○
平田政府委員 ただいまの
お尋ねにつきまして、一應私から御
説明申し上げたいと存じます。なお御疑問の点はさらに引続いて御
質問によりましてお答えいたしたいと思います。そこでお
手もとにお配りしてあります
税制改正に関する
法律案要綱という印刷物がございますが、それにつきましてまずごらん願いまして、それに基いてさらに別途
資料をお配りしてございまするので、その
資料につきまして御
説明いたしたいと存じます。
そこで
所得税につきましてはその
趣旨等はすでに
提案理由の
説明で御
説明申し上げましたように、現在における
所得税は今までにおける
インフレの
進展に対して非常に不
合理なことに
なつている。それを是正するのが
一つの大きな眼目でございます。
つまり負担の
合理化をはかろうということでございます。いま
一つは実際の最近における
経済界の
状況等に鑑みまして、あまりに
税制といたしまして
所得税に重きをおきすぎるということは、理論的にはいい
所得税が実際問題としてかえ
つて適正を欠くというきらいがございますので、
所得税といたしましては最近における
課税の
実情等から照らしまして、私
どもこの
少額所得の
負担はできるだけ
軽減いたしたい、かような
趣旨を
考えまして
改正案を作成しておるような次第でございます。
そこでまず
要領の一、
所得税の
税率でございますが、
税率につきましては先ほど申し上げましたように、現在の
税率が今までの
インフレの
進展に対して應じきれてない。と申しますのは、この
所得の
階級の刻み方が、昔ならばたとえば十万円の
所得と申しますると
相当な
所得でございまするが、今日の実際から申しますると、十万円の
所得というものは大した
所得ではない。にもかかわらず非常な高率な
税率に
なつておる。かようなところをこの際大幅に
合理的に是正いたしまして、あくまでも
所得税の
税率としては、最近の
経済情勢の推移に應じた
合理的な
税率にしようということに
中心を置いておるのでございます。巷間すでに傳えられておりまするし、皆樣も御
承知のように、
税率が不
合理であるために
課税の適正を期しがたい、
税率がもう少し
合理的になりますれば、税務署におきましても調査を充実いたしまして適正な
課税ができるけれ
ども、現在のような
合理性を欠く
税率では、なかなか思うようにいかないというのが、すでに官民あげての輿論でございまして、そういう点につきましてこの際できるだけ
調整を加えたい、そういう
考えでおる次第でございます。そこでこの
税率の刻み方を御覽になればわかりますように、今までは一万円以下を百分の二十、一万円を超える
金額百分の二十五、一万五千円を超えると百分の三十といつたふうに、下の方から非常に小刻みで
累進率を設けていたのでございますが、これをこの際といたしましては、できるだけ幅を大きくして
累進率を設けたいということを
考えて、率を刻んでおります。そういたしまして、一例でございまするが、
從來は百分の五十という
税率は、
所得税としては
相当高い
税率ですが、この百分の五十という
税率の
適用を受ける
階級は、五万円を超える
金額から百分の五十、こういう
税率に
なつていたのでございます。この辺に非常な不
合理と無理がございまして、たとえば地方において親父さんと
息子さんの
所得が
合算されると、たちまちその
上ずみの
部分に対しては五〇%
税金をとられる。石炭の
炭鉱労働者等が、少し
超過労働をやりましてよけいに
賃金がはい
つてきますと、たちまち高い
税率に乘つかりまして五〇%も六〇%も税をとられる。しかもその
所得たるやさほど大きな
所得ではない。昔ならば
相当な
所得でしたが、今日においては大した
所得ではない。そういうところに非常に不
合理がございますので、税の刻み方を、雜な言葉で申しますと上の方にずらしていつたということを言い得ると思うのであります。百分の五十の
税率の
適用を受ける
階級は、二十万円を超える
金額にいたした。その辺のところが
一つの
中心に
なつておりまして、そういう
考えからいたしまして、順々にその
税率の
適用を受ける
階級区分というのもを上の方にずらしまして、
最高を今までは百万円を超える
金額百分の八十五でございましたが、それを五百万円を超える
金額百分の八十ということにいたしておる次第であります。なお
最高率につきましては
從來百分の八十五でございまするが、
税額全体といたしまして制限を設けておりまして、総
税額で百分の八十を超えることができないという
規定を設けていたのでございますが、今回におきましてはそういう
規定を廃止する代りに、
最高を五百万円を超える
金額百分の八十で止める、かようにいたしておる次第でございます。從いまして
税率につきましては、要するに今までの
インフレの
進展の結果、
税率が著しく不
合理に
なつておるのをこの際できるだけ是正いたしまして、あくまでも適正な
負担にしようというところに
中心を置いて
考えておる次第でございます。
第二は
勤労控際でございますが、
勤労控除につきましては
從來から二割五分
控除していることは御
承知の
通りでございます。ただ
從來は
所得から申しまして、五万円
程度まで二割五分
控除する。五万円の二割五分
程度の
金額は上の方まで
適用したのでありますが、五万円と申しますのは今日から申しますと非常に低い
金額でありますので、これを十五万円
程度まで
控除を
引上げて、從いまして十五万円の二割五分に
相当する
金額を、今後におきましてずつと上まで引ける、かようにいたしておる次第でございます。その結果ここに書いてありまするようなことに相なる次第でございます。ただ本
年度といたしましては年の
中途から
改正を行います
関係上、経過的にここに書いてありますように、額が幾分低減するということに相
なつておる次第でございます。
その次は
基礎控除でございますが、
基礎控除は現在四千八百円ですが、いかにもこれは私
どもといたしまして
実情に即しない、低すぎるということを
考えまして、平
年度といたしましては一万五千円
程度に
引上げる、これによりまして
相当從來に比較しますると下の方の
負担が緩和されると
考えております。
勤労所得でございますといきなり平
年度の一万五千円の
月割額が、その月からただちに
控除をされることになります。ただ
事業所得と
年税のものにつきましては、年の
中途からいたしまする
関係上、一万五千円全額を
控除するということはこの際適当でございませんので、二十三
年度分につきましては一万三百二十五円という
数字を出したのでございます。この一万三百二十五円と申しますのは、今年の一月から六月十五日までは
從來の四千八百円の
控除、六月十五日以後本年の十二月三十一日までは、新しい
控除の一万五千円を
月割で按分して計算いたしまして、全
平均額を出したのが一万三百二十五円という
数字でございます。半端でございまするが、
從來からそういう
方法でや
つておりまして、最も妥当な
方法と
考えておる次第でございます。
勤労所得税につきましても、年末
調整を行いまする際におきましては、やはり
基礎控除額というものは一万三百二十五円で計算いたします。毎月
課税する
金額につきましては、ただちに一万五千円に
月割額、すなわち千二百五十円というものを毎月
基礎控除することに相
なつておりますが、今まですでに納めた分と、今後納める分を全部平均いたしまして、年末
調整を行いまする場合におきましては、
事業所得と同じく一万三百二十五円が、今
年度の
基礎控除額ということに相なる次第でございます。
次は第四に移りまして、
所得税の
合算の問題でございまするが、
所得税につきまして
合算はいいかどうか、いろいろ議論があるようでございまするが、私
どもといたしましては、やはり生計を一にする
世帶の
親族間の
所得というものを、
所得税においては
合算するというのは、
所得税の理論的な建前からいたしまして当然なことと実は
考えておる次第でございます。ただ実際問題といたしまして前
年度の
課税の実績から
考えますと、たとえばある
家族の
世帶主が
事業所得者である。その
子供さんがどこか勤めている
勤労所得がある。そういう場合におきまして
合算いたしますると非常に
負担が高くなる。昨
年度は殊に
税率につきまして申し上げましたように、低いところから猛烈に高い
税率に
なつております
関係上、ちよつとその
家族の
合算される
親族の一人に
俸給所得等が加わりますと、その
部分に対しては五割も六割も税をとられる、こういう
むりな点もございましたので、その点につきましては
税率によ
つてそういう問題を是正するということが
一つ、いま
一つはいかに
合算すると申しましても、やはり
控除について
相当勘酌した方がこの際妥当でないかということを
考えまして、
從來は
合算される場合におきましては、
勤労所得と
事業所得については、一本の
控除しかいたされなかつたのでありますが、今回におきましてはそれぞれ
所得者ごとに、
事業所得と
勤労所得、
給與所得等とは、別々に
基礎控除をする。從いまして
從來は
合算される場合におきましては、四千八百円の
控除だけしかなかつたのでありますが、今後におきまして、
おやじさんが
事業所得、
息子さんが
勤労所得の場合でございますと、
おやじさんの
所得から一万五千円、
息子さんの
所得からも一万五千円、合わせて三万円の
基礎控除をする。ただ本
年度におきまして、経過的にそれぞれ一万三百二十五円
づつの控除をする。從いまして前
年度におきましては四千八百円の
控除が、本
年度におきましては、実際上は二万七百五十円の
控除を受ける。これによりまして、
從來合算されたことによりましていきなり
負担が増えて、非常に
負担過重をきたすという弊害はよほど緩和されるものと私
どもは
考えております。これと先ほど申しましたように、中以下の
所得の
税率が非常に過重であつたのを是正することによ
つて、今日まで一部にありましたようなさような無理は、よほど是正できるのではないかと
考えておる次第であります。
次は五項の
家族控除でありますが、特に最近の
実情からいたしまして、むしろ
家族の多い
世帶の生活が苦しい。これはすでに常識でありますので、この点について特に大幅の
引上げを
考えたわけでございまして、現在は四百八十円でございますが、それを千八百円
程度に
引上げることにいたした次第でございます。
基礎控除よりも
家族控除の方が若干上廻
つて引上げられておる。從いまして
独身者の場合に比較して、
家族の多い
世帶の
所得税の
負担は、より以上
軽減される結果になります。ただこれも先ほど
基礎控除について申し上げましたと同じように、二十三
年度分については、六月十五日から
新税法を
適用することにいたしました結果、かような半端な
控除をすることに相つたわけであります。しかし
勤労所得者の毎月分の
税額からは、
基礎控除について申し上げたと同じように、やはり千八百円の
月額すなわち一人について百五十円が
そつくりそのまま
控除されることになりますから、年末
調整の際におきましては、
昭和二十三
年度分の千百九十五円という額が
適用を受けることに相なるわけであります。
その次は、
簡易税額表を
適用する場合において、現在は八万円ですが、
所得金額二十二万円
程度まで拡張いたしまして、できるだけ手数の
簡素化をはかりたいと
考えておる次第であります。
その次の七項は、
外國人及び
外國法人に対する
利子所得、
配当所得等の
税率を、内
國人及び内
國法人と同樣に百分の二十とする。これは外資の
導入等に関連いたしまして、
從來は少し高い
課税をいたしていたのでありますが、この際特に高い
課税をする必要もなかろう。
外國の
税制等を調べてみましたところが、特に高く
課税しているところが少くないようでございますので、このような
改正をいたすことがこの際としては適当であると
考えまして、このような
改正をいたしたいと
考えております。
それから
予定申告書及び
確定申告書の
提出を要しない者の範囲を拡張すること。これもいずれも
事務の
簡素化をできるだけはかりたいという趣意であります。
九項も同樣に
簡易税額表及び
源泉微
收額表を、当然これは
税法の
改正に
伴なつて
改正いたします。この中で
半月額表及び
旬額表というものを
從來つく
つていたのでありますが、実際上非常に実益が少いので、この際廃止することにいたしました。なお註といたしまして、
賞與等給與所得に対する
源泉徴收額表の
税率適用を若干
引上げることといたしております。これは一番低い場合におきましては、
從來は一五%の
課税でございましたが、一五%の
課税でございますと、年末
調整の際にどうも
追徴額が少し大きくなり過ぎるという点が、昨年ございましたので、今回は
所得税の
最低税率であります二十%
程度を、臨時のこういう
所得からは
控除しておいた方がかえ
つてよいのぢやないかという
趣旨で、この方は一五%が二十%に
引上げになります。もつともこれは事前に毎月その都度徴收する場合の
税率でございますので、税の総
負担としては、年末
調整の際に清算されることになりますが、一應この
賞與等を受ける際の
税率は、
從來最低税率一五%から二十%に
引上げになる。これは年末
調整の額をできるだけ少くして、昨年におけるごとき
負担をこの際少くしようとすることにいたしたのであります。
十は、当分の間、
所得金額のうちに
配当所得があるときには、
所得税額から
配当所得の百分の十五に
相当する
金額を
控除することでございますが、これは御
承知のように
法人の場合でありますと、
法人には
法人税がかかりますし、
配当しますと、また
配当に対して税がかかるというので、
法人の場合につきましては、
配当すると非常に巨額の税がかかるわけであります。最近における実際の
株式の拂込み
状況、それから
株式の
大衆化をはかる、こういう必要からいたしまして、その辺の
負担の緩和をはかることが適当であろうという
趣旨からいたしまして、本人が
所得の
申告の際に申請いたした場合におきましては、
所得税額から
配当所得の一五%
程度を
控除して
課税するのが妥当であるという
考え方で、さような
改正を加えておる次第でございます。
所得税の
改正の要点は、
要領にあります
程度で盡きるわけでありますが、
負担の
関係が一体いろいろな
関係でどうなるかということが、結局においていかに
改正されたかということの
結論になるわけでございますので、その点をお
手もとにお配りしておる表によりまして簡單に御
説明申し上げまして、御参考にいたしたいと思います。
改正案による
所得税負担額調という表がございますが、
基礎控除、
家族控除、
税率の
引下げ、それぞれによりまして結局
所得の
負担がどうなるか、これによ
つて結局是非を御判断願うよりほか仕方がないと思
つております。それをごらん願いたいと思います。そのうちのまず
勤労所得につきましては、毎月の分を比較した方が一番簡明でございますので、
勤労所得の
所得税負担額調というのをごらん願いたいと思います。この表についてごらんになればわかるように、まず最近における
家族扶養数三人
程度の、つまり標準的な
世帶の
月收は、今度の三千七百円ベースになると大体六千円前後ではないかとみております。從いまして、その平均的な税の
負担がどうなるかということ、これが
中心になるわけであります。
月額六千円
程度の
所得者の
税負担が
改正後どうなるかということを、最も御注目願いたいと思う次第でありますが、
現行法によりますと、六千円の場合には千四百七十一円、
負担率が二割四分五厘であります。それが
改正案によりますと、二百七十九円で、四分五厘という
負担に
軽減されることになります。この点から申しましても、
勤労所得税としては
相当な
負担の
軽減だと
考えております。ただこれだけでは実は実質的に
負担の
軽減に
なつておるかどうか
疑問ぢやないかという御
質問がありますが、そういう点から申しますと、こういうふうにみていただいてもよいのぢやないかと思います。今日の六千円の
所得は、昨
年税制が立案された当時は、一体どれくらいの
所得であつたかということを
考えますと、かりに
賃金、
物價のレベルが名目的に二倍に
なつておる。
実質賃金の点を考慮いたしますと、必ずしもそこまでは至
つていないという
見方もあるようでありますが、かりに二倍に
なつておると
考えまして、今日六千円の人がそれならば三千円である。昨年三千円の人が今日六千円に
なつておる。かりに單純にかような
見方をいたしまして、
負担がどう
なつたかということを
考えてやればわかると思いますが、
月收三千円の人の
現行法による税の
負担は、この表によ
つてごらんになればわかりますように、
所得あたり一割一分三厘という
負担です。つまり
所得百円
あたり十一円三十銭の
負担でございますが、これが
改正によりますと四分六厘の
負担に下りますので、單に機械的にことしの二割四分が四分六厘に下るということだけではなく、ことしの六千円人が昨年ならば三千円であつた。その場合の
負担と比較してどうかというふうに
考えていただきましても、一割一分三厘の
負担が四分六厘になる、つまり半分以下に実質的に
軽減される。かように相なるわけでございます。
扶養家族の多い人の
勤労所得税の
負担というものは、
相当に
軽減される。
独身者の場合はこれほど
軽減には
なつておりません。これは表によ
つてごらんになればおわかりの
通りでございますが、これは
基礎控除の
引上げよりも、
家族控除の
引上げを大幅にいたしておりまする
関係上、かような結果に相なる次第でございます。
なお
事業所得につきましても、ほぼ同樣なことが言い得るのでございまして、これはお
手もとにお配りしてありまする
事業所得の
改正前後の
負担の比較をごらん願えれば、おわかりになるだろうと思います。
結論から申しますると、
所得税の中で、
勤労所得が最も大幅に
軽減になると私
どもは
考えております。その次は
平均所得の低い
農業所得が
相当の
軽減になる。
営業所得は比較的
軽減の割合が少い。
基礎控除、
家族控除を
相当大幅に
引上げました結果、その近い線の
所得者層の
負担は非常に減る。
税率の
引下げよりも、むしろ
控除の
引上げによりまして
負担が減りますので、大体の結果といたしましては、さようなこを申し上げ得るのではないかと
考えております。なおさらに詳細の点は
お尋ねがあれば、御
説明申し上げたいと思います。
それからいま
一つ申し上げたいことは、
基礎控除は四千八百円でございますが、実は
免税点は
從來は四千八百円、今度は一方五千円ですが、それが
免税点というわけではございませんで、
家族控除と両方によ
つて、実は
免税点がきまる。それが一体どうなるかという表もお
手もとに配
つてございますが、
給與所得の場合の
免税点、実際の
課税の
最低がどうなるかということを見ますと、現在の
税法でございますと、
扶養親族が三人の場合は、
月收千三百三十三円からかか
つてきます。今度は四千五百十一円から
課税になる。この表もお
手もとにお配りしてありますが、特に御注目をいただきたいと思います。
つまり扶養親族が三人の場合でございますと、現在は千三百三十三円から
所得税を納めるが、今度は四千五百十一円から納めることになる。それ以下は
免税になる。四人でございますと、現在は千六百円から
課税に
なつておりまするが、
改正案によりますると、五千三百十一円から
課税になる。一部では
月收六千円までは
免税したらどうかという意見もございまするが、
改正案によりましても、
扶養親族が五人、
子供が四人とそれに奥さんがおられますると、約六千十一円までは
課税にならない。こういうことに
なつておりますることを、併せて御留意願いたいと
考える次第であります。なお時間がございませんので、一應この
程度で御
説明を終りたいと思います。