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1948-06-14 第2回国会 衆議院 財政及び金融委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月十四日(月曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 泉山 三六君 理事 塚田十一郎君    理事 島田 晋作君 理事 梅林 時雄君    理事 吉川 久衛君       青木 孝義君    江崎 真澄君       大上  司君    倉石 忠雄君       島村 一郎君    苫米地英俊君       宮幡  靖君    赤松  勇君       川合 彰武君    河井 榮藏君       佐藤觀次郎君    田中織之進君       林  大作君    松原喜之次君       八百板 正君    金光 義邦君       後藤 悦治君    長野 長廣君       細川八十八君    内藤 友明君       本藤 恒松君    堀江 實藏君       河口 陽一君    本田 英作君  出席公述人       有竹 修二君    廣瀬 理一君       矢野敬三郎君    山本 正男君       齋藤 莊吉君   長谷川虎太郎君  委員外出席者         專門調査員   氏家  武君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた案件  たばこの値上について     —————————————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより財政及び金融委員会を開きます。本日は予定通り公聽会を開くことになつておりますので、ただいまより開会いたします。  本日の公聽会の問題はたばこ値上げについてでありまして、去る六月一日本委員会に付託いたされました製造たばこの定價の決定又は改定に関する法律案の審議に関連するものであります。御承知のごとく今回の製造タバコ價格改定案は、昭和二十三年度專賣益金として計上されている九百四十三億円の益金を捻出するための措置でありまして、財政收確保のためのやむを得ない値上案でありますが、一般大衆のほとんど日常必需品言つてもいいくらいになつておりますタバコにつきましては、これが値上げ現今一般大衆消費生活を脅かすことが著しいのであります。また他面タバコ品質維持やみタバコ防止に役立たしめるためには、定價の引上げを必要とすること等を考慮した上で、適正な價格をきめる必要があります。とりわけ國民負担能力考慮することの必要を痛感するのでありまして、これらの事情から財政及び金融委員会におきましては、今回の値上案國民一般が最も関心をもつところの重要な歳入法案を認定いたしまして、公聽会を開き、眞に利害関係を有する方々、または学識経驗のある方々から、廣く深い御意見を拜聽することといたした次第であります。  本日御出席公述人方々におかれましては、本問題について忌憚のない御意見を述べていただきたいと存じます。本委員会としましては皆さんの御意見を参考にいたし、法案審査の愼重を期したいと考えております。これから公述人方々の御意見を拜聽することといたしますが、御発言発言席においてお願いをいたしたいと存じます。なお本委員会公述人として選定いたしました村岡花子さんが、御出席を願う予定でありましたが、旅行中のため出席できない旨の申出がありましたので、御報告を申し上げておきます。本日御出席公述人の方は、お手もとに配布いたしてあります通り学識経驗者として、時事新報編集局長有竹修二君、タバコ小賣人代表として廣瀬理一君、タバコ耕作者代表として矢野敬三郎君、エコノミスト編集局次長山本正男君にお願いしてあります。  さらに一般公述人といたしましては申出が少かつた関係で、お三方にお願いしてあります。保健食養協会長日下頼尚君、代書業斎藤莊吉君神佛具商長谷川虎太郎君の三人にお願いいたしてあります。ただいまより順次御意見を拜聽いたしたいと存じます。  それでは最初にタバコ耕作者代表矢野敬三郎君にお願いいたします。
  3. 矢野敬三郎

    矢野公述人 私は矢野でございます。  今回のタバコ價格改定もしくは値上げの問題ですが、現在のタバコはほとんどただいまの價格限界点に達しているのではなかろうかと存じますので、これ以上の引上げはまことに芳しくないのであります。しかしながら國の財政確保のために行わんとするのでありますからして、できるだけこれを適正に決定して、そうして一般消費者にもあまり苦痛を與えないようにすることが、必要であると思うのであります。  かつて新生」の発賣がありましたが、これは申すまでもなくまことにその内容が伴つておりませんので、予定の賣上げが得られなかつたのであります。今回の新発賣のタバコにおきましてはその内容につきまして、未だ知ることができませんのでありまするが、これはこの前の「新生」の轍を履まないように、ぜひ希望してやまないのであります。私は耕作者方面から考えまして、タバコ價格引上げは、一面むしろやみタバコ横行を助長するのではなかろうかという感をいたすのであります。何となればタバコ價格が高くなりますれば、消費者はなるべく安いタバコをあさつて求めるということになりますので、その間にブローカーのごとき者が産地に出まして、淳朴なる耕作農民に対して、いろいろと誘惑の手を伸ばしてタバコ買取つて、それを消費地に持出すというふうなことが、むしろ多くなるのではなかろうかと思いますので、これはもちろん取締りを一層強化することではありましようが、ただ取締りのみをもつてしては、さような状況になつておりますからして、なかなかこの根絶は困難であろうと考えるのであります。そういう結果になりますからして、耕作者がその誘惑の手にかからないで、安んじて耕作のできるような方法といたしましては、まずもつて賠償價格の大幅の値上げ、また一面には生産資材の円滑なる配給等によつて耕作者があえてタバコやみに流さずとも耕作に專念のできるような態勢を整えておかれるならば、これはある程度防止もできようと存じまするが、それらの施設がなくして、ただ財政收確保のためにのみ走つて、定價の引上げを実施いたしますことは、まことに適当でないと思うのであります。どうぞこれらの産地状況等十分考慮に入れられまして、今回の引上げを実行するならば、このやみタバコ横行をなからしめるようなことを、他面に十分御考慮の上に実施されんことを希望してやまない次第であります。  耕作者の意向といたしましては以上申し上げましたような次第でありますから、十分御了承をいただきたいと思います。
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 何か御質問ございますか。
  5. 塚田十一郎

    塚田委員 ちよつとお尋ね申し上げたい。今タバコ耕作なさる方々が、今の賠償價格として平均反收どれくらいになつておりますか。
  6. 矢野敬三郎

    矢野公述人 今の賠償價格ではタバコの品種にもよりましようが、大体私の方の縣はだるまが多いのでございますが、これは一万円拔けます。一万円目指してやつているのですが、九千五百円くらいなものでしようか。
  7. 塚田十一郎

    塚田委員 ただいまおつしやる大体一万円という数字は、お賣りになつて得られる総收入でありますか。それとも経費を引かれた純收入でありますか。
  8. 矢野敬三郎

    矢野公述人 それは総体の賠償金であります。それから生産費を引きますと、大体その二分の一もしくは三分の一です。
  9. 塚田十一郎

    塚田委員 それに対して昨年の課税は反当どれくらいの認定をしてまいりましたか。
  10. 矢野敬三郎

    矢野公述人 反当六千円くらいの課税になつております。
  11. 塚田十一郎

    塚田委員 もう一点お伺いしたいのは、先日政府委員からの説明を聽きますと、やみタバコは結局葉タバコ耕作しておられるところから一番よけい出てくる、こういうお話であつたのですが、そのように皆さん方がおつくりになつているところで、相当やみの葉をお賣りになる実情であるか。それからして、政府にお賣渡しになるときの値段と、やみにお賣りになるときの値段と、どらくらいの違いがあるか。
  12. 矢野敬三郎

    矢野公述人 これはやみですからあまりはつきりした價格はないのですが、とにかく政府へ納めるものの賠償金は一キロ当り七、八十円、ところがやみタバコの方は三倍くらいになつていますか……。
  13. 塚田十一郎

    塚田委員 そこで葉タバコ買上賠償價格上げてもらいたいという御意見が出ましたが、皆樣がたの御希望では、どれくらいまで上げてもらいたいという御希望であり、どのくらいまで上げたらやみ賣りせぬでやるというお考えでありましようか。
  14. 矢野敬三郎

    矢野公述人 それは今後の他の物價の値上り等によつてまた違つてきますが、現在の状況からしましては、できるだけ多いことを希望するのであります。しかしそうむちやなことは当りませんから、大体において最小限度現在の倍程度、そこらのことを耕作者希望しておりますし、また当然そこになるだろうというような考えをもつて今ちようど本圃の管理にはいつたのでありますが、現在のきめられた賠償金では、とうていこれは他の作物をつくつた方がよいということになるのであります。
  15. 島村一郎

    島村委員 ちよつとお伺いいたします。タバコはたいへん肥料をくうそうですが、肥料配給などについてはどんなふうになつておりますか。
  16. 矢野敬三郎

    矢野公述人 肥料は大体円滑に配給されてきておりますが、ただ必要な量を十分とることができません。一番これは窒素肥料が主でありますが、それと並行してカリ肥料相当量必量なのであります。これが全然配給がありません、そういう関係なので、これは自分の手製によつて年中灰を燒いて、カリは自給によつてつております。
  17. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 それでは次に移ります。次はタバコ小賣人を代表しておいでをいただきました廣瀬理一君にお願いいたします。
  18. 廣瀬理一

    廣瀬公述人 私は小賣の方面を代表しましてお伺いいたしたのであります。  タバコの定價につきましては、ただいまのタバコの定價そのものが安いものであつて一般が喜んでとびつく値段であるとかいう考えは毛頭もつておりません。相当高いということはわれわれも自覚しておるのであります。しかしながらわれわれが長く携つておる経驗からして、今日の賣行き状況からみまして、現在のタバコ價格が、一般世間の物價並びに國民所得等から割出して、さほど苦痛なものではないと信じておるのであります。それは賣行き程度や日々客に接して、喫煙者の氣分その他を見ておりまして、そういう感じがするのであります。前公述人の申されましたように、もつぱら問題はやみタバコが問題になるのであります。ただいまの定價でも、もしやみタバコというものがないならば、これはまつたく順調に販賣していかれるのであります。しかしながら多くやみタバコというものが、政府專賣製造タバコ値段の、下を下をとはつてまいります関係上、これはいきおい人情といたしまして、少しでも安くて間に合えば、それで間に合わせようというので安い方に行くのであります。しかし最近はさいわいに政府の御施策も大分やみ撲滅に力を入れていただいております関係上、町方を歩いてみましても、ひとしきりほどやみが勃興しておりませんので、大分賣りよくはなつてまいつておるのであります。しかしながら御承知の先だつて來発賣されました「新生」というタバコは、これは前公述人も申されましたように、あまり品質價格が一致しませんので、一般大衆からまつたく見捨てられたのであります。しかしながらあの当時といえども、もし世間やみタバコが勃興しておらなければ、あれでも相当な購賣力は得られたのであります。いかんせん、やみタバコ價格は、常に十五円、二十円、高くて二十五円の範囲を出ないのであります。十五円から二十五円までの範囲を常に横行しておりまする関係上、この値段に匹敵する自由販賣タバコが一種もありません。ゆえにいきなり四十円というタバコが出たのでは、まつたく喫煙者の方でもさじを投げてしまう。しからばピースとは言えば、ますます高いタバコになるので、やむを得ず町方を探して、十五円ないし二十五円の範囲横行しておりまするやみタバコを、もつぱらねらう。この間にちようどつけこみまして、耕作地からいろいろな葉が出てまいる。またこれを密製造する者が出てまいる。またこれを密販賣する者が出てまいるというので、各位も御承知のように、ひとしきりはほとんど、專賣局タバコの方が賣れるのか、やみタバコ。の方がよけい賣れるのかわからないような状態にまでなつたのであります。しかしながら小賣人は政府の御決定なつた「新生」を賣り拔かない限りには、國家財政に影響を來すということを承つておりまするがために、なんとでもしてこれを賣り拔こうというので、われわれ小賣人一同は申し合わせまして、ほんとうに血みどろになりまして、夜は休みましても、どうして賣り拔こうかということを夢に見るほど、苦心惨胆をしてやつたのであります。それに大きな景品がついてすらもこれがはけない。そこで政府もこの状況をごらんくださいまして、價格を大幅に、大胆にお下げくだすつたがために、今度は逆に「新生」のみをねらつて來るようになつたのであります。ただいま少しの間品切れになつておりますが、「新生」の二十円という價格は、まつたく適正の價格と申し上げてよいと存ずるのであります。もし町方に二十円の「新生」が今でも並んでおりますならば、これはとぶように賣れます。ゆえに「新生」の二十円というものは、まつたく適正價格であるということを目安におきまして、これより上等の材料を用いるものに対しては、價格が多少上でしかるべきものであり、なお多少製造の手を拔くものは、その下であつてしかるべきであると存ずるのであります。本日御提案いただきました價格を拜見しますと、ピースが六十円に値上げをされるのであります。このピースがただいまの價格から十円上るということは、タバコ小賣人にとつて扱い上まことに扱いにくい、かような感じがいたすのであります。現在の五十円のピースなるものは、もうよほど喫煙者の方にも慣れておりまして、決して高いという感じでお吸いにならない。すでに板についております。これがわずかでも十円上りますと、ちようどピースの街で賣つておりますやみ値と同じようになるのであります。ゆえに願わくばこの十円は上げていただかないで、現状維持でやつていただきたいと思うのでありまするが、ただいま御提案の理由を拜見いたしますと、國家財政のやむにやまれずという言葉がございますので、こういう意味からいたしますれば、われわれこの業に携わる者は、この十円の値上げを何とかしてO・Kして賣り拔いてみようという決心が即座についたのであります。上つても賣りにくいであろうとは存ずるのでありますが、先だつての「新生」を賣つたほど苦痛なものではないと考えるのであります。これはすでに六十円でやみで現在賣れておるのであります。また新聞等によつてピースが六十円になるという噂が出ただだけで、すでにお客樣は六十円もつてわれわれの店に買いに來て、六十円か五十円か、五十円だと言うと十円持つて帰りになる。すでにお客樣の方におきましても、もうピースは六十円だという覚悟をもつておられる方が大多数であります。子供を使いによこしますのに、六十円持たせてよこして、いくらと聞いて五十円だと言うと喜んで十円持つて帰る。ですから私たちの方は、喫煙者その者はピースは六十円だという覚悟はがつちりできておるものと認めて、これはどうにか通ると思います。  次に「ひかり」の五十円でありますが、これはすでに「新生」の出た四十円の当時「ひかり」が五十円で出たことがありますが、これはとぶように賣れる、むしろピースより喜んで買う。当時はピース五十円「ひかり」五十円でありますが、どつちかというと赤い箱の方を選んで行きます。図案関係か、名前関係か、明るい感じがするのか、あるいは永年吸いつけた関係か、私どもは「ひかり」を吸つておるわけではありませんが、「ひかり」の空箱へ「きんし」か何か入れて吸つておりますと、ピースを買いまして、すまないがおじさんの吸つておるのと取換えてくれないかというお客樣さえあるのでございます。これは「ひかり」の五十円というものは賣行きが増進すると、かように考えております。  次に「憩」の四十円、ハッピーの三十円、これは先ほど塚田委員さんから開会前にお話もありましたように、味いも存じておりませんし、姿も存じておりませんから未知数でありまして、まつたく四十円が適正か三十円が適正か、私どもには断言できないのであります。しかしおそらく政府当局も「新生」でおこりになつておるから、「新生」よりひどいものを三十円、四十円でお賣りになる氣づかいはない、かように自分は信じておるのであります。もしそうでなくて「新生」に劣るものが三十円、四十円に賣出されるとすれば、これは名前がどうであろうと、図案がどうであろうと、國民はよく知つておりますから、必らずまた見捨てられるのだと思うのであります。われわれの立場といたしますと、四十円、三十円のタバコは、かりに見捨てられて、おいて行かれましても、別に心配にならないのであります。願くは「新生」の二十円、あるいはそれ以下のタバコがここに一つ欲しいのであります。十五円から二十円のタバコさえ豊富に出していただくならば、やみはさほど騒がなくとも自然に消滅するのではないかと思うのであります。なんとなれば耕作地の方でも、どういうぐあいに葉タバコを賣りますか知りませんが、だんだん値がよくなつてまいつたらしい。買う方でだんだん値を上げて買うらしい。しかも聞き及ぶところによりますと、最近運賃相当に上るのであります。旅客運賃等が上りますと、やみ屋が背負つてまいつて、あつちこつち動かします都度、これに大きな費用がかかつてまいりますから、おそらくどんな葉をもつてきて賣つても、二十円以下でやみタバコをどんどん製造して引き合うというようには考えておりません。すでに「新生」が二十円というのは名前だけで、これは数量が出なければまたそこでやみが出てまいります。かように自分らは考えております。やみタバコさえ首を出さないように御警戒を願うならば、一向に今の値段で差支えないと感ずる。これはわれわれ財政のことは素人でわかりませんが、ただいまの賣上げは、これで政府がおきめになつております二千九百二十円ベースと称えるところの範囲で、かように賣れておるのであります。これが聞くところによると、三千七百円ベースになるとか、七、八月になると諸物價が上るとかいうことを承つておりますが、われわれが仄聞する通り状態になつてまいるとしますと、他の諸物價と比べてタバコの十円くらいは何でもない、かように存ずるのであります。ゆえに願わくばやみを、あらゆる手を打つて、あるいは官署の方も手を打ち、あるいは賣り出すタバコによつてやみが出てまいらないような御警戒さえ願えるならば、必ずやさほど苦痛のものでないと感ずるのであります。  以上簡單でございますが、感じたままを申し上げて終ります。
  19. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの廣瀬さんのお説に何か御質問がありますれば、この場合許します。
  20. 島田晋作

    島田委員 タバコ値上げをする場合、今まで國会の手続は要らなかつたので、値上げをするのだということになると、すぐ姿を消したものです。本日聽きますと、六十円で買う人もあるそうですが、値上げをするということがわかつても、まだピースはどこででも五十円で賣つております。だから私の考えでは、消費者購買力というものは、もう天井をついてきておるのではないかと思いますが、みなどんどん買つて買いだめをするとか、店の人も隠してしまうというようなことがありますか。
  21. 廣瀬理一

    廣瀬公述人 この差がわずか十円であるために、お客さんの方も、もし上ればやみタバコ買つたと思えばいいくらいのことで、あまり買いだめをするという空氣はありません。また小賣商としましても、小賣人はいかんせん仕入れ資金が行詰つておるのですから、これだけで資金は一ぱいです。ハッピーや「憩」が出ることになつてまいりますと、ハッピー「憩」は、よかれあしかれ出した当時は必ず賣れますから、あまりピースに集中して金を出さずに、ハッピー「憩」の仕入れ相当の余力をもたせておかなければならない。そういう意味で小賣人の買いだめも、お客樣買いだめも少いと思います。ただしこれが十五日ごろ値上りがあるだろうといううわさがあつたときには、相当お買いになりました。むろん五個、十個買うというのはあまりありませんが、一個というのはほとんどない。大抵二個買つております。從來は百円もつていきますと、二個買えたのが、今度は十円違うために二個は買えない。そうなればピースの賣行きはどうかというと、必ずお見込みより減るということは間違いない。それだけは御承知置きを願いたいと思います。あれは御承知のようによけい持つておりますと、どうしてもよけい吸うものなのです。「新生」が二十円に下つたときには、百円札をもつていくと、必ず五個ずつ買つてつた。そうすると一日十本ずつで間に合う人が、十五本、二十本吸つてしまう。なければないでがまんする。ですから小賣人の立場からしますと、あまり人のいい話ではありませんが、なるべく数多く持つていただくことを望んでおる。お帰りになるときにライターを持つてつておりまして、おつけになりますかと言うと、大抵買つていこうとした人が立止まつて一本つけていく。それでもう一本減つておる。これが私ども一つの商業の手でございますが、こういうこともやつております。
  22. 島田晋作

    島田委員 また伺いますが、六十円になりますと、今度はやみが七十円になる。そういう可能性がありますか。
  23. 廣瀬理一

    廣瀬公述人 これはやみは七十円では賣れません。どうせ一時のように專賣局の方でピースを出す数量を加減すれば、やみにいききますが、御承知通り今はピースがどこにも到るところにある。この現状でいけば七十円のピースは賣れません。
  24. 塚田十一郎

    塚田委員 ちよつてお尋ねいたしたいのでありますが、今仕入れ資金にお困りになつておるというお話があつた。私前々からそういう話を伺つておりましたが、今度は数量も殖えるし、値段も上るし、一層お困りになるだろうと想像しておるのであります。それに対して、政府に何かこういう方策を講じて欲しいという御希望がありますか。
  25. 廣瀬理一

    廣瀬公述人 ございます。すでに当局にお願いいたしまして、タバコ屋指定営業である。比較的正直で堅いのであります。一夜にして立消えてしまうというような商賣でありませんから、タバコ屋を信じていただいて、團体である組合も保証いたしまして、銀行から借り受ける途を講じていただきたいということで、專賣局にかねがねお願いいたしまして、タバコの小賣人であり限り、そこに扱う販賣官署長証明があつてタバコの仕入資金であるというならば、五万円までは無担保で貸そうということにまで御承知をいただきまして、銀行局長さんの御活動を願いまして、各銀行から五万円までは貸していただけるようになつたのであります。ところがだんだん仕入れ金多くなつてまいりましたので、六大都市は十万円までということでお願いしまして、辛うじて四月八日、いわゆる「新生」に宝くじをつけて賣る、この期間中は十万円まで貸していただけることになりました。銀行も十万円までは、どの小賣人にも販賣官署長証明書で貸してくれましたが、「新生」の宝くじつき賣出しを締切りますと同時に、もとの五万円に今されております。しかし、これは五万円ではとても困るというので、ただいまこれをまたもとの十万円に復活していただくように陳情しております。それで、ある銀行の方は、そんなむずかいことをしなくても十万円までは貸せることになつているから、組合の方でそんな骨を折つてくれなくても大丈夫だという見方もありました。これは何かの間違いではないかと思いまして方々尋ねていただきましたが、これは確かに間違いで何か特殊の商賣、あるいは石炭とか米とかいうものに対する考えで、タバコの方の部類にははいらないという話でありました。もちろんタバコの五万円、十万円拜借するようになりましたのも、何か特殊な種類の方に特に認めていただいて、そこまで今恩典に浴しておるわけであります。なおこの先、品物を仕入資金との関係で、十万円でも足らぬ場合には、これは政府のお仕事であります関係上、もつともつと陳情して、あるいは二十万円にまでも延ばしていただこうという希望はもつておるのであります。
  26. 島田晋作

    島田委員 だんだんお話を伺つたのでありますが、一般の小賣商人というものが仕入資金に困つて、そのために廃業の希望をもつている人が出てきているでしようか。
  27. 廣瀬理一

    廣瀬公述人 それはありそうに思われますが、ただいまは二、三年前から見ますと、タバコ小賣人の立場というものは非常に有利になつております。もとは高級品は一分だつた。大きな金の工面をして、得るところはたつた一分、これでは合わないからという声があつたのですが、私どもも再々政府にお願いし、政府もよくこれを御承知いただきまして、近ごろは大分歩を殖していただきましたから、最送では片手間、内職のようなものでなく、タバコに專念してもどうやらつましくやれば、千九百円ベースくらいには一般がいくようになりました。
  28. 塚田十一郎

    塚田委員 もつとタバコ屋さんを殖やすという必要はありませんか。
  29. 廣瀬理一

    廣瀬公述人 それはあります。やはりタバコというものは、なるべく便利に手にはいることが、よけい消費する理由になります。今やみがどうして十円も違つて賣れるかというと、私ども銀座あたりに朝早くまわつてみますと、大抵あの四つ角にはやみタバコを賣つております。これは十円高い。とことろが近所のタバコ屋を見ると、まだ店を開けてない。そうすると十円高くても賣う。それから、店で賣つておりまして経驗するのでありますが、自轉車に乘つて來て買うのに、自轉車から降りて買うことを好まない。乘つたまま手を出して買つて、すつとそのまま持つて行きたい。それをのみこみまして、何を買つたら何を出すという、おつりの種別種別をして用意しておく。自轉車からお客をおろすようではそこの店は繁昌しない。ですからちよつとひつこんだ所に店があつても、通りばなにやみ屋がおればそれを買つていく、こういう状態です。嗜好品でありますから割合に十円二十円は苦にしない。ですからただいまはタバコ屋が仕入資金が多すぎるのでやめようかというような考えをもつておる小賣人は、多少はございますが、たくさんはございません。もしありとすればそれは何か他に兼業をもつている人に限るのであります。タバコ屋專業の人では絶対にやめようかというような人はない。石にかじりついても、どこからでも資金を見つけてきてでもタバコ屋維持したい。これが酒屋とか、藥屋とか、他に比較的利益の多い兼業をもつている人は、これほど金を動かして、こればかりの利益ではつまらぬからやめようという人もないとは言えないと思います。
  30. 島田晋作

    島田委員 営業の場合の制限はありませんか。
  31. 廣瀬理一

    廣瀬公述人 それはございます。
  32. 島田晋作

    島田委員 数はきまつているのですか。
  33. 廣瀬理一

    廣瀬公述人 そこの異動人口の状態、あるいはその附近の居住人口の状態によりまして、距離がおよそ、こういう所はどのくらい、こういう所はどのくらいということになつております。
  34. 島田晋作

    島田委員 もつと制限を緩和するような必要はないのですか。
  35. 廣瀬理一

    廣瀬公述人 かなり制限は緩和されて非常に近いものになつております。だからいくらでもやればでき得るのであります。ですから最近に至りますと各省線の電車の駅々に、みなボックスで賣りに出ております。あれでも相当みんな賣れる。なんでも便利な所でさえあれば必ず賣れるわけです。
  36. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。次はエコノミスト編集局次長山本正男君にお願いいたします。
  37. 山本正男

    山本公述人 私は今回のタバコ値上に反対でありまして、むしろできたらもつと下げてもらいたいということを言いたいと思います。その理由は、一つタバコ國民生活における緊要度というものは、当局がお考えになつているのかどうか知りませんが、單なる嗜好心と違つた緊要度をもつているということ。もう一つタバコの生産原價にくらべて、あまりにもばかばかしい値段をつけておる。こういうことをするから「新生」のように大衆の反撃を受けることになるということであります。もう一つ政府の今度おきめになろうとしている三千七百円ベースというものと、タバコ値上げというものと、非常に矛盾があるということであります。もう一つは全体としての税の体制と言いますか、税制の上から考えて、酒とタバコ、そういうものに課税して、それから出る收入によつて國家の全体の歳入の、非常な大きな部分が得られているということは、これほど惡い税制というものはないということであります。この四点から大体私はこういうタバコ値上げに反対するものであります。  まず第一に國民の生活上における緊要度という問題であります。これは資料がいささか古いのでありますが、大体ある程度の事実を傳えているのではないかと思うのであります。昭和十四年から十五年の内閣統計局の家計費費目別緊要度という、要するにエンデル係数で出しておるものであります。それの小分類のところを見ますと米が五・四九五となつております。タバコのところを見ますと二・三三一ということになる。これは調味料の一・六〇〇あるいは蔬菜の一・九〇五、そういう調味料、副食費に比べて、これよりもさらに大きい係数を示しておるということ、こういう緊要度の高いものを單に嗜好品だからという名目で、非常な高い價格をつけてそれから收入を得るということは、私は考えなければならぬ問題だと思う。  次に生産原價との問題であります。これは私が調べたところでありまして、あるいは事実と反しておりましたら当局から御訂正願いたいと思うのでありますが、たとえば今年度のピースの大体生産原價の予定は、十本当り二円五十三銭、新しい製品の「憩」が二円四十六銭、この十本当り二円五十三銭のものを六十円で賣る。これによつて國家の收入を得るのでありましようけれども、こういうことをするからさつき申したように「新生」が四十円で賣れなくて二十円に下げなければならなくなるのであつてあまりに生産原價と販賣價格との開きを、べらぼうに十倍も二十倍もにすれば、やはり経済法則に反する。そういうことを國家権力というものでやろうとする点に、非常な間違いがあるということを私は指摘したいと思う。そうしてこういうことをやつておきながら、やみタバコの撲滅のために、電車の中にどういうビラをはつておるかというと「自由販賣品もできるだけ安く品質をよくします」二円五十三銭でできるものを六十円で賣つておいて、できるだけ安くするという、そんなべらぼうな良心的でないビラを、政府みずからがはつてつたらだめだと思う。  次は三千七百円ベースとの関係ですが、三千七百円ベースの内訳というものが私たちにはわからない。だからタバコなんかがどのくらいはいつておるかということもわかりません。私流にとにかく計算してみると、三千七百円ベースは二、五人が一世帶の標準になつておりますから、七千八百万人を二、五人で割ると三千百二十三万世帶ということに一應概念的になるわけです。そうして配給タバコの六月十五日から來年の三月までの賣上予定が二百三十五億幾ら、そうすると一世帶当り大体七百五十円、一箇月にすると七十五円、これが配給によるタバコの一世帶当りの支出ということになると思う。同じようにして自由販賣の方を出してみると、自由販價タバコによるものが二百五十円、両者を合わせると一世帶当り三百二、三十円というものが、タバコの支出となるわけであります。三千七百円の中に、タバコが三百二、三十円はいるということが私は問題だと思う。もちろんこの計算は非常に大ざつぱな計算で、ごく概算的なものでありますが、また三千七百円ベースで自由販賣のタバコが買えなければ吸わなければいいじやないか、吸える人だけ吸やいいということをおつしやるのだと思う。それでは七百八十一億というような厖大なタバコを、だれが吸うのだ、どんな金持だつて一月にピースを二百箇も三百箇も吸う人はいない。やはりこの七百何十億を買うのは、三千七百円べース程度の大衆が買わなければ、これだけの專賣益金というものは出てこないのだろうと思う。政府は要するに一方で自由販賣のタバコで厖大な收入をあげようとしておる。しかも他方では三千七百円ベースの中には、これを買う金を織りこんでいないという点に非常な矛盾があるのだと思う。ほんとうに三千七百円ベースというものが守られるならば、おそらく政府予定する厖大な專賣收入というものは見られないじやないかと思う。そういう点に非常な矛盾がある。  第四は、先ほど言いましたように、税の体系として非常に問題がある。今年度の予算におきまして、租税及び專賣收入中、間接税及び專賣收入が占めておる比率が、政府昭和二十三年度の予算説明の中に書いてありますところによれば、四六・九%ということになつている。こういう点からいつても非常な大衆課税的な間接税中心の惡い例を、こういう安易な方面にばかり走るという点を非常に注意していただきたい。もう一つは、酒の四百五十七億とタバコの九百四十三億、合計しますと千四百億です。今年の全歳入というものが三千九百九十三億、それの比率をとれば大体四割です。酒とタバコにそういう課税をしたと同じです。そういうことによつて全体の歳入の四割もあげるということは、いかに政府が予算編成において無能力であるか、あるいは意識的にそういうことをされておるのか。どうにもならないで結局間接税中心に陷らざるを得ないのであるか。そういう点を私は問題にしたいと思うのであります。  そこでタバコや酒の財源が得られなかつたならば、その代り財源はどうするかという問題が当然出てくると思うのであります。これはタバコ値上げに関するこの委員会で問題にすることでなしに、むしろ予算の全体の公聽会で問題になることであると思うのでありますが、ただ一つ、こういうこともやればできるのではないかということで、ここに安定本部のある役人が書いた論文の一端を読んでみたいと思います。「勤労所得については源泉課税であるため百パーセント捉えているに反し、額においてより大なる比重を占める個人業主の所得に対しては、推計業主所得の約四割ないし五割しかキヤツチしていない。すなわち推計による員数八百七十万人であるに対し、課税の対象となつた数は四百七十万人に過ぎず、その差四百万人が網からもれている。しかも課税の対象になる人間がもれている上に、捉えた対象に関しても、税務署は実質所得のほぼ半分しか捕捉せず、ここに課税の不公正の問題がある。こういうことを安本のある役人が書いております。これに対しては政府はまた税務機構の不備の問題を持出されると思うのでありますが、多少の支出をそういう税務機構の拡充強化におしまないで、しかもその拡充した税務機構によつて、ほんとうに所得を正しく、公正につかんでいくという腹さえあれば、私は決して不可能なことではないと思うのであります。そういう意味から、以上の四点によりまして私はタバコ値上げはすべきでない、むしろ他に財源を求めて引下げるべきであるというこを主張したいのであります。  最後にこれはもちろん私個人の意見でありまして、毎日新聞社の方針とは無関係でありますから、御了承願いたいと思います。
  38. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの山本さんに何かお尋ねの点はありませんか。  では次に移ります。次に時事新報編集局長の有竹修二君にお願いいたします。
  39. 有竹修二

    ○有竹公述人 有竹であります。  今日税ということについていろいろ考えましたが、一番大きな問題は、税というものが一番われわれのきらつているインフレを、むしろ促進しているという事実であります。われわれは学校で経済学を学び、財政の講義を聽きましたが、健全財政とは、なるべく國の收支は税によつて賄うべし、公債を出してはいけない。こういうふうに教わつてきたのでありますが、今日はこの健全財政を企図すべきはずの税金が、むしろインフレを促進しているという実情であろうかと思うのであります。すなわち直接税におきましては、法人税であろうが、所得税であろうが、これが相当苛烈なものになつている今日、それがただちに生活費に影響をもち、賃金の値上げとなり、俸給の引上げとなる。一方消費税、間接税においては、ただちにそれが物價に影響する。從つてインフレを招致する。直接税、間接税ともに極度の増徴が、インフレを促進しているということを痛感するのであります。このことを大藏省の先輩、もとの大藏大臣津島壽一氏に話をしましたが、まつたくそれはそうだ。それは一つの公理になつているのである。それはどういうことかと聽きますと、一九二二年のジユネーヴにおける財政に関する國際会議がありました席上、いろいろ討議した結果の結論として、税金はある程度を超えた場合は、むしろインフレを高進することあるべしという明確な定理ができているそうであります。これあるかなということであつたのでありますが、それで私は今申し上げた税金がインフレを促進するという一つの理論を、ますます意を強うして信じておるわけであります。  今日のタバコでございますが、タバコは明らかに九十何パーセントかが税金であります。ピースもといくらしますか。四円かそこらでしよう。それが五十円になり、ビールが一本元値が四円か五円でしようが、それが百円もする。一体こういう税金というものは世の中にあるはずのものでないのでありますが、これが現実行われておるのであります。一体税金というものは、税金をかけます課税の客体に対して、五分とか一割というものが税金であつて、これに二十割も三十割もかけるということは、要するにこれはバニツシユメントではなかろうかと思うのであります。そういう税金が今日平然として行われておるというわけであります。タバコは嗜好品である。從つて吸わなくてもよい。吸うやつはかつてであるというのかもしれませんが、この大きなヴオリユームをもつところの商品の引上げというものは、たちまち物價体系に響き、他の諸物價引上げとなり、それが一般の生活者の生計費に及ぼす。そういう意味において非常に大きな影響をもつということは言うまでもないことであります。  そこで一体どうしたらよいか。そういうタバコ引上げによる、非常にたやすい増税方針をとらずに、他の方法を考えようがないかということで、実は先日、これも大藏省の先輩であります、名前を申しますれば皆さんすでに御承知の人でありますが、税金をもつて大藏省のキヤリヤーを終始したというような人で、税から生ましてきたような人でありますが、その人の意見を徴しましたところ、その人の結論に曰く、増税より、むしろ一年間税金を休んだらどうか。すべての税をとらぬことにしたらどうか。全廃論です。これはしかしむりな話で、そういうことができますかという質問が当然出るわけでありますが、それには一方思いきつた歳出の節約、今日むかしのままの行政の仕様を一変して、相当ドラステイツクな施策を行う、そういうことによつて一年間税金を休戰する、そうして古い言葉ですが、いわゆる民力涵養をはかり、そうしておもむろに國民経消力の育成されわるのを待つて、あらためて國の財政の建直しを考える、こういう行き方でなければ日本の財政経済は生きる途はない、こういう結論であります。かつて大藏省にいて税務を終始主管した人から、そういう言葉を聽くので、驚いたわけであります。これには私も賛成であります。このままで押していくと、今日の政府の主脳部、栗栖安本長官、北村大藏大臣の言われる中間安定ということは、意味をなさぬと思います。中間安定という言葉が近ごろしきりに言われていますが、われわれまだその意味が十分のみこめないのであります。いろいろ最近よい事情が重なり來つている今日この際、馬力をかけて、あの手、この手と手をつくして、中間安定を固めて、本格的な安定の方向へもつていこう、こういう意味合いだろうと思いますが、それにしてもただ普通のことをやつてつて、足らないならば税金を上げる、タバコ上げる、こういうやり方では、そのねらいは不可能であろうと思います。少くとも昭和二十四年度の予算の目途が一應立たなければならない。今年は四千億円、來年度、二十四年度の予算は、ほぼ五千億なら五十億という見透しが立つて、そうして歳入歳出それぞれの目途が立つてこなければ、その中間安定のねらいというものは望み得ないのではないか。こう思うのであります。今日の世の中を見て、それに対する対策を論ずるのに、まず二通り考え方があるようであります。一つはなるたけ現在の資本主義機構というものを生かして、そこにいろいろ手を加えていく、ある程度の社会主義政策も織りこんでいく、こういう行き方を主張する人と、相当思い切つた社会主義施策を断行して、そうして一挙に今日の問題を処理しようという、この二つの考え方があろうかと思います。大体自由党、民主党の人々は前者であり、少くとも社会党の左派及び共産党の人々は後者だろうと思いますが、一体そのどつちをとるのかという点を、はつきり明確にしてやるべきときが來ているのではないか。われわれはいろいろ考えました結果、前者の方で何とかやつていく方法があるのではないかと思うのであります。それは世の中の質的変化を求めないで、政策の量によつて、多量なる施策によつてそれを解決する方法があるのではないか。思い切つて行政整理をやるとか、あるいは思い切つて政府の仕事を縮めて、歳出を節約し、そうして歳入歳出のバランスを得るというふうな考え方、思い切つて減税をやる、こういつた考え方は、その前者のわく内でやれることであり、必ずしも後者のドラステイックな方策にまたなくてもいいのじやないか、こう思います。そういう意味から言つて、この際適当に減税する、今度の中にはいつている法人税とか、所得税のある一部的な減税は、ほんとうの減税でないので、もつと本格的に、先ほど申しましたある税制通の言うような、思い切つたことはできないまでも、ある程度の減税をやる。そうして片一方歳出の方では相当思い切つた節約をやる。そうして一年間じつとこらえて、そうして経済再建の目途をつけていく。こういう方法があり得るのではないか。それにしてもその前堤としまして、政治体制がもう少しはつきりしなければいけない。内閣の政治の座標がはつきりしない。質的に異つたことを主張する人々が、同じわくの中に住つておるということで、これをはつきりしていただいて、自分たちの座標をはつきりきめて、そうして今申し上げた方向に進まれることを希望するのであります。そういう意味合いから申しまして、今日の議題となつておりますところのタバコ値上げは、一應お預けにしてほしい、先ほども申されました通り、ああいう意味の影響は非常に惡いのでありますが、これはやらないで、むしろ下げる、そして一般の減税もやる、そして氣分を明るくし、古い言葉でありますが、民力を涵養して、みずから國民経済力が立て直つてくるのを待つて、ほんとうの安定——中間安定を本格的安定にする意欲をもつて進む、こういうのが私の考えであります。これは私の個人の考えでありますが、そう私が言いますまでには、各方面相当権威をもつた人々の意見を徴して、いろいろ議論を鬪わしてきた結果得たのが、今日私の申し上げる論であるということを申し上げまして、私の今日の役目を果したいと思います。
  40. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの有竹さんに何かお尋ねがありませんか。  それでは次に移ります。次は代書業をしていらつしやる斎藤莊吉君
  41. 齋藤莊吉

    ○齋藤公述人 私は生活困難者の立場として、ごく狹い私見——大局的にはふさわしくないかともみずから思われますが、さよう御承知を願うておきたいのであります。  今の世は、時代に便乘したいわゆるやみ成金という人と、時代の敗残者である人との、その差が最もはなはだしいということは、申すまでもないのであります。それで、タバコは私たちの立場からして、最も嗜好品でありまして、日常の必需品でありまするが、私ども敗残者の生活者といたしましては、今日はたけのこ生活も過ぎまして、トマト生活といいますか、むくところがないというくらいの財政困難をしておりますので、配給も主食の米麦はともかく、魚や野菜はどれだけ豊富にまわつても、豊富にまわればまわるほど要らないという立場になつている連中も、今は多々あるのであります。それで、このタバコ値上げは、大衆課税といいますが、やはり間接税でありまして、消費しない者にはむろんかからないのであります。ここの私どもの憂えますのは、これは何人も憂えるのですが、極貧者にとつてはなお一層痛痒を感じますのは、物價改訂の動向がどういうふうになるかということが問題でありますから、相なるべくは現状維持、すえ置きが結構と思います。しかし今日國家財政の予算の膨張する上から見まして、國費の必要を認識しますれば、私は妥当であると思うのであります、それに、今申し上げましたような生活難としましては、日常必需品でありますけれども、生活上、保健上必ず必要だという絶対的のものでないのみならず、子供に食う物も食わさないで、どんなに嗜好品だといつても、タバコなど買う余力は私どもにはないのでありまして、今の配給ベースだけでは食べられないくらいの極貧者でありますがために、ちよつともタバコ値上げには痛痒を感じないというのであります。そうして値上げをしたからと言つても、今まで数次の値上げがありましたけれども、やはり近所のタバコ屋さんに聽きましても、愛煙家に聽きましても、それは一時的の現象ですぐにまた元にもどつて、やはり購買力には変りがないというのでありまして、政府の政策としてもいわゆる浮動購買力の吸收の一策にあてはまることと思いまするから、この案には私ども立場の者としては、何も痛痒を感じないのであります。  ただしかしながらこれは嗜好品でありますがゆえに、極貧者といえどもやはり人の吸うものは吸いたいのでありますから、配給タバコの「みのり」、刻みタバコでもいいですから、それを現在の二倍くらいの配給を、親心をもつて政策に取入れていただきたい。それでないとちよつと今までにありましたやみタバコ「きんし」が二十円になりまして——やみタバコは私どもの町、また近所の工場に行つておる人が言いますのには、工場に賣りに來るのは、十二、三円から十五、六円だそうですが、私ども配給の刻みに困りますと、「きんし」の二十円がおつつかないものですから、ぜひそのやみタバコを頼むというようにやつております、そういうわけでございますから嗜好品だから全然いらないというわけにはいけないけれども、私たちの願いとしましては、配給タバコの足らないのを、三分の一にも足らないのですから二倍をいただきたい。それがために高級タバコに影響するということはないと思うのであります。その証拠に大人の方はとにかく、大人の家のおせがれさんと言うか、あるいは不良少年と言いますか、そういう者が街頭でピースをぱくぱく吸つておるのを私は始終見受けるのですから、そういうような憎らしい面を私ども見ますると、なあにピースなど一つ百円にしても二百円にしてもいいというように、叛逆的に思うこともあるのであります。ですから本案については私は私らの立場——あるいは私一個の立場かも知れませんが、賛成をいたしまするものであります。
  42. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの斎藤さんにお尋ねの点はありませんか。ないようでありますから次に移ります。  次は神佛具業を営んでおります長谷川虎太郎さん。
  43. 長谷川虎太郎

    ○長谷川公述人 私は別に國家の財政に蘊蓄があるわけでもなし、またタバコについて知識もあるわけではありません。ただ市井の一商人として見聞きしたことや、また感じたことを、せんだつて新聞の廣告で見ましたので即座に書いて出しましたところが、意外にも公述人に選定されたので、皆樣の御参考になるような意見はとうてい話せまいと思いますが、それはあらかじめ御了承願いたいと思います。  なるほど國家の財政上、このタバコ値上げもやむを得ないのかもしれませんが、私はピースや「憩」といつた高級タバコ値上げはとにかくとして、配給品や大衆向きのタバコ値上げは、ぜひとも回避していただきたいと思うのであります。先ほど廣瀬さんでしたかピースを買うのに六十円をもつて平氣で來るというようなお話がありましたが、それは一部の人で、大部分の人は、ピース一つ買うのにさんざん考え拔いたあげくに買うのだろうと私は思つております。またただいまの公述人は、タバコは絶対的の必需品でないからというようなお話もありましたが、私がタバコの常用者であるせいかもしれませんが、タバコがないと、ときどきぼうとしてしまうことがある。一服のタバコがいかに身心の疲労を休めたり、能率の向上を促すかということは、タバコ常用者でなければちよつとわからないのじやないかと思います。昔、バツトが五銭だつたことがある。その時分に勤労者はそのバツトをたいがい吸つておりましたが、それも一本全然吸う者ばかりはありませんでした。中には半分吸つて大事そうに耳のところに半分さしておつたり、タバコの箱の中にしまつたりして、またあらためてそれを吸う。それ以外に、まだまだ巻タバコまで行かずに、刻みタバコをなたまめキセルに詰めて吸つているのがずいぶんありました。これは決して吝嗇のなめではなかつたように思います。その当時、それらの人の收入はというと、たいがい二円前後らしかつた、二円前後の收入でもつて五銭のバツトを吸うとしてなかなか骨が折れる、家族を養つたり何かするにはそれも骨が折れたので、それほどの節約をしなければならなかつたのじやないかと思つております。ところが、今日は五銭のタバコが五十円、千倍です。なるほど「新生」が出て二十円ならばよほど安くなりますが、それでも四百倍です。ところが、二円の月收のあつた勤労者は、せいぜい百倍か百五十倍の收入だろうと思います。それだけにタバコをのむのが、非常に生活を脅威しているということになりはしないかと思います。それでもなおかつのまなくちやならない。さんざつぱら考えたあげく、ピースをやつと一箇買う、それほど苦しんでいる。もう一つは、このタバコ値上げということが、いつもやみ物價つり上げの標準になる。たいがいの商人がやみ物價がばかに高いときに、それを賣るのに何と言いますか、ピースでさえあなた一つ五十円ではありませんか、それならこれは安いでしよう、こう言います。それからまた消費者の方も、なるほどピース一つ五十円だから、これは五十円、高くないという悲しい諦めの目安になつている。私はそう思います。十一日東京新聞でしたか、こういうことが出ておりました。今度のタバコ値上げは、大藏省の考えでは、配給品を十五割値上げする考えであつた。その理由としては自由タバコ値上げは、もう国民の購買力が底をついているから、その値上げによつて予定の増收を確保することはむずかしい、また自由販賣品の値上げやみタバコを盛んにするから、タバコの葉を確実に確保することがむずかしくなるというような理由をもつて配給品だけを十五割値上げしたいというような案であつたそうです。それが三千七百円ベースではむりであろうというので、七割に落着いたというのですが、どうもこの七割も私たちには非常に辛い。どうか配給品や大衆タバコは、据置きにしておいていただかなければならないと思う。さきの勤労者がバツトを半分吸つたというように、大体はみな苦しんでいるのです。今日、私が自分の店で見ておりまとす、進駐軍のジープが通ると、そのあとをタバコを拾つている人がある。その吸い残しのタバコを拾つて吸うのです。タバコがないから。昔はこんなことは乞食以外にしたことはないだろうと思います。タバコ値上げ國民をして人間的の誇りを捨てさせ、乞食のような精神にまで堕落させるのじやないかと、極端に言えば私は申し上げてもいいかと思うのであります。  もう一つ私がお願いしたいのは、政府國民に対してできるだけ同情をもつていただきたいことである。それならばそれに代る財源はないかというと、私はタバコに関する限り、非常に淺薄な考えですが、いろいろあるんじやないかと思つております。それは先の公述人がたびたびおつしやつたように、やみタバコの絶滅です。タバコ値上げやみタバコを盛んにする。大藏省の当局者がおつしやつておる通りタバコの値下げは反対にやみタバコを抑制し、あるいは撲滅し得るんじやないかと思つております。この十一日かの毎日新聞の記事だつたと思いまするが、今年のタバコの販賣予定数は五百五十二億本だとかいうようなことが出ておりました。かりに三千万人のタバコの常用者があるとすると、今計算してみたのですが、一日一人あたり五本くらいになるのじやないか。するとわれわれの考えとしては、タバコの常用者は、私自身から推して考えてみても、五本やそこらでもつてがまんができるわけはない。たいがい八本なり十本くらいは吸つておるんじやないかと思つております。そうするとその差の三本なり五本は、やみタバコに依存しておるんじやないかと思う。「新生」が四十円の当時に、やみタバコが非常に盛んになりました。今では幾らか下火になつておりまするが、それでもまた近ごろ「ピース」ばかりになつたので、大分出てきたようであります。あのやみタバコの盛んな時分には、私の近所にも、傳え聞くところによりますと、私設專賣局が二三軒あつたようです。朝から晩まで夫婦、それからときには人を頼んでまでタバコを巻いておる。また私の知人は、たいがいそのころは、やみタバコをもつておりました。一本いかがですと出してくれるのを見ると、みんな私製タバコつた。これもはつきりは申し上げられませんが、配給店の家で私製タバコを賣つていたものさへあつたらしい。それらの点から考えると、三本なり五本どころのさわぎじやないと私は考えております。かりに三本としまして三千万の人が吸うと、一年に三億何千万本になるのじやないかと思います。やみタバコ製造人の利益はと言いますと、何でも非常にやみの葉が高くなつて、近ごろは一貫目二千円だとかいうようなことを聽きました。その二千円に汽車賃がかかりますし、またたいがい一晩泊りくらいしていくので、旅費がかかります。またタバコ耕作者へ、おみやげをもつていかなければならぬ。これらの費用が約千円とみる。それで三千円です。一方利得はとみますと、一本二円で賣つて何でも六、七千円あがるんだそうです、そうすると原價の倍もうかる勘定になります。三百何十億本かが一円ずつもうかりまして、三百何十億円という金がここに浮いて、私施專賣局の利益になる。一方これも新聞によりますと、タバコ値上げ遅延によつて生ずる收入減は、「ピース」で一日一千万円、配給タバコが半月計算で、五億円、月十億円ですから、一箇月で両方十三億円、一年にして百五十何億円となるが、もしかりに三本平均吸うとしても三百何十億円、一本半吸うとしても優にその收入減はカバーされるのではないかと私は考えております。しかもこの三百何十億円の利得がある私設專賣局が、國民の多くが過重な税金にあえいでいるさ中に、一銭の税金も拂わない。これは大きな問題ではないかと思う。これも專賣法を嘲笑し國法無視の見本を皆に見せつけている。これらの連中をそのままにしておいて、善良なる國民を苦しめる値上げばかりを考えるのは私はどうかと思う。そう言うと、いや十分取締りの力を盡しているとおつしやるかもしれませんが、この取締りもどうも散発的でお茶をにごすという程度ではないかと思う。駅頭のタバコ賣りのおばあさんがよくとつつかまる話は聞きますが、私設專賣局に手がはいつたということはあまり聞いたことがない。ほかの取締りもずいぶんお茶をにごす程度のようですが、どうもタバコ取締りもそんな感じがしてなりません。もし取締るならば國民全体のためですから、官憲はもちろん、ある場合には情を知つて黙過している近隣の人まで戒飭するくらいな、峻嚴な粛正手段を講じなければならないのではないかと思う。だがそれまでにするまでもなく、私は安い大衆タバコの出現が、やみタバコを絶滅させるのではないかと考えております。そうしてそこに生じに取締りの余力を、よく問題にされる專賣局内に巣食う盗賊團、いわゆる工員の持出し、これは当局に言わせると、そんな高じやないとか何とかいうことを言われたり、また取締りの手不足や何かを言われたり、いろいろ弁解がありますが、話に聞くところによると相当の高になるらしい。これも粛正する方に向けたならば、國法無視の盗賊團を減らして、一方善良なる國民の負担を幾分か軽からしめる一石二鳥の手段ではないかと思つております。それで「新生」がそのうち二十円になつて出るという話を聞いておりますが、未だに出ておりません。また「ハッピー」が三十円で出るとか何とかいう話も聞いておりますが、それも出ておりません。なぜそういう、いくらかでも安いタバコを早く出してくれないのでしようか。町にはいつまで経つても五十円のピースだけです。ですからいやいやながら五十円で買わなければならぬ。やみタバコが一時は二十五円もしておりましたが、最近では十八円になつておるそうです。十八円から十五円にくらいに値下りをしているそうです。それは「新生」が二十円で再び賣出されるという声におびえての結果だろうと考えておりまするが、大衆タバコの「新生」なり、またそれ以下の十円なり十五円なりの品がどしどし出ることになつたならば、自然やみタバコというものはなくなるのではないかと思います。私は一日も早く安いタバコがどしどし出てくることを希つておりまするが、葉タバコは決して足りないのではないと思う。横流れさえ防げれば、葉タバコはうんとあるのではないかと思います。もし製造の能力が足りないのならば、私設專賣局でやつているように、手巻タバコを賣出してもいいではありませんか。そうしてわれわれの苦痛を少しでも減らしたいと思います。百の机上の理論より、また空疎な取締りよりも、むしろ商人が金科玉條としているところの薄利多賣こそ増收の途であるということを、私は最後に申し上げて引下ります。
  44. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの長谷川さんに質疑はありませんか。  いま一人公述人として一般からおいでを願うことになつておりました目下頼尚君が未だに見えませんので、一應これで公述を終つたことに相なりますこの場合何か御意見があれば承つておきたいと存じますが、何か御意見はありませんか。  それでは公聽会はこれをもつてとずることにいたします。公述人の方には御繁忙中特にお越しをいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  それではこれで散会いたします。     午後零時九分散会