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1948-04-30 第2回国会 衆議院 財政及び金融委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月三十日(金曜日)     午前十一時五十分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 塚田十一郎君 理事 中崎  敏君    理事 梅林 時雄君       青木 孝義君    大上  司君       島村 一郎君    苫米地英俊君       松田 正一君    宮幡  靖君       川合 彰武君    川島 金次君       河井 榮藏君    田中織之進君       林  大作君    八百板 正君       金光 義邦君    後藤 悦治君       中曽根康弘君    長野 長廣君       内藤 友明君    藤田  榮君       本藤 恒松君    堀江 實藏君  出席政府委員         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         大藏事務官   村上  一君         商工政務次官  正木  清君         商工事務官   松田 太郎君  委員外出席者         商工事務官   永山 時雄君         專門調査員   圓地與四松君         專門調査員   氏家  武君     ————————————— 本日の会議に付した事件  小額紙幣整理法案内閣提出)(第四〇号)  不正保有物資等の対價を登録國債で決済するこ  とに関する法律案内閣提出)(第四三号)  不正保有物資等特別措置特別会計法案内閣提  出)(第四四号)  金資金特別会計法の一部を改正する法律案(内  閣提出)(第四九号)     —————————————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 会議を開きます。  小額紙幣整理法案不正保有物資等の対價を登録國債で決済することに関する法律案不正保有物資等特別措置特別会計法案金資金特別会計法の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題とし、質疑をいたします。内藤君。
  3. 内藤友明

    内藤委員 小額紙幣整理法案につきまして、きわめて簡單なことをお尋ねいたしたいと思います。この整理法によりまして整理されまする五十銭、二十銭、十銭の小額紙幣が全体でどれくらいの金額になり、それがどれだけの枚数があるのか、お調ベがありますればお聽かせ願いたいと思います。
  4. 荒木萬壽夫

    荒木政府委員 ことしの二月末現在の発行高を申し上げますると、臨事通貨法によります五十銭券が十一億四千七百十三万二千円、大正六年及び同九年の分が一千七十六万三千円ということに相なつておりまして、その内訳を申し上げますと、五十銭券が五百十九万八千円、二十銭券が百八万二千円、十銭券が四百四十八万三千円、合計いたしまして十一億五千七百八十九万五千円、こういうふうになつておるのでありますが、このうちの約二割くらいが災害等によりまして滅失したのではなかろうかと推定しております。そういう推定に從いますると、結局約九億円見当だと思われるわけであります。
  5. 内藤友明

    内藤委員 このごろインフレになりまして、物の値段が非常に高くなつたのであります。そこでこのごろこういう五十銭、二十銭、十銭という物の値段單位がなくなつたような経済状態でありますが、これらをやはり從前通り発行せられなければならぬのでありましようか。それに対する御意見と、それから百円というのは非常に大きな紙幣でありまして、このごろは鞄でも持つて歩かないと、買物をする金を持ち歩きにくいような時代になつてきておるのであります。この際政府は百円以上の紙幣を発行せられるお氣持がありますかどうか。戰爭中千円というのが出ておつたのでありますが、ああいうふうな紙幣が出ますると、まことに便利なような氣がするのでありますが、それらに対してどういうような考えでありますかお聽かせ願いたいと思います。
  6. 荒木萬壽夫

    荒木政府委員 お答え申し上げます。インフレが高進しておる情勢下において五十銭とか二十銭とかいう小さなものは要らぬのじやないかという御説は一應もつともでございますが、ただ実際問題といたしましてまだ家庭配給とか、税金支拂とか、あるいは新聞紙購入代金支拂とか、そういうような場合には、やはり五十銭單位のものが必要でもございますし、また最近の実況におきましても、大体月々二千数百万円くらいの小額紙幣需要増があるようでございます。從いまして御説のような実情も一面にございますけれども、今すぐこれをやめるのも適当ではなかろう、こういうことでこの措置を講じておるわけでございます。また一面インフレが高進しつつあり、さらに高進するであろう、從つてまた御説のような考え方が必然的に起きてくるわけでありますけれども、こういうものを廃止することによつて、さらにさような考え方が必要以上に高進するおそれもございます。インフレの高進というものは、多分に心理的な影響によつて必要以上に幅を拡げられる傾向もございますので、そういうことも併せ考えまして、こういう小額紙幣を依然として発行することにいたした次第でございます。なお反面におきまして、面倒だからもつ高額紙幣を発行したらいいと思うが、そういう考え方があるかどうかというお尋ねであつたかと存じますけれども、これはずいぶん以前にそんな噂を私も聞いたこともございますが、よく調べてみますると、そういうことは政府としては今まで考えたこともなく、今後もさような措置を講じようとする考えはございません。と申しますのは、もちろん便宜的な見地だけから申しますれば、御説の通りのことも考え得るわけでありますけれども、先ほども申し上げましたように、インフレには心理的な影響が非常に多いということもあります関係からいたしまして、高額紙幣発行等は、さような見地から考えるべきでない。かような見解をもつておりまするので、御了承いただきたいと思います。
  7. 内藤友明

    内藤委員 最近方々でよく見受けることでありますが、通貨に対する國民尊重心というものが非常に薄らいできたようであります。五十銭の紙幣が落ちておりましても平氣で踏んで行く。十銭紙幣が落ちておつても拾おうともしないというふうに、まことに昔に比べまして通貨に対する尊重心が薄らいだと思いますが、これらに対してなんらか政府は手をうたれなければならぬと思うのであります。もちろんインフレ下におきましては、一片の紙屑よりも値打のないものであるかは知れませんけれども、政府はこれが物の交換の大事な基礎をなしておる通貨であるとして出しておられます以上は、こういう世相に対しまして、漫然と放つておくということはどうかと思うのでありますが、そういうことに対します政府の御所見を伺いたいと思います。
  8. 荒木萬壽夫

    荒木政府委員 御説ことごとく同感でございます。本会議におきましても、かつて今のお尋ねと同樣の趣旨におきまして、同僚から御激励をいただいたことを私も記憶しておりますが、政府といたしましても財政の健全化をはかるとか、あるいは外資の導入に努力するとか、一連のインフレ克服対策を極力講ずる半面におきまして、貯蓄思想普及徹底という事柄を通じまして、御説のような思想の涵養に努めるということも、これまた國会の御鞭達御協力を得て実施しておるわけでありますが、今後におきましても、もちろんお説のような趣旨において、あらゆる対策を講じ、実践してまいるべきものと存じております。
  9. 内藤友明

    内藤委員 この小額紙幣整理は、本年の八月三十一日までで使用が禁ぜられまして、そうして來年の八月三十一日までにこれを取換えられるのでありますが、これをよほど國民全般周知徹底せしめないと、これに漏れる者があるのではないかと思うのであります。山間僻陬の土地におきましては、後生大事と財布の奥底深くこれらの紙幣を持つておると思うのであります。一片ポスターを出しましても、これらを持つておる年寄りその他の者は、そういうポスターは何のポスターであるかわからないというふうなこともありますので、おそらく來年の八月三十一日まで引換えない者が相当にあると思うのでありますが、それらに対しまして、どういうふうな御処置をなさるのか。お伺いしておきたいと思います。
  10. 荒木萬壽夫

    荒木政府委員 ただいまのお説もまたごもつともでありまして、御懸念のようなことがあろうかと存ずるのであります。從いましてこの法律が実施されるようになりましたならば、なるべく速やかに回收しますように、新聞その他の機関を通じまして、周知徹底をはかりまする所存でございます。以上簡單でございますが、お答え申し上げます。
  11. 内藤友明

    内藤委員 今政務次官お話に、新聞廣告というお話がありましたが、山の中では新聞なんかなかなかいきませんし、またそういうふうなものを読めない連中が持つておることになるのでありますが、新聞に出したり、ポスターを出したり、あるいはラジオ放送をするくらいでは、とうてい私は周知徹底ができないと思うのであります。これらについて具体的にどういうことをなさるのか。もしそれらが來年の八月三十一日限りにおきまして交換できないことになりますと、大事な財産がなくなることになりますから、これはその人にとりましてはたいへんなことだと思うのであります。きわめて親切に、そういうふうなことをよく徹底するようにしてやらなければならぬのじやないかと思うのでありまするが、そういう点からしまして、今のお話はまことにどうもきわめてあつさりした、つれない、人情味のないお話のように思うのであります。重ねてこの点は大事なことでありますから、お尋ねしておきたいと思うのであります。
  12. 荒木萬壽夫

    荒木政府委員 つれないようなことを申し上げて恐縮でありますが、実際におきましては、通貨有効期間というがごとき点は、新聞紙そのものをお読みになりませんでも、おのずから口傳てに傳播してまいる筋合いのものかと存じます。のみならず新聞だけに限りませず、大藏系統末端機関を通じましても、極力周知宣傳をはかることは当然でございまして、必ずしも先ほど申し上げたような事柄で、周知徹底がはかりかねるというふうにも思えない次第であります。また実際がお説のようなことになりませんければ、御懸念のようなこともあり得るのでありまするから、十二分にその点は考え合わせまして、御趣旨に副いたいと存じます。なおこの問題はその筋からの慫慂が非常にございまして、こういう措置を講ずることになつたやに聞いておるのでありますが、もつと手取り早くやつつけたらどうかというふうな意向もあつたやに聞きますけれども、今御指摘のような懸念もございまするので、相当有余期間をおくということで話がおちついたように承知いたしております。それ自身は理由として申し上げかねますけれども、一面そういうことがあることをひとつ御了承いただきたいと思う次第であります。
  13. 内藤友明

    内藤委員 ただいまの小額紙幣のことにつきましてはそれだけにしておきます。不正保有物資等の対價を登録國債で決済することに関する法律案に連関したことを一つお尋ねいたしたいと思います。それは登録國債で決済いたします不正保有物資または過剩物資の対價は、どうしておきめになるのでありますか。もちろんマル公でありますが、これは入手当時のマル公によるのでありますか。それともこのごろのマル公によるのでありますか。またそれらのおきめになる対價というものは、どういう法律根拠によつておきめになるのか、その点をお示し願いたいと思います。
  14. 松田太郎

    松田政府委員 第一の点につきまして、不正保有物資につきましては入手当時の統制額というものによつて買いつけますし、また過剩物資につきましては、現在の過剩物資買上げます。当時の公定價格による統制額によつて買いつけます。なおその根拠につきましては臨時物資需給調整法に基いて、先般制定公布せられております過剩物資等在庫活用規則その他に基いて、今の統制額がきまつておる次第であります。
  15. 内藤友明

    内藤委員 もう一つ、これもきわめて簡單なことでありますが、この法律によりまして公布されます國債はどれだけになるのでありますか。お尋ねいたしたいと思います。
  16. 松田太郎

    松田政府委員 これにつきましては先般來申し上げておりますように、調査の結果どの程度そういう措置を講じ得るかということによつて決定するわけでありますが、今日の大体の見透しといたしましては、一年間に、特に二十三年度におきまして十四億余と考えております。
  17. 大上司

    大上委員 内藤委員関連質問をさせていただきたい。國債推定総額が大体二十三年度一年間に十四億円と言われたように思います。この法律の表題としまして、不正保有物資等の対價を登録國債で決済することに関する法律案、こうなつております関係上、私たちが解釈するところによれば、隠退藏物資であるとか、あるいはその他在庫登録をしないもの、かように解釈するのです。そうすれば全体として國家にまだこれだけの数字がある、あるいはこれをやみ値と申しますか、國民相場といいますか、こういうようにすれば、ずいぶん多額のものが在庫するように見受けられます。これはどういうような観点をもつて、どういうような推定でこの数量が出たのかという、その根拠を承りたいと思います。
  18. 松田太郎

    松田政府委員 この不正保有物資並びに過剩物資というものの一應の定義につきましては、御案内のごとく過剩物資等在庫活用規則に出しておるのでありますが、不正保有物資につきましては、大体どの程度登録國債買上げる見込みか。今のような数字のうちに含まれておるかということにつきましては、大体御承知のように、一昨年以來隠退藏物資その他につきまして、安定本部中心になつて買上げ等措置を講じました。その経験、実績等に徴しまして、大体計算をいたしております。なおまた過剩物資等につきましては、今回過剩物資等につきましての在庫調査を、三月三十一日現在でいたしておりますが、大体その線に沿つて集まりつつありますものに基準を置きまして、今申しましたような両方合計しまして十四億程度のものが、まず大ざつぱに見まして今年度に買上げを要するものではないか、かように推定いたした次第であります。
  19. 大上司

    大上委員 ただいまの御説明で大体のアウト・ラインはわかつたような氣がするのですが、もう少し具体的に何か資料、あるいはこの買上げ数量が十四億なにがしと出ておる関係上、大体の数字があるように私は察知しておりますが、この点の有無をお尋ねします。
  20. 永山時雄

    永山説明員 こまかい数字でございますので、私から代りましてお答え申し上げます。不正保有物資につきましては、ただいま政府委員の方からお答えいたしましたごとく、從來御承知経済安定本部監査局系統で、隠退藏物資摘発をいたしておるのでございます。その実績を一應基準にいたしたのでございます。その実績は、これは安定本部本部摘発いたしたものと、それから経済安定局摘発をいたしたものと両者あるのでございます。安定局の方につきましては、これはまだ摘発の業務を始めましてから日が淺い関係からいたしまして、必ずしも一年間の実績をとり得ないのであります。從つて安定本部本部実績と、それから安定局実績とを、それぞれ年間に一應引直しをいたしますと、公定價格にいたしまして約六億五千万円ほどの摘発実績推定されるのであります。これを事の性質上、不正保有物資につきましては、今後どのくらいあるかということは、はなはだ推測が困難でありますので、一應この特別会計経理関係基礎とする数字といたしましては、ほぼその三倍程度ということに推測いたしております。それから過剩物資につきましては、これは昨年の一月に制定公布いたしました指定生産資材在庫調整規則という規則があるのでございますが、これの届出実績、つまり過剩分の約三分の一程度を、今後新しい過剩物資等在庫活用規則による買上げ数量の過剩物資については、その三分の一程度推測をいたしまして、これを約三億円程度推測をいたしました。彼これ合計いたしますと、物資の賣拂代金としましては約二十億程度のものが予想されるのでありますが、そのうち現金交付の分を引き、その他の経費を引きまして、結局國債発行といたしましては十四億程度に一應推定いたしておるわけでございます。
  21. 中曽根康弘

    中曽根委員 ちよつとお尋ねいたします。不正保有物資ないしは過剩物資で、今まで安本摘発をされたりして活用されたものが相当あると思います。今度こういう法律をつくつて相当強権をもつて國民経済の再建をやるという趣旨は了とするのでありますが、今まで摘発され、また召上げられた品物がどういうふうに活用されたかということが、われわれにとつては一番関心事でありますので、その具体的な説明をひとつしていただきたいと思います。
  22. 松田太郎

    松田政府委員 今日まで隠退藏物資その他の名目のもとに、安定本部中心になりまして、これの吸收に努めてまいつたのでありますが、大体その集めましたものにつきましては、これは纎維関係でございますとか、あるいはゴム、皮革の関係でありますとか、いろいろ種々雜多なものがあるわけです。從つて今日の物資需給関係から、できるだけこれを最も必要とする産業方面に配分しなければならぬのでありまして、それについては今申しましたような生活物資というようなものにつきましては、できるだけ炭鉱あるいは農村向けでありますとか、あるいは鉄道方面の從業員に向けるとかいう方に、重点をおいてやつております。また生産財等につきましては、同じく石炭、鉄鉱といつたようないわゆる重点産業と申しますか、そういう方に向けてまいつておるのでありますが、ただいまその数量等につきましては、手もとに詳しい数字を持つてまいりませんでしたので、ちよつと数字等について詳しく申し上げることはできませんが、大体今申しましたような線に沿つて配給の方はいたしておるのであります。
  23. 中曽根康弘

    中曽根委員 ひとつ具体的な数字を今度お示し願いたいと思うのでございます。適当な單位を設けて何を何トン、どこへ活用した、そういう数字が、かつて隠退藏物資委員会でいろいろ騒がれた、ああいうものに対する一つの参考的な数字にもなりますので、資料をぜひ提出していただきたいと思います。
  24. 松田太郎

    松田政府委員 これにつきましては隠退藏関係不当財産関係委員会の方にはすでにお出ししておると思いますが、なお安定本部の方とも相談をいたしまして、できるだけ差上げることにいたしたいと思います。
  25. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 暫時休憩して懇談会を開きたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 暫時休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後二時六分開議
  27. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  小額紙幣整理法案不正保有物資特別措置特別会計法案金資金特別会計法の一部を改正する法律案に対する質質疑はございませんか。質疑なしと認めます。それでは以上各案に対する質疑を打切りまして、これより討論採決に入ります。お諮りいたしますが、討論は省略して採決いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。右各案を原案通り可決することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議はないようでありますから、原案通り可決いたします。     —————————————
  30. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に不正保有物資等の対價を登録國債で決済することに関する法律案議題とし、質疑を続行いたします。松田君。
  31. 松田正一

    松田委員 簡單討論に入る前に申し上げて、当局の御答弁願つて記録をつくつておきたいと思うのであります。この案でありますが、なるほど所有いたしておるものは不当に物を持つておるというのでありますから、ほかの口実によつて沒收されてもやむを得ないものもあります。また過剩物資等につきましては、相当價格で買い上げるというのでありますから、別にこれは異議もないようでありますが、ただこれをやつたあとの問題であります。こういう議案につきましても、一通り議会國民の代表でありますから、國民を弁護するために、あるいは公債の利息を上げたらどうか、あるいは融通性をもたしたらどうかというような意見も当然出るのであります。しかし物を過剩に持つておるというようなことからこの案ができたのでありますからやむを得ませんが、しかしこれをやつたこのあとがどうなつていくかと申しますと、この物が社会に流れて消費者の手に渡るまでに政府消費者との中に介在をいたして暴利をむさぼる者があるのではないか。今日までの事例を申し上げますと、こういう場合には必ず政府と買う者との間に介在をいたして暴利をむさぼつておる者がある。現物でもつて税を納めた、その物を政府が賣却する場合に、中に介在をいたしていろいろな方法を講じて暴利をむさぼる、中には官吏と結託をして、私利私欲をたくましくしておる連中があるが、この物資政府買上げて、公債を渡して、それから一般消費者に移る場合には、こんな世間の話題に上るようなことがないのかどうか。これを考えてみますと、本案がこの議会に提出されて以來、すでに安本にそういう筋の者が押しかけて行つて、それを政府買上げた場合に自分の方に買取るとか、あるいは周旋させてくれというような運動が、もうすでに起つておるということは事実であります。そうすると、この物資を過剩に持つておる者、これはあるいは利益を得んとして持つておるのでありましようから、それは惡いには相違ないですけれども、それよりもなお惡い結果になつてくる。今持つておる者が処分するよりも、まだひどい暴利をむさぼる者ができてくるんじやないかと思われる。これを買上げた上で、なるほど六十日の期間がありますから、この間に大分は整理をされるのでありましようが、大藏省もそこをねらつてつて國民にあまりに迷惑をかけることのないように、こういうふうにしておるのでありましようが、その期間内に処分のできなかつたものにつきましては、その買上げ公債を渡す。そのもの処分するには政府はどういうふうな方法をもつてこれを処分するのか、今日まで税金現物支拂つた場合の結果のような、いろいろ話題に上るようなことをきめられるのであつたならば、これはむしろ持つておる者にしかるベく処理させた方がいいんじやないかと思われる。この点についての政府のとるべき方法につきまして、今までいろいろと中に介在してもうけた者があるが、そういうことをやるのか、やらぬのか。もしやらぬのだつたらこれをどういうふうにして取締つていくか、どういうふうにしてこれをさばいていくのか、この点について政府答弁を伺いたいのであります。
  32. 正木清

    正木政府委員 お答えいたします。だんだんの御意見でございまして、ごもつともな御意見だと存じております。商工当局といたしましてもその点については十分細心な注意を拂いまして、ただいま御意見のあつたようなことはないように、最善の方法を講じたいと、かように考えまして、ただいま事務当局の方においても、それらの処置について現在研究中でございます。
  33. 松田正一

    松田委員 その通り一遍の御答弁を得るだけで、自分としては満足できないのであります。それはその通りでありましよう。けれどもそれが実際においては行われないのであります。それでこれはややもすると官吏の方も相当手心を加えたようなことに進むんじやないかということは先ほども申しますごとく、税金の代りに現物支拂つたものの処分についていろんなこともあるのでありますから、きつとこれについても出てきます。それについては事務当局において研究しておると言つておられるが、そんなことだけではちよつと満足できないんです。で政務次官は何とか、そういうことはこういうふうにしてここへ渡して、そうしてこれをその者が政府との関係においてこうして処理していくんだ。横流しをしない方法、また價格の上につきましても、公定買上げたものなんだから、それを高く賣るのは今の財政問題から見ますと高く賣つてもよろしいけれどもその中へ介在した個人に利得をとられるようなことであるならば、むしろ今持つている者に相当処分をさせた方がいいんじやないかと思われる。事務当局は今おりませんが、どういうふうにしてそれを防ぐことができますか。その点を伺いたいのであります。
  34. 正木清

    正木政府委員 率直にお答えいたしますと、実は本委員会においても、ただいまの御質問の御意見が出ましたようなことが実は出たわけであります。そこで私といたしましても、ごもつともな御意見であるというように感じたものですから、この点について種々の事務当局意見等も徴して見たのであります。特に私自身が強く感じました点は、この不正物資と見らるるものもそうでありまするが、過剩物資に対する取扱いについては、相当に愼重を期さなければいけないのではないかという一点であつたのであります。それでただいまの御意見では今ここで具体的な方法を示してはどうかということでありまするが、未だその結果等については私聽いておらないのでありまして、御意見の点はごもつともでありまするので、十分その点については最善の注意を拂いたい。かように感じておりますので、この程度でどうか御了承を願いたいと思います。
  35. 松田正一

    松田委員 私はこの政府の提案した案につきまして、かりに今過剩物資をもつている者は、法網をくぐつて不正な物をもつているのであるから、これはいかぬことはわかつておりますが、しかし一應政府で今買上げられる場合は、その買上げられる國民の身にもなつて考えてやつて一片の弁護をしてやるのが、われわれに課されている務めではないかとも思われるのであります。それでこれを買上げてこれに與える公債も、融通性のない登録性のもので、十年の間これをもつておるとすれば、十年後の通貨價値というものは、今から換算すればよほど價値の低いものになるのではないか、さように解釈いたしますれば、これはほとんど沒收されると同様のものである。それを今政府買上げて、政府の財政の切り盛り上、それを一千万円で買上げるというならば、それを公定價格の五倍に賣られようが、十倍に賣られようが、これはやむを得ないが、先ほど申しましたように今の御答弁からいうならば、必ずその中に介在する者があつて、いろいろな運動の結果、その物をまた横流しをして、そうしてその間にさやをとり、手数料をとり、日当をとり、旅費をとるというようなことで、これを消費者相当高い値で賣りつけるんじやないか、この疑いがないということがはつきりいたしますれば別であるけれども、それが今日までのような形勢から考えてみますと、今答弁をされたようなことで政府を信頼して、この案に賛成をすることは実は私は困るのであります。しかしこれも大藏省側から、持つている者に対して何とか有利な解決のできる途はないかと、いろいろその筋に交渉もしていただいております。そういうことの交渉の結果ここに落ちついたのでありますから、大藏省がこの案を提出されるまでの行為に対しましても、今日までに質問も大体つきているようでありますから、これ以上われわれの方でもこれを認めないということも言えぬかもしれない。この意のあるところを、本会議において委員長の報告のときに、こういうおそれのないようにするために、政府は最善の注意を加えるようにという、締めくくりの言葉を述べていただきたい。  なお塚田君からいろいろお話もあり、質問もあつたのでありまするが、これらの点は一應國民を弁護する立場に立つて申したのでありますから、こういうことがあつたということを述ベていただきたい。討論は別といたしまして自分としては意見を申し上げておきます。
  36. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ほかに御質疑はございませんか。    〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 質疑なしと認めます。それでは本案について討論をいたします。川合君。
  38. 川合彰武

    ○川合委員 ただいま議題となつております不正保有物資等の対價を登録國債で決済することに関する法律案に関しまして日本社会党を代表いたしまして本案に賛成するものであります。しかしながら質疑の過程におきましていろいろと申し上げました通りに、本法案は種々な観点から相当に論議の余地のあるものでありますが、日本の経済再建のためにやむにやまれない一つの法案というように考えるわけであります。しかしながら問題はこの法案の運用いかんということが大きな課題をなすわけでありまして、われわれは政府質疑の過程における御答弁を信頼して、本法案に賛成するものであります。
  39. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 中曽根君。
  40. 中曽根康弘

    中曽根委員 民主党を代表いたしまして本案に対して賛成の意を表します。本案はインフレ克服の緊急段階における現在においてはやむを得ない法案であります。ただわれわれが心配いたしますのは、この運用が適切に行われるかどうかという点であるわけであります。  まず第一には、ただいま民主自由党の松田先生からもお話のあつた通り、二箇月の期間においてこれがやみやその他に流される、経済混乱を惹起するという点であります。  もう一つは一旦公團その他に召し上げられた品物が、はたして有効適切に國民経済に活用されるかどうかという点であります。この点については関係当局からも誠意ある答弁がありましたが、特に後者については本委員会に対して召し上げた物資の活用の結果について、適当な時期に報告する等の措置を講ずるように政府希望いたして、本案に賛成するものであります。
  41. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 塚田君。
  42. 塚田十一郎

    ○塚田委員 私は民主自由党を代表いたしまして本法案に賛成の意味の討論をいたしたいと存じます。  一体今度の法案が根拠もつところの臨時物資需給調整法、この法律が総動員法が失効いたします直前に経済混乱を防止するという意味において、それに代るものとして國会に提出せられましたときに、私も委員として審議に当つたのでありますが、その当時私たちはこの臨時物資需給調整法が、また過去の國家総動員法と同じような形に使われて、非常に國民の権利というものをだんだんと侵害していくというようなことになることをたいへんにおそれたのであります。そういう意味の発言を実に繰返したのでありましたが、当時政府の御答弁で、絶対にそういうことのないようにするということの確言を得て賛成をいたしたように私どもは記憶しておるのであります。それにもかかわらず、だんだんと最近の傾向を見てまいりますと、やはり私たちが当時非常に心配しておつた傾向がだんだんと現われて、今度のこの法案の場合等に、殊にその傾向が顯著であるように私は非常に感じておるわけであります。しかし一方考えてみますれば、今日日本がおかれておりまするこの特殊な状態、殊に独力ではいかんともいたしがたい事実、外國の力を借りなければ経済再建が困難であるという状態を考えまするときに、他の力を借りる場合には、自分の力を出しきるということが当然これは前提でなくちやならぬのでありますから、そういう意見においてこういうような必要もまたこれは存在するということは、これは認めるにやぶさかでないのであります。ただそういうことの口実のもとに、一方憲法もはつきりと保障しておりますところの個人の財産権というものが不当に侵害されるということは、これは極力愼まなくちやならぬのではないか、こういうように感じておるわけであります。從つてこの辺の非常に矛盾する二つの考え方の調和点というものは、やはりこれは運用によつてうまくやつていただく以外には、何ともいたし方ないというように結局ならざるを得ない。そこで政府当局も運用には十分氣をつけるということを、この法案の場合においても繰返し述べておられますので、一應それを了といたしまして、私どもはこの法案に賛成するのであります。しかしこれが、また一旦法律が出てしまうと、今度は法律は文字だけが残つておるのでありますから、御答弁なつ政府当局も変られるということになると、またぞろ濫用になるというおそれがあるということを、過去の実例に照らして非常に心配するわけでありまして、どうかそれらの点において絶対に過ちのないように、切に注意を願うということをお願いして、この法案に賛成をいたしたい、こういうように考えておる。なお質疑に際しまして当委員からしていろいろお尋ねいたした点は、恐らく國民の偽わらざる声であろうというように考えられるのでありますから、委員長が本会議におきまして本法案の審議内容を御報告になりまする際に、ぜひそういう意見委員会においてあつたのである。そういう意見をも汲みつつ、なお今日の日本の状態が、こういうような法案を通さざるを得ない特殊な事情にあつたのだということを、御報告の中に明らかにひとつお加え置き願いたい、こういうように感ずるのであります。さらに繰返えすようでありまするが、先ほど松田委員から質疑に際して発言のありました点は、実は最後の党代表委員の審査の結論を出します際、相談をいたしたときに強く主張せられたことで、どうもまた政府が今度手に入れられるもの、もしくは政府の命令によつて讓渡を命ぜられるようになるものをめぐつて、いろいろのいまわしいうわさがもうすでに出ておる。そういう場合にまた政治的のものや、ボス的のものが暗躍するようになつたのではたいへんでありますから、それらの点も十分に今後の運用の上において併せて御考慮願いたい、こういうように考えるのであります。
  43. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 討論は終局いたしました。  これより採決いたします。本案に御賛成の各位の御起立を願います。    〔総員起立〕
  44. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 起立総員。よつて本案は原案通り可決いたしました。  本日はこれをもつて散会いたします。ありがとうございました。     午後二時三十分散会