけい時間がかかるということをも予想できないのであります。それからもう一つは、現行刑訴はいわゆるまつ向から交互尋問制はとつておりませんけれども、しかしながら実質においては交互尋問制をとつておると同じ形で行つておるのであります。從來の場合はいかがかと申しますると、從來の場合におきましても証人調べにおきまして、弁護人なり檢察官なりが、いわゆる補充尋問の形において納得のいくまで尋問をしておるわけであります。さような点から考えますると、この刑訴公判手続現行刑訴とはおそろしく変つたように見えますけれども憲法に抵触しないように、應急措置法で現在の公判手続が円満に、無事に進行しておるのでありますし、しかも公判手続もまたこの應急措置法の線を、さらに憲法の精神に副うように條文化し、これを整理してあるわけでありまするから、実際問題といたしましてはそのように多数の人が不足する、また現在のままでこれを動かしていつて全然裁判が動かなくなるというようなことはないと、私どもはかよう考えておるわけでございます。ただ問題は今度は強制弁護の範囲が非常に廣くなりましたので、從來弁護人がなくてもただちに裁判ができたのを、今度弁護人を必ずつけなければ公判審理ができないというようなことになつておりますので、その点では多少審理が長びくということが考えられるのでありまするけれども、また一面弁護人の方におきましても、公判における弁論とか、その他に少しく工夫をされて要領よくやれば、またその運用いかんによつては、さしたる変化もなくやつていけるのではないか。從つて一月一日から実施することはでき得るというふうに私は考えておるわけでございます。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 私ども疑義をもちますのも、本年の五月三日の朝日新聞の報ずるところによりますと、これは最高裁判所から出た記事だろうと思いまするが、いわゆる應急措置法実施になつてから、犯人の拘留期間が非常に延びておるということが統計的にわかるのであります。たとえば二箇月以上六箇月以内の拘留者は、昭和十二年にはパーセンテージは四・八%であつたものを、昭和二十二年の九月には一三・六%になつておるのであります。應急措置法が四月にできて以來、拘留期間は非常に延びております。また一月以上二箇月以内の拘留者昭和十二年には一二・三%であつたものを、昭和二十二年九月には二四・一%というふうになつておる。これはなぜかというと、結局審理がはかどらぬためではないかと思う。今木内さんは実績に徴して心配がないような御説でありましたけれども、この應急措置法適用なつただけでも実績はかようになつておる。なお應急措置法を徹底いたしました刑事訴訟法実施されたならばどうなるかという、一應の危惧の念があるのでありまして、今御質問申したのでありますが、まだ実施なつたときの判事増員いかんというようなことは、お考えになつておらぬという御答弁でありましたが、これは至急ひとつ構想を練りなさらぬと、今の小学校や中学校における六・三制みたいな始末になると、これはなかなか容易ならぬことだと思うのであります。私はいつも理念としてはまことに結構だと思うのだが、どうも六・三制の現状では、はなはだ理想と現実があまりに違いすぎて悲哀を感ぜざるを得ない。ああいうことが裁判に起りますと、ゆゆしき問題だというふうに考えられるのでありまして、至急構想を練つていただかないといかぬのじやないかというふうに思われるのであります。これは自分意見になりますからこの程度にいたしておきます。  次に私は檢察官司法警察職員との関係について御質問したいと思うのでありますが、これは関係者が來ていないし、法務総裁も見えておられないのでどういうことになりますか、何なら午後にまわしまして、第二点といたしまして弁護人制度のことについて、少し御質問をしたいと思うのであります。  申すまでもなく本刑事訴訟法当事者訴訟主義をおとりになつて、相当これを徹底させておることについては、私ども賛意を表しておるものであります。ただしこの当事者訴訟主義の徹底ということは、必ず前提があるのでありまして、これはいわゆる弁護人活動、この弁護人がフルに活動いたしませんと机上の空論に終つてしまつて当事者訴訟主義ということは有名無実になるのであります。そこで当事者訴訟主義を貫徹せんとするには、弁護人制度としての弁護士、及びその弁護士法廷における権利、地位、こういうものを強化することが何よりも大切であると思うのであります。その点から本法案を見ますと、相当権利拡張もされておりまするが、なお私どもがそこに一つ疑義をもちますのは、第一といたしまして現在の弁護士制度でもつて、はたして檢察官と対等な活動がなし得るかどうか。檢察官は強大なる搜査権をもち、証拠蒐集能力をもつております。檢察事務官あるいはその他の司法警察官、これと対等の立場弁護士がやはり防禦方法を講ずるという際には、現在の状態でははなはだ困難をきたすのじやないか。文章として見ますとまことにりつぱにできつておりますが、現実の問題として攻撃防禦現実の姿を考えますと、これがはたして言うがごとく、当事者訴訟主義の貫徹として現われるか否かということに対しては、多少の疑問があるのであります。そこで制度といたしましては弁護士補助員とかを認め、これにやはり弁護士とともに証人、あるいは搜査、あるいは檢証の際に立会わせるとか、要するに檢察官檢察事務官なり、司法警察職員補助者として使うことができるように、弁護士補助員を合法的に認めるような制度を、弁護士法並び訴訟法に設ける必要がなろうか。そして制度としての弁護士いをもう少し力を強固にする。しからざればはなはだ結構な案ができておりましても、十分に弁護士がその力量を発揮することができず、やはり檢察官の方が弁護士を上まわつて活動してしまう。当事者主義はそこで破れるというふうに考えられるのであります。かようなことにつきましては当局はどうお考えになつておりまするか、お聽きいたしたいと思います。  その次には今度は弁護士権利の問題であります。これも相当拡張されておるのでありますが、なおこの草案を見まして二、三疑問に思うところがあるのでありまして、要は弁護士権利拡張、すなわち当事者訴訟主義を実行せんことといたした権利拡張として最も問題になるのは、被疑事件についての弁護士立場であります。この被疑事件についても十分弁護士活動を認めないならば、檢事と対等な意味において攻撃防禦ができない。この弁護士権利といたしましては押收搜索檢証証人尋問等における立会権、第一は立会権でありましようが、この立会権被疑事件について十分認めていかぬと、そこに十分なる防禦の態勢がとれないと思うのであります。ところが本草案を見ますると、どうも被疑事件におきまして檢事が盛んに活動している際に、弁護士立会権を認めておらない。たとえば二百十八條に「檢察官檢察事務官又は司法警察職員は、犯罪搜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押搜索又檢証をすることができる。この場合において身体の檢査は、身体檢査令状によらなければならない。」とあります。ところがこれにつきましては、二百二十二條被疑者自身を立ち会わせることができるというような規定があります。第六項目に当ると思いますが、「檢察官檢察事務官又は司法警察職員は、第二百十八條規定により差押搜索又檢証をするについて必要があるときは、被疑者をこれに立ち会わせることができる。」とあつて被疑者についてでありますから「必要があるとき」という條件、それから「立ち会わせることができるという一方的のものになつておるのでありますが、とにかく被疑者も立ち会わせることがあり得るのであります。これに対して弁護士の立会いということがない。百十三條が準用されておらぬのであります。二百二十二條に百十三條だけは抜かしてあるところを見ますると、弁護人立会権を認めないという趣旨であろうと思います。これはどうも当事者訴訟主義原則から見ておもしろくない。草案の百十三條を見ますると、「檢察官被告人又は弁護人は、差押状又は搜索状の執行に立ち会うことができる。」とあつて、これは権利として認められておる。百十三條には弁護人立会権を認めておりながら、いわゆる被疑事件の二百十八條では認めないということは、どうもまだ搜査密行主義という、從來からの観念が拂拭し切れないでいるのではないか。もちろん搜査の段階におきましては、さような必要があるかと存じますけれども、いやしくも当事者訴訟主義をおとりになつた以上は竿頭さらに一歩を進めまして、百十三條において被告人の場合には立会権を認めているのでありますから、二百十八條被疑者の場合にもこれを認めて、首尾一貫することが適当ではないかと考えられるのであります。  それからなお二百二十八條の場合におきましての立会権もはなはだ薄弱な規定になつておりまして、「前二條請求を受けた裁判官は、証人尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。裁判官は、搜査支障を生ずる虞がないと認めるときは、被告人被疑者又は弁護人を前項の尋問に立ち会わせることができる。」とあつて、とにかく証人尋問に対しましても「支障を生ずる虞がない」というような條件を附し、しかもこれは弁護人権利として認めておらない。裁判所の一方的の考えで立ち会わせることができるという規定になつておるということは、これも弁護人権利の上から見ましても薄弱過ぎる感があります。それでありますからこういう点につきまして、いま少しく弁護人立場を強化して、防禦権を行使する上におきましては、被疑者の時代においてすでに押收搜査檢証証人尋問、あらゆる場合に檢事と対等の立会権を認めるということが、いわゆる弁護士権利を認めるとともに、訴訟法当事者主義を貫徹するゆえんじやないか、こういうふうに考えられるのであります。これに対する御意見、何がゆえにかように立会権を認めないか、あるいは認めるとしても権利として認めず、立ち会わせることができるというような規定に止めておくのであるか、その立法趣旨を承りたいと思うのであります。  それから、これは私の不勉強のせいであるかもしれませんから懇切丁寧に御説明していただきたいのでありますが、第十四章の証拠保全の場合であります。百七十九條に証拠保全上「裁判官押收搜索檢証証人尋問又は鑑定の処分を請求することができる。」とあるのでありますが、これに対して立会いすることができるという、いわゆる弁護人立会権が表面上規定されておりません。一般の百五十七條の「弁護人は、証人尋問に立ち会うことができる。」という規定が、この証拠保全の場合にも適用になるかどうか。この百七十九條の証拠保全が行われる際にも、弁護人は百五十七條規定によつて、その証人尋問に立ち会うことができるのであるかどうか、その点の御説明を願いたいのであります。  なお草案の八十二條でありますが、「勾留されている被告人は、裁判所勾留理由開示請求することができる。」こういう規定があるのでありますが、これも弁護人がついておる際にはいいが、弁護人がまだつかない場合において「勾留理由開示請求することができる。」というだけで止めておきますと、はたしてこういう勾留理由開示請求が、被告人自身としてやり得るや否や。これも前の、弁護人を選任することができることを告げるというような規定と同じように、勾留理由開示請求することができるのだということを、勾留者から被告人にあらかじめ念を押しておくような規定が欲しいと思うのであります。なぜかと申しますと、新聞記事によりますと、この勾留開示請求をするということは、ほとんどないという記事が出ておりまて、そうしてその記事によりますと、やはり被告人がこの趣旨をよく知らぬのだろうというように出ておるのでありますが、さようなことはあり得ることだと考えられるのでありまして、これは裁判長なり裁判官なり、あるいは勾留者がその旨被告人に告げるというふうに改正する方が適当だと思うのであります。それに対しての御意見を伺えたら承りたいと思います。それからいま一つ弁護人権利としてあります調書閲覧権でありますが、これは一般的に閲覧権利があるのでありますが、この百九十八條の場合、「檢察官檢察事務官又は司法警察職員は、「犯罪捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」という規定があります。そして第三項に「被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。」とあり、第四項では被疑者閲覧させるというふうになつておりますが、この調書弁護人閲覧することができるのであるかどうか。これも私は勉強が足りないせいか、その点規定からはつきり出ていないのでありますが、被疑者だけに閲覧させるので、弁護人閲覧させないのであるかどうか。この点についてもお聽きしたいと思います。  私の今の質問当事者のための弁護人権利義務に関連して、立会権及び閲覧権についての質問であります。長い間喋つてしまいしたので、質問の要旨がおわかりにならぬといけませんから、もう一度要約して申し上げます。  第一点は縮めて申し上げれば、二百十八條の場合、立会権規定されておらぬ。  それから二百二十八條の場合においても立会権として認めておらぬが、その趣旨はいかにあるかということ。  それから二は証拠保全の場合の立会権はどうなつているのであるか。百五十七條がそのまま適用になるのであるか。  三は勾留開始については請求を認めるのみならず、請求することができることを被告人に告げるような規定にしたらどうか。  その次は弁護人閲覧権として百九十八條被疑者調書に対して弁護人もこれを閲覧する機会があるのか、この点であります。
  6. 石川金次郎

    石川委員長代理 弁護士補助員を置いた方がよいという御意見もありましたが、その点も政府に答弁を求めるでしよう。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 お願いします。
  8. 木内曽益

    木内政府委員 弁護人制度の改革の御質問の前に、ちよつと勾留期間應急措置法になつてから非常に延びたということをお話になりましたが、その点についてまず簡單に御説明申し上げたいと思います。今度の改正法になると八十九條でございますが、一審の場合は一から五まで掲げた事項以外の場合は、請求があれば必ず保釈を許さなければならないということになつており、いわゆる権利保釈の制度が認められているわけでありまして、そのために從來よりは拘束されている場合が非常に少くなる、かように私ども考えているわけでございます。  それから事件関係でいろいろパーセンテージをあげてお話になりましたが、これはもう昨年の暮から、事件がいろいろ統制経済違反とか、その他一齊檢挙等のために、事件数が倍以上に殖えておるというようなことも原因しておると思います。弁護人制度に対するお答えは野木政府委員から御説明いたします。
  9. 野木新一

    ○野木政府委員 弁護士の方の関係の問題についてお答え申し上げます。まず第一点に、弁護士補助員制度を設ける要なきや、しかして弁護士の力を強化してはどうかという点でございます。結論的に申し上げますれば、この案におきましてはこの点は考えておりません。將來の問題として補助員制度を設けたらどうかという点につきましては、なおいろいろ研究してみたい問題として弁護士補助員を使い得るといことは、これはできると思います。それからいま一点、弁護人憲法との関係で一定の場合に資格ある弁護人を云々という規定がございまして、そういう場合には法理上の制度として、弁護人の代りにその補助員を置きかえるということはむずかしかろうと存じます。  次に弁護人権利義務関係でございますけれども、この案におきましては現行刑事訴訟法よりも被告人当事者的地位を高め、從つて弁護人被告人を保護する活動も一層期待されておるわけでありますけれども、それは主として憲法との関係を見ましても、公判の起訴後の段階におきまして非常に強まつたのでありまして、起訴前の段階におけましては、必ずしもそれが十分徹底したるというところまではいつておりません。それは一つは日本の檢察官制度がアメリカ等と違いまして、純然たる攻撃機関までに徹するところまでいつておりませんので、檢察官はもちろん攻撃者の面をもつところに、なお多分に公益の代表者という考えもあるのでありまして、この考えはこの草案及び檢察廳法案を通じて残つておりますので、その点が一つと、それからこの案におきましては、現行刑事訴訟法と違いまして証拠力の点におきまして今と非常に違つた考え方をしておる。たとえば檢察官がとつた聽取書とか、そういうものにつきましてはあとで公判証拠のところでそういうことになるかと思いますが、著しく制限されてきまして、たとえば檢証押收というようなものにつきましても、すぐそれだけで証拠としてとれないのでありまして、それをつくつた人を公判廷に呼び出して、弁護人側なり被告人側から反対尋問をしまして、十分とつたときの状況とか何かを確かめまして、初めてそれを証拠にとれる。そういうような関係になつている点も御留意願いたいと思います。今の点が結局被疑事件立会権の問題に関連しますけれども、その檢証とか押收捜査のような場合は、そういうような観点から、この案では弁護人権利としての立会権は認めておりません。  次に二百二十八條、二百二十二條のところの立会権は、権利として認められておりません。  次に証拠保全のところの関係でありますが、これは立会権が認められております。  次に八十二條勾留理由開示請求ができるということは、勾留する際に勾留する官憲から、被告人ないし被疑者に、そういう権限があるということを告げさせたらどうかという点で、これもそういうことにした方が一層親切なことになるとは思いますけれども、必ずしも法文上そこまで明記する必要もないのではないかと思います。別に運用に際しまして十分考えられることではないかというところでありまして、法文には明記するところまでいきませんでした。  次に百九十八條調書閲覧権でございますけれども、百九十八條に書いてありまするところは、現在でも実行されているところを訴訟法上はつきりさせたのでありまして、要するに被疑者などを取調べた上、被疑者が任意に供述したときは、それを調書に書く。書いたときには読み聽かせて、また字が読める場合には被疑者に見させて、自分の言つた通り書いてあるかということを確かめさせるという趣旨であります。この調書弁護人が捜索中閲覧できるかできないかという点は、ちよつと別の問題になりまして、起訴前には、弁護人としては、閲覧する権利はないという建前になつております。起訴後におきまして、もし檢察官側がこういうような調書証拠として出したいというような場合には、あらかじめ弁護人にそれを閲覧させたりなんかしなければ、法廷に出せないということになつております。從つて弁護人があらかじめ知らない書類のようなものは、法廷に出ることはないという建前になつておりますので、そこで十分弁護人が内容を知らない書類が出るようなことはなくなる建前になつております。それは二百九十九條でありまして、「檢察官被告人又は弁護人証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の尋問請求するについては、あらかじめ、相手方に対し、その氏名及び住居を知る機会を與えなければならない。証拠書類又は証拠物の取調を請求するについては、あらかじめ、相手方にこれを閲覧覽する機会を與えなければならない。但し、相手方に異議のないときは、この限りでない。」こういうことになりまして、実際の運用といたしましては、檢察官側が、大体捜査記録ができ、起訴すると、もう法廷証拠として出したい書類を備えておき、自由に弁護人に見てもらうという運用になつていくと思います。
  10. 猪俣浩三

    猪俣委員 今の答弁について、弁護士補助員制度について憲法問題をおつしやつたが、私は憲法問題と関係がないと思う。だから弁護士補助員という名前なのであります。実際の弁護士の仕事をただ強化するほんとうの補助員なのであります。それをこの訴訟法の中、及び弁護士法の中に入れたらどうかという案なのでありますが、それは考えておらぬという御意見でありますので、そのまま受取つておきます。  それから被疑者被疑事件についての弁護人立会権、閲覽権は全面的に否認されておるような御答弁であつて、その理由がはつきりいたしません。檢察官の性格なんかも御説明になつたようですが、もうちよつと詳しく承れませんか。何がゆえに防禦立場にある弁護人に対して、立会権及び閲覽権を全面的に否認するかという根拠、たとえばこれは捜査のじやまになるとか、あるいは活発な活動檢察官にできないとか、あるいは何かその他の故障があるとか、あるいは先ほどおつしやつて、私はつきりわからぬけれでも、司法警察員との関係というようなことがあるのか、もう少しはつきり御答弁願いたいと思います。何がゆえに被疑事件に対して、弁護人防禦権を認めるべく当事者主義を貫徹できなかつたか、その理由を明らかにいたしませんと、訴訟法全体に、いわゆる昔の官僚主義が非常に残つておるという色彩を濃くするのでありまして、そこはわれわれの納得いくように理由の説明を、はつきりおつしやつていただきたい。
  11. 野木新一

    ○野木政府委員 先ほどの御説明が少し徹底しないところがありまして非常に恐縮に存じます。まず第一の考えといたしましては、本案におきましては当事者主義的色彩を非常に強化してまいりましたけれども、それは日本の現在の段階では、大体公判以後において非常に強化し、公判以前におきましてはそこまで徹底できなかつた。その理由といたしましては、一つは先ほど申し上げましたように、起訴、不起訴という檢察官の性格が、欧米のように純粹なる攻撃者という性格のみでなくて、日本の檢察廳法及びこの訴訟法考え方におきましては、攻撃者であると同時に、被疑者側の利益をもなお考えてやる。そういう氣持が多分に残つておりまして、これが英米の訴訟法檢察官の性格と、この檢察廳法と本案に考えておる性質と違う点であります。それが一点。  それから次の点といたしましては、捜査の段階におきましては、やはり捜査活動を場合によつては迅速にやる必要があるが、弁護人に一々立会権を認めておきましては、迅速性に合わない場合が非常に多いのじやないかという点も考えられます。  次にかりに立会権を認めなくても、そうしてつくられたいわゆる調書につきましては、先ほども申し上げましたように公判証拠能力という点におきまして、嚴重な制限を設けております。調書がそのままで証拠にとられるということでなくて、たとえば檢証調書の例を申し上げますれば、檢証調書をつくつた警察官なりが公判廷に喚び出されて、弁護人側からそのつくつた状況とか、その他についての完膚なきまでの反対尋問にさらされる、そういう立て方になつておりますので、今までとまつたく違いまして、あまりあとで問題になるような調書はつくれない。そういう立て方にしておる点も一つ理由であります。結局この案の考え方といたしましては、捜査の段階におきまして、今申し上げましたように、弁護人にまつた捜査官と対等の力を認める。それからいま一点は、今言つたように弁護人側としては、要するに被告人というものは自分のやつたことは全部知つておる。この案におきましては、被告人は自己に有利な証拠を身近にもつておる。檢察官は何もわからない。暗中模索しておる。これからいろいろと調べていく。被告人自分がやつたことであるから全部自分知つておる。弁護人を頼めばその弁護人に、この証人が一番よく知つておる、これはこういうことだということを全部教えるという点におきまして、被疑者弁護人がついたということは、公判の場所でいろいろ主張するという点において非常に、今までと違つて被告人の保護があつくなつたことと思います。そういう事情ともにらみ合わせまして、捜査の段階におきまして弁護人に同じような立会権を認めて、立会のときにいろいろ反対尋問とか、何かの機会を與えるということになりますと、かえつて力の権衡が失われて、公共の福祉、被告人の保護という調和が失われてくる心配があるのじやないか。そういうような点を考えまして、この案におきましては、捜査の段階におきましては弁護人権利として当然証人尋問檢証押收捜査等に立会うというところまでは認めておりません。もつとも檢察官側が相当と認める場合には、弁護人側に見てもらうということは忌避しているわけではありません。
  12. 石川金次郎

    石川委員長代理 午後一時二十分まで休憩いたします。正一時二十分に再開いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  13. 石川金次郎

    石川委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。猪俣浩三君。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 第三点といたしまして証拠の点につきましてお尋ねしたいと思います。三百十九條、「強制、拷問又は脅迫による自由、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。」こういうふうに相なつておりますが、この「任意にされたものでない疑のある自白」という中には、要するに誘導尋問あるいは詐言尋問、そういうものも含まれておるのでありましようか。どうか。それをお伺いしたいと思います。
  15. 木内曽益

    木内政府委員 お答えいたします。お尋ねのこの詐言による尋問はもちろん任意による尋問というわけにはまいらないと考えております。それから誘導尋問も——これはなかなかむずかしい問題でありますが、任意の供述と認められない程度の誘導尋問はむろん任意の供述と言われない、かように考えております。
  16. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは実際の問題でありましようからそれではこれはこの程度にして、そうすると今までいろいろ問題になりました誘導尋問というようなことについても、結局はそれが任意にされたものと認められるかどうか、それによつて決定するというわけですか。
  17. 木内曽益

    木内政府委員 さようであります。
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 その次には同じ三百十九條ですが、「公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。」というのでありますが、この不利益な唯一の証拠という意味でありますが、これはなかなか実際の裁判のときにはたいへんな問題になると思うのであります。甲乙が共犯関係にあつた際に、甲は自白をしたが、乙はこれを否認をしたという場合に、これがどういうふうに適用になるのであるか、お伺いしたい。
  19. 木内曽益

    木内政府委員 一例を申しますと一番いいのは選挙違反のような場合で、金をやつた、もらつたというだけの関係でありまして、もらつたという方は自白をいたしておるが、やつたという方は否認をしておるというような場合におきまして、そうしてほかになんら証拠がなければ、さような場合においても、結局自白のみというふうに考えて相手方に対する証拠とはならぬ、かように考えておる次第であります。
  20. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると甲乙の場合において、やはり自由だけだという場合には、不利益の唯一の証拠という條項にあてはまるわけです。
  21. 木内曽益

    木内政府委員 双方が自白いたしておる場合はいいのですが、一人が自白しておつて他の一人が否認した場合は、ほかに資料がなければこの條項にあてはまります。
  22. 猪俣浩三

    猪俣委員 両方自白しておる場合には、それが唯一の証拠の中にははいらぬわけですね。
  23. 木内曽益

    木内政府委員 さようです。
  24. 猪俣浩三

    猪俣委員 両方自白しておる場合には、有罪と決定するわけですね。
  25. 木内曽益

    木内政府委員 さようです。
  26. 猪俣浩三

    猪俣委員 一方が否認して一方が自白しておるときには、両方とも有罪だということになるのですね。
  27. 木内曽益

    木内政府委員 さようです。
  28. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから唯一の証拠の範囲でありますが、要するに科刑上の一罪とか、取扱上の一罪とかいう、刑法に取扱つております実質は数罪なんだけれども、取扱上一罪になつておるという場合、その分割された実質上の一罪については証拠があるが、他の取扱上全体として見ると自白のみの場合において、唯一の証拠というのがどの範囲まで及ぶのであるか。その点はどうなんですか。
  29. 木内曽益

    木内政府委員 今のは連続犯のような場合をおつしやるのですか。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうです。
  31. 木内曽益

    木内政府委員 連続犯の規定は刑法から削除されましたから、おのずとこの問題は解決すると思います。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから三百二十一條の証拠の制限の問題でありますが、証拠の制限がいわゆる直接主義及び口頭主義をとつておるということに相なりますと、この三百二十一條の裁判官の面前というような意味か、あるいは公判準備、あるいは公判期日という意味か、前審の場合、第一審の場合あるいは更新された公判期日の場合、あるいは裁判官の構成が変更になつたような場合、この場合は要するに裁判官の面前あるいは公判期日ということに含まるのかどうか。裁判官の面前あるいは公判の期日というものが、最初から裁判官公判期日、あるいは更新後の新たなる公判期日という意味なのかどうか。その点を御説明願いたい。
  33. 野木新一

    ○野木政府委員 第三十五十一條第一号についてまず例を引いて御説明申しまげますと、この「公判準備もしくは公判期日において」というのは要するに公訴提起後の公判準備、公判期日、從つて大体一号の場合には現に公判を開いておる裁判所及びその裁判所公判期日、及びその公判準備の場合を大体予想しております。  第二項にいきまして、「被告人以外の者の公非準備若しくは公判期日における供述を録取した書面又は裁判所若しくは裁判官檢証の結果を記載した書面は、前項の規定にかかわらず、これを証拠とすることができる。」ここの公判準備及び公判期日というのは、大体前審後審の全部を含む。そういうような仕組になつております。
  34. 石川金次郎

    石川委員長代理 それでは本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十九分散会