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1948-06-21 第2回国会 衆議院 財政及び金融委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十一日(月曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 塚田十一郎君 理事 島田 晋作君    理事 中崎  敏君 理事 梅林 時雄君    理事 吉川 久衛君       青木 孝義君    淺利 三朗君       石原  登君    江崎 真澄君       大上  司君    倉石 忠雄君       島村 一郎君    苫米地英俊君       松田 正一君    宮幡  靖君       赤松  勇君    川合 彰武君       佐藤觀次郎君    林  大作君       金光 義邦君    中曽根康弘君       細川八十八君    井出一太郎君       内藤 友明君    藤田  榮君       堀江 實藏君    本田 英作君  出席國務大臣         内閣総理大臣 芦田  均君         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         逓 信 大 臣 冨吉 榮二君         國 務 大 臣 栗栖 赳夫君  出席政府委員         大藏事務官   愛知 揆一君  委員外出席者         專門調査員   氏家  武君     ――――――――――――― 六月十八日  有價証券の処分の調整等に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出)(第一五七号) 同月十九日  鉄道運賃並びに郵便料金値反対請願(島上  善五郎君外一名紹介)(第一五一七号)  私鉄運賃に対する課税に関する請願佐伯宗義  君紹介)(第一五三九号)  農業事業税反対請願堀江實藏君外一名紹  介)(第一五四九号)  團扇、扇子及びカレンダーに対する物品税改正  の請願安平鹿一君外一名紹介)(第一五五四  号)  農業協同組合法人税等課税反対請願(黒田  寿男君外二名紹介)(第一五六五号)  茶に対する物品税撤廃請願岡野繁藏君紹  介)(第一五六八号)  元知多飛行場土地建物施設拂下請願佐藤  觀次郎紹介)(第一五七一号)  玩具に対する物品税引下請願早稻田柳右ェ  門君外一名紹介)(第一五六九号)  酒の密造防止と酒税の適正化に関する請願(武  藤嘉一紹介)(第一五七五号) の審査を本委員会に付託された。 六月十九日  農業協同組合に対し法人税等課税反対に関す  る陳情書外二件  (第七三九  号)  協同組合法人税等課税反対に関する陳情書  (第七四〇号)  價格統制重点化に関する陳情書  (第七五六号)  取引高税設定反対陳情書  (第  七五九号)  取引高税設定反対陳情書外一件  (第七六一号)  取引高税設定反対陳情書  (第七六八号)  同(第(七七九  号)  取引高税設定反対陳情書外一件  (第七八八号)  農業協同組合に対し法人税等課税反対に関す  る陳情書  (第七九〇号)  農業協同組合法人税等課税反対に関する陳  情書(第七九六  号)  取引高税設定反対陳情書外二件  (第八〇三  号)  税に関する陳情書  (  第八〇四号)  医業に対し事業税賦課反対陳情書外一件  (第八〇九号)  取引高税設定反対陳情書外一件  (第八一  三号)  政府に対する不正手段による支拂請求防止に  関する法律第三條の改正に関する陳情書  (第八一九号)  物價改訂反対等に関する陳情書  (第八二八号)  國税事務取扱費國庫補助陳情書  (第八三〇号)  石炭税設定並びに分與に関する陳情書  (第八四二  号)  昭和二十三年度予算案並びに税制改革案反対の  陳情書(第八四七号)  取引高税設定反対陳情書外十九件  (第八  五〇号)  取引高税設定反対陳情書  (第八五六号)  弁護士に対し事業税賦課反対陳情書  (第八六八号)  玩具物品税軽減陳情書外一件  (第八七四号)  助産医業に対し事業税賦課反対陳情書  (第八八一号)  インフレ対策に関する陳情書  (第八八三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会の件  参考人招請に関する件  軍事公債利子支拂特例に関する法律案(内  閣提出)(第八六号)  所得税法の一部を改正する等の法律案内閣提  出)(第九三号)  取引高税法案内閣提出)(第九四号)  郵便貯金の第二封鎖預金打切りに関する件     ―――――――――――――
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 会議を開きます。  議案審査に入ります前にお諮りしたいことがあります。それは、去る六月十五日商業委員会に付託せられました貿易資金特別会計法の一部を改正する法律案は、本來ならば当然本委員会に付託さるベき筋合のものでありますが、議案審査の都合上、今回に限り商業委員会に付託されたものであります。この点法案審査商業委員会に任せるのはいかがかと思われますので、当委員会連合審査会を開き、審査の愼重を期したいと思いまするが、御異議はありませんか。
  3. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 異議なしと認めます。從つて商業委員会と連同審査会を開くことに決定をいたします。  本日は総理大臣大藏大臣安本長官と御出席を願うことに相なつておりますので、軍事公債利子支拂特例に関する法律案所得税法の一部を改正する等の法律案取引高税法案、以上三件を一括して議題とし、質疑に入ります。順次御発言を願います。
  4. 青木孝義

    青木(孝)委員 私は財政委員会における予算審議にあたりまして、最初に総理大臣質問をいたしたいと存じておりまするが、まだお見えになりませんので、ただいまお見えになつておる北村大藏大臣に御質問をいたしたいと思います。  まず北村大藏大臣にお伺いいたしたいことは、本予算編成に関する若干の質問であります。当局の説明によりますれば、本予算編成根本方針は、收支の適合せる予算編成することが当面の経済安定に対する総合的な施策の大宗をなすものであるということ、それからインフレ高進を阻止する最善の方法は、收支の適合せる財政計画確立するにあるということ、この二点に求められているのであります。予算編成に対するこの根本方針は、それ自体として何人も非難の余地はないものであります。かかる根本方針から出た本予算が、赤字のない均衡予算であることは、けだし当然と言わなければなりません。しかしながら均衡とは第一義的なものではありません。均衡にはおよそ二つの種類があると思います。実質的均衡形式的均衡である。この両者は本質的に異なるものでありまして、しかも形式的均衡は実は不均衡と同穴の存在にほかならないのであります。本予算均衡の美しさと言つたら、まことに申し分のない予算でありますが、しかしながら私は不幸にしで本予算のもつ均整の美を、外観的な、しかも名目的な、形式的なものと指摘せざるを得ないのであります。否むしろ質実的には、未だかつて見ないところの不均衡極まる予算であるとさえ言わざるを得ないのであります。本予算インフレを阻止するどころか、これを一層激発する爆藥であつて國民経済にも生産循環の展開に対して、恐るべき破壊的作用を営む破壊力である。こう考えるのであります。私は單に本予算が、二十二年度の二度の追加予算を合わせましたものの八割強の増加という、あまりにも厖大な数字であるからというのではありません。本予算があまりにも大きな裏口をもつており、かつ消費的であり、自己膨脹必然性を、それ自身の中に内包しておる点を指摘せざるを得ないのであります。まず歳出の面におきまして、かつて大河内教授公聽会において指摘いたしておりますように政府出資金價格調整金公共事業費は実際上赤字となるものである。そうして價格調整費インフレ高進とともに膨脹を余儀なくされ、政府出資金は当初の五百五十億円を無理に百八十億円に削減したのでありますが、事業界金詰りということを考えますると、一般物價の高騰によつて年度内には数倍の増加を來すことは必然であり、必至である。さらにたとえ一五%の行政整理を強行し得たとしても、インフレ高進による一般物價の上昇に伴う三千七百円のベースの維持が不可能になりますれば、給與費目がそれだけ増加するし、また物價の騰貴は終戰処理費賠償処理費を初めといたしまして、各支出費目増加はまつたく不可避的なものである。かくのごときものは追加予算計上にどうしても追いこまれざるを得ない。財政インフレとの一般高進がここに不可避的なものとして招來されざるを得ないのである。これに対しましてまた歳入はどうかと言いますと、別にこまかい数字は申しませんけれども政府は本年度國民所得を一兆九千億円と算定しておられるのであります。國民所得はその算定のしかたによつて大きくも算定することができるし、また小さくもなる。昨年度基準といたしますれば、これほど大きな数字とはならないはずであります。算定のしかたでどうにでもなる國民所得算定基準を明らかにせずして、政治的に利用することはまことに欺瞞政治と言わざるを得ない。國民担税能力がすでに限界に達しておりますし、各方面においてこの点は遺憾なく指摘されているところであります。しかも金融面民間資金資金需要に及ばず、事業界金詰りインフレ高進に比例いたしまして一層惡化しつつある。これはインフレに固有な特徴ではありまするが、この点から考えても、大河内教授指摘いたしておりまするように現在の制度ではいかに税率を変更したり、あるいは新税を設けたりいたしましても、徴税能力限界が來ている。從つて予算徴税実績の大幅な時間的ずれは、再び避け得ないと見なければなりません。從つてまたこの点からも相当巨額の追加予算計上が不可避であると考えざるを得ないのであります。政府のお言葉を借りて申しますならば、ただに財政收支数字的均衡に止めることなく、安定せる物價と、安定せる実質賃金を通じて、経済再建に向う國民経済合理的体制確立する一應の構想を得て、ここにその編成を見た、こう言われておりますが、本予算の正体とはまさにかかるものであのである。これに対する藏相の御所見を承りたいと思います。
  5. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申します。大体日本経済が全体として健康を回復しているかどうかということが一つの大きな問題でございまして、國民経済全体が、すでに健康を回復しているという場合には、國家財政のまたきわめて純粹な意味における健全化ということを、期待し得ることはもちろんであります。それで私どもは今回財政の面から予算編成するにあたりましてとりました態度は、財政支出による財政インフレがあつてはならない。從つてこの財政インフレをどうして防止するかということに力点を置いて、一應の成案を得ましたので、御審議を願つたわけでありまして、從つていまなお企業は赤字に悩んでいる。どうして赤字を処理するかという問題も残されておりますし、また赤字家計を多分にもつているような現状にも、目をおおうわけにいかない。これは生々しい事実でございまして、かような現実の上に立つて、これを少くとも財政の面から惡化してはならぬ。インフレーシヨンの高進に対して、財政を処理しつつどうしてこれを緩漫化するかということが、與えられた課題であると考えるのであります。さような観点から、まず財政支出によるインフレ高進を抑えるということに力点を置いたつもりでございまして、これが形式的な單なる均衡予算であつて実質が伴わないというような意味のお言葉がございましたけれども、われわれはほんとうに実質的な健全財政というものが実現するためには、單に財政経済の問題ばかりでなく、これに加うるにいろいろな社会的な、あるいは道義的な、あるいは政治的な諸問題がはいりまして、そしてその成果として実質的な健康への途が與えられると考えるのであります。たとえば賃金の問題にいたしましても、名目的な賃金がこれだけでいいというわけではございませんけれども、どうしてもそれが定質的に裏づけられるという問題が解決しなければならない。それには單に経済問題だけでなくて、諸般のあらゆる力がこれに加わりまして、その一本道へ進むことによつて実質的な裏づけがある。たとえば生産がどの程度強化されるか、どの程度の消費材が輸入されるかということの裏づけによつて、その実質賃金のその実質的な効果というものがあがつてくるのであります。さような考え方からいたしまして、まず何よりも、形式的だという御批判があつても、われわれは赤字のない予算を組まなければならぬ。財政インフレをどうしても抑えなければならぬというような観点から、今回の予算編成いたしましたので、さような意味でございますから、單なる形式にすぎぬのである。これはどうも自己欺瞞であるというようなお言葉もありました。けれどもどもはさよう考えておらぬのであります。  それから今のようなインフレの段階において起るべき一つデフレ現象と申しますか、金詰りの点を御指摘になりましたが、これは今回の物價改訂あるいは賃金ベース改訂等々から、通貨使用量は当然ふえるわけでありますから、ある程度の増加は私どもはむろん認めなければならぬ。またそういう方向に行つて、かえつて今の金融政策においてインフレを阻止するに急なるあまり、一面において生産を阻害してはならぬということはもちろんでございまして、インフレを阻止するには通貨の膨張を防がなければならぬということを考えると同時に、また生産を増強するという点を忘れてはならぬ、さような施策を十分にとりたい。かように考えておる次第であります。
  6. 青木孝義

    青木(孝)委員 私の質問いたしました点についてのお答えは、まことに結構なお答えだと存じておりますが、ただ私は各般の日本経済的諸事情、その他政治経済、文化の面にわたりまして、非常な困難のときにありますことは、決して私どもこれを知らないわけではありません。しかも國民経済生活というものをごらんになれば、一体大藏大臣が仰しやるように、收支均衡ということを、ともかく数字の上だけでも合わせなければならぬという、非常に苦しい立場に立つておられることも、よく了解できるのであります。しかし國民生活のあり方ないしは今月の國民の窮状というものをお考えになつてみて、これがまことに正しい予算組方であるというふうにお考えになつておるのであるかどうかということを考えますと、私はなお考え余地があるのではないか。いたずらに安易を求めるというような方法で、予算編成に努力せられたということでは、私はどうもこれに承服しかねるのであります。もちろん私どもの党におきましても、すでに昨日の新聞でそれぞれ予算編成の内訳についても、一應の発表をいたしておるのでありまして、私がここで特にお伺いをいたしておきたいことは、さらに鉄道運賃値上げ郵便料金の引上げ問題であります。殊に鉄道運賃を一挙に三倍半、こういうふうに大幅に値上げを断行することは、國民に非常な衝撃を與えまして、インフレ激勢に拍車をかける。さらでだに急迫しておる國民生活を重圧して、彼らの生活に対する絶望感を與えるものではありませんか。われわれとしては断固として反対せざるを得ない。こういうわけであります。政府國有鉄道及び通信事業の世界的な非能率性ということは、おそらくお考えでありましようし、いたずらに運賃であるとか、あるいは郵便料金値上げによつて独立採算制確立を企図しようとすることは、よほど考えなければならぬ。独立採算制という言葉は、われわれ早くから知つておる。そしてまた鉄道にしても、通信事業にしても、独立採算が可能であるということだけでも結構であるとわれわれは存じます。しかし独立採算を維持するという名のもとに大幅な値上げを行うにかかわらず、鉄道はなお百億、通信事業は五十億円の赤字を拂拭し得ない現在の状態であります。合理化を前提としない独立採算制はおそらく無意味である。國民経済活動、並びに生活動力である二つ事業のごときは、むしろ民間に移讓して、その合理化能率化をはかるべきではないかと考えますが、この点について大藏大臣はいかようにお考えになつておられるか、御所見をお伺いしたいと思います。
  7. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの御質問、それから先ほど青木委員より國民所得のことをちよつとお述べになりましたが、安定本部でいたしましたのは事務的な計算を主としておると思います。これは世界的な一つ計算基準によつて出したものでありまして、決して他の意向をもつてつておるのではないことを御了承願います。それから國民経済実情について、もつと十分に認識するところがなければならぬという意味お話もありましたが、これは当然のことであります。たとえば國民所得に対する財政負担の割合は、昨年度一九%でありましたが、本年度は二二%であります。國民大衆に対してかような痛い御負担をかけることは、私どもとしてまことに心苦しいのであります。しかしまた一方において、英國では四〇%の財政負担をしておる。こういうことをもち出して、その内容に触れないような軽々しい考え方はいたしておりません。イギリスにおいては四〇%國民所得に対する財産負担があるといたしましても、やみによる家計がきわめて少い、ほとんどないという現状と、われわれのように、消費生活の七〇%以上はやみによらなければならぬという実情とは違うのでありますから、さような國民生活の実態についても、十分檢討しなければならぬ、かように考えておるのでございます。  それからただいまお話鉄道並びに通信料金のことでございますが、私どもはただ赤字が出るから、ひとつこれを利用者に御負担願つて赤字を解消したらよろしい、それが独立採算制であるというような、横着な考えはもつていないのであります。もちろん運賃料金鉄道原價あるいは通信原價に対して、なお少いという点はございますけれども原價に対して運賃あるいは通信料金が少いために赤字が出るとのみは言えない。鉄道あるいは逓信自体の中に内包されておるいろいろな欠陷があると思います。これを速やかに合理化しなければならぬ。どこまでも追究して合理化をいたし、あるいは不要なものは処分するとか、あるいは擬制雇傭をどう整理するかというような諸問題に対して、決して甘い考えをもつてはいかぬということは十分考えております。從つて今回もあれだけ値上げをいたしましても、御指摘のごとく鉄道において百億、通信においては五十億という、一般会計からの赤字の背負いこみをしておることは、鉄道自体あるいは通信自体において、できるだけ整理すべきものは整理して捻出し、合理化すべきものは合理化するという点を残しておるという考えをもつておりますので、独立採算制実質的な独立採算制としなければならぬと考えております。  後段の御質問については、まだはつきりしたことを申し上げることはできませんが、一應研究はしてよろしいかと考えるのであります。
  8. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 青木さんにちよつと申し上げますが、総理大臣参議院の方にお出かけになる関係がありますので、なるべく総理大臣に対する御質問を願いたいと思います。
  9. 青木孝義

    青木(孝)委員 それでは総理大臣に端的にお伺いいたしますが、昭和二十三年度一般会計予算に関して総理大臣の御意見を伺いたいと思います。  まず総理大臣に総論的にお尋ねいたしたいのは、國民経済の危機的な進行の過程におきまして、しかもこれが克服の決定的な支柱となります外資導入の曙光が與えられようとしている。この重大な寸刻を爭うべき危機的轉換の時期におきまして、まさに國民経済動力たるべき予算編成が、かくのごとく遅延するに至りましたことは、政府の惰慢と、政治力の貧困に基く重大な失態で、当然國民に対してその政治的責任をとるべきであると考えます。それにもかかわらず先に予算大綱のみをお示しになつて、これが審議國会に要請なさいましたことは、國民を代表する國会を、ある意味において侮辱するもはなはだしいと言わねばならぬと思うのであります。政府政治的良心を私どもとしては疑わざるを得ないのであります。この点に対する芦田首相責任ある御答弁を煩わしたいと存じます。  第二番目に、今年度予算外資導入計画との関係について御質問申し上げたいのであります。政府外資導入によつてさしあたり中間安定を招來しようと考えておられるようでありますが、政府はこれに対していかなる具体的対策を用意しておられるか。すなわち外資に対して提供せらるべき担保、並びにいかなる形態における外資を導入されようとするのであるか。さらにまた政府は本予算におきまして、法人税を引下げて、これによつて外資導入準備的行為とされているようでありますが、これは安易な枝葉の問題に走つて、基本的な問題を閑却した矛盾した政策と言うべきではないか。もちろん法人税の引下げが外資導入の妥当な一つ準備行為でありますことは、疑いを入れないところであります。しかしながら外資導入にとつて最も基本的なものは、申すまでもなく資本の安全性ということと、その收益性を確保しなければならないということであります。このための根幹的対策は、言うまでもなく財政実質的な均衡確立によるインフレ克服ということと、それに基きます労働不安の除去とであります。さきに來朝せられました米國使節團のたれもが、この点を指摘し強調されていることは、周知の通りであります。しかるにインフレ克服の契機とすべき本予算は、先ほども大藏大臣に申し上げました通り大河内教授参議院予算公聽会におきまして指摘しておりますように、完全にこの期待を裏切つたものと断ぜざるを得ないのであります。しからば政府健全財政の原則を貫徹し得る、あるいは得た、こう誇示している本予算は、実は未だかつて見ざる不健全財政で、インフレ激成剤財政であるということは含まれない事実であります。政府以外のすべての財政專門家の、殊にこの点は一致して認めているところであります。本予算における投資的支出及び消費的支出というのは、終戰処理費あるいは賠償施設処理費、連合國財産返環費等、まことに巨額な避くべからざる出費計上されているとは申しながら、一対四という大きな不均衡を示しておりますし、また價格調整費公共事業費政府出資金は実際的な赤字を構成するものであると考えるのであります。殊に政府出資金の大部分を占めております復金出資は、財政收支形式的均衡を確保するために、わずかに百八十億円に止められておりますが、産業賃金需給状態を考慮いたしますならば、年度内に数倍に達することは、おそらく避け得られないと考えるのであります。國民経済の順当なる再生産循環を軌道に推進いたしますための國民的期待が、ドレーパー使節團來朝以後の情勢の好轉によりまして、裏づけせられようとするまさにこのときにあたりまして、この好轉の期を破壞し去るような不健全財政は、芦田首相の意図されるものと、國民に宣傳されてきた外資導入による中間安定と、まつたく矛盾するものではないか。この点に関する首相の御所見を承りたいと存じます。
  10. 芦田均

    芦田國務大臣 第一の質問は、予算提出が非常に遅延したことについて、政治的の責任を感じないかという質問でありました。この質問予算審議の本会議において再三提議せられた質問でありまして、その都度政府においては相当詳細にお答えしたと考えております。今日特にこれに附け加えてお答えする点はないと思いますが、政府としては三月十日に組閣が完了して以後、四月、五月、六月の暫定予算をつくり、さらに引続き昭和二十三年度の本予算編成いたしたのでありまして、期間的に考えて、從來いずれの政府に比べましても、特に現政府予算編成に長時日を要したとは考えておりません。そのことは青木君は、前々議会において石橋大藏大臣のもとに予算編成が幾日を必要としたかという事実を御記憶のはずであります。特に現政府がその以上の長い時日を要したとは考えておりません。しかしながら運営委員会において政府が約束をした五月中旬に本予算提出ができなくて、五月二十六日ごろまで遅れたということは、本会議においても政府は遺憾に考えておるということを声明したのでありまして、今日においてもその点ははつきり青木さんにお答えしておきます。それから第二の中間安定の問題であります。この問題も本会議においてしばしば論議されまして、当時安本長官並びに大藏大臣より詳細にお答えをしたのであります。特に私より附け加えてお答えすることはあまり残つていないと思いますが、外資導入についての御質問は、中間安定と関連して青木君よりお尋ねになりました。外資導入は少くも政府政府の間のクレジット及び物資の輸入に関する限り、すでに新聞紙上にも発表されておる通りきわめて順調に進行いたしております。從つて今日まで世間に発表せられた事実を基礎として考えてみれば、政府がさきに発表いたしました経済再建五箇年計画は、当初の目標通り順調に進行し得るものと考えております。その長期計画に差しかかるその最初の段階をもつております。現状のままに進行するならば、政府の中間安定施策に何ら障害となるべき事実は起つていないと存じます。また外資導入の受入態勢として法人税の軽減を行つた。しかしそれだけでは足りない。これ以上に外國資本家をして安んじてわが國に投資せしめるには、利潤の確保その他の点についても、十分考慮する必要があるではないかという御意見は、まさに政府の共鳴するところであります。漸を追うてそれらの具体的な施策につき、國会審議を求める考えでおります。  最後のお尋ねは、先ほど北村大藏大臣に御質問なつた点とほとんど内容においては相違がないと考えます。青木君がかねて御承知の通り、長い戰爭に敗れた國において、戰後の財政がどういうあり方であつたかということは、第一次世界大戰後の欧州諸國の財政をごらんになればわかる通りであります。終戰処理費、賠償施設費その他に莫大な経費を必要とすることは、敗戰國としてやむを得ない負担であります。しかしこれを対独賠償の例にお考えになつてもわかる通り、この程度の戰後賠償の負担で結末をつけることができるということは、日本國としてはむしろ仕合せな運命のもとに立つておると、われわれども考えておるのであります。また今日の日本財政が、なるほど平常の財政の見地から見て、十分健全財政でないという御批判も、ある程度私どもは承認いたします。それは北村大藏大臣の答えた通り、八年間の戰爭の結果、疲弊困憊したる今日の日本において、平常の財政学に論じておる健全財政方針が、はたして立ち得るかどうかということになれば、わが國経済力の現状に鑑みて、これ以上に健全な財政を組むことは非常に困難である。このことはおそらく專門家たる青木君も御了承くださるだろうと思う。政府としてはさしあたつてインフレ克服のために、生産増強のために、経済再建のために、でき得る限りの方法を盡して、最善と信ずる予算案編成した次第であります。その点は青木君も御了承くださることと思います。
  11. 青木孝義

    青木(孝)委員 先を急ぎますので、簡單に御質問いたします。  最後に総理大臣にお伺いいたしたいことは、行政整理の問題でありますが、行政整理一般会計の人件費の約一五%に相当する額を節約するということを目標として行われたとのことでありますが、その時期及び方法いかん。さらにその整理人員並びにこれに対する受入態勢については、総理大臣はいかようにお考えになつているか。その具体的な措置をおとりになるお考えがあれば、その点をお伺いしたいと思います。そうしてさらに必要にして煩瑣な統制を今日はずして、おるということは、おそらく行政整理と不可分の関係にあると思いますから、この点をひとつぜひ御所見を伺つておきたい。なおそれから引続いて軍公問題についてお伺いを順次いたしたいと存じまするが、まずその点を一應お願いいたします。
  12. 芦田均

    芦田國務大臣 行政整理の問題については、本会議においても植原君より民自党を代表して質問がありました。その際一應お答えをいたしたのであります。しかし重ねての御質問でありまするから、なお附け加えてお答えをいたしますが、今回の予算に現われておる各省人件費の一五%を節約したということについては、それが各省の人員実数を一割五分切り落すということと、正確に符合するかどうかということは、各種の行政整理に伴う機構の改革を実行した上でないと、正確の数を発表することは非常に困難であります。ということは、たとえば出先官憲の整理も、おそらくここ旬日のうちに発表し得る程度になると思つております。また各省にわたつても、新設の省のごとき人員整理の余地の非常に少いところと、また省によつて実員と定員との差が非常に開いておるところと、案外に開いてない省とがあります。たとえば大藏省のごときは、定員に比べて実員が非常に少くなつておる。外務省のごときは、定員と実員とが、ほとんど接近しておるというふうに、各省ごとにそれぞれ実情を異にしておる結果、目下取急いでこれを調整する作業にあたつておるのでありまして、人員数を正確に今発表することは困難でありますが、予算に掲げたる人件費一五%節約の線に沿うて、これに相應する人員を減少していく、こういう方針で今せつかく進行いたしておる次第であります。
  13. 青木孝義

    青木(孝)委員 本体の御説明は了承いたしました。最後に総理大臣にお伺いいたしたいのでありまするが、芦田総理大臣は、私どもの知つておる範囲では、いわば純粹なリベラリストだというように考えながら、これまでいろいろと政策の上に盛られた芦田総理大臣の御意図なり御希望なりというものが、どうもいろいろに変つてきておるということが、うかがい知り得られるのであります。殊に軍事公債利拂延期の問題につきましては、もうたびたび各方面から質問もあつたことではありまするけれども、私もこの際総理大臣のこの問題に対する御所見を、一應伺つておきたいと思うのであります。政治上の各般の施策は、個人的な意図なり、希望なりとは別といたしまして、ともかくもそれぞれの各政党の立つておる基盤に根本をもたなければなりますまいし、またその政策はおのずからその政党の立つておる基盤に関連をもつものであるということは、現在の政治におきましては当然なことであろうと存ずるのであります。御承知の通りに私が申し上げるまでもなく、芦田内閣は社会党及び國協党と連合と申しまするか、連立と申しまするか、ともかくも一緒に内閣を組閣しておられて、しかもその間の協調を保つて政治行つていこうとする、現在の内閣の立場であるというふうに考えまするときに、一体この軍事公債の利拂の云々する、こういう問題については非常に愼重を期せられておることも、われわれはよく存じておるのであります。しかし最後の結論があまりにも私どもの感じまするところでは、むだな事柄をあえてしておるというふうに、端的に申せば考えられるのであります。軍事公債が戰費調達の手段として用いられたことは、疑問の余地はございません。そうしてその所有者は戰費を調達した当時者でないことはもちろんであります。同様にたとえその裏づけとなるべき物資が喪失されているとしても、債務は嚴として債務である。個人貸借の場合において、借り入れる者が借金を消費してしまつたとしても、それと同時に借金返済の義務を喪失するものではない。これは言うまでもございません。これは國家と國民との貸借関係についても、同様に言い得られると考えます。また戰時補償の打切りによる犠牲は、ひとり企業のみが負担しているわけではございません。金融機関も預金者もまたこれを負担しているのであります。かかる観念上の論爭はしばらくおきまして、純粹に経済的見地に立つてこれを見ますならば、わが経済の再建上マイナス的意義をもつものであることは明らかである、こう考えます。というのは、外資の導入ということを控え、しかもわが國の再建が急速に行われなければならぬ。しかも國家は対外的に十分の信用を保たなければならぬ。こういうことに到達しておりまする日本経済日本の國家におきましては、どうしても経済を安定せしめなければならぬということは、どなたも御同感であろうと存じまするのに、あえて今回の軍事公債の利拂延期を断行せられたということは、どう考えて見ても、民主党が社会党の立場を何とかして立てる。すなわちメンツを立てるために、このことをやらなければならなかつたのだということ以外に、ここに何ら特別の理由が見出せないように、われわれは常識として考えまするので、まずこの点からひとつ御答弁を願いたいと存じます。
  14. 芦田均

    芦田國務大臣 軍事公債の利拂いについては、現内閣成立前に、三党政策協定が結ばれて、その中には軍事公債利拂停止的措置ということについて意見が一致した結果、その基礎の上にこの内閣が成立した。從つて政策協定ができた当時から、政府のいくべき方向は大体決定されておつた。かように考えることは間違いではないと思う。この問題の重要性については、しばしば本会議においても質問がありまして、政府としてはそのたびにそれぞれお答えをいたしたはずであります。從つてそういう点には私は触れませんが、対外信用を著しく傷つけるではないかという御議論につきましては、利拂停止措置をとる前に、わが國は対外的な債務に対しては、一銭一厘といえどもこれを怠るものではないということを明白にいたしました結果、今日のところ何ら軍公の利拂停止のために、わが國の信用が海外において失墜されたと思われる材料が現われておりません。先般アメリカの議会において、対日復興援助費が削減されんとしたのは、その現われであるというがごとき言論も一、二世間に傳えられたようでありますが、これもさようでなかつたということは、本朝ごらんのニユースによつて御存じの通りであります。その点においては、私ども対外信用を損するごとき影響を與えなかつたと深く信じておるのであります。御承知の通りに今日の日本政治は、どの政党が政府の首班となつても、結局は何らかの連立の形によらなければ國会の多数を擁することはできない。日本社会党が総選挙において数百万に上る票によつて國会勢力を表現しておる以上、その基盤となつておる何百万有権者の意向を政策のうちに取入れて、そうして実際政治にあたるということは、現政府としては当然いくべき方向であります。その点においてわれわれは何ら間違つた方法をとつたとは考えておりません。
  15. 青木孝義

    青木(孝)委員 ただいま総理大臣は、社会党の國民による信頼が、この政策を実行するということの根本であるというふうに、要約すれば御説明になつたと存じまするが、しかし一体現在の政治というものが、國民の世論を代表するということにおいて過誤なきかどうか。私どもはもしほんとうに芦田総理大臣のおつしやるようなことを信ずるためには、もう一遍ここに解散を断行ぜられて、國民の世論をお聽きになることが一番わかりやすいことだと存じまするが、しかしともかくもこの軍事公債の利拂いを一年間延期するということによつて、これが一体どれだけわが國の経済再建に役立つかということをお考えなつたかどうか。この点であります。もしこれをわが國再建のために役立つ、こういうふうにお考えなつたといたしまするならば、これは芦田総理大臣の錯覚に陷られた結果かと思うのであります。現に今度なされた措置は、これによつてまずごく一般的に観察いたしますれば、この措置は、これくらい國民が重点的に問題を考えてきて、しかも大きく考えてきたにかかわらず、大した意味のないものになつてしまつた。こういう結果になるのではありますけれども、ともかくも民主党内閣が成立いたしますのに、社会党の援助を得なければならぬ。一緒にやつておるからやむを得ない。こういう事実はわかつておりますけれども、こういうむだなことをして、しかも特に日本の産業を振興せしめなければならぬ、その必須條件であるところの金融機関の將來に対する不安を助長し、しかも軍事公債は、今日正常な取引ではございませんけれども、おそらく七十円内外しかいたしておらないという状況でありますから、これが全然対外的の問題として影響がない。こうおつしやることは、それはおそらくドレーパーによるところの一億五千万ドルの融資というような問題を考えただけで、この問題をほうむり去ることはできぬと思うのでありまして、たださいわいに日本は今日一つの制限的な占領下の経済事情のもとに置かれているからこそ、それがはつきりと見えないのでありまして、おそらくこれが何ら影響がないというようにお考えになり、あるいはおつしやることは、必ずしも芦田首相の本心ではなかろうと私は思うのでありますが、ともかく軍事公債の利拂い一年間延期ということが、どんな効果を現わしたか。また効果を現わすべきであるか。この点を明瞭にしていただくことが肝要であろうかと私は思うのであります。さらにそれに伴いまして、この延期ということによつて、金融機関はどんなふうに、禍いされるか。また將來に対する不安というものがこれに伴つていることは、世間周知のことであります。すでに世間でも言われておりますように、この利拂いの延期は、一應今年はこうされるけれども、さらにまた來年においては一体どうなるだろうか。場合によつてはこの公債は無効にされるか、あるいは利拂いを停止されるかといつたような不安は、澎湃として起つているのであります。殊に世間でうわさされておりますように、栗栖現安本長官と鈴木茂三郎氏との間に取交された話合い、そういうものまで世間では、これが想像であるか事実であるかは存じませんけれども、いろいろ心配されている状況であります。一体この場合政府は、今年はこれで一應この措置で何とか片がつくが、來年は一体どうなるか、こういう問題に対する経済社会の心理的不安というものを、首相はどういうふうに考えておられるか。まずその点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  16. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまの質問に対して、まず初めの点は、軍公の利拂いを一年間延ばして一体何の役に立つのだ、こういう御質問だと思います。御承知の通りに、これによつて國庫のさしあたりの支拂いを一箇年の間に約十五億円の節約を行い得るのでありまして、それはすでにしばしば説明いたしましたごとく、今日財源難のために、やむを得ず必要な経費を支弁し得ないものに、たとえば災害の復旧事業であるとか、六・三制の校舎の建築の補助であるとか、あるいは海外引揚者の住宅の建設であるとかいうような方面のことに充当し得たのでありまして、一年間の利拂い延期が、この方面においてはある程度の國民の要望を満たし得たものと考えているわけであります。  それから第二の点につきましては、ただいま國会に提案しております軍公利拂停止の法律案は、本年七月一日より來年の六月末日までに至る利子の支拂いを延期する、こういうことが明日になつているのでありまして、この法律を見る限り、今日の措置は本年七月一日より來年六月末日までの利拂いに限るのだということが何人にもわかるのであります。來年利拂いをやめるとか、元本をむだにするとかいうごとき印象を與える條文は、一つの中にはいつておりません。
  17. 青木孝義

    青木(孝)委員 総理大臣の御答弁、お説の通りでありまして、別段そういうことば書いてございません。しかしわれわれは、こういう挙に出でられた総理大臣の根本的なお考えを承りたいと思うのでありますが、今日は承りにくいかも存じませんからこれはやめまして、私の後にまだ御質問がございますので、私はこれで簡單にやめます。ただこの措置について私が承つておきたいと思うことは、ともかくここであげますれば、軍事公債の利拂延期に対して、いろいろ金融機関はこれに意見を述べておりますし、また政府もこの点については、かく考えなつたものと了解できるのは、軍事公債利拂処理懇談会におきましてもるる御研究になり、いろいろの結果を御承知の上でありますから、結局この問題は政治的意図以外には何物もなかつたということに盡きるのではないかと思いますが、私どもはともかくも、この軍事公債の利拂いを一年間延期するということの措置が、まことに不手際であり、しかもこんな挙に出でなければならなかつた芦田内閣の当時の状況というものを推察して、われわれはどうしてかかるむだな措置を講じなければ、芦田内閣というものが成立しなかつたかというようなことがそぞろ考えられるのであります  私の質問総理大臣に対してはこれで一應終ることにいたしますが、栗栖安定本部長官及び大藏大臣に対しまして、なお御質問を後にいたしたいと思います。
  18. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 松田正一君
  19. 松田正一

    ○松田委員 本委員会に現われましたいろいろの政府提案につきましては、大体私どもも今まで一致した結論を得たのでありますが、この軍事公債利拂停止については、遺憾ながら政府質問をいたして記録をとつておきたいと存じます。今青木君から御質問もあつたのでありますが、総理大臣に対しましてはきわめて簡單にお伺いいたしておきまして、あとまた他の大臣にも、これが及ぼす影響等について御質問をいたしたいと存じます。この軍事公債利拂の問題でありますが、だれが内閣を組織いたしましても、総理大臣の言われるごとく、これは連立でいかなければならぬような事態になつております。これは連立でやられることは当然であります。社会党の方で、この案を前からお持ちになつておつた。社会党は天下の公党として、この軍事公債の利拂の問題を実現さそうということは、これは当然すぎるくらい当然なことであるけれども、民主党側の方の意見から申しますれば、大体はこれは反対であつたものであります。それが今この案を提出に至るまでの経過をながめてみますと、総理大臣に承りたいのでありますが、北村大藏大臣もこの委員会で、川合君からであつたかと思いますが、(「予算委員会だ」)この委員会質問があつた。それで大上君がそれを打切つたことがある。そのときの質問に対する答弁は、委員会を設けて、委員会軍事公債の利拂をしてはいかぬということになつたらやらないのだ。やれということになつたらやるのだ。こういう答弁をされた。一方質問した方から申しますと、そうじやないのだ。打切りは、これは三党政策協定できめているのである。その処置をどうしてやるかということ、どういう方法軍事公債の利拂停止をやるかということを、委員会できめるのだという食違いがあつたのであります。そのときに出ておりました案件はこれに関係のない案でありましたから、大上君がそれはもうその程度で質問を打切つてもらいたいということを言うたのでありますが、速記録を見ていただきますとそうなつておる。それが四日暫定予算を通過せしめようというときに、予算委員会大藏大臣の話が、利拂停止を前提としての委員会だというようなことにいくらか意味がかわつてきておる。それが今世間で疑つているところであります。それなら委員会ができて、あの委員会は賛成もあつたが反対もあつた。それで決をとつておらぬ。そうするとあとの委員会は、利拂停止をするかせぬかという一つの座談会に終つている。あのときに決をとつたならば、軍事公債利拂の停止をしては弊害があつて利益はないということになつたものだと世間では思つている。ことさらにこの決をとらなかつたのは、政府が干渉して決をとらさなかつたのじやないかということを世間で疑つておりますが、この点について何か総理大臣の方で、何ゆえにあの委員会が決をとらずに一つの座談会に終らしめたかということについて、この案を今日提出に至りますまでと、何か関係があるかどうかということを承りたいのであります。それが一点であります。
  20. 芦田均

    芦田國務大臣 松田君にお答えいたします。あの委員会は、政策協定に書いてあります通り軍事公債利拂の停止的措置に関する委員会であります。しかしこれは政府の機関ではありません。党の政策協定に基いて委員会をつくると書いてありますから、政府の機関ではむろんないのであります。從つて政府がこれに干渉して、かれこれと委員会の意思を動かし得る性質の委員会ではなかつた。いわんや政府の措置に対する議決機関でもありません。それらの意見を腹藏なく聽いた上で、それに基いて政府政策がきまるという程度の委員会でありますから、必ずしも議決機関でないことはおわかりの通り從つて最後の段階になつて議決をしなかつたというのは、おそらくは二つの意見にわかれて、議をまとめることができなかつた結果であろうと考えております。
  21. 松田正一

    ○松田委員 政府の議決機関でもないことはわかつておりますが、いずれにいたしましても賛否両論あつたのでありますから、賛成がどれだけあつたか、反対がどれだけあつたかということをきめるのが、——委員会というものができましたならば、その委員会はこういうことに決したということにするのが、委員会の普通のやり方でありますが、政府の方でこの委員会の決議があつたならば、その結果を尊重されておつたに相違ないのでありますけれども、賛成と反対と両論あつたということだけで済んでしまつたものだから、この案が政府の單独に出てきたもの、こういうふうに解釈するほか仕方がない、ここに世間が疑つておるところがあるのであります。それはその程度でよろしうございますが、連立内閣であるとすれば、なるほど一党の政策というものはこれは必ずしも行えないということは、私ども承知はいたしておりますけれども、これはやはり連立であるならば、政策の協調をやるべきものではないかと思われる。今の青木君の質問は大体は予算委員会で聽かれる事項かと思いましたけれども予算についてのいろいろお話があつて大藏大臣お答えなつたのですが、この程度の予算を今出す政府の立場といたしまして、この影響するところの大きい軍事公債の利拂を停止しなければならぬという理由は、今も青木君からお話がありましたが、金高にしますれば十五億円と申しますけれども、燒けたり紛失したり、再発行の手続きが煩瑣でできないものを引いてしまいますと、十四億円ちよつとぐらいなものにしかならぬと言います。それくらいの金高の軍事公債の利拂停止をやつて、それで外資導入——これが総理大臣の申されるごとく、政府政府の間におきましての外資導入というものは、なるほど曙光を見出しておりますし、これはある程度まで喜ばなければならぬことだと思いますけれども、それだけでは日本の再建というものはできるものではない。必ず個人的外資の導入というものがなければ、眞にわが國の再建というものはできるものではない。はたしてそうだとすれば、この軍事公債利拂停止によつて、少くとも、軍事公債は金融機関が主にもつておる、約七割七分までもつておる。この利拂停止の結果影響するのは、金融機関の内容が不堅実になつてくるということになりますれば、個人的外資の導入に差支えは來さぬというはずはないはずであります。しからばこの利拂停止をしたことによつて、金融機関がそこまで——内容の不堅実を暴露するというようなところまで影響するという軍事公債の利拂停止を、今これをやらなければならぬ理由がどこにあるか。外資導入、しかも個人的外資導入に支障を全然來さぬと申しますれば、その理由を承つておきたいと思います。
  22. 芦田均

    芦田國務大臣 松田君の質問は、公債の利拂停止は金融機構を弱体化せしめる。そうして外資導入に障害を與えるであろう。こういう御質問のようであります。御承知の通り軍事公債の利拂を一年間延期するというがため、銀行界のこうむるべき影響については、それぞれ銀行家の間において、話合いの結果影響が起らないような案が協議されておるように承知しております。從つてこの利拂を一年延期するがために、市中銀行初めその他の銀行が損害を受けるものとは、政府においては考えておりません。何ら銀行の信用は動搖していない、かように考えておるわけであります。なお外國の民間資金の導入に害が及ぶのではないかというお話であります。今日まで民間同志の交渉は、わが國の産業の各部門において行われておるようでありますが、今回軍事公債の利拂を一年間延期するということのために、その話が停頓したという情報は一つも受取つていないのであります。
  23. 松田正一

    ○松田委員 支障を來したという情報は受取つておらぬ、こう申されますが、それはその通りであります。けれどもこれが利拂停止になると、影響するところが甚大でありますから、自然そういう結果になるのではないかということをわれわれは懸念をしておるのであります。それでもう一点だけお伺いしておきたいのでありますが、本年度の当初予算が修正なくして通過いたしますものといたしまして約四千億、これが通過をしても物價改訂というものがあとにくるのでありますから、修正なくして通過いたしましても、いずれもまたここに補正予算を出さなければならぬ。昨年の例に鑑みますると、昨年七月に物價改訂をやつてから以來というものは、補正予算に補正予算を重ねて、当初予算からみますれば予算は約、倍になつた。それで國民の所得もまた一方に殖えたというようなことになつてきたのでありますが、本年もこの予算が通るといたしましても、やはり補正は出していかなければならぬことになりはせぬかと思います。そうしますれば今四千億であるが、これが五千億、六千億、七千億というように、本年度予算の総額がなるものといたしましたら、わずかに十四億円ばかりの利拂を停止して、それが有意義にかりに使われるにしたところが、影響するところと比較いたしまして、それでどれだけ役に立つておるかということを考えてみますれば、私どもはわが國の現状において、この程度の軍事公債の利拂停止をする必要がないように思われるのであります。なお今金融機関に向つて支障のないようにするというようなお話がありました。それならばその具体的な案がどこにあられるのか。これを承りますれば、それだけ損失のできるところを、何か補償でもしていくということになるのであつて、何でこの利拂停止をやらなければならぬのか。こちらで利拂は停止して、こちらの方で補償するとか、何か救済策を設けるのであつたならば、政府予算としては別に変りがないじやないか。そうすれば別に軍事公債の利拂停止をする必要もないように思います。どうして補償をされるのであるか、どういうふうに救済されるのであるか、それらの金高についてもお考えがあれば承りたい。しかしこれは事務的なことだから総理大臣以外の者の聽けと言われるならば、これは総理大臣に必ずしも御答弁願わぬでもよろしいが、いずれにいたしましても本年は補正予算は出るべきものとして、その金高に対して十四億余のものを停止するということで、どれだけの利益があるか、どれだけの弊害があるか、これをにらみ合わせてみましたならば、この軍事公債の利拂の停止というものは、これはまつたく連立内閣のために職りこんだということになつてきて、政治的問題からこういうことになるということが、まことに遺憾のように思うのであります。これは意見のようでありますが、具体的のことについて総理大臣おわかりでなければ、ほかの大臣からでもよろしいからお答え願いたい。
  24. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまの松田君の御質問は、先ほどの私の答弁を少し誤解しておられるように思うのです。私が答えたことは、軍事公債利拂を一年延ばすから、それに必要な措置を、政府の権力をもつて政府予算をどうこうするということを答えたのではありません。銀行は一年間の利拂停止があつても、資産勘定その他に何ら障害のないような方法を、銀行自体において、あるいは銀行團としての話合いによつて、あと始末ができるということを、私が聞いておるということをお答えしたのでありまして、政府が権力を発動したり、あるいは予算で金を支出したり、それを救済するというがごとき意向は全然もつておらぬのであります。次にこれがさらにインフレ高進させて、やがて補正予算を必要とするから、追加予算を出すのではないかという御質問であります。政府は近く発表すべき物價改訂をすでに予想して、給與水準をもあげて、すべての材料を織りこんで今回の本予算編成いたしたのでありますから、今後起るべき給與水準の引上げ、もしくはマル公の改訂その他によつて、この予算の実行に著しき障害を與えるようなことは、全然あり得ないという確信のもとに出しておるのであります。從つて今日のところ追加予算提出するような必要があると考えてはおりません。
  25. 松田正一

    ○松田委員 もう時間もこういう時間になりましたから、総理大臣はお急ぎのようでありますから、私の質問はこれで打切つておきまして、あとはほかの大臣に承ることにいたします。
  26. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいま議題になつております三法律案の基本的な事柄につきまして、総理大臣大藏大臣安本長官に御質問いたしまして、細目の点は政府委員からその後において承りたいと思います。ただいま質問が軍公利拂問題に移つておりますので、その方を先に申し上げます。利子支拂い延期の特例を設けるということの是非善惡の論につきましては、本委員会で初めて本日質疑を交わすのでありますが、その以前において民間と申しましようか、世上において結論的な決定にまいつておるのでありまして、今さらここに反対、賛成の理由を申し述べることが、何か矛盾したような感じをもつています。ただお尋ねいたしたことは、かような措置は一体憲法普及会の会長でもあられた芦田総理大臣として、非常な憲法に対する違反とまでは強く申しませんが、矛盾ではなかろうかと考えるものであります。なぜならば、現行憲法は民主主義と平和主義をはつきりと取入れておりまして、社会主義はこれに盛りこんでありません。すなわち私有財産を完全に認めまして、財産権はこれを犯してはならないと書いてあります。ところがどうも是非善惡の論は世論に私は任しておるものでございますが、かようなことが政府施策として用いられますことは、結局憲法の正條から考えてみまして、何か大さな矛盾があるのではないか、もしかような措置をとるについては、憲法の改正が先であつて、しかるのちに行政的な措置がとらるべきではなかろうかと考えております。同時にこの軍事公債に対しまする世間の信用、対外的と申しましようか、対内的と申しましようか、すでにこれは下落してしまつて、今さら政府施策がよかろうが惡かろうが、ほとんど救う途のない問題だと私は考える。よつてかかることができ得べくんば、國民の自発的な愛國心と申しますか、それに訴えまして、もし軍事公債をこの際政府に無償提供するものに対して、特別の措置として、ただいま重圧に苦しんでおる租税の面において、額面の二割ぐらいを振りかえてやる。こういうような画期的な代案をもちまして、民主的に民意が発動することによつて軍事公債を整理せられたらどうか。これが現在の憲法の趣旨に合うものだと私は考えております。この点に対します総理大臣の御所見を向います。
  27. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまの御質問は、國民の基本的な権利義務を簡單に法律をもつて変更することは、憲法の建前からしてどうかという御質問でありました。なるほど憲法第十二條におきましては、國民の自由及び権利が保障されております。と同時にまたこの保障する自由及び権利は、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うと書いてあるのでありまして、一箇年利拂を延期することそのことが、公共の福祉のために利用せられるものであれば、憲法の精神と反するものは私ども考えていないのであります。しかしながら國民の自発的な愛國心によつて軍事公債政府に献納するという運動は望ましいということは、私もまつたく同感であります。國民が続々すべての公債を政府に対して寄附をされるならば、私は大いに歓迎いたしたいと思うのであります。
  28. 宮幡靖

    宮幡委員 次に現在の政府は二十三年度の貯蓄目標といたしまして、三千億ということを発表せられておりますが、この三千億の貯蓄目標を達成いたしますことは、明らかにインフレ克服するところの最重要な要件であることは私も肯定いたします。しかしながら外資導入と関連いたしまして、若干手心を加えたと総理大臣の言われます法人税負担というものは、実質的には決して軽減されておらないようであります。その細目はまたあとで討論いたしますが、その三千億円の貯蓄目標を達成するために、非常に障害となり、あるいはこれが不可能になるではないかというような、新しい法律が一箇條法人税に追加せられております。これは第四十六條の二であります。本店といわず、支店といわず、工場といわず、営業所といわず、管轄いたします税務署、財務局は、その帳簿の検査及び質問、捜査等のことを行える、かように今度規定が追加されております。從つて今まで全然税務署や財務局の調査を受けなかつた銀行の支店の帳簿も、これを取調べあるいは質問し、捜査するというようなことが適法に行われることになります。從つてかねがね貯蓄獎励、貯蓄増強の目標から発表しておる基本的な條件であります預金の秘密というものは、絶対に保持せられないような状態になるでなかろうかというように考える。もし預金の秘密が保持せられなかつたならば、三千億円の貯蓄目標達成は、いわゆる空念佛になるであろうと存じますが、この点に対する総理大臣の御所見を伺います。
  29. 芦田均

    芦田國務大臣 その問題は私よりも所轄大臣である大藏大臣の方がよく承知しておりますから、大藏大臣からお答えいたします。
  30. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの御質問はごもつともでありますが、これは実は金融機関は全然眼中においてないというとおかしいのですが、そういうことは予想しておらぬのであります。実際問題としては、事業会社等で本店の所在地を田舎に置いて、実質的な会社の経営の主体を支店にしておくというようなことで、合理的なというか、一應合法的と思われる程の逸脱が從來かなりございます。さような事実もあつたのであります。これではどうも税法を適正に適用することが困難でございますので、さようなるきわめて惡質なものについて調査が可能なように、この法案を御審議を願つておる次第でありとして、從つて本社にしてほんとうは本社でないというような例が相当あつたのであります。これはきわめてまれな例かもしれませんが、あつたのでありまして、そういうようなものを一應考えておるのであります。從つて金融機関は、何といたしましてもただいまもお話のごとく、預金の秘密性が保持せられなければ預金の増強が困難であり、また今日國民蓄積の増大に向つて努力しなければならぬことは当然でありまして、この点に向つて私は十分心得てするつもりでございますから、さよう御了承願います。
  31. 宮幡靖

    宮幡委員 その次に所得税法等の改正によりまして、納税義務者に対しまする法律的な規制と申しますか、圧迫と申しますか、行政面からは非常にやりやすいようになつておりますが、國民の側から見ますると、何らこれに対しまする対抗的な手段が講ぜられていない。先ほど憲法のお話がありましたが、基本的人権というものが尊重せられておる面を認めません。簡單に申しますると審査請求につきましても、一つ提出の期限はありますけれども、これを処理する期限がついていない。あらゆる新法制の行き方というものが、苦情処理機関が設けられまして、民主的な方法によりまして、協議してこれを決定するようになつておりますが、ひとり最高の根幹をなします税については、民主的な芦田総理大臣であられながら、さらに民主的な法制の取入れがありませんが、かような方法であくまで推進いたしますときには、この税に対しまする苦情が百出いたしまして、結局歳入を満足せしむることができないと存じますが、この苦情処理機関あるいは異議処理機関というようなものを設けまして、これを処理するお考えはございませんか。その点をお伺いいたします。
  32. 芦田均

    芦田國務大臣 私は不幸にして税法の知識が非常に足りません。私からお答えすることはかえつて時宜を得ないと思いますから、政府委員からお答えいたします。
  33. 宮幡靖

    宮幡委員 それではお預けいたします。  その次にお伺いいたしますが、予算委員会の方でもいろいろ御質問があつたと思います。また同僚青木博士からも予算に関連しての御質問があつたようでありますが、今度の歳入の税額の予定額算出の内容を拜見いたしますると、この見積りがはなはだ感心できない。簡單に申しますとこの予算の中にまだ税の増收の期待される。いわゆる自然増收というものが多分に含まれておる。先ほど來補正、更正の追加予算等は出さない方針であると総理大臣は述べられておりますが、昭和二十二年度追加予算に対しましては、税法の改正に伴つて、税法それ自体改正による歳入増以外に、四百六十億六百万円という自然増收を見積つて、歳入に計上してありました。今回はさような措置がございません。これを隱して、他の面でいたずらに國民負担を強要しておるように見受けられますが、その点はいかがでございますか。
  34. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいま御懸念になりましたようなことは、今回の予算編成においては極力これを避けるために、決して苛斂誅求の途によつて自然増收を人為的に殖やすようなことは考えておりません。この点は本会議においても大藏大臣よりしばしば、税務当局に対する嚴重な指導監督を言明いたした通りであります。かような弊害は全力をあげて除きたい。かように考えておる次第であります。
  35. 早稻田柳右エ門

  36. 塚田十一郎

    ○塚田委員 時間が経過いたしておりますのにまことに恐縮でありますけれども、先ほど同僚青木委員その他からお尋ね申し上げましたことに対する首相の御答弁に関連いたしまして、二つの点についてだけお尋ねをしたい、こういうようにお考えております。  その一つは結局軍公利拂の延期というものは、與党の間のいろいろな政策の上からくる妥協によつて出てきたものであるということになるわけであります。私どもはこの妥協によつてうまい結果が出てくるということは、ときどき政治の妙味として必ずしもこれを否定しないのでありますけれども、この問題に関する限りは、どうもこの妥協された結果が、非常にまずい変なものになつたのじやないか。今度の軍公利拂延期というものは、これはもうすでに本会議におきましても、同僚からいろいろ指摘されておりますように、実質は新しく公債を発行されるのと、ちつとも変つたものじやないと私は考える。そこでもしそうであるとするならば、これをされることによつて、先ほどからいろいろ指摘されておりますいろいろな欠陷があるのでありますから、この際あつさりと軍公の利拂はこれをされて、それだけ必要なものは、実質的には同じことなのでありますから、新しく公債を御発行になつたらどうか。こういうように私どもは卒直に考えるのであります。その方がいろいろな弊害もなくして、実質は同じものをもつてくることになるのでありますが、この点に対する総理の御意見を伺いたい。
  37. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまの塚田君の御質問は、本会議においても同じ質問が出ました。そのとき北村大藏大臣より、これは決して新たな債務ではないのだという趣意を、お答えしておいたはずであります。その点はあるいは御出席でないときに答えたかもしれません。しかし速記録にははつきりその通り出ておりますから、どうか御了承願います。
  38. 塚田十一郎

    ○塚田委員 首相の御答弁は、私がお尋ねした趣旨とちよつと違うように伺うのであります。新しい債務であるかないか。これは解釈の考え方によるのでありますが、実質は同じものなんだから、いつそのこと新しい公債を発行されて、軍公は利拂されたらどうか。こういうようにお尋ねしたのであります。
  39. 芦田均

    芦田國務大臣 実質が同じであるから、三党協定によつて、利拂は延期したわけであります。
  40. 塚田十一郎

    ○塚田委員 これ以上は水掛論になりますから、この問題はこれ以上お尋ねいたしません。  第二の点は、先ほど首相は、軍公利拂延期は一年しかやらないのだ。一年しかやらないということは法案を見てもらえばよくわかる。こういうようにお答えなつたのであります。そこで私どもが、この軍公利拂の延期法案に対する政府の提案の理由を拜見いたしますと、軍事公債の特殊性、及び國家財政の現況に鑑みてこれをやるのだとあります。そこで軍事公債の特殊性というものは、これは一年では決してなくならないものであります。國家財政の現況も私どもが推察いたしますところでは、おそらくことし一年では、今年軍公利拂を延期されるというような基盤になつ現状は止むまい。こういうように私どもは想像いたすのであります。そこで仮定的な質問をいたすので、あるいは仮定については答えられないとお答えになるかもしれませんが、もしお答え願えるならば、かりに同じような状態が続いておつて、そうしてそのときにおいてもなお芦田内閣というものが続いておるとしたならば、またおやりになるのかどうか。そこで一年と法律に書いてあるからもうやらないという御答弁であつたのでありますが、こういう法律は今までたくさんあるのであります。臨時物資需給調整法以來期限を限つて、一年くらいということにした法律はたくさんあるのでありますが、そういうような法律はほとんど例外なく、みな更新されてやつておるのでございますから、おそらくこの法案においても國民の受ける感じというものは、期限が切つてあるから、もう二度と繰返されないというようには受取りがたいのでありますが、その点についてはつきりとお答えをいただきたい。
  41. 芦田均

    芦田國務大臣 この法律をつくりました政府の意図は、この問題は今年きりで処分をしたいという見透しのもとにつくつたものであります。明年の予算編成する際には、日本生産の今日の指数が継続されて、そうしてインフレーシヨンの克服もある程度成功を收め、また終戰処理費その他においてもある程度の減額は予想し得るのであります。明年度予算は今年度予算よりも、もう少し樂な予算が組めるものと期待しているわけであります。
  42. 淺利三朗

    ○淺利委員 ただいまの問題に関連して疑いを解いていただきたいと思います。塚田委員から申された軍公利拂停止の理由のほかに、その根本は、これは社会党の政策が、軍事公債の利拂は停止するのだという根本の政策をもつておる。社会党がこの根本の政策を破棄しない限り、芦田総理の建立内閣はまた明年必ずこれは問題になる、こう思うのですが、その点については社会党とどの程度に協定ができておるのか。社会党も今回限りで將來はそういうことは申し出でない、こういうのであるか。その点を伺いたい。
  43. 芦田均

    芦田國務大臣 お答えいたします。それは法文の中に書いてある通りの協定でありまして、それ以上には何も協定はありません。
  44. 淺利三朗

    ○淺利委員 もう一つお伺いしたいことがあります。先刻の総理の御説明に、金融機関における損害の補償、そういうことは政府としては措置をしない、銀行團の間においてこれを何とかするという話がついておるように聞いておる。こういうふうに承つたのでありますが、私どもの手もとに各銀行團から來ておりますのは、これはみな反対の意見を表しております。そういう点について、銀行團自体においてこれを処理するというような空氣はないようでありますが、この点について、どういう根拠があつてそういうふうになるのでありますか。もつと具体的に伺えればさいわいだと思います。殊に政府の直轄に属するところの預金部については、政府一般会計から繰入れてこれを補つておる。一方においては軍公利拂の停止のために欠陷が起つたものは、一般予算においてこれを補充している。でありますから、預金部においては損害は受けないようになつておりましようけれども、しかしながら結果においては、一方において取上げて、一方において與えるというのだから、少くともこの預金部に関する限りは、軍公利拂停止というものはその当初の目的を達しない。こういうことになつておると思うのであります。この問題を、今の銀行團各自においてみずからこれを対処するということについて話合いがついているということの根拠を、われわれが安心できるようにはつきりと御説明を願いたいと思います。
  45. 北村徳太郎

    北村國務大臣 銀行團に対しましては、これはすでに利拂期が経過しておるのでありますから、既経過の処理をする。從つてこれを未收利息として、貸借対照表には借方に計上してよろしいというようなことに処理いたしましたので、從つて銀行経理の関係においてはこれで一應納まつたと思います。問題はこのことから來る金融がどうなるか、このことだけが実質的に残るのであります。ところが、御承知の通り金融機関でございますから、ほかの企業会社でかような問題が起りますと、ただちに金融問題というものは非常に大きな問題になるのでありますけれども、事が金融でございますがゆえに、さほど一般の企業会社等において、こういう処理をとられたような影響はないのであります。しかしあつた場合には、これは日本銀行との間に当然のビジネスとして処理できることであります。われわれといたしましてはそういうふうな場合には、なるベく便宜をはかつてもらいたいということは、日本銀行総裁との間に十分了解を得ておるのであります。その程度の相談はいたしております。それから今回問題の対象になつております公債は、全部登録公債でございまして、銀行等の所有のものが九割六分ほどありまして、それは日本銀行に全部登録されておるのでありますから、從つてこの点については日本銀行との間の処理は割合にむずかしい問題は起らぬ、かように考えております。
  46. 淺利三朗

    ○淺利委員 そうすると、結果においては、これは財政上の処置を、日本銀行なり金融機関に轉嫁した、こういうふうに了承してよろしゆうございますか。
  47. 北村徳太郎

    北村國務大臣 金融機関に轉嫁したとも申されぬのでありますが、金融機関は、支拂期日が到來したものが、若干延長されたという迷惑をこうむられただろうと思います。しかしこれは、先ほど申しましたような経理上の処理と、あとは金融問題として取扱う。それから三分五厘の利拂に対して、その利子額の同利率の三分五厘を最後に拂う、こういうことになつておりますので、実質的に損害を與えるということにはならぬと考えております。
  48. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 お諮りをいたします。軍事公債利子支拂特例に関する件はきわめて重大な法案でありますので、明日午前十時より日本銀行総裁以下四、五人の方々のおいでを願つて参考意見を聽こうということに、昨日の理事会において決定をしたわけでありますが、さよう取計らうことに御異議ありませんか。
  49. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議ないようでありますから、明日おいでを願つて参考意見を聽くことに決定いたします。  午後二時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時五十三分開議
  50. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  それでは質疑を継続いたします。
  51. 松田正一

    ○松田委員 私は総理大臣参議院の方に急ぐと言われますから御遠慮いたしておつたのでありますが、晝から総理大臣はお出でにならないのでありますので、大藏大臣にお尋ねをいたしたいことを残しておきましたから、それを質問いたします。  この軍事公債利拂停止によつて金融機関に及ばす影響でありますが、計理等によつて大藏大臣の御答弁によりますと、計理の上では未收利息として資産としておるから、それは一段落いたしておると申しますが、実際利拂の金を受取つてそれを利殖の途に働かしていくのと、これを三分五厘の複利で償還のときに利息をもらうのと、その差は今の金融逼迫の上から申しますと、金融機関の方でもらう金はわずかに十七億くらいのものになつてはおりますけれども、これを回轉して行つて、どれだけの利益があるか。この金を三分五厘の複利によつて償還のときにもらつていく金と比較しますれば、軍事公債は明年度も償還せられますが、長いものは十五年くらい経たなければ償還にならぬものもあります。平均いたしますれば、約十一年、こういうふうになります。そうするとその十一年間の複利でもつて、償還のときにもらうのと、その利息をもらつておいて、それを回轉していくといたしますれば、その差が約二十七億六千万円ばかりの利息の損耗が金融機関に生ずる、こういうようなことになるようであります。  それから保險会社等の損失につきましては、保險会社は銀行と違いますから、日銀の方へ公債を担保に入れて金を貸してくれません。それでほかの方へ担保に入れて金を借りておる。そういうような利息の支拂、それが一方で公債の利息がはいらぬからというて、一方に支拂つていかぬわけにまいりませんから、それを支拂うというところから見ますれば、保險会社のごときは非常な損失になるのであります。こういうことも金融機関に影響を及ぼすと思われる。それから農業会でございますが、農業会の方では八月の十四日をもつて協同組合に引継ぐというのですから、農業会でもつているものも、これは大藏大臣御承知ですが、相当額もつております。六十一億の中で八%が軍事公債、これが利拂停止ということになりますと、公債の市價が下る。今でも軍事公債は六十六、七円しかしておりませんが、この利拂停止ということに確定いたしまして、この法案國会を通過しますれば、ほとんど無價値になつて軍事公債というものは市價が下落する。その下落したものを協同組合の方へ引継ぐときに、協同組合は表面帳面價格でもつて引継いでくれるかといつたら、それはしてくれません。そうすると、その農業会の損失を國家がどうするお考えであるかということを考えていきますと、農業会に及ぼす影響もまた重大なものがあります。その他金融機関もいろいろありますが、すベてこういうふうな影響がこの軍事公債の利拂停止によつて起るのであります。これらの点については傍観をしておるのか、何かこれらの点について政府がお考えをもつておるのか、この点について大藏大臣の御認明を願いたいと思います。
  52. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お尋ねの点は午前申し上げたことと大体同じ御答弁を申し上げてしかるベきだと思うのであります。現在この三分五厘の利率によつて支拂が延長されるが、三分五厘では現在の金利から考えても、そろばんがとれないではないかというお話もきわめてごもつともであります。そのことを考えますと、現在の公債というものがマーケツト・レートからはるかに低いものになつておりまして、そのこと自体が現在問題になつている。從つてこれをどう処理するかということは、日本の公債政策全般にわたることで、ひとりこの軍事公債だけの問題ではないのであります。現下の金融市場の金利の状態から考えまして、三分五厘というような利率が妥当であるかどうかということを、そもそも檢討しなければならぬことになるのでありまして、この点は公債全般の問題として、現に考慮はいたしておりますが、この軍事公債だけの問題としては考えにくい点があるのであります。  それから、金融機関の点につきましては、これは実質上の御迷惑は主として金融に関する迷惑であります。先に申しましたように、既経過の利息であるから、これを損益計算に立てることはよろしいという特別の処置をいたしまたので、特に損益勘定に計上いたしましても、実質的に現金がはいらないじやないかというような問題でありますが、この点に関しましては、日本銀行その他から金融の道が講じられているということを申し上げたのでございまして、これは政府が特別の権力等を用いなくとも、中央銀行たる日本銀行とその他の金融機関との関係でございますから、これはおのずから処理できる。なお念のために日本銀行と打合せておりますので、この点についてはなめらかに進行することと信じております。  なお金融機関が非常に迷惑するという点はわかるのであります。たとえば当時松田委員は運輸政務次官として御承知と思うのでありますが、かつて日本においては非常にドラステイツクな方法をとらなければならぬことがあつたが、私はそれについてきわめてよく理解をしてごもつともであると思う。当時必要があつてどもは大いに支持したのでありますけれども、たとえば結果から見ればほとんど金融機関の犧牲において軍需補償の打切りをやつた。これは大分世間で言われたけれども、あのときはやむを得なかつた。しかし現在そのことは、結果として全國の金融機関はほとんど九〇%ないし一〇〇%資本を失つている。資本をもつて貯金を保護しなければならぬという現実の問題もございますし、それのみに止まらずして、預金者には五〇%以上七〇%、あるいは七五%以上の切捨をしなければならぬという状況になつている。なぜそうなつたか。これは当時の内閣がやむを得ずおとりになつ方法として軍需補償の打切りを行つたのだから、私はこれを肯定するのでありますし、その当時は今から考えてもやらなければならなかつたと考えるのであります。けれども非難するわけではありませんが、現実に今その結果が來ている。かように経済の非常に混乱している時期において、三分五厘の利息の支拂を法によつて延長する。延長してその期間これを公共の福祉の用に供して、それを使用する代價として三分五厘かの利息をつけるというような方法をとり、また金融的な措置も円滑にいくような処置をとつたということにおいて、私は一應問題は解けると考えておりますことは、午前中にも申し上げたところであります。同じことを繰返す結果になりますけれども、そのように御了承願いたいと思います。
  53. 松田正一

    ○松田委員 金融機関といたしましては大臣も御承知のごとく、戰時補償の打切りによつて非常な損失を來した。それから封鎖の打切り、その他國民に影響も及ぼしたが、ようやく今整理がまさに完結せんといたしておるときでありまして、過般も金融再建の第二封鎖の関係があらためて起りまして、またこれで一悩みいたしたのであります。金融機関の戰時中からの営業状態考えてみますれば、戰時中は戰い一本でやつておつたのでありますから、これはやむを得ませんが、ほとんど手を縛られて、そして蓄積資金というものは戰い一本に流しておつたものです。戰後今お話のごとく軍事補償の打切りになつて、これが金融機関の内容が不健全となつて國民に迷惑をかけた。かくのごとく戰時中は手を縛られ、戰後足を縛られ、きわめて営業が惡くなつておる。それをもつてまた軍事公債の利拂によつて、とにかくつておる公債というものの市價が下る。それは下るのみならず、運轉資金の上に支障を來す、こういうことになつて、戰時中は手を縛られ、終戰直後足を縛られ、今また首を締められんとするような状態になつておる、金融機関はこう言うておるのであります。一例をとつてみますれば、保險会社でございます。保險会社は今みな相互会社であります。保險協会の方から申しまして保險加入者が三千万人、この民衆から吸收した資金をもつて公債を買うたが、その買うた公債の利廻りがあつてこそ総合的に年三分の利益配当ができております。ところが軍事公債の利拂を打切られるといたしますれば、とにかくその利息の支拂を受けるまでは、三千万人に対する三分の利益配当は、軍事公債の利拂打切りによつて二分になつてくるということもあります。そうしますとこれが大衆に及ぼす影響はまた甚大なものがあるのでございます。こういうことを政府の方で銀行別にして考えてみて、あるいは信用組合、無盡会社、農会、保險というものは銀行以外の性質をもつておりまするから、この利息の支拂を受けた金を年四回回轉して運轉していくものとしたならば、非常な利益になつていくが、現実に利息を受取らぬために、保險協会としても三千万の加入者に対して、三分の配当を二分にしなければならぬことになるが、將來國家がこれを考えてやらなければ保險事業は資金吸收の上において、非常な支障を來すのではないかと思うのであります。また安本長官もおいでになりまするが、総理大臣は今年度は補正予算は出さぬと言われております。それは記録をとつてありますからよろしい。けれども物價改訂によつておそらく補正予算を出さぬというわけにまいりますまい。これは経済安定本部としてもやむを得ない。昨年度の資金計画におきましても、補正に補正を重ねまして、あれだけの金が当初予算よりも殖えたのであります。すなわち資金関係においてもまた殖えてくる。國民通貨を信頼して心からの貯蓄をして、資金を蓄積するという面から考えてみますれば、いずれにいたしましてもこの軍事公債の打切りというものは、通貨面に対する安定性を欠いて、蓄積資金をなさしめる上から申しますと、いかにも貯蓄目標を三千万円と閣議で決定をいたされておりまするが、この今の状態から考えてみますれば、決して三千万円では本年度はいきますまい。資金計画からいつて、三千万円の貯蓄の高を、安定本部の方では後日訂正されて、これを増加するようなことはないと思われておるか。その点について安本長官及び大藏大臣の御答弁を得たいのであります。
  54. 北村徳太郎

    北村國務大臣 御質問について御答えいたしますが、軍事公債の総額の九五、六パーセントは金融機関においてあります。それが全部登録公債になつているということは、公債をもつことも運用の一部と言えば言えますけれども、狹義の運用資金ではなくて、預金等のまさかのときの支拂担保になるために登録されているということは、轉々流通をさせないために、日本銀行に登録されておるという状態なのでありまして、この事態には動搖はないのでありますから、資産内容が今回のことで著しく惡化したということはない。しいて申しますれば利潤性において問題になりますことは、現在のマーケツト・レートに比べて公債利率は低い。その低い利率の同じ割合にしかつかぬということでは、たしかに金融機関はそれだけの迷惑を受けるということは認めなければならぬ。しかしこれは資産内容の問題でなくて、利潤性の問題である。その利潤性の問題と実質上の金融の問題でありまして、この両点については、殊に金融の問題については、これは日本銀行において金融ができるのであるし、また金融するためにと申しますと語弊があるかもしれませんが、全部登録公債になつて、公債証書が発行されていないというような事実に鑑みまして、金融の途がつけば実質的には非常な御迷惑をかけたとは思わないのであります。これは私も金融機関に多年おりましたので、金融機関の諸君と会つて直接いろいろ話を聞いておりますが、問題はそこにはなくて、今回のことは利拂延期をしたに止まつたけれども、利息そのものを否定する思想がある。あるいはもつと進んで元本まで否定する思想がある。今回のことは將來それに行くのではないかというような不安が非常にあつたということを、みんな告白されておるのでありまして、むしろ問題はそこにあるだろう。そうなつては相ならぬので、今回さような処置をとることによつて、というと少し言い過ぎかもしれませんが、元本を否定する思想は現にあるのであります。軍事公債はもとより擬制資本であるから、さようなものは全部打切れというような思想があるのでありまして、今回の措置によつてさようなことがありませんということがはつきりしたことは、金融機関に対してむしろある安心を與えたとも考えるのでありまして、私どもはさよう考えておるのであります。私への御質問に対して一應お答え申し上げます。
  55. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 松田さんからの私に対する御質問は、資金計画の問題でありますが、これは資金計画その他は、やはり國の財政その他と一致し、マツチして立てられるものでありますが、予算も現在の予算をもつて進むということに政府はきめております。やはり自由預金の増というものも、この三千億というものを目標にして進んでおる次第でございます。
  56. 松田正一

    ○松田委員 そうしますと大藏大臣、こういうふうに承つておいてよろしゆうございますか。登録公債であるからして、金融機関のもつておるものも——これは銀行でございますが、あなたの言われるのは、金融機関と申しても銀行以外はそういうようになるかもしれない。これで利息がとれないようになつておる。そのとれない利息によつて資金が不自由になつてきた場合には、日銀でこれは三分五厘程度の利息をもつて当然貸してくれるというように承つておいてよろしゆうございますか。そうなればまた金融機関の方も運用をやるのについて腹をきめる必要がある。そういうふうに私どもが承つておいてよいかどうか、その点について御答弁願いたい。
  57. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは專門家の松田委員の御承知の通り、現在日本銀行の金利というものはこれは公債の金利よりも高いのであります。從つて一般金融機関が日銀の金を利用いたします場合には、これは三分五厘の公債を所得しながら、それより高い金利を拂つておる。利息は逆鞘になるということは、ひとり今回ばかりでなく、現に金融上のものもかなりある。金融機関そのものにおける借金がかなりありますけれども、これは全部逆鞘になつております。そういう事実はございますので、今回これはこの分だから三分五厘にして日本銀行が貸すということは、おそらく日本銀行はしないであろう。從つて若干逆鞘になるという事実は認めなければなりませんので、その点は先ほど申しましたように、金融機関に若干の利潤性の上に御迷惑がかかるということはやむを得ない。ただ金融については円滑に金融が疏通するはずである。かようにお答え申し上げる次第であります。
  58. 松田正一

    ○松田委員 よくわかりました。それではさように承つておきまするが、大藏大臣としてのお立場は私は非常に察しておるのであります。こういうことに事実はなるのでございます。戰時中にわれわれ強制的に隣組を通じて貯蓄を命ぜられ、あるいは軍事公債の消化を隣組を通じて割当てられ、言葉は少し極端になるかもしれませんが、國民に向つてまず銃劍をつきつけて貯蓄さす。そうして公債を消化さしたものであります。その当時の通貨價値から申しますれば、今それぞれ金融機関がもつておるもの、もしくはその他の法人、團体が無記名でもつておるもの、個人がもつておるもの、これを今市價にいたしますれば、われわれの消化した当時の通貨價値から申しますれば、百円の公債は今では一円か二円くらいしか價値がないのであります。ただここに三分五厘の利息を拂つておるということで公債の市價は維持しておるのであります。しかも今回この利息を延期されたならば、公債の價値は市價が下落してしまつて、おそらく担保に供してあるものは増担保をしなければいかんかもしれません。今公債が千九百九十七億円出ておりますが、これが一般軍事公債以外の公債にも影響を及ぼして、そうしていや氣がさして市價が下落してくる。かりに三割下るといたしますれば六百億の市價が下るのである。もつともこの軍事公債の利息を延期するという前にすでに公債が下つておるのでありますから、公債の利息を打切るといつても三割も下らない。將來この案がもし通過いたしますれば、必ず前後を通じて三割くらい下る。そうしますと民間において負担すべき損失というものは、六百億くらい覚悟しなければならぬことになりはせんか。これを思いますときには、支拂停止の影響はきわめて甚大である。この際それもこの利息金額が何百億とよけいにあつて、今水害対策とか六・三制の経費を半ば償うというものなら別といたしまして、金額を通じて、午前中にも申しましたように、十四億円内外のものを支拂わずしてこれだけの影響を來すということでありますから、これが支拂を延期するのならば、他の方面において何か市價の下らぬような方法政府が講じていただくようなことができなかつたものかどうか。この点を承つておきます。
  59. 北村徳太郎

    北村國務大臣 第一点の御質問は、戰時中隣組等を通じてずいぶん職域地域等で貯蓄を募つて、それが公債になつておるというお話がございました。これはその通りでありまして、戰時中隣組あるいはその他を通じてある意味においては天降り的な割当等によつて、貯蓄をさした。それが相当の金額の公債になつておるのでありますが、今回の支拂を延ばしたという中には、それは入れていないのであります。さような小口のものについては、これは全部利息を拂うことにいたしまして、軍事公債であるけれども、さような隣組消化に属する零細なものは全部支拂つておるのでありますから、これは問題外になります。  第二点は利率のことになるのでありますが、現在公債が市價を維持するかしないかは、利率によるよりも國の信用によるものである。いろいろインフレーシヨンの理由がございますが、それは金利によつて公債がだめになるというよりも、國自体財政が破局になつたり、インフレが破局に達したときに問題になるのでありまして、利率のことはそう大きな問題ではないのであります。それから現在市場が公開されておりませんから正確なる公債の市價というものはわかりません。今回の利拂を延ばしたことによつてはたしてどれだけ下るか。必ず下るというようなお説でありますが、私どもはそう思つておりません。もし必ず下る。また数字をあげてのお言葉でございましたが、これはもしさようなことについて御研究がございましたならば、ひとつうちあけて教えていただけば、非常に参考になると思います。私どもは下らないということを信じておるのでありまするけれども、今回のことによつて非常に下るというような御意見でございます。もしさようならば、どういうわけで下るのであるか。現に公債の利率は安いのである。公債そのものが現在の市場利率に比べて、はなはだしく安いのであるという事実と、安いがしかし公共の福祉のために、これを一箇年間延期して使わしてもらう。その代價として三分五厘拂うということになつておる。そのこと自体から、市價が非常に低落するとは考えておらぬのであります。もしさようなことがあるといたしまするならば、このことのそろばんからくるのではなくして、かようなことをすればひよつとすると元本を打ち切らないかということが問題になるのであります。しかしそのことは政府の閣議決定によりまして、たびたび声明いたし、今回の決回においてもたびたび申されておりまして、今回の措置は今回限りのものであります。決してこれからはやらぬということは、はつきりしておりますので、その点については安心をしていただいていいわけであります。かように考えておるのであります。
  60. 松田正一

    ○松田委員 これは明らかな問題ではありませんか。毎年々々年二回にわけて利息を拂い出しておつた。その利息が償還になるときまでもらえぬのだということになれば、市價に狂いが來ぬというはずはなかろう。その事情から申しまするならば、市價は狂うのが当然であります。ただどこまで狂うかということであります。それが立場々々によつて見るところは違いましようけれども、何にいたしましても市價の狂うということは当然のことでありまして、これがために市價が狂わぬということの方が無理な話であります。それから隣組消化等により公債は、今回の軍事公債の利拂停止の対象になつておらぬということでありますが、確かにそうなつておるのですが。
  61. 北村徳太郎

    北村國務大臣 そうです。
  62. 松田正一

    ○松田委員 それも先ほどから申しますごとく、國民の貯蓄が蓄積資金となつて、それを金融機関が消化しておるということになります。いずれにいたしましても戰時中の一般國民の犠牲が、この公債になつておることは事実でございます。それがともかくも今のところで貯蓄をしていくというのに、歴代の大藏大臣が申されておるように、通貨の價値に動搖を來すようなことは——政府としてはしないと言われておる。これは近ごろの歴代の大藏大臣が皆そういつておられる。この軍事公債の利拂の延期が、ひいては通貨の信用を害し、國民心からの貯蓄心を害して、將來発行する公債の消化にどんな影響を來すかということ、これは事実將來に向つてのことでありまするから、今から申しましてもしようがないと言われるかもしれませんけれども、実際はこれからの公債消化に向つては、軍事公債利拂の延期というものは、その消化に影響することは、明らかな事実と言わなければならぬのであります。政府はこれについてお考えになつておることがありますかどうか。この利息を延期するより、むしろこの際公債を発行してこれだけの金を償うたらどうか。これは田から行くのもあぜから行くのも同じことであれば、その方が影響が少いのではないかという午前中の質問もありましたが、それと同様に、また一面將來交付公債、その他あらゆる公債も出していかなければならず、たとえば復興金庫の復興債でございます。これらのごときものも何となく消化が惡くて、二割しか一般貯蓄の方で消化いたしておりません。これは通貨に対する信頼感を高めていつて、定期貯金も四割、五割というところまで殖えていつて、初めて將來の公債の消化というものができる。いやしくもこの貯蓄に対しては、國会におきましては各政党派を超越して——共産党は別でありますが、他の小会派も大きい政党も一致をいたしまして、今協力をいたしておるのであります。これが貯蓄の上に影響することがないと思われるか。また將來発行する公債に対する消化について、何となく営業意欲が薄くなりまして、蓄積資金が減つてきて、そうして後日の公債消化に支障を來すようなことはないか。こういう点について大藏大臣のお考えを一應承つておきたいのであります。
  63. 北村徳太郎

    北村大藏大臣 申し上げることはさつきからいろいろ申し上げておるのでありますから、同じことになると思います。それで私どもはちまたに、公債は軍事公債なるがゆえに、全部打切るべしというような意見のあること、これは貯蓄心に非常に影響する。かようなことがあつてはならぬということを深く考えておるのでありまして、今回の措置はさようなことでなくして、いろいろそういうふうな思想があるけれども、そういうものを全部否定し去つて、今回このような処置によつて、これで終りだという終止符をつけたのでありますから、ある点においては御安心を願える。こういうふうに考えておるのであります。またこのことの理解のためには十分努力をいたしたい、かように考えておるのでありまして、このことのために將來の公債政策に影響するとは考えておりません。  それから復金のことがただいま例としてお話に出たのでありますが、これは申すまでもなく復興金融金庫というものは、一般の金融機関において貸出のできないもので、しかも國の復興のために必要な金融をやる。こういうことでございます。從つて一般金融機関が考えなければならぬ回轉性の問題、あるいは安全性の問題、そういうものを犠牲にして、回轉性は非常に鈍くても、あるいは安全性においてまつたくなくても、國の復興のために必要なものを出すという國家の機関でございまするから、從つて利率が高い。これに対して一般の投資が十分でないということは、一面資金が潤沢でないということもございますけれども、本來の性質に鑑みて、これはそううまくいかないのがあたりまえである。しかしながら今後は市場において十分消化するように、なお努力はいたしたいと存じておりますし、また金融機関の援助も受けたいと考えておるのでありまするが、このことは解剖して見ると、さような特殊な條件をもつておる。復金自体が特殊な條件をもつておるということ、今後日本の各企業が赤字をなくいたしまして、赤字の金融などは復金に対して償還ができる。あるいは復金から借り出した金が、しばしば委員会でも問題になつておりますが、回收がどんどんできるというような状態になつて、もはや復金のごときものは必要がないという時代がまいりますれば、これは問題ないのでありますが、いま当分は復金復金特有の使命のために、やむを得ざる方法をとつておりますので、從つてこの復金債の消化が非常に鈍いじやないかというようなお言葉は、復金本來の性質から、ある程度やむを得ない。しかし今後ますます理解を深めていただいて、日本銀行の方の金にならないようにいたしたいということに、万全の努力はいたしますけれども、そういう点は一般の公債とは性質を異にしておる点からやむを得ない、かように御了承願いたいと思います。
  64. 松田正一

    ○松田委員 復金の問題は、今までの例をとつたのでございますが、私は將來の公債消化について支障を來すものと思います。それは將來資金の蓄積が鈍つてくる隘路が一つ殖える。そうしますと蓄積資金が目標に達せぬことになる。達しようとはみんなに努力していただいておりますけれども、隘路が一つ殖えるということになりますれば、資金の蓄積が意のごとくならぬ。そうすると復金債のごときも昨年度は二割ぐらいでありましたが、本年度は二割もいかぬことになるのではないかということを申し上げたのであります。それであとあとの公債発行にあたつて支障がないかどうかという点について、もうちよつと詳しい御説明を願いたいと思います。
  65. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは先ほどから申しておる通りでありまして、たとえば今まで盛んに横行したというと語弊がありますけれども、かなり横行しておつたところの軍事公債を全部打切るべしという——今もなおあると思いますが、そういう思想を抱いてそのことを正しく信じている方々が少くないのであります。さような思想が國内には相当あるけれども政府はさようなことはございませんということを、今回の措置によつてはつきりさしたことは、不安感を除去したと考えるのであります。このことから來る金融機関の若干の実質的迷惑はあつたと思いますけれども、これも決して重大な迷惑をかけたとは思つていないのであります。私は將來の日本の公債消化等にこれが影響するほどの問題ではない、かように確信しております。
  66. 松田正一

    ○松田委員 それほどの問題ではないと言われますが、それは立場々々によつて意見が異るところでございましよう。しかしこれは議論になりますから打切つておきますが、政府が声明したり閣議で決定したというようなことを國民は信用しておりません。これも政府としては、だますつもりで言つたのでないことは私どももよく知つております。ときの事情によつてだますつもりで言つたのではないでしようが、結果においては政府の声明とか、閣議の決定が、おざなりの、一時を糊塗することになつて國民の方では信用いたしておりません。それを信用できるくらいならば、こんな利拂停止だけをやつたからといつて、それで支障は來しますまい。政府がこうだから安心してくれ、安心してくれと言つても、その安心がたいへんである。そこを今尋ねておるのであります。大藏大臣も御承知でありましようが、波が高いというと日本では郵船の株が下る。波が高いからといつても郵船の株が下るわけがない。波が高かつたら船に損害が來るではないかというようなことを心配して、郵船の株の値が下るというように、きわめて神経過敏でございます。それだからこの軍事公債を一年延期するということが、毎年々々償還に至るまで論議されるところである。それと一般の公債——とにかく中央地方を通ずる、財政の逼迫というものは一様ではないのでございます。昨年度と本年度を比較いたしますれば、昨年より本年は一層窮屈になつている。本年度と來年度と比較して、また來年度も本年度以上とするならば、一般公債に至るまで利拂の停止をやられるのではなかろうかと思う。戰争前後を通じて國民はきわめて神経過敏になつておりますので、それが市價に影響してくる。それが將來発行する公債の消化に支障を來すということは、野党といわず與党といわず、当然質問するところでありましようし、おそらくこれが市價の下る原因となり、またあとあと公債の消化に支障を來すことは、当然來るべき事情と考えます。これに対してそういうようなことは絶対にしないから安心してくれと、大藏大臣総理大臣はおつしやるけれども、何と言われてもそう信用はしません。それから信用組合、無盡会社が、戰時中、遊金ができたら、その何割かは庶民金庫に提供せよと言つて提供させて、庶民金庫の方はしかるべく利殖の途をはかつていくからというので、これだけ金が余つたから利殖の途をはかつてくれと渡したら、これによつて庶民金庫は公債を消化しております。それを公債が利拂打切になつたら利息をくれぬことになるのか。この庶民金庫といつて政府一つの機関であります。これの公債は庶民金庫の責任においてやるのであるか、一般の預金者、信用組合、無盡の方とともに支障を來さぬということになりますか、庶民金庫が買つたけれども、その金は初めの金で買つたのであるから、お前の方に利息は渡さぬということになつておる。これに対する御答弁を伺いたい。
  67. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの前段の御質問でありますが、これは政府がいくら声明しても信用しない、こういうことであれば、これはいたし方がないのであります。どうか信用してくださいとお願い申し上げても、これはお互いの心理的の問題になりますから、いたし方がない。ただしかし現実に今日まで、金融機関から登録公債の解除を求められた例は一つもないので、その点は信用しておるもののごとく私どもは理解しておるのであります。問題はその点だけであります。それから庶民金庫等の例も今出たのでありますが、これは私は金融的の措置によつて解決する問題であつて日本銀行においては、できるだけ今回のことによつて金融の不円滑を來さないようにするということはよく理解してもらつておりますから、金融的措置によつて、先ほど申しました利潤性の上に若干の迷惑をかけるということは起り得ると思います。起り得ると思いますけれども、金融措置によつて今回の利拂が先に延びたということからくる金融技術上の困難なる問題はこれは解決する、こういうふうに考えております。
  68. 松田正一

    ○松田委員 そうしますと先ほど申しました農業会の引継のときに出てくる損失でありますが、これについてはどんな御意見をもつておりますか。
  69. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの問題は少し事務的のことにわたりますので、後ほど事務当局より調べてお答え申上げたいと存じます。
  70. 松田正一

    ○松田委員 詳しく申上げるからお取調べが願いたい。農業会がもつておる公債は、百二十六億円のうち、軍事公債でこのたび利拂停止になるものが六十五億円ある。この利息は二億二千万円になります。これを八月十四日の日から全國の農業会が農業協同組合の方に改組されることになり、農業協同組合の方に引継するときに——今では公債は額面によつて記帳しております。けれどもこれを引継ぐときは額面で引継ぎされたら協同組合が困る。時價でもつて引継ぎしろといつたら農業会の方は欠損を生ずるし、その欠損はどうしてやるつもりであるかということであります。それを聽きたいというのであります。もしこれが実際安いじやないか、半値ではないか、帳面はそういうことになつておるかもしれないが、わしの方の引継ぎは半額でなければ引継がぬと言われたときに、もし半額、いわゆる六十五億円の半額というものは、元の農業会の負担になつていかなければならない。この責任をどうしてはたすことができるか。これらの点について、何かここまでのことは、この利息の延期のときにお考えになつておるのかおらぬのかわかりませんけれども國民はこれに対してどうしてくれるのであろうかとも考えております。ほかの方の質問もありますので、あとに事務的のことが大分ありますが、これは後日また事務の方にお尋ねすることにいたしまして、大藏大臣に対してまだ質問もあるでしようから、大藏大臣に対してはこれで終ります。
  71. 青木孝義

    青木(孝)委員 ちよつと関連的に大藏大臣にお伺いしたい。ただいまお話が出たのでありますが、信用組合はこの表を見ますと一億一百九万一千円という軍事公債をもつておることになります。無盡会社は五千九百二十二万八千円ということになつております。ところが事実は庶民金庫に預け入れてある。信用組合その他が八億四百六十万円、それから無盡会社の方は一億七千万円、これは登録名義は庶民金庫になつてつて実際は無盡会社がもつておる、あるいは信用組合がもつておる。これについて將來問題となると思いますが、庶民金庫の改組に伴つてつてくる処置として、一体これをどんなふうに評價せられ、どんな措置をとられるかということは、事務的な関係になると思いますが、その点もまた機会を見てひとつ御説明願いたいと存じます。そうして先ほど大藏大臣は金融的措置によつて云々というふうに言われましたけれども、もしこういうものを日銀が何でも背負いこむというような形になつていくことになりますと、日本銀行というものが今日の場合では非常に統制的な立場が強いのでありますから問題はないようでありますが、將來金融事情というようなものに対する考え方としては、何か金融的措置ということでむりじいに日本銀行に背負わしたり、いろいろな措置が講ぜられるということになりますと、日本の金融の実体というものは阻害せられるようになるのではないかというような考えがわれわれには浮んでくるので、この点についてどういう措置をとられるかということは、小さい問題のようでありますけれども、おついでにひとつ御説明をいただければ結構だと思います。
  72. 北村徳太郎

    北村國務大臣 前段のことは事務的に調査してお答え申し上げます。後段の問題でございますが、私は日本銀行が金融機関に対してビジネスとしてやるというような言葉を使つたわけでありますが、政府が命令的にこういうことをしろというような指図をすることは避けたい。これは本來金融機関に対して中央銀行としての立場において多額の登録公債をもつておりますから、今も金融のめんどうは見つつある。それと同じような意味において、日本銀行は金融措置をなるべくとつてつてもらいたいということを私の方から連絡はいたしておりますけれども、決して指図したり、命令をしたりするというような態度ではないのでありまして、中央銀行と金融機関との関係において、ビジネスとしてなし得ることである。さような意味で……。また全体から見ますと金額は小さいのであります。從つてこのことはさほど非常に大きく取上げるほどの問題ではない、かように考えております。ただいま青木委員のおつしやつたような意味は私も十分了解しております。さよう御了解願いたいと思います。
  73. 内藤友明

    ○内藤委員 大藏大臣にお伺いいたします。今松田さんから農業会のお話がありましたが、事務的なことであとからお答えするという御返事でありましたので、それをあとから承りたいと思います。ただ今松田さんもお話がありましたように系統農業会のもつております今度利拂停止になります軍事公債は、六十四億六千六百万円となつております。これは今もお話がありましたように、戰時中には單に農業会がもつておりましたものを、農林省の省令をもつて農林中央金庫に集められ、それをまた農林省の強い勧めによりまして、そのうちの大部分がこういう軍事公債保有ということになつてきたということは今お話通りなのであります。大きな金融機関でありますれば、今回こういう利拂停止の措置があるといたしましても、融資その他の援助計画が当然考えられますので、別に事実上重大な危檢はもたらさないと思いますが、農山漁村、中小企業者、こういうものの所有しております小額公債、これはすべで中金から日銀に登録してある公債でありますが、こういうものに対しての金融緩和の方法は、どういうふうになさるのか承りたいと思うのであります。特に御承知の通り現在農村の金詰りに対しまして、農業会が一生懸命にその解決の責に当たつておるときなのであります。できるだけ資産の回收、資産の流動化をはかりまして、農村資金の需要に應じなければならぬのであります。そうして組合員の不満をかもすようなことのないようにしなければならぬのでありますが、そういう点から申しますと、利拂停止というのは実はこれらの要請に対して大きな障害になつておるということは、もう明白なことなのであります。從いましてこの軍公利拂停止ということが、こういう方面にどういう手を打たれて、こういうことの障害を除去せられるのか、その具体的な御方針をしつかりと承りたいと思うのであります。たとえて申しますならば、現在農村側が中央金庫を通じて日銀から多額の金を借りておりますが、その金を借りておるかたに、軍事公債を確定評價基準で買取ることをお願いできるものかどうか。できないとしても何とかこの際の処置として、そういう無理な願いがかなえられるものかどうか。これは私の一つの私案でありますが、そういうことに対して大藏大臣はいかようなお考えをもつておられるのか。私の質問はきわめて簡單ではつきりしたものでありますが、お尋ねしておきたいと思います。
  74. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまのお尋ねの点でありますが、それは農業会等につきましては、農林中金をして金融の便をはからせる。それでこの場合必要な資金は、日本銀行の方から出してもらいたいというので交渉しておることは了解されておると思います。それからその他の金融機関で、日本銀行と直接取引のない場合はどうするか。これは直接取引のある銀行を通してやる。通すことによつて何と申しますか、トンネル代をとらない方法でやつてもらいたいということを折衝いたしまして、大体了解を得ております。さような方法において金融の措置は講ぜられる、さように考えております。
  75. 内藤友明

    ○内藤委員 私が一つの私案として申し上げましたところの、日銀がいつでも確定評價基準軍事公債を買取るというような保証ができないものかどうか。これをひとつお伺いしたいと思います。
  76. 北村徳太郎

    北村國務大臣 その点はまだ研究しておりませんが、今のところむつかしいと思います。
  77. 青木孝義

    青木(孝)委員 先ほどからいろいろ松田さんとの間に御議論がありまして、大藏大臣からの御説明はまことにごもつともだとも思われますが、日本経済の平常の状態にありまする場合においての、たとえば軍事公債の償還年数というものを考えますと、大体十一年で終る、こう考えまして、その期限の近いものほど、平常の状態ならば公債價値が上つてくる、そういうことは通常のことでありますが、しかし軍事公債のような公債は、先ほどから繰返して大藏大臣がおつしやいますように、戰爭に責任をもたなければならぬような、しかも戰爭に使つたような、そういう公債は廃止すべきであるという考え方が、世間にある。そういう考え方さえあるのだから、この問題をこういうふうに処置したことは、かえつて政府のお手柄であるというようにおつしやつたように解釈もできるのであります。しかしわれわれ考えてみますのに、この軍事公債の利拂を一年間延期して、今後とも軍事公債そのものの價値を維持していくということが政府の御配慮にあるとしますならば、現に日本國債におけるの時價の低落ということは、だれでも常識的に想像できることでありまして、殊にこれを担保に入れて資金を借出したい、こういう者にとつては、どうしても今度の場合ならば、その公債の六掛であるとか、場合によつては五掛であるとかいうように引下げた融資の担保にしかならぬ。これだけはだれでも了解できると思います。從つてこの場合に考えますことは、保險会社のような場合においては、長期の資金を取扱つておるところの、ある意味における金融機関である。こういうものは持つているものをたとえ登録公債であつても、たえず運営するために、これを用いなければならぬということになると、今回の利拂一年間延期ということは、同時に將來に対する一つの心理的な観念から、まだ世間でそう言つておるのだから、問題になるのではないか、また來年はこういうことになるのじやないかという不安は、やはり大藏大臣御自身お考えになつてみても、そういう不安が起つてくるというようにどうもとれるのであります。從つてわれわれは通常の場合における軍公の償還年数をとつて、一定の数字を出してみましたところで、それは架空の数字にすぎないのでありまして、少くとも戰爭というような最もわれわれの忌み嫌わなければならぬ事柄がありますと、その結果國民に対して極度に國家が違反して、そして最後には國民全体を奈落のどん底につき落すというような結果になることは、ドイツの第一次大戰後におきましても、わが國の現状におきましても、われわれはこれを見ることができるのであります。なぜならばその國の経済が根本的に破壞されるというような事態に当面いたしますれば、政府國民に対して借金をいたしましたものが、インフレのためにまつたくゼロになる、こういうことは現にわれわれが味わつておる現状でありますから、ぜひとも当局におかれましてもこういう問題について今後國民経済的活動を脅かさないような措置を、できるだけ講じておくことが適当の措置ではないかと思うのであります。從つて軍事公債の利拂延期ということは、今日から見れば、まことに結果としては結論が見えたような当然のことのようにも考えられるのでありますけれども、しかし現在の日本経済状況ないしは、るるお述べになりましたし、われわれも考えておりますような対外的信用なり、対内的経済信用を今日維持するためには、こういう問題の事務的措置は万違算なきよう御配慮を賜わりますように、特にこの点についてお願いをいたしておかなければならぬと思うのであります。どうしても担保價値が下落する、こういうことから考えただけでも、ひとつこれについては何とか特殊な方法はないか。大藏大臣において、こういう点について十分お考えくださる理由があると思いますから、御所見がございましたら承つておきたいと思います。
  78. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ごもつともな御意見であると思います。現在の公債の市價というものは、これは御存じの通り市場が開かれておりませんから、公定價格はわかりませんが、とにかく何にしても現在の三分五厘の利廻では、今の資金原價をはるかに割るわけでありますから、從つて現在の公債の公定價格ではございませんが、言われておるところの一つの評價額というものは、これはやはり利廻採算から來た妥当点を示しておるのではないか、從つて公債の実質的な價値というよりも、金利が過少であるということからくる利廻計算を主とした値段であると考えるのであります。しかしそれをどうするかという問題は、今ここで何とも申しかねますけれども、何としても現在の公債というものは三分五厘くぎづけの状態ではいけない。さようなものについてはどうかしなければならぬということは、大いに考えなければなりません点でありますから、研究をしたいと存じておる次第であります。  それからなおお話がありました一般公債については、ごもつともでございますけれども軍事公債、特にただいま問題になつております軍事公債は、先にも申しましたように現在九割六分くらいまでは登録公債になつておりまして市場性がない。市場に輾轉いたしませんので、今回のことによつて賣り放すということも、幸いかどうかございませんので、從つてこれからくる担保力が逓減するということは、現実には起り得ないと思うのであります。なおこれは毎年拂わない。三分五厘の利息を毎年拂わずに、償還期までまとめて支拂うということのために、利廻の還元をいたしますると三分六厘五毛になる。それで第一次の支拂期においては理論的には〇・二%下る。さつき申しました心理的影響は別といたしまして、二十二銭ほど下る。理論的にはこういうことになるのであります。それから利拂延期を過ぎると、これが一般公債より高くなるということがそろばんの上で出てくる。こういうこともあるのでありまして、もし算出においてそろばんの上で理論的根拠を求めると、一應下つてそれから漸次上るということは言えるのですが、むしろ問題は心理的の問題である。その点は青木さんのおつしやる通りでありまして、かような点については十分考慮いたしますし、またこれは信用するしない問題が問題になりましたけれども政府といたしましてはかようなことは今回だけで、今後はいたしませんということを強く声明いたしておる次第でありますから、その点十分御了承願いたいと思います。
  79. 石原登

    ○石原(登)委員 さつきの松田さん、それからただいまの青木さんの質問に関連いたしまして、一つだけお尋ねしておきたいと思います。大藏大臣は先ほどから今回の措置は今回限りであつて、今後は絶対に行わないということを言明なさつておるようでありますが、このお話の中に、軍事公債は打切るベしというような思想、すなわち戰爭中に使つた金であるからこういうものは打切つた方がいい、こういう思想が今日非常に多い、こういうことを言われたのでありますが、おそらくこの思想は社会党あるいはこれに共通するところの人たちの主張であるかと私は考えます。特に社会党はこの問題を大きく取上げまして、天下にこれを打切るのだ、さように口約をいたしておるのであります。そこで問題は大藏大臣の先ほどからのお話を聽いておりますと、こういうような思想が今日あることにおいて、金融界あるいは財界各方面に相当大きな不安を來しておる。しかしながら今回の措置によつてそういうようなことが排除されて、これを端的に言いますならば、ただ單に一箇年間の利拂の停止でこれを食い止めたということは、各方面から考えて非常に結構なことだ、こういうような意味合いに聽きとれるのであります。これはさつきも青木さんから指摘されたようでありますが、私どもも聽いていてさように考えるのであります。そうだといたしますならば、從來社会党が天下に公表されてきた軍事公債打切りという問題は、あとはこれきりまつたく、さたやみになるかどうか。すなわち今回の処置は、芦田内閣の與党である社会党も、この軍事公債の問題については、今後もう取合わないのだ、今回の利拂一箇年停止で、これまでの主張はもう全然消えたのだというような話合でありますかどうか。その点が非常に重大でありますので、この点だけ一点お尋ねしておきたいと思います。
  80. 北村徳太郎

    北村國務大臣 軍事公債の元本さえも否定する思想があるということは、これは社会党がどうということでなくて、経済評論家の中にも、相当そういうようなことを今なお言つている人があるのであります。さようなことが相当不安を與えているということを申し上げたのであります。今回のことにつきましては、利拂の停止的処置を解決する懇談会におきましてもいろいろ議論が出まして、打切るベしという方の議論をした人が、一箇年を限り延期するというようなことに考えが変つてきた。從つて三党政策協定に基くあの問題は、今回これをもつて終止符をつけることになりましたので、ただいま石原委員の御懸念の点は解消したというように考えております。從つてこれはこれで終りだと申し上げたのであります。しかしこれはたとえ打切るベしという主張をしている者が内閣をとつたときには、何とも申されませんが、少くともわれわれの責任においては、そういうことはやらぬ。こういうことは明確に申し上げていいと思います。
  81. 松田正一

    ○松田委員 安本長官がお急ぎのようでありますから一言だけお伺いいたします。つまり資金計画面におきまして、私どもから申し上げますれば、保險会社の吸收する資金は、銀行の吸收する資金と性質が違いまして、長期の金を吸收するのである。それで貯蓄の面から申しますと、それを企業面に回轉せしむるとか、あるいは中央地方の要請される資金を滑らかにするという面から申しますれば、保險業者の方で吸收する資金は、一番安定して使えることになつておる。それで特に御依頼をいたして、貯蓄増強をはかつておるのであります。先ほど申しましたごとく、この利息の打切りによつて、保險契約者三千万人に対して相互会社的なやり方で、三分の配当が二分になる。それが今年度の資金割当から申しますと、昨年度は三十六億円の自由預金増加責任をもたしたが、本年度は保險会社に新しく八十億円の自由預金増額の責任を負わした。そういうところから考えていきますと、この利拂停止によつて三分の配当が二分になるといたしますれば、はたして本年度の八十億円の目標を、保險会社が達成することができるかどうか。これらの点について支障を來さぬというならば、安本長官にその理由を聽かしていただきたいと思います。
  82. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 松田委員お話のように、生命保險会社に集まる資金は、信託会社の金銭信託、あるいは債券発行銀行の債券、これによつて集まると同じように長期性をもつたものであります。流動的な銀行預金とは性質を異にするわけであります。しかしこの利拂停止によりまして、國債が利子の支拂いを受けないとはいうものの、経理上その他はただいま大藏大臣が申しましたごとく、未收益金としての計上を許されている。また金融的には、必要がある場合には、普通のビジネスとして、日銀その他の金融機関との間に、この処理ができるのでありますから、私の見ておりますところでは、また私の経驗からいたしまして、今回の國債利拂停止の処置によりまして、保險会社の資金蓄積が非常に影響を受けるとは思つておりません。ただ國債、軍事公債について、先はどうなる、あるいは利拂をさらに停止されるか、あるいは元本の停止がある。こういうようなことが起つてまいれば、もちろん影響を受けると思いますが、それもただいま大藏大臣が申すように、今回に限つてこれをするということが、法律の明文にもはつきりいたしているのであります。今後についてはそういうことをいたさないわけでありますから、御懸念のようなことはないと私は思うのであります。
  83. 松田正一

    ○松田委員 保險会社は銀行と別です。日本銀行から借りない。相手にしてくれない。さつき大藏大臣が言うたように、やはり一つの銀行を通して金融をするかもしれません。いずれにいたしましても私は本年度のことを聽いているのである。本年度三分の配当が二分になる。來年になつたら一分になるだろうということで、今年の八十億の目標を達成することができるかどうか。これに対してできるというお見透しがあるならいいが、長い間のことを言つておるのではない。大藏大臣は本年一遍やつたらやらぬ。さすれば本年度三分が二分に落ちても、來年度になれば三分になるから見送ろうということで、本年度の八十億円にこれが絶対影響がないというあなたの答弁である。
  84. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 松田委員は多少保險会社の資金運営に誤解があると思います。保險会社は私も経驗がありますが、長期資金蓄積の金融機関と見ているわけであります。それで本年度の利拂がこの收入に多少少いところがあるなら、本年度は貯蓄は集まらぬ。來年度はそういうことがないから、さらに集まる。こういうようなことは考えておらぬのでありまして、長期の資金でありますから、必ず長いことを見まして、今年度はこのくらいだ、しかし來年度からこういうように集まるというような、たとえば十年の契約でありますれば、十年先の信用程度の見透しをつけて保險契約をするのであります。そこでこの資金蓄積は、軍公の面におきましては、さような心配は要らないと私は信ずる次第であります。
  85. 松田正一

    ○松田委員 本年度新規契約は千五、六百億、その中で新しき自由預金の増加額が八十億円、こうなつておるのですから、本年度が利息が三割なら、來年度になつてはいるということになつてくるのでありますが、これはあなたの方が誤解されておるのではないですか。
  86. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 どうも私の言うのは言葉が足らぬか、こういうのであります。保險契約は今年新規契約をいたしますけれども、しかしそれはあるいは平均十年先の満期のときの確保がどうであるかを、見透しをつけて契約するのが普通であります。そこで一年だけの減收だとかその他の点において、かりにいろいろの事情がありましても、十年を通算しての確保があるならば、保驗契約は遺漏なしに行われる、こういう趣意を言うのであります。やはり新規の契約であります。
  87. 松田正一

    ○松田委員 もう押問答しておつても、これは同じことですから……。
  88. 青木孝義

    青木(孝)委員 私は安本長官にお目にかかつてお伺いするのが、今回初めてでありまして、あるいはほかでいろいろと質問があつて、ダブつておる点があるかもしれませんが、その点は御宥怒を願いたいと存じます。  まず私が経済安定本部長官にお伺いいたしたいことは四つあるのであります。第一に、本年度予算と中間安定との関係。第二が、中間安定の目標と時期並びにその具体的構想。三は、新物價賃金体系維持の見透し。第四は、企業の整理、合理化並びに中小企業振興に対する政府具体的対策並びにその指導。これだけのことを簡單に御質問いたします。  まず第一に、本年度予算と中間安定政策との関係でありまするが、さきに首相に対する質問において述べましたように、本予算政府の企図する中間安定政策とは、まつたく相矛盾するというふうに思うのであります。この橋渡しを長官はどう考えておられるか。それとも本來総合制約的であるべき本予算と、中間安定とは、政府の総合施策としてではなしに、まつたく別個に策定せられたのであるか。もしそうであるとすれば、政府政策にはまつたく科学性がない。思いつきの実驗を場あたり的にやつておられるのだというふうに考えられるのであります。いずれにしましても、いろいろの火藥箱を擁している本予算を前堤としましては、インフレ進行の急歩調を押えようとする政府の中間安定策は、一個のカリカチユアに過ぎないではないか。しかるに長官はこれをいかにして結実せしめようとするのであるが。この点をまずお伺いいたしたいと存じます。
  89. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 今青木博士からお尋ねがあつたのでありますが、これはありていに私事情を申し上げてみたいと思うのであります。この中間安定ということは、いわゆる中間安定でありますが、政府は去る五月十七日に長期計画の委員会を設けまして、それからただいま発足をして、速やかに長期の復興計画を策定しようとしておるのであります。それに現在は、殊に片山内閣からの危機突破対策というものできております。インフレーシヨンの進行の度は、なおやんだとは申さぬのであります。これを長期計画に渡りをつけますには、いわゆる中間安定策というものを、橋渡しとして考えなければいかぬと思うのであります。そういう意味におきまして、長期計画の一環としてこれを考えたいと思うのであります。しかしこの予算及び長期計画の策定というものについては、大体予算につきましては、生産増強あるいは輸入物資、あるいは國民生活賃金の問題、物價の問題、こういうようなものに一連の関連をもたして実は予算編成し、また長期計画の一環としての安定策をも今急いでおるような次第でございます。しかし長期計画を、本來言うならば、いつから始むべきかというような問題については、一應政府の試案は今年度ということになつておりますが、委員会その他の点においてどういうようになるか、まだわかりかねる点があるのであります。安定策にしましても、アメリカの予算関係、あるいは輸入物資の関係、その他の援助の関係等をもくみ合わして見る必要がありますので、これも急いでおりますが、ただいまここですぐ、かようなものでございますということを申し上げるまでに至つておらぬのであります。そこで近く安定策について具体的な内容を申し上げて、そうして予算との橋渡し、及び長期計画への橋渡し、こういうようなものをも御説明申し上げたいと思うのであります。ただいまのところでは、その筋の好意ある援助を懇請し、回答を求めておるような次第でございますので、そのときまでお待ちを願いたいと申し上げたいと思うのであります。
  90. 青木孝義

    青木(孝)委員 ただいまの経済安定本部長官の御説明は、ごもつともなところとは思いまするが、しかしこの第一次試案の概要というものを拜見してみたり、あるいはただいまのお話から承りましても、また現在の予算関係というようなものを考えましても、私どもの知りたいと思うことは、中間安定の目標と時期、並びにその具体的構想についてであります。しかしその中間安定策の着手の時期です。これはわれわれの想像いたしまするところでは、漠然と今秋というふうに考えられますし、またそんなふうにも言われておるように思うのであります。その正確な時期として選ばれるのは一体いつか、それからまたその目標はどこに置かれるのであるか、その目標や具体的な構想はどうでありましても、中間安定は米國の援助なしには不可能であるが、外資の輸入には、われわれは普通為替比率というようなことを言つておるのでありますが、そういう問題があるとわれわれが一應考える。それがためには、通貨その他を一應の線に安定せしめなければならない。長官はこの点に対して、どんなような具体策を準備しておられるか。こういうことと、もう一つは、新物價賃金体系の維持の見透しに対する質問であります。補正による現行公定價格の引上げというものは、全体として現行公定價格のおおむね七割程度の引上げに止める。そうしてやみ價格は三割六分程度の上昇に終るであろうというような予想を立てておられるようでありまするが、やみ價格がはたしてこの線で落ちつくかどうか、はなはだ疑問なのであります。それから、なるほど今年度にはいりましてからのやみ價格の上昇曲線というものは比較的緩慢であります。しかしながらこの現象は、政府の強行的な租税の徴收と、極端な政府支拂の抑制に基いておるものであるというふうに考えまするし、その抑制された政府支拂は、いずれは散布せられざるを得ないところの性質のものであるというふうにわれわれは考えまするので、しかも物價の上昇の先駆を承つておるタバコの値上げであるとか、運賃通信料金の恐怖的大幅引上げというようなものに加えて、本予算において実際的な赤字となる政府出資金價格調整費公共事業費の支出というようなものは、実に厖大な消費的な支出であつて物價騰貴をまつたく不可避的なものにすることは疑問の余地がないと思います。從つて安定帶の再版と申しますか、社会党内閣以來の安定帶の再版が崩壊することは必然である。このことは当然價格補正を参酌し、実質賃金を確保することを目的として設定された賃金三千七百円ベースを、根底から覆えすこととなるのではないか。かくして物價賃金との惡循環というようなものは、拡大された規模で再生産される。これは結局政府をして追加予算計上を余儀なくせしむるということに追込むのではないかというふうにわれわれは考えるのでありますが、長官はこれをいかに考えるか。またいかように対策ずけられようとしておられるか、この点をひとつ参考として承つておきたいと思います。
  91. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 まずお尋ねの第一の点でありますが、通貨の安定その他に関するものであります。中間安定、向うの言葉で言うならばステツプ・バイ・ステツプ・スタビリゼーシヨン、こういう言葉の方が非常に当つておるかと思つておるのでありますが、この中間安定というものをいたしますには、通貨のある安定、それは資材その他を米國その他から輸入してもらうという関係で、通貨のある種の安定が必要じやないか、こういうようなお話があつたのであります。これにつきましては、今は実は貿易資金の特別会計というものと外貨の関係とは全然切離されておりまして、その間に十分なる関連がついていないのであります。外貨の関係につきましてはいずれ講和條約その他の際に処理がきまるものと思うのであります。そこで政府政府との間の支拂その他については、通貨のある種の安定というようなことも必要でないと思うのであります。ただ民間のクレジツト、民間の資材輸入、外資の導入というものについて、それが必要でないかというお話であります。これは私はある程度の必要をもつものと思うのであります。しかしまたこれについても現在のような為替のないものについては行われませんけれども、これについても近くある種の決定があるのでないかと、その筋でも示唆されております。われわれもいろいろ交渉をいたしております。それからさらに貿易の方の関係において、今の換算比率というお話であります。いわゆる換算比率、これは補給金性の性質を多分にもつておりますけれども、そういうものについても、貿易振興の上において、國際貸借の決済をする上において、なるべく速やかにこの決定をしてもらいたいということを、その筋にもいろいろ申し出ております。これも近くきまることと思うのであります。大体そういうものがきまりましたならば、一種の中間安定的の措置ができるのじやないか、かように考えておる次第であります。中間安定のスタートの時期でありますが、新聞に出ておりました一部のこれは何ら決定を見ない、あるいは想像的記事かとも思いますが、あるいは十月からというようなことが書いてあるのであります。これは未だいつからということは申し上げられぬのであります。しかしわれわれはなるべく速やかにスタートをしたい、こういうことと、それには若干月の準備が要る、こういうことを併せ考えますと、ただちは來月からというわけにもいかぬだろうと思います。少くとも本格的にスタートするのは、数箇月の月が要るのじやないか、かように予測をいたしておるような次第であります。それから第二の点の物價賃金の問題でありますが、これにつきましては國民の平均の生活水準などを見ると、マル公による生活は二五%でございます。これは金銭の上で二五%であるのであります、マル公で價格が低いのでございます。数量の上では六五%ぐらいがマル公による生活であります。残余は自由價格の物價及びやみ物資によつておる。こういうことに相なつておるのであります。そうしてわれわれといたしましては國内生産の増強、一割増産あるいはその他の増産によつて増加と、海外輸入物資によつてこれを増加いたしまして、そうしてマル公による配給の増加を策したいと思うのであります。中間安定の中には、そういうような点に相当力を入れて檢討し、施策をいたしておるような次第であります。そうしてマル公による生活を増進する、いわゆる実質賃金を充実していくということによりまして、やみの物資による生活の依存度をだんだん少くしていくということを考えたいと思うのであります。他方におきましては昨年末から今日のただいまにかけましては、やみの上昇率は非常に下つておるのであります。ある場合は一%いくらというような数字を示しておるのであります。しかし五月、六月の物價改訂のときの基準といたしましては、それを三・四%とりまして、そういう実数を基礎にして計算したのであります。今後もわれわれはマル公による物資の増配等と併せ考えまして、これは大体維持できる、かように考えておる次第であります。この点などについては中間安定の施策のときに、さらに御説明を申し上げたいと思います。そうしてこの三千七百円は物價の中に織りこみますところの賃金水準という意味できめたのでございますけれども、しかしこれが維持については十分努めたい、こう考えます。賃金安定の問題についてはただいま関係閣僚の中でいろいろ研究をいたしておる。これも政府の態度が近くいずれきまるものと思うのであります。物價の安定につきましてはこれはもちろん既定の方針に沿うて励行すべきものは励行し、励行の必要のないもの、あるいはマル公などの維持する必要のないもの、また適せざるもの等につきましてはマル公も外しまして、そうして物の配給を円滑にするということをいたしたいと思います。そういうことによりましてこの両者の安定ということをもつていきたい、こう考えておる次第であります。そうしてこれによりまして物價賃金の惡循環を——これはなかなかむつかしい問題でありますが、これを断ち切るということによりまして、大きな追加予算が出まして、この本予算の根本を覆えすということがないように努めたい、こう考えておる次第でございます。從つて大藏大臣の申しますように、追加予算その他は考えてはおらぬ。こういう状態にあると思うのであります。
  92. 青木孝義

    青木(孝)委員 大体了承いたしましたが、どうも三千七百円ベースを維持することができるかできないかという問題については、せつかくお答えでありますけれども、どうも私にはこれは維持できないのじやないかというふうに考えられるのであります。この点はぜひ維持できるならば維持していただきたい、これもわれわれの念願であります。  最後に企業の整備合理化についてでありますが、すでに莫大な蓄積資本の破壞と喪失のあるところでは、企業がその再建と復興のために、信用造出に対してする要求は限りなくあるのであります。信用造出に対するかかる無限の要求と申しますか、大きな要求を、経済の自然的な拘束に從つて抑制するためには、どうしても資本の合理的かつ最も効率的な運用が絶対に要請されると考えます。しかるにこの点に関しましては、政府がどの程度の認識をもつておられるかは、政府の從來のこの点に対するいわば無為に徹したとでも申しますか、まことに疑問なきを得ないのであります。限りある資本を最も効率的に運用するためには、企業の整備を断行する、企業の経営を科学的な合理性の軌道に乘せることが、第一の前提條件でなければならない。しかるに政府復金の貸出に対してもその行末を提求せずに、だた貸出すことをもつて能事終れりとしているがごとくであり、またその直轉の逓信、鉄道事業を初め、民間企業の整備に対しても、労働攻勢を恐れて何らの積極的な動きも示しておらずに、いたずらにこの問題を逃避して、その責任を他に轉嫁しようとしているかの感が深いのであります。われわれとしてはそんなふうに見えるのであります。まことに遺憾千万であると存じます。さらに私は、経済安定本部がわが國の経済復興に重大な役割をもつ中小企業の振興に対して、何ら積極的な体系的政策確立しているということを聞かないのであるし、また見ないのであります。われわれの研究の不足であるか。この点について安本長官に特に承りたい重要な点と考えて御質問を申し上げる次第であります。
  93. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 青木博士のお尋ねの第一点であります企業の再建整備でありますが、これは昨年の政府の白書、今年の安定本部の報吉書にも出ておりますように、この國家の財政を再建整備すると同時に、企業を再建整備する、各自の家計を建直しすることによつてのみ、國家全体の國民経済の建ち直りができるのであります。企業再建整備が國家の財政その他の整備と同樣にきわめて大事であるということは、今お話通りであります。これにつきましては、たとえば各種の事業の戰時性といいますか、戰時的に発展した規模その他を脱皮いたしまして、これを終戰後の平和産業の規模へ轉換をしていく、こういうことが再建整備の目的であると思うのであります。そこで再建整備につきましてはこれをきわめて急いでいるような次第であります。金融機関については、この再建整備の増資の面は殘つておりますけれども、これは終えたわけであります。しかし事業については、集中排除とか、あるいは企業再建整備、あるいは賠償物資の指定その他の関係がございまして相当遅れたのでありますけれども、しかしこれは政府もつとめてこの促進をいたしておりますので、近くこの金融機関の再建整備のあとを受けて完了する、こうみておるのであります。なおこれのために企業を再建整備すると同時に、経営の合理化、殊にこういうような資金面、経営面及び営業面において経営を合理化することはきわめて重要でありますので、政府は断固としてこれをやりたい。日本経済を建直し、危機から脱却して経済復興へと向う第一の大きな目標は、企業の面においてはここにあると考えて促進をいたしておるような次第でございます。これは企業設備その他について行いますと同時に、企業資本についても今お話のように考えなければならぬと思うのであります。資本につきましては、この補償打切りその他によりまして、ほとんど、戰時中の資本は潰滅に近いものがあるのであります。資本なくしてこの企業の整備はできませんので、これからはこの企業自体の再建整備をすると同時に、企業資本を蓄積し、それを導入していつて、両方面から健全なる回復を期待する、こういうことにならなければならぬと思うのであります。大藏大臣が本会議その他においてしばしば申しておりますように、政府としては企業資本の蓄積、それがために資本の蓄積というものについても十分なる努力を拂い、なお法人税の軽減その他諸般の施策をも加えてこれを実行いたしたい、こう思つております。なお証券の民主化その他についても、その一助にするという趣意であると思うのであります。これは企業を再建整備して、そうしてさらに新らしい資金を導入して、それから生産の増強その他に向うということでなければ、ほかに適当なる方法はないと考えておるのでありまして、政府は誓つてこれをやることに邁進をいたしたいと思うのであります。制限会社あるいは特経会社等の整理につきましても、十分その筋との連絡をもちまして鋭意進めたい、こう考えている次第であります。  それから中小工業の振興であります。これは御説のように、この中小工業の振興につきましては、日本の企業の中で相当大きな部分を占めておるのであります。そうしてまた今後の平和産業の上においては相当大きな部門を占めると予定され、貿易産業の面においても、非常にそれが期待されるのであります。そこでこれら企業を振興するということにつきましては、企業廳その他を商工省にも設けておりますけれども、安本といたしましてはこれはやはり長期の経済復興計画の一環として考えたいと考える次第であります。長期の復興計画は、先ほど來申しましたようにまだ委員会で策定されませんけれども政府の試案によりましても、昭和五年から九年の水準を、昭和二十七年度において実現しようとするのでありまして、その中には各種の産業によつて、企業形態としては中小規模のものをそれに相当織りこまし、その振興その他をも考えていきたいと思うのであります。中小企業につきましては、ややもすると統一的あるいは総合的の指導、あるいは振興というような点が欠けているという点がしばしばあるのであります。そういう点は長期の復興計画の一環としてこれを考えまして、專門家をも招き、意見をも問うて、その振興の具体的策をはかつて、それを実行するようにいたしたいと考える次第であります。資材、技術の導入、あるいは金融の点についても十分考えたいと思つておる次第であります。
  94. 川合彰武

    ○川合委員 本日は野党の諸君からいろいろ質疑がありましたが、明日からわが党の立場においていろいろ質疑申し上げたい、かように予定しておるわけでありますが、その前提としてわが党の立場から、ぜひとも当局に質疑申し上げておきたい点は、郵便貯金の第二封鎖を打切るというようなことが新聞紙上に出ておるわけであります。はたしてこれは事実であるかどうかという点を、この機会にお聽かせ願いたい。われわれはその点の事実、あるいはまた当局の方針を承つておいて、税制その他の面についてこれとの関連において、いろいろと御質疑したいと考えますので、大藏大臣あるいは逓信大臣から、これに関する明確なる御答弁を煩わしたいと考えるわけであります。
  95. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいま御指摘になりました郵便貯金の中の第二封鎖を打切るということ、これはこの間の新聞で発表になりましたのは、どこから出たかよく存じませんが、大体その方向にいくようになつております。私どもといたしましては、これはもちろん政府の限られた補償金の範囲において、優先的に郵便貯金をまず救うというと誤幣がありますが、救い、それから預金部の持つておる積立金を放出して——つまり一般金融機関においては、積立金、預金部資金をもつて同様にしました。また政府がなし得る補償の限りにおいて、一般金融機関並に郵便貯金の保護をいたしたのであります。残る問題は一般金融機関において、たとえば日本貯蓄銀行のごとき、日本における最大の貯蓄銀行であるが、第二封鎖は全額であるという例があります。その他七割、五割といろいろあるのでありますが、同じような趣旨において、郵便貯金が今回第二封鎖が打切られるという運命に相なりました。その以前郵便局は特に國家直接の直属機関であるというので、何とかこれをそうならないようにしたいと存じまして、いろいろ折衝を試みたのでありますが、今のところどうも折衝の経過としては、この間新聞に出たような結果になる運命にあると考えられるのであります。なおしかし私どもは、全額でなくても、その一部分でも救い出したい、こういうような願いをまだ捨てずにもつておるのでありますが、これは今までの折衝の経過から考えまして、困難ではないかと思つております。しかし困難であつても、大いに折衝いたしたいと存じます。
  96. 冨吉榮二

    ○冨吉國務大臣 ただいま大藏大臣からお述べになつ通りでありまして、別段蛇足を加える必要はございませんが、立場柄非常に救済を熱心に考えておるのでござまいす。いろいろ困難な事情もございますけれど、今日なお希望を捨てずに努力をいたしておる次第でございます。できますならば、國会等の世論等をも應援を願つて、この目的を貫徹したいと考えております。なお大藏大臣におかれましても、また大藏省の事務当局におかれましても、私どもの趣旨に御賛成が願えておりますので、協力してこの目的貫徹に、なお努力を続けていきたいと考えております。
  97. 川合彰武

    ○川合委員 ただいまの両大臣の御答弁によりまして、打切りにならざるを得ないような運命の方向を辿りつつあるという事情は、われわれはとくと了承したわけであります。從いまして、おそらくわれわれと同様な考え方政府当局はおもちのようでありますが、われわれとしましては、いずれ後刻懇談等によりましてその詳細を承りまして、われわれの力によつて、ぜひとも大衆の零細なる預金を活かしたい、かように考えて私の質問は終ります。
  98. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大藏大臣にお聽きしたいのですが、実はいろいろな事情を承りますけれども、御承知のように郵便貯金というものは、非常にまじめな、零細な、しかも非常に大勢の人が預けておりますので、大藏省でも貯蓄獎励をやつておられる関係上、もしこういうものが打切られるということになれば、將來の貯蓄獎励はどういうような方法でやるのであるか、そのことにつきまして、大藏大臣から御答弁願いたいと思います。
  99. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまおつしやるような意味考えますから、打切りにならないように、非常に努力したつもりであります。しかるに、これは考えようによつては、國の貯蓄であろうと、貯蓄銀行の貯蓄であろうと、今日の貯蓄銀行が公共性をもつ点において、國直営と何ら選ぶところはない。特に戰時中には國家が割当てて、そして強制的に吸收して、それを運用して、國家目的に皆使つた。この点においては同様である。從つて窓口が違つても、金融機関たる点においては同じであるから、これを特に差別することは、今日のような時代の憲法の精神からいつて、どうもおかしい、こういうような議論が、ある方面において相当強いものがある。それで実はいろいろ研究をしているのでありますが、私どもといたしましては、これは皆さんがいろいろお考えになつていることと、肚の中はちつとも変らぬと思う。ただ多数の貯蓄銀行、その他の銀行あるいは農業会その他においても、政府の補償の及ばざる限度においては資本金を全額失つている。積立金も全額失つているようなところも相当ありまして、政府が直接やる貯蓄の機関について、今回のこの結果から眺めて、將來これはいろいろ方法的に改善すべき点が相当あると思う。それはここでは申しませんが、先ほど申しましたような事由で、國家の補償が同様に及ぶ。それから特に國家の預金部でもつておつた積立金の放出というようなことをやつて、そして救えるところまで救つたという点から、公共性において特に変りはない。しかも資金をこういう目的のために吸收して、同じ國家目的に使つた戰時中の金融機関であるから、これを差別することはおかしいという意見が強いために、今回はたとえば日本貯蓄銀行が全額打切になつたと同じ運命にするのが妥当であるというような御意見が非常に強いのでありまして、この点に対しまして、目下われわれは、それでは困るのだというので、大いに折衝はしております。内情を申し上げますと、以上のようなわけであります。
  100. 川合彰武

    ○川合委員 もう一つお尋ねいたしますが、國家目的のために使われたことは承知しますが、たとえば東海銀行のようなものは、第二封鎖は五割程度還元になることになつております。ところが、國家が保証しておるわずかの郵便貯金が全然打切られるということになれば、その影響は非常に甚大だと思うのであります。特にこれは農村の人々が非常にまじめな氣持で、國家を信用して出したわけでありますから、そういう点について大藏大臣も逓信大臣も一層お考え願いたいと思うのでございます。  それからう一つ附加えて御質問いたしますが、この郵便貯金の打切りは、法令で処置なさるかどうか。その点についてひとつ。
  101. 北村徳太郎

    北村國務大臣 今銀行局長が答弁いたします。
  102. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 便宜上私からお答えいたしますが、現在までの法律の構成では、金融機関再建整備法と、それから預金部損失処理法等の建前から申しますると、最後の打切るか、打切り得ないかということは政令できめ得ることになつております。しかしこれは古い法律でございますから、最後的にきめます場合には、今回のような大きな問題になつてきておる場合でありますから、法律で確定するのが至当でなかろうかと思います。なお蛇足かもしれませんが、現在提案の運びになつております金融機関再建整備法中一部改正法律案では、その点に触れておりません。從つて打切るとも打切らぬとも法案上は明確になつておりません。但しもし第二封鎖全額郵便貯金を保証するとなりますると、約五億ないし六億数千万円の保証額が増加することになるのであります。御承知のようにすでに出ておりまする交付公債の額の中では、一應これを見込んで、百七十二億と記憶しておりますが、そういう数字が組まれておりますが、ただいま提案の準備中でございます金融機関再建整備法中の改正法律案の上では、これは百六十三億ということになつております。百六十三億というのは、相当のゆとりは見てはございまするが、それだけではあるいは郵便貯金を將來法律をもつて保証するということになりました場合には、不十分かと考えられるのであります。
  103. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この問題は國民に非常に影響がありますので、ぜひとも政令でなしに、法律でやついてただきたいということを希望として大藏大臣にお願いいたします。
  104. 淺利三朗

    ○淺利委員 先刻青木委員質問に対して、各企業の資本の蓄積ということの御説明がありましたが、なお大藏大臣財政演説の際、各企業の資本の蓄積のためには、増資の方法をとらしたいということを御声明になつております。しかしこの増資については、株式の拂込とかいうものについては、各銀行においては統制がはなはだしく、個人に対する貸出しが目下できないようになつておると思うのであります。大臣の仰せられるようにすべての企業が復金に依存するという弊を改めて、各自がその資本の蓄積、すなわち株式の拂込とか、あるいは増資というようなことになつて、自己資本を充実するということは、最も必要であるにかかわらず、これが各個人が拂込の際に手もとに金がなくて、銀行から借出すという場合には、銀行が個人に対する貸出しは停止中であるということで、今日これを拒んでおるようであります。そういたしますとせつかくの方針が首尾貫徹しない、こういうふうに感ぜられるのであります。大体今日のようにすべての金融があまりに國家の統制がはなはだしい、ほとんど銀行に対しては民主化されておらない。むしろ市中銀行のごときは、その取引の対象となるところの得意先に対しては、信用その他の関係においては、最も詳しく知つておるのであります。こういう人が本当に実際に適したような資金の流通をはかるということの方が、はるかにこれは効果的であり、ただいたずらに官廳式の銀行が、國家の財政からもつていつたところの拂込によつたその金を民間に貸付ける、そうしてこげつくという問題よりも、民間の銀行を利用して、資金を運用せしむるということは、より以上効果的であると私は考えておるのであります。この点で今の株式の拂込というような場合において、市中銀行の貸出しを緩和することについて、どういうふうにお考えになつておりますか。その御方針を承りたい。
  105. 北村徳太郎

    北村國務大臣 この問題に関しましては、先ほど青木君からお尋ねがあつたのでありますが、この際注意しなければならぬことは信用の造出である。從つて信用の造出というようなことについては、相当にこれは総合的に考え、また制約的に見なければならぬし、殊に資金の効率的な、合理的な効果ということを、十分に檢討しなければならぬというようなことは、私はきわめて同感であります。今日のような時代において信用の造出が安易に行われるということはしてはならぬ。資本の安定ということは非常に声をからして言つておりますけれども、そう思わしくいかない。つまり銀行の預金が殖えると申しましても、今の状況では一種の所得預金である。所得が消費せられるまでの間の滯在であるというようなものが多いのでありまして、金額的に、貨幣数量的には、ある預金が殖えましても、これは必ずしも安定した産業資金となり得るようなものが少い。この点において長期性の貯金を獲得し、安定した預金を獲得して、信用を造出しなければならぬという点については努力しなければならぬ、かように考えております。さようないろいろの観点から、今まで企業がややもすれば安易な方法で借入金で賄つておつた。この借入金で賄うということを全部改めて、安定した自己資本によらしめるということが、一應の企業整備の金融的な途である。困難であるけれども、そういう方向へ政府としては向わしむべきものである。かように考えまして、從つて借入金のようなものでなくて、これは漸次安定した自己資本に変らしめる。自己資本に変るためには國民蓄積がなければならぬ。こういうことになるわけでありまして、從つて有價証券の大衆化、民衆化ということにも努力しているような次第であります。たとえば今お話の株式拂込に銀行は貸さぬということですが、銀行がそれを貸した場合には、それがそのまま会社の借入金に肩替りされて、依然として不安定な状態であつては、先ほど私の申し上げた信用造出が安易になるという点が注意をすべき点でございまして、これはほんとうの國民蓄積の中から賄われるようにならなければ、やはり赤字赤字である。企業の赤字が單にいくつかの数に分散されて、個人の赤字によつて賄うということになるのでありますから、かような点についてはほんとうに純粹の蓄積によつて賄うように方向を向けていかなければならぬと考えます。個人には貸さぬというお話がございましたけれども、必ずしもそうてはないのでありまして、資金の効率的な配分をいたしてやらなければならぬ。從つて資金の準則をきめて、これを改正いたしたいと存じておりますけれども、今もその点は重点的な配分をしている。國民蓄積が少いのでありますから、少い國民蓄積をむだな方に流してはならぬというので、最も効率的に運用せられるように、合理的に重点産業の方に向うようにしたい。こういう意味で重点的に処理する。不急不要と認められるものは非常に低い位置に認められていくことに相なつているのであります。これは少し別な話になりますけれども、有價証券の金融というものはただいま丙になつております。この点は今檢討されておりまして、これは独占禁止法、大財閥の解体、財産税の代納その他いろいろの点において、あるいは各特別経理会社整理等々からくる株式の放出すべきものは非常に多いのです。これを処理させるための考え方から申しますと、ただいま御質疑のような同じ意味で、有價証券に対する貸出金を、單に丙だというのでは非常にまずい。この点は非常に考慮しなければならぬと思いまして、ただいま檢討いたしておりますが、以上申し上げるような趣旨で、本当のところは長期性のものではなく、所得預金であつて、所得が消費せられる間の滯在預金というようなものでは、やはり購買力にいくのです。もつと安定した預金が殖えるような方向へ向けていかなければならぬ。かようなところに十分注意をいたしたいと存じておりますが、ただいまのところは遺憾ながら個人の借入金がいくつか集まつて、企業の借入金がカバーされるというような程度ではほんとうに本質的に変らないというような意味において、純粹な蓄積がされるようにしなければならぬ。これがためには蓄積に十分努力しなければならぬということになるわけでありますから、さような方面は今後十分に努力いたしたい、こう考えておる次第であります。
  106. 淺利三朗

    ○淺利委員 今大体の氣持はわかりましたが、実際問題といたしまして、たとえば各企業の会社が会社自体としては重要産業である。そして実際の例としては、現在その会社が復金から金を借りておる。しかしながら復金からなおこの上借りるというわけにもいかず、また償還期が來ておる。そこで自己資本を蓄積するために、新たに未拂株を徴收する。こういう場合には從來との会社に関係しているところの株主が一時に金を出すという関係から、銀行に借入を申し出るということになりますと、その事業そのものは重要産業であるが、その事業に投資するために借りる人は個人である。個人であるがゆえにそれを借入れるについては丙種の取扱いを受けるというような関係になつておるようであります。そうするとせつかくその会社が重要産業として指定されておつても、自己資本を充実するための拂込をとることが実際できない。しかも從來からその会社と運命を共にしておつた株主に力なくして、やむを得ず新興階級の人の手に渡さなければ充実ができない。創立以來それに関係した人が手を断つて、今まで事業そのものに関心なく、ただ投機的に利回りがよいからというような人の手に移るというようなやむを得ない情勢になる。こういうことはもう少し考慮すべき問題ではないかというふうに考えられるのであります。  もう一つは、そういう常に取引のある人は、ある程度の信用というものをもつておる。そこで銀行も取引者としての親しみがあり、お互いにその信用状態がわかるということであれば、その銀行に依存して、あるいは長期の預金もするということになりますが、今のように銀行に一旦預金はしてしまつた。が急に自分が一時金を融通する場合には、貸出は個人としての扱いではできないということになりますと、いきおい自分は現金でもつておらなければならないということになると思います。そういう事情をよく斟酌せられまして、市中銀行における資金の統制を、ただいたずらに強化するにあらずして、そこにいくらか生きた、効率的な、また実際に即した処置を認めるように、統制上の緩和をすることが必要じやないか、こういうように考えるのでありまして、この点について政府は至急に何とか手を打たるる考えはないかということをお伺いしたいのであります。
  107. 北村徳太郎

    北村國務大臣 きわめてごもつともな御質問でございます。私どもお話に対してはきわめて同感なんであります。先ごろ一度株式にブームが起りまして、その際に金融が放漫であつたというような意見が某方面から出まして、それがために株式資金が近ごろブームを起す結果になつたのだ、こういうようなことであつたかもしれませんが、かつて乙であつたものが丙の取扱いをしなければならぬことになつた。しかし先ほどから申しますように、將來株式を消化するということが大きな仕事であります。また勤労階級の人が一人々々は少くても、多数の人が資本的参加をするということはきわめてよいことであるし、國家としては大量の株式を処分しなければならぬのでありますから、かような観点からも考えまして、現在有價証券に対する基準が丙であるということは無理である。私卒直に申し上げまするが、さように思つておるのであります。至急に改正したい、関係方面にも十分に話をしたい、かように考えておるのであります。おそらくこの融資準則は改正を行うことができるだろう、こう思つておるのでありますので、さよう御了承願います。御趣旨は十分わかるのであります。
  108. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 きようの質疑はこのぐらいに打ち切つて、明日続行することにして本日は散会することにいたしたいと思います。
  109. 梅林時雄

    ○梅林委員長代理 御異議ありませんか。——それでは明二十二日午前十時より質疑を続行することといたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。     午後五時五分散会