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北村國務大臣 保險募集の
取締に関する
法律案につきまして御
説明申し上げます。保險
会社が現在のインフレ下において健全経営を続けるためには、どうしても新しい契約を大量に獲得し、その收入保險料を多くしなければならないのでありますが、それはあたかも一般
企業において生産をおげることが緊急の目標であるのと同様であります。生命保險
事業におきましては、新契約獲得及び收入保險料増大に格段の
努力をいたし、その成績はきわめて顯著でありまして、その結果として現在まで各社とも健全経営を維持してきたのでありますが、その反面といたしまして、何でも契約をとりさえすればよいものだというような氣持から、とかく募集が紊乱して、保險契約者保護の見地からも、また保險の信用保持の見地から言
つても、このまま放置できない状態に立ち至
つているのであります。また損害保險
事業におきましても、いわゆる自己代理店、その他不健全な代理店がはびこる等の事態が発生しているので、これに対し適切な
調整を加える必要が起
つているのであります。
ところで生命保險においても、損害保險においても、保險契約の募集にあたる者は、大部分は保險
会社と独立の商人であるところの生命
保險募集人、または損害保險代理店と言われるものでありますが、
政府は、生命
保險募集人、または損害保險代理店に対して、保險業法に基く直接の
監督権がないのであります。從いまして
政府は保險
会社に対して
所要の命令をなし、その上で保險
会社が生命
保險募集人または損害保險代理店に対して適当な処置をなすというふうに、その
監督が間接的とならざるを得ないのであります。
政府が直接生命
保險募集人、損害保險代理店、その他募集を行う者に対して
監督権をも
つて、その素質を向上させるためには、免許
制度を採用することが理想でありますが、その前提として、とりあえず登録
制度を採用することが適当であると考えられます。
次に、募集の適正を期するためには、募集行為に規制を加え、不正な募集行為に対し刑罰を科し、
政府が直接これを
取締り得ることとし、不正募集行為排除の実をあげるべきであります。かくして登録
制度と不正募集の
取締りと相ま
つて、募集の健全化を推進することができると考えられるのであります。
保險業法の
全面的改正は目下準備が進められており、募集に関する法規はその一部を構成するものでありますが、
保險募集の現状に鑑み、緊急に対策を要するものと認められますので、ここに別途單行法を制定し、至急実施いたしたいと存ずる次第であります。なお保險業法
改正の際には、登録
制度を免許
制度に改め、本法はこれを保險業法に吸收される所存でありますことを申し添えます。
この
法律案の要旨は、大体次の通りであります。第一に、生命
保險募集人、損害保險代理店及び募集を行う保險
会社の役員、使用人は、大藏省に備えられた
登録簿に登録することを要することとし、登録に場合においては、登録手数料を徴することと
なつております。
第二に、保險
会社の役員、使用人、または登録された生命
保險募集人もしくは損害保險代理店でないものの募集は禁止されます。
第三に、保險
会社は、生命
保險募集人または損害保險代理店が、保險契約の募集について保險契約者に加えた損害を賠償する責に任ずることとし、たとえば生命
保險募集人が保險料を使いこんだ場合は、
会社が直接賠償
責任を負うことと
なつております。
第四に、募集用の文書、図画に記載する
事項について制限をなすとともに、募集行為について必要な規制を加え、一般大衆が保險に対する知識の乏しいことを奇貨とし、不徳義な行為をなすこと等の絶滅を期しております。
第五に損害保險代理店が、その主たる目的として、自己または自己の使用者のため保險契約を募集することを禁止いたしました。
第六に
大藏大臣の、生命
保險募集人及び損害保險代理店に対する檢査の権限、その他必要な
監督の権限を
規定するとともに、
所要の罰則を設けたのであります。この
法律案の要旨は大要以上の通りであります。
以上ただいま
提出いたしました九件につきまして、何とぞ速やかに御
審議の上、御賛成あらんことをお願い申し上げる次第であります。
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