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1948-06-16 第2回国会 衆議院 財政及び金融委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月十六日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 塚田十一郎君 理事 島田 晋作君    理事 中崎  敏君 理事 梅林 時雄君    理事 吉川 久衛君       青木 孝義君    淺利 三朗君       大上  司君    島村 一郎君       苫米地英俊君    松田 正一君       宮幡  靖君    小平 久雄君       川合 彰武君    佐藤觀次郎君       林  大作君    松原喜之次君       栗田 英男君    中曽根康弘君       長野 長廣君    細川八十八君       井出一太郎君    内藤 友明君       藤田  榮君    本藤 恒松君       堀江 實藏君    河口 陽一君       本田 英作君  出席公述人       井藤 半弥君    稻川 宮雄君       加川 義一君    栗原  修君       徳島米三郎君    三樹 樹三君       安井 七次君  委員外出席者         專門調査員   氏家  武君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた案件  基礎控除扶養控除及び勤労控除、その他所得  税法改正について  取引高税新設について     —————————————
  2. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 これより財政及び金融委員会公聽会を開会いたします。  本日は去る六月八日本委員会に付託せられました所得税法の一部を改正する等の法律案及び取引高税法案審査のため、基礎控除扶養控除、及び勤労控除、その他所得税法改正について、取引高税新設についての二問題を取上げて、公述人方々の御意見を拜聽することといたします。  今次の税制改正は、御承知ごとく最近における賃金物價等経済諸情勢に即應して、國民租税負担を調整合理化するとともに、財政需要に対應して租税收入を確保する等のため、税制全般にわたり改正を加えられたものでありまして、租税の中枢たる所得税については、賃金物價等変動課税の実情に照らし、負担軽減をはかることに重点を置き、基礎控除扶養控除及び勤労控除相当程度引上げるとともに、税率を大幅に引下げてあります。またこの所得税及び法人税軽減による減收の一部を補填し、財政基礎を確実ならしめるため取引高税が創設され、税率は低く、各取引段階に対し百分の一程度課税を行うことになつております。以上の二税につきましては、たとえば所得税法人税中心として負担軽減をはかつてありますが、國民生活一般に相当窮迫しておる現在、中央地方を通ずる國民租税負担は必ずしも軽くはなく、しかも二千六百三十二億円に上る租税收入を確保しなければならぬという事情や、取引高税にしても、その税率はきわめて低いが、結果において大衆課税になりはしないかというような、いろいろの御議論があると思われますので、公述人方々におかれては、本財政及び金融委員会における法案の審査の参考のため、忌憚なき御意見発表をお願いいたしたいと存じます。  公聽会は本日と明日の二日にわたつて意見を拜聽することになつております。その御氏名はお手もとへ配付いたしましたように、学識経驗者のお方でおいでを願いましたのが安藤政吉君、井藤半弥君、稻川宮雄君、加川義一君、栗原修君、徳島米三郎君、三樹樹三君、安井七次君の八君であります。なお一般公述申込も多数に上りましたが、その中より泉吉之丈君、金澤甚衞君工藤義男君、久保山雄二君、田中友章君、津曲百枝君、藪松五郎君の諸氏を選定してお願いをいたしたのであります。なお本委員会において公述人に選定いたしました、日本生活問題研究所長安藤政吉君は病氣のため欠席の旨御通知がありました。経済團体連合会からは出席の申出がありませんので、この点あらかじめ御了承を願いたいと存じます。  本日お越しを願いました学識経驗のあられる各位には、御繁忙中を特に雨中おいで願えたことを厚く御礼申し上げます。これより公述人の方の御発言を願うことにいたします。まず商大教授の井藤半弥君にお願いすることにいたします。
  3. 井藤半弥

    井藤公述人 題目所得税取引高税に限定されておるということを、うかつで、私今氣がつきましたのですが、税制改革の問題は、二つ税金だけを切離して問題にするのは少し無理があるので、今度の政府提出税制改革案全般について、きわめて簡單意見を開陳させていただきたいと思います。  申すまでもないことでございますが、租税問題というものは、それだけを切離して問題にすることはできないのであります。國の歳出歳入全体に関係がありますし、また國税を取扱う場合には、地方税も当然合わせ論じなくてはならぬのであります。ですが、ここでは便宜上國税だけを切離しまして、それから國のほかの歳入及びほかの歳出との関連を無視いたしまして議論させていただきたいと思います。  そこで問題を次の三つにわけたいと思います。その一番は租税総額の問題、租税総額が國の経済その他から見て妥当であるかどうか、二番が租税負担配分の問題、三番はここの租税内容、その三つにわけて簡單意見を述べさせていただきます。  まず一番の租税総額の問題でありますが、現在昭和二十三年度の予算の國税総額は、專賣益金を含めまして——これから私が申します租税という中には、すべて專賣益金を含んでおります。租税総額專賣益金を含めて三千五百七十五億円であります。それ以外に地方税が六百三十四億予定されておりますが、これが國の経済という立場から見て妥当であるかどうかという問題でありますが、これをはかる方法として普通に行われておりますものは、租税総額國民所得に対する関係であります。國民所得は、政府発表によりますと、今年度は一兆九千億円となつておりますので、租税総額國民所得で割りますと、國税の場合は一八%になるのであります。それに地方税を加えますと、租税國民所得の二二%になつております。これと同じような計算を昨二十二年度についていたしますと、國税地方税を含めて一九%となります。そこで、國民所得の約二〇%内外が税金となるのでありますが、これが國の経済その他から見て、はたして妥当であるかどうかという問題です。この場合に、他の処、時の割合を比較することが行われております。  そこで、まずわが國の過去を見ますと、今度の第二次大戰中のこの割合はどうだつたかと申しますと、大体二〇%ないし二五%であります。それに比べますと、現在は必ずしも多いとは言えないのであります。それから最近の英米でありますが、これは大藏省が調査されたものであります。昨年のイギリスについて、國税地方税をわけたもののパーセンテージを調べますと、四〇%、昨年のアメリカは二六%であります。この数字を比較いたしますと、昭和二十二年の國税地方税を合計いたしまして、二二%というのは必ずしも多いとは言えないのであります。ただ次のような事項は注意しなくてはならないのではないか。それは租税という概念國民所得概念が國によつて——まあ同じ國でも、時代によつて違う。それから財産所得その他富の程度が國によつて違う。それから租税負担配分方法が國によつて違う。それから國家経費の使い方が國によつて違う。このような事情を合わせ考慮しなくてはならないから、このパーセンテージで判断するのは危險でありますが、大体そう不当に重いものとは言えないと思うのであります。  次は第二の租税負担配分の問題であります。総額がかりにやむを得ぬものといたしまして、一体これを國民に割当てるやり方が、はたして妥当であるかどうか。これが第二番目の租税負担配分の問題であります。これにつきまして、大づかみにこれを檢討する方法は、租税收入を直接税と関接税とにわけて比較する方法であります。そこで昭和二十三年度の國税を直接税と関接税とにわけてみました。しかしこのわけ方大藏省が御発表になつておられるわけ方と違うのでありまして、私がここで言う間接税とは、大体廣い意味消費税でありまして、いわゆる大衆課税危險のあるようなものを間接税と名ずけました。それから大体金持が負担すると考え得るものを直接税ときめました。もちろんそれには專賣益金を含めて、直接税と間接税にわけてみたのであります。もちろん問題の取引高税間接税の中に入れておいたのでありますが、これによりますと、昭和二十三年度は直接税合計が千四百九十二億円でありまして、全体の四二%であります。それから間接税は二千八十二億円でありまして、全体の五八%であります。かりに直接税を一〇〇といたしますと、間接税は一三九となるのであります。これをわが國の過去の場合と比較いたします。これも私が計算いたしましたので、ちよつと反対意見もあり得ると思いますが、過去について計算いたしますと、これはいずれも直接税を一〇〇として、それに対する間接税割合を述べたものであります。支那事変以前の昭和十一年は、直接税一〇〇に対して間接税は一四五、間接税がかなり多かつたのであります。昭和十二年は直接税一〇〇に対して間接税は一一二というふうに減つておりますが、翌昭和十三年は直接税一〇〇に対して間接税は八〇、それから昭和十四年から昭和二十一年のころまでは、大体直接税一〇〇に対しまして間接税五〇ないし六〇、直接税に対して間接税は五、六割しかなかつたのであります。ところが去年からまた傾向が変つてまいりまして、昭和二十二年度は、直接税一〇〇に対して間接税は同じで一〇〇、それからことし昭和二十三年度は直接税一〇〇に対して間接税は前申したように一三九となつております。これによりまして、昭和十一年から今年に至る日本租税制度の動向を大つかみいたしますと、戰爭中はかなりいい方に向つてつたのでありますが、最近は必ずしも望ましいような方向に向つておらないのであります。すなわちセンセーシヨナルなものの言い方をいたしますと、後退をいたしたのであります。逆轉していると一應は言えるのであります。しかしながらこれもまた一方から言うとやむを得ないことじやないか。と申しますのは、租税というのは國民経済前提として実施されるものでありますので、國民経済生活が後退いたしますれば、それに伴つて租税生活がまた後退するのも、ある意味においてやむをえない。もつと具体的に申しますと、終戰以來わが國の國民経済力が後退いたしました。それから國民納税道徳が遺憾ながら低下しております。それから税務機構が弱体化しております。このような事実を考えますと、進歩的な直接税中心制度を現在実施するのは困難という事情もありますので、この点を考慮いたしますと、この傾向は一概に惡いとは言えないのであります。しかしながら傾向としては望ましくないことでございますので、將來税制改革といたしましては、なるべくこの惡い傾向をためるように努力する必要があるのじやないかと考えるのであります。  第三番目は個々の租税内容の問題であります。今後の政府税制改革案というものは、結局はインフレーシヨンに対應して租税制度を改める、これが中心となつているのじやないかと考えられるのであります。しかし忌憚なく申しますと、インフレーシヨンの進行に対する租税対策といたしまして、今度提出の原案は必ずしも十分なものとは言えないのであります。どの点が一番大きな欠陷かと申しますと、簡單に言いますと、貨幣價値の時間的相違というものを十分考慮しておらぬということ、これは例をあげるとすぐわかるのであります。たとえば所得税譲渡所得——人に家を賣つたような場合いくらもうけたか、そのもうけにかかる譲渡所得でありますが、まず譲渡所得計算方法を見ますと、買値段と賣値段の差額が譲渡所得でございます。ところが買値段というと現実に買つた値段が標準になつております。賣値段というのは現在の値段、そのために実際利益がないにかかわらず、名目上の利益が出るというので税金がかかるのでありますが、これは貨幣價値の相違を十分に考えないからそういうことが出てくるのであります。それ以外の点について申しますと、たとえば贈與税につきましては、その人の一生を通じて、五万円までの贈與には税金がかからないのであります。一生を通じて計算する場合に、たとえばことし一万円人にやつて、來年一万円、再來年また一万円やる、この場合貨幣價値変動がありますと、同じ一万円でも内容に違いがあるにかかわらず、形式的にやはりこれを合計するということをやつております。こういうことはほかの場合にも非常にたくさんございますので、この点は何とか考慮する必要があるのじやないか。それに対する対策として私は一つの案を提唱したいと思います。すなわち原價倍数制度というものを採用してはどうか。原價倍数制度と申しますのは、過去の貨幣價値変動というものを大体はかりまして、それによつてそれぞれ半年ごととか一年ごとの倍数制度をきめる。そうしてこの倍数によつて課税標準となる金額に調整を加えるのであります。この制度は私は少くとも過去から現在に至る課税標準について採用すべきものじやないかと考えております。將來の問題としてこれを採用するということは、何だかインフレーシヨン將來も起ることを前提とするようでありますので、これは事実採用しにくいと思いますが、少くも過去において、今日までインフレーシヨンがあつたという事実は無視することができないのでありますので、これは原價倍数制度を採用して、何とか調整する必要はないかと思うのであります。これは單に所得税譲渡所得に限らず、法人税についても、その他日本税法のあらゆる部門について関係あることであります。  そこでまず所得税でありますが、所得税で問題になるのは例の基礎控除その他の点であります。そこで基礎控除や、家族控除や、給與所得控除、こういうものが今度引上げられております。別の言葉で言いますと、引上げられたということは負担が軽くなつたということでありますが、これがはたして妥当であるかどうかという問題であります。そこでこれを昨年の四月現在の租税制度と比較いたしまして、一應この間の関係を見たいと思います。  まず基礎控除でありますが、去年の四月は四千八百円、現在も基礎控除は四千八百円でありますが、今度政府提出の案では基礎控除は一万五千円となつております。すなわち基礎控除が三・一倍に引上げられまして大体三倍です。それから家族控除でありますが、昨年の四月現在の制度で、一人について二百四十円であつたのでありますが、今度は千八百円に引上げられたので、七・五倍に引上げられたのであります。それから給與所得に関する勤労所得についての控除でありますが、昨年の四月の場合はその割合は二〇%、最高は六千円というのでありますが、今度は二五%になりまして最高は三万七千五百円となつております。そこで%に関しては別といたしまして、最高六千円が三万七千五百円ですから、比較すると六・二倍に引上げられたことになります。もう一度簡單に結論を申し上げますが、基礎控除は約三倍、家族控除は七・五倍、勤労所得控除は大体六倍強に引上げられた。そこで引上高がはたして妥当であるかどうかということは、これはいろいろの角度から檢討することができるのでありますが、私は消費者價格消費者物價指数をとりまして、そうしてこの金額と比較してみたのであります。しかるにこの一年間の消費者物價指数消費者價格はどれだけ高まつたかといいますると、約二・三倍にしか高まつておらない。賃金はどれくらいになつたかと申しますと、これもいろいろの計算方法もあると思いますが、大体賃金は一年間に二・六倍、または二・七倍になつております。消費者價格が大体二・三倍、賃金が大体二・六倍か二・七倍になつている。それに対して税金控除の方が三倍とか、七倍とか、六倍になつているということは、形式的でなく実質的に判断いたしまして、去年四月の制度に比ベて、現在はかなりの軽減が行われているものと一應考えてよかろうというのであります。しかしながらそれで十分かと考えますと、現在のわれわれの生活状態から見まして、この基礎控除家族控除給與所得控除は決して十分なものとは言えません。これを昭和十二年の第二種所得税免税点千二百円、これは大体現在の基礎控除と比較さるベき金額でありますが、昭和十二年の千二百円は、現在の貨幣價値に直しますと十二万円であります。昭和十二年の場合はどうかというと、現在の價値にして十二万円までが免税なつた。今度はどうかというと一万五千円が免税であるというからこの二つを比ベますと、控除高は必ずしも望ましいことではないと思うのであります。しかし去年の四月に比ベますと、たしかにいい方に向つているということは言えると思うのであります。  それから所得税について実際問題になりますのは、予定申告納税制度であります。この予定申告納税制度は皆さん御承知の通り、昨年來実施されておるのでありますが、この成績は遺憾ながらうまくいつておりません。私は予定申告納税制度というもの自体について再檢討を要するものと考えるのでありまして、予定申告納税制度は、近い將來止めて、その代りに次のような制度を実施したらどうかと考えたのであります。それは前年度の実績基礎とする、前納制度であります。この制度によると前年度の実績は各納税者にわかつている。前年の実績基礎として、その税金を年三回、四回に一應分けて納める、そうして年度が経過いたしましてから実績を精算して、國民がこの際一回だけ申告する、そうして前に拂つた金額とこの実績によつて計算したものの差額の過不足を年末に清算する。そういうようにいたしますと、ただ一回の申告で済むのでありますから、國民納税手続という点から言えば非常に便利じやないか、結果から申しましても同じ年度の実績について税金をかけるので、一年後になりますと、國家租税收入という点から言いまして、予定申告納税制度の場合と同じことになると思います。もちろん今年からすくに実施するということはとうていできないのでありますが、將來の問題として御研究を願いたいと思うのであります。  それからこれは今日の題目になかつたことかと思いますが、やはり関連がございます法人税の問題であります。法人税は廣い意味所得税の中にはいります。これは一番問題になる制度でありまして、現在の日本法人税制度は、平時の税制としてはまことに結構なものでありますが、インフレ時代の、殊に現在のわが日本インフレ時代税制といたしましては、現在ある税金の中で、最も欠陷の多い税金だと思う。もちろん法人税金額租税総額のわずか五%で、全体から言つて大したものではありませんが、制度としては欠陷が多い。それはどういうことかと申しますと、普通所得についてもそうでありますが、殊に超過所得清算所得について前申しましたような、貨幣價値変動が無視されて課税標準がきまるために、いわゆる名目架空利益課税が行われるということであります。今度の政府原案ではもちろんこの事実を認められまして、超過所得につきまして税率の緩和が認められた。これは單に税率の緩和をやつただけでありまして、制度としては改正されておらぬのであります。それはどうしたらよいかという問題でありますが、私は次のような制度を実施すればよいじやないかと考えております。それは前申しました原價倍数制度をとり入れるということであります。これによつて過去の資本の評價替をする、あるいは過去からあるところの会社固定資本評價替をする。あるいはこれを加味いたしまして減價償却規定改正を行う。あるいはこういうことができない場合には、それに代る免税積立金という制度を認めまして、各目利益課税の弊害を緩和する必要があるのではないかと考えます。もちろんこれは私は租税だけを対象にして問題にしたためにそういうことを言うのでありますが、他に日本経済再建税金以外の方面とも関連がございますので、ただ税金立場だけからこういうことを主張するのは少し危險でありますが、しかしながら少くとも税法に関する限り、何とか今申しましたような趣旨を加味する必要があるのではないかと考えるのであります。私はそういう意味において現在法人や個人の所得税に行われている名目的架空利益に対する課税を、もつと緩和する必要があるのではないかと考えます。だがしかし私が強く申し上げたいことは、名目架空利益課税することはよくないという考えに対して反対するものであります。名目架空利益というものは、ほんとう利益ではありません。從つてこれに税金をかける場合に、ほんとう実質利益と同じような扱いをするのはよくないのでありますが、しかし一部の主計学者会計学者が言うように、名目架空利益だから税金をかけるのはよくない。それは元本消耗を行うことになるのだからよくないという議論がありますが、私はこの議論には無條件に賛成することができないのであります。現在のようなインフレ社会になりますと、國民経済全体で、何かの意味において元本消耗が行われております。たとえばわれわれはどういう形で元本消耗を行うかと言うと、たけのこ消費生活という意味元本消耗を行つております。また勤労者は栄養不良という形で元本消耗を行つております。金融機関に金をもつている人、人に金を貸している人は、預金または貸金の貨幣價値の減少という形で元本消耗を行つております。だから國民経済全体が、何かの意味において元本消耗を行つておりますとき、会社その他の企業名目課税という形で元本消耗を行わなければならぬということは当然のことでありまして、このインフレの危機を國民経済全体が合理的にどういうふうに負担するか、そこに問題があるのであります。もし名目架空利益だからといつて税金をかけないと、結果は物價騰貴という形をとりまして、消費大衆がそれを負担する、あるいはその税金だけ國家收入が減りますので、それ以外の税金を増徴しなければならぬという結果になる。そこで全体から申しますと、結局名目的架空利益だからといつて税金を免除するということはよくないのであります。名目架空利益でありましても、ある程度負担が当然でないかと考えるのであります。だからと言つて会社が潰れても構わぬと言うのでない。もちろん日本経済の発展、再建の妨害とならない範囲内においてという條件のあることは申すまでもない。結論を言うと、私は名目架空利益に対する課税は、今申した條件内において、ある程度までやむを得ないということであります。  その次に間接税の中の從量課税引上げ流通税間接税における定額税税率引上げでありますが、これは当然のことであつて問題ありません。  最後に問題は取引高税であります。取引高税というのは長所もあれば短所もある。長所は、租税收入がきわめて多いということが最大の長所であります。もう一つはインフレ時代租税制度として適当なものだ、というのは取引高税取引に絶えずかかつて、絶えず國家税金を納めますために、インフレによつて物價が騰貴いたしましても、それに対應して税收入が確保される。これは税務行政という点に便利ないい税金であります。しかし次に述べるいろいろ欠点がある。たとえば物價騰貴を助長して大衆課税となる危險がある、あるいは脱税が多い、手続が煩雜であるということ、合同企業、大企業に有利でありまして、分業を行つておるところの中小企業について不利である等、いろいろな欠点がありまして、租税の種類としてはあまり望ましい税金とは言えないのであります。現在わが國で残つております税金、今までかかつておらなくて、將來かけようと思えばかけ得る重要な税金として、次の二つがあると思う。それは経常財産税取引高税であります。そこで租税体系という一般理論から申しますと、経常財産税をかける方が、理論としては正しいのでありますが、現在の日本の状態におきましては、経常財産税をかけましても收入が少い、それから換物運動を助長するとか、その他いろいろな弊害が現われますので、現状から申しますと、経常財産税は理屈として正しくても、実行は困難であります。そこでやむを得ず残されたものは何かというと、私は取引高税以前にないだろうと思います。取引高税は決していいものではございません。取引高税を取らない場合はどうするかという問題でありますが、その場合には國家経費を減らすか、ほかの從來からあるところの税金を重くするか、どちらかであります。ところが從來からある税金をこれ以上重くすることはできない。國家経費もこれ以上節減できないとなりますと、結局は惡いとは知りながら、これ以外に途はないということになるのであります。結論を申しますと、私は、欠陷があるけれども、取引高税はそういう條件つきで賛成であります。  これをもつて私の公述を終ります。
  4. 青木孝義

    ○青木(孝)委員 ただいまの原價倍数制度について、もう一度簡單に御説明願います。
  5. 井藤半弥

    井藤公述人 原價というようなことをつけなくてもいい、倍数制度でありますが、それは貨幣價値が下りつつあります。そこでわかりやすく申しますと、五年前の物價が一だつたとすると、その翌年の四年前は二倍になり、その次は三倍、四倍、五倍といたしますね。その物價の騰貴率、すなわち貨幣價値の下落率を考慮いたしまして倍数をきめるのであります。物價指数のように一月とか半月とか、そういうのは税務行政上めんどうでありますから、半年とか一年を單位として、大体のそういう倍数をきめるのです。その倍数によつて課税標準になるべき金額に修正を加えるのです。だからして貨幣價値の下落に反比例するということになります。これはさきの法人税課税の場合でも、その他滯納の場合の加算追加税、その他税法のあらゆる部面について、これが應用されるのではないかと思います。これはあまり綿密なものにいたしますと、税務行政という立場からいつて非常にめんどうくさいことになるから、大体のことをきめたらよいじやないかと思います。
  6. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 井藤教授にちよつと質問したいのです。先ほどちよつとお話になりました経常財産税について、どういう長所欠点をもつておるか、御説明願いたいと思います。
  7. 井藤半弥

    井藤公述人 経常財産税について、私は現在日本でなぜ設けないか、これも財産一般の短所、長所がございます。特に現在の日本においてそういう短所、長所があります。一般財産税の短所、長所について皆さんに申し上げるのは失礼だと思いますけれども、これはまた別にいたしまして、理論的に申しましてなぜ設ける必要があるか、それは所得税に補完税がないということであります。それは皆さん御案内の通り、昭和十四年度まで所得税がありますと、その所得税の補完税として地租、営業税、家屋税、資本利子税というものが、收益的なこれらの補完税をなしておりました。所得税の不完全なところを、それによつて埋めておつたのであります。ところが昭和十四年の税制改革によつて昭和十五年から実施されましたが、收益税の地租や、家屋税や、営業税は、原則として地方に委讓する。そうして所得税としては総合所得税があつて、そして分類所得税がありましたが、分類所得税というものはいわば所得税の補完税であります。ところが去年の税制改革で分類所得税というものは全然なくなりました。そして総合所得税一本になりました。そのために所得の種類別による課税というものを十分にすることができない。というのはたとえば百万円もうけた場合は、家賃で百万円もうけた場合でも、われわれが本を書いてもうけた場合でも、大体同じことです。もちろん勤労所得控除とか、一時的所得は半額しか税金をかけないということをやつております。井藤なら井藤個人を中心に、すべてをひつくるめて税金をかけます。そうしまして個々の差別を無視するという欠点があります。これを簡單に申しますと、所得税には現在日本には補完税がない。そこで何を設けるかということになると、結局收益税として地方財政に委讓したものはこれは取返すことができない。分類所得税もやらない。そういたしますと残るところは結局財産税じやないか。それでこの補完税は、財産の一部に重い税金をかけて、労働者には軽い税金をかける。そういう趣旨でかけるのでありまして、おととしまでの日本、あるいは昭和十五年以前の日本は問題にならぬと思いますが、現在ではそういう意味において問題になると思う。これはその長所でありますが、申すまでもなく同じ所得についても、一般論といたしまして財産所得に重くかけなければならぬ。労働所得に軽くかけるということはきまりきつたことであります。それからもう一つ財産には收益財産以外にも税金をかけますと、ある意味においては奢侈課税だということを言う人もあります。そういう意味において財産税にしておる。もう一つ所得税の場合ですと、私なら私が金をもうけるというと、このもうけた所得という側面からつかまえますために、所得の側面で一應脱税をやりますと、もうつかまえることができない。所得という側面でなく、財産という違つた角度でつかまえますと、一方が脱税しても一方でつかまえられる。もしやみ屋さんに税金をかけるとなれば、これは所得税ではどうしてもだめですが、財産という何かの形で残つておるから、これをやれば残りなくつかまえることができる。これは長所だと思います。それではそれをなぜ設けないかというと、短所でありますが、これは御案内の通り、財産税というものは、井藤なら井藤という男を中心として、その男の財産をすべて総合いたします。そういたしますと例の預金や現金の登録が必要になつてくる。預金や現金の登録のために、一昨年の三月大騒ぎをやつたように、非常に手数がかかる。あれをやりますと換物運動を助長いたします。そうしてその上にあれによつて一体税金をかけるといたしましても、あの臨時財産税をおととしかけましたときに、税收わずかに六百億か三百億、きわめてわずかである。この経常財産税は臨時財産税と違つて、毎年々々かけるものであるから、税率は百分の一とか、百分の二という低いものでないと毎年かけることはできません。從つて現在の状態では收入に多くを期待することはできません。そこで私は現状においては無理じやないか。現金や預金の登録はやらないでも、財産税をかける方法がないわけではない。これはおととしハンガリーでこういうことをやりました。これは私の言う財産税とはちよつと違います。いわば個別的財産税でとる。それには税金は常に税務署ですぐわかるように、家屋や何かに税金をかける。問題は預金や現金であります。預金はある程度わかる。しかし現金はわからない。それでハンガリーでは、現金を登録せしむる代りに、切手みたいのものをはらして、たとえば百円の紙幣をもつておりますと、これに別に七十五円の金を出して、税務署か郵便局かしれませんが、七十五円の切手を買つてまいりまして、切手をはる。そういたしますと、百七十五円もつておる人は七十五円出して百円残るということになります。これは登録しないでかける方法です。これの欠点は、個々別々に税金をかけますので、累進的な課税ができない。それからもう一つは切手をはる前に換物運動が助長されますので、私の申しました財産税は、そういう個別的財産税でなく、総合的財産税でありまして、ちよつと意味が違いますけれども、しかし登録しないでかけるといつたらそれしかないが、これでもできるのではないかと思います。
  8. 梅林時雄

    ○梅林委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。御質疑がないようでありますから、次は商工協同組合中央会稻川宮雄君にお願いいたします。
  9. 稻川宮雄

    ○稻川公述人 問題の所得税改正並びに取引高税の件につきまして、特に中小の商工業者あるいは中小企業者の関係部門といたしまして、中小企業立場から意見を申し述べたいと存じます。  まず第一に所得税の問題でありますが、所得税改正内容そのものにつきましては特に意見はありませんが、希望的な意見といたしまして二、三の点を申し述べたいと存じます。第一には一般勤労者に対しましては、給與所得において控除が認められておりますが、中小の商工業者に対しましては、基礎控除はありましても、給與所得における控除制度がないという点につきまして、中小の企業者といたしましては、給與所得に対すると同樣の控除を認めてもらいたいという意見をもつておるのであります。すなわち中小企業者の收入は單なる財産的な收入ではなしに、労働と一体になつて所得である。すなわちいわゆる営業的な所得が多いのであります。たとえば生鮮食料品商の場合をとつてみますと、市場から店舗まで運搬労働をしてくる。ほとんどその運搬という労働に対しての所得であるというような関係がある。中小企業者というものは一体にそういう性質のものでありまして、勤労所得と性質において変らないように思うのです。特に中小の企業者に対しては、給與所得における控除が認められていないということは、公平を欠くものではないかと考えております。それからこれは所得税そのものの問題ではありませんが、営業税の問題につきまして申し上げます。営業税は今日地方税に相なつておりますが、今日のいわゆる地方分権の趣旨から申しまして、はなはだ時代錯誤の意見になるかとも思いまするが、中小企業者の立場から申しますると、所得税と営業税とは一本課税にして、國税としてこれを徴收してもらいたい、こういう意見をもつておるのであります。今日所得税は税務署において、また地方税は市町村役場において、窓口がわかれておりますがために、業者が税務上の交渉をする場合に、きわめて煩雜不便である。從つて徴税機構の一元化を要望するということが第一であります。  第二としましては営業税は均一の税率をとつておりますために、所得税率においては累進税率をとつておるとは言いましても、営業税そのものが均一税でありまするために、中小企業所得者の負担が過大になつてまいります。そういう意味におきまして、所得税と営業税というものを一本課税にしていけば、この弊害も除去されるのではないかということが第二の点であります。  さらに営業税の点についての希望といたしましては、特に商工業者のみが何ゆえに営業税という、特別の税金負担しなければならないかという問題であります。農林漁業者につきましては、從來営業税というものが賦課せられていない。しかるに商工業者にのみ、同じ性質のものであるにかかわらず、営業税がかかつておる。こういう点を合理化するために、これを國税として、たとえば事業税というような方法で一本にすべきである。こういう見解をもつておるのであります。大体におきまして地方の営業税は非常に負担が多くなつてまいりますために、同じ性質の收入であるにかかわらず、地方における中小企業者の租税負担というものが、非常に過重になつておりまして、たとえば昨年度の岡山縣の例をとつてみますると、一般勤労者に対しまして同じ所得であるにかかわらず、結課の税額におきましては、中小商工業者は四・六倍の租税負担をしておる。また自作農に対しましては、ちようど三倍の租税負担をいたしておる。縣税の約三分の一程度は、商工業者がこれを負担しておるというような実情であります。しかるにこれは國家においても同樣でありますが、府縣等におきまして、その商工業者に対する支出というものが、きわめて小額でありまして、租税は非常に負担が多いにかかわらず、これに対する振興助成の途が、國家においても地方においてもほとんど顧みられていないということが、実情ではないかと考える次第であります。  なおこれは所得税そのものに対する問題ではありませんが、所得税等を賦課する場合に非常に一般中小企業者として困惑いたしておる事柄がありますので、その二、三について申し上げておきたいと存じます。  まず第一に更正決定に対する不合理でありまして、こういう点をぜひとも今後是正していただきたい。いわゆる民主的な納税制度として、予定申告納税制度が必ずしも所期の成績を收めていないということは、井藤先生からもお話のあつた通りであります。この際不正者に対しまして更正決定を行うということは、やむを得ない当然の措置でありまするが、税務署の決定方法改正を要求しなければならぬ点がきわめて多いのであります。たとえば特定の標準規模というものの業績を基準にしまして、ある者がこの程度收入があつて、この程度税金を納めておるから、これと同一規模の営業をしておる者は、この程度課税をすべきであるというように、一律に認定をするというようなことが行われる。あるいは一人の生活費というものはこの程度かかるものである。何人家族が生活しておるから、これくらいの收入があるだろうというような推定と申しますか、逆算によりまして、見込課税をしてくる。事実におきましては所得がなくて非常に困惑しておるにかかわらず、そういうような見込課税がされる。それから中小企業者に対しましては、特に帳簿というものを尊重してもらえない。これは中小企業者自体にも欠陷はありまするけれども、その記帳力というものをもう少し尊重していただきまして、簡易記帳の奬励等によりまして、帳簿を尊重するような方法をとつていただきたい。今日往々に言われることでありますが、税務署そのものに対しまして、一つの割当があります。税務署としましては、どうしても割当を受けただけの税金をとらなければ、成績に影響するということが、ほんとうか嘘か存じませんが、巷間往々そういうことを言われております。所得のあるなしにかかわらず、見込課税が行われるというので、中小企業者といたしましては、非常に困つておるという事実が多いのであります。あるいはまた商工業者は当然やみをやつておるものであろうという推定のもとに、やみ利得に対して課税をされる。やみに対して税を課けてもらいたいということは、われわれの要求なのでありますが、まじめに営業をしておる者に対しましても、一般のやみ業者に同じように課税をしてくる。從つてまじめにやつておる者が結局ばかを見る。正直者が損をするということが、課税の上においても結課的に現われてくるのでありまして、納税をするためにはやみをしなければならない。こういう結課にもなり、あるいは税務署自身がやみを公認しておるのではないかというような結論も、導き出されるのでありまして、こういう点について課税上の改善を要求いたしたいのであります。その他なお多々ございますが、省略をいたします。  次に取引高税の問題でありまするが、取引高税に対しては中小企業者としては反対であります。反対の理由としてはまず第一に、これは中小企業の振興を阻害するという点であります。中小企業は今日資金、資材等に非常に苦しんでおる。生産財、消費財ともに少量、頻繁に数段階を経てきたものを手に入れておるというのが実情でありますから、大量直接取引をいたしておる大企業よりは、その購買の價格においてさらに不利となり、当然製品の販賣價格が高額となつて、價格競爭上の不利益が増大するということに相なるのであります。しかも中小企業者はその扱いが少額でありまするために、取引高税によつて手数が非常に煩雜になるということを免がれないのであります。これが反対の第一の点であります。  さらに第二の点といたしまして、この税金國民負担が非常に増大するという点であります。國民生活の極度に窮迫しておる現在におきまして、取引高税をさらに負担させるということは、國民生活の破局に拍車を加える惡税であると言わざるを得ないのであります。  第三の点といたしましては、この取引高税というものは、結果におきまして相当高率の税金になるというおそれがある点であります。現在の案によりましては、取引の段階ごとに百分の一程度の徴收を予定されておるのでありますが、流通秩序の確立を見ていない現在におきまして、生産並びに配給の経路はきわめて複雜であり、数段階を経て消費に至るのが普通であります。物價廳の意見では、大体百分の一の税金が四段階を経るのが平均であると言われておりますが、われわれの見るところでは、さらに多くの段階を平均として経なければならぬ。從つて百分の四程度では、とうていこれは済まないというように考えます。從つて結果におきまして、相当高率の税金になるということが予想されるのであります。  第四の点としましては、徴税技術がきわめて困難でありまして、その内容のこまかいことは申し上げませんが、結果におきましては、依然として正直者がばかを見るという結果を招來し、遂には政府に対する信頼感をも失わし、やみブローカーの跳梁する結果ともなるということがありますので、決して適切なる税金とは考えられないと思います。しかしながら、今日財政の均衡を得ることがきわめて必要な現在におきまして、この取引高税というものは決していい税ではありませんけれども、一面において、税收という面からやむを得ないという点も、われわれとしては認められるのであります。  しかしながら、そういう点につきまして特に希望いたしますることは、もう少し行政の整理をいたしまして、バランスを合わせるということを同時に考えなければならぬのではないか。そういうことによりまして、この取引高税というものに至らなくても済む、あるいはさらにその方法ももう少し緩和することができるのではないかと考えます。その緩和方法といたしましては、われわれの生存に最低限度必要でありますような、今日では生活必需品という言葉のほかに、生存品という言葉ができておりますが、そういうような生存品に対しましては、特に取引高税をかけないとか、あるいは取引の段階ごとに百分の一ずつかけるということが、きわめて徴税技術の上におきましても困難が予想されますので、これらを適当な段階において、一つにまとめていくというような方法を講ずる余地はないか、というような意見をもつておるわけであります。結論から申しますると、この取引高税に対しましては反対でありまするが、財政の收支をとる上におきまして、一面においてやむを得ないという点も認めておるわけであります。以上簡單でありますが、意見を申し上げます。
  10. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ただいまの稻川さんに御質疑があらせられる方は御発言を願います。
  11. 宮幡靖

    宮幡委員 きわめて簡單なことをお尋ねいたしますが、商工協同組合中央会としての御意見で、取引高税のかかりまする業種のうち、具体的にこれをやめて、これをやる、あるいはこれをこう改めたらというような御意見はないですか。抽象的でなく、具体的の御意見はありませんでしようか。
  12. 稻川宮雄

    ○稻川公述人 具体的にこれこれの品物というところまでは、まだ実は考えておりませんですが、抽象的に申しましたように、生存品に対してはかけないように。何が生存品かという点まで具体的に考えてきておりません。
  13. 宮幡靖

    宮幡委員 なおお伺いいたしますが、公述の御要旨から申しますと、取引高税は惡税であるが、財政需要のためにはやむを得ないと考えられる、こういうような御意見であります。そうすると、この法案の内容について、惡税の面を矯正するために、当委員会一つの考慮を拂わなければならない。それについてはどうしても生存品とか、消耗品とかいうような意味でなく、税は実体法でありますから、この業種についてこれはこうしたらよいという、一例を申せば、保險料に対しましてやはり取引高税がかかるが、それを再保險する場合にもまたかかる。保險料は一つしかないのに、二つかかる。これらは具体的に言えば矛盾したものなのです。中小工業に対しまして、そういう方面に対しまして発見するように、われわれの方で一生懸命に努力しておるのですが、なかなかそういう実体のものが発見できないので、希くば、公述人でもつて、そういう資料を提供していただきたい。もし本席でできなかつたら、中央会としての御意見をまとめて、委員長までお出しを願つたらよろしくはないか、かように考えております。
  14. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ほかに稻川さんの御意見に御質問の方はありませんですか。ではありがとうございました。  次に全官公廳職員労働組合協議会中央執行委員であられる加川義一君にお願いいたします。
  15. 加川義一

    加川公述人 今回政府が立案されました各種税法改正案及び取引高税の設置、こういうものに対しまして、勤労階級の一員、こういつた立場から意見を述べさしていただきたいと思います。  現在の租税制度が、そのうちに大衆課税的な要素を非常に含んでおるということは、廣く一般からは論ぜられておるところであります。また最近における税制改正の方向が、いわゆる直接税から間接税中心の方向に移行しておるという傾向の中にも、この大衆課税的要素が含まれておると言うことができるのであります。ここで取上げて申し上げるまでもないのでありますが、今回政府が取上げました所得税改正案、殊に取引高税の設置というものは、結局は大衆課税の強化ということになるのであります。その点こうした大衆課税に対しましては、勤労大衆の立場から絶対反対するものであるということを最初に申し上げます。  まず勤労所得税を中心に論じますと、政府案におきましては、基礎控除引上げ、それから扶養家族控除引上げ、こういつたことによりまして、いわゆる勤労階級に対する税負担軽減しておるということを、改正案のうちで言つておるのでありますが、それはあくまで表面上のことでありまして、現行の所得税というか、改正前の所得税でありますが、それが大体基礎控除額、あるいは扶養家族控除額、そういつたものが、千二百円ベース当時の賃金に対して設けられたものだという、その点を考えますと、今度は三千七百円ベースというものが考えられておるようでありますが、一應名目賃金が増加しておるという点であつて、現在では実質賃金というものは逆に下まわつておる。名目賃金だけが増加しておるという点を考えますならば、改正案によりますと、独身者の場合、独身で月收二千円の場合には現行税法では二百三十二円の税額負担、これが改正案では五十円の税額負担ということで、著しく軽減されているように見えますけれども、これを今申しましたように名目賃金が千二百円ベースから三千七百円ベースに引上つてくるということを考慮しますと、その引上げ程度を大体二倍とかりに考えましても、これに対する税負担というものは、結局改正案の税額は三百五十四円となりまして、逆に百二十二円の負担増加ということになるのであります。これが今日名目的な税負担の増加ということを言うのでありまして、次に実質的にそれが税負担になつておるということを申しますと、現在月收二千円以上の独身者はすべて課税されるという改正案の対象でありますが、今日一人二千円の給料でもつて、実際に勤労者が食えるか食えないかということは、生計費の調査といつたような資料を出さなくても、皆樣がよく御存じになつておることと存じますが、さらにこの二千円以上の者に対して勤労所得税がかかつてくる。この税負担は、直接に生活をも脅かすような結果になつてくることは、この内容を考えてみるとよくわかるのでありまして、勤労者が結局自分の生活費を切り詰めて、税額を負担するという結果になつてくるのであります。生活費が今ほとんど所得だけでもつて賄えないという現状で、そこから税額を負担するとすれば、結局は自分の生活費を切り詰めることによつて負担する。すなわち生活費を切り詰めるということは、労働力の再生産の限界以下に勤労者の生活が圧迫されていくという結果になつてくるわけであります。さらに月收二千円ということを、物價指数の上から考えますと、昭和五年から九年までの平均物價指数に引直しますと、月十五円程度をもらつていた人が税を負担しなければならないということになるわけであります。その当時の状況を考えますと、大体女工さん、一日五十銭支給されて酷使されておつた女工さんまでも税を負担しなければならない。そういつたような税制が今度の勤労所得税の改正であります。このように考えてきますと、結局勤労所得税の改正だけを取上げて考えましても、名目的にも実質的にも、勤労者に対する税負担軽減とはなつていないということがわかるのでありまして、さらにこの上に物品税、通行税、酒税等が改正されるのでありますが、これら一連の間接税中心とした改正は、すべて大衆課税の増大と考えることができるのであります。そう上にもつてつて取引高税の設置ということになると、これはいよいよ勤労大衆の生活を破滅の淵に追い込む、こういつたふうにしか考えられないのであります。さらにそのほかに專賣益金とか、あるいは鉄道通信料金の値上げ、そういつたものが大体みな大衆負担になつてくるということは明らかな事実でありまして、結局こういうような一連の大衆課税的な要素をもつた税收を織り込んだ二十三年度の予算案それ自体が、結局勤労大衆の生活を脅かすことになつてくると考えられるのであります。  それではこの二十三年度の予算案の基礎になつておりますところの國民所得、それからはじき出されてきた所得税額というものについて考えてみますと、國民所得の中における事業所得、それから勤労所得、そういうものの分布は、昭和二十二年度では大体勤労所得が三二%、事業所得が六四%、これが二十三年度勤労所得が三六%、事業所得が六一%、そういう割合になるというぐあいに、政府の方では発表されておられるのでありますが、インフレの進行過程におきましては、勤労所得國民所得の中において大体逓減していくし、事業所得は増大していくことは、インフレの現象としては皆樣も御存じのように明らかな事実でありまして、これが逆になつておるという計算、ここにおいて國民所得の推定が非常なる誤りを冐しておるのではないかと考えられるのであります。そうしてこういう誤つた國民所得計算の根拠によつて出されてくる所得税が、どういう結果になつてくるかを数字的に申しますと、大体二十三年度の予算案に見ますと、勤労所得からはいるいわゆる源泉徴收分の所得税が三百八十億程度、それから申告納税分の方の事業所得が九百億程度というふうになつておるのであります。これを税額全体に対する比率を見ますと、大体源泉徴收分が一四・五%、申告納税分が三四・三%であります。それを昭和二十二年度所得税予算が、同じように源泉徴收分が一四・七%、申告納税分が三六・五%であつた点と比較いたしますと、ほぼパーセンテージにおいては変りがないような結果になつておるのであります。ところが政府が立てておるところの現在の收入計算見込の結果を見ますと、源泉徴收分においては四一%の増加を來しております。その結果税收総額において源泉徴收分は二〇%、これに反して申告納税分はわずかに二%しか増加していない。すなわち三二・二%になつております。これだけの開きになつておる。でありますから昭和二十三年度の予算案三百八十億と九百億、この二つから成り立つておるところの所得税というものは、收納の結果においては二十二年度と同じような結果をたどるならば、結局源泉徴收分の負担はますますはなはだしくなつてくる。結局勤労階級に対する税負担は重くなつてくるのではないか、そういうことが言えるのであります。  次にこういつた税收、それから國民所得、そういつたものの関係を実際の國民の生活費、生計費の方の問題から考えて見ますと、大体國民一人あたりの税負担額は、今度の予算では三千二百七十円となります。これは專賣益金あるいは通行税といつたようなものを含まない國税負担の額でありまして、そういつた專賣益金、通行税、鉄道通信料金の値上げというようなものを織り込んで考えますと、結局財政負担はその倍額以上が見込まれるのであります。ところが昭和十三年の平均における勤労階級の都市生活者の生計費の調査から見ますと、いわゆる公租公課負担の分の支出は、大体六・五%ないし七%程度の公租公課負担になつておるのであります。ところが昭和二十二年度の十二月、それから二十一年度の十一月と最近の公租公課負担割合を見ますと、これは勤労收入に対して一〇・七%ないしは一一%といつたような負担増加になつております。ところがこれを勤労收入だけの比率で見ないで、消費支出におけるところの飲食物費の割合から見ますと、公租公課の負担は全飲食物費の支出に対して一三%以上が昭和二十二年度、二十一年度の平均でもつて大体数字が出てくるのでありまして、一方これに対して昭和十二年度においてはどの程度であつたかと申しますと、二〇ないし二五%程度のものが公租公課の負担になるわけであります。この差はどういうことを意味するかと言いますと、結局現在の勤労者はいわゆるエンゲル係数が非常に高くなつてきておる。全消費中に占めるところの飲食物費の割合が増大しておる。結局公租公課の負担は、そのまま直接生計費の中にどんどん食い込んできておるという事実を物語るのでありまして、昭和十二年程度においては、公租公課負担の総額は直接飲食物費に響く前に、その他の支出でもつてそれを賄うことができた。現在においてはそれを賄うことができなくなつてきておることを物語るのでありまして、ここに今度の税制におけるところの大衆課税的の要素が一番よく現われておるのではないかと考えます。  次にこういつた勤労所得税を除きまして、通行税あるいは酒税、物品税等の改正を見ますと、通行税について考えますと、從來の十キロ制の税が今度は從價税になつてきた、結局このことは今度運輸交通料金が値上げになるならば、それに対應して税收も見込まれる、結局通行税が大体において大衆負担である以上は、今後運賃の改正ごとに大衆負担の増加を來すことになると思うのであります。それから物品税の改正を見ますと、いわゆる第一種のうちの品目である奢侈品が、一〇〇%から百分の八十、百分の八十から百分の六十、こういうふうに引下げられておる。その引下げられたのが適当ではなかつたというような政府の見解でありますが、それに反して日常必需物資であるマツチなどに対しては二倍に税率引上げている。こういう現象を見ますと、結局物品税の改正も大衆負担の増加を來している。あるいは酒税における改正など見ますと、生産量は減じ、それに対し税額は増加している。結局酒税というものは現在の勤労階級に対して大衆負担になつているということを考えます。さらに取引高税の大衆負担のことにつきましては、先ほどからいろいろ論議されているのでよくわかる。その点彈力性に富む、あるいは税收総額が非常に大であるという点をもつて取引高税インフレ状態における財源としては有効なものであるというその利益以上に、大衆負担程度のはなはだしい点において、結局勤労者の生活を破綻に追いこむという欠点の方がより大であるという見解に立ちまして、今度の税制改革全般を通じまして、結局勤労階級の全般の生活を圧迫する。こういつたような大衆課税的な要素の増大する税法を施行された曉には、勤労者は結局食えない生活においてますます労働生産力を失い、國家再建のために働かなければならないのに、はたして働き得るかどうかという問題が出てくるのでありまして、こういうことを考えるとき、結論として絶対に今回の改正税法に対しては反対するものであると言わざるを得ないのであります。以上をもつて終ります。
  16. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ただいまの加川さんの御意見に御質疑はありませんか。
  17. 宮幡靖

    宮幡委員 ちよつと加川さんにお尋ねいたしますが、名目賃金が殖えて税金負担軽減されていないというお話はその通りだと思います。しかし先ほど独身者の例をとつて、結局税が余分に出るというのですが、それはやはり賃金ベースが上つて殖えたので、その割合からはお説のような議論は出ないと思うのであります。そこで根本的にお尋ねしたいのは、全官公労組でやられました、賃金に対する連絡協議会において、税の問題を考慮に入れて、賃金ベースを檢討せられたのか。あるいは新給與整備委員会において新給與体系をつくるのに、税の問題を考慮されて、いわゆる基礎控除の点を考慮されて交渉をせられたのか、せられないのか。この点を明らかにしていただきたいと思います。
  18. 加川義一

    加川公述人 お答えいたします。今度の全官公廳の方で新らしく算出いたしました新賃金ベースの中には、税負担を含んでおりません。手取りだけの賃金ベースであります。また政府言つておりますような物價改訂七割も含んでおりません。このようにして算出し、それによつて現行の物價及び税額、その他のいわゆる財政負担、そういうような状況を考えまして、結局労働力の再生産に必要な経費、いわゆる最低賃金的な賃金として新賃金のベースを出しているわけであります。
  19. 宮幡靖

    宮幡委員 そうすると、公課負担が一三%も生計費があるいは飲食物費の中にはいつているという御意見ですが、そういう重要な要素のものは、この賃金基礎をきめるのに除外されているという問題は、全面的にこの税法に対する御反対だという公述から、委員会としてなかなか処置に困るわけですが、わかりやすく申しますと、その点をどういうふうに調整したらよいのですか、御意見を伺いたいと思います。
  20. 加川義一

    加川公述人 申し上げます。結局こういうような大衆課税的な税制を立てざるを得なくなつたその根本をなしているところの現在の財政、予算案そのものに対して考慮すべき点があるのではないかという見解をもつております。
  21. 宮幡靖

    宮幡委員 もう一点伺いますが、名目的な勤労階級の納める税が、政府の声明と違つてかえつて多くなる。これは事実です。これは先ほど申されましたその通りだと思いますが、税の全体から考えますと、改正しない税法で放つておきますと、所得は今年は二千十九億になるわけです。それを千二百八十三億と締めてある。ですからそのうち自然増が七百三十億くらい軽減している。物價と賃金関係を考慮いたしますと、そういうことになつている。それを勤労所得税で軽減してあるのが四百億、その他で三百三十億、こうなつておりまして、なるほど名目的に拂う税は多くなつておりますけれども、負担軽減の点においては勤労者に厚いのであります。これは御主張のような点を強調いたしますと、勤労階級と他の階層との階級的なみぞをつくることになる。それらについてのお考えはどんなものでございましようか。
  22. 加川義一

    加川公述人 ただいま現行税法でいくのと、改正案でいくのでは四百億の軽減になるというお説でありましたが、その課税見込所得の推計においてすでに誤つているのではないかというふうに考えておるのであります。すなわち勤労所得の方はそのままといたしましても、申告納税分にあたる営業所得、農業所得、事業所得、そういつた計算において相当な誤りをなしておるのではないかと考えております。その結果、脱税の途が少い源泉徴税においては四一%の増加分があるのに、事業所得においては二%しか増加していない。さらに現今のようなやみ経済というような実態を考えた場合においては、事業所得においては課税見込所得が非常に軽く見込まれているのじやないかというふうに考えられるので、いわゆる勤労所得税の軽減よりも、事業所得における軽減が多い、そういうふうに考えます。
  23. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 午後の時間の関係もありますので、午前中にもう一方お願いしたいと思います。日本税務協会長栗原修君にお願いいたします。
  24. 栗原修

    栗原公述人 與えられた問題につきまして簡單意見を申し述べたいと存じます。まず第一の所得税控除の問題でありますが、このたびの所得税改正は、基礎控除引上げ扶養控除引上げ、それから税率の引下げ、これがおもなる問題だと思うのであります。そこでこの控除の点を見ますと、大体現行法の三倍程度控除率の引上げになつておるのであります。現行法で申しますと、基礎控除は四千八百円ですが、これが一万五千円、三倍であります。なおこのほかに基礎控除緩和規定といたしまして、同居親族の中に事業所得給與所得または退職所得があります場合には、おのおのから基礎控除をする、これがはいつてまいりました。それから扶養控除におきましては、現行は税金におきまして四百八十円でありますが、これが千八百円、三倍七割であります。勤労控除につきましては、控除率は二五%という据置であります。ただその適用範囲が、從來五万円でありましたものが十五万円まで、つまり最高一万二千五百円でありましたものが三万七千五百円、これがちようど三倍になつておるわけであります。こういうことがはたして適当であるかということが問題であるのでありますが、この基礎控除のやり方というものは、沿革的に見ますと、実際財政事情あるいは社会情勢というものによりまして、非常に妥協的にできておるように私は思うのであります。理論的に基礎控除というものはこうなければならぬというような事柄、あるいはそういう目的に向つて進んでいるということが非常に乏しいと私は思います。基礎控除は一應は最低生活費の控除である。あるいは扶養控除は被扶養者の生活費の一部を控除するのである。また勤労所得になりますと、勤労所得税というものは非常に惡税であるから、勤労所得に対して課税すべからずというような議論もありますけれども、これらもただ勤労所得というものの負担軽減の手段として用いられているにすぎないのではないかと思うのであります。こういう問題につきましては、基本的に考えて、合理的にそれを基礎ずけていくということが、これからいくべき途ではないかと思うのであります。さようにいたしますと、この改正案に出ておりますいろいろの控除というものは、満足すべき状態ではない、かように私は考えるのであります。しかしながらこの問題は非常にむつかしいのでありまして、ただいま申しましたように、財政需要関係もございますし、また社会的の情勢と申しますか、一般的の感覚に基いて判断せらるべき部分が相当多いのでありまして、基礎控除ばかりで解決し得る問題、あるいは基礎控除だけでもつて解決することが適切であるかどうかということはよほど問題であると思うのです。しかし今回の税法改正におきまして、また將來におきましてそういう方角に進んでいかなければならぬ、そういう目的を実現するような方角に進んでいかなければならぬと存ずるのであります。基本的なかつ合理的な根拠を與えなければいかぬ、かように存じております。現行法の控除率というものはそういう認識は明確になつておりません。從つて一定の目標に向つて進むという努力が盡されておりません、一般的に負担軽減する方式として採用されておる、これが実情であります。これは各國の立法例におきましてもそうでありまして、基礎控除は必ずしも最低生活費で押えておるということには進んでおらないように私は考えるのであります。勤労所得はこの控除の中でいささか趣きを異にいたしますので、もう少し申し上げてみたいと存じますが、御承知のように、ただいまの改正前の税法、これは分類所得税がありまして、この分類所得税をかけるときに資産所得、事業所得勤労所得というように大体三つの区別をいたしまして、この所得の種類の間には担税力の強弱がある。担税力において差等があるというふうに考えました。從つてこれの控除率あるいは免税点というものも、この三つの間には差等を設けておつたのであります。税率につきましても差等を設けておつたのであります。その差等を申し上げますと、資産所得すなわち不動産所得、甲種配当利子所得でありますが、これは免税点が三百円、甲種配当利子所得免税点はないのであります。それから事業所得は勤労と資産との合同所得と称されておるのでありますが、甲種及び乙種事業所得におきまして、控除率は千二百円、それから純然たる勤労所得である甲種勤労所得控除額は二千四百円、こういうことになつておりました。この差等は勤労所得標準としますと、不動産所得の八倍になつております。事業所得の二倍、こういう間差がはたしていいか惡いかということは、よほど研究を要する問題でありまして、どうしてもこれは科学的な研究に立脚しなければならぬと存じまするが、今日は勤労所得だけが残つておるのであります。この分類所得税におきましてなお税率に差等を設けております。すなわち不動産所得及び配当利子所得におきましては百分の三十という一番高いものをつけまして、その中間である事業所得について百分の二十五、勤労所得につきましては百分の二十、つまり百分の五ずつの間差をつけておるのであります。現行法は御承知のように分類所得税を廃しまして、綜合所得税一本になりましたために、これらの差等を廃したのでありますが、勤労所得税だけを残しておつたのであります。それは初め百分の二十でありましたが、百分の二十五になつた。今度の改正税法におきましては百分の二十五というものが据置きであるということになつておるのでありますが、勤労所得税の百分の二十五が適切であるかどうかということにつきましては、相当いろいろの研究がされておるようであります。たとえて申しますと、労働力を資本化するというような考え方で、利子から換算して勤労の價値を見出して比較していくといつたようなやり方を考えるのもあるのでありますが、これはなかなかむつかしい問題で、結局財政需要と社会上の感じと申しますか、感覚で腰だめ的にきめられておるようであります。これはぜひ檢討を加えてもう少し根拠のあるものにしていかなければならぬ。しかしてその根拠を十分に見出したならば、その方向に向つて徹底的に考えていかなければならぬと存ずるのであります。今日の改正案につきまして、ただいま申しましたように、現行法の三倍程度という引上げをやつておるのであります。これがよいか惡いかということは、要するに現行法のそういうきめ方がいいか惡いかということから出発しなければならぬのでありますが、これは物價指数、生活費指数などから見ますと、少くとも昭和二十三年度の実質所得におきまして、大体現行法と大差ないものに落着くのではないかと思うのであります。かりに昭和二十二年の四月と昭和二十三年の四月を比較して見るのであります。これは実際はもう少し廣い幅のところで見なければいかぬと思いますが、二十三年度の指数を推定するということは非常に困難でありますから、一應四月という、非常に不完全でありますけれども、とつたところで比較をいたしてみますと、消費者の物價指数におきまして約二・三倍の上昇率を示しております。また東京の実際物價指数を見ますると、これはやや下りまして一・七倍というところであります。それからいわゆる理論生活費というものが計算されておるのでありますが、この理論生活費という計算によりますと三・四倍、まず平均におきまして二倍ないし三倍の上昇があると認められるのであります。從いましてこの改正案によりまする三倍の引上げというものは、実質的に見て現行の控除率と大体据置き、あるいはいくらか余裕がある程度であるということであろうかと思うのであります。でありますから、それ自体を見て現行法の基礎控除が一應是認されるものといたしますならば、改正法によりまするものは大体その辺に落着くと考えます。ただ今後の税法改正には、非常に大幅の税率の引下げが行われておるのでありまして、つまり独身者にあらざる扶養家族をもつた勤労所得者に対しましては、実際負担額は可なり軽減されておるのであります。これは具体的に申すと非常にくどくどしくなりますが、この三つ控除額をもつて勤労所得についてみますと、月收四千五百円というところまでが、大体税がないということになりまして、現行は千三百円までが無税でありましたが、それに比べますと三・七倍というところまでは税がなくなつた。月收五千円のところをとつてみますと、これが百円あたり一円八十二銭でありまして、現行の二十円二銭に比べますと、九%くらいに当る。一万円のところをとりましても、現行負担の三割二分程度に減るのであります。でありますから基礎控除税率の引下げということを合せ考えますると、相当軽減になつておるのであります。要するにこの問題は基本的にかつ合理的に檢討する必要があると考える、そういう考えをもてば不十分である。しかしながら現行法を一應生かして考えるということであれば、改正税法というものは大体この辺で妥当ではないか、かような結論を得ておるわけであります。  私はこれでこの問題は済みますが、ちよつとついでをもちまして所得税軽減ということについて申し上げてみたいと思います。アメリカでも税を軽減するという問題につきましては、相当大きな問題としていろいろな経緯をたどつて落着いたようでありますが、わが國におきまして減税をするということは、非常に大きな問題であると思うのであります。しかしこれは何としても所得税の行詰りということからくるのでありまして、税負担というものが國民所得に対して、割合英米その他に比較して非常に安いということは、統計上は出ておりますけれども、しかしながら所得税が非常に重くて、これは行詰つて、そのために軽減をしたということが税は実体ではないかと思うのであります。  ところでこの地方税の問題というのは、最近におきましては非常に大きな問題になつてまいりました。これは地方の自治体の自治制を尊重する、そのために独立の財源をもたなければならぬということからいたしまして、非常に地方税が重大になつてまいりました。今度の地方財政改正の方向を新聞などで拜見いたしておるのでありますが、この改正等によりましては、まだ中央地方を通ずる税制の整備は、私は不十分ではないかと思うのであります。のみならずせつかくできた所得税軽減というような大きな問題を解決しても、地方税におきましてこれを撹乱されるというようなことがありますと、問題であると私は思うのであります。この点につきまして中央地方を通ずる租税の徴税をはかるなどの、何らかの法制上の措置をとるということが、一つの問題ではないかと思うのでありまして、附け加えて申し上げておきたいと思います。  それから取引高税の問題であります。これも先ほど來からたびたび皆様から御意見が出ておりますが、私の意見もあまり変つたところはないのでありますが、ごく簡單に申し上げますけれども、大体一般取引税というものは各國の租税制度の沿革から見ますと、すでに御承知のように、大体において財政救済のために創設されたのではないかと思うのであります。第一次世界大戰の財政需要の大きくなつたときに、欧州各國で創設されたのでありますが、この財政救済というのは本税創設の理由でもあり、大体それがこの税の價値でもあつた、こういうふうに考えられるのであります。でありますから、今日取引高税の是非を論ずるという場合にも、その國の財政状況と租税全般との関連において考えるほかないのじやないかと私は思うのであります。この窮迫した國家財政におきましても、新税を創設するということになりますと、それは財政需要を確保するということが最も主な点でありまして、しかも財政收支の均衡を得せしむるということは、これは財政の大前提になつておるのであります。そうしますと落着くところは、現行の租税でこれ以上の増税はできるか。これ以上というのは非常に大幅の増税ができるか。第二は歳出の節約ができるかということの、非常に狹い範囲に議論が追込まれてくるわけであります。現行の税制による大幅の歳入を得るということが困難であることは申すまでもないことでありまして、わが國の租税收入は御承知のように、所得税と酒、タバコ、この三つが主なものであります。所得税はただいま申しまするごとく、行詰つて減税をしなければならぬという反対の方向をとる。酒とタバコは今度も上りますが、あれも大体行詰りであると思うのであります。そうしますと、ただ國民所得名目的に増大していく。それによつて名目的の増收が得られるというだけでありまして、非常に大きな收入を期待することができないと私は思います。そうしますと、財政を節減できるか、歳出の節減ができるか、これは私は問題になると実は考えております。國家財政國民経済の上に立つている以上は、財政の規模が國民経済の上に適應しなければならぬということは申すまでもないことでありまして、なかんずく國民租税負担が、今日限界に到達しているというような現状におきましては、どうしても國家財政國民経済のわくの中に圧縮するということを考えていかなければならぬのではないかと思うのであります。これもまことに当然のことでありまして、敗戰國民としては重税に甘んずるということはやむを得ないけれども、しかしながらやはりこれもおのずから限度がある。この限度を越えていくことは私はできないと思うのであります。そして今年度財政のことを考えてみますと、租税收入はただいま申しましたように、控除額の引上げ税率の大幅の引下げによつて大体七百億くらいの減收がある、ということになつているのであります。しかしやはりこの所得税收入見積りが八割八分の増税になつているが、これはもちろん物價騰貴あるいは給料の増加によつて生ずる増加でありますけれども、しかし相当の私は増收見込であると考えるのであります。專賣益金を含んだ收入におきましては、九割一分の増收になつているのであります。國民所得は六割二分の増加ということ、これは政府國民所得計算によるとそういうことになります。でありますから当然に國税負担額の國民所得に対する割合というものは上昇してまいるのであります。昨年の一六・一%というものが一八・九%になり、地方税というものが飛躍的に増加いたしまして、これが一・六四倍という増加を示しておるのでありますが、この國税地方税を通じますと、國民所得に対する比率は昨年は一八・二%、本年は二二・二%、こういうふうに増加してまいつておるのであります。ただ予算総額を國民所得にみますと、前年は一八%、今年は二一%で、いくらか上つておりますけれども、そうひどい上り方であるということにも考えられない節もあるのであります。要するに國民所得の増加による自然増收よりも國民負担が重くなつておるのではないかと私は思うのであります。そして重くなつた部分というものはどこへ移動していくかと申しますと、直接税から間接税の方に移動していく。つまり昨年度は直接税が四八・九であり、間税が四六・七であつたのが、本年度におきましては直接税が四〇・一%で、間税が四七・一%、つまり減税もし相当の処置も講じておるにかかわらず、國民所得というものに対する税の負担割合というものが増加していく。それが間税の方に移行していくというかつこうが出ておるのです。かように考えますと、やはり歳出を減してもらいたいと私は思うのであります。この問題は財政救済税であると先ほど申しましたが、どうしても歳出は節約できない、こういう議論を一應是認しなければこの問題は始まらないわけであります。歳出増加に伴いまして歳入補填をするという意味におきまして新税を創設することが必要であるとして、どういう新税を創設することが價値があるか、こう申しますと、今日の財政状態で申しますと、まず第一に非常に巨額な税收をあげることが必要である。第二が安定性をもつた税でなければいかぬ。かつそれが物價に比例して彈力性がなければならぬ。それから第三は納税の手続並びに経費が少くなければならぬ。こういう條件がなければならぬと思うのであります。でありますから理論上はいい税であるといつても、税收入が少いということであれば、この際として私は價値が少いと思う。また一時限りの税收ということもこの際としては好ましくない。かかる安定性があつて、同時に物價の変動に適應したところの彈力性があるということが必要であると思うのであります。こういうふうに考えてみますと、やはり取引高税のようなものがこの資格條件を備えておる。こういう理論に結局追込まれるといつたことではないかと思うのであります。  取引高税は申し上げるまでもなく、いろいろな欠点があるのでありますが、そのうち一番大きいのは大衆課税になるという点であります。これは中小商工業者を圧迫すると同時に、消費者に轉嫁の関係がなかなか困難になり、また微妙な点がありまして、大衆の負担になるか、中小商工業者を圧迫するかという非常にデリケートな問題が現われてくると思います。もう一つどうかと思われる点は、所得税の代り財源だという考えからいたしますと、所得税軽減による利益を受けなかつた者に対しまして取引高税負担を課するという事態が生じてまいりまして、下級の勤労所得者等に対しては、そういう点がよくない結果を來すのではなかろうかと思います。それから取引の各段階に課税するということは、結局高率課税になるということも考えられるのであります。それから非常に大きな問題と思いますのは、流通過程の円滑を欠くことであります。また脱税を誘発して正業者が圧迫されるということもあろうかと思います。しからばそういう欠点をやめる手段として、各段階に課税することをやめたらどうか。あるいはアメリカなどにありますように小賣税にしたらどうか。フランスのようにこれを生産税にしたらどうか。いろいろ考え方はあるわけでありますが、そうしますと税收入は減りまして、このむずかしい税を起す價値というものが非常に乏しくなる結果になるのではないかと思うのであります。  かように考えますと、現下の財政状況というものが歳出が節減でき、それよつて收支の均衡が得られるということでありますならば、これは創設しないが一番いいと私は思う。しかしそれができない。これが問題のわかれ目で、しかも政治的の意味が非常に多いのだろうと私は思うのでありますが、万やむを得ず新税を起すということであれば、これは新税を起すだけの價値がなければならぬのでありますから、そういう價値をもつた税金取引高税のようなものよりほかないのではないか。かように追込まれたようなはなはだ不満足な結論になると私は思うのであります。  最後に、この税を実行する場合におきましては、この課税の品目においても、できるならばなるべく生活必需品には課税しないようにしたいという点、それから將來税率引上げないという何か特殊の考慮をめぐらせないかという点であります。特別措置の税にいたしましても、一旦実施されますとなかなかやめられないばかりでなく、むしろ手軽に増加されるということが非常に多いのでありますが、この取引高税にしましても、百分の一の軽い税率である。軽い税率であるからまずがまんのしどころではないかという議論が、かなり強い意味において了解されているのではないかと私は思うのであります。しかしこれが財政上の必要から、百分の二になり百分の三になるという危險性が非常に多いのであります。タバコとか酒で実例をすぐ了解できることと存ずるのでありますが、こういうことについてもできるならば何らか特別の考慮をする方法を考えてしかるべきであると考えるのであります。各國のそういう制度を見ましても、非常税として第一次の世界大戰後に生れた賣上税なり、あるいは小賣税なり、生産税なりというものがやはりずつと続けられてきております。非常に惡い税率であると言いながら、租税歳入の面から非常に重要な地位を占めておるのでありまして、アメリカでも徴税額に対して一割以上の税が集まる。ドイツ、フランスにおきましても二割ないし二割五分程度の税收が上つておるということでありまして、今日では拔き差しならぬ税になつておるのであります。これは今日約束すると言つたところでできない仕事でありますけれども、何らかそういう考えのもとに措置を講ずる必要があるのではないかと思うのであります。  それから税の運用の問題になるのでありますが、今年度におきまして國会においても、税の徴收ということについて非常に御関心をもたれておりまして、租税完納に対しましては、非常な力を入れておられたのでありますが、この税の危險なることは、やはり運用ということにあると思うのであります。この実施に対する用意というものが十分になくてはならぬと思うのであります。これは少しくうがちすぎたることを申し上げるようでありますが、こういう印紙による納税というものは、必ず所得税、営業税というものの課税に響いてくるのであります。これは惡い方に向いますと、脱税を許す。いい方に向いますと、一つの補完的作用をする。財産税が所得税を補完する。あるいは所得税で捕捉できない所得財産税によつて発見し得るということが言われますが、やはりこれもいい方に向えばそういう作用をするわけでありまして、この運用におきましては十分な用意が要ると同時に、今日納税思想の廃頽ということが言われておりますが、そういうことにならないような格段の用意が必要であると考えるのであります。大体以上をもちまして私の話を終りたいと思います。
  25. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ただいまの栗原さんの御意見に御質疑がある方はどうぞ。
  26. 川合彰武

    ○川合委員 栗原さんの專門的立場からのいろいろなお話を伺つて非常に参考になりましたが、あなたの説を結論的に申しますと、新税は惡税なりの原則に基いて、惡税ではあるけれども、今日の財政事情を救済する意味において、消極的にこれを認めなければならぬというような結論のようにわれわれは受取つたわけなのですが、われわれもそういうような考えをもつのであります。そこでわれわれとしては歳出の面における削減ということを別箇の問題にして、歳出が與えられたものという仮定のもとに、この取引高税に代るべきものがあるならば、あなたはこの取引高税というものは否認なさるというようなお心持になりますかどうか、伺いたいと思います。
  27. 栗原修

    栗原公述人 ただいま取引高税がどういう理由とどういう價値をもつて現われてくるかということを申したのでありますが、もしこういう理由をほかの税でもつて十分に充足し得ることができますならば、これを置かない方がいいと考えております。
  28. 川合彰武

    ○川合委員 それで、われわれとしては、増加財産税というような新しい税源を見付けて、取引高税というものを否認したいと考えるのですが、あなたは專門的な立場において二者択一という場合には、いずれをおとりになられますか。
  29. 栗原修

    栗原公述人 増加財産税の内容を伺わないとちよつと申し上げかねるのでありますが、私どもはやみ所得を捕捉する一つの手段として、増加財産税をかけることはどうであろうかと考えたのであります。それは大体財産税を課税した基準の日を押えて、その後において増加した所得財産に対して財産税をかける。これは相当財政的に價値があると思います。しかしこれは一回限りになるということはあるのであつて、経常的にそういう財政收入をあげることはできない。しかも調査期限とその増加した財産の見方によつて、経常的に続いても、あとは大した大きなものになつていかないじやないか。かように考えるのであります。それでやみ所得の捕捉方法としては意味があり、また当時の状況としては相当價値があつたかと思うのであります。今お説にありました財産増加税の内容が、はたして私の考えている内容と同じかどうかわかりませんが、さように考えております。
  30. 川合彰武

    ○川合委員 われわれもただいまおつしやつたと同じような意味の増加財産税なのでありまして、要するにある年限を限つて、その間にやみ所得が轉嫁して財産なつたものに課税しようというように、われわれは増加財産税を定義しているわけであります。その場合に仰せの通りに、これは恒久性をもたなくて一回限りのわけでありますが、現在の日本財政をどうするか。つまり中間安定期にもつていくようにして、この財政を切り拔けていくという考え方をこの際やつて、一應一挙にある程度のデフレにもつていくという前提に立つているわけであります。
  31. 栗原修

    栗原公述人 お説のようでありますならば、一回限りに大きな税收をあげる税をもつということは、私は價値があると思うのであります。それで中間安定もしくはデフレの状態になりまして、將來國家歳出が相当規制されていくということであれば、大きな税收を期待しなくても済む。こういう状態を予想して考えるならば、一回限りでも差支えないのではないかという議論は十分成り立つと私は考えます。
  32. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 取引高税と今まで行つた物品税について、一般的に何かダブッた感じがするのですが、そういう点についてどのようにお考えになつておるか、御説明願いたい。
  33. 栗原修

    栗原公述人 お答えいたします。この点は特別の品目に限りまして、そうして賣上税を課するというような場合には、それは非常に明瞭になつてくるじやないかと思うのであります。今度のように主食以外の全体の物品販賣はむろんでありますが、その他サービスとかいうものを全体含んだものでありますと、二重に課税をするという観念の、よほど薄らいだものができてくるじやないかと思うのであります。二重に課税される分もむろんあろうと思いますが、しかし特殊な品目を限つて賣上税を課するというよりは、よほど薄らいだ別の作用が出てくるのではないかと、かように考えております。
  34. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ありがとうございました。  それでは午後一時四十分まで休憩いたしまして再開いたしたいと存じます。     午後零時四十一分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後二時三分開議
  35. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 休憩前に引続いて公聽会を開きます。全國財務職員労働組合副委員長徳島米三郎君にお願いいたします。
  36. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 ただいま御紹介にあずかりました徳島でございます。われわれの組合におきましては、財政の民主化ということを唱えて運動方針の一つとして大きく取上げているのであります。從いまして本日の問題に対する意見も、そういうふうな立場において申し上げたいと思うのであります。  昨日の新聞によりますと、十四日の新聞記者会見においてG・H・Qの天然資源局農業課長のデヴイスさんは、次のような意見発表せられておるのであります。第一に最も遺憾なのは大藏省だ、農民に勝手に課税し、その権限を祕密な方法で行使しておる、これらの処置を牽制し得るのは國会である。第二に農民への課税は過重だと思う、農地を購入しても、税の負担にたえ切れず賣り戻す危險性がある、こういうふうな御意見であります。われわれは税金を徴收する者の立場として親しく納税者に接しておる点から、この点についてひとつ意見を申し上げたいのであります。なぜ農民に対してこれだけの、こういうふうに指摘されなければならないほど重い負担がかかるのか。もちろんの國民全体に対する負担は、敗戰國の悲しさとして異常な終戰処理費その他の経費によつて過重の負担を受けるということは当然でありますが、とりわけわれわれが考えるのに、勤労者並びに農民、あるいは中小商工業者に対する負担は非常に過重であると思うのであります。その第一の理由といたしましては、所得税法そのものに非常に難点があるということであります。それは現在の所得税というものが、名前は所得税でありながら、その実質においては大衆負担基礎を置いておる。つまり税法の面で言いますならば、基礎控除制度が非常にあいまいである。先ほど栗原さんの御意見で、現在の税法における基礎控除その他の制度は非常に妥協的にできておるというふうな御意見を述べられましたが、大体主税局長その他の関係者の意見を聽きますと、この基礎控除制度というものは、われわれの考えるところでは、大体最低生活費を免除する大きな役目をもつておる、こういうふうに考えているのでありますが、日本の大藏官僚はそういうふうに考えずに、この基礎控除の主たる目的は、所得税そのものに累進性をもたす一つの役目があるのだ、最低生活費の免税というふうな趣旨は一つの附けたりとしてある程度加味しているのだというふうな意見が雜誌あたりに発表されております。しかし所得税制度を考えるならば、これは非常に大きな誤りでありまして、あくまでもこの所得税法においては、最低生活費の免税ということが一つの大きな目標として、その実現に努力されなければならないのであります。從つてこういう所得税法欠陷による農民所得の過重負担、これは勤労者にとつても同樣であります。  次に問題になるのは、税務行政の官僚化という点であります。この点は先ほどの公述人の稻川さんが、中小商工業者の立場において発言されましたが、今年度所得税におきましては、大藏省は大体徴收目標額というものをきめまして、それを各財務局に指示し、そうして各財務局はさらに管轄下の税務署に対して、その目標額を指示しておるような状況であります。農業所得の場合におきましては、各財務局ごとに耕作種類別に反当りの所得というものを大体定めまして、それに基いて、ほとんど一律に課税するような方式をとつております。これは稻川さんが申されましたように、割当というものがあつて、そうしてほとんど個人所得税の大部分は割当によつてつてつておられるという御意見でありますが、実情は大体そのようでありまして、農業所得におきましては、それが殊にひどく、農業所得のうちで非常に特徴のあるのは、農業所得におきましては、経営規模によつて收益率が非常に違うということであります。つまり一町二、三反以上の耕作規模においては、比較的收益率がよくなるのでありますが、それ以下の小農のものにつきましては、收益率は惡いのであります。また現在の供出制度によりましても、小さな規模の農民の收益というものは非常に惡いのであります。ところが現在の課税の状況におきましては、そういうふうな所得の内要について、実情に副つた措置をとるだけの方法を講じておりません。もちろんこれはそういう方法を講じた方がよいということは、これは税務関吏だれしも考えることであります。ところが財務局の方針が、そういうふうに大体の目標額をきめ、それにあてはめて課税する。しかもその調査の時期、あるいは更正決決をやる時期というものが、非常に短期間でありまして、そういうふうな実情に副つたところの合理的な処置を講ずるだけの時日、人員というものがありません。從つて惡いと知りながら、税務官吏というものは、こういう矛盾した不合理な方法によつて課税しておるのが実情であります。從つてこの面から、殊に経営規模の小さな農民に対する所得税課税というものは、非常な過重負担になるということが起つてくるのであります。これに関連して申し上げたいことは、今度の税制改正に附随いたしまして、從來からあつた間接國税犯則者処分法を改正して、國税犯則取締法というものを設け、そうしてその中において税に対する反対運動を彈圧するような、もしそういう運動をした者があれば、これに対して三年以下の懲役に処するというふうな規定を新たに挿入して、この國税犯則取締法というものを現在國会に提出しておるのであります。しかし今言つたように、所得税法そのものに大きな欠陷があり、また税務行政そのものにも大きな欠陷がある。そういうふうな欠陷を放任しておいて、ただ押えつける方だけは遠慮なしに押えつけていく。こういうふうな政府のやり方に対しては、われわれ直接に税に携わる者としては、非常に遺憾に堪えないのであります。あの切捨て御免の封建制度のもとにおきましても、苛斂誅求がはなはだしくなれば、必ず百姓は一揆を起して、これに対して反抗したのであります。ましてや現在は民主主義の時代であります。政治のやり方が非常な不合理な場合において、人民がこれに対して反抗するのはこれは当然であります。從つてこれについてはあくまでも民衆に納得せしめるような方法を講じてこそ、この民衆の反抗というものは押えつけられるのでありまして、これをただ單に法規の上だけで彈圧しようということは、問題をますますこじらかすもとではないかと考えるのであります。それで問題は、そういう所得税法欠陷を直すということになれば、当然この基礎控除制度というものをもう少し上げなければならない。こういうことになつてくるのであります。この点につきましてはさらに後ほど触れたいのでありますが、それでは一番の問題は、基礎控除引上げるということは、これはだれしも異議はないことと存じますが、ただそれによつて起る歳入減をどうするかというふうな問題について、皆さんの御意見がきまらないのではないかというふうに考えます。この点についての私の見解を申し上げたいと思います。  午前中のこの公聽会におきまして井藤先生は、各國の國民所得と比較して日本のこの租税負担というものが、必ずしも重くはないということを申されたのであります。そうしてその例として、英國は國税においては國民所得に対して三七・三%、米國が國税において二〇・九%負担している。しかるに日本國税においてはわずかに一七%しか負担していない。だから日本にはまだ租税負担能力はもう少し高くてもいいじやないかというふうな御意見でありました。いろいろそれについての疑問の点を申し述べられましたが、結論としてはそういうふうに各國の國民所得に比べて、日本はまだ租税負担においては若干低い。しかし私はこの問題をつかまえて、日本租税制度の運営がうまくいつていないということが、十分言えるのではないかと思うのであります。この國税負担は一七%でありますが、これを直接税と間接税にわけますと、井藤先生も言われましたように、二十二年度においては大体間接税と直接税の比率は半々であります。從つてこれは直接税について申しますならば、國民所得に対して大体八・五%、直接税として國民負担している。これは國民全体を平均した場合の話であります。つまり、國民全体では、八・五%負担している。それに対して一体勤労者とか農民というものはどれだけ負担しているかということが、重要になつてくるわけであります。農民の場合で申し上げますと、農地委員会の全國協議会に「農業改革」という機関紙が最近発行されましたが、それによりますと、農業所得一つの例としてこういうのが載つておりました。栃木縣のある農家で経営規模が六反五畝、畑作の土地であります。これに対して税金が一万五千四百十円かかつてまいりました。大体あの方面において反当り五千円の所得というふうなことが認められているそうでありますが、そうすると反当りの所得に対して税金が実に五割もかかつているということが、説明に載せられておりました。もちろんこの五割という数字には、所得の査定において大きな開きがあるのでありますが、かりに所得を農家の申告のままに課税するといたしましても、ある農家が五万円の所得を上げた。これは普通の農家であれば、五万円というものは決して多い数字ではないのであります。五万円の所得を上げた場合に、そうしてかりに扶養家族が三人いるとした場合の計算を立ててみますと、二十二年度においては大体一万三千百五十円の税金がかかつたのであります。一万三千百五十円と申しますと、所得に対して二六・三%であります。また勤労者の場合の計算をやつてみますと、昨年の七月、これはちようど物價改訂、同時に賃金ベースが千六百円から千八百円にはね上りました。そうしてそれと同時に勤労所得税に対するある程度軽減措置が講じられたのであります。そうしてその軽減せられた所得税法によつて計算してみますと、昨年七月の勤労收入は、エコノミストに載つてつた統計によりますと、平均して四千二百六円という数字が出ております。これは勤労收入だけであります。これに対する税金をはじき出してみますと、扶養家族三人の場合におきましても、税金が六百七十円かかります。これは所得に対する割合としては一五・九%に相当するわけであります。つまり現在の國民の中で、最も担税力の少いと思われる勤労者、あるいは小農民が、実に勤労者の場合では一五・九%の租税負担をしておる、農民の場合においては、今言つた例では二六・三%の租税負担をしておる。ところが全國平均においてはわずかに八・五%しか負担しておらない。こういう矛盾がこの数字を分析することによつてわかるのであります。つまり最も担税力の少い者が平均の二倍も三倍も税金負担しておるということが言えるわけであります。これはどういう原因に基くのか、結局一番担税能力のあるべきインフレ利得者が脱税をしておるということが、結果的に言えるのではないかと考えるのであります。昨年の國民所得は九千億とか一兆とか申されております。この國民所得にして主税局の方の課税標準は大体四千六百億、これを差引きますと、大ざつぱにいつて五千億の所得というものが、この課税所得國民所得の間に大きな食い違いとなつて現われております。結局この五千億という数字の大部分は、脱税者の所得がこの中に含まれるのではないかと考えられるのであります。一方今比較いたしました米國の例はどうかと申しますと、米國におきましては國税負担額は大体國民所得に対して二〇・九%であります。しかし二十二年度の予算によつて直接税と間接税の比率を拾い上げてみますと、直接税は大体七五%を占めております。從つてこの直接税の七五%の割合國税負担額にかけ合わせてみますと、直接税は國民所得に対して一五・六%、こういうものを米國の國民全体としては負担しておるという計算になります。ところが米國の労働者はどれだけの税負担をしておるか、これを國税の場合について計算してみますと、昨年末の工業平均賃金に対して税率を適用して計算してみますと、大体三・八%くらい、つまり國民全体の平均では一五・六%であるが、労働者の平均の租税負担はわずかに三・八%にしか過ぎない。これが米國の実例であります。つまり米國——あるいは英國でも同樣でありますが、大体において租税負担というものは、担税力のある者からとつて、担税力の少い者には担税負担がきわめて少いということが言えるのであります。日本とはちようど正反対であります。從つて日本の場合において、もし担税力がありとすれば、どこにあるかということは、もう言わずして明らかでありまして、これはわれわれ勤労者、あるいは農民、あるいは中小商工業者に対する課税ではなくして、結局このインフレ利得者をどうして捕捉し、どうして徹底的に課税するかという点であります。  われわれが今回の税制改正案をながめて、まず所得税について大きな不満を感ずることは、所得税の累進制度がきわめて上の方にゆるいということであります。今度の改正案によりますと、大体少額の所得者、たとえば月收二千円程度あるいは二千五百円程度所得者において、大体軽減割合所得に対して五%程度であります。ところが、これが事業所得者で五十万円以上の所得者になりますと、改正前の税法に比べて、軽減割合が、大体二五%以上になるのであります。つまり勤労者に対する軽減割合よりも、こうした大所得者に対する所得税軽減というものが、非常に大きな割合を占めているのであります。現在のようなインフレ経済のもとにおきましては、そうした大所得者というものは、必ずしも自分の生産に対する努力の報酬として得られた所得でなくして、むしろインフレ利得によつて、つまり労せずしてもうかつたというのが多いのであります。また國民経済全体の上から考えましても、こうしたインフレ利得というものについては、徹底的に課税して、そうしてこういうインフレ利得者をなくするということが、國民経済全体の上から言つてもいいことでありまして、こういうものに対して平時の所得税と同じような考え方でもつて累進税率を考えているという点に、われわれは大きな不満をもつのであります。  なおこれと関連して法人税軽減の問題に融れたいと思うのでありますが、井藤先生が言われましたように、インフレによる課税の矛盾というものは、現在集中的に法人税に現われております。しかし私はそういうような立場からではなくて、この法人税というものは、日本においては殊に個人営業との負担の権衡という点から、大きな関心を拂わなければならぬと思うのであります。そういう意味において、今度の法人税軽減による法人企業の税負担と、個人営業の税負担というものを一應比較して、税金をはじき出してみました。例といたしましては、百万円の資本金の会社が一年間に百万円の利益をあげた場合——現在においてはこういう例が非常に多いのでありますが、そうした場合に、かりに百万円利益をあげて十万円重役報酬でとる。そうすると、課税基礎になるのは九十万円であります。これにいろいろな法人税をかけて、残つたもので十万円の配当をした場合、こう仮定をいたしまして、そうして勤労所得、配当所得に対する税金あるいは法人税、営業税、これだけのものを加えて計算し、そうして片一方に個人営業で百万円もうけた場合にはどれだけかかるかという計算を立ててみました。そうすると、法人営業に比べて個人営業の方が十一万円ほど税金負担が多いという計算になりました。つまりこういう点から見るならば、今度の税制改正案というものは、小所得者よりも大所得に対して軽減が大きい。あるいは勤労所得よりもむしろ事業所得に対する軽減割合の方が大きい。あるいは個人営業よりも法人企業に対する軽減割合の方がうんと大きい。また別の言葉で申しますならば、資本に対する課税を非常に優遇しておるというふうな点が指摘できるのではないかと思います。こういう意味において、これは財政の民主化という点から申しますならば、今回の税制改正、主として直接税における税制改正については反対の意見をもつておるのであります。  次に第二の問題の取引高税でありますが、この問題についてはいろんな公述人から反対理由、あるいは反対理由があつても現在の財政上やむを得ないというふうな理由がるる述べられました。從つて重複するような部分については簡單に申し述べますが、まず取引高税について結論を申しますと、われわれの立場からはこれに対しては反対であります。その理由とするところは二点ございまして、第一はわれわれは労働組合としての立場から、これはきわめて極端な大衆課税である。殊に日本のような非常に仲介業者の多い國におきましては、百分の一の税率であつても、これが取引の段階ごとに累積していつて、非常に大きな税負担になる。こういうふうな点からいつて、この税金は非常に惡い税金であります。また今回の法律によりますと、この範囲はきわめて廣く、主要食糧を除いては、ほとんど全部がこれにかかるというふうな点におきましても、またきわめてわれわれとして反対しなければならない理由があるのであります。  それから次にはこの税金が中小商工業者に対して非常な圧迫をする。こういう点につきましてわれわれは非常に大きな疑問をもつのであります。これにつきましては取引の段階が資本に逆比例いたしまして、大資本ほど課税される率が少くなつて中小企業ほど取引の段階が多くなるに從つてコストが高くなり、そうしてこれが消費者に轉嫁されるにいたしましても、大資本との競争上非常に不利な立場に立つということと、資金的に見ると圧迫を受けるという点であります。つまり今後の法律によりますと、大体印紙をはつてこれを納税するというのでありますが、印紙をはるための資金が相当に多額になつてくるのであります。從つて現在のような金融難の時代におきましては、こういつた点からも中小企業家は、大資本に比して非常に不利な立場に立つということが言えるのであります。  次にこれはわれわれの仕事の上から、税務行政上の立場から申しまして、この税金は非常に脱税の危險性の多い税金である。こういう点から言つてわれわれは反対せざるを得ないのであります。つまり課税の範囲が非常に廣いということと、それからこの税金が一面において正直な申告をすることによつて、他の面において、つまり所得税等において課税標準が非常につかまえられやすくなるというようなことを納税者が考えて脱税する危險が多い。こういう点であります。これはすでに物品税あるいは遊興飲食税等の場合において、そういう意味からの脱税も多かつたという点を考えるならば、この税金が非常に廣範囲にわたつておるために、非常に大きな手数がかかり、脱税の危險性が非常に多いということが言えるのであります。われわれとしてはこういつた二点から、この取引高税に対しましては反対せざるを得ないのであります。  なお最後に申告納税制度の点について申しますならば、昨年度申告納税制度が初めて実施されまして、われわれとしてはこれが現在の國民の納税思想の上からいつて、あるいはわれわれの事務の上からいつて、これが非常に困難な仕事であるということを予想しておりました。そして案の定、予想通り昨年末以來、この税金の不成績のために、非常な財政危機に見舞われまして、そしてわれわれとしては非常にそれ以後労働過重を強いられて、やつと最近におきましては大体申告納税の成績も予定額を突破する見透しがついたのであります。しかしわれわれはこういつた税金を、申告納税制度によつてつていくためには、どうしてもその準備として、税法というものがもつとわかり易くなければならないということを痛感するのであります。われわれがふだん納税者に接している感想から申し上げますならば、税務署に來る納税者の中で、ほんとう税法を読んだことのあると思われるような人は、税務代理士を除きましてはほとんどないのであります。これは税法そのものが一般に渡らないというふうな事情もありますが、同時に税法そのものが非常にむずかしくて、おそらく代議士の方々にも十分な理解、税法の解釈というものはむずかしいのではないかと考えるのであります。こういうふうな点におきまして、申告納税制度の実施と同時に、現在の税法に対する税法そのものの表現の批判というような点も、大いに加えられることもお願いしたいのであります。それから、それと同時に、この申告納税制度を円満に実施するには、今言つたような所得税法あるいはその他の税法上におきます欠点、つまりこの基礎控除とかその他いろいろな控除における精神が、ほんとうに正しく行われていないならば、いくら申告納税をやかましく言いましても、これは自発的になかなか納税することは困難であります。從いまして、こういう意味からいつても、申告納税制度を円満に実行するためには、どうしても税法そのものが今までより一層に合理的でなければならないということを痛感するのであります。以上で私の意見を終りたいと思います。
  37. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ただいまの徳島さんの御意見に対して御質疑はありますか。
  38. 堀江實藏

    ○堀江委員 法人に対する課税率と個人に対する課税率とが非常に違う、という御説明があつたわけでありますが、われわれの地方においては百万円に充たない、もつと下の所得者が、農民ではないわけでありますが、商人が合名会社とか合資会社に変える。そうした場合に非常に所得税が減額になるのであります。そういう点はどういう率で——かりに二十万円くらいの所得者が法人、つまり合資会社なり合名会社なりになつた場合に、個人と違うわけですが、その率をお聽きしたい。
  39. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 この法人税と個人営業の場合の課税方法が非常に違いまして、法人税の場合は主として、超過所得に対する法人税というものが非常に高い税率になつております。從來資本金の一割以上の利益に対しては、全部超過所得に対する法人税がかかつてきたのであります。從つて資本金いかんによつて法人税が非常に高くなり、またある程度安くなるというふうな計算になるのであります。ところが今お話の問題は税率の問題ではなくして、主として課税方法の問題ではないかと思います。というのは課税標準のつかまえ方が、法人の場合と個人の場合と非常に違うのではないか。もちろん正確な計算をいたしますと、そういう点もないのでありますが、現在の税務署の実情においては、法人税の方は、これはどちらかと申しますと、主として申告というものを基礎に置いて決定しておるような実情であります。ところが個人営業の場合におきましては、先ほど申し上げましたように、その大部分がいわゆる税務署の見込決定というような結果になつております。從つてその所得のつかまえ方に大きな隔たりがあるのじやないか。これが私どもの言う一番大きな理由であります。税率の上におきましては、今回の改正以前ではむしろ法人税の方が高すぎるような感じがするのであります。これは具体的に資本金とか利益、そういうふうな実例によつて計算しないとはつきりお答えできないのであります。
  40. 内藤友明

    ○内藤委員 全財労の徳島さんにお尋ねしたいのであります。納税者が税の決定をされますときに、税務署といろいろ折衝、交渉するのでありますが、今あなたが大藏官僚とおつしやつて、あなた方がその埓外のようなお話でありましたが、納税者から見ますると、あなた方も実は大藏官僚で、殊に一番接触いたしますのはあなた方の方だと思うのであります。そこで私はお尋ねいたしたいのは、なるほど各税務署にいくらという目標額を示されるというのでありますが、それは絶対に守れということを上から言つて來られるのでありますかどうか。それからもう一つお尋したいのは、納税者が大藏官僚と考えておるあなた方が、なるほどこのごろ仕事の分量が非常に殖えましたので、あなた方に対しては私ども申訳ない氣持で実は感謝を申し上げておるのであります。從つて私どもの委員会におきましても、しばしばそういう決議もし、いろいろなことにつきまして、大藏当局に配慮あるようにということと常に申しておるのであります。ところが私ども税務署に何度も行つたのでありますが、あなた方のお仲間の方が、まことにどうも冷淡なつれない、何と申しますか、これが私ども國民ほんとうの仲間かと思われるような感じを與えられますが、そこらあたりを少しお話願いたい。何だか大藏官僚というのはどこにあるかのように思われるのでありますが……。
  41. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 もちろん税務署の官吏はすべて大藏省の官吏であります。われわれが先ほど申し上げたよううな意味の大藏官僚というのは、これは上級の、大藏省におつていろいろな企画立案をしたり、われわれに指図をする者、これが一般の観念から言う官僚というように、われわれは考えておつたのであります。もちろんわれわれと同じような税務官吏の中にも、非常に権力的な考え方の人が多数あるということは、これはわれわれも一緒におつてよく承知しております。私はいつて二、三年経つて、ある講習会へ行つたときに、先生がこういうことを申しました。この税務官吏というものは、月給は安いがいばれるからいいというふうな意見を聽かされました。大体月給は安いし、上の人から非常に押えつけられる。税務署には傳統の美風というものがございまして、非常に從順な人が多かつたわけです。從つてそういうような環境の中におりますと、どうしても上からの圧迫というものは、圧迫の移讓の論理というものを何かで読みましたが、上から圧迫されると、その鬱憤のはけ口はどこかに出て行くのではないか。これは非常に私とても惡いことだと思いますが、そういうふうな環境が非常に多いということを一應申し上げたいのであります。もちろんわれわれとしては、労働組合として官廳の民主化ということをやかましく言い、われわれが窓口事務を親切にしなければならぬということを常にわれわれとしては考えているのでありますが、先ほどの割当課税の問題にいたしましても、これはわれわれがいろいろつつこんでいくと、これは強制的なものではない、絶対的なものじやないというようなことを申しておりますが、先ほども商工協同組合の方が申されましたように、これをうまくやらぬと、署長の成績が惡くなるという懸念は大いにあるわけであります。上の方から一つの命令を受けて、それがうまくやれない場合に成績が惡くなるのは当然でありまして、今度の割当の場合におきましても、ある程度強制的な言辞というものが各署長にあつたということを聞いております。というのはもしこの目標が達成できない場合においては、それに十分な理由がなければ、署長に対しては相当な責任をとつてもらわなければならぬということが言われたように聞いたこともあります。從いましてこの点につきましては、署長がそういう命令を受け、その署長が税務署へ帰つてきて課長に言いつけ、課長が自分の責任上どうしても署員にそういう方針を傳えるということになりますと、署員としては——これはもちろんわれわれの力が強くて、そういう不当な命令についてだれも反対し得るだけの力があり、またそれを許すだけの國民的な環境がありましたならば、もちろんそういう点については反駁するのでありますが、何分われわれの力が今及ばずして、割当課税反対ということはわれわれとしても大きな運動目標の中に掲げましたが、実際においては大体割当課税が実行されたようにわれわれとしては見ております。これは非常に遺憾でありますが、実情やむを得ずそういう結果になつております。この点に御了承を願いたいと思います。
  42. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 徳島君にお尋ねいたしますが、勤労者の源泉課税の不当なる点についてもいろいろ説明されましたし、われわれも特に勤労者あるいは農民の税の重いということもよく理解できます。ただしかし、あなた方全財の人々にお願いしたいのは、それならばどういう方法で適切な課税をするかという問題について何かいい示唆はないか。われわれはそういうことについて皆さんからいい知慧を拜借したいということが一点と、それからもう一つは、この取引高税につきましても、これが大衆課税であるということについては、われわれも決して否定いたしません。今日公述人のいろいろの方面から聽きましても、決していい税源のものだということは考えておりませんが、ただこれに代るような財源がどこに求められるかということになると、そこに問題がある。そういう問題についてあなた方実際の專門家の立場から——これは予算との関係もありますから、予算の方の檢討もしなければなりませんが、かりに三百億なら三百億の取引高税をとるという場合に、何か代り財源がないかというと、いつもやみ屋からとればいいということを、あなた方は言われるかどうか知りませんが、そういうことが常に言われるのであります。そういう点について、それならばやみ所得者からどうやつてとるかということも、一應全財労の方から何かいい示唆はないかということを聽きたいのであります。
  43. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 やみ所得の完全捕捉という問題は、非常にむずかしい問題でありまして、あらゆる理論的な方法を考えても、はたしてこれが完全にやれるかどうかということは疑問であります。しかし現在の税務行政の実情というものは、ほとんどこれに対して無力に近いというのが実情であります。税務行政上のいろいろの欠点はあります。つまり人員が非常に少い。しかもその人員が質において非常に劣つているということは、先ほど内藤さんの御質問がありましたが、現在税務官吏の質が低下している。なぜ低下したかと言えば、最近は少しよくなりましたが、去年までは官吏の中で一番水準が低かつた。これは從來十何年かの大藏省の惡いやり方の一つの現われでありますが、そういうふうに非常に惡かつた從つて今日のような生活困難な時代においては、税務署へ來るのは、ほんとうに税務官吏としてまじめにやろうという人も中にはありますが、親戚の税金をいくらかでも軽くしてやるためにはいつてきたとしか思えないような人も中にはある。そういうような意味で非常に玉石混淆になつてつて、税務能率というものは非常に低下しておる。こういう実情であります。それから質をよくし、人員を多くするほかに、いろいろな調査方法において欠点があります。資料の蒐集というものがきわめて不完全であります。物資の移動に対する資料の蒐集というものもほとんどないに等しい。その他銀行の調査も、事実上において現在何もやつておりません。そういう点においてこれに対する調査方法もきわめて不完全であります。それからもう一つ方法としては、先ほど栗原さんに対するあなたの御質問で、財産増加所得税というものを言われましたが、われわれもまたそれを主張しているわけです、財産増加所得税によつて、これは財産に対する課税ということよりも、むしろやみ所得に対する課税が非常に大きなる役目をなすのではないかということを考えております。これについては技術的に非常な困難が予想されますが、これはただいまこういう制度を設けることによつて所得税の漏れた分をある程度捕捉できる手段が見付け出せるのではないかというふうに考えられるわけであります。こういういろいろな調査方法、たとえば銀行預金の問題一つにいたしましても、非常に現在のやり方は不満であります。われわれとしてはどれくらいやみ所得がつかまえられるかということは、どういうやり方を政府がとろうとするのであるか、これによつてどれくらいとれるかということがきまつてくると思うのです。われわれとしては資料その他において非常に不備でありまして、正確にどれくらいとれるということは申し上げられないのでありますが、しかし現在非常に脱税が多い。昨年末以來G・H・Qの方針によつて、いろいろ脱税者の報告が出ております。それによつて見ましても、非常に脱税が多いということがおわかりになると思いますが、そういう意味から言つて、努力すればするほど税金はとれるということは、申し上げて差支えないと思います。
  44. 大上司

    ○大上委員 全財の徳島君の二、三お尋ねいたします。やや專門的にはいるおそれがあると思いますが、あらかじめ御了承を願います。まず第一に取引高税結論として反対ということをおつしやいましたが、その理由をずつと拜聽いたしましたが、よく了解しました。その中でわれわれが特に聽きたい点は、いわゆる税務行政面から見たならば、この取引高税は非常に脱税が多いというふうに言われました。そうすることは結局現在のあなたたちが扱つておられる、すなわち税務の行政機関としてのいわゆる現場第一線と言いますか、現在の陣容ではたして今日提案になつておるところの取引高税が十分行えるかどうか。人員の面からも、あるいは労働面から見ても十分にこれがやれるかやれないかという点が一つであります。その次に現在あなたたちのおられる組合員の実務年限がどのくらいになつておるか。すなわちこれは技術者と考えてもいいと思います。帳面一つ見るについても普通の素人ではむずかしい。だからこれは実務年限が非常に関係するわけでありますが、この実務年限の調査をなさつておるかどうか。最後に問題を轉換いたしまして、取引高税はなるほど大衆課税ということは私たちも認めます。特に仲介業者と申しますか、仲立人と申しますか、これが多い。從つて中小企業者を圧迫する。その結論は、生産財、消費財、この両面から見て回轉率の回数が非常に多い。すなわち大企業家であると、今申し上げた通りに、取引回数と資本とが逆比例するということをおつしやいましたが、このパーセンテージを実際お調べになつたかならぬか。研究された点があれば参考までに拜聽したい。この三点であります。
  45. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 第一の点を申し上げますと、現在税務署の中で比較的人員の充実しているのは直接課であります。取引高税がどの課において行われるかはまだ詳しく聞いておりませんが、仕事の性質から申しますと、これは大体間税課がやるものであります。ところが現在間税課は非常に弱体でありまして、酒の税金とかその他の税金で手一杯であります。これにこういう課税範囲の廣い取引高税をもつてきて、はたしてうまくやれるかどうか、非常に疑問であります。印紙をはることによつて納税されるということで、ある程度脱税が防止できるじやないかという考え方もありますが、印紙をはる制度はすでに遊興飲食税などの場合にも行われておつて、実際においてはほとんど実行されず、脱税が多かつたと同じような危險が今度の税法においても多分にあるわけであります。  それから第二点の從業員の経驗年数の問題でありますが、これは二十一年七月の給與の調査の場合に一つの統計がわれわれの方にもありますれけども、今その資料を持つておりませんので……。  第三の問題でありますが、大資本に比べて中小資本の場合がどういうふうに不利な立場に立つかという詳しい研究はしておりませんが、いろいろな本によりますと、大資本に比べて中小企業が圧迫されるという欠点は、取引高税に対するすべての人の意見であります。これの取引回数につきましては、アメリカあたりの例では、自動車のタイヤが大体消費者に渡るまでに十一回轉している例もありますが、平均大体六回轉くらいじやないかと思うのであります。日本の場合においてはアメリカと違つて、家庭工業も多いし、仲介業者も多いので、十回轉以上になるじやないかという感じがします。これは正確に調べたわけでないのですが、感じの上からそういう氣がするのであります。
  46. 宮幡靖

    宮幡委員 私はきわめて簡單であります。税務行政を観察していく上において、まことに失礼ですが、徳島君の職場と身分をお知らせ願いたい。
  47. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 私は大阪財務局の直税課の法人の仕事をやつておりました。今度、御承知の三月の賃金要求で六名馘首されまして、私はその中にはいております。現在は職場なしであります。
  48. 宮幡靖

    宮幡委員 もう一つお伺いいたします。間税犯則が國税の犯則に改められまして、納税するなというような運動をした者が体刑もしく罰金刑となつたが、これは大藏官僚、われわれは第三官僚と称しておりますが、そういうのは封建的な制度だということは同感であります。しかしながら二十二年度の更正決定の当時の実情は、各税務署の前に共産党員が参りまして、税務署へやつてくる人をつかまえて、五人、十人となるのを待つて、納めちやいけない、納める必要はない、こういう演説を必ずやつたのであります。われわれはその事実を目撃しております。それから農家の課税についても先ほどお話がありましたが、一町ちよつと超えたところが一番能率がよい。二、三反歩のところは非常に能率が惡い。これは税務署の見方で、見方の相違でありますが、われわれが実情を見ていると逆だと思うのであります。二、三反歩のところで、農業労力も肥料の入手もあまり苦しまないで、能率のあがる方が負担力が重い、こう見ておるのであります。そういう意見の相違から組織的な組合運動として農民組合が、やはり共産党に次ぐ運動をやつたわけであります。これらが各税務署に集團的に押し寄せまして、そうして正常なる業務の遂行が困難な圧迫を加えたのは事実であります。こういう罰則を設けることには私も非常に疑問に思いまして、これは何とかしなければならぬと思つて、すでに腹案も修正意見ももつておるのでありますが、実情はこれがなくてはならぬようになつておる。全財の労組といたしましては、かような分子、かような策動をもつと積極的にみずから追い散らすというだけの威力と勢力と勇氣はないものでございましようか。さすればかようなものはあまり必要がないのではなかろうかと考えますが、いかがでございましよう。
  49. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 その点をお答えいたしますと、私今月の初めに大阪へ帰りまして、市内の税務署二、三をまわりまして、不納運動あるいは納税民主化同盟の動きについて、大体直接関係のある直税課の係長級と話し合つていろいろ聽いてみました。南税務署はああいう運動の盛んなところでありましたが、向うへ行つて係長に会つて聽いてみますと、大体向うではうまくいつた。相当まけてやつたところもあるが、しかし実情を聽いてみると、氣の毒な人が非常に多かつた從つてわれわれとしては、何らああいう運動に動かされてまけたというのではなくて、実情を聽いてみて、なるほどまけてやらなければならぬというような氣がして、惡いところはまけてやつた。理屈をつけて納得させるところは納得さして、大体今のところではうまくいつているということを聽きました。それからわれわれの方におきましても、大体割当課税その他で更正決定の問題が起りましたときに、ちようど大衆課税反対運動、つまりわれわれとしては、どうしても大衆課税ではうまく申告納税をやらすわけにいかないというふうな考え方から、こういう税法に対する一つの反対運動をやつておりました。從つてその運動によつて、現在の税金の苛酷な原因はどこにあるかという点をいろいろ説明いたしまして、ほとんど全國各他に納税民主化同盟、あるいはその地農民組合の反税運動というものが起つておりましたが、大体これに対する反響——現在本部の方では報告を求めておりますが、各地の報告によりますと、われわれの趣旨をうまく徹底さしたところは大体うまく納まつておる。非常にわれわれに協力的になつておる。今まであつたような異議の申立も非常に少くなつておる。こういうふうな報告が非常に多いのであります。從つてこれはわれわれのやり方一つで、かえつてある程度いい方向に導いていくことができるのではないかというようなことをわれわれ考えております。これは頭から圧迫するといことになれば、かえつて反対の方向にいきはしないかというような氣がするのであります。
  50. 堀越儀郎

    ○堀越委員 農業所得税が過重であるということの御説明は、よく納得したわけでありますが、先日廣島財務局に行きまして、所得税の問題について、いろいろ調査したのであります。廣島財務局におきましては、二十なんぼかの税務署があるのであります。各税務署ごとの農業所得税とか、営業所得税とか、そういうものはわからないわけですが、農村の税務署は、目標に対して一五〇%、あるいは一四〇%もとつておるところが多いし、それから大きな都市の税務署は一〇〇%まで納まつておる。これは全國的な傾向であるか、あるいは廣島財務局だけの問題であるかは、よくその後の調査は聽いておりませんが、あなた方は中央におるわけでありまして、もしそうしたことが全國的であるとすれば、所得税法の問題とともに、税務署の課税に対するあり方というものが非常に問題になつてきはしないかということが考えられるわけであります。これに対してどういうふうにお考えですか。
  51. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 それは大体廣島だけでなく、全國的な現象であります。われわれの方でもある程度支部の方に照會して調査しておりますが、大体百四、五十パーセントというのがほとんど全國的な現象であります。
  52. 堀江實藏

    ○堀江委員 それに対して、どうしてそうなつたかという、あなた方の立場としての御感想は……。
  53. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 その点について深くその原因を調べてみていないのでありますが、どうしても営業者に対する課税はなかなかむずかしい、所得の捕捉が困難である。つまり更正決定するのにも非常に根拠が少い。いろいろな証拠物件が少いという点で、ある程度弱氣になるのではないかというような感じがするのであります。農業所得におきましては、耕地は動かすことができないものですから、そういう点から言つて、ある程度これについてはほとんど割当によつて十分以上の課税がやられているのではないかというような氣がするわけであります。その割当額の水増しの問題、その他いろいろな問題がありますが、その点についての詳しい調査はまだしておりません。
  54. 小平久雄

    ○小平委員 私取引高税についてちよつとお伺いいたします。この税につきましては、先ほどあなたのお話のように、非常に脱税の危險が多い。一般にもそう申されているのでありますが、大藏大臣あたりの話によりますと、むしろこの税を創設することによつて、いわゆる流通秩序の確立に資したいというようなお氣持のようでありまして、その面にもむしろ非常に逆の期待をもつておられるようでありますが、その流通秩序の確立の面に作用する力と、それからむしろ逆に流通秩序を乱すという面に働く力と、この税を創設した場合にどちらに強く働くかそういう点についてあなたの專門的な見透しと申しますか、お伺いいたしたいと思います。
  55. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 私大体間税事務をやつたことがないので、どういうふうな調査の困難があるのか実際に知らないので、自信のあるお返事はできないのでありますが、流通秩序の確立に利益があるか、それともそれを混乱さす傾向の方が多いかという点は、この脱税をどれだけ防止できるかということにかかつてくるのではないかと思うのであります。この脱税を防止できるかどうかは、これに対する人員というような問題が大きくこれを左右するのではないかと思います。現在の人員からいつたら非常に困難ではないか。うまくいけばお話のように、流通秩序確立のために非常に効果があるし、あるいは反面所得税をつかまえる一つの基準にもなるわけであります。ところが下手をすると、結局正直者だけが非常に大きな負担をする。商工業者は直接負担しないのですが、いろいろな関係において不利な立場に立つということが言われるのではないかと思います。
  56. 小平久雄

    ○小平委員 今お話の通りとすれば、組合としてこういう税が新設されたならば、どのくらいの人員が要るとか、そういう御調査をなさつたことがありますか。
  57. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 その点は遺憾ながらまだそこまで調査をしておりません。
  58. 内藤友明

    ○内藤委員 ちよつと簡單に……。これは私ども聞いた話でありますが、この三月に税のことでごたごたしましたときに、各税務署の方が一樣に納税者に言われたことは、かかる惡い税法は國会議員がこれをきめたのであつて、お前たち、文句があるならそこへ行けということを言われた。それは全財の本部から御指令になつたというようなことを聞いたのでありますが、これは一体ほんとうでありますか、どうですか。
  59. 徳島米三郎

    ○徳島公述人 その点お答えいたします。われわれは大体昨年末以來不納運動が非常に大きくなつて、これに対する本部の方針を至急きめなければならぬことになつたそのときに、本部の方から指針を流しまして、その指針は不納運動にもいろいろな理由がある。つまりわれわれの課税が誤つてつて所得のないのに、所得のあるように課税したという場合もあるだろう。そういう場合にはもちろんわれわれは公僕としてそれについては親切に直してやらなければならない、これが一点です。それから次に課税標準の捕捉は大体合理的にできている。つまりいろいろな点から考えて、帳簿がない場合には生活状況とか、そういう点から考えて大体所得を捕捉するわけですが、そういう点から言つて、大体所得額には納税者が納得しても、かかつてくる税金には納得がいかないという場合が非常に多いわけであります。こういう場合については、われわれの力ではどうにもならないものだ、これは現在の所得税法そのものが非常に苛酷にできておるのであるから、この点についてはあなた方も大いにそういう点が是正されるように運動してもらいたい、われわれだけの力ではこれは直らない、そういうふうに納税者に対して説得するようにわれわれは指針を流したわけであります。そういう点が表現のし方によつて、ある程度突き放すように言われたかもしれませんが、本部の方の考えとしては、そういうふうに考えておつたわけであります。
  60. 堀江實藏

    ○堀江委員 これは今内藤さんから御質問があつたわけでありますが、私直接廣島の財務局に農業所得の問題で交渉に行つたわけでありますが、それは全財労からでなく、財務局の高級の人からそういう話がありましたということを報告しておきます。
  61. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 それでは次へ移りまして、日本商工會議所專務理事三樹樹三君にお願いをいたします。なるべく重複せぬように簡單に要点だけをお願いいたします。
  62. 三樹樹三

    三樹公述人 私ども商工関係團体と消費者関係團体とが一致いたしまして、取引高税に反対をいたし、その大会を開きまして、反對の決議は先般委員長にもお目にかけたような次第であります。その線に沿いまして取引高税の反対の意見を申し述べたいと存ずるのであります。  取引高税は沿革的に申しますると、課税方法がきわめて原始的でありまするから、古代ギリシヤ、エジプト、ローマなどでも早くから行われまして、ローマの暴君ネロは、この税によりまして多大な戰費を賄つたと傳えられておるのであります。十九世紀になりましてからほとんどその姿を消すに至つたのでありまするが、この税がインフレーシヨンの進行に應じまして、税收を確保することができるというところに眼をつけまして、第一次世界大戰のとき、ドイツ、フランス等に新設せられまして、多くの國に採用せられるようになつたわけであります。しかしながらこの税が惡税であるということは、すでに皆さん御承知の通りでありまするし、学者などもこの税をきわめて非民主的な性格の強い税であるとして非難しておるのでありますし、この税を行いましたドイツにおきましても、これはなだ水税であるという異名をつけられておるのであります。なだれのごとくに消費者を押し流すという意味から、この異名を付しておるのであります。またアメリカ合衆國におきましては、一九三二年に、下院の委員会におきまして、歳入確保のために製造者販賣税を決定したのでありまするが、下院におきましては、この税が少額所得者に負担を課するものであつて、不公平かつ不当である。また租税負担を富める者から貧しい者にだんだん轉嫁させる契機となるおそれがあるから不当であるということをもつて、否決されたのであります。從いまして合衆國におきましては、この取引高税は実施されておらない。州のうちにおきまして実施しておるところがあるのであります。また英國などにおいても実施されておらないのでありまするが、これに反しましてソ連におきましては、昨年度歳入総額の六五%をこの税をもつてあげておるのであります。はなはだその点対照の妙を得ておると考えるのであります。わが國におきましては、昭和十一年にいわゆる馬場税制改革案におきまして、これを取上げたのでありますが、当時財界初め一般國民の反対の声が多くて、遂に実現しなかつたことは御承知の通りであります。しかるに今回政府提出されましたところの取引高税法案は、最も苛酷な方式によるところの課税方法をとつておると考えられるのでありまして、これによりまして國民大衆を疲弊困憊のどん底に追い詰め、産業、経済を萎靡沈滯せしむるおそれが多分にあると考えるのであります。今回の取引高税の惡い点を多少重複するとも考えられるのでありますが、二、三あげてみますと、第一に、取引の全段階に課税をしておるという点であります。すなわち一商品の原料から製造、加工、おろし賣り、小賣りを経て消費者の手に至るまで取引のあるごと課税されるのでありますので、その課率は百分の一ということでありましても、全過程におきましては非常な高率な課税となるわけであります。私どもの方におきまして二、三の商品について、取引経路を調べてみたのでありまするが、ここに調べたものがございますので、場合によりましたならばお手もとに差上げまして結構でありますが、石けんは最大取引段階が十三でありまして、最少九回であります。また書籍も最大取引段階が十三で、それにまた取次等を加えますと、さらに消費者の手に渡るときには十五、六回になるものと考えられます。最少におきましても七回であります。それからなべの類が最大九回、最少七回ということでありまして、これが消費者に轉嫁されまするときには、必然的に物價の高騰を招き、國民生活を脅威圧迫することとなると考えられるのであります。政府所得税の経減に名をかつて本税を課せんとしておるのでありますが、それはあたかも左の手で頭をなでて右の手でぶんなぐるということにほかならないと考えられるのであります。  次に課税の範囲が廣汎にわたつておるという点であります。すなわち主食を除外するのみでありまして、配給の野菜、魚、みそしよう油を初めといたしまして、日常生活必需品にもかかりますし、銭湯、理髪にまでかかるのであります。從いまして消費大衆負担は集積いたしまして、相当の金額に上ると考えられるのでありますし、殊にこの税は生活保護を受けるような極貧者といえども假借しておらないのであります。今日わが國の貧困者の多くは、平時のごとくに怠情の結果陷つたものではないのでありまして、國家の誤つた戰爭の結課に基くものが多いことを考えますときに、本税の賦課は社会思想の上に及ぼす影響は、決して少くないと考えられるのであります。  第三に、これが中小企業を圧迫するという点でございますが、この説明につきましてはだんだんお話がございましたから省略いたします。第四に、まじめな業者が不利益をこうむるにいう点につきましても、だんだんお話があつた通りであります。それから第五に、徴税手段といたしまして煩瑣なクーポン制を採用いたしておる点であります。すなわち取引のおよそ八〇%にあたりますところの五十円以上の取引に対しましては、取引高税に印紙または証紙をもつて納付することになつておるのでありますが、これに要する用紙、手数、費用等は莫大なものがあるばかりでなく、脱税の行為のあることと、その捕捉または更正決定がなかなか困難でありますことは、物品税の例に照らしても明らかであります。また営業者はこの印紙または証紙を、前もつて買わなければなりません。從つて租税を前拂いすることになるのでありまして、今日資金枯渇の折柄、一層資金難を招來すると思うのであります。その上に五十円未満の取引に対する分につきましては、現金で納付することになるのでありまして、その五十円以上のもの、五十円未満のものという区別をし、また記帳手続等もそれぞれなさなければならないというようなことでありまして、業者をして奔命に疲れしめはしないかと考えられるのであります。  以上のごとく、今回政府の提案しております取引高税は、國民生活及び産業経済の上に重大なる影響を來すものと考えられるのでありまして、ただ財源が不足しておる、あるいは試しにやつて見るというような理由で、軽々に決定せらるべきものではないと考えるのであります。午前中もお話がありました通りに、一旦これが実施せられますときは、税率を加減しますれば非常な重税となるおそれが多分にあるものと考えられるのでありまして、愼重なる御檢討をいただきたいと考える次第であります。  次にしからば取引高税に代る財源はどうであるか。今年度二百七十億円に上るところの取引高税を廃し、それだけの欠陷をどうして埋めるかという問題になるわけでありまして、これは私どものような素人がお話申し上げませんでも、皆様におきましてせつかく御檢討願つておるところと考えるのでありますが、われわれ素人考えといたしましても、いろいろなことが考えられるのではないかと思うのであります。第一に自然増收という点でございます。今日の徴税機構を充実し、その技術改善をいたしてまいりましたならば、相当の自然増收がまだはかれるのではないかというふうに考えられます。昨年度におきまして、当初は非常に納税成績が惡かつたのでありますが、結局予算に対しまして百億八百万円の増收を見ておるようなわけなのであります。なお次に國民所得國税との関係から見まして、まだ國税について檢討いたしたならば、あるいはもつと予定額を増加し得るもの、あるいは増徴し得るものがあるのではないかというふうにも考えられるのでありまして、この点につきましても十分の御檢討をいただきたいと考えるのであります。  第三に行政整理の実行に関してでございますが、これは民間におきましては非常な要望となつておることでありますし、また皆様方におかれましても、いろいろと御檢討をいただいておると思うのであります。政府は二十三年度におきまして、予算定員一割五分の天引きを実施することにいたしておるのでありますが、ドレーパーの報告にもあります通りに、政府支出の軽減インフレ問題解決の大きな要素でありますし、また今日有業人口七人について一人の官公吏を抱えておる現状に鑑み、勇敢に行政整理その他経費の節減を断行することに意を用いて、大衆課税を回避すべきであるというふうに考えるのであります。  それから第四に新税、これに代る新しい税はないかという点でございますが、この点につきましても各方面において研究をされておりますし、皆様におかれてもいろいろ御檢討願つておりますことを、私ども非常に感謝しておる次第でありますが、この点につきましても十分の御檢討をいただきたいと考えるのあります。われわれが今まで聞き及んでおります税につきましていろいろ申し上げてみますならば、午前中からも話のありました財産増加税、これも十分檢討の余地があるものではないかと考えるのであります。それからまた一部におきましては債務証書税というものをとつたらばどうか。すなわち借金の証書に対して税をとるのでありまして、借金をするとそれがそこに担税力を生んでまいるもとになるのであるから、この借金を土台にして税をかけたらどうかという御議論もあるようであります。これはドイツにおきましては前大戰時分に実施されたもののようでありまして、これらにつきましても檢討し得る價値があると考えるのであります。  それからもう一つ、一部に行われております理論は、この取引高税というものがきわめて弊害がある。しかしそれらの弊害を除去して、どうしてもこの取引高税をとらなければならぬというならば、こういう方法をもつてつたならばいいではないかというような議論もあるのであります。すなわち今日の取引高税が一番惡いという点は、先ほどもお話申し上げました通りに、取引の全段階にかけるということであります。それから課税の範囲が非常に廣いということ。それからまたクーポン制を採用しておるという点であります。これらの点を除いて取引高税に類するものを考えたならば、それは最も取引高税の弊害を除いたものとして考えられるのではないかという議論でありまして、そのうち最もおもな理論は生産税と申しますか、あるいは製造課税と申しますか、製造の段階において税をかけるという。その一回限りの段階を課税の対象とするというのでありまして、これによりまして各段階にかけることによる弊を除き、またこの際に生活必需品その他を除きますならば、生活を脅威するという点の弊を除くことができますし、またこれは捕捉しやすいという点からクーポン制を実施しないでやれるのではないかというふうに考えられるのでありまして、どうしても財源等の関係から取引高税に類するものを行わなければならないということであるならば、この生産税を考えるべきではないかというような議論があります。現にフランスにおきましてはこの一般取引高税を廃しまして、生産税というものでいつておるような関係であります。  以上きわめて概略的に取引高税に関する意見を申し上げたのでありますが、われわれは取引高税をやめていただきたいということに重きを置いておりますために、所得税改正につきましてはいろいろ文句もあるわけであるわけでありまして、現在の物價水準に照しまして、今回の案が必ずしも十分であるとは考えないのでありますけれども、この所得税軽減を理由として新設しようとしている取引高税はぜひやめてもらいたいというふうな考えからいたしまして、所得税改正はこの程度でも一應やむを得ないのではないかというふうに考えている次第であります。
  63. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ただいまの三樹さんの御意見に対して、お尋ねの点がありますれば、お願いいたします。
  64. 川合彰武

    ○川合委員 ただいま三樹さんのお話を承りまして、その中に、代り財源としての自然増收という点に着眼されたことは、私たちも同感の至りであります。殊に社会党といたしましては、すでに新聞紙上で御承知の通りに、政治的な意味とは違いますが、政策的な意味におきましては、取引高税には全面的に反対しております。そこでわれわれはその代り財源の有力なものとして自然増收をねらつているわけでありますが、この自然増收は、徴税機構の拡充強化とその質的な向上によつて、ある程度所期の効果をあげ得る、そういうように私は確信するものでありますが、しからばこの自然増收の対象になり得るものはどの職業であり、どの階層であるかと申しますならば、遺憾ながらすでに源泉課税の支拂者である俸給生活者にはその担税力はありません。また農業者においてもない。この徴税恐慌のよつて生じたというものは、主として農林にこれが起つたというふうに私は観察しておりますが、農村においてもありません。漁業においては若干の自然増收の余地があるかもしれませんが、主としてその職業的な対象というものは、遺憾ながら中小商工業に求めざるを得ない。そこでわれわれが今所得税法改正案を見て自然増收をはかろうというようなことからいくならば、三十万円以上の所得者に対して、われわれは政府原案よりももう少し税率を高めねばならぬというように考えているわけでありますが、そういう場合においては、日本商工会議所という中小商工業の一つ日本的な團体としては、そこに矛盾をお感じになるようなことはないか。もちろん中には進んで納税したいというような方もありますけれども、今日の状況においては、なるべく税金は少く納めたいというのが人情でありましよう。それからまた多く納めるにしても、適切なるところの納税ならば納めたいというようなお氣持の方もあろうかと存じますが、今、更正決定に対する異議申請の件数の多いのは、主として都市であります。從つて私は自然増收を都市の納税者であるところの中小商工業者と期待するということは、かなり困難ではないかと思うのでありますが、日本商工会議所の立場から見て、そういうような中小商工業者になおかつ自然増收の余地があるというふうにお認めになりますか。あるいは自然増收の対象は他の職業にあるか、あるいはまた農村にあるか、こういう点について、プライベートな御意見でも結構でございますので、お聽かせ願えればさいわいだと存じます。
  65. 三樹樹三

    三樹公述人 私は社会党の御議論を新聞で拜見しまして、まことにごもつともな御意見であると感じておつたのであります。要するに適正な課税をわれわれは欲しておるのでありまして、高額所得者の方面におきまして、もつと税率を高めるというようなことも、それが適正な方法でもつて考えられます以上、やむを得ないのではないかというふうに考えております。それからこの徴税機構の拡充その他技術の改善によつて自然増收をはかるという点は、先ほどもお話のございました通りに、いわゆるやみ所得者、新興階級というものを、もう少し捕捉するという点に重点を置いてもらいたいと考えるのでありまして、お話のように、今日まじめなる中小商工業者からその多くの増收を期待することはできないと考えるのであります。いろいろ政府も、今回やみ所得捕捉のために機構の充実をはかつておるようでありますが、そういう方面でなお自然増收がはかられるものではないかと考えておるのであります。
  66. 川合彰武

    ○川合委員 さらにまた三樹さんのおつしやいます通りに、適正な納税ならばおそらく中小商工業者も御満足して納税していただける、私はかように考えるのでありますが、意見を聽く問題が限局されておるわけでありますが、私はそういうふうな適正納税というような観点からいたしまして、商工会議所が現在のように團体交渉権が否認されておるということが、適正納税を結果せしめていないというふうにわれわれは考えております。そこでわれわれは團体交渉権を認めるというようなことを考え、もしいろいろな関係において團体交渉権が認められないとするならば、われわれとしては民主的な方法によつて、税務署と納税者との間に立つて、そうして納得のいく納税というようなことを考えておるのでありますが、商工会議所はそういうふうな團体交渉権の確立、あるいはまたそれができない場合においては、民主的な機構の樹立というようなことに一層のお考えをもつていただきたいし、また現におもちだろうかと思いますので、この機会に併せて御意見をお漏らし願えればさいわいだと存じます。
  67. 三樹樹三

    三樹公述人 ただいまの御意見にはまつたく同感でございまして、本年の初めに、政府が中間のいろいろな口を利くというものは排除するということでもつて、それがまた下の方にまいりますと非常に強くとられて、これがために納税者と税務署と非常な摩擦を起しておつたのであります。われわれといたしましては主税局の方にも話をいたしまして、ほんとうに民主的に納税をする。納得ずくで納税をするという以上、商工会議所等が間にはいつてよく事由を話し、喜んで納税ができるようにする必要があるんじやないかということを話しました。主税局の方でも、それはもつともであるというので、権威ある團体が、税額を決定してそれを押しつけるというようなことではいけないけれども、課税標準あるいは順位というようなものをこしらえて、そして課税の上の参考資料を提供するということについては最も歓迎するところであるという通牒まで出されたのであります。私どもといたしましては、なお一層こういう機会に民主的な方法をもつて納税ができますような機構をつくつていただきたいというふうに考えておりますので、この点につきましても國会方面におきましてどうかよろしくお考えをいただきたいと存ずるのであります。
  68. 川合彰武

    ○川合委員 主として三樹さんからは取引高税中心にいろいろな御意見が展開されて、所得税基礎控除その他に関しては、大体において政府原案で御満足だというようなお話があつたのでありますが、資本家的團体である日本商工会議所が、すでに前より勤労所得者に対する基礎控除その他の低減を主張されたということは、日本資本家團体の非常な進歩であろうというふうに私は考えておるのでありますが、その後における物價騰貴の状況、あるいはまた賃金水準の高まつたというようなことから考えますと、政府原案では非常になまぬるいというような御意見をお漏らしあるのではないかと実は期待したのでありますが、この程度で大体日本商工会議所はほんとうは御満足しておられるのかどうか。他に財源がないからやむを得ないというような御見解であるか、もう一回あらためて御意見をお聽かせ願いたいと思います。
  69. 三樹樹三

    三樹公述人 現在の所得税軽減方法をもちまして、必ずしも満足しておるのではないのでありまして、今日の物價水準に照しまして、決して十分であるとは考えておらないのであります。しかしながらこの所得税についてさらに軽減すると申しますならば、この惡税の取引高税はやつぱり何とかとつていかなければつじつまが合わぬではないかというようなことになろうかと思うのでありまして、一應この程度所得税の方はいいのではないか。しかしながら必ずしも満足しておるのではない、こういうふうにお考えを願いたいと思います。
  70. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ありがとうございました。  次は農業復興会議の総務部長をしていらつしやいます安井七次さんにお願いいたします。
  71. 安井七次

    安井公述人 ごく簡單に農民の立場から今度の所得税法改正、それから取引高税の新設に対しまする意見を申し上げたいと存じますが、結論を先に申し上げますと、われわれが新聞その他でお知らせを願つております現在の所得税法改正には反対であります。反対の理由といたしますところは、現在示されておりますところの税法改正では、農業者に対する課税負担が軽くはならないで、むしろ重くなるということであります。御承知の通りに現在の農村は、まさに不況の第一段階で金詰りを來しておりますので、このときに当つて所得税法改正負担が軽くなるならばよろしうございますが、重くなる現状では、どうしても反対をしなければならぬということになるのであります。ではどういうふうな改正をわれわれは望むかと申しますと、まず第一は農業所得の中からどうしてもまず生計費を差引いて、残つたものが課税対象になるという控除方法をおとり願わなければならぬということであります。それから第二の点は、農業所得の決定にあたりましては、本年度繰返されたような一方的な割当でなくて、きわめて民主的できわめて公正妥当な課税の決定方法がとられるような税制の改革でないと、これまた承知が相ならぬということであります。現在農村にかかつておりますいろいろの公租公課の重圧は、先ほどからいろいろ皆さんの方でお話がありました通り、これを簡單に申しますと、昭和十六年、十七年は大体農民所得の三%であつたのでありますが、昭和十八年に五%に累増していつて、十九年には七%に伸びてきた。二十年には一三%に、二十一年には二〇%になつておるのであります。二十二年度の推定はわれわれの方では公租はおそらく三十二、三%になつておると推定をいたしております。この点、午前中井藤先生から國民所得の中の負担は、二十二年度では一九%ないし二〇%というお話がありましたので、その算定の基礎を御公開願いませんと、われわれの推定の三十二、三%との比較はできませんが、おそらく今年度大藏大臣が農村からおとりになりました所得税実績を公開されますと、われわれが推定をいたしました農民の負担というものは、農民の方の所得の三二%には必ずなると思うのであります。こういう点にわれわれはどうしてもいわゆる農民と農民以外の所得負担の比率の公正をおとりになる税法改正を願わなければならぬわけでありますが、農民の立場から言いますと、この均衡願う一番近道は、どうしても現在改正を予定されておりますような基礎控除一万五千円、それから扶養控除額のわずかなものを農業所得から差引かれて、その残つたものに課税するという制度ではこの均衡がとれないのであります。この点が農業のむつかしさだと私は思いますが、農業は事業ではなくして、これは勤労者と同じであります。すなわちいわゆる生産をする田畑はもつておりまするけれども、その生活費というものはその上で働くいわゆる労賃で食つておるわけでありまして、これを事業とみなして事業所得に賦課をすると同じ方法でおやりになります以上は、どうしても農業の課税というものは軽くならない。われわれはやはり算定の場合においても、勤労者課税をされる方法と同樣な点まで農業所得課税方法をもつていかなければ、農民に対する課税と非農民の課税との均衡がとれないと考えるものであります。私の方ではむしろそれ以上に、先ほど申しましたように、まず農業所得の中から農民の生計費を差引いて残つたものに対して初めて課税の対象にしてもらうという方法をおとり願いたいと考えて、四月十六日、われわれの方で農民大会がもたれましたときに、そうした一應の結論になつております。その場合における農民一人の生活費をいくらに見るかという問題も、一應の算定はいたしておりますが、大体われわれの算定からいきますと、一町二反の農家でようやく生計が保たれるという数字になるようであります。  次に第二の問題でありますところの、所得の算定をきわめて民主的に公正妥当にやる方法でありますが、今年度の農業所得に対してその徴税方法なり算定方法なりに非常に問題を起しましたことは、先ほどそれぞれの方々からお話のありました通りに、所得の自主申告制を無視いたしまして、税務当局が一方的に割当てたという問題であります。これは一面農民が家計簿をつけていないという欠点もありますけれども、より以上にわれわれに考えられますことは、とりやすい農民からとるという技術の安易さにこの方法をもつてつたというところが大きいと同時に、農民というものはどうしても言われた通りにやる傾向がありますので、その二つの問題がこうしたきわめて一方的な不自然な割当なり、徴税を行つたものと思われるのであります。われわれはこれをどういうぐあいに是正すべきかという点につきましては、一應自主申告の精神を活かして、税務当局がその申告を認めることと、もう一つは税務当局は農業の実態を御存じありませんから、一体農業の收入はいくらか、それに要する必要経費はどういうものであるかということには全然御素人でありますために、どうしてもそういう実態を知つおる方々に御委嘱を申し上げまして、そこに査定審査委員会という官制上の制度でも、あるいは公選をされるというような制度でも、そうしたものをもつて一應内容檢討から出発をしていく。そういう委員会制度をおもちにならなければならぬと同時に、もう一つは農民の團体の交渉権をお認めになる制度を今度の税法改正でおとり願いたいということであります。この点につきましてわれわれは数回大藏省とも御交渉申しておりますけれども、大藏省では委員会制度、あるいは團体交渉権は認めない方針であると強く言つておいでになりますけれども、どうしてもこうした制度をお考え願いたいと思うのであります。特にこの点は昭和十五、六年から食糧供出制度が布かれました当時をわれわれは思い出すのでありますが、現在の食糧統制は不満足ながら一つの軌道に乘つております。軌道に乘つておりながらも、なおかつ官僚的な一方的な割当を防止するために食糧調整委員会制度がもたれておつて、そこでようやく農民を納得させて、現在の供出制度がやや民主的に活きてきておるのであります。まして金をとられるというこの所得税の徴收の関係において、実態を知らないお役人さんが農民のふところを絞るということに農民の納得しておる期間はきわめて短いもので、やがて大きな反撥がくると思いますから、この食糧供出制度の今日に至つた関連におきましても、この際どうしても食糧調整委員会に代るような納税の査定審査委員会制度なり、そうしたものの必要が当然だと思うのであります。  次にきわめてこまかい問題になりますけれども、農業所得の査定にあたつて税務署の方々が一番お困りなるのは、実態を知らないから、現在の所得税法の十條できめられた総收入と必要経費の費目によつて、どうしても査定をしなければならぬことになつております。ところがあの十條に示された費目には、実際生産に必要な費目でありながら落ちておるものと、公租公課の中で落ちておるものが非常に多いのであります。大体これらをあの十條で網羅していきますと、おそらく必要経費というものは、現在の税法上きめられた必要経費の費目よりも相当殖えると同時に、その金額も二、三割殖えてくるということになつて、初めて農民は農業所得の算定に納得してくる段階になると思いますので、こまかい問題でありますが、この費目の取入れ方にも、特別な御留意を願いたいと考えるのであります。  なお参考までに最近農村がいかに疲弊しておるかということを申し上げますと、これは過日食糧対策議員連盟の公聽会に、われわれの仲間である多田誠君が発表いたしたのでありますけれども、二十一年度の九月から二十二年の八月までの農家生計費調査で、約千戸の調査でありますが、一毛作地帶では三千円の赤字を現在出しております。二毛作地帶では四千四百円の赤字を出しておる。畑草地帶でも二千四十五円の赤字を出しております。ただ近郊の蔬菜地帶ではようやく黒字になり、以下果樹地帶では相当の黒字を出しておりますけれども、われわれの大部分を占める單作地帶では、実に皆さんが御想像も及ばない赤字を出しておりまして、非常に資金難に陷つており、政府といたしましてもその打開策といたしまして、農業手形制度で三十数億円のお金を出すことになつておりますが、ただわれわれのお願いするのは、ほんとうに農民が赤字にはいりつつあるということを御理解なさつたならば、この所得税法改正はわれわれの意見を多少なりともお入れを願いたいと思うのであつて、さようでない場合には農業手形を農民にお出しになりましたあの制度も、要は肥料の製造業者なり、配給の機関なりを助けるもとでをお出しになつた以外の何物でもない、かように考えさせられるのであります。なおこの機会に農業協同組合が今度生れまして、皆さんにいろいろお骨折を願つておりますが、特別法人税が廃止されて一般法人税なみの税金を課されるという、農業協同組合の本質を逸脱した課税政府はお考えでありますけれども、この点は農業協同組合の本質を御認識くださいまして、かような制度にならないようなお骨折を願いたいと思うのでありますと同時に、聞くところによりますと、所得税その他一切の税が農業協同組合にもかかるかに聞いておりますが、農業協同組合の御本質を御認識くださるならば、かような課税には御反対をくださることをお願いするものであります。  次に賣上税の問題でありますが、この問題につきましてもちろん農民側といたしましては反対であります。しかしながらどうしても國家財政の現状から実施をされることになるといたしましても、その場合において農民の側でお願いをいたしますことは、主要食糧とそれから價格調整資金の関係で、肥料がその対象から除外をされておりますが、もう一つ農機具、農藥、飼料、これらはどうしても除外を願いたいのであります。なお附け加えて申し上げますと、米價を決定になりますところのパリテイの七十一品目そのものについても、特別の考慮をお願いいたしたいのでありますが、米價はくぎづけにされて、七十一品目のものはそれぞれの賣上税が賦課されまして、農民の手に渡つた場合には、いわゆる鋏状價格差はますますひどくなつて、農村は赤字経済をどんどん深く営んでいかなければならぬという現状になりますので、どうしても賣上格を実施される場合には、先ほど申しました農業生産に絶体必要なものに免税すると同時に、米價改訂の際の重大な御考慮おきを願いたいという二点であります。  なおもう一つ、これは協同組合の問題になりますけれども、われわれは農業協同組合が扱いますものに関する賣上税の賦課というものは、これは一段階として処理をされる。農民が協同組合に買入れを委託して手渡しを願うものでありますから、連合会を通じてこようと、数次の段階を終るものではないと考えておりますが、現在の大藏省ではそれは連合会二つを通じますならば、二つの段階でそれぞれ課税をされるという御説明を承つております。これも協同組合の御本質を御存じない大藏省としてはやむを得ないではありましようけれども、協同組合の本質から言つて、それは一つの段階で処理を願うべき性質のものでありますので、そういう点の御考慮おきを願いたいと思うのであります。農民の立場から二つ税制の問題について御意見を申し上げた次第であります。
  72. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ただいまの安井さんの御説に質疑はありませんか。
  73. 川合彰武

    ○川合委員 これはおそらく安井さんはお見落しになつてつたのではないかと思いますが、所得税法の第十二條の合算の問題であります。これが昭和二十二年度の更正決定にあたつて非常に問題を起したのでありますが、今回の改正案におきましても一應合算ということは認め、ただこの場合において基礎控除所得者別に差引くというように改正されておるわけでありますが、この程度改正案でもつて、はたして御満足いくものであるかどうか。この点を承りたいと思います。
  74. 安井七次

    安井公述人 それは私見落しておつたのではないかと思うのでありますが、その程度では納得のできない問題であります。なお詳細調べまして、いかなる処置に出るべきかを考えたいと思つております。
  75. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 安井さんにちよつと伺いますが、農民は供出を反別に割当てられる、そうして税金はその供出の数量でとられるというようなことで、今年あたりは特に農民の生活は非常に苦しくなつてきたと思うのですが、こういう点について農民が今のところそれを見ますと一番正直に納めておるのです。更正決定なんかをやりましても、町の商人なんかは何かかんかと言つてなかなか理屈をつけますが、農民は正直で、税務署を見るとこわいような感じで、そういうことはせずにどんどん納めておると思います。そういう点について何か農業復興会議は御指導になつておるか、その点お伺いしたいと思います。
  76. 安井七次

    安井公述人 農民團体というものはその点きわめて良心的なのでありまして、供出は供出で納める、税金税金で納める。しかし根本の割当の問題、米價の決定に強く触れておるわけであります。それから特にわれわれが痛感いたしますのは米價の決定で、われわれの米價の生産費は二千四百円でありますが、決定は千七百円であります。しかも供出制度は非常に重いのであります。しかしながらわれわれはきわめて合法的にやります関係上、道の長い鬪爭をやつておるわけでありますが、どう指導するかというのは、やはり正攻法で、米價は米價、割当の制度制度所得税改正改正、そういうぐあいにいくという考えでおります。
  77. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 本日公述人としてお越しを願いました方々の公述は一應終つたわけでありましたが、何かほかに御意見はありませんか。——意見はないようでありますので、本日の公聽会はこれをもつて閉ずることにいたしまして、明日定刻より引続き公聽会を開きます。公述人方々におかれましては、長時間にわたつておん蓄を傾けて公述をいただき、まことに感謝に堪えません。ありがたくお礼を申し上げます。  本日はこれをもつて公聽会を閉じまして、引続いてただちに委員会を開催いたします。     午後四時五分散会