○花村
委員 なるほど超過
勤務手当は辞退しておる
官公吏もあるのでありましよう。あるではありましようけれ
ども、しかし制度の上から
言つては、辞退したから何も制度として設ける必要がないという議論は、私はどこからも出てこないと思う。不必要であるということであれば、これはまた格別であります。辞退しているから超過
勤務手当に関する規則を設くる必要はないという議論は、私は成立たないのではないかと思う。私は
官廳のことは知りませんが、おそらく超過
勤務手当も、すべての
官吏が辞退しているというわけはあまりますまい。かような
意味において、そういう理由のもとに削られたということでありますならば、これはまつたく理由なきものである。しかして
判事並びに
檢察官に関しまする
俸給を著しく上げたがゆえに、この超過
勤務手当を削つたというお説であつたのでありますけれ
ども、これは私が当初に申し上げましたように、なるほど形の上では上
つているけれ
ども、実質的には決して上
つておらぬというゆえんのものもまたここにある。今日までは超過
勤務手当をもらい得ることに相な
つておつた。どの
程度もら
つていたか知りませんが、おそらく時間
外勤務の多いという点を考えてみますれば、
相当の
收入があつたと私は思う。でありますから、超過
勤務手当によ
つて今日まで薄給の
官吏がどうにか、こうにか
生活を支えてきたというような
関係も考え得られまするのみならず、むしろ今日の時勢から申しますれば、御
承知のことも能率給を支拂うべきものであるという声は非常に多い。外國においても、すでに能率給制度を実施いたしまして、
相当の成果をあげているというこの事実に鑑みて、わが國においても、能率給を支給すべきものであるという声が、
相当かまびすしくな
つているのであるますが、こうした時勢からみましても、
勤務の能率をあげる
意味において、
勤務外に働いたその勤労に対する諸手当を
給與するということは、これは当然とらなければならぬことである。またと
つてしかるべきことである。とるのがよい。しかるにもかかわらず、本
法案によりますれば、そうした考えに逆行するがごとき基調のもとに、この
法案が提出されているということはいわば時代に逆行する
法案であるとも、この点のみをとらえて言えば言い得ると思う。こういう点から申しまして、当然こういう超過
勤務手当のごときは、むしろ旧來よりもその額を増し、また與える機会も多くしてやるということであらなければならない。そうあ
つてこそ、初めて
官吏が時間外だろうが、いつだろうが、身を挺して働き得ることに相なるだろうと思うのであります。殊にこれはこの前も
ちよつとどなたかの
質問で言うたのか、答弁で言うたのか知りませんけれ
ども、
檢察官のごときは晝でも夜でも、あるいは夜中でも、雨の日でも雪の日でも、何どきたりとも、一たび事件が起きた場合には、家を捨てて出ていかなければならぬという職に携わ
つている。この人々が夜中寝ずに働いてお
つても、なおかつそれに対して何らの
報酬も拂わないという、そんな制度がどこにありましようか、先ほど
岡井君が
官廳には何か特別なる
收入があるように言われたが、これはただに
岡井君ばかりじやありません。もしそれを
総理が知らぬということであれば、
官吏生活の表裏をよくわきまえぬという
結論に相なるので、もう少し裏面を勉強してもらいたいと思う。それでこそ、初めて
官吏というものの
生活に対する眞の理解をもち得るものであろうと思うのでありますが、
行政官などはどちらかといえば余得がある。あるに
間違いない。われわれもそれを見聞きして知
つておる。これは
岡井君が言われたばかりじやない。すべての人が認めておる。しかしながら、少くとも
裁判官並びに
檢察官に対しては、そういう余得のないことだけは明らかだ。余得がないからわが國の司法権というものはここに嚴として存し、何人も犯すべからざるところの固い
基礎をもち、またそこに光を放
つている。でありまするから、他の
行政官等と比較をして、そうして
裁判官並びに
檢察官の
給與に関することを考えるとするならば、これは大いなる誤りであります。
官吏生活の表面は知
つておつたにしても、少くとも裏面を知らぬというそしりを免れないのではなかろうかと思うのであります。こういう見地に立ちまして考えまする場合において、たとえわずかの月給は上げても、こういう超過
勤務手当のごときものを削るということでありますれば、その得るところの
收入は、結局大同小異に帰するのであります。のみならずそれがために、ひいては
勤務時間以外の仕事が結局は鈍
つてくる、おろそかになる、縮小されるというようなことで、この欠員のありまするところの司法権の運用には、大きな支障を來すと申さなれればならぬと思うのであります。さりながら、
総理大臣はただいまの答弁において、
裁判官並びに
檢察官の欠員に対しては、近いうちの補充をすると仰せられたのでありますけれ
ども、それはしかるべきことでありましよう。補充をしなければならぬ。また補充すべきではありまするけれ
ども、しかしこういう特殊な
官吏は、すぐ補充しようというても補充するわけにいかない。司法科なりの試驗を受けたら二年なりの間その
事務を修習さして、そうしてだんだん
裁判官または
檢察官に仕立てていくという過程を経るにあらずんば、何人を連れてきてもその職にあてはめるということのできないところの特異性をもつた
官吏であるのであります。でありまするから、
総理大臣がいかに熱意をも
つておやりになりましても、そう
簡單にこれを補充するということはとうてい困難だ。でありまするから、そういう見地に立
つて補充ができるから大体超過
勤務手当などはいいという
見解は、大なる誤りであろうと考えるのであります。今私の申し上げましたことについての、
総理の御所見を伺
つておきます。