○藤原
参考人 公認会計士法案の本
委員会における御
審議にあたりまして、私
ども業者の声をお聽きくださる
機会をお與えくださいましたことは、私は衷心より感謝申し上げる次第であります。
この度
政府より御提案に相な
つておりまする
公認会計士法案は、私
どもの
從來の権益をまつたく剥奪いたしておるのであります。これは
法案の第五十七條をごらんくださいますると、よく御
承知になると思うのでございまするが、第二項の第二号以下におきまして、計理士法によりまして私
どもが二十幾年の間その権益を與えられて、今日まで忠実に守
つてまいりました業務は、まことに無慈悲にもとられてしま
つておられます。すなわち第一項におまして特別公認会計士試驗を行う、その試驗を行います有資格者は、五年以上計理士もしくは第二号におきまする学者、第三号に
銀行、保險会社等の会計の事務に携わつた者、その次はあらゆる会社の会計の事務に從事いたしておりました者、その次は会計学
なり経済学を研究いたしておる者、こういうふうに定めてありますが、
從來弁護士法
なり、あるいは医師法
なり、弁理士法
なり、あらゆる自由職業を律しますところの
法律が
改正されました場合におきまして、未だか
つて既得権を剥奪いたした
法律というものは、
本法をおいてないのであります。
大藏当局のお
考えと私
どもの
考えておりますことと、非常にここに開きがあるのでございます。もしこの
法案がこのままに議会において御通過相なるといたしますならば、われわれ業者の家族、使用人の家族等を合わせまして、十数万人はただちに路頭に迷うという、悲惨なる結果を招いてまいるのであります。その生命、生活戰線を脅かすという重大なる
改正のいたし方でございまして、
大藏省の御
当局に伺いますと、既得権というものはないのであると、こう申されますけれ
ども、現在の計理士法の第一條には、計理士の称号を用いまして会計に関する檢査、調査、鑑定、証明、計算、整理または立案の業務に從事するということを、明らかに書いております。計理士の称号を用いなければどんなことでもできるのであるから、既得権でないとおつしやるのでありますが、われわれは計理士の称号を用いてその業務に從事してお
つたのでありますゆえに、これはりつぱなる既得権であると申さなければ
なりません。その既得権をばこのたびの
原案によりますと、全部剥奪いたしてある。これが私
どものどうしても——平たい言葉で申しますと承服しかねるところでございますので、この点をぜひとも御是正願うように、私
どもはお願いいたしてみたいと
考えるのであります。それからものは多年の経驗をもちますほど、大きな力をもつものはございません。今この特別試驗を行うといたしましたならば、実際の結果といたしましては、こういう結果を生むと思うのであります。何ら間に合わないところの、学校を卒業してすぐ出た者が、ただちに試驗に合格いたしまして公認会計士と
なり、多年の間りつぱな経驗を積み、社会の信用をもち、多年の苦労を積んでまいりました者が、みんな洗いさらわれるということになるとわれわれは
考えるのであります。この既得権を認めましても、絶対に國家に害毒を流すものじやございません。國家はむしろ益にこそなれ、損失を招くものではないということは、現在業務に從事しております者は、わずかに三千人に足らないのでありますが、その一割に満たない約二百人の者が十年以上でございます。五年以上といたしますと千五百名ぐらいでありまして、千五百人ないし二百人といたしますならば、それらの者はまつたく社会の信用と相当の地位をも
つておりまして、そして國家のために今まで盡してまいりましたものでございます。從いましてこういう者に対しましては、既得権を全部お認めくださるように、私
どもはお願いいたしたいと思うのでございます。
その次は現在の
日本の経済情勢からまいりますすと、今
政府が提出いたしておりますような高度な公認会計士のほかに、現在の計理士のごとき
程度の者がまつたく必要であるのでございます。試みに計理士法は昭和二年に公布されまして、何ら法の恩惠がないにもかかわりませず、今日かくのごとく盛大に相な
つてまいりましたゆえんのものは、ほかならずして現在の
日本の経済情勢に適合いたした
制度であつたと申して差支えないと思うのであります。また現在の
日本の経済情勢では、現在のような計理士を要求しておるのであります。從いまして今度の
法案を拜見いたしますと、経理士法は廃止いたしまして、二箇年の後には計理士はなくなるというのでございますが、これは何としても現在の計理士そのものは存置して置かれる方が、國家のために私はよろしくはないか。現在の経済情勢、
日本の経済組織の上から申しましても、絶対に必要なことであると私は確信いたしておるのでございます。
それから第二條第二項第二号以下第六号までのものは、
從來法律が與えられた権利もなければ保護もなかつた。また
法律の取締りも受けておらなかつた人に対しまして、今度は
法律によ
つて新たなる既得権を附與するということに相なるのでございます。すなわち特別公認会計士試驗を受けるということは、
一つの既得権であると見て差支えないと思うにであります。その権利の何らなかつた者に、新たに附與するということは、何としても私
どもの
考え得られないところでございます。
また
本法のうちで十七條に、三年に満ちますると、登録の効果が喪失するのであります。かような登録
制度、自由職業の登録の更新を設けられた
制度も、また初めてでございます。弁護士
なり医師
なりにおきましても、三年くらいで登録の更新をいたしまするならば、
政府も申請者も、ともに煩雜なる手数を要するばかりでございまして、それのみに忙殺される。でございますから少くともこれは五年くらい延長するのが正当ではなかろうかと、私
どもは
考えておるのでございます。
それから
本法のうちの第九條でございます。これは学者
なり特権階級にのみ試驗の一部を免除しようというのでありますが、さような人はみずから進んで第五條の試驗を受けるのでありますから、さような特権を與える必要はない。すなわち五十七條の第二項以下とにらみ合わせまして、まことに不合理な成文であると私
どもは信じておるのであります。とりもなおさず私
どもの既得権は、何としてもこれを認めてもらわなければならぬと思うのであります。もしそれ既得権を認められないといたしますならば、國家はこれに対して生活の補償をいたされる義務があるのではないかしらぬというふうにまで、私
どもは
考えておるのであります。もちろんこれに対しましてはさような犠牲者に対しては、國家が何らかの補償をされるかも存じませんが、おそらくそういう御用意があるかということも、私
どもは危惧に
考えておるのでございます。
さような
意味合いでございまするから、ただいま申し上げたように五十七條の全文をお改めを願いまして、既得権を認める。すなわち既得権は十年以上の者に対しては選考かその他の適当なる方法によりまして、管理
委員会においてこれを認める、そうして新法の資格を與える。五年以上の者に対しては特別公認会計士試驗を課して、公認会計士となさしめるというふうに改めていただきたい。
それから
法案の名称でありまするが、公認会計士という言葉は、まことに現在の情勢に合わないと思うのでございます。これは現在の計理士法に対しまして、いわゆる非計理士が使
つておりますものは、会計士と称して計理士と類似の行為をや
つております。それがちようど公認会計士法という
法律ができますと、何らかまぎらわしい感じが起るのでございます。社会観念から見ましても、おもしろくないものではないかしら、こういうふうに
考えまするので、これを公認計理士法と改めていただくならば、私
どもの幸いこれに過ぐるものはないと思うのでございます。
以上が
政府の御提出に相な
つておりまする
法案に対しまする私
ども業者の、かえていただきたいと思いまする意見の大要でございます。以上をも
つて私の話を終ります。