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1948-06-22 第2回国会 衆議院 財政及び金融委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十二日(火曜日)     午前十一時十三分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 泉山 三六君 理事 塚田十一郎君    理事 中崎  敏君 理事 梅林 時雄君    理事 吉川 久衛君       青木 孝義君    淺利 三朗君       江崎 真澄君    大上  司君       島村 一郎君    苫米地英俊君       松田 正一君    宮幡  靖君       赤松  勇君    川合 彰武君       河井 榮藏君    佐藤觀次郎君       林  大作君    八百板 正君       金光 義邦君    後藤 悦治君       中曽根康弘君    井出一太郎君       内藤 友明君    本藤 恒松君       堀江 實藏君  出席政府委員         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         大藏事務官   愛知 揆一君  委員外出席者   参考人         銀行協会長   井尻 芳郎君         全國産業別労働         会議幹事    高倉金一郎君         日本銀行副総裁 川北 禎一君     ————————————— 六月二十一日  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出)(第一六四号)  印紙をもつてする歳入金納付に関する法律案(  内閣提出)(第一六六号)  日本國憲法第八條の規定による議決案内閣提出) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  軍事公債利子支拂特例に関する法律案(内  閣提出)(第八六号)     —————————————
  2. 川合彰武

    川合委員長代理 会議を開きます。  軍事公債利子支拂特例に関する法律案について質疑をいたします。  なお本日は参考人としまして銀行協会長井尻芳郎さん、全國産業別労働会議幹事高倉金一郎さんがお見えになつております。まず井尻さんの御意見を拜聽いたします。
  3. 井尻芳郎

    井尻参考人 私はただいま御紹介にあずかりました銀行協会の会長をいたしております井尻でございます。突然のお呼び出しを受けましたので、用意もございませんが、この軍事公債利拂処理の問題につきましては、もうすでにあらゆる方面から論議を盡されておりまして、ここで私が事新しく申し上げる必要もないのではなかろうかと考えております。  それでこの問題は銀行経理上の問題からと、社会一般に及ぼしまするところの公の方の性質からの二つにわかれるのでありますが、銀行計数上の問題につきましては別としまして、私は根本的の問題といたしましてこの軍事公債利拂処理問題が、純経済的にこれを考えますれば、いかなる面から見ましても意味のないことで、やつてはならないことではなかろうかと私は思つております。しかしこれが問題になりましたのは、結局政治上の問題として取扱われましたがために、こういつたことになつたのではなかろうかと考えられます。まず端的に申しましてこういうことをしてはならないということは、現在の日本でもつて一番大切なことは、これからの経済再建にあるのであります。その途上にありまして、ともかくも國が公約を破棄するということが、非常な問題になるのではなかろうか。現地の公債はただ單に戰時中からの惰力でもつて金融機関だけがこれをもつておるのでありますけれども、本來公債消化ということは、國民全体がこれを行わなければならない問題であります。それで端的に言いますると、普通の家庭におきまするところのお手傳いさんあたりでも、やはり一枚の公債をもたなければならない、これが理想の姿であります。そういつた理想の実現をはかる意味からいきましても、國家公約を破棄するということは、今後の公債消化にも非常なる影響を來すのじやなかろうかと考えます。また対外的に見ましてもこれは非常な反響を呼んでいるのでありまして、現にG・H・Qのマネー・アンド・バンキングの方の連中に会いましても、こんなばかな処理はないから大いに反対しろ、こういうふうな端的な意思表示をしております。またアメリカの方から参りましたところの銀行関係連中も、これはアメリカの方に非常なセンセーシヨンをまき起している、日本將來に対しても、外資導入その他に非常な影響を及ぼすのだから、これは徹底的に阻止しなければならない、こういうふうな言葉を聞いております。この点は特にひとつお含み置きを願いたいと思うのであります。  それからもう一つ申しました公約を破棄することによつての非常な影響ということは、これが將來國家通貨信用を損うということによりまして、通貨の問題にまでこの思想がもち來されるようなことがあるのではなかろうか。要するには政府はどういことをするかわからぬ。從つて通貨の問題にまで不安の念を抱かせ、公債消化に非常に支障を來すようなことを起し、また通貨の面においても大いに惡影響を與えるような問題を提供する。今の日本経済において最も必要でありますところのインフレーシヨンの阻止問題も、こういつたことによつて阻止できないばかりでなしに、なお貯蓄の面にも惡影響を及ぼして、そしてインフレーシヨンを助長するようなことになりはしないか。こういつた廣い意味からいつてどもは大いに反対を唱えているのであります。銀行計数の上から困る、あるいは経営の上から困るというだけでなく、それは困ることもありますけれども、そういつた狹い範囲でなくて、もつと大きな意味から私ども反対しているのであることを簡單に申し上げて、一應の責を塞ぎたいと思います。
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 銀行協会長井尻さんに何かお尋ね願うことはありませんか。
  5. 松田正一

    松田委員 昨日の総理大臣大藏大臣の御答弁によりますと、この公債利息支拂い延期することによつて、各金融会社日本銀行でこれらの金を借り得ることが、大体において約束はできておるように答弁があつたのであります。銀行以外の金融機関は、日本銀行直接の借入はできない。ほかの銀行を通して借りることはできるのだ。そのトンネル式借入によつて、この利息延期の金は借り得られるのだ。そうなるというと、單に利息さやの問題が起るだけで、三分五厘の公債利息が手にはいらない。借りてくる金は日銀の方は三分五厘以上になる。その利息さやは、氣の毒だけれども負担してもらわなければならぬというような答弁を受けたのでありますが、銀行の方では日本銀行の方と、そういうような交渉がまとまつておるのかどうかということを承つてみたいのであります。
  6. 井尻芳郎

    井尻参考人 ただいまの御質問にお答えいたしますが、まだこの問題は申し上げるまでもなく、議会においてこれから審議される問題で、確定いたしておりませんから、どういうふうなことになるか私どもにはわかりませんが、まだ公式には日本銀行がいかなる形式によりまして、これを救済といいますか、処理といいますか、その方法をいたしますることは聞いておりません。非公式には何らかの方法を講じなければならないであろうということは聞いておりまするけれども、これは非公式でありまして、公式にはどういう処理をするということはまだ承つておりません。
  7. 松田正一

    松田委員 何らかの方法によつて救済しなければならぬということは、そうすると、日本銀行銀行の間には内々話が進んでおるのか、それが一つ。何らかの方法というと、どういう方法であるか、それらのことは銀行協会の方でおわかりではないか、この二点をお伺いいたしたい。
  8. 井尻芳郎

    井尻参考人 今の何らかの方法でやらなければならないということが、日銀銀行協会、あるいは銀行の方との間で行われておるかというお尋ねでしたが、それは公式というのではなく、ただ座談的に、いろいろの意見の交換の最中にやつておる言葉のやりとりでありまして、これは公式ではないことを申し上げます。それから何らかの方法ということになりますれば、これはいろいろ形が考えられるのであります。その形はたとえば許されるならば正式に特別の勘定を設けて、そうして利息をそれに適應するように、今お話がありました通り利息を運用する上において、さやがそこに生じまするからして、そういつたものをカバーするために、特別の利息をつけて、特別の勘定を設ける、こういうことも一つ考えられることであります。しかしながら大体そういつた形で財政面とつた今度の措置が、金融面においてそれが出てくれば何にもならないことでありますので、そういつたことに対してはまた一つ考えもありましようが、そこには議論がある。あるいはまた考えようによりましては、一般の貸金の中に入れてそれを処理をされることもありましようが、これは今からどういう形でということを申し上げることはできない。ただ頭の中に考えているだけであります。
  9. 松田正一

    松田委員 それはその程度で承つておきます。大藏大臣はこういうふうな答弁であつた。銀行以外の金融機関日銀借入れるときには、他の銀行を通して借入れることができる。そのトンネル料と申しますか、いわゆる通す料金は無料でさす、こういうふうな御意見であつたのですが、銀行といたしましては、たとえば保險会社から利息支拂を受けられぬから、資金運営の上に支障を來す。よつてあなたの銀行を通して、日銀から金を借りてもらえぬか、こう言うてきたときに、銀行は無手数でそういう借入の介在をすることができるかどうかということが一点。それからこの利拂延期する金額が確実に手にはいらぬので、公債償還のときに、三分五厘の複利をもつて支拂う、こういうのでありますから、現実に拂つてもらつて、その金を金融機関運営をいたしまして、得るところの利益金高と、三分五厘複利にして償還のときに拂つてもらう利益と、これを比較しますれば、銀行がその金を受取つて利息支拂つてもらつて、その資金運営するというときの利息がどれだけで——これは見積りでよろしい、どれだけくらいで、三分五厘複利償還されるときに支拂つてもらう金高はどれだけ、その差が損になるか、あるいは複利計算のときにもらう金で満足ができるか、この二点を伺いたい。
  10. 井尻芳郎

    井尻参考人 ただいまのお話銀行以外で軍事公債をもつておられる方々救済方法につきましては、まだ私どもはそういう場面に当面いたしておりませんから、どういう方法で行うかということは頭の中に描いたことはありません。但し今お聽きいたしましたトンネル式に無ざやで出すことができるかどうかというお話でありましたが銀行の普通の営業から行きますれば、一つの例をあげて御説明を申し上げますと、定期を担保にして金を貸しますときでも、無ざやで貸すことはあり得ない。これは営業上から行きますとそうなる。いかなる場合でも、自分の銀行利益担保にして金を貸すのでありますから、あるいはさやがなく同ざやであつてもいいようなのもありますけれども、そこにはいろいろな形式がありましようが、無ざやということはあり得ない。ですから原則からいきますれば、今のような無手数料でやるということは商賣の上からいけばあり得ません。しかしこういつた非常なときでありまするからして、そうしなければ、あとで申しまするように、利息についても運轉関係からいきますと、さやの損失といつたようなことを考え、あるいは、殊に保險会社にとりますと、この軍事公債利拂停止ということは非常なるところの打撃をこうむるように聞いておりまするので、そういつた関係からいきまして、なおかつトンネルの間でもつて利息をとるということは、非常な苦痛の上に苦痛を増す、そういうようなことを考えますと、商賣の上の常道を離れて、政策的には行うことは、できないものでもないかと言えると思います。ですからそのときの情勢によつてこれはきまるのではなかろうか。あるいは政府の方の政策とか、あるいは打切りの方の問題であるとか、あらゆる面からいつて、なるべく被害を少くするというふうな意味からいきますれば、これは無ざやの点考えられないではなかろうと思います。この二つの区別をひとつお含み置きを願いたいと思います。  それから今の利息がどういうふうになるかという問題でありまするが、これは先ほど來詳しく申し上げることを差控えたのでありまするけれども、一体この利子は何年後に支拂われるかということを、ちよつと頭の中に入れておいていただきたいと思うのであります。これは償還期日の最も近いものは支那事変ごろの第一回で、これは昭和二十四年の六月でありまして、これは延期期間一箇年でありまするけれども、なお最も長いものになりますると、昭和三十八年六月でありまするからして、十五年間の期間があることをひとつお含み置き願いたいと思います。これはもつとも條件といたしまして、軍事公債というものの範囲が、通常今まで言われておるところの範囲であつて、その金額が七百七十六億何がしであることを申し上げて、この條件ちよつと先に申し上げておきますが、一番長いので三十八年六月、これを平均いたしますると、償還期日というものは十一箇年の長きにわたつております。それでは金融機関が直接に影響をこうむりまするところの数字はどうであるかと申しますれば、これは普通の金融機関市中銀行のもつておりまするところの利子が、十一箇年間、三分六厘で押えるということになりますると、概略いたしまして六億七千七百万円にすぎないのでありまするが、これは現在の金利の面からいきまして、まず大体一割見当と押えまして、そうしてこれが年三回か四回それが回轉するというふうな利息をやつていきますると、これは三十四億五千六百万円になる。ですからしてその差額というものが、実に二十七億七千九百万円、概略こんなような数字も出てまいりまするので、経理面の上からいきましても、これは金融機関に與えまするところの打撃というものは、容易ならざるものがあるということを、ひとつお含み置き願いたいと思います。
  11. 川合彰武

    川合委員 井尻さんに先に申し上げておきますが、私は社会党川合であります。私もまた二十年間の銀行生活をしておりまして——もつとも重役にならなかつたので、井尻さんのような大先輩とは違うのでありますが、そういうような体驗を通しまして、井尻さんのお説は、私は非常によく了承するわけであります。しかしながら私たちのイデオロギーと、現在私たちの政党の立場から見まして、どうしても相交わることのできない二つの平行線的な意見があるというように考えるのであります。すでにかような問題はもう論爭済みの問題でありますけれども、私はこの機会にあらためて井尻さんにお伺いしたい点は、こういうように國家公約を破棄したという点において、非常に國家信用を害し、ひいては貯蓄の面に影響するというようなことをおつしやられたわけで、お説ごもつともの点もあるわけであります。しかしながら私思うのに、今日日本國民がこういうような敗戰の現状を見た場合において、非常にドラステイツクないろいろな改革が行われるということは当然でなければならぬ。また当然そういうようなドラステイツク改革を行つてほしいということが、八千万國民の中の相当多数の意見ではないかと思うのであります。そういうような観点からいたしまするならば、私はわずか一箇年間の利子支拂の停止ということによつて貯蓄の面に影響すると観測するのは、今日の國民の進歩した経済知識というものを無視したものではないかと思わざるを得ないのでありますが、この点についてどういうようにお考えになつておられるか。  もう一つ海外信用ということを言われますけれども海外に所有されておる日本公債に対しては、特別な措置をとつておるということは御承知通りであります。そこで私は問題はここにあると思うのであります。三党協定というような生ぬるいことからして、問題の本質がやや焦点をはずれる、すなわち私たちは本質的にはこういうような擬制資本であるところの戰時公債というものは、その元本を破棄すべきであるとわれわれが主張したということは、つとに御承知通りであるし、またわれわれは理論的には正しいという信念をもつております。しかるに三党協定というような現実政治力バランスから、同時にまたそういうようなバランスの上に立つて、今日の敗戰下政治を行わなければならぬということからして、生ぬるい、殊に社会党が妥協したという点において、非常に利子支拂の問題というものが論理的な欠陷を有し、その論理的欠陷をもつておるからこそ、いろいろな批判があると思うのであります。從つて私は問題を純経済的に考えた場合において、私は永久にこの利子支拂を停止するということをはつきりすれば、問題の余地を残さない。なまじつか一箇年間と限つたところに非常に問題があるということ、同時にそれが一つのたとえば氷山の上部だけを現わしておる、あるいは社会党國会において絶対過半数を占めた曉には、元本支拂も停止するであろう、あるいは將來における利子支拂も停止するであろうというような不安があるからこそ、金融機関方々が御心配なさつておるのではないか、これはむしろ問題は政治力解決する問題である。私は今言つた観点からして、理論的にはわれわれの意見が正しいと思いますが、これは相交わることのできない二つの平行線的な議論でありますから、論爭は避けます。最初に言つた一箇年の利子支拂停止によつて國家信用が損われ、それによつて貯蓄奬励が非常に損われる、またそれを通して日本インフレーシヨンがさらに拍車をかけられるというようなふうにお考えになるのは、思い違いじやないかと私は考えるのでありますが、あるいは根本的な意見相違からして、見解の相違と言われればそれきりでありますが、その点に関して井尻さんの御感想をお話下されば幸いと思うのであります。
  12. 井尻芳郎

    井尻參考人 今お話が出ましたので、やはり考えの中にはお話通り平行線の点があるのであります。これは水掛論になるかもしれませんが、一箇年の利子棚上げ済むのだからいいのじやないかというお話でありますが、これは私といたしましては、それが非常に問題なので、一箇年でこれが済まされる問題じやないというのが根本の問題であります。たとえば料理屋の禁止についても、これは一箇年と言つていてもまた延びておる。端的に申しますと公債の問題もそうで、私はこれが一遍で済むことであるならば別ですが、公約の破棄ということは、当然行われるところから見ますれば、こんな問題はもつとたやすく行われてしまうのではないか、このことを申し上げておきます。それからもう一つ貯蓄の増強に影響があるかないかという問題、それからインフレーシヨンがどうこうという問題がありますが、二十何億の利子棚上げをすることによつて、孫の利息がつくということは、なぜこういうことをしなければならないか。このわずかばかりの金をなぜそういうふうにして國家に負担を大きくする必要があるか、私はこのことをお伺いいたしておきます。たとえて言つてみますれば、わずかの金で済みますものを、それを財政面でもつて抑えて、抑えきりでもつて、他に影響がなければいいのですが、この解決には金融機関の方を通じて出さなければ、解決がつかないという問題が一つありましようし、それから孫の利息をつける、これも相当金額になります。ただ当然の問題として一つのことを処理するために、そういつたあらゆる面に惡い影響を及ぼす必要がどこにあるか、私は経済上の問題からいきますれば、これは当然結論は一つで、やつてはいけないという問題にどなたも到達するのではないかと思う。そこに三党政策協定であるとか——政治のことにわたることは私は避けますけれども、あるいはこういうことにしなければ政局がどうなるとか、いろいろ政治上の取引と言いますか、取引言つて言葉が惡ければ、政治上のあやによつてこういう畸形の子供ができたので、百害あつて一利もないのだというのが、政治上の力とか、政治上のあやで抹殺されておるということを考えますと、これはどうしてもやめていただかなければならない。こういうふうに私は考える。あるいはお話通りにあなた方のもつておられますところのお考えと、われわれの考えと平行して交わる点がありませんので、議論はあるいはわかれるかもしれませんけれども、そういうふうに考えております。
  13. 苫米地英俊

    苫米地(英)委員 昨日総理大臣答弁を聽きまして、今井尻銀行協会長お話を承りまして、そこに二つの問題が絡まつておることを発見いたしたのであります。その一つの問題は、総理金融界においてはこれを了承して何ら差支えのないような方法がすでに立つておると聞いておる、こういう問題であります。そこではたして金融界においてはこれを了承して差支えないような計画がすでにでき上つておるといたしますならば、その計画についてお伺いいたしたいのであります。もちろんできておらなければできておらないだけで結構であります。  いま一つは、総理はこれは本会議においても言われましたし、またきのうも言われたのでありますが、國際関係信用には何ら影響しておらない、こういうことを主張しておられるのでありますが、今のお話を聽きますと、どうも影響がないとも考えられないのであります。この影響のあるということについて、もう少し具体的にお話を承ればしあわせだと存ずる次第であります。
  14. 井尻芳郎

    井尻参考人 それではちよつとお答えいたします。ただいまの御質問によりまして、金融界が了承しており、そうしてその処置について何らかのものがあるのではないかというお話がありましたが、御承知通りこの軍事公債利拂処理の問題につきましては、金融界といたしましては依然として反対を続けておるのでありまして、了承はいたしておらないのであります。この点ひとつ申し上げておきます。從いまして先ほども皆さん方から御指摘のありました、いかなる処理によつてこれを行うかということにつきましては、具体的に指示を受けておりませんし、そういう問題も決定いたしておりません。このことも申し上げておきます。  それから次の問題といたしまして、國際的に影響があるかないかの問題でありますが、今度の金融機関最終処理の問題につきまして、御説明申し上げますれば大体おわかりのことと思います。それは御承知通り金融機関最終処理の問題につきましては、三月末日をもつて一應この処理を了することになつたのでありますが、ドレーパー・ミツシヨンがまいりましたときに、非常に將來日本貿易関係であるとか、あるいは外資導入であるとか、こういうものをスムースにいたしまして、そうして日本再建を早めるためには、金融機関をどうしても健全にしなければならないということが、特に強調されたように聞いております。これは新聞紙上にも出ておりましたが、その現われといたしましては、私ども日本人の常といたしまして、また銀行家といたしまして、預金者方々にも非常に御迷惑をかけておりましたが、第二封鎖の打切りにつきましても、どうしても変更を予儀なくされたといいますのは、われわれといたしましては、良心的にこれだけの切捨て、これだけの処置をとりますれば十分だ、なお隠れたところの含みをもつておるので、良心的にもう大丈夫だという信念のもとに行いました。大藏当局とも話合いをいたしまして、われわれといたしましては進めました。そういう数字でさえも、なおかつもつと健全にしなければならない。内容をよくしなければならないのだというふうな意味から言いまして、御承知通りに世間の方々が予想された、あるいは新聞を通じて予想されました数字と、幾分違つてきたというのはここに問題がある。金融機関の健全を保つということが最も必要なことである。それはなぜかと言いますれば、外資導入とか、あるいは將來の問題であるとか、向うの方の連中考えが、日本経済に対して、固まつていないところには投資なんかは及びもつかないところだという現われから、端的に日本政治がこういうふうに進んでおるのである、この一事を考えますれば、この公債について國家公約を破棄する、あるいは金融機関の姿が健全であればあるほどいいのであるということを考えますると、総理の言われるように、外國の方では影響がないのだということはこれは言い切れない、あるいは日本公債は、外國の方々に対しては利子支拂うからということのただ單なることで利子支拂われるから、公債が下らないというふうな問題でなしに、日本の実情を見て、今後の公債消化であるとか、あるいは今手持ちしておるところの公債についての考えを外國の方はもつのですから、これは影響がないどころではない。非常な影響があるということをここでもつて特に申し上げたいと思います。
  15. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 私民主党でありますが、決算委員会に出ておりまして、もし前の方がお聽きになつておれば、この点はお返事なくても結構であります。軍事公債利拂一箇年延期の問題は、われわれの方では必ずこれは一箇年で、二年三年となることは絶対にない、こういう確信であり、また公約をしておるのでありますが、その間に銀行当局に御迷惑が多少おかかりすることは、まことに遺憾であると思います。ただ今のお話を承りまして、銀行当局が期待し得べき利益を喪失しておる、こういう点はそれはあるだろうと思います。そういうものの喪失のほかに、銀行運営自体に亀裂を生ぜしめるようなそういう事態があるかどうか、これは一箇年に限つてやるのだという前提のもとに、銀行運営自体に亀裂を生ぜしめるようなことがあるかどうか、この点をもう一回お伺いしたい。  もう一つは一箇年延期いたしまして、そしてそれによつて生ずる影響というものを、昨日の関係者のお話では、日銀その他との了解によつてこれを救済するような、調節するような措置の了解があるやに聞いておつたのでありますが、その点についても関連してお答え願いたいと思います。
  16. 井尻芳郎

    井尻参考人 今のお話の、それはまず一箇年延期によりまして銀行経理面といいますか、内容について非常な亀裂を生ずるか生じないかという問題、これはお尋ねの件が一箇年といいますか、満一箇年だけでやらないのだというところの、これは私に言わせれば仮定のもとにおける御質問ですから、その仮定のもとにおける御質問にお答えするのは、ちよつとぐあいが惡いのでありますけれども、すでに公債利拂の今度の処置の問題が起りましてから公債は幾分値が下つております。その値が下つておるということでも、これは非常な影響がある。ましてこれは軍事公債だけの問題でなしに、今公債が現に暴落しないということは、金融機関が手離すことができない。それで押えておるのです。これがどうしても押えることができなくて、手離すということになると、これは由々しき問題で、日本経済の破滅を來たす問題がある。ですから公債の値下げという問題は、今日の問題は公債の値下げについては特に論及いたしませんでしたが、問題の焦点は公債の値下りであります。この値下りをどうするかという問題が私は非常な問題だろうと思います。それから國家公約破棄ということによつて、それが拍車をかけられることをひとつ考え置きを願いたいと思います。ただ單に軍事公債ばかりではありません。他の公債にも私はその影響は必ず及ぶものであると考えます。  それから今何らかの救済方法というお言葉を使われましたが、それは政府日銀との間の了解というお話でありますか、日銀と民間との了解というお話でありますか、質問の点は‥‥。
  17. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 両方含めて何らかの……。
  18. 井尻芳郎

    井尻参考人 それは政府日銀との間にいかなる了解がありますか、私は存じません。それは関知しないところであつて、何らかの意見の交換は行われておると、常識的に考えてもわかるのでありますが、その点は、はつきりいたしません。それからこれはさきほど申し上げましたが、日本銀行方々とわれわれ民間の業者との間には、座談的にはいろいろの話合は交しておりますけれども、公式にどうのこうのというところには、まだ行つておりません。要するにこの問題がまだ解決されないのであります。法律的にも解決しておらないのであります。それだけ申し上げます。
  19. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 中曽根さんに申し上げますが、その点は午後、日銀から副総裁が來られることになつております。その折お尋ねすることにいたします。
  20. 島村一郎

    ○島村委員 ちよつとお伺いいたしますが、先日の中ごろでしたか、この問題が閣議で決定されました時に、十三日会では総会の席でしたかにおいて、今後こういう措置をとることにすれば、募債も、あるいは復興債でもなんでも、そういうものの引受をしないというような決議をしたことを聞きもし、新聞もまたこれを報道しておりますが、これに対してそういう御決議があつたのかどうか、御承知でしたらお聽かせ願いたい。
  21. 井尻芳郎

    井尻参考人 これは十三日会のことですから——承知通り十三日会というものは、地方銀行方々で結成されておりますところの会合であります。その十三日会の会合には私出席いたしませんから、ここではつきり申し上げるわけにはまいりませんが、今御質問のように、殊に戰爭最中におきましては、私も地方銀行を経営しておりました経驗がありますが、公債消化につきましては、徹底的に政府の命令に從つて、地方銀行は非常な公債の所有者になつております。從つてこの事務上の点からいきましても、銀行経営の上からいきましても、公債利拂の問題は、この処理いかんによつては、打撃という言葉は使つてはいけませんけれども、非常な影響を受けるわけであります。從つて地方銀行にいたしましても、われわれもそうでありますけれども、手もとのパーセンテージから言いますと、非常に多い。地方銀行にとりましては、もし一年でも利拂棚上げされるようなことがありますれば、これは由々しき大事なのですから、場合によつて公債の引受けということを違慮しなければならないような状態に立至るのではなかろうかということは、常識的にも考えられる問題であります。今いろいろの融資規正の上からいきまして、集まつた資金のうちの、どれだけの部分は必ずもたなければならないというふうに規正されております。またもつことによりまして、日本経済再建が速やかになるのでありますから、喜んでもつておるのでありますけれども、やはり企業の問題でありますから立行かないような、あるいは非常な影響を受けるようなことになりますれば、あるいはそういうふうなことが起り得るのであります。現に一二のものは、幾分その消化も引受も遅れたところがあるのではありませんが、遅らせようか、どうしようかといつたような氣分も——、遅らしたとは申しませんが、そういつたような氣分も幾分釀したやにも聽いております。しかしこれがもし長引くことになり、一年ばかりでなしに、なお続いていくことになりますれば、地方銀行のみならず全体の金融機関といたしましても、相当これは考えなければならない問題が起るのではないかと思います。その点特に申し上げておきます。
  22. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 なお御意見があると存じますが、あとにお願いいたしまして、全日本産業別労働組合会議高倉金一郎にお願いいたします。
  23. 高倉金一郎

    ○高倉参考人 ただいま御紹介にあずかりました高倉であります。  本問題については、今朝やつと御通知をいただいてあわてて來たわけでありますが、今までの御説明、御意見の中では、全部反対されたようであります。これは金融陣にとつて影響が大きいから、いろいろな理由をあげて、銀行陣を代表されて反対をされております。ところがわれわれは、労働者の立場からこういう法案に反対を表明いたします。反対の理由を申し上げます前に、今まで金融資本を代表して意見を述ベられた中に、われわれと見解を異にする点をまず指摘させていただきたい。それは公約破棄であります。公約破棄がなぜ惡いか、こういう問題こそ早く破棄すベき問題である。どういうことかといいますと、これは日本が戰爭をする時分に戰爭を助長するために約束したものであります。現在戰爭をしないということを決定しておるので、その当時の約束を破ることの方が正しいのであつて、これを破らないということは、戰爭をまたするかのような印象を與えるのであります。だから私はこれは公約を破棄するということをもつて、この法案に反対される金融資本の方の御意見について、われわれの見解を述ベる次第であります。それから國際的な観点からこの法案に反対されております。特に具体的に人名をあげて、その意見を参考にして反対されております。だれがどう言つた、彼がこう言つたというようなことを言つておりますが、それは同じ立場にある人の意見であるということを、特に銘記しなければならない。世界にはそれ以外にも意見があるであろうし、また必ずあるベきだということを私ははつきり申し上げます。反対意見も世界にはあるから、一部の意見だけをもつて、これが國際的な意見だというふうにとつて、この法案についての意見を述ベられることは間違つておるということを指摘しておきたいと思います。それから貯蓄を増強するために、この法案に反対するということを言つておりますが、現在貯蓄をなし得る階級というのはどういう人々であるか。労働者は全然貯蓄の能力はありません。こういう観点からするならば、これは金融資本を守るために反対されておるというだけのことであつて、何ら貯蓄の増強にはならない。ほんとうの意味國家の力を蓄積するという意味での貯蓄にはならないということを指摘しておきたいと思います。それから外資導入の問題について言われました。外資導入するためには、どういうふうな條件を揃えねばならないかという観点から、この問題を取上げておりますが、金を貸す方の條件に合わせようと思えば、どこまでいつてもきりがないということをわれわれは知らねばならぬ。そういう観点からすると、利子が高いほどいいでしよう。そのほか金融資本が安定した力をもつておるということが、向うの金融資本からこちらへくる場合にはいいのはわかつております。しかしながらそういうことを無條件政策面に取入れるために、こういう問題を論ずるのは見当がはずれておると思われるわけであります。大体今まで言われた問題について、私ども考え方の違つておる点だけを申し上げましたが、この法案に反対する意見をこれから申し上げたい。  社会党の方がわれわれは利子も、それから公債それ自体も切捨てることを主張しておる、三党協定の線に沿うてこういうふうになつたが、基本的には利子も、それから元金も切捨てるベきものだと、こういうことを主張されておりましたが、私はその通りだと思います。そういう観点からこの法案はいけないと思う。今までここで質疑のありました点は、すベて金融資本をどうすれば擁護できるかという観点からのみ論議されております。その点ではその法案が通つたところで大した打撃を受けないということで、言葉の上では受けるというふうになつておりますけれども、かえつて安心されたと思われます。いろいろ銀行側の方からの御説明もあつて、金融資本の側に立たれる方々は、大体これならばよかろうというふうにお考えになつたのではないか。まつたくこの法案は金融資本を擁護するという立場から論ぜられておりますが、われわれはそういう観点から日本経済再建せられるというふうには考えません。どうしても労働者の生活を安定するということが、日本経済再建には絶対に必要である。そういう意味からすれば、こういう法案でなしに、利子も元金も切捨てるような法案が考えられねばならないということであります。なぜならば、こういう、もう生産というものとは関係のない、普通いわれておる言葉でいえば、擬制資本を切捨てるということに力が注がれるのでなくて、これは擬制資本を温存するということ、そうして一年経つたならばまた息を吹き返すということをめどにしてやつておりますが、擬制資本が一年だけちよつと利子棚上げする、その後はまた息を吹き返すということであれば、これが労働者の賃金の上にどういう影響を與えるか。これは具体的に申し上げるまでもなく、労働者の負担にする以外に方法があろうわけはないのであります。だからこういうことではどうしても日本経済が復興しないと考えられますので、この法案に反対するわけであります。  それからもう一つ國際的観点からこの法案に反対します。それは、この法案が國際的な資本というものからきらわれるというふうに言われましたが、われわれは、こういう法案は世界の勤労階級からきらわれるという観点から反対します。なぜならば、これは戰爭というものについての考え方を表明しておる。軍事公債というものが日本ではまだ支持されておる。そうして一年の後にはまたもとへ戻つていく。これは日本の民主化というもののカーヴを示しておるというふうに見られるに違いない。一箇年間は世界情勢からこういう法案をつくつた方がごまかすのに都合がよい。しかし一年経てばこの民主化のカーヴが逆行するというふうに見られる。ほんとうに戰爭をしないと決定しておる日本に、こんな軍事公債の取扱い方をしなければならぬ理由がどこにあるでしようか。しかし金融資本がもし戰爭を望んでおるならばこういうことが必要でしよう。將來も戰爭を望んでおるならば必要でしよう。なぜならば、軍事的なものに投資をすることを獎励することになるからであります。われわれが戰爭を放棄しなければならぬということ、日本の民主化を達成しなければならぬという観点からしてもこのような法案ではなくして、根本的に日本の民主化を促進し、そうして労働者の生活を安定させるという観点からの、経済再建の基本的な方針に副うような法案が出ることを切望するがゆえに、この法案に反対意味を表明しておきます。
  24. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの高倉さんのお説にお尋ねの点がありますればこの際許します——別にありませんか。それでは午前中の会議はこの程度に終りまして、午後二時から再開いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  25. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 それでは午後二時から再開いたします。暫時休憩します。     午後零時十分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後四時十一分開議
  26. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 午前中に引続きまして会議を開きます。  午前中には銀行協会長井尻芳郎君、全國産別労働組合会議幹事高倉金一郎君の蘊蓄のあるお話を拜聽しましたが、ただいまから日本銀行副総裁であらせられる川北禎一君のお話を拜聽したいと思います。川北さんはきようは非常にお忙しいところであり、関係方面へお出かけになつてつたのですが、ちようど今お手がすいて、先ほど御出席をいただいたのでありまして、特においでを願いました御好意に対しまして深く感謝する次第であります。それでは、これから御遠慮ない、忌憚のないお話をお願いいたしたいと思います。
  27. 川北禎一

    ○川北参考人 今日は総裁が伺いまして軍公問題につきましての所見を申し上げたいと思つておりましたのに、年前中会合がありまして、午後外國人との会合を控えまして手が放せませんので、私が代つて伺いまして軍公問題についての私どもの感じ、私個人の意見もございますし、また日本銀行としての見解も併せて簡單に申し上げたいと思います。  この問題はすでに議論し盡された問題でございます。皆さん方も十分御了承のことでございますので、あまり詳しく、あるいは深く申し上げないのでございますが、この利拂延期を不可とする理由でございます。國の債務の履行という問題は、第一に國家自体の信用に関することであります。ひいてはまたその國の通貨信用制度の基礎をなすものでありますので、國債の利拂延期措置を講じますと、國家信用を害することとなるのみならず、通貨信用を害する点が非常に多いと思います。特に國の國債の消化、あるいは今後の貯蓄増強といつた面に、大きな惡影響があると考えるのであります。殊に現在は終戰後の混乱期を一應脱して、日本経済再建のために積極的な施策を進めていかなければならないわけであります。このような重大なときにあたつて利拂延期のごとき、積極的な意義に乏しい、かつ一面先ほど申しましたような、國家信用通貨信用を害するような施策をすることは、國家全体から見まして大きな損失であると思うのであります。この点はただいま申しました時期の点から考えまして、戰爭直後に行われました戰時補償の打切りとは、その事態並びにその意義を異にするものと私ども考えております。しかも対外関係について申しまするに、ようやく最近に至りまして外資導入の氣運に向いております。それが最も日本再建のために重要なことになつておりまするときに、民間外資導入、あるいは外國民間投資を行わんとしております人たちに、このような政府措置によりまして、あるいは財産税が大きく將來課せられるとか、あるいは日本の資本が虐待されるという心配をかけるということになるのではないか、こういう懸念を対外的に與えるという点におきましても、その影響が軽視できないと思います。またこの利拂停止は、本年度限りのものだと政府の間に言われておりますが、しかし一度かような措置がとられまして、貨幣、債券というもの、國家の債務が軽々に取扱われるということになりますと、政府の声明も將來信用せられない。この一年という利拂停止も、今後なお継続されるのではないか、あるいはさらにもつとラジカルな手段も講ぜられるのではないかという不安の念を起し、これをぬぐい得ないのであります。これは國民信頼の問題でありまして、政府が今後これはやらぬのだと言われましても、國民がこれを信用しなければそれまでのことで、結局國家に対する不信、通貨信用制度に対する不信というものを拂拭し得ない、こういう心理的影響考えますと、先ほど申しましたような惡影響は、より深刻なものになつてくる。ひいては國債市價の値下りというおそれもある。國債市價が現在よりももつと下落いたしますれば、金融機関の資産内容に大きな穴、資産内容の惡化を來すわけであります。現在軍事公債の市價を見ますと、五月に比べまして三分半軍公で大体三円見当下つております。それから郵便局から賣り出された三分半の軍公、これは小額のものでありますために、証券業者を経由して日本銀行借入れの方法が講じられておりますので、これは今日までほとんど下つておりません。九十一円という相場をもつておりましたものが、六月二十一日には八十五円になつておりまして、これは五、六円の値下りを來しております。もつともこれは五月になりましてから、御承知通り一般証券事情が惡いのでその影響もあるかと思いますが、四月の中ごろに比べまして、普通の軍公三分半が三円、郵便局賣り出しの三分半が六円下つているという状態でございます。  またこれを財政的にみまして、この利拂延期政府の歳入面において財源を浮かせる方法といたしましては、その額が厖大なる歳入歳出予算に較べましていかにも些少であり、かつ結局は支拂わねばならぬ利子である。またかりにこれを当面日本銀行信用膨張で賄うというようなことにでもなりますれば、眞に実質的な財源節約、あるいは財源の捻出ということにはならないのであります。財政上の見地だけからみましてもプラスにならないと考えておるのであります。  今回の政府案によります軍公利拂延期案の直接の影響といたしましては、軍事公債利子が現金で入らないという点にあるのでありまして、その大部分の所有者であります金融機関の金繰りが窮屈になるということであります。もしこういうことが決定したとすれば、その金繰りは何らかの方法によつて、ある程度は補填しなければならないのではないかと考えております。しかしながらこの問題はまだ議会で決定した問題でもありませんので、日本銀行といたしましても、これに対する対策を具体的に考えてはおりません。対政府関係においても、対金融機関関係においても、善後措置について日本銀行は未だ具体的なことを考えたことはございません。ただ私ども考え方を御参考までに申し上げてみますならば、利子現実に入らないことによりまして、金融機関資金繰りを圧迫することはあり得るのであります。数字は皆樣すでに御承知のことと思いますので申し上げませんが、金融機関の一年間に、軍公利拂いとして受けますものが十七億六千万円、日本銀行が一億七千三百万円、預金部並びに政府が六億四千万円、その他の個人一億三千六百万円、合計二十七億となるのであります。金融機関が約十七億に相当する軍公債利子支拂を現金で受け得ないために、金融機関資金繰りを圧迫することは、現実の問題として考えられます。日本銀行といたしましては、そのような場合に、金融機関一般資金繰り不足として、いろいろな收支があります。その中に國債の利子として入るべきものが十七億円一年を通じて入らない。これが一般資金繰に影響をいたしまして、そこに不足を來すという場合は、ある程度のめんどうは見なければならぬと思つております。しかし軍公利拂延期措置に対應いたしまして、日本銀行が右から左に資金を調達してやる、そして軍公利拂いの延期による影響を相殺してしまう。たとえば延期利子相当額をどの銀行にも無條件で貸すというような措置は、日本銀行としてはとれません。またとるべきではないと考えております。これはひとり金融機関だけの問題ではなく、個人公債所有者との均衡問題もございます。金融機関だけにそういう便宜を與えることは均衡上おもしろくないのみならず、またこういう措置が議会において決定するとするならば、それを一方において日本銀行が何らの影響のないように、右から左に相殺してしまうような措置を講ずることは適当でない。日本銀行といたしましてもとれない政策である、あくまで金融機関一般的な資金繰り、金繰りの不足じりの中に、それを一緒に考えて、金融機関の必要な資金を融通するについて、それだけの現金收入がないために、産業資金の供給に困るという場合に、一般資金繰りの不足を日本銀行で見ていくという程度のことは、軍公利拂延期措置が決定したとすれば、日本銀行としても考えなければならぬのではないか、現在かように考えておる次第であります。日本銀行といたしましては、先ほど簡單に申しましたような趣旨で、政府当局にも、あるいは司令部にもその適当でないゆえんを説いてまいつたのであります。今でもその信念は変りません。ただある時期以後は、政治的な問題となり、政治的な行動によつて解決することは、中中銀行としては差控えなければならない状態にもなりましたので、一般の金融業者のごとく政党を訪問するとか、あるいは主張を発表するとかいうことは、ある時期以後差控えておりますけれども、軍公問題を財政経済の問題の見地から考える限り、先ほど申しました通り、現段階においてこの措置の行うべからざることを終始確信し、また主張しておる次第でありまして、もはや詳しく御説明する要もないと思います。  まことに簡單でございますけれどもども考え方を申し上げた次第であります。
  28. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの川北さんのお説に対して、何かお尋ねがございましたら御発言を願います。
  29. 後藤悦治

    ○後藤委員 私少し遅れて参りましたので、御意見の全貌については、うかがい知ることができなかつたのでありますが、結論的に今要約されました点で、大体の御趣旨のほどはうかがえると思うのであります。日銀側の意見といたしましても、軍公の利拂いが金融業界から見て適切でないという結論に達せられたということは、私といたしましてもしごく同感なのであります。なおそれに関連いたしまして、利拂いに相当する額を日銀が融資するかどうかについて、ただちにそれの身代り的な融資を行う意思はない、全般の金繰じりからにらみ合わせて行うのが適当である、この御見解もそれで結構であると私は考えております。ただここで一應御見解を伺つておきたいことが一つあるのであります。御指摘のようにこの利拂停止によりまして金融界におきましては預金を食いこみますか、あるいは資本を食いこみますから、一應それだけ産業資金を圧迫することも御指摘の通りでありますが、私はさらにこういうことを考えねばならないと思います。それはインフレが高進してくることによりまして、日本の産業が縮小再生産の過程にはいりつつあるのでありますが、このインフレを抑制いたします対策としては、何としても生産の増大によらねばならぬことは、何人の首肯しておる論なのでございますけれども、今日の状態から見ますと、少くとも資金の面においてそれと逆行する傾向があるのであります。それは御承知のように、今日の新聞でも報道されておりますが、いわゆる安定帶物資を六十倍ないし六十五倍の線から、百十倍もしくは一部のものは百二十倍の線までもつていこうということであります。ここにおいて物價の倍率がさらに躍進することによりまして、一般の産業は資金の回轉には非常な窮屈を感ずるのであります。少くとも昭和二十二年度末の、すなわち本年の春の政府の更正決定による税取立におきましても、産業界は非常な金詰りを來しておるのであります。さらに物價体系の変更によりまして、より以上に産業界に金詰りを來すのでありますからして、加えて産業金融資本界においては、この措置によつて少くとも寡少な、——全國的に見れば十五億は大きな金額とは申せませんが、これも金詰りにさらに拍車をかけることになるのであります。こういうことから考えてまいりますと、一体物價の改訂なり、軍公の利拂の停止ということは、逆に財政面から生産の拡大を圧迫こそすれ、援助することにはならないのであります。一般の新物價体系の率の増大もしくはインフレの高進等によりまして、從來所持しておりました資金によりましては、少くとも資金金額面は変りはなくても物にかえました場合に、産業面といたしましては、物の面では縮小してまいらねばならないのであります。どうしても産業は生産増大をはからねばならないのに、財政面から資金の面が逆に制約を受けていく。この観点において私どもが産業界の状態を考えてまいりますときは、一般金融の金繰りの面から、操作としての私は技術的な手続はそれでよろしいと考えますけれども、少くとも日本の財界を指導されるところの日銀当局といたしましては、これらの物價改訂あるいはインフレの高進による資金面から來る産業面の制約、これに対してどうお考えになつておるか、この点を伺いたいと思うのであります。
  30. 川北禎一

    ○川北参考人 ただいまお尋ねの点でございますが、お説の通り今回の物價賃金の改訂というものは、非常に大きな影響を財政の遂行の上に、あるいは産業金融の上に、さらに進んではインフレの進行の上に、重大なる影響を及ぼすと私ども考えておりまして、重大なる関心をもつておるわけであります。これに対して現在すでに御承知通り金融逼迫、これの主たる原因がただいま御指摘のございましたように二十二年度の税徴收の関係從つて政府資金引上げの関係でございます。從つて現在は農村方面でも非常な資金逼迫の状態であります。一般のやみ物價が頭を打ちます程度に、過剰購買力というものが非常に減退しておる状態であります。これを要するに金融逼迫の状態、預金のごときもその情勢を反映いたしまして、四月以降非常に延びが惡い。四月はほとんど三月末に比ベまして三、四十億円と思つておりますが、その程度の増加にしかなつていない。五月になりましてようやく二十二年度の税の関係が一段落いたしました関係で、ややこれが政府散布超過に轉じました。同時に預金も若干の増加を示しまして、おそらく百三十億程度であつたかと思いますが、ちよつと正確に数字は覚えておりません。百億程度の増加を見たのであります。しかしこれは從來の二百億見当の毎月の預金の増加から比べますと、きわめて微々たるものであります。從つて金融機関の預金が増加いたしませんために、資金を出しますことに非常に消極的である。また最近は中間安定あるいは中間安定をもたらすための、安定恐慌というような考え方が、どことなく支配しておりまして、おそらく金融機関がやや前途に対するそういう懸念のために、警戒的になつておるという点もあると思います。從つて産業資金の供給、産業資金の金融難というものが引続いて解消していないという状態なのであります。この間に処しまして日本銀行の金融政策といたしましては、いつも申すことでございますが、インフレをチエツクする見地において、金融を一般にゆるめるという方針はどうしとも取り得ない。ただそれが玉石混淆にならないように、重点的に再建に必要な資金、指定生産のために、あるいは配給ルートに乘つておりますもの、あるいは輸出産業、こういつたものに対する重点的金融ということを今日まで考えておりまして、すでにいろいろな手を打つておるのであります。しかしなかなか金融が樂になるという感じは産業界には容易に來ない。特にそこで問題になりますのは、今回の物價改訂であります。この物價改訂がうまくいきますかどうか。特にうまくいきませんために、インフレーシヨンがこれを契機として一段進行するということになりますと、金融逼迫の感じは一層強くなると考えなければならない。これは手放しの資金の供給放出をいたしません限り、インフレーシヨンが進めば進むほど金融資金難を感じてくるのは、これは常道であるのであります。從つて今回の物價改訂がうまくいきませんでインフレーシヨンになるということは、この産業界の資金難は放つておけば当然一層急迫するという見地から言いましても、このインフレーシヨンの進行はさせたくない。それから技術的に申すと、この物價改訂をやりますと、ここにいわゆる時期的なずれができまして、産業会社にありましてはまず運轉資金を必要とする。それが製品になつて收入するには数箇月の期間がある。また金融機関といたしましても、物價改訂の直後すでに所要資金は原材料の仕入資金として、大きな資金の需要を産業界から受けますが、預金の面はまだ物價改訂がただちに響いて増加してこない。こういうふうな物價改訂による資金的ずれというものが昨年の七月にもございました。約三箇月間これが続きましたが、今年もちようどこの七、八、九という第二・四半期には、そういう状態がある程度起つてくると思つておるのであります。その期間が過ぎますれば、物價改訂が会社の支出にも響きますと同時に、收入の面にも響きまして、金融機関の貸出にも響きますが、同時に預金も自動的に殖えてまいりまして、預金と貸出とが大体バランスを得る。トントンになるという状態を復活いたします。その期間にずれがございます。その間放つておきますと、ただいま御指摘のような金融の逼迫を一層強めるということになります。その間常道になりますまでの時期的ずれとして、資金の環流が十分でありません。その段階に通貨も膨脹いたします。しかしこれがうまく成功いたしますれば、その数箇月を過ぎますれば預金と貸出がバランスし、会社の收入がバランスし、通貨も元の位置に戻つてまいります。膨脹もこの数箇月で止つて、あとは元に戻るという状態が期待される。これは今回の物價と賃金の改訂がうまくいきました場合で、もしこれが惡循環になり、物價の改訂に應じて、主としてこれは賃金の改訂がそのまま維持できるかどうかという問題、物價と通貨の惡環境を來さないで済むかどうかという問題でございます。もしこれが済まないといたしますと、そこにいわゆる單純な時期的ずれでなく、毎月新しい、また会社としては赤字、一般の現象といたしましてはインフレ的な資金の需要というものが、再び起つてくるわけであります。今日まで約半年、大体通貨も物價も横這いいたしましたが、その状態がこれを機会に情勢の変化を來してくる。こういうふうに思うのであります。この意味におきましても、今回の物價改訂、賃金の改訂がうまくいきますことを私どもは念願してやまないのであります。この物價改訂の、先ほど申しました時期的ずれに対する金融政策といたしましては、市中銀行に対してもそういうふうに勧奬していきたいと思いますし、日本銀行自体も、その間の所要資金は、新規の貸出しが増加いたし、あるいは新規通貨が膨脹いたしましても、これを供給するつもりでございます。そういたしませんと、必要な事業の生産が上り、あるいは取引が止るという事態になりますので、日本銀行としては、市中銀行の預金の不足によつて、必要な資金が賄えない場合には、その不足資金日本銀行の貸出しによつて十分賄つていく方針をとつております。ただ日本銀行市中銀行との関係を密にいたしませんと、銀行といたしましては、資金がないがゆえをもつて、すぐ窓口で資金が供給できないと言つて、断られる場合が実はあるのであります。資金の性質によつては、日本銀行までもつてきてもらえば、預金がなければ資金を供給して、その銀行に貸出しをなし得る場合にも、ただその連絡が密でございませんと、銀行の窓口限りで資金の供給が断わられてしまう場合が、実は今日もございます。内輪話を申しますと、銀行の方も預金が集まりません。窮屈でございます。また赤字の出ておる金社等に対しては、金融を自衞上締めておる場合もあります。從つてわくの関係とか、あるいは日本銀行が非常にやかましいということで、おそらく断わられている会社が相当あるらしく、私どももそういう会社から直接話を聽くことがあります。しかしながら出すべき資金がございましたならば、金融機関に預金が集まらない場合でも、資金がない場合でも、日本銀行としてはこれを見ていくというために、御承知のように、すでに一年前から日本銀行には融資斡旋部というものを設けて、そういう場合には取引銀行と会社と一緒に日本銀行においでを願つて、三者で相談して、必要な資金は供給していく。またその方法といたしましては、各種の手形、御承知通り貿易手形、スタンプ手形、工業手形、復金の保障の手形、公團手形というような、各種の手形制度を設けており、またこの春から農業手形を設けまして、手形制度によつて資金の弁別をする。何かわからない資金ぐりの融通手形ではなく、資金の必要がはつきりわかるように手形に載せる。同時に手形信用の程度を併せ目的といたしまして、そういう方法で、必要なる資金日本銀行としてはできるだけ供給することに努めておるわけであります。しかしながら、日本銀行としては、実際は全般的に非常に樂になるまで、全面的に金融の手をゆるめることは、インフレ防止の見地からできませんので、窮屈感は依然残つておる。これはある程度やむを得ない。そういたしませんと、インフレの高進を進めるばかりであると思いますので、そういう点は先ほど申しましたように、市中銀行日本銀行、産業会社、三者一体になつて必要な資金は供給する。こういう線は動かないのでございますので、具体的に、もしこういう会社で、こういう資金がいるのだが、どこの銀行からも出ないということでもございましたならば、今の線に沿つて御相談を願えれば、必ず必要な資金の供給はできるものと私は信じております。当面の物價改訂に対しましても、今日まで約一年間融資斡旋部等を設けて、そういう方針を促進しておりますから、一層それを活用していくべきだと考えております。從つてこの物價改訂によつて、生産に大きな支障を及ぼすことのないように、私どもは努力いたしたいと考えております。
  31. 後藤悦治

    ○後藤委員 御懇切なる御回答ありがとうございました。  そこでもう一言だけ伺つておきたいのでありますが、結局私が申しましたのは、今日わが國では指定生産資材の制度をとつておりまして、まず重要指定生産資材は、チケツトによつて必要なものにのみ配給しておるのであります。ところが物價改訂になりますと、たとえば六十五倍の倍率が百十倍になり、從來百という資金で工場操作が可能であつたものが、たとえば石炭を買うにしても、百の資金では今度は七十あるいは六十五のものしか買えない。同一程度の操業を維持しようとするならば、從來百という資金をもつてつたのに、物價改訂によつて百三十、百四十という、改訂によつて増大されただけプラスした資金をもたないと、同一程度の操業能力をもてないのであります。これらの金融がはかられなければ、資金面から生産増大はさらなり、むしろ縮小再生産にはいらざるを得ない。これに対して資金の援助が必要である。かような資金になおまた十七億前後とは言え、軍公利拂を停止して、銀行の手持資金を圧迫するということは、生産面の資材によつてインフレを抑制しようという見地からいうと、まつたく逆の行き方であるという結論に達するのであります。その点御同感であろうかどうかという答弁を求めた次第であります。
  32. 川北禎一

    ○川北参考人 お説の通りだと思つております。
  33. 林大作

    ○林(大)委員 川北さんのお話を承りますと、いわゆる日本銀行の副総裁としてのお話であります。銀行家としては都合がいいか、惡いかというお話は、市中銀行を護つていく意味における日本銀行として、この延期の問題が都合がいいか惡いか、つまりこういう面のみをあなたはお考えになつているようであります。そこで私はちよつと観点をかえて、大体軍事公債利拂を停止したいというのが社会党本來の考え方でありますし、もつとさかのぼれば、軍事公債のごとき、戰爭をするためにつくつた公債は、前の軍需補償を打切つたとき、同時に打切るべきであつたのであります。それが時期を失して、言わばこういう形でだんだん残つてまいつたのであります。そういう意味から申しますると、今銀行がこれを一年延ばしたらいいか惡いかという問題と、今私が申し上げる問題とは、これは両方同じウエートで考えなければならない問題だと思うのであります。そこで私はあなたに、副総裁という衣を脱いで、日本人個人として、戰爭の跡始末としての軍事公債というものを、しかもあれは戰爭直後に打切るべきものであつたものを、今日利拂を停止するとか、もしくは延期するという問題を、今ここで取上げるのは、銀行に対する影響がこの程度で止まるならやつてもいいとか、やつてはいけないとか、一應この問題の過去の事情、それから現在おかれておる状態を、あなたが銀行を保護しようという立場からでなく、あなたの個人的な御意見を卒直に、ここに伺いたいのであります、
  34. 川北禎一

    ○川北参考人 私は日本銀行の立場あるいは金融機関の立場から、先ほどのような公債利子延期反対したのではありません。一にやはり國家信用という点、あるいは信用制度、通貨制度という面からこれを不可とするという立場にあるのであります。私は銀行に職をもつておりませんでも、ああいう考え方をもつと思つております。ただいまのお話の戰爭中の軍事公債でありますが、これも軍事公債と名のつくものばかりが戰爭に使用された唯一の資金でもないと思つております。これだけが軍艦や大砲をつくつた資金でもない。資金の一部でもありますが、そのほかに、つまりそういうことになりますと、もつと徹底した戰爭中の一切の戰爭参加の資金、民間並びに政府資金について科があるのであつて、この軍事公債と名のつくものだけの問題でなく、特に先ほどお話のございました時期の問題として、またまた、これも日本政府自体の意向であつたかどうかはわかりませんが、終戰直後ああいう措置がとられましたそのときに、同時に併せてこの問題を取扱われるということならばあれだけのことがやられたのですから、他の問題と一緒に片づけ得たので、処理上非常に都合がよかつたと思うのです。これがどうしても切らなければならぬ問題といたしますれば、またやるといたしますれば、軍事公債で出したものに罪がある。軍事公債が惡いのだということになれば、これはもう皆さんも御承知と思いますが、利子だけの問題ではなく、元金にむしろ罪が深いのであります。この元金も——利子でさえも、現在の段階におきましては、非常に処理のしにくい段階、つまり今日まで先ほど申しました建設的段階を踏んでおりませんければいいのでありますが、終戰直後の非常な混乱の時代に、一挙にこれを片づけ得たならばいいと思いますけれども、事今日に至つてすでに三年を経過して、これから建設的にやつていこうというときに、その事自体は大きな金額ではないと思いますけれども、いずれにしても結局つまらぬものである。言葉が非常に惡いのでありますが、可にしても不可にしても非常につまらぬ問題だということに帰するのではないか。しかしこれは非常に議論がありますので、私もこれ以上申すことはどうかと思いますので差接えたいと思います。
  35. 林大作

    ○林(大)委員 今國家信用の問題を言われますから、私は重ねて申し上げたいのでありますが、つまり戰爭に用いた金であるからこれを棒引したらよかろうというのが、私たちの初めからの議論でありまして、今日となるとどうにもならないから、こいつはひとつ銀行を守るためにそんなことをしてもらつては困る。こうおつしやいますのは、ちようど、今事業を始めようとするのに、事業の一部分である金が盜んできた金だ、しかしこの金をとられたら事業を始めることができぬから、どうしても惡い金であるけれども、これは返すわけにいかぬという議論になると思うのです。そういう見地から申しますと、あなたの御説ばかりが正しいというわけにはいかないと私は思います。そこで、私どもは不敏にしてよくわかりませんが、戰爭に使いました金が、まだどこかに打切るべきものがあるようにあなたはおつしやいますから、ぜひあとから伺いたいのでありますが、ありましたならば、それはやはりある程度究明をして、再び戰爭に導かないようなために、多少の苦しみをここで日本が得ましても、それはひとつはつきりしていきたいという立場をとりたいのであります。その意味から申しますと、ささいの問題であると今おつしやいます。あなたのお話を伺いますと、日本金融界に重大なようにも伺えますし、大きな銀行がそろつている中では、ささいの問題であるようにも伺えますが、おそらくささいな問題であろうと思います。そうしたら、そういう筋を日本金融界として立てるために、われわれのような意見銀行の中にも必ずもつベきものである。そうでなければ、今仕事をするのに必要だから、盜んだ金でも返さないという議論になると私は思います。この点は、あまり今の問題だけにとらわれなくて、もう少し將來を見透した、そうしてこれが本当にいいのだという正義観からの御意見を承りたいのであります。少くとも軍事と名のついたくらいのものは、思い切つてこれはたたき切るだけの御意見を私は川北さんからは伺えるだろうと思つてつたのであります。
  36. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 林さんその程度でいかがですか。
  37. 林大作

    ○林(大)委員 結構です。
  38. 中崎敏

    ○中崎委員 後藤君からも意見がありましたので、私も金融界に長らくその身を委ねていたので、その專門的見地から一言言いたいと思つてつたのでありますが、政策協定の線に沿つて、これがすでに具体化されているという問題について、今さら取上げてもしようがないので、われわれ委員としては、ただ参考人意見を聽くに止めて、自分の意見は言わないことにしておきます。
  39. 内藤友明

    ○内藤委員 川北さんにこれはお願いであります。  これは單に軍事公債だけに限つたことではないのでありますが、実は農村は金詰りのために、日本銀行から非常な御配慮をいただいておるのであります。御承知通り、今借りております系統農業会は、この八月十四日で看板を下すことになつておりますので、新しくできます農業協同組合に、なるべく健全なかつこうでしやもじを渡したいと思つておるのであります。そこで、これはお頼みでありますが、相当軍事公債そのほかの公債をもつておりますのを、今御配慮いただいております金の肩替りにおとり願うことはできないものであるか。新しい農業協同組合をほんとうにりつぱに育てて、食糧の一割か二割か三割の増産をさせるために、多少それだけの親心を日本銀行にもつていただけないものか。これは何も大藏省の方に申し上げるのではありません。借りておる方の側と貸しておる側との話でありますが、これは何も軍事公債だけじやありませんが、これをひとつお伺いしたいと思います。
  40. 川北禎一

    ○川北参考人 公債の肩替りの問題は、これは軍公題問につきましても、場合によると一つ処理方法として、どこかで考えつきそうな案でありますが、これは日本銀行といたしましては、軍公につきましてはもちろんでありますし、一般市中銀行の所有公債につきましても、資金の不足につきましては、いつでもその公債担保資金の融通をいたします。公債を引取るということは制限のないことでもあります。それで九割五分の掛値でもつて資金はいつでも十分供給いたしておりますが、やはり金融機関となりますと、農業組合でも一種の投資というものがありまして、御承知通り証券投資の面がございますから、今はなるほど資金の融通には、非常に大きな資金が要りますけれども、これはまた情勢によりますと、証券投資に相当向けられなければならないのであります。この証券投資と貸出し資金というものが両々相まつて金融機関一つの形を成しておるのでありますから、資金の不足は所有証券の担保でもつて、いつでも供給いたしますけれども、これは日本銀行に引取るということはいたしておりません。非常にむずかしい問題だと思います。
  41. 内藤友明

    ○内藤委員 実は今申し上げましたのは、この八月十四日で農業会が看板をおろしまして、農業協同組合に移りますが、そのときにすつきりしたかつこうで移してやりたいということなのでありまして、平生ならばお話のようなことでいかなければならぬと思うのであります。大きな農村の変りどきに、どうかそういうふうなことにぜひ願いたいものだと農村側は熱望しておるのでありますが、いずれまた陳情に参りましたらよろしくお願いいたします。
  42. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいま御説明いただきました中に、日本銀行の融資斡旋についてお話をいただきましたので、それに関してちよつと教えていただきたいと思うのでありますが、ただいまのお話によりますると、日本銀行日本の産業上、また再建上きわめて大切である、こう判断されるものについては、いろいろと融資御斡旋を願えるということでありますが、政府は御承知通り一定の融資準則というものを定めておりまするので、資金を必要とする場合におきましては、大体甲乙丙といつたような、資金の準則によつて融資を願えるというような形のようであります。しかしながら現在のような金繰りの非常に詰つておりまする惡い場合におきましては、せつかくある産業が、少しの援助がありさえすれば立上つていけるとか、あるいはまた金融ができさえすれば振興できるような場合に、それが丙に属しておるとか、あるいはまた乙に属しておるというような意味で。資金の融通がはかばかしくいかない。しかも今日地方金融機関というようなものは相当に逼迫を告げている。預金が思うようにはいつてこないというようなことから、ただいまのお話のようなことがございます場合に、そういう準則を別として、どうしてもこういう資金借入れたい、また借入れることによつて、この産業が立派に回復でき、あるいは振興できるというような場合には、そういう融資準則というようなものを別にして、融資の斡旋を願うことができるものでありましようかどうかということ。それから現在の日銀資金の融通斡旋の基準は、六十日とか、九十日とかいうことで、大体は六十日ぐらいだろうと思うのでありますが、その点はいかがであるか、それから現在の政府の預金がいくらくらいありまするか、それだけをちよつとお伺いしたいと思ます。
  43. 川北禎一

    ○川北参考人 産業金融と融資準則の関係でございますが、今回融資準則も改訂になろうといたしております。從來からそうでございますが、事業としては丙種の銘が打つてございましても、必要な資金は、たとえば配給ルートに乘つております場合とか、あるいは指定生産の場合とか、あるいは輸出の関係になつておりますものは、手形関係といたしましては、貿易手形あるいはスタンプ手形は大体甲の事業でありますが、主として貿易手形、商業手形の線に乘りますれば甲の扱いでいつております。なおまた丙種につていは必要に應じて丙種協議によりまして、丙でありましても金融の便をはかることができるのであります。これも先ほどちよつと申しましたが、銀行にいたしましても、あるいは業者にいたしましても、もうちよつと手を盡されればいいのだが、これは丙だからいかぬといつて銀行の窓口でぽんと断られるような場合があるようであります。この点は丙の業種になつておりましても、資金の性質が甲である。そのもの自体が輸出である。あるいは指定生産である。あるいは配給ルートに乘つておるものであるということさえはつきりいたしますれば、金融がつくということになつております。  次に日本銀行の手形の期限でございますが、これは日本銀行法によりまして三箇月までとることになつております。実際は日本銀行から借ります手形は、大体六十日になつておりますが、切りかえ切りかえしまして、戰爭以來今日まで残つておる手形もあるのでございますから、期間の問題は形式的な問題で、支障はないと思つております。  次に政府の当座貯金の残高は、私ちよつと記憶しておりませんが、最近は支拂いの方が相当遅れておりますし、相当残高が残つておるのではないかと思います。四月末でございましたか、五月末でございましたか調べてみますと、二百五十億ずつとられております暫定予算で、歳入が一割二分くらいだと思います。歳出が一割五分。六月は一部予定がはいりますが、六月までの三箇月でありますと、本体年四千億の予算でいけば、平均でまいれば二割五分の税が出ておらなければならぬものが、税が約半分、収入が一二%、歳出が一五%くらいしか出ておりません。二百五十億の暫定予算の支出も、全部出ておらないような状態になつておると思います。今日政府の当座預金は、おそらく前年度の税金の残りも大分残つておりまして、大藏証券も全額皆済になつておりますから、相当余裕がある状態であると思います。
  44. 川合彰武

    川合委員 本日はこれで打切り、もし川北さんに時間がありましたら懇談会を開いて座談的に話されるよう望みます。
  45. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 それでは川合さんの動議のように、本日の会議はこれで打切りまして、お差支えなかつたら川北さんを囲む懇談会を開きたいと思います。  明日は午前十時より開会し、本日はこれにて散会いたします。     午後五時八分散会