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1948-09-27 第2回国会 衆議院 国土計画委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年九月二十七日(月曜日)     午後一時四十分開議  出席委員    委員長代理 理事 松井 豊吉君    理事 内海 安吉君 理事 松浦 東介君    理事 溝淵松太郎君 理事 長谷川政友君       鈴木 仙八君    鈴木 明良君       高田 弥市君    田中 角榮君       野原 正勝君    原  孝吉君       池谷 信一君    永井勝次郎君       坪川 信三君    野本 品吉君  委員外出席者         議     員 山本 猛夫君         総理廳技官   雨森 常夫君         建 設 技 官 目黒 清雄君         專  門  員 西畑 正倫君         岩手縣知事   國分 謙吉君         群馬縣会議員  飯塚喜和次君     ————————————— 本日の会議に付した事件  災害復旧に関する件     —————————————     〔筆 記〕
  2. 松井豊吉

    松井委員長代理 これより会議をひらきます。  中島委員長に都合がございますので、代りまして、私が委員長代理をいたします。  災害復旧に関する件を議題といたします。八月以降、各地に災害がございましたが、なかんづく今度のアイオン台風による東北地方災害ははなはだしく、この災害に関しまして、関係委員より現地状況報告いたしたいとの申し出がございますので、この際これを許します。先ず岩手縣関係より御報告願います。
  3. 高田弥市

    高田委員 先般來襲いたしましたアイオン台風によりまして受けました岩手縣下被害は、皆様の想像以上のものであろうと存ずるのであります。その被害の甚大さにつきましては、損害百二十億円となつているのでございます。殊に田畑の被害はもちろん、農作物はほとんどだめになつてしまい、炭燒、漁業、牧畜その他の方面の損失も、枚挙にいとまがございません。昨年來委員会において、また本会議において、重大危機の警告を発しましたのは、今日この災害を予想してのことであつたのでございます。蔵相は予算編成時、廣い意味での生産復興をも含めて、予算編成に当るということを言明したのでございますが、そのわずかな予算さえ遅延いたし、土建建業者への支拂に対しても、現在支障を來している状態であります。今こそ、政府の責任において岩手縣外被害各縣の復旧に努力されんことを切に望む次第でございます。
  4. 野原正勝

    野原委員 この度のアイオン台風による岩手縣下被害は甚大をきわめました。私は高田委員の補足を述べるのでありますが、この件につきましては、岩手縣といたしましては、まつたく死活問題でございます。特に一ノ関の如きは昨年の災害復旧対策が不十分のため、本年またまた被害を受けまして、ほとんど壞滅的打撃を受けたのであります。また新に上、下閉伊郡ともに被害を受け、交通まつたく途絶し、ためにその状況の詳細はわからぬような始末であります。また宮古附近も壞滅いたし、漁船、網等ことごとく破損を受けました。現在までに判明しましたる被害を申し上げますとおおむね次のごときものでございます。人的被害は、死者二百七十一名、行方不明五百六十一名、負傷者二百五十四名、羅災合計十九万三千三百十一名、これらの数字は漸次増加しております。家屋は、総数三万八千七百九十四戸、内流失一千三百十九戸、耕地被害は、二万八千七百八十町歩、内、田の流失三千四百十五町歩冠水一万四千六百九十三町歩、畑、流失二千九百町歩冠水七千百十一町歩でありまして、今年はまれに見る豊作で、その取入れ寸前に、かような大被害があつたのであります。  次に土木関係は、道路二千三百六十七簡所、橋梁一千二百簡所堤防一千二百十一簡所で、被害総額は百二十三億円余に達しております。これらに対し、復旧事業費としまして、救護費一億四千九百万円、防疫費四千六百万円、家屋復旧費十一億六千八百万円、土木関係八千二百万円、蚕糸関係三千三百七十万円、畜産関係二億四千七百万円、水産関係八億九千九百万円、林業関係四億九千一百万円、商工関係五億四千八百万円、衛生関係四千八百万円、公立学校関係二千万円、賠償物件六十万円、合計百十一億八千六百万円を要するのでありまして、ただいま建設省当局より配付されたプリント復旧費によれば、岩手縣宮城縣よりも少いという数字でありますが、宮城岩手とは、まるで比較にならぬほど岩手被害が大きいのでおります。この点、これはプリントの間違いであろうと思います。以上のごとき状態でその被害は、從來まつたくその比を見ないものであります。災害復旧には多額の金を必要といたしますが、岩手縣におきましては、縣議会においてとりあへず今年十二月までに最少限二十七億四千万円の融資がなければ、何ともならぬとの結論なつておるのであります。  最後に私見ではありますが、從來政府より融資をいただき、また本委員会よりも調査していただいたのでありますが、北上川水系根本的処理及び閉甲その他河川災害処理のため、國会岩手宮城復旧特別委員会を設けたいと思うのであります。
  5. 松井豊吉

    松井委員長代理 次に群馬縣関係報告を求めます。
  6. 野本品吉

    野本委員 昨年のカザリン台風により徹底的に破壞されました群馬縣の山野は、その後全縣民のあらゆる経済力体力精神力をもつて漸次復旧されてまいりましたが、今回再びこの災害で、瀕死の状態にあつた群馬縣がまたまた被害を受けたのであります。こまかいことは省略いたしますが、要するに全身創痍の縣が再び傷を受けたということを御承知願いたい。この度の台風は主として西部、北部に多量の雨をもたらしたため利根、渡良瀬川の災害が激甚でありましたが、しかしながら縣民必死防水作業により、耕地被害は比較的軽微でございました。反面土木関係相当破壞されております。これは昨年の災害復旧に対する補助が少なかつたことが、非常に大きな原因をなしており、当時補助がもつと多ければ、今年程度の雨ではそう被害を受けなくても済んだのであろうと思われます。政府はこの際この点に特に最善の考慮を拂わねばならぬと考えるのであります。  被害状況について申し上げますと、佐波郡名和村の堤防は決死の水防により決壞を防いだため、東群馬一帶が救われたのであります。國道九号線、川田村岩本地先は昨年より鋭意復旧に努めてきたのでありますが、またまた被害を受けまして、現在表日本裏日本とをつなぐ物資輸送路はまつたく途絶いたしているような状態でございます。損害土木関係約二十八億二千万円、耕地を入れて四十億以上となる見込みであります。昨年より引続き精神力経済力体力を消耗している縣民とつて、これがたえられるかということを御想像願つた上、資金融通その他格段の御考慮をお願いいたす次第であります。
  7. 松井豊吉

    松井委員長代理 次に宮城縣関係報告を求めます。
  8. 内海安吉

    内海委員 現在手元に詳しい資料を持ち合わせておりませんので、高田野原両君説明及び先般視察してまいりましたところを土台といたしまして、宮城縣災害状況を述べてみたいと思うのであります。  宮城縣北上川下流に位しておりまして、下流部におきましては、昨年と同様な相当被害を受けたのであります。また問題なのは迫川で、迫川決壊は数十箇所あり、その損害中、農産物の被害は三十億円と想定されるのであります。先般目黒河川局長と一緒に現地を視察した関係上、局長もよく現地被害状況はおわかりのことと存じますが、江合、迫、北上の合流地点における惨状は目に余るものがあるのであります。昨年は原、宮村両委員と同行し、また本年三月にも視察しており、北上川の施策については、たびたび報告書が提出されておるのでありますが、未だ満足すべき施工を見ないのであります。江合、鳴瀬及び北上川根本的治水計画をたてるよう切に熱望いたす次第であります。
  9. 松井豊吉

    松井委員長代理 以上をもちまして現地災害状況報告を終ります。次にこれらに対しまする政府当局意見を伺います。
  10. 目黒清雄

    目黒建設技官 アイオン台風は非常な被害をもたらし、各地方とも御苦労なさつていることは、御同情にたえないのであります。十五日靜岡に上陸しようとした台風は、銚子の方にそれまして、これが東京に上陸すれば、関東地方被害はきわめて大であつたろうと思はれますが、針路が変り、轉じて宮城岩手に甚大な被害をもたらしたのであります。昨年のカザリンとの差を申しますと、進路がそれたことによつて関東地方被害が少なかつたこと、及び関東地方を通過する速度が早かつたため雨量が少なかつたということと、しかしながらこれが東北地方において激害をもたらしたということであります。利根川水防により大体において破堤をみなかつたのは不幸中の幸でありました。全國的に見ますると、野原委員よりも御注意がありましたが、この数字は推定に基いたものが多く入つていることをお断りしますが、全体では二百億を突破するものとみられます。また台風以前の四月からの災害は、やはり二百億をオーバーいたしますので、今年度すでに四百億を突破いたすことになるのであります。  これに対しまして政府はいかなる方策をとつてきたかと申し述べますると、一應予算化に努力はいたしましたが、そのうち御承知の通り追加予算を要求するには、時機尚早であつたことと、二百五十億の公共事業費には十億円の予備金があつたため、予算化には至らなかつたのであります。しかし、かかる四百億円という多額の金をこのわく内で処理するのは、もちろん無理ではありまするが、一應應急的措置としまして現在四十八億の要求を関係方面に出して折衝中であり、大蔵当局が帰つてくれば、決定いたすと思うのであります。本年度災害原因について申しますと、われわれは河川改修災害防禦に一番いいものであるという考えのもとに、河川改修を主張してまいつたのでありますが、予算の面が抑えられ、これら改修には三十億円程度しかまわせなかつたという点にありまして、災害を繕うのに日を追はれ、まつたく積極的に出るわけにゆかなかつたのであります。予算減少の永年の蓄積が、かかる災害を惹起したものであると考えるのであります。根本的な防禦策については、種々考えておりますが、結局は最後予算不足にぶつつかつてしまうのであります。かくの如く年々災害が累加しては、災害亡國になるのではないかと心配いたしておるのでございます。
  11. 松井豊吉

    松井委員長代理 次に安定本部当局意見を伺います。
  12. 雨森常夫

    雨森總理廳技官 先般よりアイオン台風の御報告をお聞きしまして、今回の台風の激甚なる被害を新に感じたようなわけでございます。先ほど目黒局長より説明のありましたように、公共事業費はまつたく少ないのであります。本年度は四百三十億でありまして、災害関係は從來の災害を含めまして百二十六億で、これで第三、四半期までは何とかやつてきているのでございます。北陸、和歌山及び融雪災害等緊急なものも、どうにかやつてきているのであります。 しかし本年度第二、四半期に十億円、第三、四半期に十六億円出ており、年度当初考えていなかつた二十六億円という金が最早や出ているのでありますが、今回の被害復旧には以上の金のほかに何十億という予算が必要になります。事務的には第三、四半期予算を計上する時に、九月十月初めには台風被害があることを予想して二億二千万円余の予備金を計上してありましたが、もちろんこれでは足りないわけであります。現在、局長東北地方の視察に行つておりますので、帰つてまいりましたら急速なる措置を講ずるはずでございます。
  13. 松井豊吉

    松井委員長代理 これより質疑に入りたいと存じます。この際お諮りいたします。議員山本猛夫君より委員外発言の申出がございますが、これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 松井豊吉

    松井委員長代理 御異議なしと認めまして発言を許します。
  15. 山本猛夫

    山本猛夫君 委員外発言を許していただきましてありがとうございました。ただいま建設安本当局説明を聞きましてありがたく存じている次第でございます。  昨年のカザリン台風による災害の甚大さは、政府はもちろんこれを認めており、片山内閣の時、さらに芦田内閣においても、私どもは足を棒にして陳情、請願いたしたのでありますが、しかるに今日何とも措置を講じないうちにまたまたアイオン台風にやられたのであります。今までの政府対策を見ますと、失礼な言い方だが、まつたく因循姑息なやり方で、たとえば、お茶というものはお客のいる時に出すもので、いなくなつてから、時機を失してから出してはもう遅い。この点よく考慮して欲しい。次に安本建設省と両方に陳情しなくてはなかなか予算ももらえぬということは、まつたく時間的にもひまがかかり、両方一致協力してやつてもらいたいものと思います。先ほど河川局長予算が少ないと言われたが、今さら予算が少ないことなど言つたつて始まらない。國土荒廃する一方で、何の國土復興だ。予算が足りなくて、これだけ必要だと分つたら、どうして一千億の終戰処理費より必要なだけ分けてもらつて國土荒廃を防ぐというところまでやらないのか。片山内閣陳情した時は、やるやると言いながら何の措置もしていない。この点何とお考えになりますか。日本全土を襲う災害に対して、これまでの因循姑息なやり方は一切やめて欲しい。今までの予算ではだめなのだ。進駐軍も分つて呆れることと思います。予算をばつさりととつて、お客のいるうちにお茶を出してもらいたいと存ずるのであります。
  16. 目黒清雄

    目黒建設技官 ただいま予算のことでおしかりを受けたのでありますが、私どもといたしましては、治水のために公債政策とつて欲しいということを考えているのであります。これは大蔵省の強い反対がありますが、確かに研究の余地があると申しますのは、治水対策相当の額をもつてするならば、その償還は自ら生じてくるのであり、また起債の消化は日銀の手を借りないでやる等が考えられるのでありまして、これらに対する地方の声を聞きますと、少しく困難な点があるようでありますが、しかし、自分國土自分の手で守るという政策が、これを可能にするのではないかと考えるのであります。結論といたしましては、何等かの財源を見つけねばならないのでありますが、現在の疲労した日本では、なかなか数十億の財源はむずかしく、これは國会方面で解決されるものであろうと考えます。
  17. 山本猛夫

    山本猛夫君 事はあまりに重大であるので、大臣その他に後でお願いしたい。要はお客のいるうちにお茶を出して欲しいということを附加して私の質疑を終ります。
  18. 松井豊吉

    松井委員長代理 他に質疑はございませんか。
  19. 長谷川政友

    長谷川委員 各委員より詳しく御説明がありましたが、私は過ぐる六月、高田委員とともに北上川上流を見てきたものでありまして、この度の災害はこの雨のみで起つたものではないと考えるのであります。また野原委員より発言のありました特別委員会の件はもちろんいいことではありますが、福井震災後に國会関係者にきてもらつて、地元民は非常に感激した例にも鑑み、先ず委員会といたしまして早急に委員を派遣して調査し、しかる後それらの対策を研究したらどうかと考えるのであります。
  20. 松井豊吉

    松井委員長代理 一寸お尋ねいたしますが、四十八億の用意はあるのですか。
  21. 雨森常夫

    雨森總理廳技官 今年度公共事業費の第四、四半期の分といたしまして、約百億の金がございますので、関係方面の了解を得てそこから出すことが一つの考え方であると思います。もちろん追加予算が計上されることと思うのでありますが、これは時間がかかりますので、應急対策としての方法でございます。
  22. 松井豊吉

    松井委員長代理 この際お諮りいたします。岩手縣群馬縣災害につきまして、地元より陳情者が見えておりますが、岩手縣よりは國分岩手縣知事群馬縣よりは飯塚縣会議員よりそれぞれ本委員において発言いたしたき旨の申出がございます。参考人といたしまして、発言を許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 松井豊吉

    松井委員長代理 御異議なしと認めまして発言を許します。先ず岩手縣側より願います。
  24. 國分謙吉

    國分參考人 発言を許していただきましてまことにありがとうございます。  この度の災害につきましては大蔵大臣が見えられ現地の者といたしまして、まことに感激いたしておるわけでございます。昨年と違いまして今度の台風による被害はまつたく甚大でございます。先ほど高田野原委員より詳細に述べられました通り岩手被害想像外でありまして、政府の速やかなる應急対策をお願いするのであります。さしあたつて罹災民を救済していただきたいのでございます。岩手縣はまつたく開けない処でございまして、しかも交通途絶のため未だにその被害調査も完全になつておりません。これから次第と寒くなつてまいるのでありますが、薪炭の被害が大きく、その配給も恐らくできかねるような次第でございます。政府におかれては速やかなる應急措置を講じられんことを切にお願いする次第でございます。
  25. 松井豊吉

    松井委員長代理 次に群馬縣側発言を許します。
  26. 飯塚喜和次

    飯塚參考人 発言を許していただきましてありがとうございます。群馬縣の昨年の水害は、被害九十五億で、内土木関係は二十八億という莫大なものでございましたが、これに対する政府補助は三億何がしでありまして、縣民は一生懸命自分の力で復旧に努めてきたのでありますが、何せい資金、資材の不足のためはかばかしくいかなかつたのであります。利根川水系治山治水を根本的にやらなければ、群馬縣は今後荒廃の一途をたどるのでございますが、現在縣の財力はきわめて窮乏をつげている状態でありまして、切に御援助をお願いいたす次第でございます。以上國会及び政府に対し、縣会を代表いたしまして陳情申し上げます。
  27. 松井豊吉

    松井委員長代理 他に御発議ございませんか。
  28. 内海安吉

    内海委員 目黒局長は四十八億出したと言われ、安本建設局では二億二千万円しかない、これは何とかしなければという、いずれも頼りない話ばかりでありますが、この問題は、一局一課のみできまるものではありません。当然これは現内閣出席を求めてやらなければならぬ問題であります。次回に閣僚の出席を求めます。またその前に委員を派遣せられて現地調査を行いたいも思うのであります。
  29. 野原正勝

    野原委員 委員派遣の問題は現在は閉会中でもあり、メンバーがそろつていないのでありますから、行くとすれば分散して行くのはどうかと思います。とりあえず被害の最も大きい岩手を先ず視察して欲しいと思うのであります。
  30. 長谷川政友

    長谷川委員 この際一言御礼を申し上げます。先般來の福井震災につきましては、本委員及び当局の御苦労に対しまして深く感謝いたしておる次第でございます。  本日は御礼のみで、他日委員がそろいましてから詳細な報告を述べたいと存じます。
  31. 松井豊吉

    松井委員長代理 本日は大臣出席はございませんが、本件は緊急を要する予算の問題でありまして、眞に重大でございます。從いまして近日中に早急に大臣出席を求めて、もう一應委員会を開き、檢討いたしたいと存じます。また委員派遣の問題は散会後に打合せたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十分散会