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1948-03-23 第2回国会 衆議院 司法委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年三月二十三日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 松永 義雄君    理事 石川金次郎君 理事 荊木 一久君    理事 鍛冶 良作君       池谷 信一君    中村 俊夫君       中村 又一君    八並 達雄君       山下 春江君    吉田  安君       佐瀬 昌三君    花村 四郎君       明禮輝三郎君    大島 多藏君  出席政府委員         法務廳事務官  國宗  榮君  委員外出席者         專門調査員   村  教三君         專門調査員   小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  軽犯罪法案内閣提出)(第一三号)     —————————————
  2. 松永義雄

    松永委員長 会議を開きます。  軽犯罪法案について審議を進めます。佐瀬昌三君。
  3. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 本法案提案理由の概括については、先日の政府委員の御説明で、一通り了解を得たのでありますが、なお私の疑問とするところについて若干質問いたしたいと思うのであります。  まず本法案名称の問題であり、また同時にその名称の由來する犯罪観といつたようなものについて承つておきたいのでありますが、從來各國立法例及び刑法理論の上においても、いわゆる犯罪三分説にもとずいて、重罪軽罪及び違警罪というような体系が採用されておるのであります。しかして、本法案内容伺つてみますと、まさに違警罪犯罪に該当するものが盛られておるように見えるのであります。從つてこれはさような犯罪観に基いて、むしろ違警罪法案とされた方が從來傳統的観念といつたような点からみましても、國民に対しまた取締当局に対して、きわめてわかり易い言葉と概念ではなかろうかと考えるのでございます。もつともこの点については、法務総裁説明によると、警察犯処罰令及び違警罪即決例廃止に伴うがゆえに、この法案を出すのだという点からして、多少そこに違警罪という呼称を用いることが旧來の観念を一掃する意味において必要であるというふうにも考えられる余地は存するのでありますけれども、先に申しましたような理由からして、軽犯罪法というような慣れない言葉観念をもつてするよりかは、むしろ違警罪法案とでもした方がよりいいのではないかと、私は考える次第であります。しかも日本は國際的にも平和文化國家を指向しておる國であります。その法制は、各國ともに注目しておる。いわば普遍性もつものでなければならぬと考えるのであります。そういう意味において、あえてなおかような軽犯罪法案という言葉を選ばれた理由において、われわれの納得するものがあるならば、この際ぜひ承つておきたいと考える次第であります。この点についての御説明を求める次第であります。
  4. 國宗榮

    國宗政府委員 お答えいたします。ただいま御質問通りに、重罪軽罪違警罪、こういう観念でもつて從來刑法上のいろいろな犯罪につきまして区別をつけられておることは、私ども承知しておるのでございますが、御承知通り、今日までの刑法は、重罪軽罪というものをはつきり区別をつけていないのでありまして、ただ学問上そういうようなことが言われておるのであります。この軽犯罪法に盛るましたところの各種犯罪は、御説の通り違警罪に該当するものであると私ども考えております。しかしこの名称につきまして、実はいろいろ考えたのでありますが、この違警罪と申しますのは、提案理由で御説明申し上げましたように、警察犯処罰令とかという、從來の古い観念がこれについておりまして、どうも歴史的に何か警察國家的な暗い臭がするのではないか、こういう点を心配いたしまして、しかも違警罪法といたしますと、何か非常に古い明治時代観念がついてきはしないかというようなことを考えまして、いろいろこの法案の題名を考えたのでありますが、なかなか適当な言葉がございませんので、各方面の御意見を徴した結果、大体が犯罪的に見て非常に軽い犯罪であるという観点から、軽犯罪法というような名称にいたした次第であります。かようにいたしますと、從來の、学問上言われております重罪軽罪違警罪、こういうような観念につきまして、紛淆を來することがありはしないかという御心配はごもつともなのでありますけれども、かような特別な法律をもちまして、軽犯罪法というものをここにつくつて、そうしてこれに盛られておりますものが、從來違警罪に該当するような犯罪であるというようなふうになりますと、おのずからこの軽犯罪法という観念でもつて理解できるものができるのではないか、こう考えまして、実は軽犯罪法といたしたのでございます。なるべく從來警察國家的な臭を法案の中から除きたい、こういう点に重点を置きまして、かような名称にいたした次第であります。
  5. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 民主主義國家であるスイス、あるいはまたその革命以來民主主義刑法を標榜しておるスペイン等刑法を見ましても、こういつたような犯罪三分的な立法をしておるのが相当あるのであります。私どもは決して、從來のような警察犯あるいは違警罪という呼称によつて警察國家的観念をなお傳えるという懸念は必要ないと思うのでありますが、しかしただいまの説明によりまして、立案者の意図するところは十分にわかりましたから、その点はそれ以上お尋ねする必要はないと存じます。  次にこの法案が通過した場合に、ここに網羅された犯罪の範疇があまりにも國民日常生活にあまねくわたつておりまして、非常に違反する場合が今日の世相からみても多かろうと考えるのであります。もつとそのゆえをもつて、かような立法を確かに必要とする理由もあるわけでありますが、しかしそれだけに私どもは、この法律運用というものがきわめて重大であつて、もし濫用されることになれば、國民の不安は相当増大するものがあるのではないかと考えざるを得ないのであります。さような観点からいたしまして、私は特にこの法案の主要な目標を、この際質しておきたいと考えるのであります。そこで現在の労働運動というものは、この法律によつてあるいは抑制される、極端な言葉をもつてするならば、彈圧されるようなことにもなるのではないかというおそれもなしとしないと思うのであります。その点について、政府委員はいかにお考えになつているかを、承つておきたいと存じます。
  6. 國宗榮

    國宗政府委員 お答えいたします。御説のように、この法律國民日常生活におきまする、ごく卑近な道徳律に違反する軽い犯罪を集めたものでございまして、その運用いかんによりましては、非常に多くのものがこの法律に触れる結果を招來すると考えられるのであります。しかしこれは今日まで存在しておりますところの警察犯処罰令におきましても、同様なことが言えるのでありますが、すでに昨年五月新憲法施行以來違警罪即決例廃止になりまして、警察犯処罰令に該当する犯罪簡易裁判所で取扱うことになつております。この軽犯罪法に盛られております各種犯罪も、簡易裁判所において取扱うことになります。同時にまた、從つてその手続その他におきまして、一層の愼重を期することを考えております。と同時に、これらのものは、いわゆる刑法犯から見ますると、大体微罪に該当するような犯罪であります。刑法上の犯罪運用上におきまして起訴猶予制度が設けられておりまするように、これらの犯罪の扱いにおきましては、この法律が特にかような小さな犯罪であつても、社会生活上相許せないという場合において、初めてこの法律を動かしていく方針でございます。その点は十分運用におきまして戒心いたしたいと存じております。  なおこの法律の存在が、労働運動その他の社会的の団体運動に対しまして、彈圧的な性格をもつておるのではないかという御質問に対しては、もちろんのこの法律を文字通りそのまま動かせば、そういう結果も招來するのではないかと思うのでありますが、組合運動等に対しましては、御承知通りに、組合法の第一條の第二項の規定適用が全面的にかぶつてまいります。またこの法律自体は、さような労働運動等目標としてつくられたものでは絶対にないのでございますから、全般犯罪の、刑事訴訟法で言いますところの刑事政策的な動かし方によりまして、そういう弊害は十分に避け得られるものと思つております。またそういう趣旨にこの法律を運営したいと思つております。どうぞその点御了承願いたいと思います。
  7. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 本法性格として、労働運動等の彈圧法として利用されるものではないというただいま政府委員の御説明は、私もこれを諒とし、かつ同時にさような懸念を一掃することが、この際必要だと認むる次第であります。ただこの際ついででありますけれども政府委員にお伺いしておきたいのは、ただいまも御説明中に出た労組法等労働立法において、労働爭議等合法性が認められたわけでありますが、しかしその限界については、きわめて不明確なものが解釈上存在しておるのであります。本法運用する上においても、それをこの機会に一應承つておくのも必要ではなかろうかと考える次第であります。
  8. 國宗榮

    國宗政府委員 ただいまの御質問労働組合法におきまするところの爭議限界というふうにちよつと伺つたのでございますが、お説の通りに、組合法の第一條の二項の規定は、実際の事態適用する場合には、非常にわかりにくい規定と私は思つておるのであります。刑法三十五條の規定は、団体交渉その他の行為であつて、しかも一條一項の目的を達成するためになされた行為で、正当なものはこれを適用する。こういうような規定でございまして、結局労働法全体の考え方というものは、労働の全体を深く考えまして、労働爭議あり方というもの、あるいは労働運動あり方というものを正確にこれをつかみまして、そうしてそこに個々具体的な事態に対しまして法律適用考えるという以外にはないのではないかと思つております。これをいかに定義づけまして限界を設けるかということは、実ははなはだ困難であろうと思いまして、連体的な事案に対しまして、いかに扱うかということによつて決定されると思います。もちろんこの軽犯罪法規定いたしまするものは、これは爭議行為適用ないものと私は考えております。
  9. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 次いで私は、本法律從來警察犯罪処罰令運用にみたがごとくに、やはりより大きな犯罪搜査に悪用されるという懸念がありはしないかという点について、政府の所信を質しておきたいのであります。特に警察犯処罰令違警罪即決例廃止されて、今後は簡易檢察所及び簡易裁判所の所管になるのでありまするから、さような点は制度の上からみましても、不安をもつ必要はないかとも考えるのでありますけれども、しかし一方においても新憲法刑事訴訟法等において、個人の基本的人権尊重人権蹂躙の防止という一大民主主義立法のもとに、犯罪搜査の過程においても、人権尊重が徹底されなければならないことに相なつておるのであります。從つて犯罪搜査の上において、國家檢察活動が非常に消極的にならざるを得ない点は、私どもも遺憾に考えるのでありますが、それらの点を補うというような意味合において、もし本法律が濫用されて、これによつて簡單犯罪に対して身柄拘留処分に附する、そしてその間に重大なる犯罪搜査に当るいとうようなことがありとするならば、これは新立法精神の全体から見ましても、きわめて時代に逆行するものであろうと断ぜざるを得ないのであります。さような意味合から、私はこの法律運用する上において、よほど愼重でなければならぬものがあると考えるのでありまするが、その点について御意見をお伺いしたいと思うのであります。
  10. 國宗榮

    國宗政府委員 お答えいたします。お尋ねのように、從來警察犯処罰令によりますところの犯罪によつて、この違警罪即決例によつて、ただちに警察官が自分の自由な考えをもちまして、犯罪搜査一つの方法としまして、身柄拘束をこの警察犯処罰令による違反行為には、違警罪即決例によつてつておつた事実はあつたのでありまするが、これはもちろん許されない事実でありまして、ただいま仰せのごとく、新憲法下になりまして、違警罪即決例廃止になりましたから、一切簡易裁判所において審判されることになりましたので、その点に対しまする懸念は、多少なくなつたのでございまするが、なお一層御趣旨の点につきましては、十分に注意いたしたいと存ずるのであります。ただ御承知通り、この現行警察法におきましても、五十円以下の罰金、拘留、または科料にかかる罪につきましては、現行犯といえども、一定の制限がなければ、身柄拘束することができないことに相なつております。しかもそれが簡易裁判所において審判される、結果、判決の執行としましては、拘留になるという手続に相なつておりまするので、御懸念の点は、その点から言いましても、ある程度避け得られるのではないかと考えております。なおこういうような非常に軽い犯罪につきましての身柄拘束の問題につきましては、新しい刑事訴訟法立法の際にも、もう一層考慮したいとも考えておりますので、御懸念の点につきましては、運用上も十分注意いたしまするが、法制上におきましても注意をいたしたいと考えております。
  11. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 さらに犯罪内容の具体的な題題にはいつて若干お尋ねしておきたいと思うのでありますが、本法内容としておる犯罪全般に通じての、いわば構成要件とされておる「正当な理由がなくて」とか、あるいは「みだりに」とかいう用語内容を、いわゆる違法性の要素として規定されておるものと考えるのでありますが、そこで「正当な理由がなくて」とか、あるいは「みだりに」ということが、よほど嚴格にその内容規定づけられ、かつ運用するにあらんずんば、日常生活に触れた行為が、無制限犯罪とされる危險性が多分にあるのではないかと思われるのであります。先ほど申しましたように、労働爭議その他の場合に、本法が濫用されないようにするのにも、また一般犯罪搜査の用に悪用されないがためにも、犯罪構成要件としてのこの二点について、よほど嚴格に当つてもらわなければならぬと考えますが、この点についての御意見を、この際承つてみたいと考えます。
  12. 國宗榮

    國宗政府委員 お説の通りに、「正当な理由がなくて」とか、あるいは「みだりに」という言葉を用いておりますが、これはすべて行為違法性を現わしておるのであります。これが書いてないものは、大体書かなくても、これによりまして用語自体行為違法性がわかるという建前で、ほかは書いてないのでございますが、これを書きましたのは、たしかに仰せ通りにこの点を嚴格に解釈して運用しなければならないという趣旨を明らかにしておるつもりでございますので、御説の趣旨通りにこれを運用したいと考えております。
  13. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 本法律案内容となつておる犯罪の数は、一号から三十四号までで、かなり多種多樣のものが網羅されておるのは、本法案の性質上当然のこととは考えるのでありますが、しかし刑法との関係において、これを観察する場合、私どもはもう少し内容的に整理し得る部門があるのではないかということを考えるものであります。そこで概括的に承つておきたいのは、將來刑法改正ということと、本法との関係は、どういうふうに相なつていくか。またその時期について、どういうお見透しのもとにやるかということを承りたいと思います。
  14. 國宗榮

    國宗政府委員 お話の通りに、いろいろな犯罪を網羅してありまして、刑法との関係にも、いろいろ論議のあることがあると存じます。この全体につきまして、もちろん立案のときにおきましても、これを軽犯罪法として独立法律にいたしまするか、あるいは旧刑法のごとくに、刑法の一部としてこれを規定するかという点につきましても、一應考慮いたしたのでありまするが、提案理由で御説明申し上げましたように、警察犯処罰令の失効と同時に、差替えをしなければならぬ関係上、一應軽犯罪法として独立法規にいたしたのでございます。刑法全面的改正にあたりましては、さらにこれを再検討いたしまして、別個の法律にいたしておきまするか、あるいは刑法の中に取入れまするか、あるいは全般を通じて整理をいたしまするかという点は、やはり残されていると存ずるのであります。  刑法改正の問題についての見透しはどうかという御質問でございますが、これは早急に法務廳内におきまして、その部門をもつて全面的改正事業に移る予定になつております。
  15. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 この犯罪の種類、内容整理の問題でありますが、本法律日常生活に触れているだけに、われわれから見ると、ささいな生活行為がただちに犯罪とされる場合が相当多いことに相なるのであります。そうすると、刑法の本質というものから考えてみて、刑法はいわば最下底道徳である。從つて刑法によつて罰するのは、社会道義観倫理観の上から見て、許すことのできない悪質のものにこれを限定しなければならないのであります。しかるに道義の上から見、倫理の上から見て、あまり非難をすべきものでないのに対して、ただちに刑罰法規をもつて臨むということは、刑罰法規をして一般に軟化せしめるという懸念があるのではないかと思うのであります。最近は御承知のように、犯罪が激増して、刑法危機であるということが言われております。私は、刑法危機ということは、刑法もつ威嚇性とか威力に対する世間の認識が弱められて、いわば軟化するという点に、大きな理由一つがあると考えるのであります。孔子が論語に教えておりまするように、刑になれるということは、刑にあたらないということになる。この刑法哲理は私どもがよく現在においてかみしめなければならない言葉でありますが、この立法によつて刑法の軟化をさらに促進するということになると、せつかくこの法律によつて社会の新しい秩序を保全しようとする立法目的を失われるのではないか。刑法全体の危機をもたらすという意味において、これはよほど愼重にしなければならぬ問題が含まれておると考えるのであります。從つてその立法趣旨を殺さずに、しかも活かす上においては、私はさような観点から、よくよく犯罪にこれを限定するという意味において、先にも一言いたしましたごとくに、本法内容犯罪について、十分斧鉞を加えて整理する必要があるのではないかということを、ここに申し上げると同時に、それに対する御用意を承りたいと思うのであります。しかもこの新しい時代においては、むしろここに盛られた犯罪以外のものを新たに立法する必要も同時にあるのではないか。言いかえるならば、整理すると同時に、新たなる犯罪規定を設ける必要もあるのではないかということを、ここに確かめておきたいと考える次第であります。
  16. 國宗榮

    國宗政府委員 御説のように、法の規定が、刑法との関係におきまして十分の考慮を拂わない場合は、刑法犯罪に対しまするところの道義的な観念を抵下させるという点におきましては、私もさように考えるのでありますが、この軽犯罪法規定いたしましたものは、ごく卑近な道徳に違反する非常に高いところの道徳を守るようなことを要請しているものではないのでありまして、そのために特にこの軽犯罪法としまして、刑法と別な法律規定して当座はいくというふうに考えておるのであります。さらに第一條の一号から三十四号までの罰條にいたしましても、いろいろなものを含んでおりまして、この中には刑法規定とも、いろいろ相関連するものもあろうかと思うのであります。なおこれに網羅し盡せないもの、この法案になおかつ取入れなければならないもの、あるいはさらに整理いたしまして、この法案からのけなければならないものがあるのではないか、こういうお尋ねでございますが、この点につきましては、警察犯処罰令を検討いたしました際、相当に考慮いたしまして、その中から除外すべきものは除外し、新しく入るべきものは入れまして、今日のこの程度におきましては、これくらいのところでよろしいのではないかというふうに考え立案いたした次第でございます。なお御趣旨の点につきましては、今後におきまして十分考えたいと思つております。
  17. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 本犯罪法を通覽いたしまして、社会風教を法益として守ろうという意味のものが、相当多いように見受けるのでありますが、私は現在の世相から見まして、さらにいわゆる賣笑婦の問題を、この法律においてはいかに考えるかということを伺つてみたいと思うのであります。
  18. 國宗榮

    國宗政府委員 この法律立案にあたりまして、特別な取締法規あるいは行政法規がほかに立案されておるものにつきましては省いたのでございまして、ただいま御質問の賣笑に関係いたしまする事項につきましては、賣淫法と申しますか、賣淫に関連いたしまする一切のものを網羅いたしました別個独立法律案を実は起草中でございまして、不日御審議を願うことに相なると思います。その方面に讓りましたので、ここには書き上げなかつたのであります。
  19. 佐瀬昌三

    佐瀬委員 私はこれで終ります。
  20. 松永義雄

  21. 鍛冶良作

    鍛冶委員 総括的の問題については、佐瀬君から質問がありましたので、大体わかりましたが、一、二その以外の点で私の考えている点をまず聽きたいと思います。先ほども議論がありました通り本法國民日常生活に最も関係の深い一挙手一投足にまでも影響する犯罪が常に多いのでありまするが、昔からよく卑近な言葉で、警察にやかましく言われると一歩も動けないという言葉がありました。われわれはさようなことはないものだと思つておりまするが、本法案を読んでみて、なるほど一般庶民がさように考えるのもむりからぬことと思わるる点はないでもないのであります。從いまして、この法案のうちで、公務員判断を任せておる点が非常に多いのでありまするが、その公務員判断いかんによつて、取締りの点が非常に重大なる関係をもつてくると思うのであります。從いまして、先ほどもその点は十分注意するとか、本法精神と違うという言葉がありましたが、これはここでさようなことを言われたからといつて、いわゆる公務員という警察官に対して届くものではありません。從いまして、具体的にこのようなことをして人心に畏怖を起させぬようにするとか、公務員に対してはこういうやり方をするということを、ここで明白にしていただきたい、こういうことが私の第一番の念願でありまするが、その点に対する具体的の御説明をお願いしたいと思います。
  22. 國宗榮

    國宗政府委員 御質問まことにごもつともだと存ずるのでありますが、この軽犯罪法を全部見まして、たとえば八号の公務員もしくはこれを援助する者の指示に從わないというのが第一でございます。さらに十四号の公務員制止をきかずに、人声とかラジオを非常に大きくして靜謐を害して、近隣の者に迷惑をかけるもの、こういうものがございます。それから十八号に「公務員に申し出なかつた」というのがございますが、大きく申しまして、御心配になる罰号は、ただいま申し上げました八号と十四号の運用が相当重大だと思うのでありますが、八号の場合は、これは非常な緊急事態でありまして、この緊急事態を処理する権限をもつておりまするところの公務員、たとえば救護の任に当つておるところの市町村吏員とか、警察官、こういう者の行動自体が、ただちに國民犯罪を起すか起さないかのもとになるのでありまして、こういう場合におきましての公務員行動につきましては、これは十分注意しなければならないと思います。それからまたこの公務員行動につきましても、八号をよくごらんなりますと、正当の理由がないということで、嚴格運用をいたしたいと思つているのであります。公務員制止あるいは指示、それが適当でないという場合におきましては、当然この正当の理由がない場合に該当します。かような観点で、この運用を十分にやつていきたいと思つております。それから十四号の場合は、たしかこの規定警察犯処罰令にこれに似たものがあつたと思うのであります。これは公務員制止をきかずにという一項を入れましたのは、從來のは非常に廣くて、公務員制止も何もなくて、喧騒をきわめたということになつておりましたが、一應その範囲を狹める意味におきまして、公務員制止ということをここに入れたのであります。しかもこの十四号は、迷惑をかけたという結果が発生しなければ、本号にあたらないという趣旨規定してあるのでございます。大体本法によりまして、公務員の勝手な考え方によつてこの運用をどうする、こうするということは各條文の中に制限してある積りでございます。ただ全体を扱います者は警察官でございますから、正当の理由があるか、あるいはみだりにであるか、あるいはこういう犯罪があるかどうかという観点に立ちますと、これは取締りにあたつております警察官の問題に該当してまいります。この点につきましては、この法案のみならず、全般法律運用上から申しまして、警察官のの嚴絡なる訓練と自覚にまつ以外にないと思つておりますから、その点につきましては、警察犯罪的に指揮しております檢察廳におきまして、十分の注意を加えるつもりでおります。御了承願います。
  23. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大体の御意見としてさようにも考えられますが、大体本法はもちろん道徳上においてはなはだ困るというものを取締られるのでありまするが、そのうちにおいても道徳的には悪いかしらぬが、犯罪としまでもやらぬでもいいのじやないかと思われるものもたくさんあります。それらの点を何でもこの條文にあてはまるからと言つて、どしどしやられるということになれば、先ほど私が言つたように一歩も動かれぬということまで出てくるのでありますが、それを警察官の教養を高めると言われても、それはそれに越したことはないのでありますが、ただちにそれは望みかねます。殊にそれが溢用せられて、特別の目的のために、これを使われるという憂えもなきにもあらずでありまして、過去においては、われわれはさようなことはたくさん経驗をもつているのであります。大きくいえば、先ほど議論になつたような組合運動に対する彈圧に使われるし、こまかくいえば、氣に入らないやつだというので、これでやるというようなことも考えられるのでありますが、この点はここにおいて記録で明確にするだけではなくて、將來においても当局において十分具体的に考えていただきたいと思いますから、この点に対する具体的の御意見を承りたいと思います。
  24. 國宗榮

    國宗政府委員 御承知通り刑法犯運用につきましても、訴訟法上起訴猶予制度がありますので、從來その犯罪の取扱い方について、非常に微罪であるというものにつきましては、一定の基準を指示いたしまして、そうしてこの程度のものはただちに処罰の対象にしなくてよろしいということが、從來警察官に対しまする犯罪檢挙の運用といたしまして、指示されているわけであります。その観点から申しますると、この軽犯罪法は全部微罪に該当するわけであります。そこでこれは全然取扱わなくてよろしいということになりますと、この法律の企図したところが全部意味のないことに相なりますので、將來この法案が成立いたしまして公布されることになりますれば、この取扱い方については、一定の基準をもつまして、具体的な十分の指示警察官にいたしたいと存じております。
  25. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その点は十分心してやつていただきたいと考えます。さらにこれはやはり微罪ではありますが、現行犯として逮捕はできるのでありましようか、その点を伺います。
  26. 國宗榮

    國宗政府委員 これは現行刑事訴訟法の第百三十二條によりますと、住居または氏名が明らかでない場合、逃走のおそれがある場合のみに逮捕ができるのでありまして、一般的には逮捕できないという建前になつております。この点につきましては、刑事訴訟法の今後の改正の際に、もう一應檢討してみたいと考えております。普通住居も明らかであり、また名前もわかつておるというような場合におきましては、この軽犯罪法罰号に触れたといたしましても、現行犯であつても、ただちに逮捕はできない建前になつております。
  27. 鍛冶良作

    鍛冶委員 もちろん私もそれは心得ておりますが、過去においてさようなものが無視されてやられていたことが非常に多いから、私は申し上げているのであります。ここまで議論がきますと、議論はそれますけれども、やはり人身保護法というものを至急に制定せらるべき必要を認めざるを得ないのであります。それのみならず、警察官に対して基準を示されるというならば、その基準に反したる者に対する一定の処罰もしくは取締りに関するものも、当然つけていただかなくては、過去における実例からして、実際には危ぶまざるを得ない。危惧の念なきを得ませんから、この点に対して、あらためて政府の御所見を承りたいと思います。
  28. 國宗榮

    國宗政府委員 基準を示すと申しますが、それは法律ではございませんので、特に罰則を設けるということはできませんけれども、もちろん行政上の違反に対しまする処分は励行したい、こう思つております。
  29. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今の点で、人身保護法に対する御意見はいかがでしようか。
  30. 國宗榮

    國宗政府委員 人身保護法は、現在参議院の方で御審議中でありますが、それにつきましては、もちろん私どもといたしましても、人身保護法が制定されることにつきましては、何の異存もないのでありまして、もちろん賛成でございます。
  31. 鍛冶良作

    鍛冶委員 いま一つ総括的に承りたいことは、私本法を読んでまことに嘆かわしく感じましたことは、警察犯処罰令は、たしか明治四十何年かにできたものと考えますが、この警察犯処罰令に盛られたる犯罪は、ほとんど公徳心に反する犯罪が多いと言つてよいのでありまして、國民の公徳心が向上すれば、かようなものは自然不要になるべき法律なのであります。しかるに今日はこの警察犯罪令でなくなつたものもありますが、むしろ非常に殖えたものができてきております。まことに私は日本國民のために嘆かわしいものだと思います。しかしそれかといつて、全部不要なものが加わつたとは申しません。今日の世情から申しまして、なるほど必要だと考える点もありまするが、これに伴つてわれわれの考えなければならぬことは、今日、日本國において、なおかような法律を必要とするこの世情を、單に軽犯罪法をいう一つ法律をつくることにおいて防止できると考えておられては、私はたいへんな誤りだと思う。問題はこういう法律をつくるよりも、公徳心の向上に重点を置いてやるのがほんとうでないかと考えますが、政府のこの点に対する御所見はいかがでしようか。
  32. 國宗榮

    國宗政府委員 御説のように、國民の公徳心が進んでまいりまして、この法律が要らなくなるという事態がまことに望ましいと考えます。しかし現状は終戰以來特にそうでありますが、社会の公徳心と申しますか、公共の行動において、あるいは私事の行動において、蹙顰すべき事項がたくさんありまして、私どもといたしましては、今日の事態から申しまして、なおかつこの法律の存在が必要であろうと考えております。かようなものがなくなつてしまうことを望むことは、まつたく同感であります。
  33. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私の質問の趣意がよく徹底しなかつたようですが、この法律をつくることにおいて、この世相がよくなり、公徳心が向上すると思われることでは、私は足らぬと思う。何らかもつとこの法律によらずして——これはそう言えば司法を掌る法務廳の問題でないと言われるかもしれないが、この法律によつて今日の世相をよくするのだという考えでは足らぬから、それと同時に、政治的にもつと当局にお考え願いたい点があると思うのですが、この点に対して何か御所見がありましようか、こういうことを問うのであります。
  34. 國宗榮

    國宗政府委員 たいへんむずかしい問題でありまして、もちろんこの法律自体によりまして、これだけの今日の世相なり事態が改まるとは考えておりません。これよりもつと教育であるとか、政治であるとか、文化の活動であるとかいう面におきまして、國民のほんとうの徳性を高揚し、もつとりつぱな國民にする必要があろうと考えておりますが、具体的なことにつきましては、私、申し上げるようなものをもつておりません。
  35. 鍛冶良作

    鍛冶委員 まあ今の問題は法務廳の仕事だけにいうことも無理かもしれませんが、私の願いまするところは、この法律を必要だと考えられるならば、法務廳といたしましても、他の方面にわたつて防犯的の考えから、教育その他政治に対しても、相当御注意せられることが必要でないか、こう思いまするので、あるいはこの法案審議に対しては、少し度を越したる質問かもしれませんが、眼を大きくして、今後法務廳においても働いてもらいたいと思いまするから、申し上げるのでありまする。  大体総括的のことはそのくらいにして、これから逐條についてお聽きしたいと思いますが、第一番に第一條の本文では、拘留または科料とのみ書いてその限度を規定しておりませんが、これはどのくらいまでやれるのでありましようか。科料はどの程度であるか、拘留はどの程度であるか、また無制限にやれるのか、この点をまず承りたいと思います。
  36. 國宗榮

    國宗政府委員 拘留は三十日未滿でございます。それから科料は二十円未滿ということに相なつております。
  37. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それならば前の警察犯処罰令と同様に、その通り書かれたらよさそうなものですが、これをなくせられたのは何ゆえでありましようか。
  38. 國宗榮

    國宗政府委員 これは刑法の総則の刑のところで、拘留は一日以上三十日未滿とするというように規定されておりますし、それから十七條において、科料は十銭以上二十円未滿ということになつておりまして、それ以上はできないことになつております。刑法内容をもつてみますると、限度はおのずからわかると思いまして、書かなかつた次第であります。
  39. 鍛冶良作

    鍛冶委員 拘留の点はまだよいが、科料の二十円は、この節ではちつとも痛くない、ないよりはましですが、これは先ほども議論のありました通り刑法に委ねられたのでありますから、刑法改正の際に御考慮を願わなければならぬ問題であるが、その点は刑法改正に伴つて相当かえる考えであるか、かえる思召しはないのであるか。
  40. 國宗榮

    國宗政府委員 この点は提案の際に多少御説明申し上げましたが、御説の通り、二十円未滿の科料というものは、現在の貨幣價値から申しまして、ほとんど意味がないものと言わなければならないと存ずるのであります。もちろん刑法改正の際には、この点を十分に考慮するつもりでありますけれども、今日の物價の事情が恒常的のものであるか、あるいは一時的のものであるか、その点もいろいろ考え合わせられまするので、今日の事態に処するためには、科料の点に関しましては、一應刑法の臨時的の特則を至急に考えたい、こう存じておるのであります。もちろん科料の点は、多額に上げるつもりでおります。
  41. 鍛冶良作

    鍛冶委員 この第一條の第一号に「正当な理由がなくてひそんでいた者」という字がありまするが、この「正当な理由」というのはずいぶんむづかしい問題ですが、これは裁判所にお任せするほかないと思いますが、よくある例は、乞食及び浮浪者は、この條文によつて取締られるお考えでありましようか。
  42. 國宗榮

    國宗政府委員 いわゆる浮浪者は四号に該当する場合が多いのじやないかと思つております。それから乞食は二十二号に該当するように思つております。ただしかし、浮浪者でありまして、かような場所に隠れ潜んでおるというような事態がありますれば、この一号に該当する、かように考えております。
  43. 鍛冶良作

    鍛冶委員 それはよくわかるのですが、ただ乞食として罰するとか、浮浪者で四号で罰するということはわかつておるのですが、私の言うのは、そういうものを罰するというならば、これは非常に廣汎なものでありますが、私常に眉をひそめるのは、上野の浮浪者ですが、あれだけの者が常におる。これはこの新しい法律がなくても、警察犯処罰令の第一條第一号にも、私は該当するものと思つておるのですが、やつておられるのかは知りませんけれども、われわれの目では、やつておるのかおらぬのかわからない。どうにもしようがなくなれば、初めてやつておるという現状なのでありまして、これはこの規定だけではありません。総括的に考えるのでありますが、このような法律を設ける以上は、常に私の憂えるのは、法律があるにもかかわらず、その実行ができないということでは、法律の権威を失うのでありまして、この中へそれがはいるというのならば、私入れて悪いというのではないが、入れる以上、励行できることでなくちやいかぬ。はたして励行できるかどうか。励行できないものをここへ法律でこしらえてあるということになれば、まつたく法律の経威を失うことになる。強いて言うならば、強制力、統治権に影響する問題だと思いますから、その点を聽くのでありますが、それにはまるならば、今後どこまでも取締られるのか、どうして取締つていくのか。現在の社会状態でできないというならば、この法律に対しての心得方が変つてくると思いますから、その点を聽きたいから質問したのであります。
  44. 國宗榮

    國宗政府委員 上野の浮浪者のようなものにおきましては、もちろん私どもとしては、それがこの法律に触れる場合におきましては、取締つていきたいと考えております。しかし一面におきまして、今日のこの社会世相というものが、ああいう事態を惹起させておるものと思いますので、單に取締りという観点だけで、あれの一掃を期することは困難だろうと思います。あれらに対するところのいろいろな社会政策的な方途も考えなければならぬ。両方相合せまして、そうしてああいう事態をなくしていきたいと考えております。私も実ははなはだ申訳ないのでありまするが、あの取締りの現場というものを具体的に聽いておりませんので、責任をもつて申し上げるわけにはまいりませんが、おそらく現行の警察犯処罰令によつて、相当の取締りをしておるのではないか、かように考えております。
  45. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これはまだあとにもいろいろ出てきますが、先ほど質問とも関連するのですが、これはなかなかこの刑法とか取締法だけではいかぬのです。そこでわれわれは法律で取締るだけなので、社会政策の方は人がやるから知らぬ、こういうことではいかぬと思うのです。こういう法律をつくられる以上は、どこまでも法律の執行ができることをやるのが、法務廳の任務だと思いますが、社会政策が足らぬのならば、社会政策をやつてもらわなければ困る、ここまでつつこんでやつてもらわなければ、法律をつくられた意味をなさぬと思う。その点を質問するのですが、この点に対してどうお考えになりますか。また今後どうやられるか、ひとつ承りたいと思います。
  46. 國宗榮

    國宗政府委員 その点につきましては、もちろん私どもとしましても、法律が確実に守られる、その効果をあげていくという面につきましては、社会政策的な方面を担当されますところの厚生省方面、あるいはまた取締りの施行とその行政の監督を行つております警察等、そういう國家の全体の機関をあげまして動いていくように、同時にまた法務廳といたしましては、犯罪の予防と申しますか、そういう観点に立ちまして、犯罪物の保護団体の活動というようなものを強力に進めてまいりまして、そうして十分この法律の成文にあげてありますような、この法が目的とするようなよい結果を招來するように努力いたしておるのでありまして、非常にむづかしい問題でありますけれども、私どもとして言うべきことは、各省に連絡をとりまして申しておるのであります。
  47. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次いで第二号及び第三号の、「隱して携帶していた者」という、この意義でありますが、具体的になりますると、これはずいぶんわれわれもこういう問題にぶつかつたことがあるのでありますが、実際にはどういう程度のものを隱して携帶したと言われるか、われわれが家の中でながもちの中へかりにもつておつた、これも隱してもつたのであろうか。それから人が歩くときに、トランクの中にはいつている、これも隱してもつたというのであろうか。これはずいぶん問題になるのでありますが、この点まず政府考えておられる大体の観点を承つて、それからあとお尋ねいたしたい。
  48. 國宗榮

    國宗政府委員 隱してといいますのは、これは抽象的に申し上げますと、一般社会生活上、これに接触する人に対しまして、通点の視界から隱されておるというようなことが、抽象的に言えると思うのであります。そうして携帶と申しますのは、所持とは少し違いまして、現にもつておる、あるいは懐中に入れておる、その他その人のすぐそばにありまして、ただちに使用し得るような状態というのを、まあ私ども大体携帶というように解しておるのであります。從つて今御質問のように、自宅のたんすの中に隱してあるという場合には、携帶には当らない。所持の観念にははいりましようけれども、携帶にははいらない。それから大ぴらにもつておるというような場合は、これは隱すに当りませんから、たとえば博徒などが切合いなぐり込みなんかをやります場合に、勢ぞろいをするときに、こん棒をもつ、あるいは刀劍をもつ、こういうような場合におきましては、隱しておるとは言えないと思うのであります。やはり羽織の内側に隱しておるとか、とにかく一應その人に接する場合に、視界からさえぎられておるという状態が必要だろう、こう考えております。
  49. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これは私も実際に当つた問題だから、よほど注意してもらいたいと思うし、はつきりしてもらいたいと思うのですが、私の知つた人で、北海道から出てきて、トランクの中へ小刀を入れておりました。田舎者だから、知合いの家へ行くのに、その家の近所のお菓子屋でお菓子を買つて、ちよつと挨拶をしてこようと思つたのでしよう。そのトランクをお菓子屋に預けて行つた。ところが行つたらまあと言われて一晩か、二晩泊つた。お菓子屋では不思議なものだから警察に届けた。警察でただちに開けてみると、中に小刀があつたので、強盗の嫌疑があるというので、その者の來るのを待つた。ところが前の日に預けて次の日に來たものだから、引つぱつてつて二週間ほど拘留しておいたが、何でもなかつた。ただ帰すわけにいかなくて考えたのが兇器を携帶した者というので、これに当てた。こういうのであります。これらは、犯罪捜査にこういう法律を悪用する最もいい例なんですが、これらの点から考えまして、携帶というのは、私は所持だと思うのですけれども、その点をひとつここでできるだけ明確にしてもらいたいと思うのです。
  50. 國宗榮

    國宗政府委員 どうもはなはだむずかしい具体的な問題でありますが、トランクに入れてもつておられるような場合は、やはり携帶に当るのじやないかと思います。ただいま具体的な例のお話でありますが、いつごろのことか存じませんけれども、現在におきましては、それは例えの銃器所持の非常にやかましい規定がありますが、それに該当すると思います。しかし今のお話の大要から申しますと、やはり携帶と言わざるを得ないのではないかと思つております。
  51. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私らがかりに荷物を引越しするときに、普通使うナイフとトランクの中に入れていつた場合、この法律では携帶として罰せられるのですか。
  52. 國宗榮

    國宗政府委員 その場合は、先ほど質問があつたと思いますが、多くの場合「正当の理由」ということにかかつてまいまして、正当の理由があるのでございまして、正当の理由がなく持つているとは言えないのであります。この「正当の理由がなくて」という場合は、嚴格に解釈したいと考えております。
  53. 鍛冶良作

    鍛冶委員 大体わかりました。しからば一層正当の理由ということを嚴格にやるように、警察官に対する指針を與えてもらわぬと困ります。  第四の「生計の途がない」というのは、どうもいくら読んでみても、私はわからないのです。「働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」これはよくわかります。しかし「生計の途がないのに、働く能力がありながら」というのは、あとさきの意味が一向わからぬのです。どういう意味でこれをおつくりになつたのか。また具体的にどういう場合なのか。承りたいと思います。
  54. 國宗榮

    國宗政府委員 「生計の途がないのに、」というのは、お説のようにちよつとわかりにくいのでありますが、これは資産もないし、職業による收入もないし、また親戚その他の者からの仕送りもなく、さらに働く能力はあるのだけれども、職業につく意思がない、こういうものを言つているわけであります。從いまして、金持の息子なんかが、いかに無職で遊情な生活をしておりましても、これは一應生計の途があるということになつて、本号には該当しないことになるのであります。
  55. 鍛冶良作

    鍛冶委員 わかつたようなわからぬようですが、今金持の息子ということを言われましたが、相当の資産があつても、一定の住居をもたないというようなことがあるでしようか。一定の住居をもたぬで、諸方をうろつくのは、いわゆる浮浪人なんである。たまにはばくち打かなんかで、金をふところに入れていることはあるかもわかりませんが、どうもその点はつきりせないと思いますが……。
  56. 國宗榮

    國宗政府委員 金持の息子で遊情な生活をしている者は、これはやはり生計の途はある、こう言わなければならぬが、もちろんそういう場合に、一定の住居をもつている者もありましようし、もつているのが普通だろうと思うのであります。本号で言つておりますのは、そういう場合でなくて、全然收入の途がなくて、しかも働く能力はある、そして職業につく考えはない、かつその上に住居がない、こういう場合に考えておるのでありまして、非常に狹いものなのであります。職業という問題でありますけれども、これは正当な職業でありまして、ばくち打とか、あるいはやみ商賣というのは、はいらない。こういうふうに考えております。この規定從來警察犯処罰令に比べますと、非常に狹くなつているわけであります。
  57. 鍛冶良作

    鍛冶委員 狹くやられるのはよろしゆうございますが、職業につく意思がないということは、現に職業についておらぬことに間違いないと思います。それでこれからもなおやらぬということでなければならぬと思います。現在職業についておらず、一定の住居をもたないで、そこらをうろついて歩くのは、生計の途があるわけはないと思うのですが、何ゆえ両方衣れなけれずならぬのでしようか。生計の途がないとそう説明せられればなるわどと思いますが、よほどくどいようですが、もう一遍。
  58. 國宗榮

    國宗政府委員 その点ごもつともだと思うのでありますが、現に職業もありませんし、住居ももつていない、そうすれば生計の途がないというのが通常だ、こういうふうに言われるのは、当然だと思うのであります。しかし非常に稀有な例を考えてみまして、金持の息子が金をたくさん持出しまして、それをもつてつて、それで一應生活はしておる。しかし宿屋を泊り歩いておつて、住居が一定していない、働く意思もない、こういう非常に稀有な例も考えられるのでありまして、仰せ通りに、わざわざ生計の途がないのにと書く必要もなかろうという御意見も出るかと思います。しかしほかにもあるかもしれませんが、ちよつと今考えつきませんけれでも、ごくまれな場合を予想いたしまして、「生計の途がないのに、」というのを入れたのであります。実は「生計の途がない」というのを入れない場合になりますると、親戚から仕送りを受けておるような者とか、そういう者は、やはりこれに該当するおそれがあるものであります。そういう者なら、大体住居をもつておるじやないかということになりますけれども、場合によりますと、宿屋なんかを轉々といたしておるような場合も考えられるので、一應入れたわけであります。
  59. 鍛冶良作

    鍛冶委員 第五号、これは小さい問賀ですが、「公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯樂場」となつておりまして、公共の会堂を娯樂場の中へ衣れてある規定のようでありますが、公共の会堂は娯樂場の中へはいりましようか。これは何か区別しなければいかぬのじやないかと思いますが……。
  60. 國宗榮

    國宗政府委員 これはちよつと御説明申し上げますが、この法案におきましては、「その他」というのと「その他」のという書きわけがしてあるのでございます。たとえば第八号に「風水害、地震、火事、交通事故、犯罪の発生その他の変事に際し、」と、「その他の」というふうに書いてあります。この「その他の」と「の」を入れました場合には、上に掲げました例示のものに大体限定された趣旨を表わしているるのでありまして、「その他」と書きましたときには、大体これはつなぎの意味で書いたつもでございます。從いまして、必ずしも「公共の娯樂場」は上に掲げましたものに限定されていないのであります。公共の会堂は公字の娯樂場の中に含まれるじやないかという御質問でありますが、公共の会堂の中には公共の娯樂場に含まれるものもありますけれども、多少観念が娯樂場と違うと思います。公共の娯樂場に考えておりますのは、たとえば競馬場とか野球場というようなものを考えておるのでありまして、その意味で、かように一括して「その他」で続けて並べた次第でございます。
  61. 鍛冶良作

    鍛冶委員 そうすると、娯樂場でない公共の会堂があり得ることを予想しておられるのですか。
  62. 國宗榮

    國宗政府委員 どういうふうに申しますか、公字の会堂を娯樂場という意味に限定してしまうことを避けただけでありまして、娯樂場と言うより公共の会堂の方が、少し幅があるような感じがいたしましたので、これをあげて別に書いたのであります。
  63. 鍛冶良作

    鍛冶委員 次に第七号ですが、これは警察犯処罰令と比較して考えたのですが、これは水路だけを取締るつもりでおられるのですか。陸路を除かれたのは、どういうわけでしようか。
  64. 國宗榮

    國宗政府委員 警察犯処罰令に比べまして、これは水路だけにいたしたのであります。陸路を除きましたのは、道路交通取締法ができまして、それに陸路の関係は、一切規定されておるのでございますから、それで除いた次第でございます。
  65. 鍛冶良作

    鍛冶委員 その次は「水路に放置し、その他水路の交通を妨げるような行為をした者」「この交通を妨げるような行為」ということと、「放置」ということとは、ちよつと意味が違うようですが、消極的にただ置いたからといつて罰せられるのか、それとも妨害になるという認識をもちながら放置した、そういう意味になるのでしようか。これはよくある例ですが、何でもなく、じやまにならぬと思つて置いても放置したということになりますか。それは見方によつて妨害になる、放置して妨害した、こういうのか。それとも放置したことが妨害になるということで罰せられるのか。これは警察でにらまれるとよくやられる。表に物を置くと、道路に放置したとやられる。妨げにならぬでも、警察官がその家を憎んでおつたらやるという例がたくさんある。これはどうしても放置するということでなく、交通の妨害になることを認識しながら放置したという、この制限がなくてはいかぬと思うのでありますが、その点はいかがでしよう。
  66. 國宗榮

    國宗政府委員 この「放置し」と申しますのは、單に放りばなしにしておく、それだけでありますして、それによつて水路の交通を妨げるという認識まで必要としない。ただ鰐つておけばでよろしい。その代り「みだり」を置きまして、「みだりに」で一つ仰えてある、そういう法文の趣旨であります。
  67. 鍛冶良作

    鍛冶委員 前の警察犯処罰令には「物件ヲ置キ又ハ交通ノ妨害ト為ルヘキ行為ヲ為シタル者」とあるのであります。これでさえ今言つたような実情の悪用の例がありますが、それを「みだりに」といつても、その判断警察官に任せるので置いたからと一々やられたら、まつたく一般人は危くて物も置かれはしない。これは前の通りに「妨害ト為ルヘキ行為ヲ為シタル者」というように、積極的でなくてはおもしろくないと思います。
  68. 國宗榮

    國宗政府委員 この警察犯処罰令における「ソノ他ノ物件ヲ置キ又ハ交通ノ妨害ト為ルヘキ行為」この解釈も、実はこつちの法案と同じことでありまして、ただ置くだけでいけないことになつてつたのであります。別に警察犯処罰令趣旨をここで改めたわけではないのであります。御心配の点は非常にあると思います。しかしみだりに船やいかだを水路に置れては、水路の交通を妨げるような事態が通常発生するものでありますから、みだりに置かないようにしていただきたいという趣旨で、置いただけでいけないこういうことに規定してあるわけであります。
  69. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これも先ほど言つたように、警察官に対しても「みだりに」ということをよほど注意していただかないと、なんでも「みだりに」でやられたらやりきれません。
  70. 松永義雄

    松永委員長 本日はこれにて散会いたします、明日は午前十時より開会いたします。     午後零時五分散会