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宮幡委員 討論に入るに際しまして、
政府原案に対する修正意見を申し上げます。
これから私が申し上げます修正案は、あらかじめ各派において内交渉をいたしまして、それぞれ了解済の、いわゆる各派共同の修正案でございます。
宮幡委員個人の修正提案ではございませんから、その点御了承を願いたいと思います。
修正点は二点ございますが、第一点の方から先に申し上げます。
第二十五條見出中「証明の範囲」の下に「及び証明者の利害
関係」を加える。
第二十五條 公認会計士は、会社その他の者の財務書類について証明をする場合には、いかなる範囲について証明をするかを明示しなければならない。
2 公認会計士は、会社その他の者の財務書類について証明をする場合には、当該会社その他と利害
関係を有するか否か、及び利害
関係を有するときはその内容を証明書に明示しなければならない。
第三十二條第四項を次のように改める。
4 前二條の規定による懲戒の処分をしようとするときは、会計士管理
委員会は、当該公認会計士または会計士補にあらかじめその旨を通知し、それらの者またはその代理人の出頭を求め、釈明のための証拠を提出する機会を與えるためこれを聽問しなければならない。同條に次の一項を加える。
5 前二條の規定による懲戒の処分は、前項の規定による聽問を行
つた後、相当な証拠により前二條に該当する事実があると認めた場合においてこれを行う。
第三十四條第二項に次の但書を加える。
但し、当該公認会計士若しくは会計士補又はその代理人以外の者は、事件について懲戒処分がなされ、又は懲戒処分をしない旨の
決定があ
つた後でなければ、同項の調書の縱覽を求め、又はその謄本若しくは抄本の交付を求めることができない。
第二点の修正点を申し上げます。質疑に際しまして
政府御当局の御弁明を求めましたように、本法実施にあたりましては、ぜひとも、從來の計理士制度の中の即得権を御尊重願いたいのでありまして、その
観点から第十七條中の第二項、「三年」とありますものを「五年」に修正する。第五十七條を削除いたしまして、新たに五十七條として、
本法施行の際、現に引続き十年以上計理士の業務に從事している者であ
つて、本法による公認会計士の業務を行うに十分なる專門的知識と経驗を有し、かつ公正にその業務を遂行するに足る道徳観念を有する者として、公認会計士管理
委員会の選考を経た者は、第五條、第三項の規定にかかわらず、公認会計士となる資格を有する。前項の選考に関する規定は、公認会計士管理
委員会規則をも
つてこれを定める。第一項の規定による選考の申請は、本法施行の日より三箇月以内にこれを申請しなければならない。
新たに第五十七條の二として一項を加えます。
第五十七條の二、本法施行の際、現に引続き五年以上計理士の業務に從事している者で、本法による会計士補の業務を行うに十分なる專門的知識と経驗を有する者として、公認会計士管理
委員会の選考を経た者は、第五條第二項の規定にかかわらず、会計士補となる資格を有する。
前項の規定による選考の申請は、本法施行の日より三箇月以内にこれを申請しなければならない。
次に第五十七條の三として一項を加えます。
第五十七條の三、本法施行の際、現に計理士である者は、昭和二十三年八月一日から五箇年以内に限り、第五條に規定する試驗のほかに、特別公認会計士試驗を受けることができる。
第六十三條中、「昭和二十五年」とありますのを「昭和二十八年」と改める。
以上二点の修正案に対して修正の理由を申し上げます。
第一の修正案は、第二十五條は公認会計士が証明をするに当
つて、その証明の範囲を明示する義務を公認会計士に課した規定でありますが、証明の効力の限界を明確にし、一般公衆をして錯誤に陷れないようにするという趣旨から申しますと、この規定では次の二点においてなお不十分と認められるのであります。すなわちまず原案によりますと、監査が財務書類記載事項の一部について行われた場合には、証明の範囲が明確になるが、監査がどの
程度の精密さをも
つて行われたかという点、たとえば財産の評價については、会社の提供する
資料をそのまま容認したか、それとも評價そのものをも吟味したかというような点を明示する義務は課せられていないように思うのであります。
次に、監査証明をする公認会計士が会社と利害
関係を有する場合には、その利害
関係の内容を明記することが、監査証明のある財務書類を見る一般公衆の判断を誤らせないために必要であると
考えるのでありますが、原案にはこの点何等の規定がありません。第二十五條の修正案はこの二点を明確に規定しようとするものであります。
第二に、第三十二條第四項の規定は、懲戒の手続を規定しているのでありますが、從來の経驗に照らし、懲戒の対象となる公認会計士等の弁護権を尊重する趣旨を、さらに明確に規定する必要があると
考えますので、同項の規定を修正案のように、改めようとするものであります。
第三に、懲戒手続の調書の閲覽を、当該手続の
進行中に一般に公開することは、弁護のなされぬ間に、会計士管理
委員会の一方的な調査を巷間に流布する結果となり、信用を生命とする公認会計士の地位を不当に不利にする結果となりますので、第三十四條第二項に但書を加え、手続
進行中は弁護権行使のために必要とする範囲においてのみ、調書の閲覽等を許すことといたしたいと思います。
第二点の修正の理由といたしましては、
すでに質疑の際申し上げた
通り、現業計理士に対しまして、即得権を全面的に尊重していただきたい趣旨にほかならないものであります。殊に先ほど
政府委員からの説明で、登録計理士は二万あるいは三万の数に達していると申しましても、事実はこの業務を專業といたしており、これによ
つて生活を営んでいる者は、大要五千人くらいの
程度でありまして、しかも高水準にあります者、十年以上の経驗をも
つております者はわずか二百人くらいの
程度、五年以上の経驗をも
つております者は千五百人
程度でありまして、その余の三千人くらいの方々は終戰後新たに開業せられたり、あるいは他の職から引揚等によ
つて轉職せられた方が多数含んでおりますので、この際平等に全計理士に対し、それぞれの区画において即得権のお認めを願いたいというのが、修正の趣旨であります。
以上修正の趣旨を説明いたしました。