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1948-03-24 第2回国会 衆議院 司法委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年三月二十四日(水曜日)     午前十一時十一分開議  出席委員    委員長 松永 義雄君    理事 石川金次郎君 理事 荊木 一久君    理事 鍛冶 良作君       井伊 誠一君    池谷 信一君       石井 繁丸君    中村 俊夫君       中村 又一君    八並 達雄君       山下 春江君    吉田  安君       佐瀬 昌三君  出席政府委員         法務廳事務官  國宗  榮君  委員外出席者         参議院議員   伊藤  修君         專門調査員   村  教三君         專門調査員   小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  軽犯罪法案内閣提出)(第一三号)  人身保護法案参議院送付)(予第四号)     —————————————
  2. 松永義雄

    松永委員長 会議を開きます。  前会に引続き軽犯罪法案審査を進めます。鍛冶良作君。
  3. 鍛冶良作

    鍛冶委員 九号並びに十号及び十一号に「相当注意をしないで、」ということがありますが、この意味は非常にわかりにくいので、具体的にどういうことを指しておられるのか、説明をまず承りたいと思います。
  4. 國宗榮

    國宗政府委員 「相当注意をしない」と申しますと、これは一般的に申しまして、当該場合におきまして、通常人として拂わるべき当然の注意をしない、抽象的な言葉で申しますと、さようになるのでありまして、通常過失罪に必要な程度注意というふうに了解いたしておる次第であります。
  5. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そのお言葉裁判のときはそれで非常によいと思うのだが、取締りそのものに対しては、ずいぶん問題になるので、一方では相当注意をしたつもりでおつても、片方ではそこまでは注意を欠いておるのだ、こういうことがままあり得ると思うのであります。第九号で「引火し易い物の附近で火氣を用いた」場合、たとえば自動車小屋でタバコをのむがごときは、そのときの取締りに当る者の專断に任せてやるということになると、ある一方では見逃しにするし、ある一方では嚴格にやられるという憂いなきにしもあらずと思うのであります。何かそこらにはつきりした見透しをつける方法はないか。
  6. 國宗榮

    國宗政府委員 お説の通りに、具体的の場合にあたりまして、具体的に相当注意をしたかどうかをきめなければならないのであります。ただいまの御質問のように、取締官考えによりまして、ある場合には非常にきびしく取締られる、ある場合には寛大である、見逃す、こういうような場合もやはり絶無とは言いがたいと存ずるのであります。しかし相当注意をしないでということは、取締官の主観に訴えるのではないのでありまして、やはり客観的に普通人としての相当注意をしたかどうかという点で判断をいたすのでありまして、個々の場合にあたつて、十分その点を妥当に考えていくより仕方がないと考えております。
  7. 鍛冶良作

    鍛冶委員 昨日言つた通り、これも結局取締官の常識の発達とでも申しましようか、教養ということになると思いますが、この点は具体的に御注意を願いたいものだと思います。  なお九、十いずれもですが、これは結果が現われたときにやるべきものなのか、それとも前もつて積極的にやるものでしようか。これは結果が現われないとほとんど問題にならないと思うが、結果が現われたときにやるというのであれば、問題はないと思うけれども、前もつて積極的にやることになると、なおさらですが、その点はいかがでしようか。
  8. 國宗榮

    國宗政府委員 その場合は、いずれも結果の発生を必要としないのであります。もし結果が発生しますと、場合によると過失出火罪あるいは過失傷害罪というような刑法上の犯罪が出てくる場合が多かろうと思いますので、結果の発生を必要としていないのであります。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それならば一層先ほど言つたような弊害のないように、当局において御注意あらんことを希望しておきます。  次に十三号に移りまして、「公共場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して」とありますが、これはどうも五号と重複するように思いますが、どこか違うところがあるのでしようか。
  10. 國宗榮

    國宗政府委員 この十三号のただいま御指摘になりました前段におきましては、五号と重複する場合があるのでございます。五号の方におきましては、入場者というふうに限定してありまして、会堂であるとか、あるいは娯樂場にいたしましても、運動競技場というように、場所的に何か区画があるのでありまして、そのうちの入場者に対するという制限があるが、十三号の場合におきましては、そういう制限がございません。それからさらに対象といたしまして、十三号の場合は、「多数の人に対して」ということがございますが、五号の場合は「入場者に対して、」とありまして、五号の場合におきましては、入場者一人に対しても、やはり適用があるが、十三号の場合におきましては、多数の人とあつて、少くとも二人以上の者に対しての行為でなくてはならない。こういう点の相違があるのでございますが、実態におきましては、重複する場合があるのであります。その場合に五号と十三号との関係におきましては、五号にあたる場合は、五号の方が十三号の特別な規定になつておると考えておる次第であります。
  11. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは前の警察犯処罰令では、雜踏の場所と書いてあつたのですが、それが公共場所なつたものだから、前と重複するように思うのですが、今の御説明から言えば、かえつて先の方がいいように思うのですが、ここでいう「公共場所」とはどういうものを指しているのですか。
  12. 國宗榮

    國宗政府委員 これは公衆一般に利用し得る場所のことで、たとえば公園とか停車場のようなものを指しているわけであります。
  13. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうもこういう法律は、いわゆる常識的な法律なんだから、政府委員の註釈をまたなくちやわからぬようなことでなく、もつと常識的にわかりやすいものに直していただきたいと思うのです。実際前の方には「公共会堂」というようなことが書いてあり、ここにきてまた「公共場所」というように、違うといつて一般には違うように思われないのですが、もう少し御考慮を煩わしたいと思います。  それからその後段は非常にわかりにくい文章で、「又は威勢を示して」云々とか、「切符を買い、若しくは割当物資の配給に関する証票を得るために待つている公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者」となつているが、「威勢を示して」というのが全般にかかつていると思われるのですが、威勢を示さないで割りこんだら差支えないのですか。
  14. 國宗榮

    國宗政府委員 これは御指摘のように、非常にわかりにくいものでありまして、「威勢を示して」にかかるわけです。「威勢を示して——公衆の列に割り込み、若しくはその列を乱した者」、そこへかかつてくるわけであります。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、威勢を示さないで割りこんでいけば差支えないのですか。
  16. 國宗榮

    國宗政府委員 威勢を示さないで割りこむ場合は、割りこむという観念ではなくして、その列にはいつている列の者が暗黙に承諾するか、あるいは明らかに承諾するという関係ではいるものだろうと思います。そこまでは取締らなくてもよかろうと考えております。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはしかしまじめに考えてもらいたいのです。入れてくれるのならばいいのでございますが、黙つてこつそりはいつていつたらいかぬのではないですか。要するにこういうことは、いいことか悪いことかしらぬが、殊にこういうおかしい時代になつて、列ということが一種の道徳になつている、それを乱すことがいかぬのではないですか、それを威勢を示さなければいいという、これは何か別にどこかへかかるものがここで全般にわたつてきたのではないかと思つて質問しておるのですが、実際これはわかりにくいです。われわれが今ここで吟味してやるようなことは、一般民衆ではできません。もう少し考えていただくわけにいきませんでしようか。それともあなたがおつしやつているように、威勢を示してというだけでつつぱられるか、この点をもう一度お聽きしておきたい。
  18. 國宗榮

    國宗政府委員 御質問もつともだと思うのでありますが、「列に割り込み」といたしましたのは、列をつくつておる者の同意がないのにその列にはいつていく、こういう観念であります。それから列を乱すというのは、順序を乱すとか、あるいは列に並んでおる者全体を壊してしまうという考えですが、そうする場合に、黙つてもぐりこむというのは、その間に同意が得られるんじやないかというようにも考えましたので、威勢を示すというのは非常に大きな威勢を示す場合もありましようし、何か害を加えるとか、あるいは迷惑をかけるような態度ではいつてくる、こういうようなことも、威勢を示しておるというふうな観念で、私ども了承しておるのでありますが、多少迷惑をかけるような態度で默つて割りこんでくるのは、やはりこの條文に触れてくる。從つてこの列に割りこむとか、列を乱すという場合には、やはり多少威勢を示したという状態の場合において考えた方が妥当じやないか。ただ單にもぐりこむというだけでは、少しどうかというふうに考えたわけでございます。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もつと裏から質問いたしますが、威勢を示してというのがなかつたらいかぬのですか。全然とつてしまつてもいいように思うのですが、なければいかぬという理由がどこかにありますか。それはみんな迷惑するでしよう。かりに承諾を得てやつたところが、一人の承諾を得ても、あとに残つておる者みなに迷惑がかかる。
  20. 國宗榮

    國宗政府委員 威勢を示してというのがなければどうかというお話でございますが、もちろんその程度まで列をつくつている者の順番を狂わすとか、あるいは列を乱す、こういうことは絶対にいけない、こういう観点からいたしますると、威勢を示してという特別な行為は別になくても結構だろうと思います。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それならばない方がいい。大体読んでむつかしくてかなわぬ。これはとくと御考慮をお願いします。  その次の十四号は「公務員制止をきかず」ということですが、これは総括質問でも申し上げたのですが、前はこんなことはなかつたのです。それを公務員制止をきかずということは、まつたく官僚万能法律ができたような感じがするのであります。なぜ「公務員制止をきかず」ということを入れなければならなかつたのか、その理由を承つておきたい。
  22. 國宗榮

    國宗政府委員 警察犯処罰令には、こういう制限はなかつたのでございますけれども、このたびこれを入れましたのは、公共靜穏を害する場合におきまして、処罰令の場合に、非常に廣い規定でありましたので、公務員がそういう大きな声を出してはならぬという制止を一應かけまして、それができかなかつた場合に、本法適用をするという建前にいたした次第でございまして、別に官僚万能という考え方でしたのではないのであります。大きな声を立てておれば、ただちに警察犯処罰令では、その法規に触れるという事情でありましたものを、ただ出しておるというだけでは、氣づかずに出しておる者もあります、それを一應少し声が大きいということを、権限がある者から注意をさして、それでもきかない場合に、本條に触れてくる、こういう意味合いにおいて「公務員制止をきかず」というのを附け加えたわけであります。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも合点がいきませんね。かりに大きな声を出して近所で迷惑だ、それでは困るから維そういうやかましいことをよしてくれと、近所の者が言つたときに、公務員でないのに、貴様なぜそういうことを言うかとい抗弁ができます。そういう場合は、どうもこの「公務員制止をきかず」としなければならぬ理由は、どこにもないと思います。これは一般に、どうも官吏が言わなくちや取締りができないのだというような観念を起す者が、非常にたくさんあると思う。從つてこの規定はどうもひどいと、確かに一般の人は言うと思います。そういうやかましいことは困るからよしてくれと言つたときに、どこに違反している。公務員制止のないのに、貴様何を言うのである、こうあべこべにやられる憂いなきにしもあらずと思います。その点いかがですか。
  24. 國宗榮

    國宗政府委員 たしかにお説のような場合があると思います。しかしこの法律建前といたしましては、そういう場合に、やはり迷惑をこうむつた方は、権限ある公務員にお告げくださつて、そしてそれから一應の注意をしていただき、それによつてなおきかない場合に、この本法規定の触れる、かように考えております。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはあまり固苦しくならないで、平つたく考えて、どうしてもなにかこれを入れておかなければならないという特別の理由があるのですか、その点聽いておきたい。
  26. 松永義雄

    松永委員長 速記を中止してください。     〔速記中止
  27. 松永義雄

    松永委員長 速記を始めてください。  この際予備審査のため、本委員会に付託せられております人身保護法案を議題とし、提案説明を願います。伊藤修君。     —————————————
  28. 伊藤修

    伊藤参議院司法委員長 人身保護法律は、米英法系に固有の法律であつて、われわれ日本國民には、いまだ経驗のないまつたく新しい法律であります。かような法律を立案して、ここに提案することになつて理由並びにその内容について、簡單に説明いたします。  日本國憲法は、民主主義憲法として、基本的人権尊重保護を、その中核といたしております。殊に人の身体の自由を保護することをきわめて重要視して、これに対する侵害を排除して、被害者を余すところなく救済することを目途として、第十三條、第三十一條、第三十三條及び第三十四條等規定を設けているのであります。新憲法の実施とともに、これらの規定趣旨を十分に発揮し得るような立法を必要とすることは申すまでもありません。殊に第三十四條後段には、「何人も正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、ただちに本人及びその弁護人の出席する公開法廷で示さなければならない。」と規定されておりまして、身体の自由すなわち人身保護方法を如実に指示しているのでありますから、この規定趣旨を実現し得るような法律を、速やかに制定しなければならないのであります。國会は唯一の立法機関として、政府提案をまたないで、かような憲法上の重要な法律を立案する責任を負うものと存ずるのであります。これがこの法律提案されることになつた根本的な理由であります。  現在において法律上正当の手続によらないで、不法身体の自由を奪われて、拘束されている者を、その不法拘束から現実に免れしめて、迅速に自由を回復されることは、刑事訴訟普通手続によつては、その適用の範囲と時間を要する等の関係から、とうてい所期の目的を達することができない場合があるのであります。殊に刑事事件とは関係なしに、國家公権力によらないで、私人又は私人団体の力によつて不法に自由を拘束された場合、たとえば精神病者であるとして、法規手続によらないで監置されたり、あるいは政爭関係選挙関係労働爭議関係などから、反対側の暴力または強制によつて、抑留もしくは拘禁されたりした場合等に、これら不法拘束現実に排除して、迅速に身体の自由を取りもどすために、適切な法律上の手段方法は欠けているのであります。人身尊重保護を特に重要視している新憲法のもとにおいては、とうてい放任しておくわれにはいかないのでありまして、このような事態に備えて、非常総外的な措置として、不法自由侵害に対して裁判所救済を求める途を拓く必要から、この法律の制定が要請されて、さきに司法法制審議会の議を経て、臨時法制調査会の答申された基本的人権保護法律要項試案を参酌して、立案の運びになつたのであります。  この法律は、刑事事件に関すると否と、また公権力によると、私人または私的団体の力によるとを問わず、法律上の正当の手続によらないで、いやしくも身体の自由が不法に奪われ、または制限された場合に、この現実自由侵害から被害者救済して、簡便かつ迅速に、その自由を取りもどすことを目的とするものでありまして、刑事訴訟法による手続以外に、急場を救う非常措置を講じたものであります。すなわちこの法律による救済手続は、刑事訴訟とは異なつて私人請求によつて裁判所の手で行われることが特色であります。  この身体自由侵害に対する救済を求める人身保護請求は、地方裁判所または高等裁判所管轄に属するものとし、身体の自由を拘束された者の親族、友人その他の関係者、何人にも請求権を與えたのでありますが、この請求の濫用を防ぐ趣旨から、原則として責任ある弁護士を代理人として請求し得るものとしたのであります。  まず手続の第一段としまして、この人身保護請求をなすには、書面または口頭をもつて請求趣旨及びその理由、殊に拘束している者、拘束場所が知れているときは、これを裁判所申立てることが要件でありまして、かつこの要件を疏明するに必要な人的または物的の徴憑ないし証拠裁判所に提供しなければならないのであります。もし右の請求要件または疏明を欠くときには、不適式なものとして、請求は却下されるのであります。なお右の請求を受けた裁判所は、申立てによつて、または職権をもつて、適当な他の管轄裁判所事件を移送することもできることになつて居ります。  第二段の手続として、右の請求を受けまたは移送を受けた裁判所は、請求が一應適式であると認めたときには、ただちに拘束者請求代理人、その他の関係者を呼出して、拘束法律上正当な手続によるか否か、その他拘束事由について、後日行う審問手続準備として調査するのであります。この準備調査の結果、請求理由がないことが明白となつたときには、裁判所は第三段の審問手続に移らないで、決定をもつて請求を棄却するのでありますが、この場合裁判所が必要を認めて、被拘束者に対して、かりに一時釈放の処分をしておるときには、被拘束者を出頭せしめて、拘束者の手に引渡すことになるのであります。しかし請求が一應理由あるものと認められその証明資料も整つているときには、裁判所はその自由裁量で、右の準備調査はこれを省略して、ただちに第三段の審問手続をすることにしてもよいのであります。  第三右の手続としては、裁判所が右の準備調査の結果、請求を棄却しないとき、または準備調査を省略すべきものとしたときに、裁判所において審問期日を定めて、請求者、その代理人、被拘束者及び拘束者を召喚するのでありますが、これと同時に、拘束者に対しては、被拘束者審議期日に出頭させることを命ずるとともに、右期日までに拘束日時場所及びその事由について、答弁書を提出することを命ずるのであります。この命令がすなわち人身保護法命令でありまして、この命令に服從しないときには、拘引、拘留または過料の制裁が課せられるのであります。  右の審問期日における取調は、被拘束者及び弁護人の出席する公開法廷で行われるのであつて裁判所請求趣旨、その理由拘束者答弁を聽いた上で、その証拠取調をするのであります。その結果請求理由なしとするときは、判決をもつて請求を棄却して、被拘束者拘束者の手に引渡すこととなり、また請求理由ありとするときは、判決をもつて、被拘束者をただちに釈放することになるのであります。  人身保護請求事件については、最高裁判所監督権を有する建前からして、右の下級裁判所判決に対しては、最高裁判所に上訴することができるのであります。また最高裁判所は、事件の性質または社会的影響等に鑑みて、特に必要あるものとするときには、下級裁判所に係属する事件が如何なる階段にあつても、これを引取つて下級裁判所のなした処分及び裁判を取消して、みずから自由に処理することができることになつております。  最高裁判所は、右のような特殊の権限を有していますが、初審として事件を受理する管轄権はないことになつております。これは事件処理一般的に簡便かつ迅速に処理する趣旨からでありますが、事件が社会的に重要性を有する場合には、必要に應じて事件引取ることができるのでありますから、この機能を発揮することができるために、最高裁判所に対して、初審裁判所は、受理した事件の通知、その処理の経理並びに結果について報告する義務を負うものといたしておるのであります。  なお最高裁判所は、人身保護請求事件について監督権を有している建前から、この法律を運用するについて必要な手続に関する規則を定め得ることを明らかにしたのであります。最後にこの法律の運用を円滑にするために、人身の自由を侵害された者を救済する方法手段を妨げるような行為をした者に対して、相当嚴重な刑罰を課することにしたのであります。  以上がこの法律案の骨子であります。民主主義憲法附属法として、一日も欠くことのできない本法案について、何とぞ愼重御審議の上、速やかに可決されんことをお願いする次第であります。
  29. 松永義雄

    松永委員長 本案につきましては、本日は説明のみに止めることにいたします。     —————————————
  30. 松永義雄

    松永委員長 前に戻りまして軽犯罪法の質疑を継続いたします。鍛冶良作君。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 十六号についてですが「虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者」こうなつておる。これも公務員に限局してあるのでありますが、一般に流布した場合は、どういうことになるのですか。
  32. 國宗榮

    國宗政府委員 一般に流布した場合としては、この法案では落しておりますけれども、あるいは流言浮説の罪にあたる場合になると思いますが、これは言論の自由というような観点から、一應この法律からは落してあるのであります。一般に流布した場合には、十六号には該当しないということになつております。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうも腑に落ちないところがあるのですが、一般に流布すれば流言飛語法律でやられる。そうすると、こつそり公務員にやつたときだけなのですか。もつと言えば、公務員犯罪の事実をやれば誹毀罪もあると思いますが、そういうのであるにもかかわらず、流言飛語法律があるし、誹毀罪がある。公務員に言つたときだけ、ここで特にやらなければならぬ。その理由がちよつと腑に落ちないのですが、それらと本法とも関係について伺いたい。
  34. 國宗榮

    國宗政府委員 この十六号の規定は、敏速あるいは適正に公務執行しなければならないものにつきまして、その公務員行動を促す申出、これが全然ない犯罪である場合、あるいは全然起つていない災害の場合、公務員行動に対しまして、その公務執行を誤らせるという結果を生じますので、これを処罰するする趣旨に出ておるのであります。一般的に流言を飛ばすということにつきましては、現在は警察犯処罰令にございますが、今回は落したわけであります。その場合は罰しないという建前をとつております。なお今お話がございましたが、あるいは誹毀の場合にあたる。これは特定の人を指しまして犯罪の申告をして、処罰を求める意思があれば、誣告の罪にあたつてまいりましようしその場合を十六号の場合とは、立法趣旨が別になつておるわけでありまして、この十六号は公務員公務執行を誤らせない。もし誤らした場合に本号の適用がある。こういう立法趣旨でできておるのであります。
  35. 鍛冶良作

    鍛冶委員 どうもまだわからないのですが、それでは公務員に言わないで、だれそれはこういう犯罪をやつた、あれは今に縛られるのだ、こういうようなことを言つて歩く者があると——いわゆるデマですね——社会的には非常に影響も大きいし、名誉毀損になる場合は別ですが、そうならぬ程度で、こういうものは取締るべきだと思うが、これも先ほどのと一緒に、公務員に言わなければいいのだというのはおかしいと思うのですが、どうもあいつはけしからぬことをやつておる、そのうちにはひつぱられるぞ、こういうことを言つた者はどうですか。
  36. 國宗榮

    國宗政府委員 御質問よくわかると思うのであります。それは確かにおもしろくない行為でありますが、デマを飛ばすということは、非常に人に迷惑でありますし、社会的にいろいろ影響もあると考えられるのでありますが、しかしその場合には名誉毀損になる場合し格別といたしまして、そういう場合を十六号が実は考えているのではないのでありまして、この場合は、先ほどから申し上げましたが、ここに申します公務員は、犯罪またはその災害につきまして、みずから積極的に事を処理しなければならない義務を負担しておる公務員を指しておるのであります。その公務員行動を開始するにつきまして、まつたく全然ない犯罪災害というものを申告した場合に、その公務員の敏速なる、また適正なる活動を阻害するおそれがありまするので、その点だけを罰する。こういう趣旨でできておるのでありまして、ただいま御指摘になりましたデマによつて困るじやないかという点は、実は触れていないわけであります。なるほどそれもお説の通りに、おもしろくない現象とは思うのでありますが、多くの場合は、名誉毀損に該当してくるのじやないか。それによつて十分に処置できるのじやないか。あるいはデマと申しますけれども、全然虚構の事実を言つておるのか、あるいは誇大の事実を言うのかということも考えられます。この十六号の虚構と申しますのは、全然ないことをあるように申した場合でありまして、誇大の場合は含んでこないのであります。この法律のねらつておる点が違つておるのでありまして、その点ひとつ御了承願いたいと思います。
  37. 鍛冶良作

    鍛冶委員 よくわかりました。從いまして、私の言つたような、そういうものは、普通のちよつとしたことよりも、もつと社会的に大きなことでもあるし、道徳上非常に悪いことでもあるし、それを取締るという御意思はありませんか。
  38. 國宗榮

    國宗政府委員 現在それにつきまして特別な立法考えておりません。しかしそういうものは、多くの場合名誉毀損になると思います。名誉毀損罪として、もちろんこれは告訴にかかつておりますけれども、被害者から取調べの処罰の要望がありますれば、その社会上の大きな影響考えまして、十分な取締りをいたしたいと考えております。
  39. 鍛冶良作

    鍛冶委員 名誉毀損にならぬ実例があります。現に行われております。不正取引調査が始まると、三十幾名の者がひつぱられる。それによつて某政党は瓦解するのだというようなことを政府の長官が言つておる。これらのごときは、まつたくひどい話であります。しかして名誉毀損は、だれをつかまえて名誉毀損になるかわかりません。私はこれほど社会的な大きな問題はないと思います。それでも取締る意思はありませんか。
  40. 國宗榮

    國宗政府委員 御指摘のような場合は、具体的に特定の人を指してかれこれ言つておるのではないのでありますから、名誉毀損にはもちろんならないと思います。それを取締らなければならないという御説でありますけれども、これは今非常に重大なと申しますか、微妙な関係にありまして、実は憲法にもありますし、また指令等によりましても、言論の自由ということを非常にやかましく言つております。この言論の自由とは、正当な言論の自由に違いないと思うのでありますけれども、しかし人の批判に対しましては、非常に廣い範囲に、自由に放任したらいいのじやないか。おのずから社会の道徳と社会の批判と文化によりまして、それが洗練されるのじやないかという考えが強いのであります。私どもといたしましては、今ただちにそれを法律でどう取締るかという点までは考えていないのであります。もちろんそういうものが非常に多くなつてまいりますことは、社会の秩序と不安を釀成することは間違いないと思いますので、將來十分研究いたしたいと思つております。
  41. 鍛冶良作

    鍛冶委員 まあその点はそれくらいにして、御深慮をお願いしておきましよう。次に十七号、「法令により記載すべき」云々とあるが、この「法令により」ということは、古物商取締規則か何かにあると思いますが、それを法令というのなら、古物商取締規則の違反でやればよいのですが、そのほかに、こういうことを特別にきめなければならぬ例が、私にはちよつとわからぬのです。
  42. 國宗榮

    國宗政府委員 これは質屋取締法とか、あるいは古物商取締法というものがございまして、そうして質屋営業者、あるいは古物商の営業者はこの法律取締りを受けるのであります。これらに対してうそを言つて、当然法令によつて記載すべき事項を記載させなかつたという相手方になる者でありますが、これにつきましては、從來は府縣令等に規定してあつたのでありますけれども、憲法が新しくなりましたので、昨年十二月府縣令が大体なくなりましたので、その点を補う意味でできたものであります。
  43. 鍛冶良作

    鍛冶委員 わかりました。次に十九号についてですが「正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者」、これは保護せんとせられる法域はわかりますが、これはよくあることですが、公務員の怠慢でどうにも仕樣がないというようなときに、これをやられるということになると、非常に一般公衆に迷惑の及ぶことがあり得る。また実際あつたこともわれわれ知つております。まつたくこういうものに出会わした者こそ不幸な目に遭う。つまり災難であるわけですが、これを嚴格にやるということは、私は非常に酷のように思います。それらに対しての保護は、どうお考えになりますか。
  44. 國宗榮

    國宗政府委員 御質問のように、確かに公務員の怠慢によりまして、変死体あるいは死胎のある場所の人々が、非常に迷惑を受けるという事態は、実は私も経驗しているのでありますが、そういう場合には、やはりこれは昨日からしばしば御注意を受けているのですが、正当な理由があるという場合に該当してくる。たとえば変死体がありまして、どうしてもそこに電車を通じなければならない、あるいは急病人がありまして、どうしてもその変死体を動かして自動車を通さなければ通り得ないというような事態に、急速に係官がやつてまいりますれば間に合うのですが、怠慢で來ないというような場合を考えますと、そういう場合は、正当な理由があるというように解しまして、その運用につきましては、非常に正当な理由がないという場合を嚴格に処理いたしたいと考えております。
  45. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今お示しのような場合はいいのですが、そうではなくて、変死体が屋敷の中にある、人が來てしようがない、また番をしていなければしようがない、警察に行つても來ない、しようがないから何とか應急の処置をやる。そうすると、ここで正当な理由かどうかということは、次に來る警察官が認める。その場合、自分の怠慢でとは言いません。すぐ自分の怠慢をよそにして、こんなことをやられては困ると言う。われわれ経驗があるのですが、これは非常に考えられなければならぬことだと思うのであります。そういう事実があれば、これは結局裁判所へ行けばいいのですが、いわゆる係合いになるということを、さつきも言つたように、非常に民衆が恐れるのですが、それらについて、いま少し具体的に何か考えをおもち願えたらいかがなものでしようか。
  46. 國宗榮

    國宗政府委員 そういう場合に具体的に何か考えよということでございますが、これは前からも申し上げましたように、私どもとしては、実際そういう場合には、当面するところの警察官の行動に対して、平素から注意する以外にないのでありまして、そういう場合に至つたときに、これは單に警察官だけで処理できる問題ではございません。具体的の事態に應じて、警察官としてこの法文に触れるのだという取扱い方について、十分注意するよりいたし方がないと思つております。そういう御心配の点は、この法律を実際に施行いたしました場合には、檢察官並びに警察官に対して一應この法律取扱上の注意をいたしたいと思つております。
  47. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次に二十号は、法律としてかようなことまでやらなければいけないのかと思う規定ですが、よく問題になるはだ脱ぎになつた場合は、これに当るのですか。
  48. 國宗榮

    國宗政府委員 ただはだ脱ぎになつただけでは、これは当らないのでありまして、ここに「けん悪の情を催させるような仕方で」とありますように、はだ脱ぎになつたというだけでは当らないのであります。同じようなはだ脱ぎになつた場合でも、たとえば勢いのいい魚屋さんが片はだ脱いだという場合は、嫌悪の情を催させない場合に当るだろうと思いますけれども、その場所、それからはだ脱ぎになる人、妙齢の婦人の場合とか、あるいは非常に老齢ではだのきたない人がはだを脱ぐとか、いろいろな場所とか、性別とか、年齢の差とか、はだの脱ぎ方、ちようど仕事をするに都合がいいように脱いでいるのではなくて、いかにもわれわれに下劣な感じを催させるような脱ぎ方をする場合を言うのでありまして、その認定を警察官がするということになるのであります。ただ脱いだというだけでは、本條にはすぐさまあてはまらない。
  49. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私ども知つておる者で、はだ脱ぎをしていてひつぱつて行かれた。やはり巡査に嫌われたり、仲が悪かつたりすると、これの適用を受けることが実際ある。こういうことはもう少し常識にまつべきもので、こんなことはなくてもいいのじやなですか。この法律は御考慮を願つておきましよう。  二十一号の牛馬その他の動物の虐待ですが、これはいわゆる動物愛護の道徳律なのか、それともさようなことが一般社会に流布されることがいかぬというのか、この法律全般から言うと、一般社会に及ぼす影響考えているものと思うのですが、そういう意味でできているのか、いずれを主にしているのか、その点をお答え願いたい。
  50. 國宗榮

    國宗政府委員 本号は、大体動物愛護ということは、文明社会では一つの道徳的な意味をもつておりますので、これを虐待する行為を反道義的な行為として罰しよう。動物を虐待すること自体が、文明社会における反道義的な行為である。從つてこれはいけないのだ。こういう趣旨でございます。この点につきましては、旧規定は三條の十四号でしてか、旧規定にありますのとは少し違うのでありまして、旧規定の場合は、虐待しているのを見ている人の感情を害する場合、つまりその行為が、見る人の感情になつておつたのでありますけれども、本條をまじめに動物愛護ということが一つの文明社会において道徳的な意義がある。これを虐待する行為は、そういう社会においては反道義的な行為であるからこれを罰しよう。こういう趣旨でできているわけであります。
  51. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もちろん私もさようには感じたのです。一般法律は社会的影響取締ることになつておりますが、これだけが道徳に反することを罰するということは、一体法律上の建前からよいものでしようか。これは何としても私は前の條文の方がよいのではないかと思います。道徳に反するそのことがただちに犯罪になるということは、われわれの法律学的の観念から考えて、ちよつと合点のいかぬところであります。この法律だけは、特にそういうことを目的としてやらなければならぬか。またそれで法律上の建前からよいものでしようか。特に御考慮を願いたい。
  52. 國宗榮

    國宗政府委員 もちろん反道徳的なものを全部処罰するというものではございません。しかし少くとも刑罰をもつて臨みます場合には、最低限度のものであるという考え方でございまして、從つて二十一号の場合も、もちろん本号の趣旨は、反道義的な動物虐待という行為そのものが一般社会に行われるということは好ましくないという点で罰しているのでありますけれども、そのことは同時に、旧警察犯処罰令にありますように、自然に虐待しているのを見ている國民の感情自体をやはり阻害するのでありますから、法律の中心目的は別に見る人の感情自体を考えておりませんけれども、それと表裏相まちまして、一般社会の警戒と申しますか、そういう意味合も含めてあるものと考えているのであります。
  53. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはもう少し考えることにしましよう。よほど重大だと思います。趣旨はわかりますが、こういうものを法律に定めるということは、はたしてどうか。これは大きな問題でございますから、特に御考慮つておきます。  二十二号の「こじきをし、又はこじきをさせた者」これはまことにいい規定には違いないが、実際こんなことは行われますか。この間も一号でも言つたのですが、行われぬ法律をこしらえておくことは、まことに法律立法としてゆゆしき問題だと思います。趣旨は結構ですが、私は行われるとは思いません。実際に行われるのですか。
  54. 國宗榮

    國宗政府委員 この規定は御説の通り、ずつと警察犯処罰令にも規定してあつたのでございまして、現状確かに行われないものがたくさんあるのであります。しかし私どもといたしましては、この規定だけによつて、こじきをなくすというのでないのでありまして、やはりこれはいろいろな社会政策的なものによりまして、この絶滅を期すると同時に、一面にやはり法律化によりましても取締りをやつていく、こじきをしたものを全然取締らないかと申しますと、そうではないのであります。幾分は取締つていく。またこうした法律ができますれば、取締りにも十分力を用いて、全然行われないと私どもも考えいない。しかしこれは申し上げます通り、全然なくしてしまうことができるかと言いますと、これはちよつと私もそういう自信がないのであります。だがしかしこういう行為は、やはりいろいろな意味におきまして、おもしろくない行為でありますから、取締り得る状態にしておくことは必要でもありまするし、同時にまた取締りの力を注ぐということも必要であろうと思うのであります。
  55. 鍛冶良作

    鍛冶委員 こじきをしなくてもいい者がやつておつたら、前の浮浪でしたか、あれにはまる。あれを除けば、好きじやなくやむを得ずやる者になつてくる。やむを得ずなつたものを罰するといつたら喜んで行きますか。食わしてもらえるなら、自分は決してやりたくないのだから、どこそこへ連れていくといえば、向うから志願してくると思います。そうすると、法律適用はできないことになります。まことに私は法律学的に考えて、あさましい結果が起ると思います。從いまして、今言われてようなことから考えるならば、むしろこういう刑罰規則を置かないで、社会施設的の法律をもつてやるということでなくてはいかぬと思います。これは昨日も言つたのですが、法律取締ればそういうものはなくなるのだという考えで、こういう法律をこしらえればたいへんなことだと思います。むしろここから除いて、厚生施設、社会政策的の法律にもつてつて、これを引致する、どこそこへやるとかいうようにせらるべきもので、本法より除くことがいいと、私は考えますが、いかがでございますか。
  56. 國宗榮

    國宗政府委員 お説の通りに、これはもちろん社会政策的な施設にまつことが一番必要だろうと思うのでありますが、しかし私どもといたしましては、これを本法から除いて、全部社会施設に任したらいいではないかという御議論のように拜しましたが、やはり一面にはこじきをしているものに、こじきをすることはいけないのだといつて取締りもそこに加えていくということも、私は必要だろうと思います。社会施設に相まつて、こういうものをなくしていく。殊にこじきをさせるという場合におきましては、これはみずからはこじきをしないのであつて——ここでこじきをさせると申しますのは、大体犯罪の責任能力のないものを使いまして、こじきをさせる、たとえば子供なんか使つてさせるという場合にあたるのではないかと思いますが、こういうものは單にみずからこじきをするのではないのでありますけれども、みずからこじきをしたと同じような結果を生ずる。しかもこういうものは、社会施設で賄うよりも、取締りの方が十分に効果をあげるのじやないか。こじきをすること自体につきましてはいろいろな事情もありますから、取締りだけでは、当然その効果はあげられない。それに類した規定といたしましては、例の兒童福祉法案には、こじきをしたものについての処罰規定を設けておりますが、それと相まちまして、やはり一應は取締る態勢を整えておくことが、國としては必要だろうと考えておる次第であります。
  57. 鍛冶良作

    鍛冶委員 あとは議論になりますから……。しかし昨日から申しますように、こういうものは刑罰法律でなくてできると思われることが多々あるのでありますから、どこまでもそれよりも社会施設の方へ、同じ司法畑といえども、その点に重きを置かれることがよろしいと思いますが、その程度にしておきましよう。  二十五号は、前の警察犯処罰令と大分変つてきたのですが、これはただ水の流通を阻害するだけなのですか、川を汚くした場合などは罰しないつもりなのでしようか。
  58. 國宗榮

    國宗政府委員 これは流通だけでございまして、汚くした場合は、この二十五号には含んでない趣旨でございます。
  59. 鍛冶良作

    鍛冶委員 飲用水に対しては、刑法にあるからよろしいですが、ごみを捨てたり汚くした場合も困ると思いますが、必要ありませんか。ただ水を止めるというが、ごみを捨てれば流通を止めることになるかもわからぬが、その場合は必要ありませんか。
  60. 國宗榮

    國宗政府委員 その場合は二十七号で「公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獸の死体その他の汚物又は廃物」という規定がございまして、これによつても、ある程度川を濁す、あるいは水を濁すということが、一應救済できるのじやないか、かように思つております。
  61. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次に二十六号ですが、これもずいぶん情けない規定だと思いますが、現在の日本では必要でありましよう。ここで私お聽きしたいのは、一体日本の現状において、かようなことが、せぬでもいいだけの施設ができておるのでありましようか。大小便はある程度ありますが、たんつばを吐いてはいかぬということになつても、公園その他にたんつぼの設備をしてあるところは見ません。停車場などにはたんつぼはありますが、なきよりも悪い現状にあります。一ぱいになつて溢れておる。だれもそれをかえない現状にあるのです。その現状をかえることをしないで、吐いた者を処罰するということでは、行おうとしても行われないと思うのですが、この点は立法者としてお考えにならなかつたのでしようか。また何かこれに対してのお考えがありますかどうかを承つておきたい。
  62. 國宗榮

    國宗政府委員 もちろん御指摘の点については、立法の際に考えたのでございます。仰せの通りに、たんつぼは停車場等にはありますけれども、公園も日比谷公園で、私は一、二箇所見たのでありますけれども、しかし多くはないのであります。はなはだ無理を強いられるように思われるのでありますが、しかしこれは公衆衛生上、やはりこういうのはみだりにたんつばを吐かれては困るのでありまして、何か適当な方法によつて、紙がなかつたら仕方がありませんけれども、たとえば壞中の紙によつてたんをとる、つばをとるというふうにして、國民のしつけと申しますか、社会生活の儀礼を重んじてもらうということが必要であろうと思います。しかし同時にやはりこういうたんつばを——公衆便所の問題もありますけれども、たんつばなどの施設というものも、十分に設けていかなければならぬのじやないかと私は思つております。それにいたしましても、私どもといたしましては、やはりこれは公衆衛生上、こういうことをみだりにやられては困るというので、処罰の対象として現定したわけであります。
  63. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の承るのは、もちろん必要のあることは認めるが、しかしそれが行われぬ現状である以上は、ただ單に法律でそれをなくすのだ、取締るのだという考えではなくて、同じことを言うようですが、進んでそれは法務廳の権限といわないで、この法律をつくる以上は、ぜひこれに備えるだけのものを、その方面で備えてもらわなければならぬ。またこういう法律ができた以上は、停車場に行つたらたんつぼがあふれて、かえつてないより悪い現状であるのに、こういうものを罰するのか、それをひとつ、こういうことじや困る、ここまで乘り出してもらわなければ、本法制定の目的が達せられないということを、私は申し上げるのでありまして、事務的の話じやないのです。政治的な話になりますが、その点をもう一度御考慮を願つておきたいと思つておるのです。  それから次の二十七号の「公共の利益に反して」という、これはまたちよつとむずかしい規定なのです。それから一体鳥獸の死体または汚物廃物をみだりに捨てたら、全部公共の利益に反すると思うのですが、特に「公共の利益に反して」という、こういうむつかしい文字を入れなければならぬ理由を承りたいと思います。
  64. 國宗榮

    國宗政府委員 その点御指摘にあずかりまして、非常に恐縮に存ずるのでありますが、「公共の利益に反して」というのは、捨てるべからざる所に捨てるという趣旨規定してあるのでありまして、「公共の利益に反して」とした方がわかりやすいのじやないかと思つて実は書いたのでありまして、かえつてむつかしくてわからないという、御趣旨に相なつては、これはまた恐縮なのであります。しかし結局「公共の利益に反して」というのは、一般的に一般公衆から見まして、捨てるべからざる所に捨てるという趣旨だけでありますから、この字がわかりにくいということでございまれば、また適当に考慮していきたいと考えております。
  65. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その点は下に「みだりに」とあるのですから、「みだりに」でもうたくさんなのです。これも入れなければならぬ何か理由がそこにあつたのじやないですか。
  66. 國宗榮

    國宗政府委員 別にそういうことはございません。
  67. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次に二十九号です。これはわかるようなわからぬような規定なので、この立法理由を伺いたいと思います。
  68. 國宗榮

    國宗政府委員 この條文と、それから十三号ですが、この條文だけは全体の中でちよつとそぐわないような書き方になつておりますが、これは暴行または傷害の共謀者の中に、一人または数人に予備行為があつた場合に、共謀者全員に対して、予備行為についての責任を負わせるという趣旨であります。「他人の身体に対して害を加えることを共謀した者」と申しますものは、傷害または暴行の共謀者であります。その中のたれかがというのは、一人あるいは数人がお互いに共謀しましたその予備行為、例をもつて申しますと、五、六人でもつて甲というものの身体に害を加える、殺すとか、あるいは暴行するとかいうことになりますと、刑法上の問題になりますけれども、害を加えることを五、六人で共謀しましたその中の一人が、それじや害を加えるためにこん棒を用意しようというのでこん棒を用意した場合に、共謀者全部が本條の末号に触れる、こういう規定であります。
  69. 鍛冶良作

    鍛冶委員 むしろこれは刑法に入れるべき問題で、行政罰を通り越しておるのじありませんか。刑法では罰せられないから、ここへ入れる御趣旨ではないかと思いますが、それならば、本法趣旨を異にするものだと考えられるのですか。それともここへ入れなければならぬ理由が別にあるのですか。
  70. 國宗榮

    國宗政府委員 ただいまこれは本來刑法の規定じやないか。行政罰の法規に入れるべきじやないじやないかという御質問でございますけれども、軽犯罪法自体の末号全部にわたりまして、実は從來警察犯処罰令によりますところの違警罪という観念で言われておつたものでありますけれども、その中には、刑法的性質をもつておるものもたくさんございます。現にこの三十四号の中のそれぞれの中にも、單に行政罰でなくして、刑法的なものもあるのでございまして、この二十九号の規定は、行政罰というふうな考え方をとつたわけではないのであります。やはり行政罰とか、あるいは刑法罰とかいうことを、はつきり区別いたしまして、この軽犯罪法の規定をつくつたわけではないのであります。これを行政罰と見るかどうかという点は、深く神経質的には考えなかつたのであります。
  71. 鍛冶良作

    鍛冶委員 三十二号は住居侵害の罪と重複するように思いますが、判然たる区別があるのでございますか。あとの田畑のことは住居侵害にならぬかもしれませんが、前の「入ることを禁じた場所」というのはどういうのでありますか。
  72. 國宗榮

    國宗政府委員 この規定から申しますと、住居侵入は非常に廣いのでありまして、住居を対象と限つていないのであります。單に何らかの場所について所有者あるいは占有者あるいは管理権をもつておる者、そういう者が禁止の標示してある、そういう場所にはいることでありまして、住居侵入の観念から言いますと、非常に廣い観念であります。住居侵入の一般的な場合をここに規定してあるということが言えると思います。
  73. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすれば住居侵害になる以外の看守しておる場所、こう解釈してよろしい場合ですか。
  74. 國宗榮

    國宗政府委員 お説の通りで結構でございます。
  75. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の質問はこの程度にしておきます。
  76. 松永義雄

    松永委員長 午後一時半まで休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時八分開議
  77. 松永義雄

    松永委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  軽犯罪法案について審議を進めます。中村俊夫君。
  78. 中村俊夫

    中村(俊)委員 当軽犯罪法案に関する質疑につきましては、先般鍛冶委員から詳細な御質問がありましたので、私はきわめて簡單に重複を避けてお尋ねいたしたいと思います。ただあらかじめ委員長にお願いいたしておきますが、もし鍛冶委員質問と同様の点がありましたならば、御注意願えれば結構だと思うのであります。  この法案の内容につきましては、文字通り犯罪でありまして、取立ててわれわれの方で問題にすることはないと思います。結局この法案に関してわれわれが重大だと思うのは、先般各委員から御質問があつたように、この法を濫用して他の犯罪搜査に用いるという点が、過去における警察犯処罰令にも顯著な事実がありまするので、われわれの最もおそれますのはその点だけであります。從いまして、おそらく法務当局におかれても、十分なる事前の処置をお講じになることだろうと思うのでありますけれども、問題はこれを運用する人と、運用の方法とによつては、再び新憲法によつて確定されたる人権の擁護ということが蹂躙される結果を招來するおそれがあるのであります。その点につきましては、すでに政府から十分なる御答弁があつたことだろうと思いますので、私は重ねてその点の希望を申し上げまして、愼重な態度をもつて運用に当られるよう処置されんことを希望いたすのであります。ただ各條項について二、三お尋ねいたしたいと思うのでありますが、第一條の第二号に「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」という言葉があります。これはおそらく文字通り解釈して差支えないものと思いますが、この以外にいわゆる劇毒物などをもつていた場合も、私は同じように警戒されなければならぬと思います。しかしそれについては、別に法律もあるようでありますので、この場合には器具と言えば、文字通り器というように解釈して差支えないものかどうか。あるいは劇毒物なども、この中に含まれるものかどうかということを、まずお尋ねいたしたいと思います。
  79. 國宗榮

    國宗政府委員 お答えいたします。大体御質問通りと私も了解しておりまするが、この器具は、この項に例示してあります通りに、刃物とか、鉄棒、その他これにあたりますようなこん棒とか、そういうような廣義の凶器と解されるようなものを含んでおります。御指摘になりましたような劇毒物ははいらないものと思います。
  80. 中村俊夫

    中村(俊)委員 それから同じく第一條の第十号に「相当注意をしないで、銃砲又は火藥類、ボイラーその他の爆発する物を使用し、又はもてあそんだ者」という條項がございますが、この中で銃砲とか、ボイラーというそのものは、私は爆発するものではないと考えます。火藥類は爆発しますが、銃砲そのもの、ボイラーそのものは何ら爆発するものではないのです。從つて銃砲に彈丸をこめるとか、あるいはボイラーに猛烈な火をたくことによつて、初めて爆発するおそれがあるので、これだけの條文では、法律家の作成した文章としては、はなはだまずいように思われるのですが、こういう字句をお使いになつて、爆発するものというように書かれたのは、何か意味があるのですか、その点を伺いたい。
  81. 國宗榮

    國宗政府委員 御説の通りに銃砲とありまして、銃砲に彈丸がこめてあるかどうかということは、一向書いてないのでありますが、銃砲の場合におきましては、彈丸がはいつている場合はもちろん危險でありますけれども、しかし彈丸が拔いてあつて、全然はいつていない場合におきましても、それを掃除するとか、あるいははいつてないと思つて発射する、こういう場合におきまして、たまたまはいつている場合も予想されますので、そういう一切の危害を予防するために、銃砲の取扱いをする場合には彈丸がはいつているといないとにかかわらず、相当注意をしていただきたい、こういう趣旨でかような書き方をいたしておるのであります。ボイラーにつきましても、もちろんボイラーは本來爆発するものではないのでありますが、しかしその使用にあたりましては、爆発する危險が非常に多いものでありますから、そこでボイラーを火藥類とここに一緒にあげたわけであります。その使用について注意しなければ、爆発等の危險が発生するおそれがある。こういうことでここにボイラーとあげてあるのであります。必ずしもボイラーは爆発するものとは限つていないと思います。
  82. 中村俊夫

    中村(俊)委員 同じく第十六号でございますが「虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者」がやはりこの軽犯罪を構成するということになつておるのでありますが、これだけの文句では、私は非常に危險ではないかと思われるのであります。單に「虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者」が、ただちにこの軽犯罪を構成するということは行き過ぎではないか。かりに災害の事実を公務員に申し出た場合、煙を見て火災があるのだと誤認をして消火器のベルを押したとか、あるいは消防を出動せしめたいというような場合に、ただちにこれが犯罪を構成するということは行過ぎではないか。從つてこれには故意または重大なる過失という言葉が入れられなければいけないのではないかと思われますが、いかがでございますか。
  83. 國宗榮

    國宗政府委員 もちろん十六号の虚構の犯罪または虚構の災害につきましては、故意を必要とするのであります。今御指摘になりましたような、どこか煙が出ておるのを見まして火災があると思つて知らしたという場合には——あるいは過失の場合がありましようが、本号には該当しないのであります。 本号は全然ないものという認識をもつて申告した場合を規定した趣旨であります。
  84. 中村俊夫

    中村(俊)委員 それから同じく第二十六号でありますが、これは屋内を含まないのであるかということをお聽きしたいのであります。
  85. 國宗榮

    國宗政府委員 屋内も含む趣旨でございます。公衆の集合する場所であれば屋内でも含む、こういう趣旨であります。
  86. 中村俊夫

    中村(俊)委員 その次の第二十七号、これはおそらく鍛冶委員から質問があつたかと思いますが、私は記憶がありませんので質問いたしたいと思います。「公共の利益に反して」という言葉、これが非常にあいまいな言葉ではないかと思われるのであります。むしろこれは二十号のごとく「公衆の目に触れるような場所」というような言葉で書かれなければいけないのではないか。ただ單に「鳥獸の死体その方の汚物又は廃物を棄てた者」と言えば、これも運用いかんによつては、ずいぶん極端な場合も生じ得ると思いますが、この「公共の利益に反して」というのは、公衆の目にふれるような場所という意味であるのか。その他の別に何か意味があるのか。あるいは具体的にどういう場合が公共の利益に反しておるのかという点をお尋ねしたい。
  87. 國宗榮

    國宗政府委員 この点につきましては、午前中に鍛冶委員から御質問がございましたが、この「公共の利益に反して」といたしましたのは、「公共の利益に反してみだりに」と続けまして、大体こういうごみとか鳥獸の死体、汚物または廃物などを捨てるべからざる所にみだりに捨ててはならない、こういう趣旨を表わしたつもりでおるのでございますが、御指摘のあります通りに、わかりにくい規定に相なつております。実は立案いたしますときは、みだりにごみ、鳥獸の死体その他のものを捨ててはならないというような趣旨にいたしましたところが「公共の利益に反して」というふうに入れた方が、捨てるべからざる所に捨ててはならないという趣旨を明らかにするのではないか。かように考えたのでありますけれども、御質問によりますと、かえつてこれがわかりにくい規定になつておるということでございますが、そういう趣旨規定いたした次第でございます。
  88. 中村俊夫

    中村(俊)委員 私の質問はこれで終ります。
  89. 松永義雄

    松永委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。     午後二時二十一分散会