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1948-06-28 第2回国会 衆議院 財政及び金融委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十八日(月曜日)     午後二時一分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 泉山 三六君 理事 塚田十一郎君    理事 島田 晋作君 理事 中崎  敏君    理事 梅林 時雄君 理事 吉川 久衛君       淺利 三朗君    石原  登君       大上  司君    倉石 忠雄君       島村 一郎君    苫米地英俊君       松田 正一君    宮幡  靖君       小平 久雄君    赤松  勇君       川合 彰武君    河井 榮藏君       佐藤觀次郎君    田中織之進君       林  大作君    受田 新吉君       八百板 正君    川崎 秀二君       後藤 悦治君    中曽根康弘君       長野 長廣君    細川八十八君       井出一太郎君    藤田  榮君       本藤 恒松君    堀江 實藏君       河口 陽一君    本田 英作君  出席國務大臣         大 藏 大 臣 北村徳太郎君  出席政府委員         大藏事務官   平田敬一郎君         大藏事務官   伊原  隆君  委員外出席者         專門調査員   氏家  武君     ————————————— 六月二十八日委員内藤友明君辞任につき、その補 欠として野本品吉君が議長の指名で委員に選任さ れた。     ————————————— 六月二十六日  損害保險料率算出團体に関する法律案内閣提  出)(第一八八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する等の法律案内閣提  出)(第九三号)  取引高税法案内閣提出)(第九四号)  大藏省預金部特別会計昭和二十三年度におけ  る歳入不足補てんのための一般会計からする繰  入金に関する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出)(第一三二号)  國有鉄道事業特別会計及び通信事業特別会計に  おける事業運営以外の行政に要する経費財源  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出)(第一三三号)     —————————————
  2. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 会議を開きます。  所得税法の一部を改正する等の法律案取引高税法案大藏省預金部特別会計昭和二十三年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案國有鉄道事業特別会計及び通信事業特別会計における事業運営以外の行政に要する経費財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案、以上を一括して議題として質疑を行います。
  3. 川合彰武

    川合委員 同僚議員からしばしば質問のあつた問題でありますが、所得税法改正法案の第十二條の第四項になりますか、いわゆる事業所得給與所得その他の合算の問題でありますが、これは一應理論的に考えるならば、合算は不合理ではないというふうにわれわれは思うのであります。しかしながら徴税実情から見るならば、農村あるいはまた都市においても、この合算ということは相当非難のあつたことは、昭和二十二年度徴税に際して大藏当局もつとに御承知のことと思うのでありますが、今回は二人以上の所得のある場合においては、合算給與所得者限つては、それぞれ基礎控除をするというようなことになつたのであります。われわれはこれに対しても不満を覚えるのでありますが、今回の改正によつてどの程度合算による課税軽減されるかということを、ひとつ実例をもつてお示し願いたいと思います。
  4. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 ただいま御指摘になりました点は、確かに昭和二十二年度課税の問題として考えますと、私ども理論はいいとしても、実際の日本実情に即しない点がどうも大分あつたように見受けられるのでございます。ただ運営といたしましては、まず累進税率がいかにも下の方から非常に無理なところがあつたというのが一つつたかと思います。それからいま一つはやはり所得税理論を貫きまして、いやしくも合算されるものについては、基礎控除を一本しかしない。こういうことにいたしたわけでございますが、その辺のところの実際問題といたしまして、負担がどうもしにくいというようなことがあつたのではないかと考えますので、今回はそういう点につきまして相当改正をいたしたいということで、原案を作成しておる次第でございます。ただしからば合算をやるかということになりますと、合算までやめるということになると、あまりにも所得税原則をゆがめ過ぎるということになりますし、一方勤労所得者以外が、たとえば当該勤労所得者にその他の所得があるような場合におきまして、一体どうするかということは、技術的にも非常にむずかしい問題になつてまいりますので、合算はやめるというようなところはなかなかむずかしいのではないか。從つてどもは一方においてはこの種の多数の事業所得者の場合におきまして、その家族勤労所得者があれば、その辺は大体において負担が非常に無理な場合は、中以下の所得者の場合に多いと思います。そういう場合に対する税率を思い切つて緩和しますと同時に、勤労所得につきましても、それぞれ別に基礎控除するということによりまして、実際上の無理を是正いたしたい、かように存じておるわけであります。その結果負担がどうなるかということを今御指摘がございましたので、扶養親族が三人の場合を計算いたしてみたいと思います。まず事業所得者所得を五万円、それからたとえば息子さんでもいらつしやいますれば、同居家族勤労所得者が一人あつて年三万六千円、月三千円、この收入がある場合において、現行税法改正案との場合との負担の比較を計算しておるのでありますが、現行税法によりますと、その負担が今の所得事業所得が五万円、勤労所得が三万六千円、合わせて八万六千円の所得に対しまして、課税所得基礎控除を一本しかいたしませんので、七万二千円が課税所得になるのであります。七万二千円が課税所得となりまして、税額は二万六千五百六十四円、すなわち所得百円あたり三〇・八八%という負担になるのであります。それが今度の改正案によりますと、基礎控除をそれぞれ二つ所得から控除するというようにいたしましたのと、それから税率相当大幅に軽減されました。この二つの結果によりまして、負担は著しく軽減されることに相なるのでございます。すなわち課税所得現行法によりますと、七万二千円に対しまして、四万七千円になる。表面上の所得は八万六千円でございますが、課税所得勤労控除基礎控除両方控除を差引きますと、四万七千円になる、そうすると税額は五千七百円、百円あたり六・六%というので非常な軽減になると考えておるわけであります。ただこれは平年度の計算でございますが、二十三年度といたしましてどうなるかということを申し上げますと、二十三年度としては若干基礎控除等例外を設けております関係上、課税所得が六万二千円ということになつて税額は一万二百円、所得百円あたりが十一円八十六銭、すなわち課税所得が八万六千円の場合におきまして、今の税法によりますと、約三〇%の負担が本年度は一一%の負担になる。平年度におきましては六・六%の負担になるというような点からいたしますと、本年度におきましては、私は昨年いたしましたような負担は実際において非常に実情に即しない点は、よほど矯正されると考える次第でございまして、本年度といたしましては、いろいろ御意見もあつたかと思いますが、この程度で止めさしていただいたらどうであろうか、かように考えておる次第でございます。なお事業所得者が一人で、同じく三万六千円の勤労所得者が二人の場合、この場合を計算いたしますと、現行税法によりますと、三二%という負担でございますが、改正案によりますと、平年度七・六%、本年度におきましても一五%、所得がつまり三人の場合ですと、十二万二千円になるのでありますが、その十二万二千円の所得に対しまして、三人すべて合算いたしましても、本年度十五%くらいの負担でございますから、この程度負担でございますれば、過重であるという非難はもちろんほとんどなくなるのではないかということを考えますと、原案程度で止めていただくということが、この際私としては妥当ではないかと考える次第であります。さよう御了承願います。
  5. 川合彰武

    川合委員 一番問題になるのは基礎控除の問題でありますが、二十二年度徴税にあたつて基礎控除が四千八百円であつたということは、しばしば問題になり、その責任國会議員にあるというような非難も受けたのでありますが、今回はこれが平年度一万五千円になつておるわけでございます。この基礎控除最低生活費と見るかどうかという点に関する、大藏当局の所見を伺いたいと思います。
  6. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 基礎控除の見方につきましては、いろいろな見解がございますが、私どもといたしましては、基礎控除をいわゆる最低生活費というところまで、はつきり見るということはどうであろうか、生活費的な意味を考慮して基礎控除をするという点はございますが、結局におきまして、現在の財政事情、それから國民生活実情國民所得状況等に照らして、所得税負担を、いろいろな控除等を用いて適正化するためには、どの程度控除を行うべきかという点から、総合的にこの額というものが決定せらるべきものでありまして、いわゆる文字の正確な意味におきます最低生活という意味における控除という見解は、とつていないことを申し上げて御参考に供したいと思います。
  7. 川合彰武

    川合委員 これまたしばしば問題になつたのでありますが、いわゆる團体交渉権というものを認めるか認めないかということは、相当議論余地があると思うのでありますが、私は思うに民主的な機構であり、かつまた大衆の利益を代表するというような、基礎の固まつた組合というようなものに対しては、現在の税法にあるような單なる諮問権だけではなく、ある程度團体交渉権を與える方が、徴税にあたつて大藏当局も便利であろうし、また納税者としても納得し得る納税ができると思うのであります。この團体交渉権に関する大藏当局考え方を詳細に承りたいと思います。
  8. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 今御指摘のいわゆる團体交渉と申しまする場合におきまして、私どもはその言葉の正確な意味は、結局におきまして、納税者所得額なり、納税額というようなものを、政府対その納税者責任においてきめないで、中間に團体を介在せしめまして、その團体責任をとらせて、所得額なり税額をきめる。こういうようなきめ方をするのを團体交渉と一應解しておきたいのであります。こういう意味における團体交渉でありますと、これは從來税務運用上、さようなことも一部やつた例もあるのでありますが、実際問題といたしまして、うまく行かない場合が相当に多い。その結果かえつて所得税賦課等が不公平になる場合も相当にございまして、よい面がある半面に、下手すると非常に惡い弊害を來すというので、昨年度からそういう運用方針はこれをやめるということにいたしましたことは、前々から御説明申し上げておる通りでございます。あくまでも所得税というものは、やはり税法はつきりしておりまするので、税法に從いまして、納税者が自分で所得を計算して申告で納める。その申告で納めた額が、税務官廳が見て正しくなければ、税務官廳は自己の責任においてそれを調査して更正する。これが所得税根本原則に相なつておりますが、さような意味において先ほど申し上げましたような意味における團体交渉というものは、私どもやはり本年度におきましてもこれを認めるというのは、妥当でないのではないかと考える次第でございます。ただ実際題問といたしましては、さようは申しますものの、團体の中でも多数まじめな團体もありますし、また團体の方が納税者実情をよく把握しており、資料等も十分にもつておる。こういうような團体が、殊に農村方面等には大分ございますので、本年度におきましては、さようなまじめな團体でありまして資料等がございますれば、資料等も十分に出してもらう、それから税務署團体意見を十分によく聽きまして、そうして一方的に役所所得額を押しつけるとか、あるいは決定するとかいうようなことを、できるだけ少くして、円滑に納税が実行されるようにいたしてまいりたい。その方がかえつて納税の適正を得るゆえんであろうと考えられますので、運用面におきましては極力さような方向にもつてまいりまして、でき得る限り適正な納税を確保したい、かように考えておる次第であります。ただあくまでも責任政府納税者との間におきまして、最終的の責任をとる。この点はいかなる場合においても変更するわけには行かないと、かように考えております。
  9. 川合彰武

    川合委員 税法の建前からいつて團体交渉権が認められないということは、ある程度われわれも現段階においてはいたし方がないと考えるのでありますが、私は徴税行政運用の上において、その團体が穏健であり、かつまたいろいろな基礎的な数字の点において資料をもつておるというならば、税務署においても極力これは最大限度において利用、活用せられるように、大藏当局は末端の税務署指導せられるよう希望したいと思います。
  10. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 まつたく今申しましたように、御趣旨通りできるだけ円滑に参りますように、運用を努めてまいりたいと考える次第であります。
  11. 川合彰武

    川合委員 そこで昭和二十二年度徴税にあたつて、いろいろな実際上の團体交渉的な交渉がなされつつあつて、そのためにまだ異議申請の問題が解決しない、しかもそれはある政党——名前はつきり言うならば、共産党がそういうような指導の任に当つておる。たとえば税務署の前に共産党のテントを張つて事務所を出して、そこで異議申請申告を書く。同時に入党の申込書をとつておるということをわれわれは現に見ておるわけでありますが、そういうような問題は今どういうふうな解決方向をたどつておるのであるか、この点に関する当局実情の御報告をお願いしたいと思います。
  12. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 今御指摘のような事例が全國に大分ございまして、実は税務の円滑な執行をかえつて妨げておるような例が大分あつたわけでありますが、こういう面に対しましては、税務官廳といたしまして、必ずしも、さつきから申し上げましたような團体とは称しがたい。從いましてむしろそういう場合におきましては、直接納税者との話合いにおいて話をきめるというのが、正しい解決をするゆえんであると考えまして、多くの地方におきましては、そういう趣旨運用をはかるということにいたしておるわけでありますが、現行制度のもとにおきましては、なかなか円滑を欠きまして、その結果税務署がややともすると、暴行とまでは行かないにいたしましても、相当はげしい抗議に遇いまして、非常に税務署運営が困難を極めておる点が多々あつたように見受けられます。しかしながらこういうむりな要求、あるいはむりな動きに対しては、役所側といたしましては、あくまで断固これを排除する。まじめな團体の正しい意見に対しましては、あくまでこれを尊重するというようなことで、強硬にひとつ現地において問題を解決するように、せつかく今各地において努力中であります。行過ぎのあまり非常に変な場合も起つておる例もあるようでありまして、そういう場合におきましては、適当な司法方面取締りといつたようなことで御協力を願いまして、極力円滑かつ適正な運営を期するように、努めておる次第であります。
  13. 川合彰武

    川合委員 日本の現状から考えるならば、納税ちようど米の供出と同じように重大な意義をもつことは、私から申し上げる必要もないと思いますが、先ほど申し上げましたように、共産党指導によつて非常にトラブルが起つておるということは、われわれとして非常に遺憾の至りでありまして、これらに対して当局は、どこまでも適正なる納税という見地から、取締るべきものは取締るという断固たる方針をもつて望まれんことを特に希望したい。そういうような政党的な圧力に押されて、適正な課税を遠慮するというようなことがあつてはならないということを申し上げておきたいのであります。なお今回は國税犯則取締法ができるわけでありますが、これに対して、煽動または強要というようなことの事実の認定に関して、もしケースをもつておるならば、そのケースをお示し願いたい。かように考えております。
  14. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 ただいま実際の実例で、これにまさに該当するといつたような場合の資料を、今手もとに持合わせていないわけでありますが、一部にございますような不納運動、あるいは不当課税の問題にいたしましても、非常に惡質な不当課税反対運動というので、かりに税法で定められたところによると一應もつともだといつても、しかしその負担はむちやくちやだからわれわれは納めない。そんなものはむりだ。運用で適当に手加減しなければ税は納めないのだというような、相当行き過ぎたはげしい議論をして、役所の側に迫つておる向きが大分あるようでございます。こういう問題に相なりますと、先ほど御指摘法案に触れて取締り対象になり得るのじやないかと考えるわけであります。これは今後法案ができますれば、そういう運動は自然によほどなくなつてくることを期待しておりまして、今後の運用あたりましては、司法当局と緊密に連絡をとりまして、適当な納税がされるように努めたいと考えております。
  15. 川合彰武

    川合委員 次に改正案の第十三條にいろいろな税率が書いてあります。現行税制では最高が百分の八十五ということになつておるけれども、実際は百分の八十で止めておつたわけであります。ところで今回の改正案によりますならば、最高の百分の八十の所得金額は五百万円以上になつておるわけでございます。二十二年度所得の実際にあたつて、五百万円以上の所得のあつたものの人数、あるいはその金額というような資料をお持ちでありましたら、この機会に御発表願いたいと思います。
  16. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 本年度更生決定に基く五百万以上の納税者の数、それから納税額等につきましては、目下財務局からそれぞれ報告をとりまとめて整理中でございますが、まだ一、二全部そろわない局がございますので、完全なる資料をここで申し上げがたいのであります。人数から申しますならば大体六十七、八名程度つたんじやないかと思つておりますが、いずれはつきりわかりましたら、適当な方法によりまして公表いたしても差支えないと考えております。
  17. 川合彰武

    川合委員 これは総論的な質問に還るわけでありますが、今回の税法改正、あるいは新税である取引高税を見た際に、私たちは大藏当局考え方がこういうような考え方にあるんではないかというような氣がするのであります。それは第一に、税制複雜化するということは、こういうような利害が階級的に考えられる。すなわちいわゆるブルジョアに対しては、税制複雜化ということは脱税の余地を非常に多くする。一方いわゆる無産階級に対しては、ますます苛斂誅求的な課税になるということをノイエ・バイエルだかが述べたということを、私は本で読んだ記憶があるのでありますが、日本税法もそういうような方向をたどりつつあるといわざるを得ないのであります。漸次むしろこの財政を單純化して、そして應能負担原則從つて課税する。從つて今後税制を單純化するような税法改正ということは考えておるかどうか、こういうことを承りたいと思います。
  18. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 ただいまの御意見非常にごもつともな御意見だと思いますが、税制をあまりに小さい差別をつけるということにとられ過ぎまして、いろいろの差別をつけたり、あるいは例外を設けたりすると、その間隙に乘ぜられまして、かえつて負担実情に即しない。公平を欠くということもなきにしもあらずでありまして、まさに現在の物品税におきましては、私どもはそういう弊害相当感じております。税率を高くいたしますと、拔けた場合の弊害は非常に大きい。單に國庫損害を受けるのみでございませんで、業者の間の競爭力にも非常に影響いたします。その結果経済的にも非常におもしろくない影響を來すという点が非常に見受けられるのでございます。所得税その他の場合においても、若干そういう傾向がなきにしもあらずでありますが、間接税の場合において特にそういう弊害が多いと思うのであります。そういう向きに対しましては、やはりこの間から申し上げましたように、なるべくこれも統一し、單純化するという方向に赴きますのが、一方においてやはりかえつて負担の公正を得るという結果にも相なるわけであります。ドイツ等においても、奢侈税と賣上税とを一緒にやつた例がありますが、奢侈税課税対象の正確な把握が可能なものに限定されまして、他は賣上税によつて把握していくこととなつております。大体の方向としてお説のごとく複雜課税区別を廃して、取引高税方向に進むという傾向が見られていることは事実でありまして、フランスその他の傾向を見ましても、そういう傾向が一般的に伺われますので、將來の税制方向といたしましては、非常に有力な御意見として拜聽しておきたいと存じます。
  19. 河口陽一

    河口委員 農民の所得税について簡單にお尋ねをいたしたい。從來どこへいつて農業者課税は多過ぎる、こういうことを聞かされるのですが、今回の税制改正によりましてどういう点が軽減されておるか、一應御説明願います。
  20. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 昨年度におきまして農業所得所得税が、相当負担が重いものであつたという一般的なことにつきましては、そういう見解も有力な見解だと思うのでありますが、ただ私どもは全國的な平均という見地から見ますと、先般も申し上げましたように、一戸あたり負担が大体六千円前後でございまして、この程度負担勤労所得者の場合に比較いたしまして、平均的に全体として、昨年度所得税負担といたしまして高いというふうな考え方は、賛成いたしがたいということを先般も申し上げたわけであります。ただ累進率等相当激しく、下の方から高い税率になつております関係上、耕作反別相当多いような農家、あるいは所得が少し平均よりも多くなるということになりますと、負担がぐんぐん殖えていくといつたような関係がありまして、その面から実際面といたしまして負担を重く感じている向き相当ある。それからいま一つは、やはり全國的に各人ごとに調査が完璧になかなかまいらない。中にはどうも間違つた決定をされておる方もあつたといつたようなこともございまして、そういう議論を巻き起しておるわけでございます。全体として申しますと、勤労所得者、その他所得税全体のほかの所得者に比べて、特に負担が非常に大きいというようには私ども考えないのでございます。それといま一つは、実は今まで農業者は税を收めておる部分が少なかつたのですが、去年の所得税法によりますと、相当多数の納税者が新しく出てきた。そういう農家は新しい所得税でありますので、所得税になれていない。しかもそれは申告によつて納められないで、年度末の更正決定によつて、一遍に一年度分を收める。かような結果になりました点が、やはり相当收めにくい一つの結果になつたと思うのであります。從つて本年度といたしましては、第一に基礎控除税率家族控除等によりまして負担軽減をはかるということが一つと、それから運用面におきましても、できるだけ早期に申告していただきまして、年度末に一遍に納めるというようなことは、できるだけ少くして、やはり納期に分割して納めるというようなふうに、申告指導あるいは事前の更正決定等によりまして、なるべくそういう方面にもつていきまして、この際納めやすいように努めたいと考えておるのでございます。今度の所得税改正は前から申し上げておりまするように、基礎控除家族控除等相当大幅に引上げ、それから下の方の税率を、たとえば今まで五万円超百分の五十を、二十万円超百分の五十というようなふうに、平均線前後の税率を、相当思い切つて下げておりますので、本年度といたしましては農家の場合におきましても、昨年度のような無理があつたとすれば、そのあつた面につきましては、よほど少いのじやないかと考えておる次第でございます。ただ平均的に申しますと、農業所得者の場合も、農家平均所得以下の農業所得者の場合は、相当負担軽減になると思います。これに反しまして相当上の方の所得者になりますと、この基礎控除家族控除等控除の恩典の及ぶ額が少くなるので、軽減額が比較的少い。從つて上の方はそう軽減にならないと思いますが、平均線前後の農業所得の場合は、率から申しますとよほど軽減になる、かように考えております。ただその際におきまして、よく世間で言われるのですが、農産物の價格が二倍になつた。所得がそれによつてある程度殖える。こういう場合において税額もなお前年度税額でいいのか。あるいは前年度より額において下りはしないか。こういうことを期待していただきますと、期待しがたい。あくまでも先般勤労所得税について申し上げましたように、所得百円当りの負担率において、実質的に軽減になるというようなところで御判断になる必要がある。そういう点から判断いたしますと、農家所得平均的な所得の前後の人々、この方面負担は、現行税法に比べますとよほど下る、かように考えておる次第でございます。
  21. 河口陽一

    河口委員 高額所得者に対するお話がありましたが、昨年地方をまわりますと、百万円所得のあつた方が、実際は百分の八十五とか八十と聞いております。これに地方税を附加すると、地方税が大体四〇%で、所得全部を納税しても、なおかつ足りないというようなことを聞かされておるのですが、この点に対して本年度はどういう処置をとられたのであるか。お尋ねいたします。
  22. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 今後指摘の地方税が百分の四十という例は、全國でどこかございますか。私どもはそこまで高い例はないのじやないか。ただ営業税が二十前後にまでなつておる所は、若干あるように思います。かりに二十といたしますと、ちようど百分の百になるのじやないか。こういう疑問をおもちでございますが、一方営業税は所得の計算上、実は前年度経費を差引きますので、理論的に申しますると一〇〇%を超えるということはない。從いまして一應機械的に営業税を控除した残りの所得に対しまして、所得税と営業税を加えまして、負担を計算してみると、一〇〇%あるいはそれをオーバーするような計算も、場合によつて出てくるかもしれないと思うのでありますが、精細に計算してみますると、さようなことにはならない。從いまして最高率を百分の八十程度にしておきまするならば、著しく不合理はないものと考えております。それで百分の八十の税率の適用を受ける段階は、ずつと昨年に比べて上げておりまするので、そういうことと相まちまして、本年度におきましては実際の問題といたしましても、そういう非難を受けるような例は非常に少いのじやないか、かように考えております。
  23. 河口陽一

    河口委員 問題を農業課税にもどしてお尋ねいたしたいのですが、御説明のあつたごとく、所得税においても、農村は今年度相当軽減されるようなことが了承される。地方税において地租が從來賃貸價格の百分の二十四であつたものが、本年度において二百に引上げられておる。私は税の建前として、所得に対する課税は妥当であるが、物件に対する課税は、相当考慮してもらわなければならぬ。さらに農業者において、この物件に対する課税が非常に多い。言いかえれば二重課税の面が非常に多いように考えられる。こういう点について農村は、本年度も税のために相当苦しまなければならない。さらにこういうことが禍いたしまして、せつかく農地開放が行われても、税額が高くなるから、結局土地は政府にもつてつてもらつた方がよろしいというようなことで、農地開放にも一段の阻害を來しておるように考える。さらに六月十五日の新聞紙上には、総司令部農業課長のデイビス氏が、日本農業者は租税が高過ぎるということをはつきり声明されておる。これらのことを考え合わせて、当局は愼重を期して、そういう片手落ちの課税にならざるよう、最後に御希望を申し上げておきます。
  24. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 單に農業の立場、あるいは農業生産という見地から考えますると、税はまさに軽い方がいいにきまつておるのでありまして、それのみならず、ただ國民の負担は國民の見地から申しますると、なるべく軽いがいい。なかんずくそれぞれの業者におきましても、その業の立場から考えますると、軽いのがいいということは、これは議論余地のないところでございますが、ただ現在の財政事情、それから國民一般の生活状態、なかんずく勤労者の状態等と比較しますならば、先ほど申し上げましたように、私どもはこの國民全般の見地から考えますると、農業所得は決して絶対的な過重というような考え方はもつていないということを、はつきり申し上げておきたいと思う次第でございます。ただ実際問題といたしまして、小所得に対しましてあまりに負担をかけるということは、これはいかにも税制といたしまして適当じやない。ひとり農業者の場合だけでなくて、勤労所得者の場合におきまして、特にそれがはげしいということを私どももつくづく感じてまいりましたので、今回の改正案におきましては、基礎控除家族控除等相当大幅に引き上げまして、その勤労所得税につきましても、相当軽減をいたし、併せてこの平均線以下の農業所得におきましても、相当な実質的軽減をはかるような改正案を、御提案いたしておるような次第でございます。なお課税の調査が不十分なために、実情に即しないというような点につきましては、若干そういう問題もあつたようでございますので、今年度におきましては、さらに一層の正確を期するように努めてまいりたい、こう考えておる次第でございます。なお地租の問題について御意見があつたようでございまするが、実は地租は今低いものに相なつておる。地租の反当り負担額を反当りの收穫高と比較してごらんになれば、おそらく何人もすぐ氣がつくところでございますが、現在の負担というものが非常に低いものになつておるのであります。これは地租の賃貸價格が、昭和十年以前の平均をもとにしてきめられております。当時の経済情勢のもとにおいてできておりまして、今日まで農産物の價格その他から申しますると、これは実はパリティ計算で、かりに百十倍程度になるといたしますると、百分の百でも軽いという賃貸價格であると、收益率から見られるのであります。そういう状況にありますから、この際地租につきまして、御指摘のように百分の二百ぐらいの負担をさせるということになりますと、実際問題といたしまして、私は決して高い負担じやない。むしろほかの税に比べますとまだ低いので、理論的に考えますともつともつと引上げるのが妥当であると考えておるわけでございます。ただ現在相当低い事情、また一面におきまして統制によつて小作料なり地代を抑えておるというような点がございます。今回地方税法として提案しておる程度の引上げが妥当だというので、かような提案をいたしておる次第でございます。なお各種の地租とか物件税、これは当然農業所得の計算上は控除するということになつておりまして、負担が二重になるというような点はないように、制度の上においても考えておりますので、その点も御了解願いたいと思います。
  25. 河口陽一

    河口委員 御説明で大体了承はできたのですが、先ほども申し上げました通り、農民の租税負担が重過ぎるというこの見地から考えまして、二十四であつたものを二百に上げるということは妥当でない。理論的にはなるほど諸物價が上つておりますから、上げるということは一應考えられるのですが、從來税が重かつたという観点から考えると、この二百に上げるということは妥当でないと考える次第であります。
  26. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 税といたしましては、なるほど負担相当重いと認められますところのこの所得税、こういう方面につきましては、できるだけ軽減をはかる。これに反して税制といたしましては、非常に負担がまだ軽いと認められるところの地租等についてはそれぞれ引上げる。こういうことによりまして、政府として全体の調整をはかつていくということが、私どもやはり財政全体のバランスをとる上において必要だという見地から、所得税はむしろ引下げましても、地租の方は上げた方が妥当だ、かように考えておりますことを御参考までに申し上げておきます。
  27. 堀江實藏

    ○堀江委員 所得税法の一部改正の問題については、先日もいろいろお尋ねしたわけでありますが、まだ納得のいかない点があります。特にそれは農業所得に関してでありますが、この改正所得税勤労所得農業所得との関連を見ました場合において、相当な開きがある。それでこれは先ほど局長が御答弁になつたように、農業者所得は高かつた。だから相当軽減をやつておるとおつしやつたこととこれとは反しておる。このいただいておる資料を見ましても、十万円の場合あるいは五万円の場合のいずれをとつてみましても、農業所得勤労所得より高いという事実は、一番問題になつておるところの農業者負担を公正にするということに反しておる。それから根本的な問題として、農業が勤労所得であるかどうかという問題であります。私らの見解として農業に從事し、また農村をよく知つておるものにとつては、農業ほど大きな勤労はない。今労働基準法なんかによつて八時間労働でやつておりますが、農民は朝から星をいただいて出かけ、星をいただいて帰る。十何時間もの労働をやつておる。勤労のうちの最大なものであると私は考えておるし、そうしたことはあなた方としてもお認めになるだろうと思いますが、しかもそうした勤労の農業所得は決して事業所得に解すべきものでなくして、これは純然たる勤労所得で、最も勤労度の重い所得である。しかるにかかわらず勤労所得に関して二五%の控除をしておる。これはこの率が妥当であるかどうかは別問題として、一應了承するものでありますが、問題になつておる農業所得についても、勤労控除をやるべきだという見解を私はもつておる。そうしたことをやらないことが農業所得者に対するところの負担の重荷ということになつておるものと思うのでありますが、これについて当局の御見解を伺いたいと思います。
  28. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 この農業所得税は、私ども勤労所得的分子が非常に多いということは確かに御意見通りと思います。しからばこの普通の雇傭労働の所得と同様、純然たる給與所得と同じように見るべきかということになりますと、そういう見解には賛成しがたいわけでありまして、農業所得の中にはいわゆる事業利益、事業收益というような面がありますのと、そりから一面においては土地の利用、土地の資本利子という種類のものとそういうものが加わりまして農業所得というものが生れてくる、かように考えておりますので、純然たる雇傭労働の所得と同じようにするという考え方には、どうもにわかに賛成しがたいのでございます。そこで実際問題として、それではことしの農業者負担がはたして適当であるかどうかということが問題になると思うのでありますが、その点はお手許にお配りしております資料によりまして、御半断願いたいわけでございます。たとえば農業所得平均が、昨年は大体三万円前後であつたわけでございます。昨年の通り所得が三万円といたしますと、家族三人でありますと税額が五千百三十円、これに対しましてそのまま所得が動かないとすると、ほとんど税はかからないのでありまして、三百五十円で一%の負担になるのであります。ところがかりに所得相当殖えまして、五万円になつたというときを考えますと、今度の負担でいきますと五千三百十一円、すなわち所得が倍近くになつたが、負担としては前と同じということになりまして、相当に調整できておる。かように考えておるわけでございます。かりにもう少し上の方を考えましても、たとえば十万円の所得の場合、今の税法によりますと四〇%くらいの負担になるわけでありますが、改正法によりますと二二%、すなわち十万円の所得がありまして、二万二千円程度負担ということになりますので、この程度でございますれば、今の財政事情その他からいきまして、私どもといたしましては御辛棒いただかなければならない負担額ではないか、かように考えておるわけであります。
  29. 堀江實藏

    ○堀江委員 農業所得につきまして、昨年度平均が三万円であるとおつしやつたわけでありますが、ことし当然米價は改訂せらるべきであるし、かりにこれが倍になると六万円である。六万円の場合、その農業收入をやるためには少くとも二人の人間を要する。二人の人間を要したならば一人が三万円である。そうした場合月額にしたら、これは二千五百円であるという数字が出るわけであります。現在の勤労者の三千七百円ベースは、これは千八百円ベースよりも実質賃金において低下するという意味において大きな問題になり、この面において労働功勢が起るであろうということは一般の常識になつております。勤労者にとつて食えない三千七百円ベースよりも低い收入である。あなたの方の資料では平均が三万円である。農産物價格が倍になつて六万円である。しかも二人としたならば一人が月二千五百円である。こうした場合に当局としては事業所得である。事業から生れた所得であるとおつしやいますが、私はこうした数字から考えてみても、勤勞所得よりも少い所得であるという意味において、当局の御見解は間違いではないか。当然そういうことになれば勤労控除というものが問題になるわけでありまして、本年度農家平均收入というものをどの程度に抑えておられるかは存じませんがもしも倍とされたならばそういう数字になりますので、その点を御説明願いたいと思います。
  30. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 予算の見積りにあたりましては前に申し上げましたように、昨年の実際の決定に対しまして、生産物價の伏況を考えまして、八割五分程度所得の増を見込んでおるということは、前から申し上げておる通りであります。
  31. 堀江實藏

    ○堀江委員 そうした場合に先ほど申しましたように、三千七百円ベースよりも少い農業收入である。しかもそれよりも課税の率が高いという場合は、デヴィス課長の言つたような農業者負担については、大藏省はめちやくちやであるということを裏づけするものではないかと考えるわけでありますが、その点についての御答弁はいかがでありますか。
  32. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 今正確な数字は持つておりませんが、三千七百円ベースをいわゆる農村方面だけの賃金に限りまして平均いたしますと、三千七百円ベースよりも相当低いことになるのではないかと思います。これは大都市、中都市、その他の都市全部、地域的にウエィトをきめましてベースして出てきておる数字でございまして、これを單に主として農村方面だけの所得者の場合の平均にとりますと、よほど下の数字が出てくるのではないかと思います。そういうものと比較いたしましても、かりに農業所得の一人の分が今年五万円になつた場合を考えましても、実際の農村における農民の生活、その他からいたしまして、決して御指摘のようにはならないと私は考えております。
  33. 堀江實藏

    ○堀江委員 これは大きな見当の相違でありまして、農民が從來のような封建的な生活状態を続けていくかどうか、いわゆる日本民主化の基本であるところの農村の民主化ということを考えてみましたならば、農民の文化並びに経済生活がもつと向上しなければならない。そうしたことが日本農村の民主化を促進させるものであるということには、御異存はないと思うわけでありますが、先ほど局長の御答弁になつたように、そうした低い所得に対して高率な税金をかけるということは明らかに農村の民主化を阻害するところの、從來の封建的農業を維持していくというお考えに基いておりはしないかということについては、見解の相違でありますので、これは討論の際に私は申し上げたいと思うのであります。  次に家族労働の問題がまだ私は了解がいかないのであります。そのため今この問題も触れたわけであります。勤労所得に対しては三人所得者があれば三人から基礎控除をする。しかも農業者所得は今御指摘なつたように、勤労所得よりもむしろ農家平均收入は下である。しかも二人なり三人の家族労働に対しては、考慮も何もしないということは、明らかに課税の不公平を意味していると解するわけでありますが、これに対しては前回も局長から答弁をいただいたが、そうではないということで、私これも見解の相違でありますから、これは御答弁をいただかなくても結構であります。  次に物品税の問題で、物品税改正と言うか、改惡と言うか、これに対してはまた別に意見を申し上げたいと思いますが、茶の問題について質問したいのであります。噂に聞くところによりますと、番茶はこれまで無税であつたのが、今度四百五十円という價格を限定して、それ以上の價格には百分の二十を課税することになつている。この点につきまして改正法を調べて見たのですけれども、探すことができなかつたのであります。この物品税の茶の問題がどうなつているか御説明願いたいと思います。
  34. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 まず最初に農業者負担の場合としてはつきり申し上げておきたいのですが、たとえば去年三万円の所得家族三人の場合でございますと、所得百円あたり十七円十銭、一七%の負担でございます。それが物價その他が上りまして、五万円になつたと仮定いたしまして計算してみますと、平年度におきましてはその額は四・七%、二十三年度におきましては一〇・六%、お手もとに表をお配りしてございますが、三万円が五万円になつたと仮定いたしますと、実質負担相当下る。二倍になりましてもある程度下るものと私ども見ております。從いまして本年度農業所得につきましは、平均千以下の方につきましては、相当な実質的な負担軽減を期し得ると申し上げて御参考にいたしたいと思います。  それからいま一つお茶につきましてのお尋ねでございますが、お茶につきましては、從來番茶を除いておりますることは御説の通りでございます。やはり私どもは番茶を除く趣旨においては変りございませんが、むしろこれを金額できめた方がかえつて簡明になりはしないかという点を考えまして、大体從來の番茶を除くというくらいの意味におきまして免税点を定めたい。その額は現在は免税点は番茶以外の茶は二百円ですが、三百五十円前後にするならば、この目的に達成し得るのではないかというので目下調査中でございます。これは追つて政令によつて定めることになつておりますので、その方できめる見込でございますが、観念といたしましては、お話のごとく番茶は除くという趣旨で適当な額を免税点で定めたい。かように考えております。
  35. 堀江實藏

    ○堀江委員 この問題にはまだ了解がいかない点がありますが、現在番茶は五百五十円ないし四百五十円くらいだということを聞のております。これを二百円とか三百五十円にするということになれば、番茶は認めるのであるという当局方針と違つて、全部の茶にかかつて、これは大衆課税の性質を帶びてくるということになると考えますが、その点について……。
  36. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 この價格は生産者の價格になつておりまして、小賣價格と申しますと、從つてもつとこれより高いものにおのずからなるわけでございますが、課税が、生産者で課税いたしますので、生産者の價格でございます。まだ最終的に資料を求めておりませんが、趣旨は先ほど申したように、大体從來の番茶は除くということによつて、率を定める方針であるということを、ここではつきり言明いたしておきます。
  37. 堀江實藏

    ○堀江委員 茶の問題については趣旨は了解いたします。なるべくそうした番茶や何かに課税のならぬように御処置を願いたいと思います。  それから農業課税経費のうちの——これは当局方針であるかどうかは知りませんが、農業生産の重要なる基礎をなすところの畜牛の問題であります。畜牛というものは、ここで私が言うまでもなく、一頭の牛を飼つて、それを使う場合において、子供も生みますが、しかしながらそれが年を経るに從つて消耗していくということは事実なのであります。現在までの課税において、畜牛の消耗費を経費として求めておられなかつたという点は非常に不合理でありまして、もちろん將來の農業のいき方として、機械化ということが根本であるが、当面の問題として有畜農業が大きな任務をもつわけであります。そうした畜牛畜馬の消耗費というものを、今度は経費としてお認めになる御方針であるか。その点についてお伺いいたします。
  38. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 畜牛の消耗費を銷却費として見るか見ないか、これは若干理論的に議論があるのでございまして、私ども從來はそういうふうに見るのが妥当だと考えますが、できるだけそういうふうな趣旨運用すべくよく研究したいと考えております。
  39. 堀江實藏

    ○堀江委員 これで私の質問は終りました。
  40. 塚田十一郎

    ○塚田委員 いろいろ各委員からお尋ねがあつたようでありますから、重複になることはなるべく避けたいと思います。この所得税の新らしい改正案基礎にいたしまして、政府が今度の予算をお組みになつたものを、先般主討局長においで願つて、いろいろ御説明伺つたのであります。そのときのお話で、事業所得農業所得、庶業、そういうものについての基本的な平均所得数というものを伺つたのでありますけれども、当時主計局長のお話では、事業所得は昨年は平均六万円に見ておつて、ことしは十万八千三百円に見ておる。農業所得は昨年は二万四千円に見ておつたが、ことしは四万四千八百円に見ておる。庶業は四千五百円に見ておつたが、ことしは八万九千五百円に見ておるというようなお話であつたが、まずこの点において間違いはないかどうかということを一應お伺いいたします。
  41. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 今お示しの営業の所得は大体正しいと思います。それからいずれも本年度所得の見込みは今お話の通りでありますが、農業所得の前年度の数字が若干低いように思います。正解に申し上げますと、二万七、八千円になつていたと思います。
  42. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そこでお尋ねをいたしますが、この事業所得の場合において昨年六万円であつたが、今年は十万八千三百円というように大体八割方の上りでありますが、どういう根拠でこういう数字をお出しになつたのかどうか。それは私どもが考えますのでは、なるほど物價が上る。物價が上りますからして、たとえば商工業者の場合には生産高、販賣高というようなものを價額の上で算出いたしますればその数字は殖える。しかし所得が殖えるかどうか、つまり営業者の場合において利益が殖えるかどうかということは、むしろ最近の状態におきましては、取扱高は殖えても利益はかえつて減りはしないかというような状態である。そういうように考えられるのがむしろ実情であると私どもは考えております。そうしてただこういう数字が單なる物價の値上りというようなものでおきめになつたとすればその辺のお考え方に十分でない点がありはせぬかと考えておるのでありますが、その点について御意見を伺います。
  43. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 この見方はなかなかむつかしいところでございまして、事業所得と言われましたが、営業所得の場合でありますと、営業所得につきましてはやはり若干の生産の増加、それから物價の騰貴、この二つをみまして、前年から大体八割五分程度殖えるものとして税率をきめたのであります。個々の納税者の場合におきましてもそうなるかどうかにつきましては、これをさらに現地においてそれぞれ実情を取調べまして、適正な課税をするべく努力いたしたいと思います。大体これくらいの増加は、平均的にみまして、昨年一箇年に対する本年一箇年の見込みでございますから、むりな見積りではないと考えている次第であります。
  44. 塚田十一郎

    ○塚田委員 次に農業所得でありますけれども、この四万八千八百円という数字は、今日の農業の実情からすれば、必ず米價その他の値上げを予想してお出しになつた数字であると思いますが、税務当局がこの数字をお出しになつた場合に想定された米麦その他の主要なものの値段を、どこにおいておられたかをお聽かせ願いたい。
  45. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 米價につきましては先般大臣からお話がありましたように、本年度いくらにするかという具体的な額はまだきまつていないのでありまして、目下物價廳その他でパリテイ計算に基く資料を整理中であります。これは御承知の通り農家が購入する物資のマル公がきまらないと、正確な数字が出てまいりません。そういう農家が購入する生産資材並びに生活物資のパリテイ計算による品目が六十くらいあつたと思いますが、それがきまりますとおのずから機械的に出てくる、かようなことになつていると思います。大体の見当といたしましてはおのずから今度の物價改訂の高さで見当がつくのでありまして、これはまつた一つの見込みでございますが、昨年の六二、五五倍が、おそらく一一〇倍前後、あるいは若干それより上まわつたところにいくのではないかという見当でございます。そういうところからみますと、米價は今の段階では倍にはいきませんが、それ近くのところまでいくのではないか、かように見こまれる次第でありますが、米價といたしましては、まつたく未決定のもので、見積りでありますので、單に予想として参考までに申し上げているということを御了解を得ておきたいと思います。
  46. 塚田十一郎

    ○塚田委員 もちろんおつしやるように米價その他のものは未決定であるのでありますが、しかし一應これだけの予算をお組みになつて数字をお出しになり、しかも四万八千八百円とお出しになつたからには、何かそういう根拠がなくては、こういう数字はおそらく出てこなかつただろうというふうに考えておる。そこでこの数字をお出しになるときに、一体米は一石どれだけ、麦は一石どれだけという数字を、主税局は腹においてお出しになつたかということを伺いたい、こういう意味なのであります。
  47. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 そういう意味でございますと、ただいま申し上げました見当の数字で大体御了解願えるかと思うのであります。
  48. 塚田十一郎

    ○塚田委員 同樣のことは商業についても言えるのでありますが、それらを通じまして個人所得に対する税の今年の見積りというものが、昨年から今年にかけての経済界の推移をにらみ合わせて考えますときに、ただ物價の上りというものだけでおきめになつたとはもちろん思いませんが、そういうものがすべての要素であつたような感じがいたします場合に、この数字がどうも過大にすぎるのではないか。もちろん見積りはどれだけ過大になつてつても、実際の課税面において適正に行われるのであれば、これは問題ないのであります。しかし、これはなかなかそうはいかないのでありまして、予算がそれだけよけいに組んであれば、結局それだけは何らかの方法によつておとりになるという結果にならざるを得ない。これは税の過去の実例からしても、またおそらく今年もそうなると思う。見積りが大きくなればそのまま税の加重になるのでありまして、これは法律の上から言つて軽減されたとか、軽減されていないとかいう議論をいたしてみましても、実際の面になつてくると、法律そのものの重い軽いということと、実際の課税が重い軽いということは全然別になつて出てくる。私どもは見積りがどういう根拠によつて立てられておるかということを、非常に重要視しておるわけであります。しかしこれ以上お尋ねいたしましても、おそらくこれ以上つつこんだ御答弁は得られないだろうと思いますので、この問題は一應これで打切りたいと存ずるのであります。  次にお尋ねいたしたいのは、先般本会議において私の党の代表者が、課税の見込人員についてお尋ねをいたした。これも実は主計局長に伺つたときの数字と大分食違いがあるような、本会議における大臣の御答弁であつたのであります。御参考までに申し上げますと、営業所得では、今年は失格者を除く課税を受ける人員の予定は、二百六十八万四千人ということになつてつたのであります。それから農業所得においては四百八十二万七千人、それから商業においては二十三万三千人、こういうようになつてつた。そこで昨年の分はどうなのかというように次にお尋ねをいたしたところが、昨年は営業所得は二百三万八千人であり、農業所得は三百七十三万五千人、商業の場合は三十万三千人というようにお答えがあつた。それでそのままノートに書いておつたのでありますが、先日お伺いしたら違うということであつたので、今度頂戴した表からいろいろ推察いたしてみますと、どうもこの間大臣が御答弁になりましたのは、私どもがいただいております所得税予算額内訳表というものの中に人員が載つておりまして、それに対比が出ておる。ところがこれには改正案による予算と、現行法による推計というものがある。おそらくこの数字でお答えになつたのではないか、かように私は今了解しておるのであります。ところが私たちが昨年よりはよけいの人が税を受けるようになるのではないか、結局昨年よりも低い層まで税がとられるようになるのではないかということを考えておりますのは、現行法の推計による数字と、改正案による予算の上の数字との区別ではないのでありまして、昨年現実にどれだけの人が営業所得課税を受けたんだ、そうして今度の二十三年度においてはどれだけの人が受ける予想なのか、こういうことなのであります。現行法軽減されないでいればこれだけの人が受けるが、改正案によつてこれだけの人しか課税を受けないということ、この数字の比較では実はないのです。その点をはつきりとお聽かせ願いたい。
  49. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 ただいま塚田君からお話の点は、まさに大臣の本会議でお話になりました通り現行法との場合の比較の数字であろうと思います。そこで前年に対する実績と比べてどうかというお尋ねになりまして、この際さらにはつきり申し上げておきたいと思いますのは、勤労所得者は、前年の実績の見込が、これも概数で正確を期し得られませんが、大体一千百八万二千人、それに対してことしの見込は九百四万五千人、一割八分の減、農業、水産業、商業、これらを全部入れました数字が、昨年の実績は五百七万五千人、それに対しましてことしの見込は三百六十万四千人、差引いたしまして結局二九%程度減る見込であります。それで改正しない後におきましては、勤労所得者は二三%くらい減ります。だから一八%くらいの減、それから三二%くらいの減る見込のものが二九%くらい減るということで、御指摘通り若干減る割合は、実績に比較しますと少うございます。営業の方はこの前申し上げましたように、むしろ自然増その他がありまして、実績よりも若干増加する見込でございます。昨年の実績が二百四十二万六千人に対しまして、ことしは二百六十四万二千人程度見込んでおる次第でございます。
  50. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そこで減つておるものもある、殖えたものもあるという御答弁でありますが、大体税法そのものからいくと、たしかに軽減されておるように思うのです。たとえば営業所得で人間が殖えるということは一体どういう関係にあるのでありますか、何か計算の根拠が変つたというようなことで、こういう結果が出てくるのでありますか、その点をお聽きしたい。
  51. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 御承知の通り大都市方面等におきましても、災害でやられた営業がぽつぽつ復興しておるのが大部分あるようであります。農業者の場合は、むしろ新規の増加というものは比較的少いのでありますが、戰災都市の復興に伴いまして、やはり相当数は殖えつつあるのではないか、かような点から考えましても、こ程度でございますと、九分程度で見込んでおります。一應あるいは課税の決定によりまして、相違が若干あるかもしれませんが、ほとんど大部分はさような見方をいたしましても正しいのではないか、かように存ずる次第でございます。
  52. 塚田十一郎

    ○塚田委員 そこでお話がちようど関連してまいりましたのでお尋ねいたしたいのでありますが、給與所得というものは非常によく捕捉される。しかし申告による所得のうちの営業所得が非常に捕捉しにくいのであつて、営業所得というものは非常に課税の外に除かれておる、こう普通言われておる。政府においてもいろいろ統計をおもちになつておると思いますが、一体営業所得というものが、國民所得の中に含まれておる数字がどのくらいあるか知れませんが、そのうちの何パーセントくらいが課税面において捕捉せられておりますかどうか。そしてその課税面において捕捉せられない部分のうち、当然にこれは課税外にあるべき性質のもの、つまり課税の最低限以下のもの、それからそれ以上のものであつて、捕捉しなければならないのだが、やみ所得また脱税所得であつて捕捉し得ないもの、これを区別してお聽かせ願いたい。
  53. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 実はいま御指摘の調査が簡單にできますれば、私どもも苦労いたさないわけでありまして、なかなかそこに調査の困難性があるわけであります。たとえばやみ所得にいたしましても、小所得者のやみというものは、全体としてはばかにならぬ大きな金額でございます。大所得者のやみはいくらか、これは実際問題として全部調べてみないとほんとうはわからないというような、非常にむずかしい問題であると思うのでございます。本年度におきましては少くとも大口のインフレ利得者等につきましては、しらみ潰しに徹底的に調べてみようという、國税査察官制度を設けまして、大いに勉強してみたいと思うのであります。たとえば小営業者あるいはその使用人等がかつぎをやりまして、やみブローカーをやつておる。数から申しますと相当多数の人間がそういう仕事に從事していると思いますが、それがはたしていくらあつて、いくらの所得であるかというようなところは、実際問題としても捕捉がむずかしいということは、御了察願いたいと考える次第であります。國民所得のうちの営業所得に対する課税所得の割合は、大体半分前後になつているじやないかと見込んでおりますが、國民所得の中で、この営業所得をどう見るかということは、具体的になりますとこれはなかなかむずかしい問題でありまして、その辺はいろいろ困難な事情もございますので、あるいは本年度におきましては少しひまをかけまして、もう少しそういうところについてはつき進んだ研究をしてみたいと思いますから、詳細はその際に御説明申し上げるということで御了承願いたいと思います。
  54. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これはむずかしいとおつしやれば実際むずかしいのでありますが、しかしどうしてもまたこれらの所得をつかまえるのでなくてはならないという面も、課税行政の上からは非常にあると思うのです。そこで昨年度申告納税による部分というものは、つかまつたものは総じて重かつた、しかしそれと同時に、この面においてはつかまらない面がかなりあつた。そうしてもともとの予算がそういうものを平均してお出しになつていて、つかまらないものがあるために、つかまつたものが結局それらの人たちの負担がおいかぶさつて、しよつてしまつて、一層きついという場面が出て來たのではないかというように考えておる。そこでぜひこのやみ所得、脱税所得に対しては、徹底的に御追究願いたい。これは非常に面倒で、やみというものはつかまらぬからやみなんだ、それをつかまえるということはむりなんだということは、これは一般常識で、また一應その通りでありますが、しかし同じつかまらぬにしても、まだつかまえようがあるじやないかと私どもは考えておる。そこで暗示に富んだ話だと思つて聽きましたが、一般の公述人の中から、税務署が税をとるときに、今はつかまつている人間だけを、やつきになつてまだありはせんか、ありはせんかと騒ぐ。しかし税を何も納めないで、のうのうとして、しかもりつぱな生活をしている紳士というものが世間にたくさんあるのだから、そういう者を第三者通報か何かで、必ずしもいくら脱税になつておるということばかりでなしに、どうもあの人は税を納めていないらしいからお調べになつたらどうかという通報をおもらいになつて、やつてみられるのも一つの工夫ではないか。ほんとうに税を納められない状態において、納めないで逃げているのではないかということを御糾明願いたい。そういうことをするにしても、結局税務機構の能力の不足ということが問題になるのでありますが、能力不足という場合にも、私どもはいつも考えておるのでありますが、大体近年のように毎年々々新しい税法を、次から次へとお出しになつたのでは、どんな有能な人たちがおられてもなかなかつかまらない。だからせつかく昨年申告納税ということが始められて、一年経驗があるのだから、今年も同じだと考えておつたところが、新しい取引高税という税がまた出てくるということになると、また税務機構の相当大きな部門をこつちにもつていかなければ、どつちも中途はんぱになる。これがまた國民が納得のいかない税を納めなければならない結果になつてくる。そういう意味においても、私どもはこの取引高税法というものは、税そのものの善惡と全然別の観点から、一年くらい、もう一度昨年のままの税でやつてみられるのが得策ではないかという考えもあつて、あの税には賛成いたさない。あの税法を新しくやつたならば、できるだけの人員を浮かしていただいて、今申し上げたようなやみ所得、脱税所得というものに相当強く当つていていただくなら、私はあの取引高税二百七十億の予算の中の、少くとも半分以上はとれるのじやないかという考えをもつておるのであります。それらの点についてどういうお考えをおもちになつておられるか。これは参考までにお聽かせ願いたい。
  55. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 お話のように、最近二、三年來税務署で新しい税が次ぎ次ぎに殖えるために消化不良に陷つておる。それに対して人員等も不十分でございまして、思わしく運営ができないという点は、まことにその通りだと思うのであります。從來そういう点につきまして、いろいろ大藏省といたしましても対策を講じてきておるのでありますが、なかなか思うに任せてこなかつたというのが、大分例の不平を受けておる一つの原因でありますのは御指摘通りでございます。ただ、私どもといたしまして、本年度におきまして取引高税を起すということにいたしたのでありますが、この税は印紙納税ということにいたしておりまして、主として間税の方の仕事にする。直税は所得税に一生懸命になる。直税でわかつた資料はもちろん取引高税において利用することはいたしたいと思いますが、極力直税の方の所得税の仕事を妨げないで取引高税の方をやつていく。こういうことに実際の運営をやりますれば、御指摘のような事情は非常に薄らいでくると考えておるのでございます。從來間接税の方はあまり新税はございませんで、直接税と比ベると、よほどその辺は余裕のある運営ができるという実情もございますので、取引高税を起すことによつて、そう大きな支障を來すというようには考えておらないのであります。むしろ場合によりますと取引高税を起すことによりまして、かえつて直税の方の適正を期し得るというような場合も相当出てまいりまして、両方をうまく運用いたしますならば、税務行政としてかえつていい結果を來すようなことになりはしないかというようなことを感じておるわけでございます。それと、今までの新税というものは一同限りのものが多うございまして、たとえば財産税にしろ一回限りでありまして、あのように一生懸命手をかけてやつたけれども、一回でおしまいになる。昨年の非戰災者税も昨年限りでございまして、そのとき手をかけただけで、あと大した手はかけない。そういう新税が実は税務行政の手数から申しますと、一番永続性がなくて非常に手数が多いというようなわけでありますが、取引高税はその点今後引続き施行するということになりますと、そういう弊害もございませんので、その点から考えますと、私どもは、本税はその大きくここに新しく負担をかけまして、税務行政なかんずく所得税負担の不適正となるということには考えておらないのであります。それどころか、むしろ所得税におきまして、中小なかんずく小所得者に対しまして、相当大きな負担をしなければ歳入が上らない、こういう税制は、いかに直接税といえ、今の國民生活実情所得の状況からしまして、かえつて負担の適正を欠くのじやないか。勤労所得税、たとえば農業所得の下の方の部分、営業所得の下の方の部分、こういう部面に相当大きな歳入の期待をかけて、直接税の形で納めてもらうということになりますと、昨年の経驗からいたしましても、実際上いろいろな無理を來しますので、そういう方面負担軽減する。所得税につきましても、税率を合理化してやりますならば、これはやはりまた調査のしようもあるというわけでありまして、所得税といたしましては、あくまでも現在のいろいろな経済情勢、國民生活実情に應じた合理的な税制に直しまして、なかんずく小所得等の負担をこの際軽くいたしまして、運用をはかつた方が、かえつて適正な運用が期し得るのじやないか。しかしそれだけで済めばいいのでありますが、なかなか歳入の方が不十分で済みませんので、今回新たに取引高税を起しまして、それによつて國庫の缺欠を補いつつ、税制全体として、この際経済の実情に即する制度を打ち立てまして、円滑な運用をはかりたい。かような氣持でおりますことをこの際申し上げる次第であります。
  56. 塚田十一郎

    ○塚田委員 いろいろ主税当局の御苦心のほどはお察し申し上げるのであります、そして取引高税がうまく一石二鳥で、企業者などの所得税もうまくそこでつかまえるというようなことになることを御希望しておられますが、私どもから見ると、これはまつたく効果が逆にいくのではないかということを非常に案じておるわけなのであります。なぜかと申しますと、一体この取引高税間接税であるのか直接税であるのか、税法の上のむずかしい点で、私は間接税みたような、直接税みたような、中途半端なものだと思う。だから、税務納は、なるほど扱いの上ではこれは間接税の方で扱わせるというので、これは間接税だといつておられる。ところが実際と間接税としての取引高税が、どういうところに課税されるかということになりますと、これは商賣人でいえば賣上げに対して課税される。ところが所得税はどういうところから課税されるかというと、これも賣上げに対して課税されるという実績になつておる。どんな帳面をもつてつて收入がこれだけ、支出がこれだけ、差額がこれだけだといつても、税務署はお取上げにならないのであつて、お前のところは世間の評判から聞いてみれば、賣上げはこれくらいだろう、そこでお前のところの商賣はこれくらい儲かつておる筈だから、お前のところの所得はこれだけだ。こういうことで所得税も賣上げを基準にして見るということになつておる。取引高税も賣上げが基準になるということになると、これは、税をかけられる方の側からいえば、取引高税基礎になる賣上高を出すということは、そのまま所得税基礎になる。自分の商賣の高を出すということになるから、これはどうしても取引高税のときからまずこれは隠してかからなければならない。これは手続がたいへん二重にめんどうになつたと言つてつておる。そういうことは必ず実際面において出てくるのであります。なるほどうまくいけば両方ともうまくいくのでありますが、うまくいかないと逆に両方とも惡くなる。そうして惡くなつた結果は、今まで逃げていてつかまらなかつた連中に、今までよりもよけい、つまり取引高税所得税と両方の面でまた逃がして惡くなつてしまう。そうすると、税を逃げる方と、税を逃げないで正直に納める方との、俗に言います正直者がばかをみるという面が、この取引高税を課せられることによつて、倍加まではいかないかもしれませんけれども、あるいは倍近くになつてくるかもしれぬ。かりにそこまでいかないにいたしましても、相当にやはり、同じ逃げようという人間に、また逃げおおせた人間には、不当に、よけいに惡いことをさせる結果になる。これは間接税だと言われても、決して税の実際の上では、間接税としての影響効果というものは出てこないで、直接税である所得税の上に相当惡い効果をもつのじやないか。そういうことを考えるにつけましても、所得税をもう一年ほんとうにこれを固められていきますと、今度は所得の上から、これはまた賣上高や生産高というものも推算されて、何とか取引高税もうまくつかまえられるということになるというように私どもは考える。殊に今年は取引高税をお出しになりましても、これは中途半端でありますから、收入予定も二百七十億くらいしかないのだから、これは無理にお出しになつても、今年ぐらいはおやめになつておいた方がいいのじやないか。こういうふうに考えておるわけであります。そういうようないろいろな要素を併せ考えまして、私どもは一應取引高税法には賛成できない、こういう考えをもつておるのでありますが、これは意見になりますから必ずしも御答弁は要りませんけれども、ただ、税法の実際の御運用の上において、もし取引高税というものが與党多数の諸君の力で通りましても、運用の上において、そういう面をよほど氣をつけていただかないと、今申し上げたような弊害が出てくる。もう現にそういうように考えて、いろいろなくふうを惡い奴はしておる。こういうことをひとつ十分に腹においていただきたい。かように考えておるわけであります。
  57. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 今塚田委員から非常にちがつた観察をしていただきまして、大いに私ども参考にいたしたいと思つておるのでありますが、ただ、今お話の中に、取引高税所得税と大体同じくらいになりそうだというお話でございましたが、よく計算してみますと、大体普通の営業者の場合におきまして所得税に比ベて取引高税は非常に少いようであります。大体五分の一から十分の一くらいの場合が多いのじやないかと思います。從いまして、今御指摘のような場合におきましては、取引高税を逃れるためにというよりも、むしろ所得税を逃れるために適当にやるというような傾向は、たしかにこれはあろうと思いますが、これはもともと今まででもやはりあるのでありまして、そのために申告指導を徹底してやつでいただくと同時に、なお税務署におきましては、別途調査いたしまして、更正決定をやる、かような建前に相なつておりまするし、いやしくも所得税によつて捕捉した限度におきましては、取引高税においても捕捉し得る。取引高税によつて捕捉された限度においては、所得税においても利用し得る。これは運用次第では、私はそうむずかしくなくて、むしろいい方向に十分いき得るのではないか、またいかせねばいかぬというつもりで運用してまいりたいと、こう考えておる次第であります。財政事情が許しますれば、これは御指摘のようにあるいは時期を待つというのも一つの御意見かと思いますが、本年度財政あたりは、実は最も苦しいときでありまして、むしろ來年、再來年度になりますと、若干財政事情もよくなるかと思つておりまして、そういうときでもございますから、私どもやはりこの財政のパランスを合わせて、インフレを防ぐという見地を貫き、しかも先ほどから申しましたように、小所得者に対する所得税は、この際軽減するのがいいのだ。なかんずく勤労所得税においてしかりという考え方をとります限りは、この際通す方がよいのではないかと、こう考えておる次第でございます。
  58. 塚田十一郎

    ○塚田委員 その問題はその辺にいたしまして、そこでもう一つ本質的な問題についてお尋ねいたしておきたいのは、一体昨年度の税が重かつたか軽かつたか、これは今までも私的に主税当局とお話申し上げたので、主税当局ではそんなに重くなかつたという御見解があるようであり、私ども当局の御見解いかんにかかわらず、現実に税をとられた人たちは、相当重いという感じをもつたということを強く主張しておるのでありますが、そこでいろいろそういう結果からして、昨年はとにかく税を納めた人の相当大きな面、あるいは全部と申し上げても過言でないと思うのですが、やはり十分納得ができておらないということが非常にあるのであります。一体民主主義時代の税というものは、納得して納めてもらうということが非常に大事なことでありまして、納得ができないで税をとられるということになれば、これは專制政治時代と少しも変らないということになるわけであります。そこで、それでは納得というものはどういうところから出てくるかと申しますと、一つは担税力の範囲内でなくちやならぬということです。もう一つは公平にやつていかなくちやならないということ、この二つが私は非常に問題じやないかと思うのであります。そこで、はたして昨年度、殊に今年度改正せられましたけれども、いろいろな統計などから見てみますと、昨年などよりか全般的に税負担というものは、パーセントから見ても殖えておるのであります。一体当局は今、昨年及び今年の実例において、税負担というものがなお國民の担税力の範囲内あるものとお考えになつておるかどうか。それはなるほど重いは重いが、しかしいろいろ今日の國家事情、國際事情、そういうものを考えて、國民としてはこれくらいのものは負担しなければならぬ。いくら負担しなければならぬと言いましても、担税力を超えて負担すれば、これはもとをつぶすということになるのですから、そうなれば税の範囲を逸脱しておる。そういう税は長年決して続けられるものではないのでありますが、なお担税力の範囲内にあるとお考えになつておりますかどうか。これは根本的の問題でありますが、少くとも昨年よりは今年は、比率の上においても國民の税負担というものは、頂戴いたした統計の上から見ても殖えておる。その点に対しての根本的な御見解を伺つておきたい。
  59. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 今のお尋ねの点はなかなか私どもむつかしい問題だろうと思いますが、しかしやはりおのずから判断の見当はつくと考える次第でありまして、國民所得自体の計算も、実を申しますと、非常に正確はなかなか期し得ないので、一應のところを見まして計算はいたしておるわけであります。これに対して、全体で二二%くらいの負担ということに税が相なるわけでございます。國民所得の配分の内容から申しましても、國民消費に大体六〇%以上、三分の二程度、國民の投資に一%強、それから財政の支出と申しますか、財政上の負担に残りの約四分の一程度、こういう配分計画でありまする場合におきましては、私はそう國民の消費なり、投資を圧迫するものとして、とうてい負担し切れないのものであるかと考えますと、そういうことに相ならないのではなかろうか。むしろ戰時中におきましては、國民消費を、一應計算上三分の一くらいに、二割五分から三割五分程度まで切り詰めて、残余の分はほとんど貯蓄と納税の形で、財政及び産業に動員した、こういうようなこともあるのでありまして、そういう点から申しまして、この程度負担が絶対的に負担し切れないというようには見られないのでございます。ただ一面考えますと、今日非常に生産が落ちておるということは、とりもなおさず実質的な國民所得は昔と比べて相当つておる。こういうのは生活水準がそれだけ低くなつておるということであります。そういう場合におきましては、なおかつ二十二、三パーセントの負担というものが、はたして妥当であるかどうかというようなことになつてきますと、これまたいろいろ問題があろうかと思いまするが、しかしながら大体におきまして、その程度負担でございますれば、これは相当私はやはり困難はあろうか思いますけれども、この際として國民生活を著しく圧迫し、そのためにあるいは非常な、何と申しますか、國民の生活に不当な圧迫を與え、あるいは今後の生産にも重大な影響があるというところまで、財政が國民消費の上に、及び國民の投資に、重圧を加えるということには相ならぬのではなかろうか、これは一つ見解でございますけれども、大体さように考えておる次第でございます。なおイギリス等は、たしか四〇%ぐらいまで大体財政負担がなつておるように思います。アメリカにおいてさへも二十六、七パーセントぐらいの負担のように見受けられるのでございます。もちろん英米のごときものはのことにアメリカは生産もぐんと上つております。イギリス等もあまり生産が落ちていないという事情を考えてみますと、必ずしも、比較はできませんけれども、たとえばイギリスにおいて四〇%負担しておるというような事実は、これは相当参考になる数字じやないかと思う次第でございまして、どうしてもこの際相当財政支出はやむを得ない。これをインフレ下におきまして税で賄つていくということになりますと、やはり、ある程度の困難はありましても、これを負担していただくということにつきませんと、この困難は乘り切れないのではないかと、はなはだ愚見でございますが、このように考えておる次第でございます。
  60. 塚田十一郎

    ○塚田委員 御意見をお聽かせ願つたのでありますが、この点に関しては、これは私も実はいろいろ研究いたしまして、私の意見を申し述べて恐縮ですが、私は実は課税はもう明らかに國民の負担力の限度を越えておる。こういうような税を長くすれば、一年、二年は何とかやつていかれるでありましようが、長く押しつけにつれば、結局勤労者も勤労の再生産ができず、事業家は事業の同規模においての生産継続ということができないと、こういうふうに私どもは考えておる。実際について考えてみましても、もう御承知のように、今日では四・四人家族ぐらいの平均の月の生活費は、はるかに七千円を突破しておる。七千円を突破しておりますと、年に八万四千円ぐらいというものは生活費としてかかつておる。しかし八万四千円の所得の人たちに、さらに多くの税がかかつてくると、勤労者の場合に結局生活費に食いこんで税がとられておるということになつておる。これは去年よりも今年は低減されるとしても、やはり結果は同じようになつてまいります。それからまた昨年の税法で営業者の場合を考えてみましてもそうでありまして、東京都の場合におきまして、地方税その他をいろいろ考慮に入れて計算をいたしますと、昨年度は百万円の所得をあげましても、手もとに残るのが、わずか九万円足らず、こういうような状態になつております。このような状態で、はたして企業資本の維持をしつつ、それだけの利益をあげる人が、少くともそれだけの働きに相應する生活をして、同じ規模で生産をやつていけるかどうか。やつぱりこれはやつていけない。企業はだんだんと規模を縮小していかなくちやならないという状態になつておる。そういうように、個々の税をかけられる人の立場から考えてみましても、明らかにこれは負担として限界を越えておるのである。そこで、今いろいろと統計的な数字をおあげになつて御説明になつたように、そうしてまた外國との例を比較してお述べになつたのでありますが、問題なのは、御答弁のうちにもありましたように、日本の生産が非常に落ちておつて、名目的な所得はどれくらいあつても、実質的な所得が非常に落ちておるということが結局問題なのでありまして、二〇%であろうが、三〇で%あろうが、税負担は問題ないのでありまして、二〇%の場合には二〇%とられた残りの八〇%で最低生活ができるかどうか、また三〇%とられたときには残りの七〇%で最低生活ができるかどうかということが問題なのであります。比率はどうでもいいとして、英國の場合に四〇%——私は英國の実例はあまり詳細に研究いたしておりませんので、はたして英國の場合が日本よりもきついのかどうかは申し上げられませんが、少くとも日本の場合だけを考えてみれば、問題は税にとられたあとでもつて、少くとも最低程度の生活ができるのかどうかということ、これが私は問題ではないかと思う。もしそれができないと、そういうことであれば、かりに税負担が一〇%に止まつてつても、九〇%で最低生活もできないということになると、やはりこれは負担の限度を超えておるということを申し上げなければならぬ。それらの点においてどうも少し当局のお考えが徹底していない点があるのではないか。今の状態、つまり税負担が二二%という本年度の状態は、明らかに國民の税負担の能力を超えておると私どもは考えております。從つてこれ以上はどうしても税負担はかけられないとして、これは少くとも昨年の程度には食い止めなければならぬではないかというのが、先ほど來しばしば申し上げました、少くとも取引高税ぐらいはことしはやるのを見合せたらどうかということの考え方の、基本的な考えになつておるわけであります。その点についてもうひとつ主税局長にお願いいたします。
  61. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 今お尋ねの点につきまして二、三のことを申し上げて御参考にいたしたいと思います。一つは昨年に比べまして若干割合は殖えておりまするが、この点は國民の生産も昨年に比べますと若干殖えているのではないか。從いまして國民所得もことしは昨年に比べますると若干はよくなるのではないかと考えております。それに伴いまして、おそらく生活水準も去年全体の平均よりも、若干はよくなるのではないかと見ておるのでありますが、そういう点から考えましても、幾分殖えるということに相なりましても、私どもそのこと自体で、ただちに限界に達しておるということは当らないのではないかと考えておるのであります。いま一つの点は、勤労所得者の場合におきまして、大体四、五月ごろの実質賃金を確保する、こういう建前で税制考え方もできておりますが、このことはやはり現実といたしましてやむを得ないではないか、と申しますのは理論的に申しますと二千四百カロリーの飲食費が全体の生計費の六〇%、こういう有力な一つの主張もございますが、これは今の日本の経済力から申しますると、どうもなかなか実現困難な生活水準でありまして、現在の実際の状況から申しますると、一應安定本部その他でめやすにしておりますところのことしの四、五月ごろの生活水準、実質賃金を確保する、こういうことですべての税をきめていくということは、日本の現在における実際の物資の生産状況、物の供給状況からいたしまして、必要にしてやむを得ないじやないか、そういう点から考えまするとこの税制はそういうポリシーとはマツチしておるということを申し上げておきたい。その政策がかりに今後うまくいかなかつた場合におきましてどうするかというお尋ねであろうかと思いますが、それはその際におつて是正するよりほかない。現在におきましてはあくまでもそれを確保し、実現できるように、あらゆる方途を講じまして努力する。その努力次第によりましては相当実現の見込みがある、こういうことで政策を進めるというよりほかない、こういう点を考えますると、私どもやはり單に國民所得に対する比率が、前年よりも幾らか殖えたということだけで限界点を超えておる、かような見解にはにわかにいきがたいのではないかと考えております。
  62. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ちよつと塚田さんにお諮りいたしますが、大臣が來られましたので、大臣に対する御質問をお願いいたします。
  63. 塚田十一郎

    ○塚田委員 ここで大臣にお答え願うのが適当であると思われるような問題だけ拾つて、二、三税法に関してお尋ねいたしたいと思います。今も國民負担が限度を超えておるのではないかということをいろいろお尋ねしておつたのでありますが、そこで問題は、今度所得税の例をとつてみますならば、一應御軽減なつた——軽減されたのかされてないのかというのは、各委員この間からしきりと議論されておるので、私どもは大体今度の軽減が、少くとも昭和二十三年分についてはちようど現在の所得税法が昨年の三月当時においてあつたと同じような、もちろん、今の所得税は昨年の八月に一應中間的に少し改正をされておりますが、大体同じような状態のところまで來ておるのではないか。重い軽いという議論をすれば、今の税法で昨年の一月ごろの物價賃金状態だと、ちようど今度の改正税法において今の二十三年分の負担程度と同じぐらいになるのではないか、こういうふうに判断しておる。そこで昨年はまことに税が重いということになつたわけでありますが、昨年このように非常に税が重くなつたということは、もちろん税法自体の関係もあるのでありますが、それよりも一年の間に非常にインフレが高進して、物價、労銀、生活費、そういうものがうんと上つてきたということが、現在の税法にその上つた結果の数字がそのまま適用されるということで重くなつたということが、一面に確かにあると私どもは考える。そこで私たちが非常に心配いたしておりますのは、今の物價、労銀、生計費の状態でいけば、大体昨年の三月当時と同じ程度までいつたか。またもし昨年までかりにいかないにしても、ある程度そういう値上り、騰貴というものが起つた場合に、今の所得税法改正をそのままで一年通されるということになると、また明年の三月になつて同じような結果が出てくる、また重いという結果が出てくるということを私どもは非常に心配をいたしておる。そこで政府はもちろんこの政策をお立てになつておる立場上は、何とかしてインフレを止めよう、抑止しようというお考えであられるのでありますから、現在の税法にその先までを見込んでおられるということは万あるまいし、またできないことだと考えます。そこでもし政府が今予定されておるよりも予想外にそういう変化が起つてきたときは、率直にその状態を認めてこの税法をそのときの状態に適当なように御改正になつていただけるというだけのお考えをもつておられるか、この点をひとつ……。
  64. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 先ほどもちよつとお話が出ておつたようでありますが、國民所得と税の重さ軽さの関係というふうなことは、やはり問題になると思いますが、ただいまお話になりましたように、インフレが今後非常に進行するといたしまして、さような場合に國民所得が数量的でなく実効的な價値において減つた、この所得税をどうするというような御質問であつたと思いますが、これは先ほども主税局長が申し述べましたように、今後生産がどうなるかということが非常に大きな問題であると思うのであります。生産がどうなるかということは、賃金、物價の惡循還をさせるかさせないかということにも関連すると思いますが、今の大体の情勢では、生産は今よりも少しずつ伸びていくのではないかという観測をすることは決して甘すぎる考えでもない。内外の情勢から考えまして漸次生産は上昇線をたどるものである、こういう考え方ができると思います。それからいま一つの点は、國民所得に対してある割合の税が重いか軽いかということでなくて、國民所得の家計的な実價値というものが非常に問題になる。この点はしばしば話に出ましたように、現在においては金額的にはこの家計費の——これは全國鉱工業の賃金の水準でありますけれども、これに基きますと金額的に約七〇%から七五%が非配給物資で生活している。すなわち自由物資並びにやみを含むところのもので生活している。この内容が変つてまいりますと、國民所得の実効的價値は変つてくる。これをかえるように努力しなければ賃金物價の惡循環は避けられませんし、またこれが変るようにならなければ、結局インフレーションの緩漫化ははかられませんので、政府の施策としては、この点に全力を盡したい、特に家庭の消費財の供給量を増すように努力したい。現に金額の上において七五%が非配給物資であるといたしますれば、これが六〇%になり五〇%になりますれば、それだけの実價値が生じてくる。從つて國民所得のパーセンテージでなくして、実質的な生活が変る。こういうことになると思いますので、さような方向へ全力を盡したい。これはちようどお尋ねと同じ結果になることになりますけれども、上つた所得税を直すかどうかというお尋ねでございます。これは上らないように努力して、今の所得税で、これで負担が今よりも計数上重くなるということにならないように、ひとつ最善の努力をいたします。こういう意味のお答えを申し上げたいと思います。
  65. 塚田十一郎

    ○塚田委員 どうもたいへん含みのある答弁で、どういうふうに了解していいのかわかりませんが、しかしもし政府が意図されるところと反していつたならば、必ず御改正くださる意思があるものと、一應了解しておきたい、こういうように考えるのであります。そこで次に、先ほど申し上げました納得の行くということの、もう一つ公平に行つておるかどうかという問題でありますが、これがまた非常に公平に行つておらぬのであります。公平に行かないという理由は、これはもうやむを得ない理由もあり、もう少し何とかなるのではないかという理由もあり、非常に多々あるのでありますが、そういう議論は今までに同僚委員から大分出ているから、重ねて申しませんが、これを公平に行くようにどんな方法をお考えくださつているか。これはぜひ公平ということが実現できるように、最大の努力を拂つていただかなければ、同じように今年も反税闘爭、税に対する抵抗というものが出てくると考える。そこで私どもは公平に行くということのためには、やはり主税局の管下には全國の公平を見る何か民間の諮問機関がある方がいいのではないか、財務局の管下には財務局管内の平衡化を見るための同じような機関が要るのではないか、税務署の管内においても、そういうような何か機関がある方がいいのではないか、いやむしろなければならぬのではないか、こういうように考えている。こういう意味のことは、この前私が本会議において緊急質問をいたしましたときにもお伺いしたのでありますが、まだ当時にも、今も答弁をいただいておらぬので、一應ここであらためてお伺いいたすのであります。しかし公平化の方法というものは、單にそれだけには止まらぬと思うのであります。どんな方法をおとりくださつてもいいが、とにかく全國的にも、地域的にも、また個人相互の間においても、何とかもう少し公平に行く工夫をぜひ講じていただきたい、それに対する政府の御用意を伺いたいと思います。
  66. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 後ほど政府委員よりもお答え申し上げると思いますが、この問題はしばしば問題になりまして、納税をめぐつて全國でいろいろトラブルがあつたということも十分心得ております。これらの経驗と、またこれらの事実から反省をもとといたしまして、これは税制度というよりも、むしろ技術的な面に多大の欠陥があつたということを感じているのでありまして、從いましてこれは本会議でも申し述ベたと思いますけれども、まず徴税機構を拡大するということ、それは人手が足りなかつた、それから不慣れの者が割合多かつたというようなことが、納得をして税を納めていくという方向へ行かなかつたという点がございました。それからまた待遇等においても、財務の関係者に対して今までは菲薄であつた、こういう点についても改善すべき点がある。同時にまた一方官紀の粛正すべき点はうんと粛正いたしまして、かようなことによつて今まであつたような摩擦あるいはいろいろな抵抗というようなものをなくするようにいたしたい、こう思つているのでありまして、すでに國会の御承認を得たと思いますが、財務局の手を殖やし、從つて税務署の手を相当殖やし、これに基いて税務職員の再教育をもやつておりまして、今年度におきましては、昨年度経驗したようなことを一つの大きな反省の資料といたしまして、十分に御期待に副うように、公正性を発揮するようにいたしたいと存じておりますが、詳細の点につきましては、主税局長より申し上げたいと思います。
  67. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 昨年度の実際の税務の執行につきまして、いろいろ御批評をいただいておりまして、私ども非常に啓発するところが多いのでございます。從いまして本年度におきましては、そういう事柄のうちぜひ有効と考えられることにつきましては、万難を排して実現するように努力いたしたいと考えておるわけでございますが、一面昨年度におきましてなかんずく痛感いたしましたのは、税が申告のときに納まらないで、年度末の更正決定で一遍に來たというところにも、納税者が実際納税する上において納税しにくいという点が非常に多かつたのではないかということも非常に考えられますので、本年度におきましては、まず第一期の申告の際からできるだけ宣傳と、それから税務署の実際における指導を適切にいたしまして、そのときからできるだけ多くの税額を納めていただくようにしていくということが、一つの有力な方法であると考えているのでございます。それと合わせまして、一方におきましては、やはりインフレ利得等に対する捕捉が十分でなくて、それの結果非常な公平感を失しているということ、こういう方面につきましても、國税査察官等の制度を設けまして、よく徹底するようにいたしたい。いま一つ指摘のように、地域的に、あるいはまた同じ税務署におきましても、担当者によつて若干差がある、こういう御批判もよく受けておりますので、そういう方面につきましても、税務署をできるだけ指導督励いたしまして、できるだけ公平を期し得るよう努めてまいりたい。根本的には先ほど大臣からお話のありましたように機構をこの際整備していくということがどうしても必要と考えておりまして、今大藏省に懇談会を設けまして、各般の方面から出てきていただきまして、根本的に税務署の機構をどうするか、さしあたりどういうふうに改善を加えるかということにつきまして、目下具体的な研究をしていただいております。これについて司令部からも出てきて、相当詳細に研究を遂げつつありますが、そういうことをやりまして、できる限り円滑な徴税を執行するようにやつてまいりたい。それと本年度におきましては、実は税務署の定員から申しますと、相当の定員が認められておりまして、所によりましては不足する所がございますけれども、所によりましては人手が相当あるという所もあるのでございますが、何しろ熟練した税務官吏の少いということが、最も大きな欠陷と考えられます。特に本年度におきましては、簡易講習というものを徹底的に行うことにいたしまして、少くとも二週間ないしは二十日間ぐらい、ほとんど全部の職員に対して代りばんこに講習をいたしていきたい。これがための予算も計上して御協賛を仰ぐことにいたしておりますが、すでにその一部はもはや始めている次第でございます。何しろ最近はいりました多数の若い税務官吏に対して、仕事を早く覚えさせるように、本年度におきまして格段の処理を講じていきたいと思つている次第であります。そういたしまして、税務官吏が待遇も改善され、熟練も加えてまいりますと、今年は昨年のごとき欠陷はよほど排除されまして、相当重い負担であるが、しかし國民の不平少くして納めていただくということが、やや、あるいは私どもの希望といたしましては、相当に改善し得るようになるのではないか、努力の方向といたしましては、著しく改善し得るように、ぜひひとつ努力してみたい、かように考えている次第でございます。
  68. 塚田十一郎

    ○塚田委員 いろいろ苦心をしていただけるということでありますが、もう一應この問題について私が先ほどちよつと参考までに申し上げた、そういうような課税を適正化する意味委員会というようなものを置いていただくということはできないかどうか、重ねてお伺いいたします。
  69. 平田敬一郎

    平田(敬)政府委員 委員会制度につきましは、御承知の通り從來は各税務署ごとに所得調査委員会というものが制度で設けられておりまして、それの議を経てきめることになつていたのでありますが、これも御承知の通り申告制度に改めて、非常に税制度を民主化するという見地からいたしまして、最近廃止になりましたことは御承知の通りであります。委員会制度ということにいたしまして、その委員会に拘束されることに相なりますと、また一面いろいろな問題もございますので、目下のところはつきりした——中央、地方に委員会を設けまして、その議を経たり、あるいはそこに諮問いたしまして運用をはかるというところまでは考えていないのでありますが、ただ末端におきましては、各種の團体等で、まじめな團体等につきましては、課税資料は十分に提供していただき、それから意見をよく聽きまして、できるだけ円滑を期していくようにいたしたい、かように考えております。
  70. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 ただいま本会議が始まるようでございますので、本日はこの程度で散会いたします。     午後四時一分散会