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1948-06-25 第2回国会 衆議院 財政及び金融委員会 第47号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十五日(金曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 泉山 三六君 理事 塚田十一郎君    理事 中崎  敏君 理事 梅林 時雄君    理事 吉川 久衛君       青木 孝義君    淺利 三朗君       石原  登君    江崎 真澄君       大上  司君    倉石 忠雄君       島村 一郎君    苫米地英俊君       宮幡  靖君    小平 久雄君       川合 彰武君    松尾 トシ君       佐藤觀次郎君    田中織之進君       林  大作君    八百板 正君       金光 義邦君    中曽根康弘君       長野 長廣君    井出一太郎君       内藤 友明君    本藤 恒松君       堀江 實藏君    本田 英作君  出席國務大臣         大 藏 大 臣 北村徳太郎君  出席政府委員         大藏事務官   平田敬一郎君         大藏事務官   伊原  隆君         大藏事務官   愛知 揆一君         文部政務次官  細野三千雄君  委員外出席者         專門調査員   氏家  武君     ————————————— 六月二十四日  医師に対する事業税免除請願大石ヨシエ君  紹介)(第一五八三号)  取引高税設定反対請願木村榮紹介)(第  一五八九号)  助産医療に対する事業税賦課反対請願(福田  昌子君紹介)(第一五九〇号)  鍼灸、あんま業者に対する事業税課税反対の請  願外一件(大島多藏君紹介)(第一六一二号)  助産医療に対する事業税賦課反対請願(平川  篤雄君紹介)(第一六一三号)  文学者に対して事業税免除請願佐藤觀次郎  君紹介)(第一六三五号)  家具統制價格撤廃請願大島多藏君紹介)  (第一六四〇号)  木製家具に対する物品税軽減請願大島多藏  君紹介)(第一六四六号)  入場税地方移讓並びに石炭税創設請願(中  島茂喜君外四名紹介)(第一六五九号)  沼津市千本松原地区無償拂下の請願山崎道子  君紹介)(第一六八〇号)  戰災復興並びに学校建設資金のため預金部資金  優先借入に関する請願的場金右衞門紹介)  (第一六九五号)  取引高税設定反対請願冨永格五郎紹介)  (第一七二二号)  農民に対する課税軽減に関する請願清澤俊英  君紹介)(第一七三三号)  木材産業に対する融資順位引上に関する請願(  大森玉木紹介)(第一七四七号)  鏡及び鏡台類に対する物品税改正に関する請願  (大島多藏君紹介)(第一七四八号)  人形及び羽子板に対する物品税改正請願(馬  場秀夫君外二名紹介)(第一七四九号)  大河原税務署新築費國庫補助請願庄司一郎  君紹介)(第一七五〇号)  玩具に対する物品税軽減請願馬場秀夫君外  二名紹介)(一七五一号)  函館專賣支局昇格請願冨永格五郎紹介)  (第一七五四号)  弁護士に対する特別所得税賦課反対請願(明  禮輝三郎君外三名紹介)(第一七六八号)  助産医療に対する事業税賦課反対請願(武田  キヨ君紹介)(第一七七五号)  ラジオ受信機等に対する物品税軽減請願(山  本猛夫君外四名紹介)(第一七八一号)  早場米報奬金に対する所得税金を六・三制教育  資金として地方移讓請願神山榮一君紹  介)(第一七八六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  軍事公債利子支拂特例に関する法律案(内  閣提出)(第八六号)  所得税法の一部を改正する等の法律案内閣提  出)(第九三号)  取引高税法案内閣提出)(第九四号)  学校教育法及び義務教育費國庫負担法の一部を  改正する法律案内閣提出)(第一三六号)  公立高等学校定時制課程職員費國庫補助法案(  内閣提出)(第一三七号)  公認会計士法案内閣提出)(第一五四号)  有價証券の処分の調整等に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出)(第一五七号)     —————————————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 会議を開きます。  軍事公債利子支拂特例に関する法律案所得税法の一部を改正する法律案取引高税法案、以上三案を一括議題としその審議を継続します。
  3. 内藤友明

    内藤委員 委員長にお願いしたいのでありますが、地方財政のいろいろな関係法律が向うの委員会に行つておるので、その資料を一應いただきたいと思うのであります。これがこの法のいろいろな税制審議関連がありますので、ぜひそれを私どもにも御配付になるようにお世話願いたいと思うのであります。
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 お答えいたします。ただいまの件は地方制度委員会の方へ連合審査をしてもらうように申し込んでありまして、いずれ日取りをきめて御連絡があると思つております。なおただいまの資料の件も附け加えて申し上げておきます。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 現在一番問題になつておりますのは、今度の予算の中で労働賃金の三千七百円ベースであると思うのであります。すでに三千七百円ベースは実際に崩れつつありますが、今度新しい物價改訂ができまして、勤労大衆も今度の三千七百円のベースでどうしてやつていけるかというようなことで、非常に問題を起しておりますが、これに対して大藏大臣は、この三千七百円ベースではたして乘り切れるかどうかということに対しまして、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  6. 北村徳太郎

    北村國務大臣 三千七百円ベースで一貫してやれるかどうかということは、予算全体につきましてかような安定を欠いておるような経済状態におきまして、年間を通じての予算を確実に編成できるかということも一連の関係をもつと思うのであります。それでこれは政府がもし多少ずるい考えをもちますならば、現在の物價のままで予算を組んで、適当な時期に追加予算を出して、漸次これを延ばしていくというような手があると思いますけれども、さようなことをいたしましたのでは一貫した政策がとれませんので、一應見透しをつけて年間予算編成した。但し編成にあたりましては、ただいまお話がございました賃金問題がどうなるかということはきわめて重大な関係をもちますので、われわれ今回の予算を通じて、賃金物價並びに財政の均衡的な総合性の上にこの予算編成したのであります。しからば今回の賃金維持できるかどうか、三千七百円を出した根拠確実性があるかどうかを檢討されると思うのであります。これにつきましては御承知通り、われわれが予算編成いたしましたときの入手し得る限度の材料を手に入れまして、これは物價廳において相当精密に計算をいたしたのでありますが、三月現在の全國鉱工業平均賃金を出して、これに対して官公職員は勤務時間の相違がございますから、八分の六・六とこれを計算をし直して、但し一般鉱工業においては一部物品給與があり官公職員にはそれがございませんために、それを一二%として修正を施しまして、これに対してさらに現在の生活実態からくる家計の内容を計算して、これは大まかでありますけれども、大体金額においては七五%がやみを含むところの自由物資入手しておる。二五%程度が大体マル公である。もつとも量の面から見ますと、それは逆に六五%がマル公であつて、三五%が非配給物資であるということになりますけれども、これは物の分量から見た場合であります。家計費貨幣の量で申しますと、先に申しました七五%が非配給物資——やみを含むところの物資であるということになります。かような点をいろいろ取捨いたしまして、それに三月現在でございますから、その後の趨勢というものを見なければならぬ。趨勢の値を出すことにおいて、これはいろいろの根拠があると思いますけれども、その趨勢値を出したその金額が、結局ただいま問題になつております金額になつたのでありまして、問題はこれから先の見透しが、その案の通りいくかいかぬかということになると思うのであります。ところがたまたま、まだ正式には発表されておりませんけれども、一部の統計では四月末現在の統計においては三千七百円を少し超えておる。こういうことが問題になりまして、だからこれは維持できぬじやないかというような議論が出ておりますけれども、われわれ予算編成の場合には、すでに統計的事実となつたものだけではどうしてもこれは成り立たぬのでありまして、ある事実の基点の上に立つて、それから先の見透しをつけなければならぬ。その見透しが妥当であるかどうかということが問題になりますけれども、私ども考えといたしましては、今後インフレーシヨンを收束させる方向努力しなければならぬ。またそれが可能である。そうして経済を安定させなければならぬ。いつまでもインフレーシヨンがどんどん進行して安定が來ないのだというような考え方をしてはならぬ。今の内外の諸條件は安定の途を努力さえすれば求め得られる。かように考えておりますので、從つて三千七百円という名目賃金が、実質的に維持できるかどうかということでなければならぬ。インフレ進行がどんどん加速度的にまいりますれば、これは維持できぬことは明らかであります。けれども主として消費財入手がどうであるか。ただいま申しましたように現在われわれ計算の場合には非配給物資は七五%であつたが、これが漸次減つてくる傾向は確実に認められる。そうすると逆にマル公配給の割合がだんだん殖えてくる。かようなことが期待できるといたしますれば、賃金の実効的な價値というものは高められてくる。必ずしも貨幣数量ではない。こういうような観点をもつておりますのと、これからの見透しとしては主として消費財入手が輸入その他の点から可能である、その他生産の一部を増すとか、いろいろな面から考えまして、今よりも惡くなるということを予想しない。こういう考え方をいたしておるのであります。それでこの考え方基礎として全体の見透しをいたしまして、今回の物價の引上げ並びに税制改革等計算の中に入れまして、これで維持できるということを立てたのでありまして、私どもといたしましてはこれでやつていける。同時にこのことをやつていくためには、生産を増張しなければならぬし、インフレをもつと緩慢化しなければならぬ。そのことが可能であるかどうかという点でありますが、これは可能であるという立場に立つておりますので、心配はないと、こういう考えをいたしておる次第であります。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 一應大藏大臣の説明は大藏大臣としては納得できるのでありますが、われわれ國民といたしましては、現在のようなインフレの高進が、今度の予算の執行の過程において食い止められることは望ましいことでありますけれども、そういうような一方的な樂観論がはたしてできるかどうかということは、これからの推移を見なければわかりません。私たちは少くとも現在の状況におきましては、この三千七百円ベース予算の上には適当に組まれるであろうけれども、おそらく労働攻勢が七、八月になれば相当に起きてくるということは、火を見るよりも明らかであります。そういうような点を勘案しまして、大藏大臣はこの次にくるところの賃金のための追加予算のことをお考えになつておられるかどうか。また次にくるこの三千七百円ベースに加うるに、どんな程度において新しい賃金ベース考えるかということにつきまして、腹案があられるかどうか、お尋ねしたいと思うのであります。
  8. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ごもつともなお尋ねでございますけれども、これは結局三千七百円という貨幣数量的な賃金が、どれだけ実効的な價値をもつかということが最後の問題になります。その点においては、インフレーシヨン進行を抑え、これを緩慢化し、生産が漸次増強されるよう、また企業その他のものが次第に整備されるというようなこと、いろいろな明るい條件をたくさん今もつておるわけでありますし、これはもちろん労働者各位協力を必要とするし、その他國民全体の安定への努力というものを予想しなければなりませんけれども、われわれといたしましても、そういう方向にみんなの氣持を導いて、そうして協力して日本経済を安定さす、そういう態勢が固まることはもちろん必要であるが、そういう方向に向けていつて、これが空念佛に終らないように物資の裏づけを保ち得る。そういう方向に全力を盡してやる。單に三千七百円の維持ができる。維持ができれば賃金物價の惡循環をその面で抑えることができる。そういうような方向にもつていかなければ、日本経済はいつまでたつても安定しない。かようなことは單なる空漠たる希望でなくして、私どもの今もつておる考え方はこれは実行に移し得るものである。こういうふうに考えておるのでございます。從つて労働攻勢がどうなるかわかりませんが、そういうことにならぬことを願いますし、また実際労働者の國の復興並びに経済再建についての強い協力を求めたいと思うのでありますが、そういう意味実質賃金としての確保は、われわれは最善を盡して努力する、こういうつもりであります。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これも違つた観点からでありますが、現在農村におきまして一番問題になつておるのは土地改良費増産一割に対する土地改良、また農村復興政策でありますが、そういう点について今度の予算を拜見いたしますと、非常にその方面が稀薄だと思うのであります。大藏大臣食糧増産のような問題につきまして、どれだけの考え方をもつて今度の予算に当られたかを、簡單に御説明願いたいと思うのであります。
  10. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これはたとえば、農業生産のためにどれだけの金を使つておるかということを、ただいまここではつきり申し上げることは、ちよつと数字をもちませんけれども公共事業費等を見ましても、これは昨年度に比べてその金額が殖えておりますし、また物價値上り等は別といたしまして、事業量においても殖えておる。どうしても農業生産を増張しなければならぬという日本の運命的な課題に対しては、これに対して努力するのは当然だからであります。ただ思うように財源がないという点は、はなはだ殘念でありますけれども、その乏しい中でさような方面、災害を復旧し、再生産を増強さすというような点とか、いろいろな点から考え農業方面への努力というものはいたしておりますし、また努力いたしたい。その他農業金融にいたしましても、当面の問題、あるいは恒久的の問題等々について相当具体的な考えをもつて実行に移そうとしているのでありまして、決して農業の問題を閑却しておるようなことはありません。のみならずそのことの重大性は十分心得えて立案をいたしたつもりであります。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 その土地改良の問題につきまして、今度の予算においては非常にわれわれは少いと思うのでありますが、將來こういう方面について、大藏大臣から最も積極的な意味において、食糧増産のために土地改良というものに対して考えていただけるかどうか、実は私どもの方へ農村から來る陳情というものは相当多くありまして、開拓事業に費すよりは、むしろ現在の土地改良によつて食糧増産をしようという声が非常に盛んであります。特に私は愛知縣でありますが、実際の米作地帶では、現在のような状態になりますと、結局いくら増産の声を言いましても、現在の土地改良費がありまに少いので、とてもこのままでは百姓はやつていけないというので、実はたくさん土地を捨てる百姓もだんだん殖えております。特に海岸地帶におきましては、昨年のように雨が少いと塩害があります。そのために非常にたくさんの土地がむだになつておるのであります。そういうような意味において開拓事業も必要でありますけれども、現在の状態におきましては土地にもつと金を入れる。土地改良河川工事とか、あるいは排水機揚水機、そういうような問題につきましてもつと力を入れていただきたい。予算を組まれます大藏当局におきましては、農林省あたりの要求もありましようが、現在の日本状態におきましては、何としても食糧を確保することが日本再建に一番必要であると思います。そういう点において今後もつと土地改良のために、ぜひとも大きな予算を割いてもらいたいということは、だれが農村回つてもわかることだと思うのであります。そういう点について大藏大臣に特にそういう方面に力をいたしていただけるか、重ねてお尋ねしたいのであります。
  12. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ごもつともな御質問でございまして、食物を外國からもつて來なければならぬほどの日本の実情でありますから、農業生産を増大することに努力をいたすべきが当然であります。新たに開拓をするということも必要でありますけれども、現在のものに改良を加えて、その増産に役立たせるということは非常に必要である。その点は全然同感であります。今後とも農林当局と十分緊密な連絡をとりまして、そういう方向努力をいたしたい。
  13. 堀江實藏

    堀江委員 大藏大臣お尋ねしたいのでありますが、昨日の新聞に物價値上げのことが出ております。物價値上げの問題は税制の改革なり、あるいは本年度の予算関連するものでありますが、そのうちで運賃関係する木材であるとか、石炭であるとか、いわゆる第一次價格の発表であります。そのほかの電氣であるとか、ガスであるとか、あるいはその他のものについては、相当な大幅な値上げになつてつたのですが、それは予算財政改革とどういう関連においてなされたのでありますか、自分らの考えとしては当然予算あるいは税制改革、そうした問題と関連性があるべきものである。それがあつて初めてそうした物價値上げが行われるとすれば、行われなければならないと考えるのでありますが、どういう点でそうした決定がなされたのでありましようか、これについてまずお伺いいたします。
  14. 北村徳太郎

    北村國務大臣 物價値上げが昨今にきまつたのではなくて、予算編成の際にこの現状でやつていけるものではないのであります。これは御承知通りであります。年間予算編成するにあたりまして物價問題をどうするか、賃金その他をどうするかということと同樣にきわめて重大な問題でありまして、一應このことに対してある決定をいたしませんと予算が組めませんので、從つて今回発表したものは予算編成上の一つの標準として、物價はどれほど、賃金はどれほど、かように決定をいたしたものに基いて、そういう前提をもつて予算を組んだのでございますから、今度発表したものは、予算の方が少し私どものまあ希望した期間に、十分御審議が完了になるかどうか、スケジユールなどは多少勝手にこちらでこしらえておつたのでありますが、なかなか事は重大であるし、そう簡單にはまいりませんので、從つてそういうような前提で組んだ予算物價との関係を多少調節しなければならない。それであまり遅れてはいろいろな障害を來します。特にまた、同じいろいろの物の値上りでも、鉄道運賃ども政府といたしましては、あの発表したような運賃値上げ通信料金値上げ、そういうものをやることを前提として組んだ予算でございますから、これが予算予算でそういうふうにきまつており、値上げの方が著しく遅れるというようなことになると、これは全体に影響することが非常に大きくなつてくるので、この辺で、未だきまらざる鉄道運賃等は、これは法律的な措置を要しますから、後回しにして、法律的な措置を要せざるものについては、予算に組んだところの物價というものをまず檢討いたしまして、発表すべきものは発表した方がいい、発表しないとかえつて思惑等による品物の停滯、あるいは乘るべきルートに乘らないというようなこともございますから、むしろこの際進んで発表した方がよいというような観点から発表いたしたのであります。
  15. 堀江實藏

    堀江委員 この問題については、これの是非についての議論になりますので、後の討論の際に讓りまして、次にお尋ねしたいのは三千七百円ベースの問題であります。これについては、中曽根委員及び佐藤委員からも質問があつたわけでありますが、政府予算基本であるところの三千七百円ベースは崩れておるということは、総理廳統計の四月の賃金平均が三千六百七十円であるという発表によつても明らかでありますし、また五月、六月のやみ物價騰貴が八%、政府は三千七百円ベース基本としては三・六倍のやみ物價騰貴を見込んで、三千七百円ベースを組んでおる。全官公廳や何かにおいては、物價値上げをせぬ場合において五千二百円ベースを要求して、それで今政府との交渉にはいつておるということは御存じの通りでありますが、そうした確定的ならざる基礎に立つ三千七百円ベースというものは、必ずこの予算の組替が必要であるということを予想されるわけであります。特に三千七百円ベース関連して一番重要視しなければならないのは、米價の問題であると思うのであります。米價は、昨年度千七百円の米價生産費を割る米價であつたことは、農村の囂々たる非難によつても明らかであり、当然去年の約束からしまして、物價の補正をした場合には米價を上げるということは、前の安本長官もはつきり説明されております。過日食糧管理局長官がこの委員会においでになりましたときに、大体想定はどういうようなお考えであるかということを質問しましたところ、大体現在の米價の二倍程度を想定しておるというお話であつたのでありますが、米價は当然生産費を償うところの米價値上げされなければならないし、またそれが今後の政府手持米数量だけの還元は、農家に当然なさなければならないわけでありまして、米價の改訂ということは、当面農村の要請に対して政府は当然責任をもつてとるべきことである。そうしたならば、米價はこの際改訂されなければならないし、されるであろうと思います。米價が改訂された場合に、賃金の上に相当なウエイトがかかつてくるということに対しまして、その米價が改訂されるということにおいても、三千七百円ベース維持できぬのじやないかというふうに考えておるわけであります。大臣としましては米價に対してどういうふうにお考えになつておるか。米價上つた場合に対しては、三千七百円ベースはどうであるかという点についての御見解お尋ねいたします。
  16. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは基本的な問題は前に佐藤委員お尋ねにお答えした通りでありまして、そのことの中に全体が含まれておると思うのであります。米價だけを取上げて、米價がこうなつた場合はどうするかというようなお尋ねでありますが、むしろそれより先に、三千七百円ベースはすでに崩れた、こういうふうにおつしやつたのであります。しかし、私どもは決して崩れたとは思つていないのであります。まず第一にその観点が違う。崩れたとは一体どういうことか。私どもは崩れておらぬということを確信しておるのであります。その点から問題を解いていつた方がいいのではないか。かように思うのであります。
  17. 堀江實藏

    堀江委員 三千七百円ベースは、大体政府立案基礎は、消費資材の七割値上げ、つまりパリテイー計算による百十倍の基礎に立つておるわけでありますが、当然予想されることは物價が七割程度に止まつていないということであります。さつきもちよつと申し上げましたように、三・六倍のやみ物價値上りということを基礎にしてあるということの発表でありますが、現在五月においても八%のやみ物價値上りになつておるということは、統計発表があつた通りでありまして、この点からもすでに崩れておる。いろいろな統計によりますと、大体千八百円ベースよりも三千七百円ベースは、現在の状態においては二割程度実質賃金の低下になるということを発表されております。私らはこの三千七百円ベースは崩れておる。これは当然追加予算で組替えられなければならない問題であると思う。もちろんこれは、今後の労働攻勢といいますか、そうしたものによつて当然はつきりした姿が現われてくるわけでありますが、現在の諸統計におきまして、すでにわれわれは崩れておるという見解をもつておるわけであります。
  18. 北村徳太郎

    北村國務大臣 まずその前提が違うと思うのであります。私どもはさようには考えておりません。それで一應の將來の趨勢というものを観測しなければ、年間予算というものは編成できません。ある点は的確な統計的事実を押える。それから先は、趨勢を考慮いたしまして、それに基いて見透しをつけるということであるのでありまして、的確な統計基礎がなければ予算編成ができぬということであれば、これでは予算は過去のものであつて、將來の予算はできません。三千七百円は妥当であるかないかということは、いろいろの観点から計画をいたしましたので、われわれが計画立案いたしましたときには、確実なる資料に基いておることは申すまでもないのでありますけれども、それから先は、國民経済全般の見透しの上に立つて、その見透しをどう見透すかということが、この問題が実質的にできるかどうかということをきめるべき一つの材料になるわけでありますから、その見透しのいかんにかかつておるのであります。從つて簡單に四月の統計がどうであつたとか、あるいはやみ物價値上り統計がどうだというようなことだけで、もし動搖するならば、いかなる場合にも予算は動搖いたします。さような観点には立つておりません。國民経済全体の上に立つて勘案し、さような観点から將來を見透しておるのでありますから、私は、ただいまの三千七百円ベースが、まず今回の予算基礎になつておる以上、これは堀江君のお考えとちよつと見解が違うので、前提が違いますから、從つてこれは論議いたしましても、だんだん違つた方向へ向くということは当然であると思います。なお念のために申し上げますけれども、私どもは、今回の予算編成にあたりまして、賃金物價が、財政の均衡の上に立つて國民経済基礎の上において予算編成いたしましたので、從つてまたこれは内外の諸情勢等を考えまして、今後の生産の状況、あるいは消費材の入手の状況、それへの供給量がどうなるかというようなこと等を併せて考えておりますから、実質的な賃金というものは維持できる、こういう観点に立つておるのであります。從つて、ひとり米價だけを取上げて——米價はどうなるか、これはまだ閣議で決定しておりません。米價の問題は研究しておるのでありますけれども、重大でありますので、米價はどう処理するかということはまだ決定しておりません。從つてこれはただいま申し上げる程度に至つておらぬことは、はなはだ残念でありますけれども、ここで申し上げる程度に至つておりませんので、さような点を一應の御考慮を願えれば非常にさいわいである。かように思うのであります。
  19. 川合彰武

    ○川合委員 議事進行について。三千七百円の賃金ベースの問題は、もうこの委員会において、きのう、きようにかけて、それぞれ安本長官大藏大臣質問が集中されたわけであります。そもそもこの賃金ベースの問題は、この委員会のみならず、予算総会あるいは労働委員会において相当に論議が盡されており、しかもこの問題に関する各閣僚の意見は、從來の閣僚の意見と違つて、いずれも判で捺したような答弁であります。そのことは相当に統一した答弁を用意し、またそのことはとりも直さず政府が相当の覚悟をもつてこの問題に当つておるということを意味するのではないかと考えるのであります。われわれはかつて片山内閣時代において、当時の安本長官の和田君の十一月黒字説を信じた。與党のためにこれを信ぜざる得なかつたのでありますが、それが遂に破れ去つたために社会党は不評を買つたという苦々しい経驗があるわけであります。この三千七百円の問題に関しても、われわれもまだ衝きたい点もかなりありますけれども、そういうように政府が各閣僚の意見を統一して、断々固としてこのベーシスを維持していこうという政府のこの熱意と方針に対しましては敬意を表するのであります。しかしながらそれによつてわれわれはこの三千七百円というものが問題がないとは思いませんけれども、現在委員会に課せられた問題は、すでにそれ以上に当面のわれわれの問題として、重要法案が山積されておるわけであります。從つて同じ賃金ベースを衝くにいたしましても、そういうような水掛け論的な議論よりも、所得税の減免とか、あるいは取引高税の問題とか、別の角度からこの問題を十分に政府に追及し得る問題があろうと思うのであります。從つて三千七百円というような抽象的な賃金ベースという角度からではなく、そのそれぞれの税法を追及するという面においていくべきじやないか。そうでない限りにおきましては、この法案の審議がなかなか遅々として進まないということを思うからいたしまして、そういう賃金問題というような角度からの論議は、ある程度で打切られんことを望みたいと思います。
  20. 堀江實藏

    堀江委員 米價の問題と三千七百円ベースに問題については重要な問題だと思うのです。農村はこの程度米價について非常に大きな不満をもつておる。これは全國農民大会の輿論になつており、米價の引上げということは熾烈な要求になつておりますが、農民の至上的な要求であるところの米價の引上げを、こうした物價補正の際も考慮しない。またその決がついていないということは、政府はあまりに無責任である、こう感ずるわけであります。これは非常に大きな問題でありまして、
  21. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 お靜かに願います。
  22. 堀江實藏

    堀江委員 米價の質題がまず決定されなかつたならば、物價の補正は無意味であると私は解しております。また米價値上げをどの程度にするかということは、他物價に及ぼす影響が至大である。これを政府はおきざりにしておくということは、ほんとうにこの予算を遂行する熱意があるかどうかということを疑うものでありますが、これはまだ政府できまつておらぬということでありますので、早急にこれはきめるべきであるということを希望いたしまして、次の質問に入ります。  本年度の予算全体はどうであるかということは別といたしまして、税制改革の大要を見ましても、これは資本擁護であり、大衆收奪の税制改革であるということははつきりしておるのであります。というのは所得税の税率を引下げておることは事実であります。しかし引下げておるが、今度の物價補正において、ほとんど去年の税制改革から三倍以上になつておる、基礎控除は三倍になつておるから、基礎控除を引上げたということは、何ら引上げたことにはならない。物價値上げと同じ率しか基礎控除も引上げになつておらないということ。それからこの税制改革が直接税中心より間接税中心に移りつつある、それは大衆課税を意味しておるという一つの事実が現われておるわけであります。法人税を減免したということについては、昨日安本長官が、この目的は資本の蓄積である。資本の蓄積のために法人税の減免をやつたという答弁があつたわけでありますが、この点を一つ。それから勤労所得税、あるいは所得税の税額を引下げたとしても、片一方に大衆課税の性格をもつと多く含んでおる、噐々たる反対があるところの取引高税というものが創設された点。そうして物品税においては高級品の税率を下げて、生活必需品であるところの砂糖、マツチを大幅に引上げておる点。労働者や勤労者なるもののほとんど必需品とも言うべき酒税を大幅に引上げておる点。清凉飲料税及び砂糖消費税等を引上げておる点。こうしたことを一見してみて、これが大衆收奪の税制改革であることは否み得ない。事実が証明しているわけであります。これは非常に現在の日本民主化の線と反対の線をいつておる税制改革であると考えるわけでありますが、大臣におかれましては、こうした大衆收奪的な御傾向を是正される御意思があるかどうかということについてお尋ねしたいと思います。
  23. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの堀江君の御質問と同樣の要旨のことを共産党の徳田君もおつしやつた。これは私は、大衆收奪はもはや決定的のものであるというような、そういう論断はたれでもきまつておるような話を承りましたが、私は寡聞にして今日まで徳田球一君以外から伺つたことはないのであります。それで一般國民は必ずしもさようにはこの問題を受取つていない。勤労所得税の大幅引下げは、やはり相当効果があるというふうに受取られておると思うのであります。それで大衆課税の問題でありますが、これは大衆とは何であるかということが問題になると思うのであります。大衆とは一体何であるか。今日のような日本の國情においては、八年間戰い、戰いに敗れてそうしてほとんど産業資本が失われ、財閥は解体された。ほとんどいわゆる旧來の資本家という資本家はなくなつておる。ほとんど全体が大衆化しておる際に、大衆に税の負担をしてもらうということは今日の日本の國情においては、これは大正年間とは違うのであるから、ある程度やむを得ない。また今日間接税に直接税が移行したと言はれますけれども、これはどこでも敗戰國が経過しなければならぬ一つの悲しむべき運命でありまして、直接税を体系として單純なる税制をもつて一貫したいことは、われわれの願いであります。從つて間接税に移行したというよりも、今の國情、段階においては、間接税的のものにおいて、大衆に負担してもらうべきものは負担してもらうという建前においてはやむを得ない、かように考えておるのでありまして、これは大衆收奪であるとか、資本家擁護であるということは、私は階級的偏見と申してよいのではないかと思うのであります。お前どう考えるのかというお尋ねでありましたから、私は毛頭さようなことは考えておらないということをお答え申し上げます。
  24. 堀江實藏

    堀江委員 税制改革の点につきましては意見の相違であると思いますので、これは次にします。それから次に農業所得税の問題について質問したいのであります。農業所得税が苛酷なものであるということは、総司令部のデヴイス課長が新聞に発表しておつた通りであります。農村が重い税金のために非常に大きな衝撃を受けており、デヴイス課長が言つたように、土地改革もこれによつて阻止されるのではないかと言つております。またいろいろの統計においても農村の預金というものは非常に減つておる。所得税を拂うために借金した人の実例を、私は農村に帰つて多く知つております。農業所得税につきましていろいろな遺憾な点が多いことについては、昨日も内藤委員からいろいろ質問があつたわけでありますが、私は一番この農業所得税について不合理と考えるのは、家族労働の問題であります。かりに一町歩の耕作をやる場合においては、三人くらいの人員がなければ農業経営ができない。しかるにかかわらず、家内労働については基礎控除もない、扶養家族もない。そうして三人で收穫した金というものは全部に所得税がかかつてくる。そうしてその三人の生活費というものはその所得から拂わなければならないという実情でありまして、今度の税制改革においてはこうした点が改正になつておりません。当然これは三人家内労働があつたならば、三人は基礎控除を認めるか、あるいは自家労働を経費に見積らなかつたならば不合理ができてくるということは、現実に状況が現われているわけでありますが、こうした農業所得税に対する家族労働の点につきまして、何か御考慮される御意思があるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  25. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 農業所得の問題につきましては、昨日内藤委員からお尋ねがございまして、大体御説明申し上げた次第でありますが、昨年の実際の平均負担を調べてみますと、農家一戸当りの負担は、大体六千円前後ではないかと考えておる次第であります。全体として見ますと、必ずしも過重ではない。これくらいの負担は、昨年度における勤労所得者の実際の負担ならびにその他の一般の負担からいたしまして、私どもは財政の危機を救うためには、やむを得ないというふうに考えておる次第でございます。ただ一部の地方におきまして、相当調査に粗漏の点があつた事実につきましては、訂正するにやぶさかでないということは、前から申し上げておる通りであります。それから昨年度といたしましては、実は昨年末になりまして、予期しないときに一遍に相当の負担がきたというところに、いまひとつ負担過重という感をもたした理由があつたと思うのであります。こういう点につきましては、今後におきましてお互いよく所得税の内容をわかり合つて、早いうちから納めるということにいたしますれば、比較的納めやすく、納めていただくことができるのではないかと考えておる次第であります。それから農業所得の家族労働の問題でございますが、この問題は結局におきまして家族労働によりました收入を、農業所得として課税することがいいかどうかというような問題になるかと思うのであります。私ども考えといたしましては、やはり農業所得、営業所得等は、勤労と資産を協同した所得でありまして、やはり家族労働によつて得た收入というものは、所得税の課税の対象にすべきものである。從つてその点につきましては、特段なる処置を講ずるということは、合理的でないと考えておる次第であります。
  26. 宮幡靖

    宮幡委員 時間の関係がありますから、大藏大臣に要点だけお尋ねいたします。  今度の税制改革を眺めまして、第一番に心配になつてならない点がございますが、これは実際問題といたしまして、税收の時間的ずれが相当大きいのではなかろうか。從つてかりに七月からこの税法が施行されまして、一期ごとに八百何十億の税收を確保してまいらなければ、時間的ずれは除くことができないわけであります。元來申告納税主義というものを採用せられましたことは、所得の発生の時期と、納税の時期とをきわめて近接せしむるという趣旨であつたのでありますが、不幸にいたしまして、昨年の実際におきまして、相当これがずれておりました関係で、ついに二十二年度の年度末に押されまして、たとえて申しますならば、三月末日の日附をもつて調定いたしまして、税額の実收が二十二年度の歳計締切りまでにはいつておらぬ。かようなものも相当額あるであろう。と同時に、本年改正しました税法が実施されました場合に、そのずれがどんなふうなお見込みで及んで行くのか。二十二年度の繰越しと二十四年度へ押されてまいりますものとが、実質的に均等額であるならば、あえて憂うべきものではありませんが、もしそこに狂いがあるといたしますと、税の改革がインフレを助長することになります。なぜかと申しますならば、予算の成立によりまして、一應國庫の支拂金のために、一時借入金等の方法によりまして、政府支拂いが市場へ出ます関係上、一應それがインフレを高進させる原因となります。大きく申せば財政インフレの一つの原因となるであろうと思います。理想から言えば、所得が発生したものをすぐ税でとる。しかして環流して政府支出にあてがわるべきでありますが、その逆の状態が最もはなはだしい面で現れるのではないかと心配しております。この点に対する大藏大臣の所見を承りたいと思います。
  27. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの宮幡委員の御質問は、きわめてごもつともでありまして、私どももまつたく同感であります。ことに昨年は徴税と歳出とのずれが相当金融面にはみ出したという事実がございますので、本年はこれを調節するために相当力を入れたいと考えております。またお説のように申告税というものが、実はまだ十分に熟していない。それで申告制度の妙味というものが少しも発生しないうちに、時間的なずれがきてしまつたというような事実もございますので、これにつきましては、租税に関する一般の考え方、並びに申告税等に熟していただくような——語弊がありますけれども、啓蒙運動的なものをもつとやつて、税の本來の性質というようなものを、周知徹底させると同時に、租税に関する倫理的な考え方も高揚する必要が非常にあると考えるのであります。全体としてはわれわれの及ぶ限りの時期的な調節を講じたつもりでありますし、実施にあたりましては、昨年の例が再び繰返されないように、十分時期的の調節には努力したいと考えておるのでございます。これはやはり税について御專門の宮幡委員にも、今後かような面において御努力を願いたいと実は思つておるわけであります。より詳細なことにつきましては主税局長よりお答えいたします。御心配になる点は、私も心配しておるところで、ここからインフレを起してはならないということを、非常に強く感じておりますから、さような方向へいきたいと考えております。
  28. 宮幡靖

    宮幡委員 もう一つお伺いいたしますが、ただいまの大藏大臣の御答弁は私の満足するところでありまして、われわれも確定いたしました予算と税の実施にあたりましては、政党政派の観念を超越いたしまして、できる限りの協力をいたしたいと念願いたしておるものであります。予算の面に現われましたいわゆる補給金の五百十五億というものは、生産を起すあるいは基礎産業を振興させるという一つの政策の面から眺めますと、ことごとく肯定しなければならない。また物價改訂をある線で抑える。かようなこともインフレを克服する政策関連的のものとして当然考えられることでありますが、税の面から眺めますと、五百十五億という補給金が脱税的な意味を含んでおるように考えられるのであります。物をかりに自由販賣にしたといたしまして、その企業に所得が発生いたしますならば、その所得は何らかの形で課税の面を通らなければならないのでありますが、いわゆる赤字を補給するという関係で、五百十五億という政府支拂いは、赤字の單なる補填となりまして、現行の課税という面にさらされることがありません。農業所得に対しまする奬励金とか補給金に対して、國民協同党の委員の方から、これは課税の対象とすることは間違いであるというような御質問も先般ございまして、これは課税すべきである、かような御回答もあつたわけでありますが、その点について補給金の額が多くなればなるほど、これは課税の面をくぐらない一つの收益が企業体にもたらされるという弊害が多いのではないかと思いますが、この点に対します大臣の御所見を伺いたいと思います。
  29. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 私から先にお答えいたしまして、その上で大臣から御答弁申し上げます。今のお話の中で價格調整補給金の交付によつて所得がどうなるかという御質問があつたと思いますが、このうち御指摘のように、石炭とか鉄鋼とか、そういういわゆる安定帶物資に対して補給される部分、この部分は大部分が結局におきまして企業の合理的な採算を確保するための補給金となりますので、普通の経営でございますれば、その段階におきましてそれぞれ適正な、若干の利益は残るということになるのであります。かりに赤字の場合において補填した場合におきましても、その金というものは結る局労働者に対する支拂賃金になり、あいは原材料に対する支拂資金になる。こういうわけでやはりそれぞれどこかの段階におきまして課税するということは間違いないと思います。御指摘の最後の農業者に対する一種の奬励金の場合でありますが、この場合は結局最後の所得者の段階におきまして、それだけの奬励金が参るということになりますので、この場合は明らかにそれだけプラスされまして、その段階に現われる。大体そのようなことになるのではないかと思います。
  30. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいま政府委員から御答えをいただきましたが、別に政府委員を忌避する意味ではないのでありますが、大藏大臣に伺いたいという私の趣旨は、なるほど赤字を補填して殘れば課税になる。これはわかりきつた道理であります。これは何も苦しんで考えてもおりません。要するに企業の赤字発生が、補給金がもらえるために強いて赤字の計算をする会社がはなはだ多いのであります。これを價格の面において自由に販賣して、その企業の採算を自由にやらしておきますならば、必ず課税の面をくぐつてくる。補給金は税金はとれない。しかも企業の能率を低下させるというところにおいて、百億とか百五十億という程度でありましたならばまだしも、五百五十五億というような巨額の数になつてまいりますと、大いに考えなければならない。この点について物價改訂の問題と、税の面から眺めました補給金の特異的な存在について、大藏大臣の御意見をお伺いしたいわけであります。
  31. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ごもつともと思うのであります。赤字金融をいたしておりますところは、申すまでもなく政府物價政策のために赤字を出しておる。從つてあるときには補給をもつてこれを補填するということになることは、やむを得ないのでありまするが、しかし御指摘のようなことが絶無とは思われぬ点もあるようでございますし、最近われわれの方といたしましても、赤字金融をいたしているということについての、大藏省としての監督権を強化する必要を感じております。はたして会社赤字というものの原因が、單に價格構成の点においてのみ出ておるかどうか、会社自体がもつ弱体のために出ておるか、会社の内藏する弱点が何であるかというような点をきわめないで、赤字が出るから補正するという意味の價格補正では、どうしてもいけない。これは御指摘の通りであります。実はある種の事業等につきましては、最近特に監査隊を派遣しております。相当これは嚴格な監査をやりつつありますが、やはりやつてよかつたというような結果も若干現われておりますので、かようなことにつきましては適当な機会にこの委員会において、あるいは祕密会でも開いて懇談するようなことになるかと思いますが、御指摘の点は十分考慮しておりますから御了承願います。
  32. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいま大藏大臣の御答弁は、本委員会の一員といたしまして、きわめて満足する者であります。よろしく大藏大臣の御意見の通り、行政面におきましてあらゆる適切なる御施策の上に、大藏大臣の目標とせられますような方途が達成せられますように切望してやみません。  次にもう一点簡單なことをお伺いしておきます。こまかい点は政府委員にお尋いたしますが、根本方針といたしまして、有價証券移轉税の改正がありまして、ただいま御承知通り特株整理委員会に処理されております、あるいは証券処理調整委員会によつて近く放出されようとしております、いわゆる開放株、物納株、いろいろなものがあります。これらの株の処理につきましては、相当大きな金額が市場に流れて出るわけでありますが、この面に対しまして、有價証券移轉税の改正にあたつて何らの考慮が拂われておりません。具体的に申せば、一番高い千分の八という有價証券の移轉税がかかるようでありますが、かような開放株に対しては、國家的の一つの方針として強制的に行つた処置でありますので、何か特段な御考慮を拂つていただくことが適切ではなかろうかと考えておりますが、大藏大臣の御意見はいかがでありますか。
  33. 北村徳太郎

    北村國務大臣 有價証券の問題は、御承知のように非常に重大な問題でありまして、大量の有價証券を放出して、これを消化させなければならないので、その点を考え合わせまして十分考慮いたしたいと考えております。ただいまのところ決定したものとして申し上げることは困難でありますけれどもお話のごとく有價証券の民主化、あるいは有價証券の大量の消化等の問題は、残された非常に大きな課題でありますから、これに対して適合するように考慮いたしたい、かように考えております。
  34. 宮幡靖

    宮幡委員 このような質問は次の機会に保留いたします。     —————————————
  35. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 時間の関係でちよつと急に御審議をいただきたいと存じます。日程に出ております有價証券の処分の調整等に関する法律の一部を改正する法律案をこの場合議題にいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  36. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議ないようでありますので議題といたします。  この場合委員長から大藏大臣に特にお尋ねをいたしたいと存じます。それはこの法律案の円満なる施行、証券の民主化、企業再建の遂行上、政府は証券金融に関しいかなる方策をとるつもりであるか。現伏のごときことでは、企業及び金融機関の再建整備のための増資もできず、また証券の民主化もできぬではないか。この点に対して大藏大臣の御所見を承りたい。さらにいま一つは、今後証券民主化、企業再建等のために消化せねばならぬ株式は巨額に上ると思われますが、一体どのくらいに相なつておるか。この二点について大藏大臣の明確なる御答弁をいただきたいと存じます。
  37. 北村徳太郎

    北村國務大臣 今後有價証券の問題は、ただいま委員長の御指摘のように長期の安定した自己資本を獲得するという面と、大量に放出せらるべき有價証券の消化というような二つの観点から、きわめて重大であると思うのであります。從いまして有價証券金融については、特段の考慮を拂わなければならぬということは申すまでもないことでございまして、先般來いろいろと協議研究をいたしまして、ようやく関係方面の了解を得まして、今日これを発表することに相なつておるのでございまするが、この委員会において最初にまず御質問がございましたから、そのことを申し上げたいと思います。有價証券の受渡決済資金というものが、從來わくがございまして、七千五百万円を限度といたしておつたのでありますけれども、かような金額ではとうてい後に申し上げます大量の株式消化には、きわめて金融的に困難でございますので、今回三億円に拡張いたします。それから荷為替手形の割引でありまするが、これは一日四千万円と限度をきめまして、荷為替の日数は五日間と、かようにきめておつたのであります。しかしながら荷為替が五日間であるということは、東京、長崎が五日間で決済されるとはきまつておりませんので、現在の郵便等の事情から考えまして、かような制限にむりがあるというので、およそ地域別に日数を算定いたしまして、こことこことの荷為替は何日と——現実に遅れた事実が証明された場合は別でありまするが、原則を定めまして、それに基くことといたしまして、日数の限度並びに金額の限度を撤廃いたしました。すなわち大わくとしては、先に申しました三億という限度がございますけれども、その限度においては荷為替は一日四千万円という限度を撤廃したわけであります。それからその他若干の改正を行います。たとえばある会社の株をその会社の從業員に放出するというような場合には、それぞれの会社あるいは銀行において半額の金融ができるというような——若干の制限がありますけれども、半額の金融ができるというようなことに今回改めまして、有價証券の流通、有價証券の大衆化、有價証券の自己資本獲得というようなことについて、これが役立つような方法をとつたのであります。それから第二点は、今後放出せらるべき株式はどれくらいあるかというような御質問でございますが、これについて簡單に概要だけ申し上げます。財閥解体のために、持株会社整理委員会を通じて処分せらるるべきはずになつております旧財閥の株式、これが約六十億円、それから制限会社等がいわゆる証券保有制限令によつて処分しなければならない株式、これが約十六億円、それから閉鎖機関が持つておる株式で今後処分されると思うものが約三十四億円、それから財産税等の物納によつて現在國の所有になつております株式で、今後処分すべきもの約三十億円、それから次に独占禁止法の規定によりまして、会社が原則として他の会社の株を持つことができなくなりましたので、現在会社が所有しておる株式は処分しなければならないものが残つておるのであります。かような関係において処分されるものが約十億円、もつともこの数字は概数でございますから御了承を願いたい。第六には特別経理会社とか、金融機関が再建整備のため整備計画によつて増資する株式、これは御承知のように金融機関などは預金を保護するために資本の九割をなくした。あるいはものによつては十割をなくした。從つて新たに増資するというような場合に増資する株式及び第二会社の株式が、これは正確にはわかりませんけれども、大体四百億ないし五百億くらいあるものと推測されるのであります。大体以上各種の株式が処分せられるはずに相なつておりますので、かような株式を合計いたしますると、証券のいわゆる民主化、大衆化のために今後処分せられると思う株式は、総額約五百四十億ないし六百四十億円という巨額に達する見込みでございます。
  38. 川合彰武

    ○川合委員 ただいまの御説明によつて今後市場に解放せられる、あるいはまた言葉をかえて申しますならば、証券の民主化のために、民間に解放せらるべき株式が約六百四十億円に達する見込みであるということを言われたのでありますが、この六百四十億円というものは、拂込金額であるかどうか。同時にもし拂込金額である場合には、これを時價に換算した場合にいくらくらいになるか。それと同時に大藏大臣のただいまのお話の中にもありました通りに、今後各方面において増資をしなければならぬという株式が相当あるだろうと私は思います。これは金融機関並びに一般の会社においても相当あるだろうと思うのでありますが、一体今後一箇年間にどの程度の増資というものが予定せられておるか。これはおそらく資金計画その他の面においても、当局においては計画すべき問題であろうと思うのであります。そこで七百四十億円に上る現在の解放株式をどの期間において解放するか、それからまた増資を見こまれる株式はどの程度になるか、それが大体どういうような値ごろで処分されるかという点に関して、大藏大臣の見透しをこの機会にお述べになられんことを望みます。
  39. 北村徳太郎

    北村國務大臣 第一の御質問の拂込資本であるかどうか、これは拂込資本であります。第二の時價にしてどのくらいあるかという御質問でありますが、時價はちよつと見当がつきませんから、これはわかりません。それから第三点の今後増資によるものがどれくらいかという見込みを立てておるかという御質問でございますが、これは私どもは二百億程度のものというように考えております。どういうときに処分するかというような御質問でございましたが、これは現在まだ取引所が公開されておりませんので、なるべく早く取引所の公開を望んでおるのでありますが、そういうことはございませんから、ただいまの機関においてはきわめて不備な点もございますけれども、非常に微妙な関係がありまして、放出すべき時期、その他放出すべきものの銘柄等はきわめて重大なことですから、市場の大勢などもよく見てやらなければならぬのであります。およそいつごろ、どういうものをということは、ちよつとここで御答弁しにくいのでございます。さよう御了承願います。
  40. 川合彰武

    ○川合委員 実はきのうあたりから株式が降下の氣配を見せておるのであります。それは先日この委員会の席上において、大藏大臣あるいは安本長官質問した際に、証券金融に関して何らかの手が打たれるというようなことが言われたので、それが一般に漏れた関係ではないかと思うのでありますが、きのうから証券界はやや活況を呈しておるように聞いておるわけであります。そこで今後の一体証券界の見透し、さらに積極的にいうならば、銘柄によつてその値ごろは違うのでありましようけれども、現在の証券價格というものは不当に低くなつておるというような判断であるか、もしそういうような判断であるならば、今後証券價格というものは上る傾向にあるわけでありますが、現在の株式價格というものは不当に安いというような見込みを当局はもつておるかどうか。この点を承りたいと思います。
  41. 伊原隆

    ○伊原政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますが、先ほど大藏大臣からお答え申し上げましたように、ともかく一方におきまして証券の民主化のために現在あります株式を相当放出しなければならない。それから増資をうまく円滑にしていかなければならないというふうな場合におきましては株式というものがあまりに下つておるというふうなことは、そういうふうな点から障害があるということで、今回の証券金融の問題等も決定いたされましたので、今後増資並びに証券の民主化を円滑にできるようになるというような観点から、値ごろが決定されていくようになるのではないかと想像いたすわけであります。
  42. 塚田十一郎

    ○塚田委員 実は予算委員会の動きを見ておりますと、あちらは大体の審議が末段に近づいて、こちらの委員会の樣子を見ておるというような状態になつておるということであります。会期ももうせつぱつまつておるのですから、私どもは実は本委員会のいろいろな法案の審議の状況を考えて憂鬱かつ心配をしておる次第なのであります。そこで私どもといたしましては、もうこの委員会審議を始めます前から、予算委員会とこちらがうまく調子をあわしていけない。從つて予算委員会が過去の前例のように、この委員会審議の状況を無視した形で進められるということに非常に関心をもつてつたのでありまして、今も同じ考え方をもつておるのであります。それと同時に私ども予算委員会が相当進んでおるならば、私どもも良心をもつて進めていきたいという氣持は十分持つておるのでありますけれども、今までの審議の状況からお察しくださるとわかるように、私どもは決してことさらに審議を遅らすためにそういうような工作をしたということはないと、良心をもつて申し上げたいと思うのであります。從つてそういうような状況で、私ども審議に應じてきております際に、與党の側において十分審議を盡さないで、会期が迫つておるというようなことで、審議を打切るというような動議をお出しになることが近いうちにあるといたしますならば、私どもは重大な決心をしなければならぬ、こういうように考えております。この際委員長におきまして、それら各般の事情を十分御考慮くださつて政府委員及び大臣にも、必要な場合にはお出で願つて、あるいは夜分まで審議が行われることもやむを得ないと思います。十分審議を盡した上で、会期中にあがるなら結構、そうでない場合には今会期中にあがらなくとも、やむを得ないものは殘されましても、どうしてもあげなければならぬものだけ審議を進められるなり、何らか適当な措置を講ぜられて、とにかくどうしてもあげなければならぬ法案だけは、十分委員会審議を盡した上であげるように、委員会の運営を運んでいつていただきたいということを私は切にお願いいたします。その点について何ぶんの御善処をお願いいたします。多数をもつて審議を打切られるということは、私は絶対にお受けできないということをこの際申し上げます。
  43. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの塚田さんのお説はごもつともでございまして、委員会の運営について深く御考慮を願つておるということは、委員長としても感謝にたえません。そこで実は本日は、会期も残り少なに相なりましたので、一度皆さんにとくと御懇談を願つて、いかに運営していくかということを御相談いただきたいと思つておる次第であります。実はこの点に関してはきのうも、おとといも理事会をと思いましたが、あいにく理事の方の御出席がなかつたために、ついその機会を逸しましたが、本日の午後ひとつ、とくと皆さんの御相談を願い、そうして最善の方途をとりたいと存じますが、いかがでございましようか。
  44. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 今塚田さんからいろいろ審議の模樣につきましてお話がありましたが、私も予算委員会をちよいちよい眺めますと、非常に進行しておるのに、財政金融委員会の方がまだ進まないということは、非常に遺憾に思つておるのであります。それで先日の理事会において大体予定通り進行するような時間を各党に割当てられたわけでありますからして、あの線に沿つてできるだけ審議を進めると同時に、午前も十時から始まるというのに、大体十一時近くならなければ始まらないような時間でありますし、また午後も一時が二時、三時ということでだんだん時間が食い違いますので、会期が切迫してきました関係上、各委員はできるだけ時間を正確にして審議を進められるようにしたならば、かなり審議できるだろうということを思うので、塚田委員のおつしやることもごもつともでありますと同時に、われわれもつとめて勉強するという意味進行したらどうかと思うのです。
  45. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 いかがでございましようか。きよう午後一時半ごろからひとつ御相談願うことにしたらいかがかと思いますが……。
  46. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 また政府もひとつ御出席をいただきまして、どうしても通さなければならぬという法案を指示していただきたいと思いますが……。こんなことをやつておれば、ほんとうにどうにもこうにもならなくなります。  では暫時休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  47. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 会議を開きます。  公認会計士法案を議題といたします、本案に対する質疑をいたします。——宮幡君。
  48. 宮幡靖

    宮幡委員 法案山積の状態でありますので、なるべく簡潔に一應のお尋ねをいたします。本法案は外資導入と重要な関連をもつものであり、また日本の産業復興のためにも根幹的な一つの法制であると存じます。政府原案が提出せられますまでに、この原案について相当の審議の経過があつたように承つておりますが、その内容についてお差支えのない程度お聽かせを願いたいと存じます。
  49. 伊原隆

    ○伊原政府委員 ただいま宮幡先生からお尋ねでございましたように、この法案を提出いたしました理由は、外資の導入それから証券の民主化というふうな観点から、ぜひともこの際諸外國にありますような、公認会計士というふうな制度をつくりますことが必要と存じまして、つくりました法案でございますが、何ぶん愼重な審議を要します問題でございますので、大藏省においても計理士制度調査委員会というふうなものを設けまして、本年の一月二十一日以來、約六回にわたりまして愼重に審議を重ねた次第でございます。この調査会の各委員の方々には、日本計理士会長以下計理士の專門家の方方、それから会社、銀行等におきます計理の專門の方々、それからこの方面に特に明るい大学の教授等、相当の大人数をもちまして、この調査委員会が設けられておるのでありまして、各方面から出ました御意見を斟酌いたしまして、政府が適当と認めます法案としてこの法案を提出いたした次第でございます。
  50. 宮幡靖

    宮幡委員 政府当局の愼重なる立法経過につきましては、まず感謝の意を表する者であります。しこうしてこの法案を拜見いたしますと、大きく印象せられますことは、原案通過に対して愼重おやりくだすつたことに対しては、前段申し上げた通り感謝を申し上げるものでありますが、内容としてごく大ざつぱに申し上げましても、どうも從來ありました計理士の既得権を尊重する点において、いささか欠くるところがあるではなかろうか、同時に法案の内容に、從來の計理士と異つて、今回の公認会計士なるものの業務が、特別の技能を有するものであつて、必ずしも学術に重きをおくものでない。その点から眺めまして、どうも学術偏重のきらいがありまして、もつと卒直に申せば、制度調査委員会において学者の意見が重点的な働きをしておる、かように考えられる二点であります。計理士の既得権については、すでに御承知のように、現行計理士法なるものは計理士の称号を開いてということになつておりまして、計理士の称号を用うることのみが特権であつて、それ以外には何ら法律の保護を受けておらずに、昭和三年計理士法制定以來、社会生活の荒波の中に自然に自由業として発展してまいつたものであります。その間たまたま昭和十六年と憶えておりますが、当時計理士の監督機関でありました商工省において、計理士法の改正を政府がみずから行うのだ、かような意味で各地方に自治的にでき上つておりました計理士会なるものを解体せしめまして、いわゆる上からの命令ということから、全國を一つにいたしました計理士会というものの設立を命じたのであります。そしてその設立の方法は、戰時中のお定まりで、まつたく天下りであつて、業界の意向等はさつぱり取入れられないどころではなく、ただ商工省の示しました原案そのままうのみのしたわけであります。しかるところ、その後商工省はその計理士制度の改正を忘れてしまいましたかどうか、放任したまま、遂に現在のように大藏省へその監督を移行したような次第であります。そして計理士というものは、今日敗戰と申さず、あるいは日本が戰勝國でありましても、なおさら計理士の業務が社会的に必要である時代となりまして、制度は五十年あるいは一世紀も遅れた状態に放任されているわけであります。もし当時商工省が計理士制度の改正を行つておりましたならば、單に計理士の商号を用いてというような特権でなく、もつと法律根拠のある既得権が発生しておつたことは爭うべからざる事実であります。たまたまさような政府当局の怠慢から生じました今日、計理士に対します既得権のきわめて薄弱化したきらいがあるわけであつて、この責は計理士自身にあるのではなく、政府当局の怠慢にあるものだということを私は力説するものでございます。よつてこの際さような経過を考えてみますならば、法律の條文やその他のことにかかわらず、とにかく何ら法律の保護も、恩典もないものが、社会の荒波の中に不撓数十年をやつてまいりました今日の結実に対しては、これを全面的に保障せられるのが当然であると考えておりますが、その点に対する御当局の御見解を承りたいと存じます。
  51. 伊原隆

    ○伊原政府委員 宮幡先生が計理士界の先輩といたしまして、非常に從來の経過並びに計理士の業務につきまして、深い御理解をもつておられることにつきまして、私どもは感銘をしているような次第であります。先生がただいま御指摘になりましたように、計理士の制度につきましては、既得権と申しますか、大体におきまして、ただいま專門学校を出られました方々は、大藏省に登録なさいますと計理士になれるわけで、その数がただいまでは約二万四千人に及んでいるわけでありまして、そのうち試驗を受けて計理士になられた方は百三十三人というふうな少い数になつております。そしてただいま先生もおつしやいましたように、現在の監査証明並びに調査立案というふうな仕事につきましては、計理士という名前を用いなければ、何人もできるわけでありまして、計理士の方々の権利の内容と申しますか、これは先生も御指摘のように、計理士という名前を用いて監査証明ができるというふうな点にあるわけであります。法案をつくります審査の過程におきましても、現在の計理士がわが國の経済にいろいろ貢献なさいました点等を考えまして、いろいろ考慮を加えた次第でありますが、この法案で現在の計理士の方々に対する特別の恩典というふうな点につきましては、こまかい点を除きまして二、三点あるのであります。一つは五年以上計理士をなさつておられました方は特別試驗を受ける資格がある。それから計理士をしておられました方は、第一次、第二次、第三次と試驗があるのでありますが、その第三次試驗の要件であります実務の期間に、計理士であつた期間を加えるというような配慮もいたしてございます。また今回の公認会計士の制度は、先ほども申し上げましたように、実は現在の計理士の仕事と、何と言いますか、質的に全然違つた要求から出たわけでございまして、御存じのように民間の外資を導入する場合には、外國人の何人もが納得のいくような制度のもとに、監査せられた会社の計理を必要とする。アメリカ、イギリス等におきましては、非常に高い会計士の制度がございますことは御存じの通りでありまして、外國人が納得するような制度が、どうしても外資を導入する上におきまして必要でございますので、政府といたしましては外資導入の受入態勢につきましては、税法の問題といい、その他各般の方面につきましてやつております。その一つといたしましてここに公認会計士の問題が取上げられたわけでございます。それからもう一点は証券の民主化ということも、日本始まつて以來のことでございまして、株式を廣く民衆に分布する場合におきましては、公認会計士というような新しい制度のもとにできました会計士の方が、その張薄書類を見まして、一般國民に廣く信任され得るものにするという二つの要求からできました、いわば從來の計理士法の改正というよりは、質的に全然違つた新しいものができたのだという考え方に立つておるわけであります。もとより現在おられます計理士の方々は、非常に有能な方も多いのでありますから、そういうふうな方々に対しましては特別試驗の制度がございまして、有能な方がこれに合格せられることは、私ども疑わない次第であります。
  52. 宮幡靖

    宮幡委員 なお一点お伺いいたしますが、今伊原局長さんからの御説明によりまして、公認会計士というものは諸般の情勢から考えた、別の観点から生れた新たなる職業だと申し述べられた点がありますが、もしさようにいたしますならば、日本の現在の状況から照らし合わせてみまして、しかも中小工業を基盤とします日本再建を目指す以上、高級なる公認会計士に次ぐべき現在の計理士を存続する必要があるではなかろうかと思います。すなわち公認会計士という高水準は英米のそれに優るような制度を設けると同時に、やはりそれ以下の現在の中小工業の御用を達しておる、さような職務を業といたします計理士制度を残しておく方が、適切ではなかろうかと考えます。さすれば既得権の問題もおのずから解消いたしまして、円滑にこの法制が実施せられる運びになると存じますが、その点のお考えはいかがでございますか。
  53. 伊原隆

    ○伊原政府委員 ただいま宮幡先生のお話のように、日本経済の現状におきましては、ただいま計理士の方々が営んでおられるような職能と申しましようか、それがぜひ必要であるから計理士の制度はなお現存する必要があるというお示しであります。それも一つのお考えと存じますが、そういうふうな場合は、御存じのように会計士法、公認会計士の第二次試驗までまいりました場合には、公認会計士補というものがございまして、この会計士補が監査証明を除きました他の部分につきまして、今後そういうふうな職能を営むという考え方になつております。
  54. 宮幡靖

    宮幡委員 御説明と法案とによつてその点は明らかになつております。從つてここに既得権という問題をどうしても尊重しなければならないという理論が成立つと存じます。もし計理士の制度を存続しておきまして新たに公認会計士が生れるならば、別に計理士をどうするというようなことを考えなくてもよいのですが、現在の計理士の程度のものが必要であるがゆえに、会計士補という制度をもつてこれに移行せしめようというような御趣旨が、その全部でなくとも、若干でも含んでおる以上、計理士に対する既得権は全面的に認めるということが正しい議論になるではなかろうかと存じます。もちろん本法案に対しましては、占領下のわが國といたしましては、その筋からの御勧告もあることであろうと想像もいたしておりますし、勝手氣儘な議論のみにまいらぬと存じますので、いずれ討論に際しまして一應の修正意見を提案いたしまして、それについてどうぞ政府当局、委員長のお計らいによりまして、適切な御処置を頂戴いたすことを切望いたしまして質問を終りたいと思います。
  55. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 大上司君。
  56. 大上司

    ○大上委員 公認会計士法案について二、三お尋ねしたいのですが、まず先ほど宮幡委員からの御質問に対し、政府当局からいろいろ御説明がありましたが、その中に何人も外國人が外資導入の面から見て納得できるところの財務書類というように聽いたのですが、こういうふうな制度にしていきたい、あるいはするのだ、こういうふうな御意見でありました。さすれば五十七條の最前一番論議になりました既得権の問題について、政府自体が過去の経驗から見、あるいは計理士の過去の業務内容から見て、それだけ権威あるものに向上させていくとか、あるいは特別の立法措置をもつて、現在の現業者をなくするというような制度にしてはどうか、すなわち特別な講習会あるいはそういうふうな機関を設けてやつてはどうか。なお今言われた証券の民主化あるいは外資導入の点についていろいろお話がありましたが、さすれば現在政府自体が、諸外國人が見てわかるところの財務書類の形式その他を一切持つておられるかどうか、この二点をまずお尋ねいたします。
  57. 伊原隆

    ○伊原政府委員 ただいま大上委員から仰せのように、外國人が納得をするような財務書類等の監査証明ができる公認会計士の制度を設けますためには、講習会というふうなことも非常に必要なことだと存じます。承りますと、計理士協会でございましたか、その他におきましていろいろ計理の講習会等のお企てもあると聞いておりますので、非常にいい催しではないかと政府としても考えておるわけであります。それから公認会計士制度のほかに、ただいまおつしやいましたように帳簿組織そのものをある程度世界的のものにする。勘定科目その他につきまして世界的なものにするということにつきましても、ぜひ必要なことでありまして、現に司令部等に提出いたしますいろいろな財務書類につきまして、ばらばらで比較することができないという話もございますので、最近におきまして委員会を設けまして、帳簿組織の改善ということにつきましてもすでに着手いたしまして、帳簿の國際化ということについても、考慮をはかつておる次第でございます。
  58. 大上司

    ○大上委員 宮幡委員関連質問ですが、さいぜん申されましたこの法律案のお答えは大体了承はしたのですが、いわゆる公認会計士とならずとも、会計士補ということができるではないかというのですが、これは社会的な通念といたしまして、いわゆる依頼者と申しますか、財務書類の依頼者は、その人の技倆あるいは人格その他をもつて依頼するわけである。從つてこれが單なる計数的の算定にあらずして、あるいは將來経営の指導方針というものに結びつく可能性もままあると思うのであります。かように考える場合に、國民的な感情と申しますか、またそれほど私たち日本國民が理解がないと申しますか、よく言われる通り、普通のお医者さんより医学博士の肩書をもつている人の方が偉い、あるいは仁丹を飲ませられても偉い人から飲ませられると、それがいいんだというような信頼感というものもあるし、また一面会計士法でなく、いわゆる公認会計士法ということになるならば、それに向つてもつとそれ自体が責任をもつていかなければならぬということで、こういうふうなものでなしに、全面的にいわゆる五十七條というものを、もう一項考えていただく必要はないか、かように思つております。
  59. 伊原隆

    ○伊原政府委員 ただいまおつしやいますように、医学博士とそうでない医者があれば、医学博士の方に参りますのは当然のことでありますが、この計理士制度と申しますか、会計士制度は、いわば会社の企業に対するお医者のようなものでございまして、ただいまおられます計理士の方々で、非常に実務に練達の方々におかれましては、おそらくこの五十七條の特別試驗で、公認会計士の資格を得られるというふうに、私どもは確信をいたしております。
  60. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ほかに質疑はありませんか——質疑はないようでありますので、この場合質疑を打切り、討論に入りたいと思いますが、御異議ありませんか。
  61. 梅林時雄

    ○梅林委員 討論を省略せられまして、ただちに採決に入られんことを希望いたします。
  62. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 本案に関しては、委員の間になお愼重に審議したい問題が残つております。それをひとつ懇談の形でお願いしたいと思います。
  63. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 梅林さんの動議、吉川さんの動議、いずれもごもつともでありますが、修正意見等もあるようでございますので、この場合質疑を打切りまして、討論にはいつて、修正意見を一應拜聽したいと思います。さように計らつていかがですか。
  64. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議がないようでありますからさよう取計らいます。
  65. 宮幡靖

    宮幡委員 討論に入るに際しまして、政府原案に対する修正意見を申し上げます。  これから私が申し上げます修正案は、あらかじめ各派において内交渉をいたしまして、それぞれ了解済の、いわゆる各派共同の修正案でございます。宮幡委員個人の修正提案ではございませんから、その点御了承を願いたいと思います。  修正点は二点ございますが、第一点の方から先に申し上げます。  第二十五條見出中「証明の範囲」の下に「及び証明者の利害関係」を加える。  第二十五條 公認会計士は、会社その他の者の財務書類について証明をする場合には、いかなる範囲について証明をするかを明示しなければならない。  2 公認会計士は、会社その他の者の財務書類について証明をする場合には、当該会社その他と利害関係を有するか否か、及び利害関係を有するときはその内容を証明書に明示しなければならない。  第三十二條第四項を次のように改める。  4 前二條の規定による懲戒の処分をしようとするときは、会計士管理委員会は、当該公認会計士または会計士補にあらかじめその旨を通知し、それらの者またはその代理人の出頭を求め、釈明のための証拠を提出する機会を與えるためこれを聽問しなければならない。同條に次の一項を加える。  5 前二條の規定による懲戒の処分は、前項の規定による聽問を行つた後、相当な証拠により前二條に該当する事実があると認めた場合においてこれを行う。  第三十四條第二項に次の但書を加える。    但し、当該公認会計士若しくは会計士補又はその代理人以外の者は、事件について懲戒処分がなされ、又は懲戒処分をしない旨の決定があつた後でなければ、同項の調書の縱覽を求め、又はその謄本若しくは抄本の交付を求めることができない。  第二点の修正点を申し上げます。質疑に際しまして政府御当局の御弁明を求めましたように、本法実施にあたりましては、ぜひとも、從來の計理士制度の中の即得権を御尊重願いたいのでありまして、その観点から第十七條中の第二項、「三年」とありますものを「五年」に修正する。第五十七條を削除いたしまして、新たに五十七條として、  本法施行の際、現に引続き十年以上計理士の業務に從事している者であつて、本法による公認会計士の業務を行うに十分なる專門的知識と経驗を有し、かつ公正にその業務を遂行するに足る道徳観念を有する者として、公認会計士管理委員会の選考を経た者は、第五條、第三項の規定にかかわらず、公認会計士となる資格を有する。前項の選考に関する規定は、公認会計士管理委員会規則をもつてこれを定める。第一項の規定による選考の申請は、本法施行の日より三箇月以内にこれを申請しなければならない。  新たに第五十七條の二として一項を加えます。  第五十七條の二、本法施行の際、現に引続き五年以上計理士の業務に從事している者で、本法による会計士補の業務を行うに十分なる專門的知識と経驗を有する者として、公認会計士管理委員会の選考を経た者は、第五條第二項の規定にかかわらず、会計士補となる資格を有する。 前項の規定による選考の申請は、本法施行の日より三箇月以内にこれを申請しなければならない。  次に第五十七條の三として一項を加えます。  第五十七條の三、本法施行の際、現に計理士である者は、昭和二十三年八月一日から五箇年以内に限り、第五條に規定する試驗のほかに、特別公認会計士試驗を受けることができる。  第六十三條中、「昭和二十五年」とありますのを「昭和二十八年」と改める。  以上二点の修正案に対して修正の理由を申し上げます。  第一の修正案は、第二十五條は公認会計士が証明をするに当つて、その証明の範囲を明示する義務を公認会計士に課した規定でありますが、証明の効力の限界を明確にし、一般公衆をして錯誤に陷れないようにするという趣旨から申しますと、この規定では次の二点においてなお不十分と認められるのであります。すなわちまず原案によりますと、監査が財務書類記載事項の一部について行われた場合には、証明の範囲が明確になるが、監査がどの程度の精密さをもつて行われたかという点、たとえば財産の評價については、会社の提供する資料をそのまま容認したか、それとも評價そのものをも吟味したかというような点を明示する義務は課せられていないように思うのであります。  次に、監査証明をする公認会計士が会社と利害関係を有する場合には、その利害関係の内容を明記することが、監査証明のある財務書類を見る一般公衆の判断を誤らせないために必要であると考えるのでありますが、原案にはこの点何等の規定がありません。第二十五條の修正案はこの二点を明確に規定しようとするものであります。  第二に、第三十二條第四項の規定は、懲戒の手続を規定しているのでありますが、從來の経驗に照らし、懲戒の対象となる公認会計士等の弁護権を尊重する趣旨を、さらに明確に規定する必要があると考えますので、同項の規定を修正案のように、改めようとするものであります。  第三に、懲戒手続の調書の閲覽を、当該手続の進行中に一般に公開することは、弁護のなされぬ間に、会計士管理委員会の一方的な調査を巷間に流布する結果となり、信用を生命とする公認会計士の地位を不当に不利にする結果となりますので、第三十四條第二項に但書を加え、手続進行中は弁護権行使のために必要とする範囲においてのみ、調書の閲覽等を許すことといたしたいと思います。  第二点の修正の理由といたしましては、  すでに質疑の際申し上げた通り、現業計理士に対しまして、即得権を全面的に尊重していただきたい趣旨にほかならないものであります。殊に先ほど政府委員からの説明で、登録計理士は二万あるいは三万の数に達していると申しましても、事実はこの業務を專業といたしており、これによつて生活を営んでいる者は、大要五千人くらいの程度でありまして、しかも高水準にあります者、十年以上の経驗をもつております者はわずか二百人くらいの程度、五年以上の経驗をもつております者は千五百人程度でありまして、その余の三千人くらいの方々は終戰後新たに開業せられたり、あるいは他の職から引揚等によつて轉職せられた方が多数含んでおりますので、この際平等に全計理士に対し、それぞれの区画において即得権のお認めを願いたいというのが、修正の趣旨であります。  以上修正の趣旨を説明いたしました。
  66. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいま宮幡委員より動議の出ました修正は、各派共同提案の形式で取扱つてほしいというお言葉でありますので、いずれ追つて各派にその意見を傳達し、さらに政府当局の意向も体し、関係方面へも手続をとるように計らいたいと思います。この法案については本日はこの程度に止めておくことにいたしたいと思います。  暫時休憩いたします。     午後三時七分休憩      ————◇—————     午後三時二十分開議
  67. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  休憩前に宮幡委員より出ました動議については、委員長において最善の方途を講じ、しかる上また各委員に御相談を申し上げることにいたします。  次は、学校教育法及び義務教育費國庫負担法の一部を改正する法律案公立高等学校定時制課程職員費國庫補助法案、右二案を一括して議題といたします。本案に対する質疑をいたします。
  68. 塚田十一郎

    ○塚田委員 この両法案については、実は私どもの党でも、委員の間での意見は大体一決しておつて、上げてもよいのではないかという考えにもなつてつたのですが、先ほど私の党の方の、文教関係委員の連中に、事柄が文教に関係があるものですから、相談に上りました結果、相当重大な点に異議があることと発見いたしましたので、本日これを終結にまでもつていくということは困難になつたということを御了承願つておきたいと思います。
  69. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 学校教育法及び義務教育費國庫負担法の一部を改正する法律案関連して、政府の所見を簡單に伺つておきたいと思います。日本再建基本になるものは、経済復興と同時に、その根本的な裏づけとなるべき教育の問題であろうと思うのでありますが、この教育は、私は中央、地方を通じて、全國民にひとしく機会の均等を與えなければならないと思うのであります。しかるにただいまの状態では、中央、地方、または府縣間において、あるいは男子の学校、女子の学校等において、それぞれ月謝と申しますか、授業料がはなはだしく不均衡なところがあるのであります。こういうようなことでありましては、ゆたかな縣の子弟は十分な教育が受けられるでありましようけれども、惠まれないところの府縣の子弟は、機会が與えられないというようなことになりますので、こういうことは、政府当局としては十分考慮していただかなければならないと思うのでありますが、この点についての調整と申しますか、是正と申しますか、そういう問題について、何かお考えがありましたら伺つておきたいと思います。
  70. 細野三千雄

    ○細野政府委員 御質疑になりました点は、われわれといたしましても非常に考えておるところでありまして、現在東京あたりに遊学しております学生の、ほとんど五割といつてよいと思うのでありますが、五割程度までは、いわゆるアルバイトというふうなことをやつて、働きつつ学ぶというような状態であります。文部省におきましても、学徒援護課におきまして、各大学、高等学校、專門学校と連絡いたしまして、その働きつつ学ぶという態勢を、横から援護するというふうなことを現在やつておるのであります。なお根本的には、今までありました大日本育英会というものを、もう少し資力をゆたかにいたしまして、この方面から学費の援護をしたいというふうな考えでありまして、今度の予算におきましても、大日本育英会の貸付金として、四億四千五百数万円の予算を計上して、御審議を願つておる次第であります。授業料の値上げにつきましては、現在学生諸君の一部には反対運動もありまするが、これはしかし國の財政の全般から見まして、三倍程度の授業料の値上げは、どういたしましてもやむを得ない事情にあるのでありまして、その点はよく御了承を願いたいと思つておる次第であります。
  71. 吉川久衛

    ○吉川(久)委員 私のお伺いいたしている点は、値上げということよりも、不均衡な点があるということであります。たとえば、ある学校では二百円の授業料に対し、ある学校では六百円というような、差等のあるのを調整なさる御意思がありますかどうかということであります。
  72. 細野三千雄

    ○細野政府委員 官立大学と私立大学におきまして、授業料に相当開いた差等があるのであります。この点は、私立大学は現在文部省には何ら監督権はありませんので、直接授業料の点につきまして干與することはできないのでありまするが、直轄学校につきましては、著しい差等はないと考えておるのであります。もし御指摘のような非常に不均衡な事実がありますれば、これは是正したいと思つておりまするが、なおその点につきましては、劒木学校教育局次長から御説明申し上げたいと思います。
  73. 劒木享弘

    ○劒木政府委員 戰前私立学校につきましては、授業料の額を定めますのは、大体文部大臣の認可によつていたしておつたのでございますが、終戰後私立学校の授業料は、認可を受けなくて、私立学校だけで自由に処理することができるようにしたのであります。ただいま私学團体の方で、相互間に協定いたしまして、一定の基準なり、最高額を定めて、実施しておるようでございます。だから多少学校間に差があると思いますが、官立につきましては、やはり全部一律に、專門学校及び大学と、授業料は一律にいたしておりますので、差等はございません。
  74. 小平久雄

    ○小平委員 ただいま議題となつておりまする定時制の方の職員費の國庫補助法によりますと、経費の四割を國庫で補助する、こういうことになつておるようでありますが、その定時制の教育の特殊性にも鑑みまして、でき得ることならばもつと國庫補助を多くしてやつたらどうかという氣がするのであります。特に地方財政との関連から考えましても、その必要を痛感するのでありますが、これを四割と抑えた根拠はどの辺にあるのか、承りたいと思います。
  75. 劒木享弘

    ○劒木政府委員 文部省といたしましては、勤労青年を対象といたします定時制の高等学校の補助につきましては、ただいまのところ義務制ではございませんが、義務制である中学校及び小学校に準じまして、少くとも半額國庫負担の程度まではお願いしたいと考えておるのであります。一面まだこれは義務制が布かれておりませんので、その関係上、その補助率は三分の一でよいというような意見もございまして、結局最後的には、義務制でない現段階におきましては、四分の一に決定したのでございますが、將來は少くとも半額國庫負担になりますように、私どもとしては努力していきたいと思います。
  76. 小平久雄

    ○小平委員 それと関連しまして、これは職員費等でありまするが、施設費の関係はどうなつておるのでありましようか。
  77. 細野三千雄

    ○細野政府委員 今回補助いたしまする四割というのは、俸給、旅費及び手当でありまして、その他の施設費は一高等学校一万円の施設の補助でございます。
  78. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ほかに質疑はありませんか。  本案については先ほど塚田委員からも御説がありましたので、審議はこの程度に止めて次へ移りたいと思います。     —————————————
  79. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次は所得税法の一部を改正する等の法律案取引高税法案、以上二案を併せて議題といたします。質疑はありませんか。
  80. 小平久雄

    ○小平委員 概括的なことについてちよつとお伺いいたしたい。國民所得と税金の関係でありますが、それについては再三当局からも説明があつたのでありまして、本年度の國民所得を一兆九千億と押える、それに対して本年度の國税の割合はいくらだというように押えておりますが、昨年度あたりの実績をわれわれが考えますと、政府当局が申しましたこの國民所得に対する税の割合よりも非常に高率の税金を、実際問題としては國民はとられているのではないかと考えられるのであります。そこで一体この國民所得が一兆九千億と稱するのは、第三國人の所得というものを考慮に入れない所得なのか、國民所得と稱する場合に、第三國人の所得というものはどういうふうに考えられているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  81. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 國民所得は、本邦内に住居を有する者の一年間に收入すべき実際の所得を、國民所得の中に計上いたしておりますので、從いまして第三國人の所得も、原則としてこの中に入れているのであります。
  82. 小平久雄

    ○小平委員 ただいまの御答弁のようでありますならば、税金の額及びわが國の人口とというものにつきましては、当然第三國人を加味して考えられていると思うのであります。その点はいかがでございますか。
  83. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 本邦に住所を有する第三國人の場合は、御説の通りでございます。
  84. 小平久雄

    ○小平委員 そこで過年度におきまして徴税の実績につきまして、第三國人から徴收した場合、徴收した額、税金の割合と所得と、一人当りの平均額、あるいは所得に対する税金の割合、また純粹なるわが國民の場合のそれというようなことについて、年か基礎的な御説明が願えれば結構であります。
  85. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 第三國人の所得税の問題は、從來若干税法の適用につきまして疑義がございましたが、昨年以來その点がはつきりなりまして、やはり本邦内において居住いたします第三國人は、所得税その他の普通の経常的な租税は、日本人と同じように負担をするということが明らかになつております。税務の運用におきましても、同じ方針で臨むことになつているのでございます。從いまして國民所得の中に包括的にそういう趣旨がはいつているということは、今申し上げた通りであります。実際問題として第三國人の分がどの程度になつているかという点につきましては、別段一々わけて調べているわけではございませんので、ここで申し上げるだけの材料はもつておりません。と同時にいやしくも所得税におきましては、本邦人と同じような、公正な負担をしていただくのが、私どもは当然なことと考えておりますので、税額及び更正決定等につきましても、そういうような方針で進むつもりであります。
  86. 小平久雄

    ○小平委員 ただいままでは法的な第三國人に対する課税が明確を欠いておつたというような関係もありまして、税の関係においても正確な資料がないということもやむを得なかつたかと思うのでありますが、今度はこの法的な基準についても明確になつたという点からいたしまして、特に本年度の負担等についても、それが先ほど申したような点について、当局はどのように御推定をなさつておるか、できるならばそういう点を伺いたいと思うのであります。と申しますのは巷間傳うるところによりますと、相当第三國人の所得というものは多い、それが非常に逃れてをる。そのために國民全体としての課税の負担というものは、そう重くないのだが、しかしそういう特に第三國人のような場合に、逃れておるために非常に國民一般が重くなつておるということを申されておりますので、そういう点の誤解を解くためにもそれが必要ではないかと思うのであります。
  87. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 第三國人に対する所得税の原則及び運用の方針につきましては、ただいま申し上げた通りでございまして、この基本的な点については、少くとも有識者層からすべて賛成してもらつておるのであります。大体において円滑に運用できるものと私ども考えとおりますが、本年度の所得税の大体の見積りにつきましては、もちろん前年度の実績を目途にいたしまして、生産物價の事情、あるいはその他諸般の事情を考慮いたしまして、課税負担の適正を期するような方針で、十分見積りを加えております。ただ第三國人の分だけをここに取出してどうということはございませんので、全体として当然さようなことになるものと思いまして、いろいろ檢討を加え、大体の見積りをいたした次第でございます。税務の運用につきましては、先ほどから申し上げましたようなことにいたしまして、一部の人が免かれておるために、ほかの人の負担が重くなるというようなことのないように、万全を期したいと考えております。
  88. 中曽根康弘

    中曽根委員 私今やむを得ない事情のために外へ出ておりました関係で、前の方と重複するところがございましたら、その旨おつしやつていただいてお答えなさらないでも結構でございます。取引高税に関連して税制について御質問申し上げます。まず第一に計数的のことをお伺いしたいのですが、二十二年度の租税歳入について、最近の統計で一体どれくらいはいつておるか。最近の統計をお知らせ願いたい。それからそれと同時に二十二年度の実績で、申告の件数と決定件数、それによる金額、それから第三番目には調定未済のものが相当あるのですが、それが今どれくらいになつておるか、それから予定よりオーバーして自然増收になつたものが二百億ぐらいあると聞いておりますが、それがどのくらいあるか、それからその分を財政的にどういうふうに処置しておるか。以上の点について、まずお伺いいたしたいと思います。
  89. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 まず昭和二十二年度の租税收入の実況について申し上げたいと思います。  昭和二十二年度の決算額は未だ整理中でありまして、最終的の計数は今ここに申し上げる段階に至つておらないことを御了承願いたいと思います。ただ大よその決算見込みにつきましては、概数によつて見込みを立てましたので、その数字を若干申し上げてみたいと思います。まず所得税でございますが、所得税は予算におきましては、全体で六百九十余億円ほど見込んでおります。その中で源泉徴收の分が百九十八億、申告納税の分が四百九十二億、かように見込んでおいたのでありますが、昭和二十二年度の決算見込みといたしましては、源泉徴收の分は八十億ほどオーバーいたしまして、二百七十八億円ほどになる見込みでございます。これに対しまして申告納税の分は、一時非常に徴收を危ぶまれていたのでございますが、租税完納運動その他の御盡力によりまして、予算も若干オーバーする段階にまで参つております。すなわち四百九十二億の予算の見積りに対しましてちようど五百億、從いまして八億円程度予算に対する増を見込まれるような状況に相なつておる次第でございます、所得税全体といたしましては、從いまして、六百九十億の予算に対しまして七百七十九億、すなわち八十九億円程度の自然増收が生じてまいつたことになつております。その他の租税につきましては、いろいろございますが、増加所得税は二十一年度の決定のうち、二十二年度に繰越す分を九十億ほど見込みを立てておいたのでありますが、この成績は非常におもしろくありませんで、五十八億ほどはいつておりまして、予算に対して三十三億程度の赤を生じております。これは増加所得税の残つた分が賦課、その他につきまして相当無理なものが多うございまして、修正によつてつた分もございますし、それから実際問題といたしまして、徴收も非常に困難を感じて、二十二年度中に未だにはいつてこないものが相当あつた結果でございます。その他の租税につきましては、酒税でありますが、酒税は二百三十八億に対して二百七十二億すなわち三十四億ほど超過することに相なりました。これは昨年度年末に全体の徴收が非常に危殆に頻しておりましたので、なるべく早く酒の倉出しをいたしまして、年度内の徴收を確保するということをいたしました結果、その程度の歳入増を來したものと私ども考えておる次第であります。この他におきましては、入場税は昨年の秋ごろの状況をもとにして見積つたのでございますが、その後における購買力あるいは電氣関係その他からいたしまして、歳入が十分に上りませんで、入場税は予定の六十五億一千万円に対しまして五十五億二千万円、すなわち約九億九千万円ほどの赤を生じております。その他には非戰災者税におきましては、六十五億四千万円見込んでおつたのでございますが、これも若干不足いたしまして六十一億三千万円、約四億一千万円程度の歳入不足を來しておる状況でございます。その次は非戰災者税においては六十五億四千万円予定していたのでございますが、これも若干不足いたしまして、六十一億三千万、約四億一千万程度の歳入不足を來しておるようでございます。その他の租税においては、むしろ予算に対して若干ずつ増加をいたしております。合計において予算額千三百五十四億円に対しまして千四百五十四億円程度、すなわちちようど百億円強、決算見込みにおいて予算に対して増加しているように、一應の見込みをつけておる次第でございます。あらためて申し上げますと、結局勤労所得税と酒の税で大部分は予算を突破した、かような結果に申し上げることができるかと考えます。これは最近の調査でございますが、決算は合計数整理してさらに確定数字を整理中でございまして、整理いたしました上は若干端数に違いを來すのじやしないかと思います。決算は四月末で締切ることになつておりまして、四月末に郵便局と政府の國庫金を取扱う店にはいつた金額でありますが、その金額で締切ることになつております。今全國的に精細な数字を集計いたしておりますが、一應の概算を申し上げました。
  90. 中曽根康弘

    中曽根委員 徴收未済のものは…。
  91. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 たしかあるいは一部差上げてあつたのがあるかと思いますが、おもちでない方にはあとで差上げます。それから徴收未済の税額でございますが、その大部分は所得税でございまして、所得税において、四月末現在でおよそ二百十二億程度未済額の計数が出るじやないかと思います。この数字も若干数を整理しますと、もつとあるじやないか、かように見ております。それから増加所得税が八億八千万円程度であります。法人税が十八億五千万程度、酒税が四億三千万円、物品税が四億八千万円、入場税が四億八千万円、その他が五億五千万円、これが一般会計の分でありますが、そのほかに財産税、戰時補償特別税で、財産税は約二十一億円、戰時補償特別税は十三億円、一般会計と特別会計を通じまして、全部で二百九十四億円程度、そのうち財産税と補償税の約二百三十五億円を除きますと、二百五十九億円程度が本年度に徴收未済として繰越されるものと考えております。
  92. 中曽根康弘

    中曽根委員 そのうちで大体何パーセントくらいが実際徴收し得る見込みでありますか。
  93. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 このうちで何パーセント徴收し得るか、未だなかなか正確な計数を申し上げられないのでありますが、所得税につきましては、繰越したうちの六割程度、すなわち百三十億円程度は本年度内に徴收できるのじやなかろうか。その他の分につきましては、はたしてこれを徴收できますか、どうですか。修正によつて減る分もございますし、それからさらに年度が若干延びる。たとえば、増加所得税のごときは、一昨年の分が本年度内にも繰返して歳入を見積らざるを得ない状況でございますので、さようなふうに相成るのではなかろうか。その他の税につきましては、なるべく促進をはかりたいと思つておりますが、結局來年度におきましても、ある程度の繰越しがございますので、大差はないじやないかと考えております。
  94. 中曽根康弘

    中曽根委員 増收分をいかに措置したか。本年度の予算に繰入れるのか、どうしてあるのか。
  95. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 ただいま申し上げました所得税の百三十億程度は、本年度の予算に計上しております。
  96. 中曽根康弘

    中曽根委員 それから申告と決定件数は……。
  97. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 昭和二十二年度の申告と決定の状況でありますが、人員におきまして、確定申告期日までに申告した人員が五百八十四万人程度であります。これに対しまして、更正決定をいたしました人員は六百七十万人程度になつております。その申告した五百八十四万人のうち、申告をそのまま採用いたしまして、更正を必要としなかつた人員が、約七十九万人程度、一割五分程度になつております。その他の大部分の納税者につきましては、更正決定したということになつております。
  98. 中曽根康弘

    中曽根委員 それからもう一つお伺いしたいのですが、勤労所得税と事業所得、その中で特に農業所得を問題にしますが、平均的に厚い層はどの辺の課税率が厚いか、この点を一つお伺いします。
  99. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 厚い層というと、どういう意味でございますか。
  100. 中曽根康弘

    中曽根委員 課税件数の多いものです。
  101. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 平均しますと、ごく概数で申し上げまして、農業所得は昨年の決定は、平均いたしまして一戸当り三万円をちよつと割つているのじやなかろうか。営業所得は大体一戸当り六万円弱になつていたのではなかろうかと思います。從いまして昨年の実際の決定から申しますと、農業所得の方はおそらく二、三万円から四、五万円が一番多く、営業所得の方は四、五万円から十万円程度のものが一番納税人員としては多いのではないかとみております。
  102. 中曽根康弘

    中曽根委員 そこで取引高税の問題について、まず第一に、本年度二百七十億という予定がしてありますが、この二百七十億を出した基準についてお伺いいたしたいと思うのであります。どういう方法でこの取引高数という年間のものをおきめになつて二百七十億というものを算出したか、その基礎をまずお伺いいたしたいと思います。
  103. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 取引高税の見込みにつきましては、いろいろな方面から正確を期すべく調査いたしたのでありますが、大体おもな商品、取引量の非常に大きな商品につきましては、昭和二十二年中におきます生産数量、この概数を調べまして、それをもとにいたしまして、取引段階が何段階あるかということを、おもなものにつきましては相当個別的に檢討いたしまして、それぞれ取引額を推定いたしたのでございます。しかし非常に多数のその他の雜多なものにつきましては、一々その調査が不可能でございますので、生産統計その他からいたしまして概括的に取調べまして、まず昭和二十二年のうちの取引金額を調べたのでございます。それに対しまして、本年度における生産の見込みがどうなるか、それから物價の状況がどうなるかというようなこと、マル公あるいはマル公以外というようなものにわけて考えまして、結局本年度といたしましては、取引金額の大よその見込みはどうであるかということを推定いたして出しました数字が、先日も資料としてお配りしたと思いますが、総額において六兆一千二百二十余億円に相なつております。それに対しまして主食、教科書等、あるいは政府から補給金を支出する物資等、取引高税を非課税にするものがございますが、そういうものにつきましては、それぞれ同じような方法によりまして、やはり取引金額を推定いたしまして計算いたしましたものが、一兆一千五百五十余億円となりまして、差引課税取引金額が四兆九千六百七十二億余円、に相なりまして、それに税率の一%を乘じて四百九十六億円になるのでありますが、徴税減を一割差引きまして昭和二十二年度ベース年間見込みといたしましては、四百四十七億円程度を見込んだのでございますが、これに対しまして取引高税は印紙で課税いたします等の関係もございますので、九月から実施ということになつておりますから、それを月割に補正いたしまして、二百七十億という歳入予算を計上いたしたようなわけであります。
  104. 中曽根康弘

    中曽根委員 四兆九千億の中で、製造過程を通るものと、サービスによるものとあると思うのですが、その比率はどれくらいになつておりますか。
  105. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 総体にまず取引金額を出しましたので、六兆一千二百二十余億円でありますが、この内訳を申し上げたいと思います。それによりますと、物品製造業が一兆九千二百三十億余万円、物品卸賣業が一兆七千七百五十億余万円、小賣業が一兆八千九百億余万円、物品販賣業だけで両者を合わせまして三兆六千六百七十余億円でございます。その他といたしまして、それぞれ法人、個人とにつき別々に見ておりますが、まず個人の金銭及び物品貨付業が四億八千余万円、運送業が二百四十一億余万円、請負業が一千七百六億余万円、印刷出版業が十八億円、寫眞業が八億余万円、貨席業が三億余万円、旅館業が七十二億余万円、料理店業が二百五億余万円、湯屋業が十三億余万円、理髪業が二十四億余万円、娯樂業が五億余万円、その他個人の課税対象になりますところの取引が百八十八億円あります。法人の中では金融と保險が五百六十八億余万円、その他が千二百八十億余万円、その他若干ございますが、全部合わせまして六兆一千二百二十余億円、かような数字を出しております。これに対しまして非課税のものは別個に調査いたしまして、総体からその取引金額を控除しております。
  106. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいま議題になつております所得税法の一部を改正する等の法律案取引高税法案のほかに、軍事公債利子支拂特例に関する法律案を併せ議題といたしまして、大藏大臣に対する質疑を続行いたします。報告順によりまして島村一郎君。
  107. 島村一郎

    ○島村委員 ちよつと方角の変つた観点からお伺いしてみたいと思います。いつぞやの新聞記事でありますが、鈴木茂三郎氏の談として、民主党の公債政策、特に軍事公債の問題についてのみならず、公債全体に対しまして、無期限無利息の記名式債券としたいというような論が、民主党内部に現われたことを伺つておりますが、これははたして事実であるかどうか。
  108. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの御質問、実は十分聽き取り得ませんでしたが、無利息の公債を発行するかどうかということですか。
  109. 島村一郎

    ○島村委員 無期限無利子の記名式債券といたしたいという話が、民主党内部に出たということです——それでは補足いたします。これは二十三年五月九日の朝日の記事なのでありますが、鈴木茂三郎氏談がここに出ております。「軍公問題妥協案につき社会党鈴木茂三郎氏は八日次の通りつた。まだ案の内容も正確には知らないし、この問題をまかせてある木村禧八郎氏の意見も聞いていないのではつきり意見は言えないが、この案はむしろ利拂を行うことを確認したことで、社会党の主強する「停止」とはまつたく意義が異る、」これは別なんですが、これから先に「いままでの民主党側は、公債を無期限無利子の記名式債券としたらとの案を内々私に示していた、云々」とありますが、こういうことがございますか。
  110. 北村徳太郎

    北村國務大臣 私は全然さようなことを聽いたことはなく、また現在政府においてさようなことを考えてはおりません。
  111. 島村一郎

    ○島村委員 どうもそうだろうとは想像いたしておりましたが、しかしお話しになつたお方がお方であり、新聞に報道されたのでありますから、誤報あるいは虚報はなかろうというふうにも考えられましたので、一應お伺いいたしたのであります。  さて私は本問題にはいりたいと思うのでありますが、私はどうもこの軍公利拂措置が、財産権の侵害だとは考えておりません。またそこらの点につきましても政府当局もよくお考えの上、打切りをやらなかつたのであろうと存じます。しかしこれが國家の債務の不履行であるということは、どうも私にはそう考えられるのでありますが、大藏大臣はこの点についてどうお考えになりますか。
  112. 北村徳太郎

    北村國務大臣 理論的には債務不履行とは考えておりません。それは期日を法によつて変更いたす、期日の変更でございまして、支拂を延滯したことには相ならぬと理論的には考えております。
  113. 島村一郎

    ○島村委員 どうもこの債務の履行について、これを法によつて左右することがはたしていいかどうかと考えますと、私はどうもまずいと考えますが、この点につきましても大藏大臣の御答弁をお願いいたします。
  114. 北村徳太郎

    北村國務大臣 過去においても、國家財政の都合で、償還期の來たものを乘換えの方法によつて、結果としてさらに期限を延長したことはたびたびやつたことがあります。そのことがいいか惡いかにつきましては、おのずから論議もございますが、さようなこともございますので、國家財政の都合においては、さような例もあるということで、今回の分は利息の支拂を延滯したのではなくて、期日を変更したものである。かういう解釈を私どもはもつております。
  115. 島村一郎

    ○島村委員 この間本委員会におきまして、塚田委員の総理大臣に対する質問中に、公債の利拂を延期して、それの利子に利子を付するのであれば、これは公債政策をとつたのと、何ら変りはないという意味の御質問がございました。それに対しまして総理はその通りだとお答えになつておりますが、大藏大臣はその点はたしてどうお考えになりますか。
  116. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは理論的にはその通りだということもできますけれども、私は「その通りだ」と言つたという議論は、新たにそれだけの公債を発行したと同じじやないかと言われると、一應そういうふうな理論も成り立つ、しかしながらこれは新たに債務を負うたのではないのでありますから、そうでないとも言える。これは解釈の問題でございまして、私は後者をとるわけですけれども、これは必ずしも総理の答弁と対立するわけではない、こういうふうに考えております。
  117. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 お諮りいたします。本会議が始まるようでございますが、休憩いたしますか、続行いたしますか。
  118. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 それでは暫時休憩いたします。     午後四時三分休憩