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1948-06-23 第2回国会 衆議院 財政及び金融委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十三日(水曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 泉山 三六君 理事 島田 晋作君    理事 中崎  敏君 理事 梅林 時雄君    理事 吉川 久衛君       青木 孝義君    淺利 三朗君       大上  司君    倉石 忠雄君       島村 一郎君    苫米地英俊君       松田 正一君    宮幡  靖君       川合 彰武君    佐藤觀次郎君       林  大作君    八百板 正君       後藤 悦治君    中曽根康弘君       長野 長廣君    細川八十八君       井出一太郎君    内藤 友明君       藤田  榮君    本藤 恒松君       堀江 實藏君    本田 英作君  出席國務大臣         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         國 務 大 臣 栗栖 赳夫君  出席政府委員         大藏事務官   平田敬一郎君         大藏事務官   伊原  隆君  委員外出席者         專門調査員   氏家  武君     ————————————— 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する等の法律案内閣提  出)(第九三号)  取引高税法案内閣提出)(第九四号)     —————————————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 会議を開きます。  本日は所得税法の一部を改正する等の法律案並び取引高税法案を議題といたします。質疑を続行いたします。川合君。
  3. 川合彰武

    川合委員 所得税法の一部を改正する等の法律案について、政府提案趣旨を聽いたのでありますが、もう少し具体的に詳細に説明を煩わしたいと思います。
  4. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまのお尋ねにつきまして、一應私から御説明申し上げたいと存じます。なお御疑問の点はさらに引続いて御質問によりましてお答えいたしたいと思います。そこでお手もとにお配りしてあります税制改正に関する法律案要綱という印刷物がございますが、それにつきましてまずごらん願いまして、それに基いてさらに別途資料をお配りしてございまするので、その資料につきまして御説明いたしたいと存じます。  そこで所得税につきましてはその趣旨等はすでに提案理由説明で御説明申し上げましたように、現在における所得税は今までにおけるインフレ進展に対して非常に不合理なことになつている。それを是正するのが一つの大きな眼目でございます。つまり負担合理化をはかろうということでございます。いま一つは実際の最近における経済界状況等に鑑みまして、あまりに税制といたしまして所得税に重きをおきすぎるということは、理論的にはいい所得税が実際問題としてかえつて適正を欠くというきらいがございますので、所得税といたしましては最近における課税実情等から照らしまして、私どもこの少額所得負担はできるだけ軽減いたしたい、かような趣旨考えまして改正案を作成しておるような次第でございます。  そこでまず要領の一、所得税税率でございますが、税率につきましては先ほど申し上げましたように、現在の税率が今までのインフレ進展に対して應じきれてない。と申しますのは、この所得階級の刻み方が、昔ならばたとえば十万円の所得と申しますると相当所得でございまするが、今日の実際から申しますると、十万円の所得というものは大した所得ではない。にもかかわらず非常な高率な税率なつておる。かようなところをこの際大幅に合理的に是正いたしまして、あくまでも所得税税率としては、最近の経済情勢の推移に應じた合理的な税率にしようということに中心を置いておるのでございます。巷間すでに傳えられておりまするし、皆樣も御承知のように、税率が不合理であるために課税の適正を期しがたい、税率がもう少し合理的になりますれば、税務署におきましても調査を充実いたしまして適正な課税ができるけれども、現在のような合理性を欠く税率では、なかなか思うようにいかないというのが、すでに官民あげての輿論でございまして、そういう点につきましてこの際できるだけ調整を加えたい、そういう考えでおる次第でございます。そこでこの税率の刻み方を御覽になればわかりますように、今までは一万円以下を百分の二十、一万円を超える金額百分の二十五、一万五千円を超えると百分の三十といつたふうに、下の方から非常に小刻みで累進率を設けていたのでございますが、これをこの際といたしましては、できるだけ幅を大きくして累進率を設けたいということを考えて、率を刻んでおります。そういたしまして、一例でございまするが、從來は百分の五十という税率は、所得税としては相当高い税率ですが、この百分の五十という税率適用を受ける階級は、五万円を超える金額から百分の五十、こういう税率なつていたのでございます。この辺に非常な不合理と無理がございまして、たとえば地方において親父さんと息子さんの所得合算されると、たちまちその上ずみ部分に対しては五〇%税金をとられる。石炭の炭鉱労働者等が、少し超過労働をやりましてよけいに賃金がはいつてきますと、たちまち高い税率に乘つかりまして五〇%も六〇%も税をとられる。しかもその所得たるやさほど大きな所得ではない。昔ならば相当所得でしたが、今日においては大した所得ではない。そういうところに非常に不合理がございますので、税の刻み方を、雜な言葉で申しますと上の方にずらしていつたということを言い得ると思うのであります。百分の五十の税率適用を受ける階級は、二十万円を超える金額にいたした。その辺のところが一つ中心なつておりまして、そういう考えからいたしまして、順々にその税率適用を受ける階級区分というのもを上の方にずらしまして、最高を今までは百万円を超える金額百分の八十五でございましたが、それを五百万円を超える金額百分の八十ということにいたしておる次第であります。なお最高率につきましては從來百分の八十五でございまするが、税額全体といたしまして制限を設けておりまして、総税額で百分の八十を超えることができないという規定を設けていたのでございますが、今回におきましてはそういう規定を廃止する代りに、最高を五百万円を超える金額百分の八十で止める、かようにいたしておる次第でございます。從いまして税率につきましては、要するに今までのインフレ進展の結果、税率が著しく不合理なつておるのをこの際できるだけ是正いたしまして、あくまでも適正な負担にしようというところに中心を置いて考えておる次第でございます。  第二は勤労控際でございますが、勤労控除につきましては從來から二割五分控除していることは御承知通りでございます。ただ從來所得から申しまして、五万円程度まで二割五分控除する。五万円の二割五分程度金額は上の方まで適用したのでありますが、五万円と申しますのは今日から申しますと非常に低い金額でありますので、これを十五万円程度まで控除引上げて、從いまして十五万円の二割五分に相当する金額を、今後におきましてずつと上まで引ける、かようにいたしておる次第でございます。その結果ここに書いてありまするようなことに相なる次第でございます。ただ本年度といたしましては年の中途から改正を行います関係上、経過的にここに書いてありますように、額が幾分低減するということに相なつておる次第でございます。  その次は基礎控除でございますが、基礎控除は現在四千八百円ですが、いかにもこれは私どもといたしまして実情に即しない、低すぎるということを考えまして、平年度といたしましては一万五千円程度引上げる、これによりまして相当從來に比較しますると下の方の負担が緩和されると考えております。勤労所得でございますといきなり平年度の一万五千円の月割額が、その月からただちに控除をされることになります。ただ事業所得年税のものにつきましては、年の中途からいたしまする関係上、一万五千円全額を控除するということはこの際適当でございませんので、二十三年度分につきましては一万三百二十五円という数字を出したのでございます。この一万三百二十五円と申しますのは、今年の一月から六月十五日までは從來の四千八百円の控除、六月十五日以後本年の十二月三十一日までは、新しい控除の一万五千円を月割で按分して計算いたしまして、全平均額を出したのが一万三百二十五円という数字でございます。半端でございまするが、從來からそういう方法でやつておりまして、最も妥当な方法考えておる次第でございます。勤労所得税につきましても、年末調整を行いまする際におきましては、やはり基礎控除額というものは一万三百二十五円で計算いたします。毎月課税する金額につきましては、ただちに一万五千円に月割額、すなわち千二百五十円というものを毎月基礎控除することに相なつておりますが、今まですでに納めた分と、今後納める分を全部平均いたしまして、年末調整を行いまする場合におきましては、事業所得と同じく一万三百二十五円が、今年度基礎控除額ということに相なる次第でございます。  次は第四に移りまして、所得税合算の問題でございまするが、所得税につきまして合算はいいかどうか、いろいろ議論があるようでございまするが、私どもといたしましては、やはり生計を一にする世帶親族間の所得というものを、所得税においては合算するというのは、所得税の理論的な建前からいたしまして当然なことと実は考えておる次第でございます。ただ実際問題といたしまして前年度課税の実績から考えますと、たとえばある家族世帶主事業所得者である。その子供さんがどこか勤めている勤労所得がある。そういう場合におきまして合算いたしますると非常に負担が高くなる。昨年度は殊に税率につきまして申し上げましたように、低いところから猛烈に高い税率なつております関係上、ちよつとその家族合算される親族の一人に俸給所得等が加わりますと、その部分に対しては五割も六割も税をとられる、こういうむりな点もございましたので、その点につきましては税率によつてそういう問題を是正するということが一つ、いま一つはいかに合算すると申しましても、やはり控除について相当勘酌した方がこの際妥当でないかということを考えまして、從來合算される場合におきましては、勤労所得事業所得については、一本の控除しかいたされなかつたのでありますが、今回におきましてはそれぞれ所得者ごとに、事業所得勤労所得給與所得等とは、別々に基礎控除をする。從いまして從來合算される場合におきましては、四千八百円の控除だけしかなかつたのでありますが、今後におきまして、おやじさんが事業所得息子さんが勤労所得の場合でございますと、おやじさんの所得から一万五千円、息子さんの所得からも一万五千円、合わせて三万円の基礎控除をする。ただ本年度におきまして、経過的にそれぞれ一万三百二十五円づつの控除をする。從いまして前年度におきましては四千八百円の控除が、本年度におきましては、実際上は二万七百五十円の控除を受ける。これによりまして、從來合算されたことによりましていきなり負担が増えて、非常に負担過重をきたすという弊害はよほど緩和されるものと私ども考えております。これと先ほど申しましたように、中以下の所得税率が非常に過重であつたのを是正することによつて、今日まで一部にありましたようなさような無理は、よほど是正できるのではないかと考えておる次第であります。  次は五項の家族控除でありますが、特に最近の実情からいたしまして、むしろ家族の多い世帶の生活が苦しい。これはすでに常識でありますので、この点について特に大幅の引上げ考えたわけでございまして、現在は四百八十円でございますが、それを千八百円程度引上げることにいたした次第でございます。基礎控除よりも家族控除の方が若干上廻つて引上げられておる。從いまして独身者の場合に比較して、家族の多い世帶所得税負担は、より以上軽減される結果になります。ただこれも先ほど基礎控除について申し上げましたと同じように、二十三年度分については、六月十五日から新税法適用することにいたしました結果、かような半端な控除をすることに相つたわけであります。しかし勤労所得者の毎月分の税額からは、基礎控除について申し上げたと同じように、やはり千八百円の月額すなわち一人について百五十円がそつくりそのまま控除されることになりますから、年末調整の際におきましては、昭和二十三年度分の千百九十五円という額が適用を受けることに相なるわけであります。  その次は、簡易税額表適用する場合において、現在は八万円ですが、所得金額二十二万円程度まで拡張いたしまして、できるだけ手数の簡素化をはかりたいと考えておる次第であります。  その次の七項は、外國人及び外國法人に対する利子所得配当所得等税率を、内國人及び内國法人と同樣に百分の二十とする。これは外資の導入等に関連いたしまして、從來は少し高い課税をいたしていたのでありますが、この際特に高い課税をする必要もなかろう。外國税制等を調べてみましたところが、特に高く課税しているところが少くないようでございますので、このような改正をいたすことがこの際としては適当であると考えまして、このような改正をいたしたいと考えております。  それから予定申告書及び確定申告書提出を要しない者の範囲を拡張すること。これもいずれも事務簡素化をできるだけはかりたいという趣意であります。  九項も同樣に簡易税額表及び源泉收額表を、当然これは税法改正伴なつ改正いたします。この中で半月額表及び旬額表というものを從來つくつていたのでありますが、実際上非常に実益が少いので、この際廃止することにいたしました。なお註といたしまして、賞與等給與所得に対する源泉徴收額表税率適用を若干引上げることといたしております。これは一番低い場合におきましては、從來は一五%の課税でございましたが、一五%の課税でございますと、年末調整の際にどうも追徴額が少し大きくなり過ぎるという点が、昨年ございましたので、今回は所得税最低税率であります二十%程度を、臨時のこういう所得からは控除しておいた方がかえつてよいのぢやないかという趣旨で、この方は一五%が二十%に引上げになります。もつともこれは事前に毎月その都度徴收する場合の税率でございますので、税の総負担としては、年末調整の際に清算されることになりますが、一應この賞與等を受ける際の税率は、從來最低税率一五%から二十%に引上げになる。これは年末調整の額をできるだけ少くして、昨年におけるごとき負担をこの際少くしようとすることにいたしたのであります。  十は、当分の間、所得金額のうちに配当所得があるときには、所得税額から配当所得の百分の十五に相当する金額控除することでございますが、これは御承知のように法人の場合でありますと、法人には法人税がかかりますし、配当しますと、また配当に対して税がかかるというので、法人の場合につきましては、配当すると非常に巨額の税がかかるわけであります。最近における実際の株式の拂込み状況、それから株式大衆化をはかる、こういう必要からいたしまして、その辺の負担の緩和をはかることが適当であろうという趣旨からいたしまして、本人が所得申告の際に申請いたした場合におきましては、所得税額から配当所得の一五%程度控除して課税するのが妥当であるという考え方で、さような改正を加えておる次第でございます。  所得税改正の要点は、要領にあります程度で盡きるわけでありますが、負担関係が一体いろいろな関係でどうなるかということが、結局においていかに改正されたかということの結論になるわけでございますので、その点をお手もとにお配りしておる表によりまして簡單に御説明申し上げまして、御参考にいたしたいと思います。改正案による所得税負担額調という表がございますが、基礎控除家族控除税率引下げ、それぞれによりまして結局所得負担がどうなるか、これによつて結局是非を御判断願うよりほか仕方がないと思つております。それをごらん願いたいと思います。そのうちのまず勤労所得につきましては、毎月の分を比較した方が一番簡明でございますので、勤労所得所得税負担額調というのをごらん願いたいと思います。この表についてごらんになればわかるように、まず最近における家族扶養数三人程度の、つまり標準的な世帶月收は、今度の三千七百円ベースになると大体六千円前後ではないかとみております。從いまして、その平均的な税の負担がどうなるかということ、これが中心になるわけであります。月額六千円程度所得者税負担改正後どうなるかということを、最も御注目願いたいと思う次第でありますが、現行法によりますと、六千円の場合には千四百七十一円、負担率が二割四分五厘であります。それが改正案によりますと、二百七十九円で、四分五厘という負担軽減されることになります。この点から申しましても、勤労所得税としては相当負担軽減だと考えております。ただこれだけでは実は実質的に負担軽減なつておるかどうか疑問ぢやないかという御質問がありますが、そういう点から申しますと、こういうふうにみていただいてもよいのぢやないかと思います。今日の六千円の所得は、昨年税制が立案された当時は、一体どれくらいの所得であつたかということを考えますと、かりに賃金物價のレベルが名目的に二倍になつておる。実質賃金の点を考慮いたしますと、必ずしもそこまでは至つていないという見方もあるようでありますが、かりに二倍になつておると考えまして、今日六千円の人がそれならば三千円である。昨年三千円の人が今日六千円になつておる。かりに單純にかような見方をいたしまして、負担がどうなつたかということを考えてやればわかると思いますが、月收三千円の人の現行法による税の負担は、この表によつてごらんになればわかりますように、所得あたり一割一分三厘という負担です。つまり所得百円あたり十一円三十銭の負担でございますが、これが改正によりますと四分六厘の負担に下りますので、單に機械的にことしの二割四分が四分六厘に下るということだけではなく、ことしの六千円人が昨年ならば三千円であつた。その場合の負担と比較してどうかというふうに考えていただきましても、一割一分三厘の負担が四分六厘になる、つまり半分以下に実質的に軽減される。かように相なるわけでございます。扶養家族の多い人の勤労所得税負担というものは、相当軽減される。独身者の場合はこれほど軽減にはなつておりません。これは表によつてごらんになればおわかりの通りでございますが、これは基礎控除引上げよりも、家族控除引上げを大幅にいたしておりまする関係上、かような結果に相なる次第でございます。  なお事業所得につきましても、ほぼ同樣なことが言い得るのでございまして、これはお手もとにお配りしてありまする事業所得改正前後の負担の比較をごらん願えれば、おわかりになるだろうと思います。結論から申しますると、所得税の中で、勤労所得が最も大幅に軽減になると私ども考えております。その次は平均所得の低い農業所得相当軽減になる。営業所得は比較的軽減の割合が少い。基礎控除家族控除相当大幅に引上げました結果、その近い線の所得者層負担は非常に減る。税率引下げよりも、むしろ控除引上げによりまして負担が減りますので、大体の結果といたしましては、さようなこを申し上げ得るのではないかと考えております。なおさらに詳細の点はお尋ねがあれば、御説明申し上げたいと思います。  それからいま一つ申し上げたいことは、基礎控除は四千八百円でございますが、実は免税点從來は四千八百円、今度は一方五千円ですが、それが免税点というわけではございませんで、家族控除と両方によつて、実は免税点がきまる。それが一体どうなるかという表もお手もとに配つてございますが、給與所得の場合の免税点、実際の課税最低がどうなるかということを見ますと、現在の税法でございますと、扶養親族が三人の場合は、月收千三百三十三円からかかつてきます。今度は四千五百十一円から課税になる。この表もお手もとにお配りしてありますが、特に御注目をいただきたいと思います。つまり扶養親族が三人の場合でございますと、現在は千三百三十三円から所得税を納めるが、今度は四千五百十一円から納めることになる。それ以下は免税になる。四人でございますと、現在は千六百円から課税なつておりまするが、改正案によりますると、五千三百十一円から課税になる。一部では月收六千円までは免税したらどうかという意見もございまするが、改正案によりましても、扶養親族が五人、子供が四人とそれに奥さんがおられますると、約六千十一円までは課税にならない。こういうことになつておりますることを、併せて御留意願いたいと考える次第であります。なお時間がございませんので、一應この程度で御説明を終りたいと思います。
  5. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 今御説明通りでありますが、細目にわたつては追つて御檢討願うことといたしまして、今日は午前中は大藏大臣経済安定本部長官が御出席なつておりますので、日程全部にわたつて基本的な問題の御質問があるかと存じまして、大藏大臣並びに安本長官に対する質疑を先にしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  6. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 それではさようにいたします。佐藤さん。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 所得税改正のことにつきまして大藏大臣にお願いしたいのですが、御承知のように、今農村においてはいろいろ増産の関係で、主食の米麦あるいは甘藷、馬鈴薯に対しまして、政府が盛んに獎励をし、獎励金を出しております。この獎励金報獎金課税されることとにつきまして、農村では今非常におそれております。そういう意味において、これは御承知のような獎励金でありますので、前回も富くじのときに税金をなくしたときがございますが、今度の所得税改正法では、食糧を供出させるための獎励金報獎金には、ぜひとも課税をしないようにしていただきたいと思うのでありますが、これにつきましてどういう見解をもつておられますかぜひ大藏大臣のお考えをお聽きしたいと思います。
  8. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいま佐藤委員の御質疑はごもつともでございます。また今までそういうふうな御要求はかなり強く聞いております。しかしながらどうもただいまの現状では、今回は所得税を大幅に引下げますし、その他農村負担がかなり軽減をされることに相なりますので、報獎金並びに獎励金、これを別扱いするということは、今の段階では非常に困るのです。陳情も相当受けておりますし、御要望がはなはだ熱心なことも心得ておりますが、全体を総合的に見ました場合に、特に農村のさようなものだけを課税から除くということになりますと、波及するところが他に相当ございますので、この問題は愼重に研究をいたしたい、研究は十分いたしますけれども、特に今回相当大幅に軽減をしたのですから、今度はひとつ御辛抱を願いたい。なお税制全般改正に関する懇談会を継続いたしておりますので、そういう面においてはそれぞれ調査して、なお研究を続けていただくということにいたしたい。率直に申しますと今回はそのことについては、政府の差出しております原案で御承知を願いたい、こう思つております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この問題についてどこへ行きましても農村では非難を受けるのでありますが、政府報將金を出したり、將励金を出したりするものに課税するということを、どういうところから考えても納得できない、何かこれは深い理由があるかどうかということに対して、農村に行きますと非常に質問を受けるのであります。どういう理由でこの將励金報將金課税しなければならぬのかという眞実を、ひとつ大藏大臣に伺いたいと思います。
  10. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは非常にやかましい理屈になり、問題になると思いますけれども、やはりこれは一つ所得であるということに間違いない。それから廣義の対價であるということに間違いない。從つてこれはただいま申しますように、税制懇談会におきましても十分檢訂はしていただきますけれども、今の私どもの國家財政とにらみ合わせた考え方においては、今回かなり——七百億くらいになるかと思いますけれども、それくらいの減収をあえて忍んで所得税の大幅の改正をした場合でもありますので、その他農村に対しては若干今までも考慮を加えておりまして、たとえば今回の地方税としての事業税としての事業税についても、主食として供出するものは特に免除する。そうすると供出をせしめられる他の部門からも相当な要望があるのでありますけれども、これは農村の御要求が入れられたというようなことになつておりますので、まあ今回はひとつ檢討を將來に残すということで——十分まじめに檢討はいたします。また農家の供出等を十分にやつていただかなければ、インフレーシヨンを押えるといつてもこのことには重大な関係があるのでありますから、政府はそのことに決して無関心ではありませんけれども、全体を総合的に見ました場合に、これはやはり一つの廣義のある対價であるし、所得であるということは間違いないというような意味で、これを所得外に置くということは非常に困難な点も今の場合はあります。その点をひとつ御了解願いたいと思います。
  11. 川合彰武

    川合委員 関連して……。私はただいまの大藏大臣の答弁は理論的には正しいと思うのであります。ただ問題は、報將金あるいは將励金というような名目を用いているというところに問題があると考えます。そこで私は名目をかえるというようなことと関連して、こういう問題を米價の價格政策に関してよほど檢討しなければいけないと思うのであります。現在は米價は國内に一本の姿において決定されておるのでありますが、立地條件、あるいはまた日本の米穀の需給状態から推して、私は早場米というものに対して、早く供出してもらうということはこれは当然だろうと思う。しかも早場米の地帶というものは私から申し上げるまでもなく、單作地帶であります。從つて私は日本の米價は立地條件から考えて單作地帶、しかも寒冷地の單作地帶における米價、あるいはまたいろいろな多角経営地帶における米價というような農業経営の立地條件に照應して、國内を数ブロツクにわけて、そういうようなところから米價の段階を設けていくことが正しいのではないかと私は思うのでありますが、これらに対して物價政策を担当しておる安本長官の所見を伺いたいと思うのであります。そういうような点において私はもし解決ができるならば、報將金とか、あるいはまた早場米將励金というような、税制の面におけるところの一般が納得しかねる問題、理論的には正しくあつたにしても、一般大衆にはなかなか納得しかねる問題が解決されると思うわけであります。從いまして私は安本長官にそういうような米價の地域差による段階的な價格ということを、考えておるかどうかということについて所見を伺いたいのであります。
  12. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 川合委員の御質問に対してお答えいたします。  この米價の決定は農林省と安本でいたしたのでありまして、生産價格というものについても複数制の價格をつくるということについて、なかなか議論があるのでございます。しかしいろいろ早場米の將励金とか、あるいは新芋、あるいはじやがいも、新麦というようなものの供出完了に対する將励金とか、その他につきまして、あるいは供出を完了した場合の將励金とか、こういうことにつきましても、從來は実質的には價格を補給するという例があるのでありますが、しかし生産價格というものの決定上、複数で、まちまちの價格をつくるということは当を得ないという点がございますし、その筋との関係もございますので、実は報將金とかその他の將励金という名前のもとに行われておるような次第でございます。これも私は理論的な根本問題、あるいは平常の問題については、いろいろお説のような考えができると思いますけれども、今急場をしのぐ、あるいは殊に今年度の米價の問題あるいは昨年度のパリテイ計算による始末の問題等を考え合わせますと、この際ただちにお設のようなことをいたすことは、理論的にはいきますけれども、実際上はかえつて不便になるような点もあつて、苦しい事情があると思うのでございます。そこで早急にお説のようなことを取上げることは、かえつて不利じやないかというように考える次第でございます。
  13. 後藤悦治

    ○後藤委員 この機会に大藏大臣に所見を伺いたいのであります。税制改革と取引高税の創設と、この二点について伺いたいのであります。
  14. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 関連質問じやないですか。それではちよつと待つてください。内藤君。
  15. 内藤友明

    ○内藤委員 佐藤さんから話が出ましたので、それに関連したことをお尋ねしたいと思うのであります。  今度の税制改革は負担の公平ということを主眼に置かれたと思うのでありますが、そういう意味でありますが、そういう意味でこの改正法をずつと調べてみますと、そうでないところがたくさんあるのであります。たとえば私は具体的に申しますが、所得税法第六條には、「左に掲げる所得については、所得税を課さない。」というのがありました。その中の第五には「生命保險契約に基き死亡を原因として支拂を受けた保險金、傷害保險契約又は損害保險契約に基き支拂を受けた保險金」というふうな保險金には、所得税を課さないということになつておるのであります。当然私はこういう規定がある以上、農林が農業災害補償法によつて受けるこの保險金は、除外さるべきものだという改正案が出るべきものだと思つておつたのでありますが、それが出ておらぬのでありまして、こういうふうなところを眺めてみましても、負担の公平ということが、今度の税制全体については認めれていない。相変らず農民の負担が重くなつているということがあるのでありますが、これにつきまして大藏大臣の所見を伺いたいのであります。いずれ私は農業所得の計算問題につきまして、大臣でなく局長にいろいろお尋ねをしてわれわれの疑いを解きたいと思うのでありますが、今佐藤委員から農村報將金のお話が出ましたから、それに関連いたしまして、これをお尋ねいたしたいと思います。
  16. 北村徳太郎

    北村國務大臣 生命保險金は所得税の対象にはいたしておりません。生命保險の本質に鑑みまして、これは自由所得とみなすべきものではないという考え方をいたしております。但し相続税の対象にはなる。相続の場合に生命保險金をその対象にするということはいたしております。それから損害保險は損失の保險金でありますから、別箇に考える。かような観点からただいま御質問が起つたと思うのでありますが、私ども考え方としては、以上のような考え方で処理しております。
  17. 内藤友明

    ○内藤委員 農業災害補償法に基いて支拂いを受けた保險金はどうなりますか、それをお尋ねいたします。
  18. 北村徳太郎

    北村國務大臣 それはやはり一般損害保險と同じ観念のものといたしまして、損失保險でありますから、やはり所得の対象に見ている。こういうようなわけであります。
  19. 内藤友明

    ○内藤委員 それは所得の対象に見ておられるのでありますか。
  20. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお尋ねの点につきましては、條文の「その他これらに類するもの」という條項が最後にはいつておりまして、「傷害保險契約又は損害保險契約に基き支拂を受けた保險金、」に類する性質のものであるということでありますれば、やはり同じように所得と見ないということになると思います。ただ農業災害保險について具体的にどうなるかということについては、まだ研究を遂げておりませんので、なおよく調べましてからのお答えをいたしたいと存じます。趣旨は損害保險契約あるいは傷害保險に基いて支拂いを受けた保險金に類するものと解釈する限りにおきましては、やはり同じような扱いをするということになります。
  21. 内藤友明

    ○内藤委員 今の問題はいずれまた大藏大臣が御出席でありますから、この際……。
  22. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 内藤さん、ちよつとお待ちください。それでは通告順に許すことにいたします。細川さん。
  23. 細川八十八

    ○細川(八)委員 きようの議題になりました税制改革及び取引高税に関して、大藏大臣及びその他関係官廳にお尋ねいたしたいと思いますが、まずこの質問をする前に、私は少しお尋いたしたいことがあります。  それは日本の國民の生活の中心がやみであると私は考えておるが、大藏大臣はそれをどうお考えなつているか、これが一つ、それからもう一つは日本経済の中心がこれまたやみであると考えているが、これに対して栗栖安本長官はどうお考えなつているか、これをまず私の質問の前提としてお聽かせ願いたいのであります。
  24. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。國民生活がやみ中心に行われておるかどうかというお尋ねは、私は肯定もしないが、否定もしない。ということは、これは非常に複雜な現段階のわれわれの生活でありまして、このことを確実に把握して、そうしてここで責任をもつて、統計的資料に基いてお話を申し上げるということは、きわめて困難なことであります。ただ現実の問題として、われわれがたとえば今回の賃金ベースを決定いたします場合に、金額的には大体六割から六割五分見当のものは、自由物資並びにやみを含む非配給物資によつて生活しておる。これを計算の場合にはマージンを入れて七割五分と一應算定をいたしまして、それに基いて計算をした。これはやみを含む非配給物資、自由物資を含めてのものでございます。それで配給ルートを通してのものは、金額的には大体二割五分であるというような計算を一應立てたのでありますから、さような根拠から申しますと、そういう生活事実というものを否認するわけにいかない。しかしさらにこれを物の面から見ますと、物の六割五分くらいは配給ルートによるものであつて、あとの三割五分がしからざるやみを含む自由物資によつて生活が行われております。これは政府が今回物價を算定いたします場合に、そういう一つの基礎をもつて算定をいたしました。こういう事実は否定することはできない。抽象的に國民生活全体が一体やみでやつておるかどうかということは、私が先に申しましましたように否定もできない、肯定もできない。具体的の問題としては先ほど申し上げたような例でございますが、大体さようなところに見当を置いていいのじやないか、こう考えております。
  25. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 細川委員お尋ねに対して、私からも申し上げたいと思います。今大藏大臣が申しましたように、國民の平均の生活は、金額の上ではマル公による生活が二五%である。残りが自由價格による物資及びやみ物資でありますが、しかし数量の上から言いましたならば、今大藏大臣が申しましたように六五%がマル公による生活の物資であるわけであります。一個人についてはそういうようなことでありまして、國民所得その他の算定にも、消費についても、そういう点を基礎としても、そういう点を基礎として予算その他が組まれておると思います。さらに國民経済全体から見ますと、マル公による物資というか、配給物資というものが、大体終戰以來非常に少かつたのでありますが、それがだんだん殖えてまいりまして、八割くらいになつておるのであります。そうしてあとが自由物資あるいはやみ物資ということになつておるのであります。日本の國民経済全体としての運行から申しますと、片山内閣及び芦田内閣においてここまでもつてきておるのであります。さらにわれわれはこれを伸ばしまして、ことしの主食の一割増産とか、あるいは石炭は三千六百万トンの増産を目標にしております。さらに鉄鋼の百二十万トン、肥料の九十万トン、その他について増産を期しております。その増産部分、さらに増産を助けるために、及び消費のための物資が、外國からもはいつておるのであります。そういうようなものを努めて配給物資の方へまわしまして、國民経済全体の運行が、配給物資が八〇%からさらに上昇するように、今施策をいたしておるのでございます。そこでこの國民経済の復雜な、しかも非常に不安定な経済を運行いたしまするには、一朝一夕にやみ物資というものの運行を抑えることはなかなか困難でございます。また目に見えざる努力が非常に必要でございますが、さように八〇%まで増加し、さらになお正常なルートによる物資の運行をそれ以上に、増産と物資の輸入等によつて確保したいと思うのでございます。そういう点から申しまして、日本の経済がやみによつて運行されておる。こういう点がよほど改善され、むしろ大きな部分において國民と政府の努力によつて、配給物資によつて運行されることが非常に強力になつたというように申していいのじやないか、かように思う次第でございます。
  26. 細川八十八

    ○細川委員 大藏大臣の御答弁によつて、大体生活の中心がやみであるということは、否定も肯定もしないが、大体数字の上においてお認めになつておるので、私はこれ以上申しません。しかし安本長官のお考えでは私は納得いきかねる。現実の問題といたしまして、これは卑近な問題でありますが、皆さんがお召しになつておる洋服、あるいはシヤツ、靴下に至るまで、おそらくマル公の配給によつて着ておるものはないと考えておる。さように日本の経済の中心がやみであるということを前提に、税制改革の本論にはいりまする前に、私はかく申し上げておきたい。そこで本日の議題になつておりますところの取引高税については、財政、金融委員会においても法案が山積いたしておりますので、私はこの問題はもう議論の余地がないかと思つております。と申しまするのは、與党間においても相当に反対の声が高いのでありまして、おそらくこの段階において、この取引高税がここで審議されるとは考えられません。それでこれは一應省略いたします。  そこで私は税の根本捕捉、つまり日本の税制の根本改革をしなければならぬということだけ、一言申し上げておきたいと考えるのであります。現在の收益税法というものを根本的に改める考えがあるかどうか。これを改めなければ日本の徴税というものはうまくいかない。なぜいかないか。日本の徴税技術、徴税方法は、戰前の日本人の國家観念のきわめて強い時代にできた法案であります。かつ國民のすべてが納税という責任をもつておる現在では、敗戰の日本の國民として國民道義が廃頽し國家観念の薄らいだ國民に対して、この課税方式では完全な徴税は確保ができない。また納税をしようという心構えがないと私は考える。そこで税制の根本改革をおやりになる御意思があるかないかということを、まず前提として聽きたいのであります。
  27. 北村徳太郎

    北村國務大臣 細川さんの御質問にお答えいたします。さつき私の申し上げたことを、やみ中心の生活をしておるものと認めるぞというような御宣告があつたのですが、そうは申し上げてない。否定もしない。肯定もしない。ただ物量的に現に六割五分の配給ルートに從つて生活しておる。これが安本長官の話で出ましたようこ、漸次八〇%、九〇%になる可能性を信じておるのでありまして、その点は私の申し上げた通りに御理解を願つておきたい。その他いろいろお話はございましたが、それは別として、將來の税制をどうするかという問題でございますが、これは私の私見と申した方がいいかもしれませんが、およそ税はなるべく單純な方がいい。それでできることならば所得税というものが、どうしても税体系の中心をなすものであつて所得税一本主義にいくことが理想である。こういうように考えております。ただし今のような経済動搖期に、所得税だけと言いましても、所得の変化が非常に多くて、これを一々捕捉するということは困難である。というのは税の原則であり、公平の理論に反する。從つて各般の間接税その他いろいろな方法を取らなければならぬ。これは一面に動搖期にある日本の今のような経済の実情においてはやむを得ない方法でありまして、今やつておることが最善でもなければ、理想的のものでもない。これは経済の安定をまつて、しかる後にまた所得税という税体系を中心として、これを基礎としてやろうということが望ましいことであると考えておる。
  28. 細川八十八

    ○細川委員 私は大藏大臣がさきに生活のことについて否定も肯定もしないと申されますから、もう一言だけ申し上げておきます。生活が中心であることをお認めでないというなら、私はこの点一つ申し上げておきたいと思います。これはごく切実な問題ですが、政府の配給米である二合五勺の食糧によつて、日本國民が生活しておるとは考えておりません。これは少くとも五勺の食糧が足りないということは何人も否定しない。その上にまた砂糖であるとか、すももであるとかいうものを配給しておる。このすももや砂糖が主食になるとは私は考えない。その上國民はわずか五勺の米を確保するため十三円から十五円かかつておる。足りない米を買つて食うのにも相当の金がかかる。それがすべて日本の経済のやみの中心であるという現実を物語つておる。それをお認めでないというなら、私はこの際その点を申し上げると同時に、先般財政演説を大藏大臣が本会議でおやりになつたときに、社会党の川島君の質問に対して、日本のやみ利得は優秀な査察官をおいて徹底的にこれを糾明して捕捉するのだとおつしやつたのでありますが、小さければ小さいなりのやみがあり、大工場は大工場なりのやみがなければやつていけない。これは政府の根本責任である。たくさんの從業員をストもなくどうにか食べさして、どうにか働かせていくためには、基本的にこれらの大きい生活の援助なくしては会社の経営が立つていかない。これらを徹底的に押えると言われるようなことを私は先般聽いたが、この点については触れません。私は税制改革の一私案としてこの際申し上げる、政府が今回の通常予算について実に苦心され、かつまた苦心の結果においてできた税制、これが非常に非難の中心なつておるが、それで私は税制の根本改革をいたさなければならないということを痛感すると同時に、私が日本経済のこのやみを完全捕捉する一つの手段方法があることを、ここで強く申し出てみたいと思うのであります。これは時間がありませんから、あとで一括してお答えを願いたいと思うのであります。  まず私は日本経済の中心がやみである。これを大藏大臣は優秀な官吏によつて捕捉すると言いますが、これがなぜできないかという、日本の官吏というものは、政府がその生活を保障しておられない。從つてこれはできるとは考えられない。そこで私はこういう財源があると思う。たとえば今度取引高税を廃止するとか、あるいは運賃も政府原案より少し下げなければならないと言われておる。それでその補足財源として酒造税の確保を私は考えておるのであります。酒というものが現在全國でつくられ、どこの料理飲食店にも販賣されております。その酒は相当多額なものでありますが、これら密造酒というものが相当あることをお認めになるかどうかということを、まずお伺いいたします。
  29. 北村徳太郎

    北村國務大臣 現在農村等において相当どぶろくなどが密造されておるということは、しばしばそういう事実を押えましたので、その陰においてあるということはこれは認めなければなりませんが、從つてこれが対策は別個に考えております。ただいまの御質問はその点であつたと思いますが、その点だけお答えいたします。
  30. 細川八十八

    ○細川委員 密造のことは次に申し上げたいと思いますが、現在料理飲食店、あるいは家庭に流されておる酒が正規のものとは考えられないのであります。正規のものであります。正規のものであるとすれば、どうしてお流しになつたか聽きたいのであります。そう前に私はもつと重要なことをこの際申し上げておきたい。農村がどぶろくをつくるのは好んでつくるのではない、酒が飲みたいからつくつておる。そこで私はまず農村の保有米の八分をもつてこれを酒と交換してやる。農村の保有米四千万石に対して約七、八分、一割にも足りないところのものと交換してやる、おそらく私は一升の清酒によつて三升の米が確保できると思う。そうして百万石の清酒をやるといたしますれば、三百万石という米が私は確保できると思う。この三百万石で四百五十万石の酒ができる、この四百五十万石の酒のうち百万石を農村にやる。あとの三百五十万石に対して今回の四百三十円の課税をいたしますならば、一千四百億円の徴税が確保できる。しかしながら現在日本が食糧を輸入しておる時代において、酒のための農村の保有米が許されるかどうかということが、一番重点になると思うのであります。しかしながら現在多量の酒が密造され、そうして市場に流されておることは、知らなければ別として、事実ありといたしますれば、私は今日の終戰処理費、あるいは國内の相当予算のかさばるときにおいても、こうした財源を確保するということができると思う。これには閣僚がみずからこれを取締らなければならない。その点政府の力によつて取締れないということをはつきり申されるが、私はこの財源確保にあたつて、完全にあたられるものと考えております。これはお答えはよろしうございます。これに対してお答えをいただこうとは考えておりません。  もう一つ私は日本は所得税というものが中心であるということは、これは私にもよくわかつておるのであります。その所得税というものが、新税法によつて百万円を超えるときは百分の七十ということでありますが、これに地方税その他を含めますと、おそらく百万円儲けて百万円をとられるようなことになる、これでははたして百万円儲けたという人がありますかどうか。おそらく私はないと思つております。そういたしますと、日本の大会社にいたしましても、個人の会社にいたしましても、これは正しい記帳ができないという結論になる。私はこういうような儲けた金を全部とつてしまおうという制度を廃止して、納税の責任制という方法にしてはどうかということ、これはきようは主税局長もお見えになつておられるから強く申し上げてみたいのですが、日本の産業と商業を区分して、これ対する請負制度という方法が、一番適切な税のかけ方である。これならば、税務署員もいらない、誤らざるかけ方ができる。しかも民主的にできる。一方賃金ベースが上ればこの方を上げたらよいのです。そうなれば苦心をされる必要もない。日本の産業と商業を区分して、請負制度にする。私は現段階においてさようなことをとらざれば、税の完全確保というものはできない、同時にどの内閣ができても、おそらく労働攻勢に遭うものと考えておりますが、時間の関係で、産業の区分をして、それを請負制度にするということの具体的な説明ができぬことを残念に思いますが、こういうことをお考えなつておるおらないか、大藏大臣に伺いたいと思います。
  31. 北村徳太郎

    北村國務大臣 前段の酒のことについては答弁を要しないということでありましたが、せつかくのことでありますから、この機会に一言申し上げておきたいと思います。酒の密造が若干ある、かようなことをもつと確保するような方法ということで、從つて農家の保有米のある割合を酒と換えるというようなお考えですが、どうしても今のところ考えなければなりませんことは、お話の中にもありましたが、現在われわれは絶対量が足りなくて、食糧はどうしても外國輸入に仰がなければならぬ。かような場合でございまして、酒も生活の必需品的な嗜好品でありますけれども、米の飯とは性質を異にしている。この点は、たとえばタバコ專賣というものが、現在政府の財政收入のきわめて重要なウエイトをもつているけれども、しかしながらこれにもおのずから限度がございまして、われわれの食糧を産出すべき田地田畑を、どの程度までタバコにゆだねてよいかということには限度がございます。從つてこれはどんなに殖えても五万町歩を超えてはならならのではないか。今の食糧事情等から考えまして、財政の面と食糧の面とそこに矛盾がございますので、その点に一つの線を引けば一定のリミツトがある。米にいたしましてもさようでありまして、お話のごとく、当然支拂わるべき税がはいつていない。そうして密造されて米が消えているという事実は、ある点これは認めなければならぬのでありますけれども、さればといつて、食糧は諸外國から輸入しなければ絶対量がどうしても足りない。かような場合に、食糧に振向けなければならぬいもをつぶして酒をつくるとか、あるいは米をつぶして酒をつくるとかいうことが、どの程度許されるかということは問題であります。從つて社会政策的に、あるいはまた税の方面から財政政策的に考えて、ただいまお話になつたような欠点を除きながらやるのには、どうしたらよいかということついては、食糧としての米やいもをつぶさないで、しかも税收を確保する。しかもまた專賣益金を上げるというような点から考えまして、私どもは糖蜜を輸入するというようなことを考えております。これは一應そういうことについて懇請をしたこともあるのでありますが、糖蜜が輸入されると、これで純良なアルコールができる。従つて米をつぶさなくても酒ができる。供給が潤沢になれば値段も下るであろうし、密造等も防げる、かような観点に立ちまして、ただいまのお話のような点については、一方には御指摘のような、程度は違いますが、その弊を認めておりますから、その弊を除去するにはかような方法があるということについて、大いに研究をしておりますが、まだこれが不幸にして具体化するに至りませんけれども、その点は御了承願いたいと思います。  それからもう一つ請負制度のことでございますが、これは一應おもしろい案のように思います。なお研究はいたしますけれども、いろいろのこれに伴う弊害ということも考えなければならぬ。それで税は國家が徴收するものであり、國家権力の発動によつて税というものを吸收するわけでありますから、これを納める人にゆだねて請負制度でいくというのは、これは実に手数が省けてうまくいくだろうという考え方もございますが、根本的な考え方としてはそこにまた幾多の弊害が生ずることも予想されるのであります。これらの点につきましては、かねて私は細川君のかような御意見を聞いたことがあるのでありまして、なお適当な機会にゆつくり伺いまして研究は進めたいと思いますけれども、今の私どもの立場では、ただちにこのことが今やつている徴税の機構に代るというようには考えにくい点があるのであります。研究はいたしたいと存じます。さよう御了承願いたいと思います。
  32. 細川八十八

    ○細川(八)委員 私の税制改革は非常に政府のお考えなつていることとはかけ離れております関係上、これによつて私の得心のいくようなお答えをいただけるとは思いませんが、しかし結局にはそういう段階にいかねばならぬことをひとつよくお考えの上、將來の税制改革の上にお考えを願つておきたいと思います。  それから今大藏大臣からこういうことを話されましたから、私はこの委員会で申し上げてよいか惡いかはわからないのでありますが、一應申し上げておきたいと思います。日本の食糧は絶対量が足らぬ、これは閣僚ことごとく言われております。なるほど政府のお持ちになる食糧は足りないが、しかし日本の食糧は、関係方面の協力のために今日國内で非常に滯貨している。終戰後今日まで一番日本國内で滯貨したものは食糧であります。その食糧があるということを私は二三分で附け加えて申し上げて、私の質問を打切りたいと思います。  昔から日本の食糧は人間一人一石と言われている。そうすると、日本の人口七千五百万人で七千六百万石あればよい。これに対してみそ、醤油、酒が二割で千五百万石、それからそば、菓子、そういう副食物で一千万石、一億万石の食糧があればどうにか立つていけるということが昔から言い傳えられている。しからば一億万石の食糧があるかないかという結論にいく。二十一年の大豊作で、六千百七十万石というのが農林省の発表でありますが、おそらく実收は七千万石以上あつたことは國民の常識です。麦はなかなか反別が捕捉できない。政府は千八百万石くらいを予想いたしておりますが、これは三割も四割も多く増收があるということは間違いない。そういたしますと、米麦のみで九千万石あります。それから雜穀は千万石あります。粟、豆、そば粉、あらゆるものであります。それから甘藷、馬鈴薯が、農林省の二十一年の報告によりますと、馬鈴薯で七億三千万貫、甘藷十三億七千万貫、馬鈴薯、甘藷はおそらく政府の実收報告の五割以上あるということは國民の常識であります。そういたしますと三十億万貫、米に換算して約二千万石、それから外國から輸入される食糧が約八百万石、そういたしますと一億二千八百万石という食糧が、甘藷、馬鈴薯、輸入食糧を含めてあります。それからさらに開墾地があります。これは戰時中に食糧増産をはかりまして、疎開者や引揚者が傾斜十五度くらいの山を開墾し、あるいは河川を利用し、あるいは戰災地に麦や甘藷を植えたものが全國百六十万町歩といわれております。おそらく一毛作で一石はとれます。そういたしますとこれまた三千万石という食糧であります。そうすると日本の食糧は一億五千八百万石という厖大な数字に上ります。この食糧があるということは、皆さんはお笑いになりましようが、これは事実日本の國民がこれを食してさらに余つているという、私の申し上げる裏をはつきり物語つておることだけ申し上げておきたいと思います。政府資料のみにおすがりになることに政治の大きい誤りのあられることを、私はこの際両閣僚に申し上げて私の質疑を終る次第であります。
  33. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 一應お諮りいたします。一昨日の理事会で、御質問は各党それぞれまとめてお申出を願うことに相なつております。そうして質問は順序として、まず総論、一般的の質問をしていただき、それから各論にはいるようにお願いしたいと思います。そういう意味で今後運営願いたいのであります。
  34. 後藤悦治

    ○後藤委員 税制改革と取引高税に関して、総論的に大藏大臣安本長官にこの機会に伺いたいと思うのであります。取引税は新聞等で御承知通り、與党、野党をあげて全部が惡税であると断定を下しておりまして、まさに撤回の運命に逢着せんとしておるのであります。私はこの取引高税を惡税と断定する者の一人でございます。何となればただいま細川委員からの御質疑に対する御答弁の中にありましたごとく、わが國の経済の金額面における大部分の比例がやみで動いておるということは、賃金ベースの構成内容等から、大藏大臣並びに安本長官も御承認になつておる通りでありますが、これを各段階においてかけていくということは、物價の上に非常に増嵩を來す。一つのゴム製品をつくるといたしますと、ゴムの原材料が取引の各段階においてかかつてきて、さらに製品の各段階においてかかるということになるのであります。おびただしいものは十数段階に及ぶということであります。きわめてわずかの税を捕捉するために、何回か各段階の手数を繰返す。これは徴税においても非常に多くの人を要するのであります。納税する側においても労務の負担が非常に多いのであります。納税の側、徴税の側、双方ともに多くの労力を要する。その半面得るところの金額は過少である。かようなことは今日の日本の労務がさなきだに不生産労務を多く抱えておりますのに、かような過少全額を捕捉するのに多くの徴税労務を要することによつて、さらに日本の労務を不生産的な方面に振り向けるのであります。なお價格差補給金は本年度の予算におきましても、大体五百億円を計上しておるのでありますけれども、少くとも各種段階において一%ずつ課してまいりますところの、取引高税の末端の價格に及ぼす影響を考えますと、基礎物資に対して價格差補給金を支給することは、その業態の保護ではなくして、低物價政策の一つの操作なのであります。これとまつたく相矛盾するところの効果を取引高税はもたらすものである。しかもさきに申しました賃金ベース等の測定から見ましても、二五%、七五%という金額面の、七十五%の取引高税の金額の捕捉は困難である、脱税の範囲が多いということであります。さらに現下の日本の道義状態では、徴税成績を完全にあげることは、ただいまのやみと正常ルートの捕捉以上に非常に逃がす危險が多い税であるということ、それから所得税において基礎控除引上げ税率引下げる、これは一面國民負担軽減をはかつたようでありますけれども、今回の政府提案によつて見ますと、主食を除くほか、國民生活の必需品の全般に及んでおる。月給袋からは取上げないが、結局は必需品にまで課していくので、がま口から取上げるところの大衆課税である。かような点等、いろいろ例をあげれば枚挙するにいとまないほどの惡税である要素を含んでおるのであります。わずか本年度二百七十億円の税不足のために、取引高税を今日の日本の経済の実体、やみとマル公と正常ルートの実体等において、政府当局がお取上げになつてこれを議会に提案された。私はその提案の態度自体を疑うのであります。どういうような考え方からこれを政府は御提案なつたのでありますか。少くとも今日の段階におきましては、私どもは議会側の意思として、これを全面的に返上いたしたい考えなのでございます。まさにそれは與党、野党を通じての、最初申し上げましたごとく反対意見が多いのでございまして、これは否決の運命をもつておるのでございます。政府はこれに対して、もし議会が取引高税に代る財源を計上するということで返上いたしますならば、政府はその議会の修正に應じられるのか、虚心坦懐に惡税である事実を認めて、議会の意思に應じになりますかどうか。この点について取引高税を御提案になりました政府側の考え方、議会の修正に対して、これを受け入れられる政府側の考え方、まず最初にこの二点について承つてみたいと思うのであります。
  35. 北村徳太郎

    北村國務大臣 取引高税はかつて申したことがあるのでありますが、私ども卒直に申しまして非常に好ましい税とは必ずしも思つていないのであります。ただ日本経済再建のためにかようなこともしなければならぬので、これに対して國民がどこまで理解をもつて、日本経済の再建のためにはやむを得ないことであるとして、協力してくれることができるかどうかという点にあるのでありまして、ヨーロツパ各國においても、これはやはりその國のそれぞれ復興のために取引高税を実施して、それに対して國民の相当熱意ある協力も実現しておる。かような事実もあるのであります。われわれは一言にして惡税と片づけられることには相当異議があるわけであります。かつては惡税中の最惡税と言われた財産税さえも相当とつたことがあるのであります。戰時補償の打切りも、きわめて苛酷だと言われるような税徴收によつて補償を打切つたというような事実もあるのでありまして、これらはいずれもこの戰爭八年間の大きな傷を受れて、この中から起ち上るためにはやむを得ないこととして、あれほどドラステイツクなことさえ國民は耐えてきたのである。かような観点に立つ限り、私は好ましい税とは思いませんけれども、取引高税を今度実施しようとすることは、これは事情において御了解が願えるかと確信しておるのであります。なおこれは勤労所得税等の大幅引下げということと関連いたしまして、うらはらをなすものであつて、このことによつて総合的に税全体の適正化をはかるという観点から見まして、これは妥当であるという考えをもつておるのでありますし、先般税制改革に関する懇談会において、日本におけるその道の権威であるとわれわれが思つておる汐見三郎氏のごときも、取引高税は今日のような日本の段階においては、もう少し率を上げてとつたらどうかというような御意見もあつたのであります。それで單にこれは惡税というような考え方はいたしておらぬのでありまして、総合的に見て、これによつて適正化をはかるというような意味において、またこれは國家の必要な歳入のためにこの際やむを得ないのではないか。それから大衆課税的であるという点も、もちろんそうであると思いますけれども、一面において大衆課税である勤労者の課税も、現実においては相当大幅に引下げるという面があるのであります。これは捕捉が困難だという意見がありましたけれども、私はそうは思つていないので、むしろ國民の協力さえ得れば、各段階ごとにとるのでありますから、一段階拔けておるという事実は、全体の段階を通じて発見することができるという結果になるのであります。これはいろいろお話がございましたけれども、きわめて簡單な印紙のようなものをはつてつていくのでありますから、段階ごとに印紙をはりますので、このことに消費者が協力していただければ、あるところの印紙が拔けておればすぐにやみが捕捉できるというような意味において、この税はやり方次第では、かえつて反対をなさる方々の逆な意味においてある段階を捕捉することによつて全体を捕捉する。そうしてこの課税を励行することによつて物資が正常なるルートを走るというような方向にももつていくことができる。われわれはさような方向にもつていきたいというふうにも考えておるのでありまして、必ずしもこれが非常に不合理な税であるとは考えておらぬのであります。殊に各段階を通りますけれども、一%であつて最後に四%、五%にあがるということは、それはやむを得ない。これは日本経済を再建し、あるいは今の経済事情を安定させるためには、やむを得ざる措置であると思います。さきに申し上げましたように、非常に好ましい税とは思いませんけれども、以上のような趣旨提案いたしましたので、私はこれを御承認願いたい、かように考えておるわけであります。
  36. 後藤悦治

    ○後藤委員 いま少しく詳論いたしたいのでありますが、時間の関係がございますから、取引高税はこの程度にいたしまして、税制改革の点をいま一点伺いたいのであります。ただ質問を取引高税においては一應打切りますが、ただいま大藏大臣の御答弁の中で、誤謬のある点だけを一、二指摘しておきたいのであります。少くとも化粧品のごとく一つの容器にはいつて、卸、小賣あるいは中間等の段階のあるものは、さような形態をとられるのでありますけれども、形をなしたもので、末端において購買しないところの原材料的なもの、かようなものの含む要素については、その捕捉か、しからざるゆえんをこの際指摘しておきたいのであります。なおまた末端におきましても、中間におきましても、今日の取引の單位があるいは十円單位であるとか、五円單位であるとかいう際に、それらの一%というものが、中間の取引單位あるいは原材料等が轉々といたしまする取引單位において、きわめて末端においも、中間においても、端数で切捨てられがちな際にマル公で各價格を構成しておるものの一%というような端数、さような金額が末端において事実徴收できるとお考えなつておるならば、今日の流通貨幣の状態から見まして、大きな誤りであるという点等もこの際指摘しておきたいのであります。  なお税制改革につきまして一言申したいのは、少くとも基礎控除引上げ、あるいは税率引下げ、これは大体において了承いたしておるのであります。しかしながらさらにもし日本の客観的な國情が許すならば、最低生活費全部を基礎控除といたしたいくらいなのであります。それから上へ課税をいたしたいというのが私どもの理想でありまするけれども、少くとも今回とられました所得税体系を中心といたしまするところの基礎控除引上げ家族控除引上げ、あるいは税率引下げ、これが一率に行われました点につきましては、いささか私は政府側の考え方と所見を異にするのであります。この点についても私どもは修正の意見をもつておるのでありますが、少くとも最低生活費と目される月收、年收範囲内からは、基礎控除を今少しく増大して、引上げ控除すべきである。しかる代りに高額所得者の率においては、今回の政府案より多く課税してよろしいのである。こういう考え方をもつております。この考え方に少くとも修正して参りたいと考えるのであります。この点に対しまするところの大藏大臣の御見解をひとつ伺つておきたいのであります。なお高額所得者税率は、現行政府案より高めたいと申しましたけれども、そのうちに最高段階においては制限を付したいのであります。と申しますることは、今日國家財政、並びに地方財政が非常に困難であるがために、國税体系を立てました以後において、それぞれ地方財政の実情に應じまするために、住民税その他において制限外課税を、地方に対して政府は許してまいつたのであります。この結果、地方費の負担と國税の負担を合せますと、現実において收益全体を納付してもなお足らざるという奇現象を呈するのであります。少くとも法治國の日本といたしましては、これが現実に認識される限りにおいては、これらの誤謬は訂正をしなければならぬのであります。年額三十万円以上の高額所得者に対しては、いま少しく過重負担をされるとともに、地方税と國税とを合して、税の最高限を設定しなければならぬ。かように考えるのであります。この点に対しまするところの大藏大臣の御見解を伺いたいのであります。  それからいま一つ附加してお尋ねをいたしたいのは、市街地信用組合に対する特別の法人税が今回廃止されまして、一般の法人税に包含されんとしておるのであります。これらは御承知通り産業組合法に基きまして発達をいたしましたわが國の信用組合が、その後特別の單行法をもつて市街地信用組合法によつて、今日律せられております。これが大きく庶民金融に貢献をしてきた事実、あるいは零細貯金あるいは零細金融をやつておる事実は、私どもは今日といえども否定することはできないのであります。これを普通銀行なみに、一般法人なみに課税せんとすることは、大きな誤りであろうと思うのであります。これらに対する考え方を伺つておきたいのであります。  最後に今回税の決定に対して一つの監察制度をお設けになる御意思でありまするが、少くとも昭和二十二年度末の更正決定のあり方を見ておりますと、徴税側の末端の税務行政が、官廳の一方的見解において更正決定を押しつけた感が非常に強いのであります。今日この体驗に基いて、納税者全般が要望しておるところは、この徴税側官廳の独善とも申すべき一方的見解による更正決定の押しつけに対して、民意が適当に介入する制度の創設を望んでおるのであります。これらに対して政府は、今回何らかの措置をもつて、官制によつて捕捉せんとしておるのでありまするけれども、民間の意思を更正決定の決定前に反映せしむるところの、一つの制度を御創設になる用意があるかどうか。この点について伺いたいのであります。
  37. 梅林時雄

    ○梅林委員 先般理事会におきまして、本案の審議順序、その他方法については申し合わせたのでありまして、伺いますところによれば、大臣も午後はお越しができないというような御都合のように承つております。ところがわれわれといたしましては、先ほど同僚委員からのお話に関連いたしまして、たとえば一般物價であるとか賃金等に対しましても、われわれは基礎的な考えをまとめていきたい。その上で税法の審議にはいりたいと思うのでありますが、先般の理事会の意思に從いまして、午後大臣のお越しができないとするならば、各論を專務当局との間に交換いたしまして、一般論についてはあらためて明日から審議を続行せられんことを希望いたします。
  38. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの梅林委員の御説はごもつともと存じますが、法案がたくさん輻輳しておりますので、できればいま梅林君の御説のように晝からは一つ各論について檢討し、明日は午前中に両大臣にお越し願う予定でありますので、総論をやる。こういうことでいかがでございましようか。——今時間もきておりますので、答弁だけ……。
  39. 北村徳太郎

    北村國務大臣 後藤君の御質疑は非常にたくさんの質問であつたので、全部のお答えを漏らすかもしれませんが、第一に、およそ所得税、殊に勤労所得税というものは、最低生活費を超える部分についてなぜ政府はやらないのかという御議論、これは理論的には私は正当だと思います。しかしながら、これは國が正常な状態のときの理論であるし、かつまた何が最低生活費であるかということについては、理論生計費等について相当問題もあります。この点は一應日本が純粹に最低生活費を超える部分について課税し得る状態になることを、私どもは非常に期待して努力しなければならぬと思うのでありますが、今日の段階においては、これはそういうふうな一應の見解に基いて、理論的なさような根拠に基いて、最低生活費を超える部分でなければ課税できない。こういうふうなことにいたすには、諸般の事情が今のところきわめて困難であるというふうな点について御了承を願いたいと思います。  それから課税方法について、もつと民主的な方法をとつたらどうかというような御意見であつたと思うのでありますが、これはいろいろな團体等について信頼し得るものについては、十分そういう御意見を尊重したいと思うのであります。ただ今日ややもすると一種の團体交渉的なことを御希望になる一部の向きもありまして、そのことが現実の問題としてはいろいろ到るところで問題も若干あるようでありまして、さようなことについてはこれはいたさない方針をとつているのであります。何にしても徴税が円滑にいくためには、いろいろのことを考えねばなりませんし、また皆さんの御経驗等からくる御意見等は十分取入れたい、かように考えているのであります。さきに申しますように税制改革の懇談会もなお解散いたしておりません。これにはそれぞれの各分野における経驗家、学者等もお集まりを願つておりますから、これに諮つて十分諸般の事を檢討をいたしたいと思つております。  更正決定等についていろいろ御非難があることも耳にいたしておりますが、それにはいろいろの原因があることと思います。徴税機構が弱体であつたという点もありますので、これらの改善については今後鋭意努力いたしたいと思います。一應御答弁申し上げます。
  40. 後藤悦治

    ○後藤委員 答弁が漏れております。法人税の市街地信用組合に対する点と、地方税あるいは國税を合して最高納税限度を設定する点、この二つの点が漏れております。
  41. 北村徳太郎

    北村國務大臣 市街地信用組合のことでありますが、これは税率をはなはだしく低下しておりますので、この程度課税は受けてもらいたい。これはもちろん一般の営利を目的とする金融機関ではないという点が特殊の問題でありますけれども、しかしながらこれは利益が出たときには利益を配分することもできるし、あるいは出資に振替えることもできるというようなことに相なつておりますので、單なるその他の慈善的な團体とは性質を異にしておる、営利團体ではないが、事業團体であるというような観点と、それから信用組合がお話のごとく、当初産業組合の一部として行われていた時代から比べますと、非常に発達して来た。今日政府の格段なる保護を要するものではなくして、もはや相当生長されて、一人前になつて濶歩されている時代でありますので、軽度の租税については、これを負担していただくというような考え方をすべきであるというように考えて、さようにいたしましたのであります。その点はさよう御了承を願います。  それから地方税を総合してある限度を超えないようにという御意見はきわめてごもつともでありますが、実際問題として非常に困難な点もございますし、これは技術的に相当研究を要する点でありますから、なお十分研究をいたしたい。ただいま的確にそのことについてはお答え申し上げることが困難でありますから、研究は十分いたしたい、かように考えております。
  42. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 それではこの程度で午前中は終りまして、午後は一時半から再開いたします。     午後零時三十五分休憩