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1948-06-24 第2回国会 衆議院 財政及び金融委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十四日(木曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 泉山 三六君 理事 島田 晋作君    理事 中崎  敏君 理事 梅林 時雄君       青木 孝義君    淺利 三朗君       江崎 真澄君    大上  司君       倉石 忠雄君    島村 一郎君       苫米地英俊君    宮幡  靖君       川合 彰武君    松尾 トシ君       河井 榮藏君    佐藤觀次郎君       田中織之進君    林  大作君       八百板 正君    金光 義邦君       中曽根康弘君    長野 長廣君       井出一太郎君    内藤 友明君       藤田  榮君    堀江 實藏君  出席國務大臣         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         國 務 大 臣 栗栖 赳夫君  出席政府委員         宮内府次長   加藤  進君         宮内事務官  塚越 虎男君         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         大藏事務官   平田敬一郎君  委員外出席者         專門調査員   氏家  武君     ————————————— 六月二十三日委員川島金次君辞任につき、その補 欠として松尾トシ君が議長の指名で委員に選任さ れた。     ————————————— 本日の会議に付した事件  軍事公債利子支拂の特例に関する法律案(内  閣提出)(第八六号)  会計法の一部を改正する法律案内閣提出)(  第八九号)  所得税法の一部を改正する等の法律案内閣提  出)(第九三号)  取引高税法案内閣提出)(第九四号)  有價証券処分調整等に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出)(第一五七号)  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出)(第一六四号)  印紙をもつて歳入金納付に関する法律案内閣  提出)(第一六六号)  日本國憲法八條規定による議決案内閣提  出)     —————————————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 会議を開きます。  本日の日程になつております印紙をもつてする歳入金納付に関する法律案議題といたします。まず政府説明を求めます。     —————————————
  3. 荒木萬壽夫

    荒木政府委員 印紙をもつてする歳入金納付に関する法律案提出理由を御説明申し上げます。  過般、取引高税法案提出いたしましたが、同法案によりますと、取引高税納税義務者は、その取引高税取引高税印紙をもつて納付しなければならないこととなり、またその取引高税印紙については、別にこれを定めることとなつておるのであります。しこうして、印紙をもつて國の歳入金納付することに関しましては、大正九年の勅令第百九十号で「印紙以テスル歳入金納付ニ関スル件」という勅令がありまして、これには、國に納むべき手数料、罰金、科料、過料、刑事追徴金訴訟費用等は、印紙をもつてこれを納めることができると規定し、また他の法令の規定により印紙をもつて租税その他國の歳入金納付することができる場合において、その納付をするとき用いる印紙は、收入印紙をもつてしなければならないと規定してありますが、さきに申し上げましたように、取引高税取引高税印紙をもつて納付することとなりますと、右の印紙に関する勅令の一部を改正する必要が生じてくるのでありますので、この際、同勅令を廃止して、別に法律をもつて、これらの事項を併せ規定して、その整備をはかるのが適当と存ぜられますので、この法律案提出いたした次第であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛成あらんことをお願いいたします。     —————————————
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次は皇室経済法施行法の一部を改正する法律案議題といたします。政府説明を求めます。     —————————————
  5. 苫米地英俊

    ○苫米地委員 ただいまから御審議をお願いいたします皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について説明いたします。  皇室諸般費用は、憲法第八十八條規定に基いて予算に計上し、國庫からこれを支出することとなつており、これをうけた皇室経済法規定によりますと、皇室費用内廷費宮廷費及び皇族費に区分されております。このうち内廷費天皇、皇后両陛下をはじめ内廷にある皇族の日常の御費用その他の内廷諸費に充てるものであり、年額による皇族費は、皇族としての品位保持の資に充てるためのものでありまして、それぞれ法律で定める一定額を、毎年國庫から支出することとなつております。皇室経済法施行法七條及び第八條は、それぞれ以上に述べました内廷費及び皇族費定額に関する規定であります。  まづ第七條内廷費定額でありますが、昭和二十二年の年初当時、皇室経済法施行に関する法律案及び同年度予算案作成の際、当時の物價状況その他を勘案して八百万円と定められ、その後の経済状勢にもかかわらず、今日に至るまで変更されておらないのであります。政府といたしましては現在の物價情勢並びに今後の物價改訂の影響等を織りこみまして、この際これを二千万円に増額することが必要と考えるのであります。  次に第八條皇族費定額でありますが、これは昨年八月、二十万円と定められ、そのまま今日に至つて居りますが、内廷費と同樣の理由からこれを三十六万円に増額することを必要と存ずるのであります。  なお以上の定額の変更につきましては、皇室経済会議においてもその必要を認め、内閣に対しそれぞれ二千万円及び三十六万円に増額することを必要と認める旨の意見提出がございましたことを申し添えておきます。  本改正法案は以上の理由によりまして、これら二つの定額について所要の改正を行わんとするものであります。  以上概略の説明を申し上げました。何とぞよろしく御審議あらんことをお願いいたします。     —————————————
  6. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 続いて日本國憲法八條規定による議決案議題といたしまして、苫米地官房長官説明を求めます。     —————————————
  7. 苫米地英俊

    ○苫米地委員 日本國憲法八條規定による議決案提案理由説明いたします。  皇室経済法施行法第五條によりますと天皇その他内廷にある皇族が、一年内になされる賜與または讓り受けの財産の價額が百二十万円に達した後は、その後の期間においてなされる賜與または讓り受けについては、價額の多少を問わず、國会議決を要するものとなつております。しかしながら天皇初めこれらの皇族方が、特に災害の場合の罹災民に対する御見舞、あるいは各種の御獎励のために賜與される價額は、一箇年間に百八十万円近くに止ることが見込まれておりまして、上述の百二十万円をその他の一般的な賜與に充当いたしますとすれば、これらの御見舞、御將励のための賜與は、そのたびごとに、個々に國会議決を煩わすことになるのであります。しかるにこれらの賜與は、災害に対する御見舞のように、その都度実際の必要に当面して、一々國会議決を経ることが事実上困難である場合も多く、またその賜與せんとする目的も定まつておりますので、あらかじめ價格を限り、一括國会議決をいただきたいと存ずるのであります。昨年度におきましても、本案とまつたく同趣旨の議決を願つておるのでありますが、昨年度においては年度の途中でありました関係上、月割の計算になつておりましたものを、本案においては年額に引き伸して百八十万円としたことに相違があるのであります。  以上が御議決を願う理由の大要でございます。何とぞよろしく御審議あらんことをお願いいたします。     —————————————
  8. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次は有價証券処分調整等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。荒木政務次官説明を求めます。     —————————————
  9. 荒木萬壽夫

    荒木政府委員 ただいま議題となりました有價証券処分調整等に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明いたします。  企業再建整備法規定する特別経理会社が、その所有する有價証券決定整備計画に基いて処分する場合には、独占禁止法規定の適用を受けることなく、原則として有價証券処分計画書証券処理調整協議会提出し、協議会承認受け処分することになつているのでありますが、特別経理会社の所有する有價証券処分につきましても、一般会社と同じく、独占禁止法規定を適用することが、実状からみて適当であると考えられますので、今回この点を改めて、特別経理会社が所有有價証券処分する場合には、独占禁止法規定に基く昭和二十三年政令第四十三号により、あらかじめ処分計画書公正取引委員会提出し、その承認を得た上で処分し、証券処理調整協議会調整受けないことといたしますため、ここにこの法律案提出いたした次第であります。  何とぞ速やかに御審議の上御賛成をお願いいたします。     —————————————
  10. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に先般御審議を願いました会計法の一部を改正する法律案について、若干誤謬修正等関係もあり、保留になつておりましたが、その点に関して政府より釈明を申し出ておられますので、この際発言を許します。荒木政務次官
  11. 荒木萬壽夫

    荒木政府委員 ただいま委員長の仰せになりました会計法の一部を改正する法律案に関しまして、私が提案理由を御説明申し上げたのでございまするが、当時総理府設置法案等関係法案提出いたされておりまして、この法案が先に成立いたしまするならば、同法案の中に引用しておりまする特別調達廳調達院という名称になる、かように考えまして、そういう考えの下に御説明申し上げたと記憶いたすのでございますが、総理府設置法案等は、都合によりまして撤回することにもなりましたし、かつまた当時いささか私の誤解の点もございまして、事実と相違いたした御説明を申し上げたかと存じ、この点まことに恐縮に存じます。以上申し上げたような次第でございまするので、本委員会において惡しからず御了承をいただきたいと存ずる次第でございます。
  12. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 以上説明を願いました各法案について質疑をいたします。川合君。
  13. 川合彰武

    川合委員 皇室経済法に関する質問をします。内廷費が八百万円から二千万円に増額しなければならぬという事情についてはわれわれはこれを了承するのでありますが、しかしながら今日の状況下においては、内廷費といえども一般事情を勘案してこれを決せねばならないと思います。そういうような観点からいたしまして、私は昨年度において内廷費が八百万円であつた、それを二千万円に殖やすことについての増額根拠お尋ねしたいと思うのであります。
  14. 塚越虎男

    塚越政府委員 お答え申します。八百万円を二千万円にした増額根拠でございますが、実は昨年度において八百万円とおきめを願いましたのは、先ほど提案理由においても申し上げましたように、昭和二十二年の当初の法律案並びに予算案作成の際に考えておりましたところの物價水準その他によつて八百万円と定められたのでございます。実は皇室経済法施行法案等審議の際におきましても、当時八百万円では少なすぎるのではないかという御意見も有力に拜聽いたしたのでございますが、何分にも初めての年でもございましたので様子もわかりませんし、かたがた初年度においては、ともかくこれでやつてみようということで、八百万円を改正せずに今日に至つた次第であります。しかしながらその後における物價情勢等は御承知通りで、それらの物價情勢を織りこみまして、またこの内廷費定額は大体年額をもつて法律をもつて定めるということになつておりますので、この際において、今回改訂せられまする物價水準というようなものもこれに織りこみまして、二千万円を定めたのでございます。
  15. 川合彰武

    川合委員 この内廷費の少い多いということは、われわれはあえて問題にしようとはしないのであります。問題は八百万円と当初にきめた基礎が、当時の物價に比較して少かつたというならば、これで了とするわけでありますが、八百万円ときめた当時が、千八百円に賃金ベースであるとするならば、今回の改訂賃金ベースの三千七百円に比べて、その増加率が二倍半になつているという点が問題になるわけであります。そこで問題は、私はおそらく今御答弁のあつたように、八百万円の基礎、そのベース自体に無理があつたという点をまず承認しなければならぬ、かように考えるのでありますが、政府委員はそういうふうにお考えになりますか。そうでないとするならば、もし当時の千八百円ベースというときにおいて八百万円だつた。しかるに今回二千万円にしたということは、ほかの賃金ベースの振合上ここに若干の問題を生ぜざるを得ない。從つて私は前段に申し上げましたように、八百万円というのは当時まだいろいろな事情がわからないので一應きめた。しかしながらそこに無理があつたために、その後における物價情勢あるいは賃金ベース関係を考慮して、今回は二倍半の増額をしたというようにわれわれは理解したいと思うのでありますが、政府委員の見解はいかがでありますか。
  16. 塚越虎男

    塚越政府委員 まつたくただいまお話のありました通りでございます。
  17. 川合彰武

    川合委員 次には皇族費の方は、これは二十万円を三十六万円になさるというわけでありますが、私たちは案外その額の少いのに一驚したわけであります。これは八月にきめたというような関係であつたのでありましようが、この増加率内廷費に比べて比較的少いようなわけであります。この関係はそういうわけでありますか。
  18. 塚越虎男

    塚越政府委員 昨年の八月に二十万円ときめました沿革をちよつと申し上げたいと存じます。これは御承知及びと思いますが、皇室経済法に基きます法律につきましては、当時さしあたりのものといたしまして、皇室経済法施行に関する法律というものができました第一回の國会で、本式と申しまするか、施行法のきまるまではそれによつていくという建前になつております、その後第一回の國会におきまして皇室経済法施行法というものが制定せられたのであります。初めの皇室経済法施行に関する法律におきましては、皇族費定額は十五万円と定められておつたのであります。八月の際におきましては、何分にも皇族費の方は内廷費と違いまして非常に幅も狹いのでございます。これにつきましては二十万円に増額するということについて御決定を願いました次第でございます。かような関係からいたしまして、今回は内廷費に比べますると、皇族費定額の方の上りぐあい増加ぐあいが少いということに相なつておるのでございます。
  19. 川合彰武

    川合委員 よく了承しましたのでありますが、実際においてこういうふうなインフレ状況下において皇族が御一家で三十六万円でもつて、はたして皇族としての体面を維持しつつ、生活が維持できるかできないかという点を疑問に思わざるを得ないのであります。おそらく普通民間であるならば、いわゆるやみ的ないろいろな收入もなきにしもあらずでありますが、皇族ではそういうこともあり得ないわけでありますから、そこで私は最近の皇族家計実情について、でき得る限りのお話を承つて参考にしたいと思うのであります。
  20. 塚越虎男

    塚越政府委員 ただいまの皇族費定額の三十六万円でありますが、これは皇室経済法にもございましたように、一定定額はございます。それに対して親王はその定額の全額、親王妃はその二分の一、それから未成年の親王及び内親王定額の四分の一というふうにきめられております。從いまして今度定額を三十六万円に御改正願いますれば、例をあげて申し上げますると、高松宮家におきましては、親王親王妃のお二方でございますから三十六万円と十八万円の五十四万円というように相なつております。しかしながらもちろんこの金額をもつてしても十分でないのでございます。十分でないどころでなく非常に御窮屈なのであります。しかしいろいろな状況を判断いたしまして、この程度をもつておきめ願いたいと考えておるのでございます。一方ただいまお尋ねになりました皇族に御家計ということにつきましては、何分にもこれは御世帶の中のことでございます。あまりはつきりは承知いたしません。いずれにいたしましても、この昨年の皇族費では、非常に御窮屈である。なお本年の新定額による皇族費によりましても、もちろん十分でないように想像いたされます次第であります。
  21. 川合彰武

    川合委員 こういうような民主主義化された日本であるから、われわれも自由にいろいろな質問を申し上げるわけでありますが、こういうようなことは、われわれとしてもあまりつつこんでお尋ねしたくないのであります。しかしながら、むしろ今後の皇族のあり方としては、民主日本皇族は、家計費を明らかにして、そうしてやはり尊敬せらるべき皇族であることが必要ではないかと思うわけです。それにつけて私は思うのでありますが、今まで皇族はいろいろな方面で、総裁とか何かをされておつた。ところが何か軍職にあつたというような関係で、今度はパージされる。そこで今までは皇族がそういうような、いろいろな関係総裁なんかされておつた場合に、お礼とか、そういうような、民間で言うならば車代と申しますか、そういうような收入があつたかどうかというようなことも、お尋ねしたいと思うのであります。われわれとしては、その意図するところは、やはり皇族がわれわれから尊敬せられつつも、なおかつ家計内容まで國民の前に開放されておるというようなことが、ほんとうは望ましいと思います。他面なかなかそういうようなことは理窟では申しても、実際われわれの家計でもそういうことはできないわけであります。それにしましても、なるべく疑念のないようにすることがいいのではないか。その意味においては、私たちは、皇族皇族という体面を維持し得る限りにおけるいろいろな皇族費というものは、出すことにやぶさかでないというような観点から、今そういうようなお尋ねをするわけであります。つまり車代とか、そういうようなものが、今まであつたかどうか。それから今後パージされるといつて、そういうような收入が少しでも收入としてあつたとすれば、これも若干影響するのではないか。それと同時に、今まではそういうような総裁とか、いろいろな会長というような関係で、お仕事があつたようでありますが、パージされて、そういう方面のお仕事がないとすれば、今後皇族はどういうお仕事をされるべきかというようなお氣持を、則近の方々は感じておるか、そういう点もこの機会にお漏らし願えれば幸と存じます。
  22. 加藤進

    加藤(進)政府委員 お答え申し上げます。ただいまの皇族につきましては、前に降下されて、皇族を離脱されておりますから、秩父宮高松宮三笠宮の三家だけ残つておるわけでありますが、この中で、秩父宮は御病氣であり、また三笠宮は御勉学中であるということで、一番社会的に活動せられておりますのは高松宮であります。各方面團体関係せられておりまするが、その実情を申しますると、これはむしろ宮家の方でいろいろ費用をおかけになつて、会の方に御援助になつておる。と言つても、そう多額のことができるわけでありませんが、名誉表彰的なこと、さようなことは宮家の方で御負担なつておる実情でございます。もちろん地方において同胞援護会、赤十字その他の團体の要請によりましての、それから御自身の御発意に基きましての御行動はございます。この御行動は、かなりいろいろな人も関係いたしますので、こういうような費用團体負担いたしまするが、かんじんの宮樣として直接触れられるところは、これは宮家の御負担でございます。從いまして、総裁をおやめになることにつきましても、宮家に対する財政的の影響は、非常に苦しくなるということは私ないかと想像いたしております。  宮家今後の活動でございますが、これは殿下の方は軍人の関係で、御関係にならないといたしましても、妃殿下の方等総裁関係もございますし、なお実質的には何かとそういう方面関心をおもちになつて、その関心が公の行動ではございませんが、いろいろ從來通りの御心配はなさることと存じます。
  23. 川合彰武

    川合委員 次に印紙をもつてする歳入金納付に関する法律案につきまして、政府質疑いたします。  この法案は、主として取引高税法施行された場合に対する法案のように思うのでありますが、もし取引高税法案國会議決を見ない場合においては、この法案は全面的にまた修正を要するのではないかと思うのであります。その辺政府としてはどういうようにお考えですか。
  24. 荒木萬壽夫

    荒木政府委員 ただいま川合委員の御質問に対してお答え申し上げます。もし御指摘のようなことになりますれば、この法案はさしあたり必要がないかと存じます。と申しますのは、提案理由にも御説明申し上げました通り、形としては適当ではございますまいけれども、法制としてはともかく関係勅令がございますので、運用上は支障なかろうかと存じますので、さような場合には、この法案は撤回てもよろしいかと存じております。
  25. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ほかに御質疑はございませんか。
  26. 堀江實藏

    堀江委員 皇室経済法改正について、八百万円が二千万円になるということは、大きな問題だと思うわけであります。今いろいろ國会でも審議されておりますように、國家の財政が窮乏し、そうして厖大な税がかけられる、いわゆる苛斂誅求の形において税金がかけられておる際において、八百万円が二千万円に大巾に増額されるということは、非常な問題でありますが、何らこれについて資料が出ておりません。また皇族費の問題にしましても、また憲法八條承認に関する件にしましても、事が皇室の問題であるにしても、こうした時代におきましては、資料提出されることが必要であります。その上で質問をいろいろしたいと思うわけであります。
  27. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 堀江委員にお諮りしますが、主としてどういうような資料をお願いされるのですか。
  28. 堀江實藏

    堀江委員 つまり八百万円から二千万円になることにつきましては、内容が、どういう費目増額して二千万円必要であるかという点、それからまた百八十万円の問題については、主としてどういう費途に使われておるかという問題、できれば明細も資料として必要だと思います。
  29. 塚越虎男

    塚越政府委員 特別に資料として出しませんでも、御質問によつてできるだけお答えいたしたいと思います。
  30. 堀江實藏

    堀江委員 質問すると申しましても、ぽつとしておつて、ただ八百万円を二千万円にというだけで、何も根拠がつかめぬわけであります。どうして二倍半必要であるかということが納得ができないわけであります。
  31. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 今度の予算に盛りこんでおるのではないのですか。
  32. 塚越虎男

    塚越政府委員 そうでございます。
  33. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 堀江さんにちよつと御相談しますが、今度の予算書に詳しくあるそうでありますが、それでいかがでしよう。
  34. 塚越虎男

    塚越政府委員 内廷費の方は予算書に一本で出ております。
  35. 堀江實藏

    堀江委員 その詳細を知りたいわけであります。
  36. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 その予算書を御覧願うということでいかがでございましよう。
  37. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この皇室経済法施行法の一部を改正する法律案は、非常に急いでおるようでありますので、政府の方の説明を聽きまして、それで議事を進行していきたいと思いますがいかがでしようか。
  38. 堀江實藏

    堀江委員 それでは八百万円を二千万円に増額しなければならないという、その主たる費目についてまずお伺いしたいのであります。
  39. 塚越虎男

    塚越政府委員 お答えいたします。八百万円当時の内訳と、二千万円当時の内訳とを申し上げます。八百万円当時において考えておりましたのは、内帑費が三百二十八万円、皇子費が四十五万円、食品費が七十五万円、旅行費が百三十万円、用度費が百四万円、給與費が七十八万円、予備費が四十万円、合計いたしまして八百万円でございます。それに対應いたします二千万円といたしました際の内訳は、内帑費が五百八十万円、皇子費が百六十万円、食品費が二百万円、旅行費が三百二十万円、用度費が三百二十万円、給與が三百二十万円、予備費が百万円、合計いたしまして二千万円であります。
  40. 堀江實藏

    堀江委員 給與費の三百二十万円の内訳をもう少し説明願います。
  41. 塚越虎男

    塚越政府委員 この給與費と申しますのは、内廷費によつて支弁せられます皇室の私の使用人の給與であります。それが年九万六千円の十一人、それから六万二千四百円の二十人を合わせましたもの、これが二百三十万四千円になりますが、これが大きなものでございます。そのほかにこれらの使用人が出張しますときの旅費でありますとか、あるいは超過勤務手当その他の給與、それからこの中には、皇太子さまの外人教師でありますところのヴァイニング夫人の私的な生活費は皇室の方でもたれることになつておりまして、その金額がはいつております。それによりまして三百二十万円と相なる次第であります。
  42. 堀江實藏

    堀江委員 ほかの費目についてもなるべく詳細に御説明を願いたい。
  43. 塚越虎男

    塚越政府委員 まず初めの内帑費でありますが、これは狹義のお手許金とか、あるいは衣服費、用度費、それからいろいろ御交際の費用、それにこの中からいろいろいわゆる内帑費による賜與というものをなされるわけであります。次の皇子費と申しますのは、現在おられます四方、義宮及び三内親王の衣服費、用度費、教育費等を含んでおります。なお初めの内帑費の中には、陛下の私的ないろいろな御教養、御修養の費用というようなものも全部この中にはいつておるわけであります。次に食品費は、内廷にある八方のお食事の費用でありまして、これは御自身のお食事のほかに、御会食をなさるというようなときの費用もこの中にはいつておるわけであります。次に旅行費は、内廷の八方が私的な意味において御旅行なさるときの各般の費用がこの中に盛りこまれております。用度費はそのほかのいろいろな内廷における備品費、消耗品費、雜費等がこの中に含まれている次第であります。
  44. 堀江實藏

    堀江委員 次にこの百八十万円の大体の予定をはつきり願いたい。
  45. 塚越虎男

    塚越政府委員 これは先ほどの提案理由でも官房長官から御説明申し上げましたように、実は何ほど要るかということについては、災害の発生の状態とか、いろいろな関係で予測できないのであります。しかし大体過去の実績等からみまして、百八十万円程度ではないかというようなことから、一應百八十万円によつて議決を願いたいと考えている次第であります。
  46. 大上司

    ○大上委員 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について、川合委員並びに堀江委員からおのおの質疑がありましたが、大体私二人の意見あるいは質問に対してこれを了とするものでございますし、なお佐藤委員からさいぜん議事の進行の動議が出ましたが、これは質問を打切り討論を省略して、ただちに採決にはいりたいと考えます。この動議を提出いたします。
  47. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 お諮りいたします。大上委員からの提議の御説はごもつともと存じますので、この際質疑を打切り、討論を省略して、ただちに採決いたしたいと存じますがいかがでありましようか。
  48. 堀江實藏

    堀江委員 そうした動議については、これは事があまりはつきりしておりませんし、もう少し研究することにして、本日採決するということについては反対であります。
  49. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 日本天皇が新しい憲法におきましても認められている以上は、やはりこれくらいの経費は常識的に考えましても万やむを得ないのじやないかと思うのであります。國家の財源の苦しいことも、先ほど堀江委員の言われましたようにたれでも承知しているわけでありますが、大体これくらいの程度は今の状況におきましては、議員としてこれ以上の質疑は大体無用かと思いますから、ぜひとも堀江委員質疑を打切つてこの案に賛成せられんことをお願いしたいのであります。
  50. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 大上委員の動議に御賛成の方の御起立を求めます。
  51. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 起立多数。よつて大上君の動議は成立いたしましたので、大上君の動議の通り確定をいたしたいと存じます。  これよりただいま質疑を打切りました皇室経済法施行法の一部を改正する法律案日本國憲法八條規定による議決案、右二案について採決をいたします。右二法案について反対の方の起立を求めます。
  52. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 少数。原案に賛成の方の起立を求めます。
  53. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決確定いたしました。     —————————————
  54. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 お諮りをいたします。会計法の一部を改正する法律案は先ほど荒木政務次官から補足釈明を願つた点のみが疑問であるというので保留になつておりましたが、この場合質疑を打切り、討論を省略して採決をいたしたいと存じますが御異議はありませんか。
  55. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議ないようでありますのでさようはからいます。     午前十一時四十四分休憩      ————◇—————     午前十一時四十五分開議
  56. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。ただいま議題といたしました会計法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に御賛成の諸君の起立を求めます。
  57. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決確定せられました。     —————————————
  58. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に軍事公債利子支拂の特例に関する法律案所得税法の一部を改正する等の法律案取引高税法案、さらに本日説明を求めました有價証券処分調整等に関する法律の一部を改正する法律案、以上を一括して議題とし、質疑を継続いたします。大臣が來られましたので、一般質問、すなわち総論について御質問していただきたいと思います。
  59. 大上司

    ○大上委員 軍事公債の利拂の問題につきまして、二三、大臣にお尋ねいたします。過般來よりいろいろの質疑、あるいはこれに対する大臣の應答によつて大体は了承しておるのですが、一番大きな問題といたしまして、私たちの見解からはこの軍事公債の利拂停止を一年やることによりまして一番問題となる点は、いわゆる全般的な有價証券の政策であります。すなわち交付公債並びに一般証券が流通性をもつておりますが、これが証券市場においてどういうことになるか。これに対する大臣のお見透し、並びにこの交付公債、特に軍事公債におきましても、これを金融の担保にするということを見受けております。実際これが運營されております。從つて將來の健全財政とか、あるいは財政面から見て、國債政策をいかにやつていこうとせられるか。なお次の問題は、今度の問題によりまして政府の信用度の面がいくぶん薄らぎつつある。いわゆる公約破棄というような観点から言いまして、將來貯蓄政策その他國民に散布せる資金の吸收について、大藏大臣として國民をしてどういうふうにこの問題を消化せしめるかという三点を、ますお尋ねしたいと思います。
  60. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 ただいまの大上君の御質問のうち、同樣の趣旨の御質問に対して、この席上その他の席上でも、また本会議でもしばしばお答え申し上げておりますから、大体のことは大上君もお了承いただいておることと思うのでありますが、重ねての御質問でありますからお尋ねの点にお答え申し上げます。第一にこのことが市場に及ぼす影響いかんということでありますが、御承知通りただいま日本においては市場が公開されていない。これは新たなる証券取引委員会も出発いたしましたので、一日も早く市場公開を願つておりますけれども、まだその再開に至つておりません。從つて公債をはじめ有價証券の正しい意味においての市場價格というものが現在ないことは、大上君の御承知通りであります。なくてもしかし賣買はあるじやないか。これはたしかにあります。ところがこれもたびたび申し上げました通り軍事公債は大体九割何分が金融機関の所有するところであります。從つてこれは日本銀行に対する登録公債と相なつておる。從つて証券というものは発行されていませんで、日本銀行に登録されているということでありますから、轉々流通すべき証券は存在しないのであります。從つて登録されておるだけでありますから、市場性はないのであります。九割六分くらいまでは市場性がない。ただしかしながら軍事公債は早く処分したいというような氣持があれば、一旦登録しても登録解除の手続きができるのでありますから、登録を解除したものがあるかないかということを調べてみまするに、その後登録解除したものはございません。今まで私はそういう報告を受けておりません。それで今回の軍事公債の利子の取扱い方に関することが、軍事公債のものに影響を與えたという何ら実質的な事実がございませんので、その点はさように御了承願いたいと思います。  第二点はこういうことによる國際信用をどうするかというような問題でございますけれども、今回の処置は内地債に限ることでありまして、ただ外國人所有のものをどうするかという問題がございまするけれども、外國人の所有に対しては利子を支拂うということは、内閣の声明で発表した通りでございますから、外國人に対しては何らの影響はない。  第三点は、影響はないとしても、いわゆる國の信用度に対する観測はどうかというようなお尋ねでございます。日本が今どれだけ外國から信用されておるかということを測定することは、きわめて困難でございますし、かつ御承知通りアメリカでは、日本の公債は上場されておりません。ただロンドン市場で上場されておる。その上場されているのは一九一〇年発行の四%の公債が現在上場されておりますが、これは軍事公債の利拂をしない、一箇年延期するときまつた前後の状態を見ますと、少し上つて二二ポンド四分の一が、二二ポンド四分の三あるいは二三ポンド四分の一になつたという経過をたどつておりますので、これらのことが何ら影響を與えていないということは、その一点から測定できるわけであります。その他の点を測定することはおそらく不可能だと思いますが、一應さようなことが考えられます。以上のような今回の措置に対して何ら憂慮すべき結果が現われておりませんので、國民貯蓄に対しても私は悲観をする必要は全然ない、かように考えております。
  61. 大上司

    ○大上委員 大臣のお答えの第二問は、私の質疑と全然趣が異つているように私は考えます。國際信用の問題をるる御説明になつたのですが、私の尋ねるところはそうではない。すなわち有價証券全般と見なした場合の國内における信用性、これに対する政策をお尋ねしておるのであつて、何ら國際的な信用の問題をお尋ねしておるのではない。すなわち証券の民主化が叫ばれる際に、この実際的な交付公債並びに他の有價証券というようなものの、國内における政府の公約破棄というような点から生ずるところの障害、あるいはこれに対する財政政策ということをお尋ねしておるのであります。なお第一問に出ました市場價格——すなわち非公開であることは、私も万々承知しております。しかし実際面として登録公債でありまするから、登録除外を見れば、たちまちわかる点でありますが、われわれが日常生活によつて耳にし、実際味わつている現在の生活面から見て、やみの生活は必ずしておると存じます。私個人といたしましても、やみの生活なしでは今日いつておりません。從つて大臣がおつしやる表面的な非公開の株云々は一應もつともなのですが、これを担保にやみ生活と同じく金融のやみをやつているという面から見れば——特に私の関係しておる大阪地区においては、それが盛んであります。だから裏面的な点も御調査になつての御答弁なりや否やという点をお尋ねいたします。
  62. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 やみ金融はわかりません。
  63. 大上司

    ○大上委員 それから外國の一般的な有價証券の信用性という問題……。
  64. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 軍事公債だけが今回問題になりましたので、その他の優良な会社の市價が、軍事公債と何のつながりをもつわけではございませんから、そういうことは関係ございません。しかしながらさきに申しますように、有價証券市場の公開がないのでありますから、從つてこれを公的に処理する途がないということでございます。それから有價証券の騰落は、幾多の原因をもつのであります。たとえば非常に金づまりがひどい。そういう金融難からくる場合もございますし、その他いろいろございます。会社それ自身が持つ特有の原因もあるのでありまして、おのおのについて何株がどうなつた、こうなつたというようなことでないと、はつきりしたことを申し上げるのは困難です。一般的な影響は何らもたぬということは、それ自身である軍事公債登録の解除がないということ、それが明らかに影響がなかつたことを証明する、かように思うことはさきに述べた通りであります。
  65. 大上司

    ○大上委員 第一問の大藏大臣のやみ金融がないということは、大臣が実際にお調べになつた点か、あるいはその他現在の大藏大臣としての、機構を動かして調査なすつた結論ですか、その点お伺いいたします。
  66. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 私はやみ金融を捕捉することができるならば、これは非常に結構なことだと思うのです。それで、ある推測はできないことはない。もし大上君において、やみ金融というものについて、その担保力と今回の軍事公債との関係が、こういう相関性があるという具体的な事実があるならば、それに対して判断してお答えすることはできるのであります。私はやみ金融のことは、今のところ材料がございませんから申し上げ得ないのであります。
  67. 大上司

    ○大上委員 では一つの具体的な例を、私の記憶範囲をたどつて説明いたします。実は今次の軍事公債利拂停止によりまして、もちろん登録公債でございまするが、それを担保に借りる方が惡いのか、貸した方が惡いのか、すなわちこれはやみ生活と同じような理窟になりますが、これによつて手持金融機関がずつと金融を締めてきた。從つてこの返済を急に迫つてくるというような点を、一つばかりでなしに、あらゆる点で見受けられるのです。こういうような場合に、單なる軍事公債の利拂を一般的な発表によつて、一つの過渡的な現象と見られまするが、こういう点が非常に私の手持資料においては多いようにうかがえます。
  68. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 ちよつと私には了解が困難なのでありますが、登録公債を担保にしてというお話がありましたが、登録公債は公債ではないのです。登録されたという書面です。その書面をその公債の所有者が持つておるだけでありまして、それ自身は公債ではないのでありますから、もしこれを担保に供して金融の途を開くとか、あるいは賣買するという場合に、もし登録公債である場合は、一應登録を解除して、公債の発行を持つて、その轉々流通性のある本來の形に帰つて、しかる後でなければならぬはずである。從つてさようなことが行われたかどうかということが、今回の軍事公債の処置に対する変動を見る一つの解決点である。私が登録解除の申請がなかつたということを先ほど申し上げたのは、その点であります。
  69. 大上司

    ○大上委員 大臣のおつしやつておられるのは、いわゆる公法的に、あるいは立法的にきめたところの手続上の問題を指摘されておると存じますが、たびたび申します通り、やみはやつてはいかぬ、法治國である以上諸般の法律で縛られておるわけです。しかし実際は大臣の御指摘になつたような実情でないということを特に申し上げておきます。
  70. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 いよいよ私はわからぬようになつたのですが、登録公債をやつているのは公の金融機関です。金融機関以外に、登録公債があるということを私は知らない。その登録公債がやみ金融で担保になつているという抑せでありますが、どこの金融機関でやつているか、もう少し具体的にお話を伺いたい。
  71. 大上司

    ○大上委員 後日を待ちまして資料を私も提示してみたいと思います。もつともおつしやる通り手続き上保有しているのは、市中銀行であることは万々承知しております。これをいわゆる小さい農業会あるいは金融機関自体がいかように過去活用してきたか、これをもつてどういうような面に充ててきたかということを考えれば、すぐわかる問題だろうと思います。その次に一つお尋ねしたいのは……。
  72. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 ちよつとその前にもう少しはつきりしておきたいのですが、登録されたという書面を担保にして金融が行われている。こういうことをおつしやるわけですが、その点が私はよくわからぬ。それは農業会ですか。その点をはつきりしておきたいと思う。
  73. 大上司

    ○大上委員 これは非常に事務的と言いますか、手続上はそういうことはでき得ないけれども、実際上はこれが呼び水と言いますか、よく言われておる世情のうわさ、こういうものによつて非常に縛られておる。すなわちこれを法文化、明文化、資料化することは非常に至難であろうと思いますが、実際の業者間、あるいは証券業界における影響の表面だけを私はお尋ねしたのであつて、実際上の法的な手続、その他大臣の御指摘になりました点については、私はまだ資料をもつておりません。
  74. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 いよいよわからなくなつてきたのですが、私はやみの金融についてどうかと廳かれても、私は知らない。資料がないからわからぬとお答えしたのです。しかるにやみ金融について、これこれの事実がある。こういうお話ですから、それはどういうことですかと伺いますと、これは登録による登録公債だと言う。登録公債は個人にもあるかもしれませんが、私は寡聞にしてあまり知らない。個人がやることはないと私は思つております。九十何パーセントは金融機関がやつておる。これは金融機関に與えられた特権だと思つております。その金融機関が保有しておるはずのものが、どうしてやみ金融に流れるか。その点がどうもはつきりしていないから、もう少しその点をはつきりしていただきたいと思います。
  75. 大上司

    ○大上委員 私の言うのと、大藏大臣の考えられている点とは少し違います。私の言うのは、なるほど國庫公債あるいは今次利拂を停止しようとしておるものは、大体登録公債でよくわかりますが、これが一般的な有價証券、あるいはその他の証券に影響して、これがやみ金融と言いますか、これを担保にし、これというのは、何ら今次上つておる軍事公債利拂とは限りませんが、一般的な金融と言うか、あるいは有價証券としての性質を失いつつある資料が二、三ある。けれども私はこの軍事公債にこれらのものがあるという指摘は全然してないから、その点大臣の考え方が違つておると思います。
  76. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 今問題になつておるのは軍事公債のことであります。それと関係なく一般價証券ということになりますと、先ほどからお答えしておるように、今市場の公開がないから、これを的確に申し上げることは困難でありまして、やみ金融がどこで行われておるか捕捉困難である。かようなところにやみ金融がこういうふうに行われておると言われても、それだけではわからない。それだれ申し上げれば御了解を願えると思うが、なおお話が出てくるから、もう少しはつきりしておいた方がいいと思うのであります。御質問になれば私はお答え申し上げますが、一体問題の所在がどこか、はつきり伺いたいと思います。
  77. 大上司

    ○大上委員 最初から問題がおかしくなりましたが、こちらの言うのは委員の皆様お廳きしていてわかる通りに、この証券、いわゆる軍事公債それ自体も流動資産の一つとみなされておる。そういう観点からその他一般國庫公債並びに有價証券に対する國民の信用度が落ちはせぬか。それはどういうことかというと、一般的な有價証券と認めた場合に金融の手段に使う。そうした場合にこれをどういうふうに事後承認なさるか。なるほど今申されたように、証券市場それ自体は現在非公開であるが、実際賣買が行われている。こういう場合に、これはなるほど登録公債であるが、一般的証券についてはどうかということをお尋ねしているのであります。
  78. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 結局私はどうもはつきりわかりません。もともと問題になるのはやみのことで、それがどうなるかは私は申し上げかねます、たびたび申し上げますように、非公開であるので、有價証券が金融の対象になることはむろん困難です。さればこそ日本銀行へ登録しておる。それで理論としては、一般價証券は轉々流通性があるということで金融の対象になり、また賣買も円滑に行われる、從つて物價の自律性に基いて物價がきまつていくことは当然ですが、軍事公債に関する限り九十何パーセントが登録されていて、市場に出るべき公債そのものがないのであります。これはただ日本銀行に登録されているだけで、存在しない。轉々のしようがない。その点を申し上げているので、從つて轉々流通しないから、市場に何ら影響を與えていないということを申し上げたのでありますが、やみでどうなつているかわかりません。
  79. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 それでは午後も大藏大臣は御出席願えるそうですから、ここで休憩いたしまして、午後一時から再開いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後三時二分開議
  80. 梅林時雄

    ○梅林委員長代理 これより会議を開きます。  午前中に引続きまして質疑を続行いたします。
  81. 内藤友明

    ○内藤委員 所得税のことにつきましてお尋ねしたいと思うのであります。まず政府お尋ねしたいのはこの五月十三日に農林次官から大藏次官に宛てまして、昭和二十三年度以降農家所得税に関する件という依頼状が出ております。これによりますと、昭和二十二年度農家所得税に関するにがい経驗に鑑み、昭和二十三年度以降の農家所得税については、左記のくふう、改善をはかる必要があると思われる。右に関し意見を開陳せられたいという農林次官から大藏次官に依頼状が出ているのであります。これは主税局長もごらんになつたと思いますが、まずそのことにつきまして、大藏省の御見解をお伺いしたいのであります。
  82. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 ただいまの書類は、今手もとに持合わしておりませんので、後ほど取り寄せまして、なお具体的にお答えいたしたいと思います。
  83. 内藤友明

    ○内藤委員 それでは一つ一つお尋ねしたいと思うのでありますが、私は主として現行の農業所得査定の問題につきまして、若干お尋ねしたいと思うのであります。  まず最初にお尋ねしたいのは、來所得年度における消費さるべき農家の自家消費米は、本所得年度の所得に属せしめず、これを來所得年度の所得に繰越すことというのであります。説明申し上げますと、たとえば二十二所得年度内に消費されました自家消費米は、二十一年度の産米が約十箇月分、二十二年度産米の小部分と、二十一年度産米の大部分とが、農家の自家消費米になつているのであります。ところが大藏省が農業所得の計算についてというのを各税務署に示達されているのでありますが、これによりますと、その年の評價でやれということが書いてあるのであります。ここに非常な無理があります。つまり十箇月分を五百五十円の計算でしなければならぬし、二箇月分を千七百円の計算でしなければならぬのに、全部が千七百円の計算でする、こういうことになつているのであります。これが非常に大きな矛盾でありますので、こういうことにつきまして、大藏省が農業所得計算についてというのを地方にお示しになつているのでありますが、これを合理的にお改めになる意思がありますかどうか、それを伺いたいのであります。平田(敬)政府委員 所得税の所得をどう計算するかという問題だろうと思いますが、御承知のように所得税における所得は、收入金額から必要の経費を控除して所得額を計算するということに相なつております。その收入金額をみる場合におきましては、農業の場合におきましては、その年度に農家が收穫した農産物を收入金額とみるということが正しいと考えております。從いましてたとえば昨年度の米でございますと、昨年度收穫いたしました米の、そのときの値段によりまして税率を計算するというのが、所得税法の原則から申しまして正しい計算ではないかと考えておる次第であります。
  84. 内藤友明

    ○内藤委員 局長は私の尋ねましたことを少しはき違えてお考えなつておられると思うのでありますが、こういうことなのであります。農家の自家消費します米も收入にみることになつております。ところが昨年度の自家消費米というものは、五百五十円に属するものが十箇月分、千七百円に属するものが二箇月分、こうなつておるのであります。それを全部千七百円で計算されてある。この不合理はどういうことなのかお尋ねしておるのであります。
  85. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 昨年度の所得税として收入金額に計算しておるものは、昨年度農家が收穫した農産物でありますから、農家が消費した農産物と関係ないものと考えております。
  86. 内藤友明

    ○内藤委員 それでは農家が、消費しました米というものは收入にみられないのでありますか。
  87. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 收穫したすベての農産物をその年の收入金と言いましたが、これはもちろん農家が消費した部分も收入金額にはいりますが、收入金額の年度区分といたしましては、昨年なら昨年中に收穫した農作物、それが收入金になる、かような建前になつております。
  88. 内藤友明

    ○内藤委員 この問題は実際と違つておりますから、いずれあとからゆつくりお話申し上げたいと思います。  第二に、現行の農業所得査定法の建前に、非常に不合理な点があるということを指摘いたしたいのであります。現在の農業所得査定の建前は、有機的一体をなしている結合生産が営まれている農業経営を、田畑別、作物別に分割いたしまして、それぞれの独立の生産経営としてその所得を計算していることになつております。これは大藏省が地方にお配りになりました農業所得をどう計算するかという示達にもはつきりと出ておるのであります。でありますからそれぞれその田畑別、作物別の独立生産経営としての所得の計算になつておりまするので、これが——今申しましたのは分割計算でありまするが、これが実際に非常に困難な問題が起きてきている原因であります。まず第一にどういう困難なことがあるかと申しますると、いわゆる中間生産物の問題であります。所得税法には、明らかに総合的にとらえて、中間生産物は收支に加えないことに規定されておるのでありまするが、大藏省以下実施機関ではそれを收支に加えることにされておるのであります。しかしその評價は困難であり、全部門にわたつて総括されることはないので、ここから問題は起きてきているのであります。大藏省が地方に示されたものを申し上げてみますと、こういうことになつております。收入金額の計算は大体次の要領による。一、田については米 イ、れんこん、わさびなどの主産物の價格のほか、わら、みもがらなどの副産物の價格を合算する。それから之の方に、わら工品その他加工品等による附随收入、養畜、養鶏、養牛馬等の收入も農家の收入として計算する、こういうことになつております。これによりまして副産物であるわらというものが、まず第一において米に附随したものとして計算され、さらにまた加工品としての收入が計算されることになつております。これは示達が行つておりまするから、地方の税務署はちやんとそういうふうにやつております。実例を申し上げてもはつきりするのでありますが、それは申し上げることを差控えますが、そういうことになつております。そういうことがこの計算全体から見ますると非常に狂つてまいるのでありまして、これは一つの例にすぎないのでありまするが、こういうことがどちらかというと計算する者の恣意的な主観が混入されることになるのでありまして、所得査定には公正を欠くことになると思うのであります。從つて大藏省が御指示になりましたこういうふうなことは、もう少し現実に沿つてお改めになるお心持がないか、それをお伺いいたしたい。
  89. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 ただいまのお話が、わらはわらとして計算し、わら工品にはわら代を除いた部分で税額所得を計算するということでございますれば、まさに御指摘の通り二重所得を見積つたことになると思います。しかし私どもはさようにはいたしてないのでございまして、わらを見る場合においては、わら工品を見る場合においてそのわら代はやはり経費として見積り控除する、どちらが一方で課税するという方針にいたしておりますことは申すまでもございません。
  90. 内藤友明

    ○内藤委員 それがどういう通知で出しているか、その通知が末端の税務署には行つておらぬのであります。でありまするからこれは重複になつております。
  91. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 ただいまお述べになりました通牒の趣旨によつても、そのことは明瞭であると私どもは思うのでありますが、これは私ども税務の常識としても当然さようなことはいたさない考えであります。そのことは單にわらのみならず、たとえば桑の配分でも同樣ですが、桑は桑として見て、繭の收入を見る場合において、桑代を差引かないで繭の所得を計算するということになると、これは二重になりますから、桑は桑として見て、繭の所得を見る場合においても、自分が桑畑をつくつておれば桑の代金を繭の所得より差引く、かようなことにいたすわけであります。もしもかりに誤解して二重課税しているようなところがあれば、これは明らかに訂正すべきものだと私どもは考えております。
  92. 内藤友明

    ○内藤委員 承知いたしました。それでは次にお尋ねしたいと思うのであります。次に問題になりますのは共通費または間接費の問題であります。わが國の小農経営におきましては、共通費というのは非常に重要な費用でありまして、たとえて申しますれば農舍費、農具費、役畜費、こういう固定資本財に関する費用はもとより、租税公課あるいは作業衣、こういうふうなものに至りまするまで、農業経営全体の收入または支出を調べて、初めて按分分担の計算ができる性質のものなのであります。それを先ほど申したような分割でやるということは、そこに非常に恣意的な計算が加わつてきますので、日本の小農経営に合致しないということが出てくるのであります。農業專用の固定財に限るというのでありまするが、わが國の小農経営では、たとえて申しますると、蚕舍あるいは畜舍、あるいは農具舍、あるいは穀倉というものは、多くの場合住んでおる家に附随してつくつてありますのが普通であります。また小さな物を申し上げますると、自轉車のごとき物も同樣であります。家計のために使う場合もあるし、農耕用の場合にもこれを使う場合もあるのであります。こういうふうな共通費の分割計算が非常に複雜面倒なために、実際には、これらは省略されることが非常に多いのである。これが農業所得の計算の上に大きな誤算になつて現われてくるのでありまして、こういうことにつきまして、もう少し日本の小農経営の実際に適合したような計算のやり方を、おとりになられる御意思があるかどうか、それをお尋ねしたいのであります。
  93. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 ただいまのお尋ねの点は、実際に私どもも一番むずかしい部面でございまして、運用にあたりましても、最も注意しなければならぬ事項ではないかと考えておる次第でございます。御指摘のように專用品でありますると、これは農業に專ら使つておるということは明らかでございますから、そういう物の償却費、修繕費等は、割合比較的簡單に控除することができるのでありますが、家事と関連して使つておる、あるいは共用しておるものということになりますると、実際問題としていかにするか、なかなか困難か問題が多いので、御承知通り税法においては家事上の経費及びこれに関連する経費は控除しない計算になつておりまして、現在の実情から申し上げますると、さようなことに相なりますのはやむを得ない。勤労者の場合におきましては靴を勤労所得を得るための、必要な経費にみるかみないかについて議論があるわけでありますが、さような生活にも供用され、家計費にも使われるという部面につきましては、非常に問題がございますので、今申し上げましたように農業経営に專用する物件の所得費、修繕費、これなどに明らかでございまするが、その他のものにつきましては一々細吟味いたしまして経費をみるということが、なかなか困難な実情にあるということを御了解願いたいと考える次第であります。
  94. 内藤友明

    ○内藤委員 分割することが困難だからみないというお話でありますが、これは非常に不親切なことではないかと思うのであります。科学的にもし分割計算ができるとすれば、それをお認めいただけますかどうか、それをお尋ねいたしたいのであります。
  95. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 問題は具体的に判断するよりほかないと思いますが、非常に事柄が明瞭であるという場合においては、私は考慮の余地があろうかと思います。しかしごく常識的に考えると、両方に供用されるものはなかなか区分の限界がつきかねるものでありまして、実際上一々区別してやることはむずかしいのではなかろうかと考えておる次第であります。
  96. 内藤友明

    ○内藤委員 それではひとつ具体的の例をあげて申し上げたいと思いますが、蚕害であります。これは養蚕をやつておらないときは普通の住宅であります。いよいよ養蚕が始まりますと、障子をはりかえて、まん中にいろりを切つてこれを蚕害にするのでありますが、そのためにやはりなにがしかの費用がかかるのであります。もちろん障子をはりかえたりしますものは、後に家事用のものになることはなるのでありますが、これも使用年月の割合で計算したり、あるいはその他のことで計算すれば、計算のやり方はあると思うのでありますが、從來はこういうものは一切除外されておつたのであります。こういうことが農業所得が非常に過重になつておつた一つの原因でありまして、そういうことにつきまして、もし合理的な計算方法があるならば、お認めいただけまするか、どうでありますか、もう一遍お伺いしたいのであります。
  97. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 ただいまの御指摘の場合におきましては、研究いたしてみたいと思いまするが、特別に養蚕に使うために、臨時に出費をしたというような種類の費用がございますれば、当然必要経費として、その年全部を引くか、あるいは相当長期にわたりますれば、長期にまたがつて引くというようにすべきじやないかと考えます。ただ家事にも使い、養蚕にも使う。家を建てるときに、家の償却に、養蚕の部分をいくら見て差引くかということになつてきますと、なかなか困難であろうということを先ほど申し上げたような次第でございます。
  98. 内藤友明

    ○内藤委員 それでは次に進みまして、大藏省から地方税務署にお示しになりました農業所得の計算方法の中に、農具費は各種農具の修理費により計算するということになつておるのであります。現実に農村で税務署の方が農業所得を算定されますときに、私どもは農具費の問題につきましても非常に議論をしたのでありますが、最後に税務署の方は、こういう通知が本省の方から來ているのでそれはそうかもしれないけれども、どうにもならないという返事で引下つたのであります。私は農具費は、各種農具の修理費により計算するということは、非常な誤りではないかと思います。小農具はよろしく購入代金をもつてすべきであり、大農具はせめて大農具の償却費を考えなければならぬと思うのであります。はなまだ話はこまかいようでありまするけれども、こういうことを親切にしてやらなければ、農家が納得して所得税を納めないことになるのであります。そういうことを少しお伺いしたいのであります。
  99. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 ただいまの点はあるいは昨年度の通牒が不十分な点があつたかと思いますので、今後におきましてはこういうようにいたしたいと思います。大体耐用年数が二年未満くらいの小農具は、その年購入した経費として差引く、耐用年数が二年以上にまたがるような種類のものにつきましては、やはり一定の耐用年数をみまして、償却費をみる、同時にその年に使われました修繕費を差引く、こういうようなことにいたしたいと思います。なお通牒の不十分な点はよく徹底するようにいたしたいと思います。
  100. 内藤友明

    ○内藤委員 さらにこまかいことを二、三お尋ねしたいと思います。所得税法第十條に必要経費の意義ということが書いてあります。その中に非常に漏れておるものがありますので、それを一應申し上げまして、そういうものを加えていただけるかどうかをお伺いしたいのであります。たとえて申しますると、家畜の種付料であります。このごろなかなかこの種付料が高くなりまして、一回に二千円からするのであります。そこで神奈川縣あたりでは人工授精をいたして五百円くらいにしておるのでありますが、こういうものを必要経費に入れてくれと税務署に頼みますけれども、頑としてそれを入れないということになつておるのであります。こういう二千円の種付料、それから光熱費でありますとか、これは私の富山縣ではそういうのが非常にあるのでありますが、借り馬料であります。つまり役畜の借入料であります。今年のごときは、一耕作期一万六千円から七千円いたしております。一日の借馬料が千円を超しておるのであります。こういうのがここに漏れております関係上、また大藏省が地方へ出しましたこまかい指示の中にも書いてありません関係上、これが実は経費の中にはいつてこないのであります。それから藥剤費選種用の材料、保管料、販賣手数料、もみすり料金、作業衣、以下たび、そういうようなものも漏れておるようであります。その他なお漏れておるものはたくさんあるのでありますが、そういう当然必要経費として計算しなければならぬと考えられるものは、この際ひとつお入れいただけますかどうか、それを主税局長にお尋ねしたいのであります。
  101. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 ただいまお指摘になりました点は、所得税法第十條第二項に経費の定義を掲げております。その定義の中の最後に、その他收入を得るために必要な経費ということで、大分例示いたしまして、最後にかような言葉で必要経費を計算するということに相なつておるのでございまして、今御指摘の中で、若干疑問のものもございまするが、御指摘の中の農業にもつぱら使う光熱費、それからもみすりその他の動力費は当然だと思いますが、家畜の種付料は犢を賣却したときの所得を計算する場合に、必要経費として控除いたします。それから農耕に使います役畜の借入料、こういう種類のものは、その他收入を得るに必要な経費、つまり農産物を收穫するために必要な経費として控除すべきものと考えております。ただ作業衣とか地下たびとかいつた、働く人の身にまとうもの、食べるものというようなものにつきましては、從來とも先ほど申しましたように、いずれに見るべきか大分疑問なものがございまして、そういう種類のものにつきましては経費として見ないことに從來からいたしておるような次第でございます。
  102. 内藤友明

    ○内藤委員 それでは経費としてお認めいただけまするものは、大藏省が地方税務署に指示しておられまする計算法の中に、新しく書き改めて御通達いただけますでしようか。
  103. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 昨年度の経驗に顧みまして、地方的に大分こういう問題について粉爭が起きておるようでございますから、本年度といたしましては、さらに御趣旨等をよく体しまして、詳細な通牒を発しまして、できるだけ粉爭が少くなるように努めたいと考えておる次第でございます。
  104. 内藤友明

    ○内藤委員 こまかいことばかり申し上げて、ほかの方にも申訳ありませんから、こまかいことはそれだけにいたしておきまして、この二月の農業の所得税のことにつきまして最後に伺いたいのであります。ここに持つております資料は、農林省で調べた資料でありまして、今年の所得税につきましていろいろ賦課状況を調べたのであります。これによりますと農家の農業所得申告額と、それに対する税務署の更正決定所得額との間には、総平均いたしますると、一対一・四八という開きが、この農林省の調べにはあるのであります。かりに農家の所得申告額を正確なものといたしますると、それに対する税務署の更正決定は、およそ五割方の過大査定ということになり、從つて五割以上の所得税の負担過重ということになるのであります。ところが申告額と更正決定額が、はたしてどれが正しいかということは、軽々しく判断することはできません。大体におきまして農家は多少でも内輪に申告する傾向をもつておりましようし、またやみ所得のごときは、そのまま申告するようなことは実際ありません。これに対して税務署の査定が、農村のインフレ景氣という一般的な誤つた風潮に支配されて、実際より過大になりがちであること、またやみ所得に対する主観的な評價が混入されまして、事実といたしますると、どちらかと申しますれば税務署は過大になりがちのようであります。でありまするから、この農林省の調べは、はたしてこれが正しいかどうかということは、しばらくおくといたしまして、これから私は結論だけを申し上げてみたいと思います。それは税務署の査定は平均一・四六倍になつております。これが反当四千二百三十三円となつているのであります。これは主税局長もよく御承知のことと思います。これはいろんな理窟はいずれあとでお話申し上げることにいたしまして、省略いたしますが、大体一〇%以上の過重負担を來たしておる結果になつておるのであります。この計算はいずれあとからお示し申し上げます。  一毛作地帶に比しますれば二毛作地帶においては、より査定の倍率が大きいのであります。二毛作地帶には收益作物の裁培が可能でありますから、このことから一毛作地帶より、二毛作地帶の過重負担が相対的に大であるかどうかということは、ただちに結論することはできませんが、そのことはこの調査結果のみでは明らかでありません。しかし畑作経営に関しましては、私どもは判定の基礎となるべきものが、まだはつきりしたものはもつておりませんが、しかしここでも農家の申告に対する税務署の更正決定は、一・五六倍になつているのであります。つまりそれだけ過大査定になつていると考えられるのであります。そうしまして、ここで地方的にその倍率の差異が大きいことが見られるのでありまして、たとえて申しますと関東地方の申告所得は、反当二千五百三十八円、税務署の更正決定所得が反当三千七百五十円、一・四八倍になつているのであります。北陸でありますと、申告所得は一千八百八十円、更正決定所得額が三千四百四十円で一・八三倍となつております。関東地方より一般的に生産力も劣れば、やみの可能も少いと思われるが、更正決定はほぼ等しい額になつている。こういうことは税務署による所得査定の方法の相違からくるものと考えられるのでありまして、このような税務署による主観的な査定方法の相違は、これは地方的にはなはだしい不均衡を來すのでありまして、所得税の決定にあたりましてはよほど考えなければならぬと思うのであります。こういうことから、私はこの農家所得の計算方法は根本的に改めなければならぬと思うのでありますが、その具体的なことにつきましてはいずれ御相談申し上げたいと思いますので、そういうことについて御相談申し上げましたときに、ひとつよく御相談にのつていただきたいという希望をもつているのであります。  それから最後に私がお願いしたいのは、法律第六條に所得税を免除する規定が列記してあるのでありますが、この中に農業災害補償法に基いて支拂われた保險金、あるいは早場米供出にあたりまして、農家が收得いたしました奬励金、起過供出に対する奬励金、そういうものをこの第六條の所得税を免除する中に入れていただくことができるかどうかということをお尋ねいたしたいのであります。
  105. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 先に最後にお話になりました事項からお答え申し上げますが、今御指摘の農業災害補償法に基きまして農家が受ける給付金は、これは一つの保險給付類似の性質を有すると考えられるわけでありますが、そういう種類の收入金につきましては、現在の所得税法規定によりまして、損害保險契約に基いて受取る保險金に準じまして、收入とみないという解釈が成り立つのではないかと考えている次第であります。ただ今御指摘の早場米奬励金、あるいは超過供出の奬励金、こういう種類の奬励金は、これはあくまでやはり農産物を政府に賣却しました代價の一部とみるべきものでございます。これはやはり所得税法で、いやしくもあらゆる所得を総合合算して課税するという建前をとつております以上、この方は当然收入金にみて課税するのが、むしろ負担の公正を得るゆえんではないかと考えておりますので、この方を除外するというのはやはり賛成いたしがたい次第でございます。  なお石炭の生産奬励金、あるいは超過労働に対する特別超過勤務手当というような類似の所得がいろいろありますが、所得税法におきましては、勉強してより多く働いて多くの收入があるというような場合におきましては、当然その分に対しては收入として所得税がかかるということは、理論的に考えると私ども至極当然なことであると考えておる次第でございます。  それから最初に農業所得の課税についていろいろ御意見がありましたが、私どもの調査によりますと、昨年度の農業に対する課税は、一戸当り所得金額で大体三万円以下のようでございます。税額にいたしまして、六千円前後ではないか、平均してこう見ておりますが、平均をいたしましてこの程度の額というものは、私はそう過大ではないと今でも確信いたしております。ただ実は納税ということになりますと、やや違いまして、これを一遍に納めるというところに実は農家の負担を著しく過重ならしめた原因が本年度にはありまして、そのためになかなか納税にも困難を來しておるというような方面があつたように見受けられますので、本年度におきましては、できるだけ早いうちから納めていただくようにいたしたいと考えております。しかしこれは全体の問題でございまして、御指摘のように個別的に申しますと、いろいろ問題があつたことは御指摘の通りでございます。地域的に均衡がとれていない、あるいは同じ作物にいたしましても、田畑等の均衡が十分でないという点などにつきましては、本年度といたしましては、さらに一段と調査に努力いたしまして、でき得る限りさようなことのないようにいたしたいと考えておる次第でございます。なおそれからいろいろ伺いまして、農家において少し負担が過重であつたと認められる部分は、むしろ新潟とか秋田とかという單作地帶で、相当廣い耕作をしておるのが、この場合において相当な負担過重であつたという事実は確かにあるようでございます。これはしかし御承知通り所得税の累進率が下の方から非常に高くなつている。これが一番大きな原因でございまして、今度の税法改正によりまして、その点はよほど私ども改善されると考えられますので、本年度におきましては、課税についてさらに実情に即するように、一段努力いたしますと同時に、税制の改正と双方相まちまして、なお所得の課税の円滑、適正をはかりたいと考えている次第でございます。
  106. 内藤友明

    ○内藤委員 農業災害補償法に基いて支拂いを受けた保險金を、これに類似するものという中に入れて考えるということは、まことにこれはありがたい答弁であります。しかしこれは当然なことでございますが、最後に私はひとつこういう行き過ぎた通牒をお出しになつておられるということについて、お改め願いたいという希望を申し上げたいのであります。それは大藏省主税局の農業所得の計算法というのに、收入と支出は実收入と実支出等により計算し、各農業の実收入を個別に計算するのが建前であるが、現在においては克明に收支を記帳している農家がきわめて少いので、收入、支出とも一定の基準によつて計算した金額を標準にして計算するのが通例である。もしある人の実收入または実支出の金額が、その一定の基準とされた金額に比して増減があるときは、收入と支出の双方を実際の金額で改善し、その差額を加算しまたは減算する、こういうふうにやれというお示しがあるのであります。このごろ農家はかなり経済的知識が発達してまいりまして、簿記をつけている者が相当多いのであります。農林省がずいぶん昔から農家簿記の奨励をやつておりますので、このごろは約一割の農家は簿記をつけております。そういう正直につけている者が出した資料と、税務署がやつておられるものと著しく違つた場合は、それをとるな、税務署のもつているやつをやれ、こういう指示が行つているのでありますが、これははなはだ穏やかでない指示ではないかと思うのでありまして、これは農家が丹念に記帳しておりまする帳簿を尊重していただきたい。またそういう習慣を農家につけなければならぬ。それが経営の合理化をはかるゆえんでもあろうと思うのでありまして、それが税務署が考えているのと著しく違つている場合には、そんな記帳なんかどうでもいい、それは税務署が考えている通りやれ、こういう御指示ではいささかどうかと思うのであります。こういうことは改めていただいて、まじめに記帳する者の資料を御採用願いたいと思うのであります。私の質問はこれで終ります。
  107. 川合彰武

    川合委員 私はこの税制改正に関する法律案基礎をなす現在の日本の経済再建の構想について、税制改正と関連しつつ、まだ大藏大臣はお見えになりませんから、安本長官にお伺いしたいのであります。  まず第一に問題になる点は、法人税の改正の問題でありまするが、私は法人税の改正自体を今ここで取上げようとはしないのであります。問題は当局の案にあります通り、現行税法による場合においては、百四十八億五千五百万円の法人税があがることになつている。それを法人税が高いから百三十億にするのだというために、約十四億八千万円の法人税が軽減されるのであります。そこでこの法人税の軽減する理由というものが、主として外資の導入の便宜のためにやるのだと言われるのであります。そこで問題になるのは、はたして現在の客観的情勢のもとにおいて、主としてアメリカの資本でありますが、アメリカの民間資本が輸入され得るような情勢にあると安本長官はお認めになつているか。あるいはまた純然たる民間外資がはたして導入するような下準備ができているか、あるいは下打合せができているかという点を最後にお伺いしたいと思います。
  108. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 川合委員お尋ねでありますが、外資導入にもいろいろ形がありまして、今お尋ねの点は政府政府との間の関係でなしに、民間人同志の外資導入だと考える次第であります。それについてお尋ねの点をお答えしたいと思います。外資導入、民間の外資導入にしましてもいろいろな種類がありますが、いわゆるインヴェストメントと言いますか、本格的な投資を目的としているところの外資導入でありますならば、これはもつと日本の経済が安定し、そして為替問題が片づきまして、そして相当のリターン、海外投資、外國から申しますと海外投資は危險負担の点がありますから、利益配当等については相当大幅の利益が還つてくることが前提になつて、本格的な投資が行われるわけであります。今お尋ねのうちの民間外資は導入されるかどうかという点でありますが、本格的な投資はまだ準備期の時代でありまして、ただちに投資が行われるということはきわめてむつかしかろうと思つている次第であります。しかしながら外資導入の中には、民間外資にしましても種々形があるのでありまして、現在の状況に應じたものについての外資導入であるならば、これは相当可能性があることを申し上げなければならぬのであります。たとえてみますと、日本で今一番困る問題は、生産をするにも設備がない。あるいは設備はあるけれどもすぐれた技術がない。あるいは設備及び技術はあるけれども、原料がはいつてこない。こういうようなものがある。そういうものについて当面應急のこの日本の要請需要に應ずるために、この種の外資が導入されるということになります。たとえて言いますならば、歐洲第一次大戰の際に行はれたフイニッシング・クレジット仕上信用制度であります。これはヨーロッパにも行われ、日本にも若干行われたのであります。これはどうかというと外國から原料をもつてまいりまして、日本がこれを加工するわけであります。いわゆる委託加工をするのであります。そうして製品はさらに先方に渡して加工賃をとる。こういう制度であります。こういうものは相当行える余地もあると思うのであります。そういう面においての話合等は、相当民間の間でも進んだものがある。こう申していいと思うのであります。  それからリヴォルヴィング・ファンドというか、回轉基金によつて、たとえば綿花を入れる。そうするとこの綿花は紡績会社で綿布に織られ、あるいは捺染をされまして、製品となり、また向うへ出るわけであります。これは綿花を日本に入れて、さらに製品を買取るということは、今の管理貿易でありますと、貿易廳を通じて行われるのでありまして、これはむしろ一種の仕上信用にも似ておりますけれども、しかし製品を輸出する面におきましては、必ずしも綿花を日本に輸出したものがさらに持出すというわけではありませんから、嚴格の意味の仕上信用ではなしに、一種の加工を主とする貿易であります。これも回轉基金を元として、民間の間にクレジットが成立するのでありまして、これは民間のクレジットとして成立したいい例だと思つております。ただいま六千万ドルの成立があるのであります。これも法律問題、経済問題その他種々の問題がありまして、過去一年近く、十箇月の間いろいろ手続等について討議され、研究されたのであります。今回これができるようになつた最も大きな問題だと思うのであります。  それから將來投資であります。経営参加というか、將來の経営参加を目標といたしまして設備をもつてくる。あるいは原材料を日本に入れる。こういうようなものもあるのでありまして、一定の間に資本参加をするについては、日本の経済状態がもつと安定をする——これは生産が安定をし、流通あるいは労働問題その他が安定をいたしまして、為替の安定をいたした場合に、オプション、選択権を行使して、先方に株の一部を渡す。こういうような予約のもとに行われ、資材あるいは技術の堤供、もしくは原料のこちらへの持込み。こういうようなことであるわけであります。かような種類の特殊のクレジットであります。將來の本格的のクレジットに対する準備的、あるいは一種の橋渡し的な外資導入でありますが、こういうようなものが相当民間には話も行われているのであります。ただいまといたしましては、安本で貿易外資に関する委員会がございます。ここでその筋との連絡もとつて最後的にはきめる、こういうように相なつておる次第でございます。大体の状況は今申し上げたような次第でございます。
  109. 川合彰武

    川合委員 私も大体において現在の外資導入の過程と申しますか、折衞というものは、うすうす聞いておつたわけでありますが、幸いにこの席上において安本長官が具体的に御説明なつたことは感謝します。そこで問題になりますのは、はつきり申しますと、この外資導入によつて日本がアメリカに植民地ないし半植民地の状態になると言う政党、具体的に申しますれば共産党は、そのことを地方においてはつきり言つておるわけであります。共産党はそのような子供じみた概念をもつて日本の労働者諸君に対して、外資の導入は有害であつても無益であるというようなことを盛んに説いておるわけでありまして、私はこの点は非常に遺憾だと思うのでありますが、その反面においては、政府が、この外資導入よつて日本経済の再建がいかに促進せられ、同時にまた廣く日本の八千万國民の生活の安定と向上が期せられるかというように、外資導入によつて日本國民受ける利益が相当大であるということ、さらにまた、それによつて何らの政治的な制肘を受けないというようなことを、廣く國民に理解せしめることが必要ではないか、かように考えておるのでありますが、そういう点に関しまして、政府はどういうような意見をもつておられるか、これを承りたいと思ます。
  110. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 ただいま川合委員の指摘された問題は、きわめて大事な問題でありますので、私ここに率直に政府意見を申し上げたいと思うのであります。外資導入は、日本の國の再建、経済復興を目的として行われるものでありまして、その他の意味をもつておらぬのであります。しかも自主的な日本の経済復興が行われるために、好意ある連合國の援助によつて外資導入が行われるのであります。その点は非常に大事な点であり、また將來の日本の経済復興が自主的に運営され、自主的に平和産業として日本の産業が発達する、そのもとをなす一つの大きな條件として、外資導入が行われるのであります。御懸念のような点は目的としておらぬ、意図もしておらぬことを、十分國民諸君にお傳えしたいと思うのであります。しからばどういう方法によつてするかと申しますと、これは政府が五月十七日に経済復興の計画に関する委員会を設けて、長期の経済復興に関する計画の策定に出発いたしたのであります。これはすでに本会議でも、また他の委員会でもしばしば申し上げましたように、日本昭和五年から九年における経済水準を、昭和二十七年度には実現するように政府としては考えており、そういう案を立てるように、國民の各方面の代表者にお集まりを願つて日本の長期復興計画としてつくつていただく、こういうことでお願いいたしておるのでありまして、これは速やかに策定してもらいたいと思うのであります。その中には、その計画によつて日本の國全体の、あるいは各種の産業、各種の経済部門について必要とする外資導入は、計画的にさらに織りこまれるわけであります。この計画によつて、この外資導入の眞の意味を果すベき導入を懇請し、導入をいたしたい、こう思う次第であります。日本の外資導入につきましては、たとえば大正十三年から電力会社の外資導入があつたわけでありますが、当時大同電力の福沢社長が、外資導入の調印を終えて横浜に帰られますと、一部の國粹論者が、國を賣るというような意味で、いろいろなデモンストレーションがあつたことを記憶いたしておるのであります。しかしあの外資導入によつて開発いたしました木曽川筋、その他大阪、名古屋方面への電源開発及び送電、配電等の設備は、今も非常に日本國民に役立つておるのであります。そうして福沢さんが賣國的なことをなさつたのではないということは、日本國民のひとしく知つておることだと思うのであります。外資導入は適当に、適正に行われるということを固くお約束いたしまして、いろいろ一部で言われるがごとき懸念のないことを、明らかにここで申し上げたような次第であります。
  111. 川合彰武

    川合委員 われわれも安本長官と同意見であります。ただ問題は、さらに具体的に申しますと、外資導入を焦慮する余りと存じますが、わが國の財界の一部には、外資導入の前提條件として、日本の労働組合法を改正しなければいけない。少くとも外資導入がされた会社の労働組合は、團体協約によつて労働爭議を一應たな上げする必要があるというような意見が唱えられているわけであります。この点に関する政府の所見はいかがでありますか。
  112. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お答えいたします。外資導入を、殊に民間外資導入をいたしますには、日本の経済が安定の域に相当進んでくるということが、本格的な外資導入にはぜひ必要であります。経済安定につきましては、労資の協力が固く結ばれるということが非常に必要なのであります。そうして労資の協力が固く結ばれるということについては、私は組合運動の健全なる発達ということ、しかも組合の間において、みずから自主的に健全に発達されるということがきわめて重要だと思うのであります。そういう意味におきまして、組合運動の健全なる自主的な発達ということは、外資導入にもきわめて大事でございますが、しかしそれ以外にわたつてお尋ねのような意図でもつて労働の問題に対する対策を立てようというようなことは、政府はまだ考えておらぬことを、ここで申し上げたいと思います。
  113. 川合彰武

    川合委員 次にお尋ねしたい点は、なるほど現在においてはまだ投資の段階に來てないというわけでありまして、投資の段階に來るには、まだいろいろなプロセスを必要とするのでありましよう。そこでこれは多少先の問題でありまするが、先ほど申しましたように、財界の一部には、またこういうような議論が行われておるのであります。場合によるならば経営権も認めてもよろしい、少くとも株式の比率において、五一%の株式をもつてもらつても差支えないというようなことを言われておる向きもあるのでありますが、こういうような株式の半ば以上が外國人によつて占められるということは、相当問題であろうと思うのであります。あるいは現在まだ問題になつていないから、ここで御答弁ができないかわからぬのでありますが、將來民間外資を投資方面受け入れる場合において、もし外國人の方から経営権の立体性を自分の方に欲しいというようなことを條件に、資本の輸出を行いたいというような者があつた場合には、政府はどういうようなお考えをもつか、さらにまたわれわれも杞憂する者の一人でありまするが、現在の政府間のクレジットなり、あるいはまたほかのいわゆる外資というものは、主として担保を要求されていないのでありまするが、將來もし政府間の借款という問題において、日本の鉄道あるいはまた電信電話というものを担保にほしいというようなことがあつた場合においては、政府はどういう考え方をおもちか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  114. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 第一点は、民間の外資導入の中で経営参加の場合についてのお尋ねであろうと思います。その点につきましては実はいささか私も経驗をもつておるのでありまするが、抽象的にいろいろ論ずるわけにもいかぬと思います。会社の種類とか、経営参加の状態とか、あるいは産業の種類あるいは経営方針その他についていろいろ考えられるのでありまして、一概に多数の株を要求されるというようなことはないと思うのであります。あるいは場合によつてはいわゆる議決信託——ヴォーティング・トラストと言いますか、経営権は、日本の信託会社とかあるいは信用ある機関——銀行その他に信託しておいて、議決権の行使はそういうものに任せておいて、投資の面において配当その他の利益を向うに受け入れるようにするという制度があるのでありまして、そういうような制度がまた行われるだろうと思うのであります。要するに外資導入ということは、導入者と導入を受けるものとの間の信用関係、廣く言うならば國際信義、國際信用ということが大きな要素をなすのでありまして、そういう面から行われなければ、過半数の株をもつたがゆえに安心だとはいかないのであります。むしろ場合によつたら信用ある日本の機関に議決権を信託しても投資をするということも行われるのでありまして、一概に抽象的には申し上げられないと思うのであります。なお御心配になりますようなことも、ほとんどあるまいと考えるのであります。そういうこまかい問題は技術的あるいは契約の内容等にも関連をし、それと一緒に議論しないといけない点だと思います。抽象的には大体今申し上げましたような考えをもつております。
  115. 川合彰武

    川合委員 われわれもアメリカ人ともつき合つたわけでありますし、若干こういう問題に関係した一人であります。そこで私はおのれの志をもつて他人を律するということのないことを希望しておるわけでありまするが、先ほど申しましたように、アメリカの資本がはいつてきた場合に、日本がアメリカの植民地ないしは半植民地の状態になり得るということが言われるゆえんのものは、これはおのれの志をもつて他人を律するから、そういうように非常に懸念するのだということを私はよく説いておるのでありますが、日本人自体から考えた場合においては、しばしばこういうことが行われてきたわけであります。奉天事件以來似せ満洲國ができた。このときに最初にできたものは満洲電信電話会社であります。その後蘆溝橋の事変以來、いわゆる維新政府あるいはまた北支の臨時政府というものができて、そしていろいろな特殊会社というものが構成されたときに、日本はほとんどその経営権を掌握した。しかもいろいろなカムフラージュした方法によつて経営権を獲得したわけであります。かつての軍閥あるいは帝國主義時代の日本は、そういう方法をとつたのであります。從つてそういうことをアメリカにおいても行うのではないかという心配が一般に抱かれるわけであります。私なフェヤーなアメリカ人、あるいはまた純然たる一つの商業資本的な進出の面から考えて、日本がかつて大陸でやつたようなばかげた政治的な意図をもつたようなことはないと確信するのでありますが、どうかそういうことのないように、今のうちからわれわれとしても、これは國民の一人として対処する必要があると考えるわけであります。ところが現実にはわれわれとしてここに注意しなければならぬ点があります。上海がかつてブロード・マンションという大きなホテルがあつたのでありますが、これは御承知のようにユダヤ系統の英國人がインドに進出し、それから香港に進出し、間もなく國民政府ができて中支の政治安定ができたと同時に、長江筋にその財閥が進出しまして、ブロード・マンションを拠点といたしまして、長江一帶に大きな勢力を占めたのであります。それが最近におきましては中支那の政治不安からいたしまして、再び資本を香港に回收した、そうして香港を拠点といたしまして漸次今日本に進出しつつあるということを聞いておるのであります。ユダヤ系統のサスーン、ジャーデン・マジソンという者が、いろいろな形態において今日本に進出しつつあるということをわれわれはおぼろげながら知つておるわけでありますが、現在日本の株價の状況から見るならば、ここに一億ドルなら一億ドル、千万ポンドなら千万ポンドという金をもつてくるならば、日本の会社の相当数というものは、かかる外國人によつて掌握されるわけであります。最近サスーンとかジャーデン・マジソンあたりがいろいろな形態を通して日本に進出して、日本の株式を掌握しておるということを耳にしておるのでありますが、こういうことに対して政府は、どういうようなお考えと対策をもつておるかということを承りたいと思います。
  116. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 川合委員の御趣旨は私まつたく同感であります。私の経驗から申しましても、健全なる外資導入をこちらは非常に要望する。同時にこれに対してはわれわれは國際信義の原則の上に立つて受入態勢を整え、十分これにこたえていく、こういうことが非常に必要だと思うのであります。健全なる外資導入の要望をいたしますと同時に、國際信義の原則によつて導入される外資については、その維持その他の受入態勢というものは十分整え、これに應じていく、これがつまり外資導入を促進する途にもなるのであります。健全なる導入を要望いたしますが、不健全なるというような問題に関しましては、もちろんわれわれは十分の考慮を拂つてこれは避けたいと思うのであります。その点は川合委員の御指摘のように十分注意をいたしておる次第でございます。
  117. 川合彰武

    川合委員 そこで問題が税制の問題に還るわけでありますが、先ほど安本長官もおつしやれた通りに、現在の状況下においては民間の外資が導入し得られるような態勢にはないということを私は思わざるを得ないのであります。なぜならば民間の外資というものは依然として利潤を追つてくるものであります。その場合においては投資の安定性、それから利子の確実性ということが問題になるわけであります。ところが現在の日本は、おそらく一本の為替相場というものが実現するには、相当の年数がかかるだろうと思うのであります。從つてまず民間外資が導入し得るような一番大きなフアクターがまだ確定しないという点、それから労働問題その他の日本の経済状況から見て、民間の外資がスムーズに導入でき得るような態勢にはないと思うのであります。言葉をかえて言うならば、私は民間の外資というものが導入されるときには、日本のインフレーションが克服されて、安定経済が実現されたときにおいてのみ、民間の外資というものは導入されるべきである。ところが日本の現状はインフレーションを克服するために外資を導入してほしい。そこにわれわれは現状とわれわれの希望とは矛盾があるということを思わざるを得ないのであります。從いまして私はどうしても現在のこの貧血状態にあるところの日本の産業経済をして復興せしめるためにも外資は必要である。その民間の外資はなかなか來ない。民間の外資はそういうような條件が完備された。すなわちインフレーションが克服された場合においてのみくるのである。そこに私はこの限局された外資ということが問題になると指摘するわけであります。そこで他の條件が完備しないにかかわらず、民間外資導入を前提として、法人税の軽減のみを取上げるという点において、私はそこに問題があるというように考えるわけであります。言葉をかえて申し上げますならば、外資導入という言葉に藉口して——藉口してという言葉はあるいは言い過ぎかわかりませんが、外資導入にあせるあまり、むしろ日本の会社資本というものを擁護することを考えておるか、あるいはまた外資導入の條件をつくるということでカモフラージして、むしろ税方面におけるところの日本の会社の負担の軽減をいたしたいというのが眞意ではないかと思うのでありますが、いろいろな政治的な立場の相違もあるわけでありますが、この点に関して安本長官の御所見を承りたいと思います。
  118. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お答えいたします。先ほど來申しましたように、殊に民間の外資導入はこの受入態勢の整備と経済の安定、為替の安定、その他の安定を必要とするのである。これが本格的の外資導入で、投資はそういう後でなければ來ないと思う。今準備期だということを申し上げたのでありますが、しかし一種の変態的な外資あるいは資材、原材料、設備等の擁護を目的とする一種の外資導入、クレジットの設定が行われることが見込まれる。こういうことを申したのであります。なおそのほかに政府政府との間の外資導入であります。これが最も多く働いておる。こういうことを申したのであります。そこでいささかお尋ねの点とちよつとはずれるかもしれませんけれども、もう一言申し上げておきたいと思いますことは、きわめて重要なことなのであります。今のはそういう変態的な外資導入及び政府間の外資導入、ガリオア・ファンドとかエロア・ファンドとかいうことが民間にありますけれども、政府間の支援の強い回轉基金の外資導入であるとか、こういう種類のものが大巾に要請され、また企図されておるのであります。しかしこの前提はやはり日本の経済の安定ということが必要である。安定にはすなわち第一には、今回の予算が均衡を得た予算、健全金融がまず第一にできなければ、好意ある連合國の援助を求められないということを考えなければならぬと思います。本日もその筋へまいりましてそういう点を非常に力説されたのでありまして、この予算の健全金融、産業の安定、その他について非常な力説を受けたのでありますが、そういう点が最も大事だと思うのであります。  それから今のお話にはいりますが、この法人税の今回の軽減は、いろいろな意味をもつておることは申すまでもありません。これは法人税あるいは地方営業税を加算いたしますと、担当利益の大部分、あるいは利益の全部がすべて税として取上げられるとまで言われることがあるのでありまして、これを軽減するということは、一は外資の導入もありますが、一つには日本の健全なる資本の蓄積を誘致します上においても、これはきわめて大事なことだと思います。終戰以來この補償打切等によつて日本の資本は壞滅しておるのであります。私はあえて資本家と申しません。資本であります。事業をするには資本が必ず必要であります。これは國家資本によるのか民間資本によるのか、いずれかによらなければなりません。これは川合委員と多少違うところもありますけれども、民間の資本を主として企業をするということに立つておるのであります。そういう関係からして、民間資本の蓄積を誘致することが、事業の健全なる発達をするという上にきわめて重要であります。  設備あるいはその他のものを整備すると同時に、資本がからになつておるものに新たに資本を入れるということがきわめて重要であります。そういう意味におきまして、今の法人税の税率等を考えますと、資本の蓄積する。つまり資本を守るという上においては欠けるところがありますので、これを現在の日本の急迫した財政とにらみ合わせて、許される範囲において軽減する。こういうことにいたしたのでありまして、これが一つのねらいどころであります。勤労者に対してその生活の安定のために勤労者の所得税を軽減する。またそれの不都合を是正すると同じ意味において、資本の蓄積は日本の経済復興に必要でありますから、その面において法人税を軽減するというようなことをいたしたのであります。資本家と資本というものとは区別しておりますが、いわゆる在來の財閥その他を主とするような資本を擁護するという意味は含まれておらぬのであります。今後の資本は修正資本主義というか、私は証券民主化とともに、廣く國民の間に新たに資本が蓄積されて、國民は自由に資本を投じて企業に参加する権利が與えられる。そうしてそれによつて新しい國民を中心とする資本層が形成される。これが私はほんとうの新しい資本主義の行き方だろうと思います。そういう意味において資本が蓄積されることを目的としておるのであります。一面におきましては、ごく特殊的なクレジットの設定もありますが、それにしましてもしばしば聽く問題は、法人税の高いという点であります。そういうものもかね合せて法人税の軽減、こういうことに相なつておるような次第であります。
  119. 川合彰武

    川合委員 法人税自体について言いますならば、なるほどアメリカの法人税と比較いたしますならば雲泥の相違であります。ところがしからばなぜ日本の法人税が高いか、アメリカの法人税は安いかと申しますと、これは会社の平均利潤率の点において、日本とアメリカとはよほど違つておる。アメリカの平均利潤率は非常に低いのであります。この点は安本長官に申し上げる必要はないのでありますが、そういうような法人税の基礎をなす平均利潤率において非常に相違がある。從つてこの法人税においても、非常にかけ離れておることをわれわれは考えねばならぬと思うのであります。殊にもしこうような法人税の問題に関して、関係当局からこれを撤廃しろとか、あるいはもつと引下げろと言われた場合においては、その法人税の基礎をなす平均利潤率の点について、われわれは関係当局に指摘する必要があると思うのであります。それはそれとして、ところでこの税制改正に関する法律案の要綱の中に、法人税については産業の振興、外資の導入というように、外資の導入ということが法人税の改正の目的に主としてなつておる。私は、芦田内閣が外資導入を促進してもらう一つの使命をもつておることを認める一人であり、またぜひともそれを促進してほしいと思うのであります。しかしながらこの法人税の改正のよつてくる原因というものは、まだ法人税の対象になるべきような外國法人会社がないではないか。しかもまだこの一、二年の間にそういうような会社も設立の見込みがないということを考えたとき、すなわち純然たる長期的な投資というものが、会社形体をもつて行われないというときにおいて、外資導入のために法人税を引下げるということは、理由が成立たぬというふうに思うのであります。從つて私は法人税を引下げるという理由については、また別個の観点から申し上げたいと思うのでありますが、外資導入のために法人税を引下げるということは、いささか牽強附会の論だと思うのであります。この点は先ほどからの安本長官の説明によつても、ある程度肯定したように思うのであります。もつとも安本長官は主管大臣でありませんので、深く追究申し上げることはどうかと思うのでありまするが、いささかこの法人税の引下げの理由を、牽強附会の論をもつてその原因を求めておるという点に関する政府の所見を、ひとつ伺いたいと思うのであります。
  120. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 私から政府の所見を申したいと思います。これは日本ではございませんけれども、戰前には日本は外資導入については、最も國際信義を守つた國だと思うのであります。現にそういうような言葉をも聞いておつたのであります。問題は別であるのでありますが、外資導入がその國の財政の紊乱、その他の関係から、非常な高率の税を課せられることになつて、本格的な海外投資をしたものが、十分なる收益の確保ができないというような事例が、しばしばあつたのであります。そこでこの外資導入の條件といたしましては、その利益に対する税の問題が、いつも強く問題として指摘されるのであります。それから日本の問題としては、本格的な投資は未だありませんけれども、しかしながらその準備期におきましては、物資の導入を前提とする一種の外資導入が行われる。また話の上に上りつつあります。そういうようなものが延いて本格的な外資導入に発展していくのであります。そこで予備的な一種の外資導入をいたしますについても、常に話に出ておるのは税制その他の問題であります。そういう意味におきまして政府はほんとうに國民の間の國民的資本の蓄積というのを、先ほど來申しましたような目的として、法人税の軽減をもはかりましたと同時に、また外資導入にこたえて、その情勢の支障の一つとなるようなおそれのある法人税の引下げということも、やはり目的としたものであります。併せて両方を目的としておる。こう申してよいと思うのであります。
  121. 川合彰武

    川合委員 そこで再び問題が再轉するわけでありますが、民間外資の導入の一つの予備的條件の完成手段として、法人税の引下げをする。これも了承するわけでありますが、そこで私は当初から申し上げましたように、外資導入の受入れ態勢を整備するという点と別個に、現在のような日本の株式相場と同時に、日本の会社の資産が時價と帳簿主義、主として日本の会社は帳簿主義をとつておる。しかもそれが時價と非常に懸け離れておるということから考えた場合において、民間の外資が導入せられるというような場合においては、評價替ということを行わない限りにおいては、日本の株式がきわめて少額なデゾールその他によつて、皆外國人に集中されるおそれがある。從つて外資導入の前提條件として、單に法人税の引下げというような、向う樣に都合のいいことばかりではなくして、日本の産業資本と申しますか、そういうことを考えて、評價替ということを考える必要があると思うのでありますが、この点に対する政府の御所見を伺いたいと思うのであります。
  122. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 その点についてお答え申し上げます。実は金融機関の方は整備計画を立て、ようやくこれを完了いたしました。新しい資本の導入というのは、ただいまの仮定であります。企業再建整備の方は、集中排除とか、あるいは諸般の事情のためにやや遅れておりますが、これも速やかに促進をさせることと思うのであります。その促進をすることが、外資導入その他にも資することが非常に多いと思うのであります。その場合にただいまの企業再建整備その他によりまする手続をしては、薄價によつて資産を計上し、また処理することになつておるのであります。これが將來再建整備が済んで、新たに日本の経済も安定の見透しができて、物價その他にも安定の見透しができ、そうして初めて動かざる水準ができた場合に、その動かざる水準と薄價との間にはなはだしい開きが起きた場合に、いかにこれを処理するかという問題だろうと思うのであります。そういう問題であれば、そのとき政府としては諸般の事情を汲みまして、会社経理あるいは一般投資、それを保護するというような上から、諸般の轉換を考え合わせて、その点は善処しなければならぬと考えておるのであります。今の評價替等の問題は、研究はいたしておりますが、まだこれをいかにするかというようなところまで、決定の域には達しておらぬと申していいと思うのであります。もう一度誤解のないように申し上げますと、企業再建整備もまだ済まぬ今においては、その問題は政府はまだ取上げる域に達しておらぬ、こう申すのであります。しかし事は非常に重大でありますから、研究はいたしておる。こういうことを申し上げたいと思う次第でございます。
  123. 川合彰武

    川合委員 最後にお尋ねしたいと思うのでありまするが、法人税の引下げが外資導入のためというのは、二つの意義があるということが明白になつたように思うのであります。その一つは今までの御説明によつて、外資導入の予備的條件の完成という点、もう一つは日本の主として会社が健全なる経営状態にあるために、この法人税の負担を軽減ならしめたというような、二つの意味があるようであります。そこで私のお尋ねしたい点は、なるほど列國と比較して見た場合においては、日本の法人税は非常に高いわけであります。しかしながら現実に個人が小さな会社に轉化しつつある。一種の脱税目的というような点もあると思うのでありますが、とにかく個人経営では税の負担が非常にはなはだしい。そこで会社にかえた場合においては、税負担が軽減せられるというために、最近においては皆会社に変りつつあるわけであります。殊に資金調整法が撤廃された後においては、個人から会社に皆轉化しつつあります。そういうことから見た場合においては、個人との比較においては法人税は高いものではないというように思うのでありまするが、この点はどうか。もう一つはこのことは制度の上においては、税制の面においては個人と法人との負担というものはバランスされておるというような議論が成り立つとするならば、しからば何ゆえに個人から法人に轉嫁しつつあるか、そのことは、要するに法人の場合においてはきわめて脱税が容易だということを意味するのではないかと思うのであります。そういうような二点について私は当局の説明を煩わしたい。もう一つこれは私どものような社会党の者と、修正資本主義の立場をとる民主党の方とは違う点でありまするが、私は日本の産業復興というものが会社資本の蓄積が行われるということによつてのみ、日本の産業経済の再建が促進されるとは思いません。問題はその國内の資本の蓄積の大半というものが、やはり國民一人々々に資本が蓄積されて初めて、私はその國の産業経済というものが、いわゆる資本の蓄積が行われるというように思うのであります。ところが現在の状況のもとにおいては、個人がいわゆるたけのこ生活かららつきようの生活になつておる。資本の蓄積が行われていない。そこで個人の資本の蓄積が行われていないにもかかわらず、單に会社の資本蓄積のみが行われる。少くとも行われるようなファクターを新たにするということは、そこにわれわれとしては不満足な点がある。しかもそれは決して健全なる産業経済の発展に資するものではないというような私どもは理解するのでありますが、以上の二点——今言つた私の意見に対するところの政府の所見を承りたい。これをもつて私の質問を終ります。
  124. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 川合委員お尋ねの最後の点について私お答えを申し上げたい。他の点は政府委員から所管についてお答えを申し上げることと思います。この会社資本の蓄積が、根本的に戰爭中及び戰爭前の会社の資本の形式の方法とは変つてきておるということを、まず申し上げないといかぬと思うのであります。從來は会社が自分の借入金とか、その他自分の資金でもつて会社をつくつていくというようにして、あるいはまたその最も大きいのは、財閥を中心とする一つの大きな企業の連合であつたのであります。財閥とまで言わなくても、企業の連合の形式で日本の会社がたくさんできておるのであります。その会社の資本を集める点においては國民に直接関係がない。また國民に門戸を開いて投資をする機会を與えることなしに会社ができて、そうして利益を壟断をしておるというのが戰爭前の問題であります。ところが企業の集中排除とかその他の点におきましてこれがこわれて、そうして新たに生れたものは、この國民の投資、國民の資本を集めて会社ができ、新しい企業の会社資本としての形式ができる、こういう点であります。すなわち今度は國民が、今お話になりましたように、余財は貯蓄をして、そうして資本をつくり、それを会社の設立に当りまして、あるいは増資に当りましては、廣く門戸を開かれて、何人も好むところによつてその株式を引き受ける、あるいは株式を買い受けることができる。投資に参加して、そういう國民に直結した会社資本が形成される。そうして企業が出発する。こういうような新しい時代になつたのであります。あるいは資本形成の民主化、あるいは私は國民を中心とする資本の形成とこう申しておるのであります。そこで今川合委員お話のように、会社が会社資本を形成するということはもうないのでありまして、それでなしに、國民の貯蓄によつて國民がすべて会社資本を形成する、こういうことに相なつておるのであります。その間の運動が、御存じのように証券民主化の運動であるとか、あるいは資本民主化の運動であるとか、こういうようなものであろうと思うのであります。この窮迫した國民経済のもとにおきましては、なかなか國民の間の資本の蓄積も骨が折れるのでありますけれども、しかしこれはどうしても日本の経済復興のためには達成しなければならぬ点であると思うのであります。貯蓄運動の一つの大きな意味もそこにあると思うのであります。私昨年大藏大臣をいたしましたときにも、貯蓄運動は單に公債、社債、預金等のもののみならず、証券の民主化運動と相まつて、証券投資をも貯蓄運動の一つに入れるというようなことになつたのであります。これもまさに証券民主化、新しい資本の行き方の一つの現われであると申してよかろうと思います。最後の点は会社資本が容易に会社によつて形成されるのでなくして、國民の貯蓄によつて國民と直結し、國民と直接に形成されるということを申し上げておきたいと思うのであります。
  125. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 新しい税法のもとにおきまして、法人と個人との負担関係が均衡を得ておるかどうかというお尋ねでございまするが、私どもいろいろ計算してみまするときにおきましては、おおむね均衡を得ておるのではないか、むしろ若干法人の場合は、通常は負担が重くなつておるのでありまして、この税制にありましては、制度といたしましては、バランスをいたしておるのではないかと考えておるのであります。その計算の一例といたしまして、通常、今比較的小さい法人——かりに資本金二十万円の法人が五十万円の利益をあげた場合と、個人企業で五十万円の利益をあげた場合に、それぞれ法人税、所得税並びに営業税の三者を通じまして、負担を計算してまいりますと、法人経営の場合におきましては、三十四万円程度の税額になつておるようでございます。個人の場合でございますと、二十九万七千円程度の負担なつておるようでございまして、法人の場合がなお二割弱、一割五分程度負担が多い。これは資本金が多くなるに從いまして超過所得税の負担が軽くなりますので、漸次負担が接近してまいります。今日の法人の利益の実際の状況並びに個人の利益の状況から言いましても、制度では均衡を得ておるのではないかと考える次第であります。ところでそれでは会社によくしておるのではないかというお尋ねかと思います。これは御指摘のように最近、殊に臨時資金調整法が廃止されました機会におきまして、大分個人から法人になつておる向きが多いようであります。これは一つは税勢の運用にも大分関係することが多いと考えておりますが、この方面の改善をはかる必要もあると思うのであります。從來はややもすると、法人でありますと一應の帳簿をつける。帳簿ができますと大体においてその帳簿を尊重するというようなことがございまして、正確な帳簿でございますれば、これはもちろん尊重して、それによつて課税するということはあたりまえなのでございますが、ややもすると適当な帳簿をつけて、それによつて税務官吏が引きずられるというような弊害がなきにしもあらず、あるいは相当ございましたので、今後におきましては個人の場合の利益がどうなるかという点も併せ考えまして、個人類似の法人企業の所得の調査につきましては、税の適正を期するように努力してまいりたい。むしろ税務の運用の根本に問題があるのではないかと考えておる次第でありまして、この点につきましては権衡を得るように、十分に努力いたしたいと考えておるのであります。
  126. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 安本長官にちよつとお尋ねいたします。最近第一次の物價改訂の内容が発表になりましたが、大体二倍半以上にわたる大きなものだけであります予算はまだ通過しておりませんし、また一方においては税金でとられておる面もあるだろうと思いますが、そうなると補給金が出ない。そういうところから会社においては金詰りで困るところがあるだろうと思う。去年の例でみますと大藏省証券は二十七億七月に出ておりますが、今年は政府の方針として大藏省証券は出さぬ、財政と金融をまつたくマツチさせて月のバランスをとつていく。こういうことを言つておられます。こういう政策をおとりになりますと、企業の方ではものすごい金詰りが七月には出てくるだろうと思われる。こういう緊急な事態をどういうふうにして政府は救済するか、その具体的な方針を承りたいと思います。
  127. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 それはあるいは大藏大臣からお答えするのが筋かとも思いますが、大藏大臣は予算委員会の方に参つておりますので、便宜政府考えを私から申し上げたいと思うのであります。  御説の通りにただいまにおける企業金融の點についてはよほど愼重に、しかも果敢にこれを取扱わねばならぬと思うのであります。まず物價の改訂ということをなしにして考えましても、予算その他の成立が遅れておりますので、政府支拂いその他についても遅れがちでございます。そうして一面におきましては税その他の徴收も非常にございますので、民間における生産資金を供給する上の金融については、相当氣をつけなければならぬ點があるということをまず申し上げたいと思います。これが第一の点であります。  第二の点は物價の補正でありますが、今回は改訂と言わないで、ほんとうの意味の補正をいたして、なるべく低目にして、インフレーシヨンの激成を避くることにいたしたのであります。しかも基礎資材その他において引上げが行われる結果というものは、相当大きな補正であるわけであります。さようにしますと、運轉資金その他の面において新たなる資金を補給しないと、生産その他の関係上、経済活動が円滑にいかぬという点がありのであります。昨年の片山内閣のときにおきましては、そういう点が二月ないし、三月後に現れたのであります。施策としては始めての例でありまして、特に應急の措置をとつたようでございます。しかし今回の政策といたしましては、本格的に物價の補正が行われ、予算が運営されるようになつた場合におきましては、その金融の面は十分考え、そうしていずれ近くこれを発表しようと思うのであります。生産方面に向う資金、殊に運轉資金が枯渇をすることのないように十分考えたいと思う次第であります。これは單に工業、鉱工業方面のみならず、農業、水産業というような各方面にわたつても一連の金融措置をいたしまして、円滑にいたしたいと考えておる次第でございます。いずれ近く皆樣にもお諮りをし、またお話を申し上げまして、御意見をも頂戴して、さらにいいものを実際に行いたいと考えておる次第でございます。
  128. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 長官はちよつとお考え違いしていらつしやるのではないかと思いますが、私のお尋ねしたのは七月に起る目前の緊急なものをどうするかということであります。予算がかりに今月末通つたとしても、これが行政手続を経て地方廳へ配付されて、銀行から引出すというまでには、おそらく二箇月以上はかかるだろうと思う。片山内閣のときに遅れたのは行政手続が今のような変態でない場合ですらもそういうふうに遅れた。今のような場合にはもつと遅れることを一應覚悟しなければならぬ。後の場合にそういう事態が起ることはもちろん想像されますが、それよりも七月という月です。予算もできていない、税金もどんどん搾り立てられるが、そういつた特別の緊急的な補給金も出ていない。こういうところをどういうふうにして切拔けるかということは、大きな会社にしても、またそれの系統を受けておる小さい会社にしても、同じような関心事ではないか。その具体的な方法をひとつ御明示願いたいという意味であります。
  129. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 根本策だと考えたのでありますが、当面の問題として、実は一昨日でありましたか、物價のああいうようなダブル・プライセズな補正をいたしました。この月末をどうするかというような問題については、相当差迫つた事情がありますので、実は非常に急いだ次第であります。今のままでおきますと、会社は多くは赤字でありまして、手持の資金がないのみならず、赤字であると金融を受けることができない。基礎産業のものについては金融ができるにしても、一般に廣くはできないのであります。そこで物價を補正いたしましたのは実はその産業が相当黒字化する、そうして経営が健全化する、そうすると一般の金融としても、その幅において民間金融一般の金融が行い得る余地がある。そういうような点から実は非常に急いでいたしたような次第であります。そこで一般金融は、殊に事業の基礎というものが黒字化し、採算がとれなければいかぬのであります。そういう意味においてまずいたしたのであります。しかし補正をいたしましても、見透しはつきますけれども、月末その他についての金の入手ということにはならぬと思うのであります。そこでこれにつきましては、いずれ大藏大臣が申し上げようと思いますが、この安本に、通貨に関する日銀総裁及び両大臣の会議もあるのでありまして、こういうものにかけていろいろ対策を練つておる次第であります。近く應急の措置としては一般融資、あるいは日銀を通しての融資で、政府の支拂いのできるものについてはそれを促進するというようなこともいたしたいと思うのであります。なお農業方面については農業金融、水産方面についても別途にその促進を考えておるのであります。とにかくこの金融資金を全然手詰りにいたしまして、みな閉鎖あるいは休業するような会社をつくるということは、生産増強に非常に支障を來すわけであります。この点についてはそういうことのないように、金融的措置を講ずる準備をいたしておる次第でございます。
  130. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そこで物價の補正が第一、第二、その他で一應終了して、そうして一應いくらの水準で出発するということになる時期があるだろうと思うのでありますが、その時期は大体いつごろになるでありましようか。それからその時期において通貨は大体どれくらい伸びるものと計算されておるか。その点を第二にお伺いしたい。
  131. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 大体物價の補正が一循をいたしますのは、これは七月一ぱいくらいだと思うのであります。片山内閣のときは初めての例であり、相当長い時間をおいて、それがためにいろいろ支障も來したのでありますが、われわれといたしましては準備も相当前からいたしておりまして、大体七月一ぱいくらいには一循をして終えたいと思うのであります。その際の通貨の発行量をいくらにするかという問題であります。これは通貨審議会の議に付しておるのであります。これは昨年の十月でありましたか、それは二千七百億、それから今年の三月末までは二千五百億ということを予定したと思うのであります。多少幅をもたせて予定するのであります。現在の日銀の兌換券の発行量から言いましたならば、なお非常に下廻つておるわけであります。これについては物價改訂と伴いまして、大体通貨発行の限度をどこに置くかということも、さつき申しました二大臣、日銀総裁との懇談及び通貨発行審議会というものを早急に開きまして、そうしてその限度をきめたいと思うのであります。これをいくらに置くかということにつきまして、今いろいろデーターをとつて、あくまでも研究、調査を進めておる次第でございます。いずれ議に付する場合には御報告を申し上げ、またお諮りもいたすことに  いたしたいと思う次第でございます。
  132. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 物價の補正をやるからには、それくらいのことは当然計畫に入れてやつてしかるべきだと思うのですが、まだおやりになつておらないとすれば、しからばできたときに一應承りたいと思います。  その次に承りたいのは、おそらくそれで物價が、政府の計算によれば、マル公七割、やみが三・六%でしたか、そういうような計算をしていらつしやいましたけれども、これは消費財であります。われわれが民間人として考えると、やはりもつと上るような氣がいたします。現にその問題で労働組合、全官公労においては五千二百円ベースを要求しておりますが、おそらく七月十日前後に足並みが揃うであろうとこういう観測があります。そういう要求に対して政府はいかなる処置をとるか。三千七百円ベースをあくまで固執してがんばるか、その点に関する安本長官の御見解を承りたい。
  133. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 前の点で一口申し上げておりますが、通貨の発行量は物價改訂によるのみならず、予算の成立ということにきわめて密接な関係がありまして、まだ御審議を願つておりまして、その成立等についての見透しがつかないということでございます。準備はいたしております。殊に芦田内閣といたしましては、去年の経驗にも鑑みまして、金融の面、その他の面、あるいは資材配給の面等についても準備をいたし、一連の政策を発表しようと思つておりますけれども、殊に今通貨の量につきましては予算面の関係上、まだ本格的な最終の審議を終えないでおるような次第でございます。御了承を願いたいと思う次第であります。  それからこの賃金水準の問題でありますが、まことにお説の通り緊要な問題であります。しかし政府といたしましては、われわれが今考えております三千七百円ベースというものを物價の中に織りこみ、賃金水準を策定したような次第でございます。そしてこれが結局全國の鉱工業の平均賃金というものの見合いから出ておる。すなわち一月から今年の三月までの実績を基準として、この五、六月における実質賃金を推定算出しまして、その上でつくられたものであります。これにつきましては、われわれは安定帶の物資については五百十五億というような補給金をもちまして、生産價格よりも消費價格を百十の倍率のところで止めるようにいたしております。それから消費財については、七割ないし八割の増というところで止めたいと思いまして、それについてはやはり実質賃金の充実という面にも効果をもたらすことになりますけれども、生活必需物資の配給を潤沢にし、少くとも主食について、遅配、欠配のないように、また十一月からは新しい希望ももち得るように、さらに主食として代替配給をしますものについても、あるいは外國米の輸入ができるようなことも懇請をいたしておる次第であります。それもすでに司令部からも発表されましたような大体の見透しを得ておる次第でございます。さらに纎維製品その他につきましても、その配給確保及び増配等を懇請いたしたのであります。好意ある連合國の援助によりまして、この纎維製品等の配給も近く見透しが立つと思うのであります。そうしてそういうものの増配、あるいは配給の確保ということによつて実質賃金を充実さす。それによつてわれわれは賃金の上昇——物價と賃金の惡循環のもととなるところを断ち切ろうと努めて、その筋へも懇請を重ねておる次第であります。國民生活の現在といたしましては、大体金額の上においては生活費の二五%がマル公物資でありますけれども、しかし数量の上においては現在六五%に相なつておるのであります。この比率をさらに増加いたしまして、この賃金水準の名目賃金の引上げによつて、物價と賃金の惡循環を來すことを、十分断ち切りたいと思つておるのでございます。それについては結局は國内生産の増加ということと、海外物資の輸入ということが必要でありますので、これも同様に懇請を重ねて、さらに支障を來さないような処置をとる。こういうに努力をいたしておる次第でございます。
  134. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 数日前の新聞によりますと、この三千七百円ベース基礎なつて総理廳の統計による全國工業労働者平均賃金の基礎それ自体がすでに基準月において崩れておるという報道がありましたが、そういうように崩れておる場合でも、やはりこの三千七百円をもつてがんばるか。この点を長官にお伺いいたしたい。
  135. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 総理廳の方の統計の発表はまだ正式でございません。なお檢討を続けておると思いますので、それによつてただちに議論をすることはできません。その基礎となりました四月分についてみましても、紡績その他については一月、三月に遡つて支拂つておるような形がある。また特殊な余分のものも加わつておると思います。そういうような点も、もし数字が出ますならば、分析してみたいと思うのであります。しかし大体において、政府は前に申し上げました計算によつて、現在の平均の賃金水準は三千七百円で表現されておるとみて差支えないと思つておる次第であります。
  136. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 補正されたスタンダードで出発するわけでありまして、それで中間安定の秋に駆け込もうという御構想であるようでありますが、この中間安定をやるという御構想をこの間安本が御発表になりました。五箇年計畫の基準である二十三年度、これとおそらく吻合している計画であろうと思います。この五箇年計画によると、資本財の輸入ということは、かなり考えられてあるように思います。特に先ほど長官も申されましたガリオアとか、エロアとかがアメリカの議会でも可決されたと思います。ここで問題になるのは消費財であろうと思います。中間安定をやるためには、資本財を得て迂回生産を待つていては間に合わない。食糧とか、衣料とか、その他の消費財を入れるということが、中間安定の呼び水になるだろうと思いますが、この点に関しては、先ほど突然タイ米の輸入という発表がありました。あるいはまた今のお話でも纎維製品の放出というか、そういうような言葉がありましたが、政府はこの点について、具体的にどういうような努力をされておるか。國民は寝耳に水にぽかつと発表されるので、ちよつと戸惑う形であります。その間における政府の努力の内容を、できる限りこの際ひとつ知らしていただいて、もし見透しのあるものがありましたら、ぜひこの際御公表願いたい。巷間ではあるいはくつであるとか、洋服類とか、そういううわさが飛んでありますが、この点について御説明願いたい。
  137. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 まず中間安定のことから申し上げますと、長期計画は立体的な構想にもなりますけれども、これは平板的な構想で、とにかくノーマルな状態で進んで行くということを考えたのでありまして、つまり日本の現在を昭和五、九年の水準に、いかにして回復さすかということにあるのであります。現在はインフレーションがやや横這いになつたと申しましても、なお促進するおそれは多分にあるのでありまして、物價、賃金の安定の問題につきましても、種々の恐るべき要因が包藏されておるのであります。そこでこういうものを現在から長期計画のスタートに結びつけるためには、一つの中間安定施策というものによつてかけ橋をしないと、届かぬことになると思うのであります。そういう意味において長期計画の一環をなし、さらに窮迫せる現在から長期計画に橋かけをするために、安定政策ということが行われることになると思います。安定政策につきましては、今お話通りに、その筋への種々の要請を前提といたすものが非常に多いのでございまして、近く発表したいと思いますが、今ただちに申し上げる時期に達しないと思うのであります。なお要請中の中には、國民の生活必需物資、主食、纎維、衣料その他の点において、あるいは貿易促進のためのもの、あるいは運轉交通の輸送力の確保のために必要なる原料、こういうもの等が多分に含まれておるのであります。これは國内だけでなしに、海外に微妙なる関係をもつておりまするので、今ただちにここで一々数量的に、またその種類を列記して申し上げる時期に至つておりません。しかしいずれ安定施策の実行と相前後して、こういうものも申し上げ得られる時期に達すると、こう思つておる次第でございます。
  138. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その外資導入で、先ほど北村大藏大臣は、必ず外貨債は、償還するということを言明されておりましたが、今度の予算で、減債基金の中で、今まで政府借款になつておつた外貨債に対する利子や、その他の減債基金が載つておるかどうか、この点を承りたいのであります。抽象的に拂うといつても、あまり相手は信用しないと思うのでりあます。具体的な措置が講じてあれば、向うも安心するであろうし、今後の点についても非常に影響がよい、こういうふうに考える次第でございます。
  139. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お答えいたします。私も北村大藏大臣のしり馬に乘りまして、國際信義は十分に果す、それが結局は好意ある連合國の援助を受けるもとだ、こういうことを原則的にも主張し、またそれを実行いたしたいと考えておる次第でございます。しかし今はまだ講和條約が成立しておらぬのであります。その結果、日本政府が直接に負担をしておりますところの債務でありますとか、また地方自治團体その他の負担しておりますところの債務にいたしましても、ただちにこれを拂い得る状況に立ち至つておらないのああります。殊に國債につきましては、そういうような支拂を開始し得る時機に立ち至つておらぬのであります。また近くそれが支拂い得るという見透しも、講和條約等の関係上、つきかねるような事情にありますので、これは予算には計上してない次第であります。しかし計上してないからというて、この支拂はしないのだ、國際信義を重んじないのだという意味ではもちろんないわけであります。
  140. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後に二つばかりお伺いしたいと思いますが、一つは取引高税の問題であります。取引高税の創設については、安本長官も御関與になつたと思うのでありますが、どうもこの税は、新税は惡税といつも言われるように、感心しない税金であります。特に考えなくてはならないのは、中小企業の立場であります。デパートであるとか、あるいは協同組合のような、製造工場から直接引取るようなものは、段階が少いために百分の一とか、百分の二くらいで済むけれども、末端の小賣商人になると、それが五段階、六段階とかかつてくる。しかもその過程は累積させていく形です。六段階かかつたからというて百分の六になるのではなくて、前の百分の一、におのおのまた百分の一ずつかかつてきておる。それでありますから、実質的には百分の十とか、十五とかいうふうなものになつていくはずであります。そういう点から言うと、末端の中小企業ほど非常な苦難におおわれることになります。こういう点についても大企業と中小企業の不公平ということが、ここに明らかに生れてくることになります。あるいはまたこういう税金を創設することによつて、段階を減らそうとして、企業結合とか、企業合同に類似するような行為が出てくるおそれがあるだろうと思います。これはもちろん独占禁止法によつて禁止せられておるけれども、それに近いような脱法行為が出てくる。つまり経済の民主化に反するような行為が、この取引高税というものによつて生れやしないかという危惧ももたれるのであります。そういうようないろいろな点から考えてみて、この取引高税は、税收をあげるのにはよいかも知れないけれども、國民の中の大部分を占める中産階級に対しては、非常な惡税である。こういう税をあえておつくりになつたのはどういうわけであるか。特に中小企業について、今申しましたようなことに対して、どういうような措置をおとりになるか、この点を安本長官としてお答えを願いたいと思います。
  141. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お答えいたします。これは大藏大臣が申し上げるのが正当だと思いますが、私代つてここで申し上げたいと思います。この取引高税は、税の性質から言いますならば、しかも平常の税制という考えから言いましたならば、決して最善の税であるとは私も申しません。しかし現状の窮迫せる財政において、とにかく健全な、そしてまた均衡を得た予算をつくり上げるということが、外國よりの援助の條件にもなり、また國内の産業の復興その他の前提條件にもなることでありますから、何をさしおいても均衡を得た予算を組み上げなければならぬということになるのであります。そういたしますと、ほかによい財源があるならば別でありますけれども、こういうインフレのもとにおいて、比較的十分に税源をつかみ、そうして徴税が容易にでき、しかも均衡を得させるためには、代り財源がないような場合においてはこれによらざるを得ないというような実情にあるということを申し上げたいと思うのであります。中小企業に対する御懸念の点でありますが、これはまつたく私同感であります。しかし中小企業についてはいろいろの点におきまして、大企業と比較いたしますと有利な点もあるのであります。スタインという人がメード・イン・ジャパンという本を十年ばかり前に書いておりますが、その人の詳しい統計によりますと、日本の企業の中で七五%は中小企業だというのであります。何ゆえに日本にこういう中小企業が非常に起つたか。——私が十年前を拾い上げたということは、むしろ戰前のものを拾い上げた方が、自然のままに発達してきたのであるから、そういう意味において戰時中を除いて拾い上げたわけであります。その七五%も中小企業であるということは、日本の労働あるいはロケーションその他の点において適当なものであるがゆえに、そういうように発達したのだと思うのであります。今日ただちにそれだけの中小企業ができるかどうかということは問題がありますけれども、しかし中小企業は大企業に比して利点もあるのであります。今度中小企業廳ができまして、中小企業の指導、振興に当るわけでありますが、利点をつとめて生かし、その他の欠点については、これを改善するようにして指導していくならば、中小企業の振興はできると思うのであります。なお取引高税内容あるいは技術的な、そういう面の心ずかん等については、そういう箇所がありますならば政府委員から申し上げることにいたしたいと思います。
  142. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 最後に、取引高税については主務大臣にあらためてお聽きいたしますが、先ほど企業資産の評價の問題で、川合委員から蘊蓄あるお話を伺つたので、まことに同感であります。実際われわれが考えてみましても、資本家を擁護するのでなくて、資本を擁護する。これが日本の拡大再生産の基礎である。こういう観点から考えますと、法人税を少しぐらいいじつても、これは全然問題にならない。超過の部分を一〇%上げようが下げようが、そんなことはほとんど問題にならないのでありまして、問題は原價銷却を、今の時價に相應して認めるかどうかという問題になるだろうと思います。つまり戰前につくつた旧設会社と、戰後つくられた新設会社の間には、資本額に非常な差があります。形式的な額面において非常な差がある。從つて同じ一千万円の利益が出てきても、新設会社は厖大な形式的な資本をもつておるがゆえに、超過した部分は非常に少い。從つて法人税も非常に少い。しかし旧設会社は、資本額が実質的には大きいけれども、形式的に非常に少い。そのために超過利益というものは非常に多い。その結果法人税によつてごつそりやられるというところがある。その点は栗栖さんも十分御承知のことだろうと思います。その旧設会社に対して補償をみてやらぬということは、結局資本が自分でたこ配をやつておるか、たこの足を食つておるようなことだろうと思う。法人税をいじくるということよりも、この補償を時價に相應してみてやる。そうして機械の取替えなり、あるいは銷却に備えるというのが一番根本的な問題ではないかと思う。この点について、同僚川合議員のお話なつたことは、まことに同感禁じ得ないものがありまして、ぜひとも評價替えをやる必要があるとは思うのですが、しかし今の世の中で評價替えをやるということは、物價その他に対する影響もあつて、また社債の面も見なければならぬので、結局むつかしいと思う。ただ考えられることは、アメリカで行われているような一種の正常在高法というか、ああいうものをつくるとか、あるいはまた旧設会社の銷却について特例を認めて、法人税の特例をつくる、こういうことがぜひとも必要であるだろうと思うのですが、この点について安本長官の御答弁をお願いいたします。
  143. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 今中曽根委員からのお尋ねでありますが、私は今その問題について、もう一つの関連問題を安本長官自身から出したいと思うのであります。われわれが考えておりますのは、今リアプリシエーションとアプリシエーションの問題と、それからもう一つは新勘定、旧勘定にわけておりまして、新勘定に属しております赤字金融が非常に大きくなつておるのであります。これをいかにして銷却していくかという問題であります。この三つの問題が企業再建整備の上において絡みついて、どうしても解決しなければならぬ問題であります。そこでこれについては、今十分研究を進めております。その筋に私自身も参りまして、交渉をいたしておるような次第でありますが、これは日本の物價の水準あるいは経済の水準というものが、大体見透しがつかなければならぬ点がありますと同時に、一方においては企業再建整備の手続の進む必要もありますので、そういうようなものと見合わせまして、いずれ必要なときには適当なる措置を打ちたい。こういうように考えておる次第でございます。
  144. 梅林時雄

    ○梅林委員長代理 中曽根さん、ありませんか。
  145. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 一應これで終ります。
  146. 梅林時雄

    ○梅林委員長代理 本会議の都合もありますので、本日はこれをもつて散会いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  147. 梅林時雄

    ○梅林委員長代理 では本日はこれをもつて散会いたします。明日は午前十時から質疑を続行いたします。     午後五時十二分散会