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1948-03-25 第2回国会 衆議院 司法委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年三月二十五日(木曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 松永 義雄君    理事 石川金次郎君 理事 荊木 一久君    理事 鍛冶 良作君       井伊 誠一君    池谷 信一君       石井 繁丸君    榊原 千代君       中村 俊夫君    八並 達雄君       吉田  安君    岡井藤志郎君       佐瀬 昌三君  出席政府委員         法務廳事務官  國宗  榮君  委員外出席者         專門調査員   村  教三君         專門調査員   小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  軽犯罪法案内閣提出)(第一三号)     —————————————
  2. 松永義雄

    松永委員長 これより会議を開きます。  軽犯罪法案について審査を進めます。石川金次郎君。
  3. 石川金次郎

    石川委員 これからお聽きいたしますことは、きわめてつまらないことになりますが、まずこの軽犯罪法違反行為者があつたといたしましたならば、これを取調べから裁判を受けるに至る手続につきまして、お教え願いたいと存じます。
  4. 國宗榮

    國宗政府委員 軽犯罪法に違反した者がありますと、通常の場合におきましては、警察官がこれを取調べまして、そして檢察官に送致いたしまして、檢察官がこれを簡易裁判者に起訴いたしまして処理するのでありますが、その間におきまして、警察官が取調べます場合に、普通にいわゆる強制手続を用いないで調べる場合が通常でありますけれども、しかしこの軽犯罪法におきましても、逮捕状請求はできるわけであります。從いまして強制力を用いて調べる場合もあり得ると存ずるのであります。ただ現行犯の場合におきましては、刑事訴訟規定によりまして、住居が明らかでない、あるいは氏名が分明でない、逃走におそれがある、こういう條件がなければ、拘置科料に該当する罪でありますから、ただちに現行犯として逮捕することができない。かよう制限はございますけれども逮捕状請求につきましては、別に何らの制限はございませんので、強制手続が用い得られる、こういう法律上の権限警察官に與えられております。しかし実際の問題といたしましては、かような軽微な犯罪につきまして、逮捕状を用いて身柄を拘束し調べることは、不適当だろうと思うのであります。実際は違反行為がありますと、警察官がその場でその事情を調べまして、そうしてすぐ帰しておきまして、その後に檢察官の方に送致になつて檢察官がこれを簡易裁判所に起訴する、こういう段階になると思います。ただしかしかような小さな犯罪でありますから、調べられる者がさよう複雜手続によりまして、出頭その他非常に迷惑をこうむる場合があろうかと思われます。実際のかよう取締りにあたつては、場合によつては今日の裁判所法によりまして、必ずしも公判廷で裁判を開かなくとも可能な場合がありますので、簡易裁判所裁判官並びに檢察官等が、その現場に参りまして即決の裁判も可能かと存ずるのであります。この運用につきましては、なお実際にこの法律が施行される場合にあたりまして、私どもとしては十分犯罪の軽重を考えまして、一番妥当なやり方を指示し、研究したいと存じております。
  5. 石川金次郎

    石川委員 犯罪が軽いのであるから、もしこれを刑事訴訟法手続等からまいりますと、起訴前の強制処分もできることになりましよう。また起訴いたしてからの判事拘留状を求めることもできることになります。そうすると最高刑であります拘留の三十日以上拘束され得るという事実も起るかと存じます。ところでこういうことをやり得るということが、從來非難を受けておりました不当な犯罪捜査の手段に使われるということも予想されるのでありまして、この軽犯罪法の檢挙にだけは、こういう身柄に対する收容等強制力は使わない。こういうことにおきめ願うわけにいかぬものでありましようか。
  6. 國宗榮

    國宗政府委員 まことにごもつともな御意見と存じますが、その点については、まだ確定はいたしておりませんけれども、新しく今議会に提出の予定になつておる改正刑事訴訟法においては、拘留科料にあたる罪については、逮捕状を出し得ないという規定を設けるつもりで、さような原案ができております。これと相まつてその御心配の点は除去できるではないかと考えます。
  7. 石川金次郎

    石川委員 ただいま承りましてわかりました。先ほど御説明の中にございました現行犯が、かりに軽犯罪法に該当する行為をやつておつと者がありました場合には、ただちに裁判当判事檢事が出張して、裁判をする。非常に早くスピードでいい制度でありますが、そういたしますと、そこには弁護人選任という時間的ずれというものが出はしないか。そうすると、どんな場合でありましても、弁護人をつけるという建前にしております訴訟法においては、この点どうなりますか。お考えを伺いたいと思います。
  8. 國宗榮

    國宗政府委員 先ほど申し上げましたのは、現行法制のもとにおける措置として申し上げたのでございますが、御承知通り改正刑事訴訟法におきましては、必ず弁護人をつけるよう建前をとりたいと考えております。今申し上げたような急速な措置をとる場合におきましても、弁護人選任の余裕を存じ、また弁護人選任ができないよう措置はやらないつもりでありまして、その点御了承願いたいと思います。
  9. 石川金次郎

    石川委員 それでは次に第二條に刑の免除規定がございますので、これについてお伺いいたしたいと思います。提案説明書によりますと、刑の免除説明が書いてありますが、刑の免除をどういう場合に適用していくお考えでこれを書かれたかをお聽きしたいのであります。たとえば第一條の一号に該当する行為でありますが、今の世の中では、住居がなくて困つている人がたくさんある。その人たちが眞にやむを得なくて人の住んでおらない邸宅にはいつたといたします。そういうような場合において、これを救済する方法を社会政策的にやつていかなければならぬことはもつともでありますが、國家の財政がこれを許さないという悲しい実情にある。そういう場合にここにはいつてきた人たちがあつたといたしましたならば、おそらく該当したとしても、二條によつてこの刑の免除をする。つまり社会政策によつてやり得べきことを社会政策でやり得なかつた場合には、違反行為があつても、刑の免除でいくという御趣旨であるのか承りたい。しかしこの場合救済いたしますことは、正当行為の理論もございますので、その方に任しておいても救われ得ると思うのでありますが、それをもなお狹していたしまして、刑法のもつておる正当行為、自救行為、そういうものを見て第二條を置かれて、社会政策でやり得なかつたことを、第二條の活用によつてどんどんみんなに迷惑をかけないようにするという御趣旨であるのか承つておきたいと思います。
  10. 國宗榮

    國宗政府委員 お答えいたします。大体御質問通りと、私も考えておりますが、御指摘になりました例によります場合におきましては、多くの場合正当の理由というふうにして、当然一号に該当しない場合と存ずるのでありますけれども、かりに正当行為として見られない場合におきましても、さよう社会政策欠陷から犯罪が発生したという場合を予想いたしまして、さような場合には二條規定を十分に活用したいと考えております。
  11. 石川金次郎

    石川委員 ただいまお聽きしまして、この立法の趣旨がわかつたのでありますが、そういたしますと、第二條の範囲がそのときにおける社会的な、客観的な事情というものは十分にくむ。そのほかになおその人の主観的事情をくむ。そうして社会政策でやれなかつたという事情考えて、この免訴というものは決定すべきものであるのだ、こういうようにお考えになつておりますかどうか、さらに明確にしていただきたいと存じます。これは運用上非常に大切なことだと存じます。
  12. 國宗榮

    國宗政府委員 大体そのよう考えております。客観的な事情によりまして、社会政策上の欠陷を補い、さらに本人の主観的な事情も考慮いたしまして、本号に触れるよう行為があつた場合、刑を免除して十分この法律運用してまいりたいと考えております。
  13. 石川金次郎

    石川委員 二、三各号についてお伺いいたします。各号の中には、「言動で迷惑をかけた者」という文字が使つてあります。たとえば五号の最後の方に「著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑荘かけた者」という文字を使つておりますが、言動と申しますからは、人間の言葉、働きとまず見なければならぬと思います。言動で迷惑をかけるということは、どういうことでありましようか。たとえば汽車に乘つてつた人たちが不愉快を感じたということでありましようか。あるいはそこを去れ去れと言つて去らしめたというようなことでありましようか。言動で迷惑をかけたということの意味を、立法府として明らかにいたしませんと、こういう不明確な言葉が、いろいろ見る人によつて、この場合も言動で迷惑をかけた、あの場合も言動で迷惑をかけたということで、これを行使する機関も大した迷惑でしようし、國民もまたたいへん迷惑するだろうと思いますので、お伺いしておきます。
  14. 國宗榮

    國宗政府委員 「著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者」とありまして、言動は御承知通り言語挙動を言うのでありまして、一般から見て放つておけないというよう程度のことを「著しく」申します。著しくしつけの悪い礼儀を失したのが粗野であります。乱暴はと申しますと、多少挙動等において形の上に現われてくるものではないかと思つておりますが、著しく粗野又は乱暴な言葉あるいは挙動等で、その場にある入場者等が、その場合におきましては、そういう行動をされることが、その場にふさわしくない、非常に礼を失しておる、秩序を乱しておる、またその入場者が非常にいやな感じをもつた、こういう結果を生じた場合に迷惑をかけたということになると思つております。
  15. 石川金次郎

    石川委員 八号についてお聽きいたします。八号に「公務員若しくはこれを援助する者の指示に從うことを拒み」と書いてございますが、「公務員若しくはこれを援助とする者」というのは、法律上の権限によつて援助する者をいうのか、あるいはその場において公務員援助することを契約した契約関係から発生していくものをいうか、援助せんとする主観的意思をもつて援助していく、そういう者を援助する者というのか。この援助者意味を明らかにしておきませんと、とてつもないひどいことになりはせぬかと思いますので、お伺いいたします。
  16. 國宗榮

    國宗政府委員 この「援助する者」と申しますのは、もちろんただいま御指摘になりました法令に基きまして、公務員援助する者は、もちろん包含するのでありますが、さらにその場におきまして、権限ある公務員からその権限に基いて援助を頼まれた者ということであります。從いまして、その関係からみますと、非常に廣いのでありまして、單に法律あるいは契約のみならず、その場におきまして権限ある公務員から、権限によつて援助を頼まれた者を包含するのであります。ただしかし主観的に公務員と無関係にその場でもつて事実上みづから援助している者は、この中に包含しないのであります。つまり法律または契約に基きましてこれを援助する者はもちろん、また契約ではありませんけれども権限のある公務員からやつてくれと言われて援助しておる者、ただしかしみずからこれに無関係援助している者はいらない。こういう趣旨になつております。
  17. 石川金次郎

    石川委員 続けてお伺いしますが、これもきわめて明瞭なことでありますが、この軽犯罪法一條の各号に書いてある規定の中には、公務員という字を使つておりますが、この公務員という字は、その各号々々によつて公務員概念を定めていかなければならないと存じますが、そういう御趣旨でこれをおつくりになつたかどうかをお聽きしておきたいのであります。たとえば普通公務員と申しますと、刑法を思い出します。刑法で與えた概念をこの公務員にもつてくるのであります。これをもつてまいりますと当りません。そこでこの読み方をかえなければならぬということになるのでありますが、たとえば八号の中にあります公務員と、十四号の中にあります公務員と、その他まだあります公務員というものは、読み方が違つてきやしないか、十六号にあります公務員、それから十八号にあります公務員、こういうものの公務員概念は、この場合は警察官、この場合は警察官以外のものも含む、こういうふうに読むべきものかどうか、これをお聽きしておきたいのであります。
  18. 國宗榮

    國宗政府委員 この軽犯罪法書きました公務員は、いわゆる刑法でいいます公務員という一般的な廣い意味ではないのでありまして、各條ごとにその当つております当該公務員、抽象的に申しますと、当該公務員ということになるわけでありまして、八号の場合におきましては、この取締りまたは救護の権限をもつておるところの公務員、從いまして警察官とかあるいは市町村吏員あるいは民生委員というものがはいつてくるのではないかと思います。それから十四号の公務員、この場合はやはり当該公務員でありまして、この公務員は大体警察官がはいつてくるのではないかというふうに考えておりますし、さらに御指摘になりました十八号の公務員、この公務員はやはり警察官あるいは民生委員市町村吏員というものがはいつてまいります。それから十六号にも公務員とありますが、この場合におきましても、虚構の犯罪の申告を受けるものは、おおむね警察官であります。災害の事実につきましては、警察官もありますし、市町村吏員もあると思います。かように各條によりまして、当該公務員としての限界があるのであります。一般的に刑法でいいますところの公務員というとは違うようにできておる次第であります。
  19. 石川金次郎

    石川委員 ところでこの軽犯罪法が、やはり刑法総則適用を受けますならば、この場合におきまして、明らかにみんなに教え示しておきますためには、当該公務員というふうにお書きなつた方が、みんなにわかりよかつたと存じますが、何かそういかなかつた理由がございますか。
  20. 國宗榮

    國宗政府委員 別にさよう理由はございません。
  21. 石川金次郎

    石川委員 それからもう一つ、十四号について特にお聽きしたいのでありますが、警察官犯処罰令は、大体において私ども労働組合運動に対しては適用なきかのごとく解しておるのであります。またそう仰せをいただいておるのであります。ところでこの十四号に大きな人声で、つまり公務員の制止をきかずに人声を非常に大きく出してと、こう書いてございますが、たとえばデモなどいたしますときに、これはどうしても歌を歌いますと大きな声の出るのは当然だと思います。この場合においては、おそらく労働運動もしくは政治運動のために正当の示威運動がなされるという場合における大きく出した人声、こういうものは、この十四号に該当しないものであると存じますが、該当しない御趣旨で御立案になつたのか、それは正当な行為として該当すべきものでないという刑法上のお取扱いになるという御趣旨でありますが、この点を私はお聽きしておきたい。労働運動もしくは政治運動等の正当なものによるところの大声を出してデモをやつて歩くという場合には、この十四号は発動しないのであるという御趣旨であるかどうかをお伺いしておきたいと思います。
  22. 國宗榮

    國宗政府委員 御質問の場合におきましては、大体この軽犯罪法全体から申しまして、これは労働運動、あるいは大衆運動を取締るために立案いたしたものではないのでございまして、日常の卑近な道徳律に関するものを取上げまして、これを取締りまして、社会秩序を維持するという考えからできておるものでございます。御承知通り組合運動につきましては、もう当然に、組合法一條の二項がございますると同じように、それによりまして、大体この軽犯罪法というものは適用はないものと私は思つております。それから大衆運動と申しまするが、その中には——大衆運動概念も多少はつきりいたしませんが、たとえば正当な政治行動示威運動というものにつきましては、刑法上の考えから申しまして、それは明らかに正当行為と見なければならないのでありまして、軽犯罪法適用は、その限りにおいてないものと考えております。
  23. 石川金次郎

    石川委員 非常に明らかになつてまいりました。  そこで二十八号に飛びます。この條文從來もありました條文でありまして、実は私自身この間ぶつかつたことを申し上げますが、他人進路に立ちふさがつたり、あるいは身辺に群がつた、こういうことで、暴行で起訴された事実がある。そこでこの二十八号は労働組合団体交渉等をいたします場合に、どうしても起き上つてこなければならない事態に直面することがあるのであります。たとえば使用者側が故意に団体交渉に應ぜず、立ち去つてしまう。こういう場合におきましては、団体交渉を進めなければ生産が止つてしまう。そこでこれを進めるためにどうしても待つてもらわなければなりませんために、片つ方は勝手に去ろうとするのであるから、お待ちくださいと言つて押えるのは当然であります。そこでひつかかつてくるのはこの二十八号の「他人進路に立ちふさがつて、」ということであります。この二十八号は正しい正当な労働組合運動をもこのために阻害する。少くとも労働運動に悪意をもつて一つ行動を押えておるのではないかというよう誤解を起さないとも限りません。そこでこの二十八号は断じて労働組合団体交渉等の場合には適用しないということの御言明を伺えれば結構だと存じます。
  24. 國宗榮

    國宗政府委員 団結権並びに団体交渉につきましては、基本的人権として憲法にも規定しておるところでありまするし、さらに組合法におきましては、それが唯一の組合目的になつておるのでありまして、もちろんこの二十八号は、さような場合には適用する考えは全然ないのであります。殊に警察犯処罰令におきまして強談威迫という條項がございましたが、この軽犯罪趣旨から考えまして、少くとも組合運動というものに適用あるという誤解を受けるものを除く意味におきまして除きました趣旨から言いましても、この二十八号はさようではないのでありまして、実際はこれは不良な者が女を追随するとか、あるいは不良が善良な者の行く手に立ちふさがつてじやまをするとかいうようなことを目的にして規定したものでございます。さように御了承願います。
  25. 石川金次郎

    石川委員 二十七にちよつともどりまして、私も無識でありますからお伺いするのでありますが、公共利益——昨日問題になつたのでありますが、利益という言葉をここにお使いになりました。そこでこの公共利益とお書きなつたことに対しては、深い意味がなかつたことも、昨日了承いたしました。ところで公共利益という文字を御使用になります場合には、公共福祉ということも相対してお考えなつたと存ずるのでありますが、公共福祉という言葉を用いずに公共利益という言葉をお用いになりました理由、これは立案者といたされまして、公共福祉公共利益との観念が、どの程度において相違しておるものか、それをお伺いいたしたいと思います。
  26. 國宗榮

    國宗政府委員 実は立案の際に公共福祉ということを初めに考えたのでありますが、公列福祉というのは、憲法に用いてある用語でありまして、軽犯罪法に用いてくるのは非常に重々しくなり、あまりに重大なような重い意味が加わるのではないかと思いまして、まつた公共福祉と同じ意味使つたのでありますが、やさしくする意味におきまして、公共利益というふうにいたしたのでありますが、かえつてそれがわかりにくくなりました点は恐縮に存ずる次第であります。
  27. 石川金次郎

    石川委員 三十一にかえりまして、「他人業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」、これも警察犯処罰令にあつた規定だと存じます。これは刑法業務に対する罪には、偽計という言葉が使つてあります。これもいたずらであることは明らかなのでありますが、この場合その区別の線をできるだけ明らかにいたしまして、そうして軽犯罪法で取締ろうといたします線を明確にしていただきたいと思つております。
  28. 國宗榮

    國宗政府委員 刑法の二百三十四條に申しますところの偽計というのは、悪戯に比べまして複雜巧妙なものを指す。本号悪戯は、やはり一種の偽計を用いるにいたしましても、偽計に比べますと、はるかに單純素朴なものを指しておる。しかもそのやること自体いたずら自体を樂しむというのでありまして、業務の妨害を樂しむというよりは、むしろいたずら自体を樂しむというところに重点があるよう考えております。悪戯という字から申しましても、大体子供らしいことでもつて、仕事の円滑な運用が多少阻害されるという場合を言つておるのであります。偽計よりは非常に軽いのであります。その点におきまして、刑法の二百三十四條とは区別し得ると考えております。例を申しますると、たとえず役者が舞台に出る前に非常な嚴粛なかつこうをして出てくるときに、背中に貼紙をしてあるのに知らずに出ていつたのを手を叩いて喜ぶとか、また講演をする人が演壇でまじめに講演をしておるときに、こしようぐらいを少し附近にまきましてくしやみでもさせるというようなことも、悪戯という観念考えておるのでありまして、それによつて多少の業務の正常な運行が阻害されるということを考えております。
  29. 石川金次郎

    石川委員 最後にお伺いしたいのは、提案理由説明にもお書きになつて明らかにされておりますが、軽犯罪法と本法を名づけました理由については、提案説明書でわかるのでありますが、さらに軽犯罪法という名前をつけます前に、どのよう名前が現わせてまいりましたかをお伺いしたいのであります。また軽犯罪法といたしましたのは、國民に親しみやすい、こうおつしやつておるのでありますが、私はよく知りませんが、外國言葉軽犯罪と訳しますことが一番いい言葉であつたから、日本もこれをとつたということになりましようが、それをお聽きしておきたいのであります。
  30. 國宗榮

    國宗政府委員 名前につきましては、非常に議論もありまして、実は警察犯処罰法違警罪法というよう名前も出てまいりました。軽罪法という名前も出てまいりました。さらに小犯罪法というよう名前も出てまいりました。この小犯罪法というのが出てまいりましたのは、アメリカあたりのマイナー・オフエンスというのがございますので、そこから小犯罪法と直訳をいたして、最初は大体小犯罪法でいこうということになつておりましたが、どうも小犯罪法と言いますと、あまりおもしろくない。しからば軽罪法といたしますと、從來からあります軽罪の観念から、これもおもしろくない。警察犯処罰法、あるいは違警罪法といたしますと、実はよくわかるのでありますが、警察犯処罰法というのは、警察犯処罰令を廃止いたしますので、警察という文字がありますために、これはいかにも警察がこれによつて警察的権限を振うというよう考えられる心配もありますので、これもおもしろくない。違警罪法は、最初に申し上げました通りに、どうもやはり古い警察観念とつながりがあるよう考えられるかもしれない。最上の名前とは申せませんけれども、私ども考えまして、大体マイナー・オフエンスに似通つてつていいのではないかというので、軽犯罪法といたしたのであります。
  31. 石川金次郎

    石川委員 私はこれで終りますが、軽犯罪法と言いますと、何となく重犯罪法も出てくるような氣がいたしますので、お聽きしたのであります。私はこれで終ります。
  32. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この三十四号は物を販賣し、もしくは頒布し、提供となつておるが、よくある廣告によつて結婚詐欺をやつた場合は、これにはいらないのですか。
  33. 國宗榮

    國宗政府委員 詐欺になりますれば、それは刑法上の詐欺になるのでありますけれども、しかし刑法上の詐欺にならない程度に、不特定の人に対しまして、ここにあります販賣とか頒布との役務提供とかになれば、これにあたるのでありますが、結婚の申入れをするような場合におきましては、別に役務提供するわけでもございませんし、物を販賣するわけでもございませんし、頒布するわけでもないのですから、その場合は單に誇大な廣告というだけで、ただちに本條にあたるということにはならないと存じております。
  34. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そこでお伺いしたのですが、詐欺罪になるということがありますけれども詐欺罪は財物を伴わなければならないのですが、それとはちよつと違うと思うが、よくあるのです。そういうものを入れた方がいいじやないかと思いますがいかがでしようか。詐欺罪にならないで、しかもこれにもはまらないというものがある。
  35. 國宗榮

    國宗政府委員 その点はこの軽犯罪法には入れていなかつたのでありますけれども、あるいは入れた方がいいという御意見もあろうかと思います。
  36. 鍛冶良作

    鍛冶委員 いま一つ、第二條ですか、これは刑法第六十六條と同じよう趣旨じやないかと思うのですが、特に本法にこれを記入せられたる理由を伺いたいと思います。
  37. 國宗榮

    國宗政府委員 ちよつと御質問趣旨がよくわかりませんですが、六十六條は刑を減刑するという場合でありまして、二條の場合は、刑を免除するという場合なんでございます。もちろん犯罪の情状酌量すべき場合として、この免除規定を設けたのでありますから、六十六條の規定に該当するとは思いますけれども、こちらは免除にいたしましたので、その点多少食い違いがあると存ずるのであります。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員 よろしゆうございます。
  39. 松永義雄

    松永委員長 井伊君。
  40. 井伊誠一

    ○井伊委員 二、三お伺いしたいと思います。第一條第二号の「正当な理由がなくて刄物、鉄棒」というこの刄物でありますが、これを隠して携帶した場合に処罰を受けるのでありますが、現行の銃砲等所持禁止令との関係はどういう関係になりますか。
  41. 國宗榮

    國宗政府委員 現在の銃砲等所持禁止令、あるいはまだ銃砲火藥類取締法、これに基く府縣令というものがありますが、そういうものにあたる場合は、これらの法令が適用されまして、二号は適用されない。從いまして、そういうものに該当しないもの、たとえば銃砲等所持禁止令にありまするのは、一定の制限が附せられておりますが、制限外の刄物、あるいは銃砲類、あるいは刄渡り十五センチ以上の物を銃砲等所持禁止令では大体禁止しておりますが、そういうものは、ここにははいつてこない。それ以外の刄物ということを、ここで取締つていくということを規定しておるわけであります。
  42. 井伊誠一

    ○井伊委員 それから隠して携帶しているということは、單に携行しているということだけではなくして、何か所持しているというところまで含まれる意味になりましようか。
  43. 國宗榮

    國宗政府委員 隠して携帶するという隠してというのは、所持ではないのでありまして、隠してと書いたのは、大体一般の社会生活上接触する人たちから見えないようにもつている、その日常の視界から隠されているというふうな状態で携帶している場合をいうのでありまして、所持までは拡めていないわけであります。
  44. 井伊誠一

    ○井伊委員 この刄物、鉄棒、そういう例示が出ておるのでありますが、鉄棒、刄物というような物を隠して携帶しておれば、正当な理由があるものの例になりそうに思うのでありますが、例示されました鉄棒というものは、現在の状況において、あまり例示としてどうかと思うのでありますが、実際の社会においては、こういう例がむしろ適当なほど、こういう物をもつて生命やら身体に害を加える事例があつて出されたものであるか、むしろ棍棒というようなものが用いられるのでないかと思うのでありますが、どうでしよう
  45. 國宗榮

    國宗政府委員 ここに刄物、鉄棒とあげましたのは、鉄棒等が通常の場合において、人の生命を害するに一番適切な器具ではないか、かよう考えましたので、ここに鉄棒としてあげたのでありますが、それ以外に深い意味はないと思います。
  46. 井伊誠一

    ○井伊委員 第四号のところに「一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」とあるが、これは過去の文字を使つてあるようでありますが、うろつくものでなくて、うろついたものとしたのはどういうことでありますか。これはむしろつかまえたときは、うろついたのでありますが、それからなお継続しておるという事実について処罪をするのでないかと思うのでありますが、これはどうでありましようか。
  47. 國宗榮

    國宗政府委員 これは別に過去とかそういうことに限つたことではないのであります。ただしかしながら、本法の軽犯罪法の表現の方式では、全部過去の形で表現してありまして、大体裁判のときを標準にした意味で少くともつくつてありますから、この点につきましては、刑法も大体そういうような形をとつております。そんな意味で、うろついたものと過去の形に書いてあります。
  48. 井伊誠一

    ○井伊委員 第六号のところで、燈火を消した者に対する規定であります。これはどういう場合を多く考えられたものであるか、たとえば電熱器等をつけまして、他人の家庭の燈火を消すというような場合、こういうような場合は、やはりこれにあたるものと考えるのでありますが、いかがでありましよう
  49. 國宗榮

    國宗政府委員 その場合も多くの場合は、街路あるいは他人の標燈等を消してやろうと思つて消す場合は少なかろうと思います。そういう場合は故意ではありませんから、本法にあたりません。しかしながら、家の電熱器を非常に強く使つて消してやろうという故意があれば、本法に該当すると思います。
  50. 井伊誠一

    ○井伊委員 この軽犯罪法の場合は、必ず他人を害するというような意識があるなしにかかわらず、一般的に見て社会生活に害のある点を処罰するものと考えるのでありますから、今の電熱器使用のために場合、そうすると他に害を及ぼす、消してやろうというような積極的な意思がなければ、その場合には適用してない。ただ自分の家の操作をやつた際にまつわる盗電というような場合に、ひいて他に及ぼすというような場合でも、他の方を消してやろうという意思がない場合には適用しない。そういうようなお答えのように聞えるのでありますが、確かにそうでありましようか。
  51. 國宗榮

    國宗政府委員 先ほど申し上げましたのは、多少言葉が足りませんでしたけれども、やはり軽犯罪法の全般にわたりまして、犯罪行為を必要とするのであります。害を及ぼすというような積極的な意思は要りませんけれども、しかし認識だけは必要なのであります。從いまして、うちの電熱器を強く使えば、隣りの標燈が消えるということを認識してやつた場合には、やはり本法に該当する。こういうふうになります。
  52. 井伊誠一

    ○井伊委員 この六号の実際適用される例としましては、他人の標燈とか、あるいは街燈とかいうものの電燈の球などを盗むとか、あるいは悪意でもつて石をぶつつけて壞すとか、あるいは棒でもつて打ちたたくというようなとで、その設備自体を壞して消燈せしめるような場合が、予想されておるのではないかと思うのであります。しかしこれは私の想像だけなのでありますが、かかる場合は、他に器具の毀棄罪であるとか、窃盗罪であるとかいうものがむしろ出てくるのであつて、ここでは單に消燈したということだけで取締るもののようでありますが、実際としてはどういうような場合が起きるのでありましようか。
  53. 國宗榮

    國宗政府委員 多くの場合、ただいま御指摘になりました例が多いと存ずるのでありますが、そういう場合には、窃盗あるいは器物毀棄とか、そういうものによつて取締りがされるものと思うのであります。そうでない場合、たとえば單にそこにあるスイツチを消すとか、あるいはこれは道路取締法にあるかもしれませんが、たとえば道路等にありますところの普通の電燈でなくして、油でたいているとかいうようなものを消すというようなことも考えられるのであります。こういう燈火を消したというようなことが、ほかの法令によつて取締れるものはそれによる。それ以外のものをここでやつていこう。こういうよう考えております。
  54. 井伊誠一

    ○井伊委員 第八号のところで、石川君が御質問になりましたところとちよつと違うのでありますが、「援助する者の指示に從うことを拒み」とあります。これは積極的に拒絶したものと解釈するのであるが、さようでありましようか。
  55. 國宗榮

    國宗政府委員 積極的に拒む場合もありまするし、もしくは指示の條件等もありますが、そういうものに從うことを拒む。こういうふうに解釈しております。しかし御趣旨ように積極的に拒む場合もあります。
  56. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、指示に從わずという場合にも、そういう範囲までもこれの適用があるのでありましようか。
  57. 井伊誠一

    ○井伊委員 そうすると、指示に從わずという場合にも、そういう範囲までもこれの適用があるのでありましようか。
  58. 國宗榮

    國宗政府委員 さように考へております。
  59. 井伊誠一

    ○井伊委員 そのあとの方の「又は公務員から援助を求められた」場合、これに應じなかつた、これは「拒み」とは書いてなく「應じなかつた」と、消極的に書いてありますが、先の方の場合に指示を拒みというような字を使い、これは積極的な文字だと私は解しておるのであります。あとの方は消極的な「應じなかつた」という文字を使つておるのでありまして、これはこういう場合は「拒み」とすべきであるのを、特にそうこだわらずに「應じ」なかつたとせられたのであるか。あるいはやはり特にこう書くべき必要があつて表現されたのであるか、その点を伺いたい。
  60. 國宗榮

    國宗政府委員 御指摘通りに、初めの方は「拒み」、終りの方は「應じなかつた」といたしまして、初めの方は積極を現わし、終りの方は消極を現わす。こういう体裁にしておりますが、本号全体といたしましては、消極あるいは積極の両方を示しておる。こういう建前で拒み、應じなかつたというふうに書きわけた次第であります。
  61. 井伊誠一

    ○井伊委員 もう一つ、これは十一でありますが、「他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ、注ぎ、又は発射した者」この物を注ぐというような実際の場合、あるいは発射するというような事柄は、どういう場合を想像しておられるのでありましようか。
  62. 國宗榮

    國宗政府委員 物を注ぐというのは、たとえば熱湯あるいは汚水等を注ぐ場合を考えております。発射すると申しまのは、これは固形物を器具でもつて放つことでありますから、子供のパチンコであるというようなもの、あるいは子供の鉄砲の相当力の強いもの、おもちやのようなものを発射するというようなものを考えております。
  63. 井伊誠一

    ○井伊委員 これらの投げたり、注いだり、あるいは発射するということによつて、直接他人の身体あるいは物件に害を及ぼすという場合はすぐわかりますが、これがそれらの行為によつて間接的に害が及んでいるというような場合も、やはりこういう適用があるのでありましようか。これは「相当の注意をしないで」という注意の範囲がどこまでかということに関係するのでありますが、それはどうでございましようか。
  64. 國宗榮

    國宗政府委員 直接害を及ぼした場合には、大体それぞれの刑法によつて罰するのでありますが、直接害の及ぶような危險のある場合を本号規定をしておるのであります。間接というお話でございましたが、それは間接に害が及ぶよう行為がこれにあたるかどうかという点が、相当事実の問題といたしまして問題がある場合があるのであります。たとえば多量にバナナの皮を投げておいて、そこで人が滑つて轉んで、けがのもとになつたというのは、見ようによりますと、間接でありまするけれども、しかしそれもそういうような状態を発生せしめる場合におきましては、本号に該当する。大体本号でねらつておりますのは、直接に被害が発生ずるおそれがあるものをねらつて立法いたしたのであります。
  65. 井伊誠一

    ○井伊委員 私の質疑は終りました。
  66. 石川金次郎

    石川委員 二十九号であります。これが私たち非常にわかりにくかつたと思いますが、この二十九号の意味をお知らせ願いたいと思います。
  67. 國宗榮

    國宗政府委員 「他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者とありまして、人の身体に害を加えようとお互に相談いたしまして、それらの者のうちの一人あるいは二人かが、その相談した事実に基きまして、その相談した行為を実現するためのある予備行動に出た、こういう場合におきましては、一人がやつても、最初に相談いたしました全部の物を処罰する。こういう規定なのであります。例をもつて申し上げますると、あの場所を通行する者に対して、五人で共謀して、ひとつ今度通つてきた最初のやつに対して棍棒で毆つてやろうじやないか、こういう相談をいたしまして、そうして相談しただけではだめなのでありますが、そのうちのだれかが、毆るために棍棒を用意した、こういう事実がありますと、毆らなくとも最初の五名全体が本号違反になる、こういう規定なのであります。
  68. 石川金次郎

    石川委員 棍棒を用意したということだけではどれに該当をいたしますか。これは隠して持つて歩いたということに該当することになりませんか。
  69. 國宗榮

    國宗政府委員 棍棒で毆ろうということを共謀いたしまして、その棍棒をだれかが用意すれば、本号に全部かかる、そういう規定なのであります。これをもう少し申し上げますると、殺人罪につきましては予備の規定刑法にありますが、傷害罪についてはないわけであります。これは傷害の予備行為で、傷害の予備行為を共謀者の一人がやつたという場合にこれに当る、こういう規定なのであります。
  70. 石川金次郎

    石川委員 ところで、その予備行為に参加しなかつた者は、傷害事実に対してはやろうとしたのでありますから、意思がありますが、予備行為には全然意思がなかつた場合にも罰するということになりますね。
  71. 國宗榮

    國宗政府委員 そうであります。
  72. 石川金次郎

    石川委員 そうなりますと、この場合予備行為そのものに何の認識もなかつたにもかかわらず罰するという理論は、どこから出てくるのでありますか
  73. 國宗榮

    國宗政府委員 別に深い理論はございませぬけれども、多人数で傷害をやろうという、これも予備行為と言えば言えるようになるのでありますけれども、協議した場合におきまして、それがある程度行為まで出た場合には、そのうち一人がやつてもこれを罰するという趣旨でありますから、大勢協議してやる場合においては、謀議したこと自体が非常に社会上危險性があるのではないかという点を考えまして、本号規定を設けたわけであります。しかしそれは單なる話合いだけではまだ刑罰をもつて臨むのは酷ではないか。何かそこにひとつ具体的な行動がそのうちの一人において始まつたという、その程度まできたら刑罰をもつて臨もう、こういう考え方でできた條文であります。
  74. 石川金次郎

    石川委員 わかりました。
  75. 鍛冶良作

    鍛冶委員 ちよつと、私はまだわからぬが、きのうもちよつと聽いたのですけれども、これは防犯の意味でやられたものと思いまするが、要するに予備行為の幇助者として罰することになると思いまするが、もしそうだとすれば、予備行為であるということの認識がなくて罰せられるかどうかという問題が起るのですが、認識がなくても、やはり罰するのですか。その点をまず伺いたい。
  76. 國宗榮

    國宗政府委員 刑法上の理論を申しますると、二十九号は非常にむつかしい問題が起つてくると思うのであります。殺人の共謀の場合でありますると、刑法の共同正犯の規定によりまして、そのうちの一人が予備行為をしても、みな予備の共犯となるのでありまして、本号もさような点から同樣に考えていたした次第であります。
  77. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の主として聽こうとするのは、予備行為たることの認識がなくても罰するのか、この点です。
  78. 國宗榮

    國宗政府委員 この場合におきまして、單なる予備の幇助とは言えないのでありまして、共謀をすることが、これが陰謀予備の点にかかつてくるのでありまして、お互いにやはりやるという認識があるのであります。單に予備行為に対しての幇助という考え方ではない、かよう考えておるのであります。従いまして、予備行為についての幇助であるから、その認識がなければ、その点についての処罰はできないのではないかというような、そういう解釈には私の方ではなつてこないと考えております。
  79. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうもわからぬ。
  80. 國宗榮

    國宗政府委員 大体実行行為につきまして共謀があるのでありますから、予備の認識を特に論ずる必要はないのではないか、かように思つておるのであります。
  81. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは予備の認識があれば、刑法第二百一條に当然はまらなければならぬと思う。あの予備をなしたる者は二年以下の懲役に処するなつておりまして、予備をなした者も共犯でありますから、当然これにはいる。それ以外だから、私は認識がなくてもということかどうかをお聽きしたいのです。
  82. 國宗榮

    國宗政府委員 それは御質問通り、二百一條の場合は、殺人の予備でありまして、本号は殺人の予備を含んでいないのであります。他人の身体に対して害を加えることを共謀したというのでありまして、まず傷害の共謀であります。殺人の予備の場合は、ここに包含し得ない趣旨規定してあるのであります。
  83. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大分わかつてきましたが、そうすると傷害罪の予備の共犯者、こう解釈してよろしいわけですね。從つてそれは傷害の予備であるということの認識を必要とすると解釈していいのですか。
  84. 國宗榮

    國宗政府委員 もう一度ひとつ…。
  85. 鍛冶良作

    鍛冶委員 傷害の予備の共犯者でということに限定する、しからば傷害の予備をするものだという認識がなければいかぬと私は思うが、その点はいかがですか。
  86. 國宗榮

    國宗政府委員 先ほどちよつと問違いましたけれども、傷害の予備の共犯者という意味ではないのでございます。傷害の実行の共謀なのでございます。
  87. 松永義雄

    松永委員長 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止〕
  88. 松永義雄

    松永委員長 本日はこれにて散会します。     午後零時十三分散会