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1948-07-02 第2回国会 衆議院 厚生委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月二日(金曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 山崎 岩男君    理事 有田 二郎君 理事 田中 松月君    理事 山崎 道子君 理事 武田 キヨ君       大石 武一君   小笠原八十美君       村上 清治君    重井 鹿治君       福田 昌子君    松谷天光光君       武藤運十郎君    師岡 榮一君       野本 品吉君    齋藤  晃君       寺崎  覺君    榊原  亨君  出席政府委員         厚生政務次官  喜多楢治郎君         厚生事務官   木村忠二郎君         厚生事務官   宮崎 太一君         厚 生 技 官 三木 行治君         厚 生 技 官 濱野規矩雄君  委員外出席者         法務廳事務官  高橋 眞清君         專門調査員   川井 章知君     ————————————— 六月三十日  社会保險診療報酬支拂基金法案内閣提出、参  議院送付)(第二〇六号) 七月一日  國立光明寮設置法案内閣提出)(第二一七  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  恩給法の一部を改正する法律案内閣提出)(  第一六一号)  性病予防法案内閣提出参議院送付)(第一  八九号)  健康保險法の一部を改正する法律案内閣提出、  参議院送付)(第一九七号)  へい獸処理場等に関する法律案内閣提出、参  議院送付)(第一九九号)  社会保險診療報酬支拂基金法案内閣提出、参  議院送付)(第二〇六号)  國立光明寮設置法案内閣提出)(第二一七  号)     —————————————
  2. 山崎岩男

    山崎委員長 ただいまより会議を開きます。  國立光明寮設置法案を日程に追加いたしまして、議題といたすことは御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山崎岩男

    山崎委員長 御異議なければ本案議題といたし、審査に先立ち政府側より提案理由説明を聽取いたしたいと存じます。喜多政務次官
  4. 喜多楢治郎

    喜多政府委員 現在の経済情勢下においては、普通の身体の者でも生活することにきわめて困難な実情でありますのに、疾病や戰傷災害等で、中年で失明した人々は、その生活環境の激変に伴うて、経済的にも、はたまた精神的にも、非常なる障害を受け、生活の実態は眞にわれわれの想像し得ないものがあると信ぜられるのであります。これらの人々は現在全國で約一万八千に達するのでありますので、これらの眞に氣の毒な人々に適切な保護を與え、人生の光明を見出さしめることが最も必要な問題であるのであります。しこうして先天的の失明者に対しましては、文部省におきまして從來より義務教育に準じ教育をし、本年からは義務教育として教育されておるのでありますが、二十代、あるいは三十代、四十代で失明した人々は、これらの人と同一に歩むことは困難であります。このような事情に鑑みまして、厚生省におきましては、さきに当局の了解を得て傷痍者保護対策の一環として國立をもつて光明寮、すなわち失明者保護收容施設を設けまして、保護を加え、生活訓練とともに、自立に最も必要な職業であり、かつ最も適当する、はり、あんま、きゆう等職業を與え、もつて自立せしめるため、ここに光明寮設置をいたしたく、本法案を提案した次第であります。  何とぞ失明者の窮状に鑑みまして愼重に御審議の上速やかに可決あらんことを希望いたします。
  5. 山崎岩男

    山崎委員長 次に恩給法の一部を改正する法律案性病予防法案健康保健法の一部を改正する法律案、へい獸処理場等に関する法律案社会保險診療報酬支拂基金法案並びに國立光明寮設置法案一括議題といたしまして、審査にはいります。質疑はこれを許します。
  6. 田中松月

    田中(松)委員 國立光明寮のことについてお伺いいたします。対象になつておる患者数、これは大ざつぱな数でよろしゆうございますが、その見込み数の中で戰傷による患者と、そうでない者との割合をお伺いします。
  7. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 完全なる盲人で、中途で失明しました者が三千八人であります。そのうち戰傷が千六百人、その他の者が千四百人で、これは完全に見えない者であります。
  8. 田中松月

    田中(松)委員 これはわかりきつたことでありますけれども、以前から問題になつた点にもふれてくるので、その観点においてお伺いしますが、入寮料と申しますか、入院料と申しますか、その方面のことについてひとつ伺います。
  9. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これに対しましては、入院料等は徴收いたしておりません。無料でやつております。なおこの中にはいつております者の生活に必要なることにつきましては、現在におきましては生活保護法でやる、かように考えております。
  10. 田中松月

    田中(松)委員 患者に対する治寮の方はお伺いする必要はありませんが、入寮者生活費についてお伺いします。きのうでございましたか、國立病院関係者陳情を受けました中に、私もよく解せなかつたのであります。内容が妙で、そんなばかなことがあるかというようなことを言つておられましたが、その際時間の関係であまり詮索する暇がなかつたのでそのままにしておきました。あるいは私の聽き違いかもしれませんが、たとえば患者賄料を一日あたり五十六円一應納めて、それに対して実際の賄料は、厚生省わく内における二十四円五十銭で一日の賄いをやつておる。こういうことを申しておりました。あとで私よく聽いてみようと思つたのでございますが、何かそういう点に対して御説明が願いたい。この五十六円を徴收するというのは、どういうことで徴收するかわかりませんが、とにかく私の聽いたところでは、五十六円を一應厚生省側に納金しておいて、実際の賄料は一日二十四円五十銭で賄いを受けておる。五十六円とつたのだから五十六円の賄いをするのが当然ではないかということを言つておりました。それの説明と関連して、この光明寮に入寮する人たち賄料はどれくらいの額で賄いをされるおつもりですか、お伺いいたします。
  11. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいまやつておりますのは、大体生活保護法一ぱいでやつておりまして、月五百円になつております。
  12. 田中松月

    田中(松)委員 これは直接関係がありませんが、この際もしおわかりでしたら、お示しを願いたいと思います。國立病院に入院しておる人たちが五十六円徴收されて、実際は二十四円五十銭の賄いを受けておると言つておりますが、これは私の聽き違いかもしれませんが、納得がいかなかつたので、こういう疑いが起る。こういう事実があるのでしようか。おわかりじやございませんか。
  13. 山崎岩男

    山崎委員長 私から補充いたします。私もきのう立会つたのですが、生活保護法による生活保護費用を計算してみると、一日五十六円もらうことになつておる。ところが五十六円は大藏省からもらつておいて、厚生省賄いをする時分には二十四円五十銭の賄いよりしていない。そうするとその差額の三十一円五十銭は厚生省としてどこか別の方面に使つておるの相違ない。それはひどいじやないか。大藏省から五十六円の割合でもらつておりながら、二十四円五十銭よりかけていないということは、まことに患者に対して冷遇の処置をとつておる。その差額がどうなつておるかということについて、きのう特に陳情があつたのです。 ——それでは田中委員、その点はあとで御調査をいただいて、御説明いただきましよう。
  14. 田中松月

    田中(松)委員 これはあるいは私聽き漏らしたかもしれませんが、生活保護の目的で一箇月一人五百円程度賄いとおつしやつたのでしようか、もう一度済みませんが……。
  15. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 生活保護法によりまして生活扶助金を渡しておるのであります。それをもつて一ぱいでやつおる、こういうことであります。
  16. 田中松月

    田中(松)委員 生活保護法の規定による扶助料一ぱいでやる。実際上私ども考えによりますと、それでやつていけようはずがないというのが普通常識であります。もしそれで足りるならばもちろん問題はありませんが、極端に申しましてこれで食べさせるのだと言えばそれきりでありますけれども、特に患者でありますから、その最低限度というものがあるはずです。最低限度でその金で賄い得たらよろしゆうございますが、どうしてもそれでは足らぬという場合には、自分の方で補いをつけるより以外に、別途の方から救済するという方法はまつたく途がないものでしようか。
  17. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 現在給與いたしております生活保護法関係費用で大体十分であるというふうに存じております。
  18. 田中松月

    田中(松)委員 これはまだ手当をしなければならぬような人たちも含めているものでしようか。もう手当しなくてもよいが失明してしまつているというようなぐあいになるのでしようか。
  19. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 目の方の手当はまつたく要らなくなつた者收容いたすわけであります。
  20. 田中松月

    田中(松)委員 第四條の基本金は百万円とする。これで金詰まりを來すようなことはないような見透しがつくでありましようか。どうも素人目からいたしますと、それだけで運営がやつていけようかという氣がするのでありますが、その点をひとつお伺いします。
  21. 宮崎太一

    宮崎政府委員 ただいま第四條のことで御質問がございましたが、この百万円と申しますのは、支拂のための金ではありませんので、何か予想すべからざる事由によりまして、支拂のできない場合の念のための金でありますと同時に、この種法人を設けますための基本金といたしてきめました金額でありまして、これは使う意思はありません。何か災害その他で、どうしても支拂うべき金のないときに、万やむを得ず使う金でございます。診療報酬支拂は各保險者契約をいたしまして、前渡の金をもらつておきまして、毎月何千万円の金を支拂うのでございまして、この百万円はまつたく單なる基本金でありますので、政府は四十万円出しまして、その他の保險者厚生大臣の定めるところによりまして少しずつ出しあつて基本金にするというものであります。
  22. 田中松月

    田中(松)委員 今までの制度はどうも円滑を欠いたから、こういうことをお考え出しになつたものでございましようが、おつしやるようなぐあいにいくものであつたならば、納付金をとつて、それから支拂をする、それが順繰り都合よくいくものであつたならば、今までの制度でよかつたじやないか。いわゆるはいつてくる方がなかなか遅れて、出す方はどんどん出さなければならぬようなかつこうになりがちで、法文の上では、はいるのと出るのとではちやんとバランスを合わせてつくられたものでありましようが、予測しないいろいろな故障でそれが都合よくいかぬから、こういうような方法をお考えになつたのでありましようが、ただ制度を変えただけで——素人考えでいたしますと、そこに相当大きな予備金というものをもつてつて、そうしてはいつてくるのと出すのとのバランスがとれない場合、あるいはそのいずれをその積立金で円滑に運営する、こういうぐあいになるのがねらいじやないかと思いますけれども、その点について、この程度、はいつてくるのがあるから出すのは差支えないということであつたら、ことさらにこういうぐあいに制度を変えなくてもよいというような氣がするのですが、この点に対する御説明を願います。
  23. 宮崎太一

    宮崎政府委員 ただいま田中さんの言われました点は、よく私どももわかるのでありますが、ただ從來はこの種の仕事日本医師会日本歯科医師会が長くやつておられたのであります。すなわち日本医師会日本歯科医師会が、保險医のために政府から金をもらつて、そうして保險医にわける。また保險医の方は、日本医師会を通じて政府診療報酬請求するということで、お医者さんで申しますと、日本医師会がこの仕事をやつてまいつたのであります。歯科医師の方は歯科医師会がやつてまいつたのであります。ところが先般日本医師会及び日本歯科医師会が解散になりまして、今度の日本医師会及び日本歯科医師会は、自由設立による医師会でありまして、しかもこれは医師の全体の人たちが心から一致いたしまして、りつぱな医師会をつくつて、そうして医療の向上のために努めるという医師会であります。そこで私どもといたしまして、こういう雜務を日本医師会にお願いするのもどうかという考えもございますし、また関係の方にもそういう意見もございまして、これを日本医師会及び日本歯科医師会にお願いしないということにいたしたのであります。そういたしますと、私の法人でこれをやるか、あるいは債権者債務者お互いにやり取りするよりほかないのであります。そこでお互いにやり取りをいたしますことは、今日のような複雜した社会保險制度におきましては、診療費支拂が非常に遅延する、あるいはそこに延滯があるというような心配もございまするので、どこかの法人がこれをまとめてやらなければならない。そういたしますと、私法人ではこの仕事をするのにはあまり適当しておらないということで、ここに新しい法人組織いたしまして、この組織は再保險組織ではございませんで保險者からあらかじめお金を預かつておきまして、そうして医療担当者請求從つてこれを支拂う、その請求には確実に迅速に支拂う、こういう任務を帶びる法人にいたしたのでございまして、いずれも政府あるいは健康保險組合船員保險共済組合國民保險の一部とそういう契約を結びまして、そうしてこの前渡の金をもらつて、それによつて支拂う、こういう組織に相なります。しこうしてこれは單純に医療費だけを支拂仕事でございますので、この辺のところは多年医師会においてやつておられた仕事でもございまするし、またこの道の経驗者もございますので、これで十分やれる、私どもはこういうように信じておるのであります。
  24. 田中松月

    田中(松)委員 その点についてはよく了承いたしました。実際そういう仕事は今までは医師会あるいは歯科医師会の方に主として扱つてもらつてつたのであります。これからはそれとは別個な機関によつて扱うようになりましようが、たとえば第三條に、「主たる事務所東京都に、從たる事務所を各都水府縣に置く。」とありますが、その下部組織はどういうぐあいになるものでしようか。あるいは今まで通り医師会歯科医師会の方に、別な形でお願いするか、あるいは市町村などの公共團体の方に委託するようになるのでしようか。
  25. 宮崎太一

    宮崎政府委員 下部組織といたしましては、主たる事務所東京に置きますが、從たる事務所縣廳の所在地に置くのであります。場合によりましては、健康保險出張所のありまする同じ所に出張所を設ける予定でございます。その事務所をどこに置くかという点につきましては、私どもといたしましては、全國に三百数名の職員でいいと思つておるのでございますので、大した事務所は設けるつもりはございません。それで大体從來医師会事務所を借りておつたのでありますが、縣廳の一部か医師会事務所か適当な所を借りまして、そこに支部の幹事長幹事職員をおいて、あまり大規模な人事の構成をいたしませずにやるつもりでおります。そしてその事務の連絡は医師会及び縣廳等とよくとりましてやりたいと思つておりますし、この事務に從事するのは、從來から医師会から医師会職員でこれに從事しておる人がたくさんおりますので、その職員で御希望の方にこちらの方へはいつていただきまして、仕事をやつていくつもりであります。
  26. 田中松月

    田中(松)委員 第十七條「基金は、起債をすることができない。」と限つておりますが、これは起債をする必要がないからというのですか。特にこの條項を設けた根拠はどういうぐあいでございましようか。
  27. 宮崎太一

    宮崎政府委員 これは実はこの種公法人金融統制起債をやつてはならぬという方針になつておるそうでございます。それでその関係でこの條文がはいつたのでございます。でありますからこの仕事起債をしなくてもやれるであろう。また起債はしてはならぬ。こういう意味ではいつておるのでございまして、私ども起債なしでもやれると思います。ただ金に詰り、やがて返し得る見込がついて、一時借入れをするという程度のことはやらなければななぬじやないかと思つております。
  28. 田中松月

    田中(松)委員 その借入れの場合は何か厚生省関係の金を一時融通するということになるのでありましようか、また預金部あたりからの、何というか、厚生省わく外の方でということになるのでしようか、もちろん何も借入れをする場合、限定をする必要はありませんけれども、念のためにそういう点も起債をすることができないと限つた場合は、厚生省内の内輪同志で金をまわし合いするのは差支えないでありましようが、預金部からということになると、それは言葉をかえてみると、本條のこの條文に徳義上区切られるようなおそれがありはせぬでしようか、その点をお聽かせを願います。
  29. 宮崎太一

    宮崎政府委員 この一時借入れをなします場合は、もちろん普通の金融機関から借りるのでありまして、先ほど申し上げましたように借りないでやれるつもりでおりますから、もし一時借入れをやる場合は、きわめて例外に属しますので、普通の金融機関から若干の期間一時借入れをする、こういうことでございます。
  30. 榊原亨

    榊原(亨)委員 健康保險法について二点お尋ねいたしたいと思すます。第四十三條の六並びに四十三條の七にございます社会保險診療報酬算定協議会のことについてでございますが、その場合の被保險人代表いたしますものとして在來厚生省において指定された方は、算定協議會それ自身にも御出席されることがはなはだ少いような方がございまして、事実上これらの被保險者を眞に代表しているということを私ども第三者の者が認めることができないような方が出ておいでになるのでございます。これはおそらく被保險者の利益を代表するものでございますから、保險者と別箇の立場において自分の主張をさるべきものでございまして、これらの被保險者代表をお選びになる点におきましては、ただいま申し上げました点を御考慮くださいますかどうか。もう一つはもしも算定協議会においてきめられました社会保險診療報酬が、厚生大臣が御指定になりました場合にこれと違つたかつこうな御指定になります場合には、在來もございましたように、医師会及び歯科医師会意見を御參考に徴せられるという御意見があるかどうかということを承りたいと存じます。
  31. 宮崎太一

    宮崎政府委員 診療報酬算定協議会出席されまする被保險者代表者中、欠席がちの人があるというお話でございますが、この被保險者代表は、大体労働組合を通じて選んでおりまして、相当多忙な人がはいつておられますので、欠席せられる方もあることは事実でございます。今後選定をいたします際におきましては、なるべくお出席になれる方をお願いするつもりでございます。それから算定協議会におきまして結論が出て、厚生大臣が諮問した大臣意見と食い違うという結論が出ました場合に、厚生大臣算定協議会結論を採用しないで、他の意見を用いるときに、医療関係者意見を聽くかどうか、こういう御意見のように承知いたしましたのでありますが、算定協議会は御承知のように、民主的な方法できめられるので、なるべく算定協議会意見に從うのでございます。万一厚生大臣考えと食い違う場合がございましたならば、御説のように直接医療を担当いたしまする医師、あるいは歯科医師團体の御意見を聽くようにいたしたいと存じております。
  32. 榊原亨

    榊原(亨)委員 社会保險診療報酬支拂基金法について一点お尋ねいたしたいのでございます。診療内容審査をいたします場合に、在來官公立病院において治療いたしましたものにつきましては、かなり審査がルーズでございまして、いかがわしいものがたくさんあつたと存ずるのでございますが、今後これらの点につきまして、官公私立病院、あるいは診療所同樣な基準のもとに審査をなさいます御意見でございますか承りたい。
  33. 宮崎太一

    宮崎政府委員 從來榊原先生の言われる通りでございますが、今後におきましては政府といたしましては審査をいたしたいと存じております。ただ審査会意見等もございますので、よくこれを聽きまして決定いたしたいと思つております。
  34. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 私は性病予防法案についてお尋ねいたしたいと思います。性病の恐ろしいことは認められておりますが、しかしこの性病に対する現在までの政府の措置というものは、あまりにも積極的でなかつたことにおいて私どもは遺憾にたえないと思うのでございます。この性病予防法案の性質にいたしましても、あるいはスエーデンにおいては一八一七年にすでにこの法案が、強制的にできておる。アメリカにおいても一九一七年においてこれが施行されておる。日本においてはアメリカの十年後の一九二七年においてつくられましたけれでも、しかし改めてこのたびの性病予防法案考えましても、現在までありまにこの法が活用されていなかつた、法はできてもこのような恐ろしい性病に名する対策とか、予防ということはさらに考えられていなかつた。現在までこの性病が蔓延した原因はそこにあつたのではないか。指導もなく、あるいは予防対策もなかつた。こういうことはまことに遺憾にたえないと思うのであります。最近私ども中等学校の校長より聞きましたが、中等学生の間においても、すでに性病が増加しておる、こういうことを私は聞きまして、実に慄然といたしたのであります。もしこのようなことがこのままに放置されましたならば、まつた日本の將來のためにも、民族の滅亡であるというようなことを、私は心配いたすのであります。これは要するに、性病の対する指導が何らなかつたということ、殊に敗戰後において、すべてが自由な波に乘つておるためと見えますが、ほとんどこの性病というものが底しれずに蔓延の一途をたどつております。この事実を考えましても、單なる法律において予防をはかるということでなく、いわゆる予防施設ということにつきまして、もつと積極的な方法を、重大なる関心をもつて招來するのではないかと考えておる次第であります。政府本案をつくるにあたりまして、最近いろいろな法案をつくられますけれども、しかしながらこの法案の裏づけとなるところの予算というものは、ほとんどわれわれが考えられない僅少な予算によつて、ただ一時を糊塗されておるというようなことが多いのでありまして、政府はこのためにこの予防法案をつくると同時に、これに対する予算についてはどういうふうな熱意をもつて組まれましたか、お聽きいたしたいのであります。
  35. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 ただいま齋藤委員の御意見つたくわれわれ同感でありまして、花柳病に対して私たちが非常に怠慢でありましたことは、慚愧にたえないのであります。昔は花柳病予防法といいまして、昭和二年につくりましたが、これは花柳ちまたから出るものですから、花柳病という名前をつけたのでありまして、この法案花柳ちまたを中心として法案であつたのであります。今度の法案ボツ勅その他現行のものにさらに加えまして、御意見のように徹底的に治療をするということ、徹底的に予防知識を普及させるということが、この法案の一番の趣旨といたしておるところであります。そういういう意味におきまして、各人々々の義務におきまして、花柳病を徹底的に治療し、またみんながよく花柳病についてわかつてもらう、こういうことが第一章の一、二、三というところに掲げられておりまして、これに向つて協力していきたい。こういう意味におきまして昨年來花柳病徹底的治療をはかりまして、約一箇月間一千万円内外の治療費を特に捻出いたしまして、花柳病にかかつて医者から届出された者に対しまして、徹底治療をいたす。この治療費傳染病と同じように、國庫が全部もつべきが建前でありますが、國の財政の現状におきまして、出せない人からはとりませんで、これを全部國費をもつた治療する、こういう建前をとつてまいりました。現在その治療を続けておりますが、今度は、この予防法が通過いたしますれば、予防法によりまして、これが実施されることになるのでありますが、仰せの通り、若き者の性病に対しましては、私たちも非常に寒心にたえないところがあるのでありまして、これに対しましては、徹底的な予防知識の普及ということが必要であります。進駐軍のいろいろの話を聽きますと、アメリカにおきましても、昔は日本と同じようなかつこうで、花柳病に対しましては、非常に恥かしい意味におきまして、口をこうやつて隠して話をするような建前でありましたが、今度の第二次欧州戰爭が始まると同時に、そのときの衞生の担当の長官が、花柳病は恥かしがるべきものにあらずということで、徹底的に治療をいたしたのでありますが、それ以後非常に態度が変つた日本もそういう式にすべきものである。こういう意見が非常に熱心に唱えられましたが、われわれこれに対しまして、まつたく同感でありまして、先般ごらんに入れましたような露骨な映畫もつくり、またただいま展覧会その他におきまして、猥褻罪の線からはずれたところにおきまして、正しく性病の知識を與えることについて、一月より積極的に努力いたしまして、仰せのごとき問題につきましては、速やかに予防知識を普及いたしまして、各人が守りますように、ほんとうに積極的にやつていきたいということでやつております。從つて、ただいま申し上げました治療の補助、それから強制健康診断補助でありますとか、診療所の補助でありますとか、あるいは接触者の調査費補助でありますとか、そういうものを合わせまして約八千八百万円ほどが、この法律が施行されると必要な予算でありますが、その中の治療費その他は昨年度から継続しておりますので、若干手元にもつておりますが、総計いたしまして約八千八百万円、それに診療所を若干創設いたします費用が八百万円ほどありまして、約九千六百万円、一億円近い金が國庫補助になつております。これによりまして、今年度は性病に対しては、要するに花柳病予防法という名前を変えまして、性病予防法として、國民全体の病氣として、極力その予防に努力いたしたいと存じております。
  36. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 治療費の補助が昨年は一箇月一千万円であつた。こういうお話でありまして、今年度におきましてもいわゆる治療費をもたない者に対しましては、政府はその治療費を負担する、こういうような條文でありますが、しからば一人当りどれくらいの予算をとつておるか、おそらく医療関係からいたしますれば、從來におきましては、法文はできましても、その負担額というものはあまりにも少いために、もう予算がなくなつて、なるべく來ない方がよいというような氣分をもち、また來た者に対しましても、実にかわいそうな考えをもつ、こういうようなことが訴えられておるのでありますが、どのような治療費予算として見積られておるか、伺いたいのであります。
  37. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 性病は徹底的に治療しなければいけないものですから、治療方針につきまして、相当の学者を集めまして、たとえば淋病でありますれば、今ズルフアチアゾール剤をこれこれ飲め。全部で五十二錠飲まないと、第一回はいけませんから、これを飲みますと、一錠が十円二十銭につきますので、それに若干の治療費、こういうような計算をいたします。そうしてこの淋疾に対しては一回、二回、三回までは飲藥で行きまして、それで治らない者はペニシリンを使う。ペニシリンは十万單位が少くとも原價六百円であります。それを二十万單位から四十万單位使わなければならぬのであります。その治療方針をはつきり示しまして、それだけの單價ははつきりとこれに示してありまして、そうしてそれの十分の一出せる人、その十分の二出せる人、半分出せる人、ちつとも出せない人、それによつて補助をいたします。この認定は民生委員に一應お願いしますが、今の生活保護法でなしに、性病予防法で全部この治療が徹底的に行くようにする。なお法案にありますように、治療半ばでおやめになつた方は、特に手紙その他を出しましてお聽きいたしまして、お金がなくてできないならばこれは片方で金を貸す。そうでなくてやめた方は続けて來ていただくというように、完全治癒ということを目標にいたしております。在來のこれこれの藥がいくらだというようなことでなくて、原價を出しまして、たとえば注射料は保健所では五十円、お医者さんの方は百円か二百円とつておるというようなことのないように、縣におきまして原價と治療費を別個にいたしまして、そういう問題の起りませんようにやつております。これは実施いたしまして現在相当の成績をあげつつあるのであります。本法案が通過いたしますならば、各地にブロツク会議を開きまして、一層徹底をいたしたい。お金がなくてお困りになつておるというようなことのないようにいたしたいと思います。こういう点につきましては一層注意をいたしまして、間違いの起らないように努力していきたいと存じております。要は完全治癒であります。その治療費は、藥ははつきりきまつておりますので、先般有田委員からもこの点については御質疑がありまして、藥を政府の方で安く賣つたらどうだ。要するに、中間の手数料をなくして、安くして、完全治癒をやつたらどうかというような非常な結構な御意見がございまして、いま鋭意その点については考慮いたしまして、できるだけ安くして、徹底いたしたいつもりであります。なおただいまでも縣の中には、結核を治療するお医者さんを特に縣が指定した人を設けたところもあるのでありまして、そこに行けば、間違いないように徹底的にやつてくれ、また困る人はそういうことができますようにいたしております。さよう御了承願います。
  38. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 たいへん熱意のあるお話を聽きましたが、最近におけるちまたの聲を聞きましても、性病が猛烈に宣傳されているがごとき風潮があるのであります。ああいう淫蕩文学の氾濫から考えましても、もちろんあれは現在の一般の空氣がありまするが、これに劣らないくらにい性病というものが恐るべきものであるという並行された宣傳をしないと、いやが應でもああいう露骨なことによつて性病が奨励されるような空氣が至るところに見えるのでありまして、まことに寒心にたえざるところでありますから、どうか性病が恐ろしきものであるということの宣傳と指導についてこの際十分にお願いいたしたいと思のであります。  なお條文についてお聽きしたいと思うのであります。第八條は「性病にかかつているかどうかに関する医師の診断書を交換するようにつとめなければならない。」というのでありますが、これは前の委員もいろいろ質問されましたが、要するに性病についてまず予防が根本であれば、これを「つとめなければならない」でなく、はつきり「交換すべきものである」と條文をもつてこの八條においてまず戸を締めなければ、完全なる性病予防ができないものではないかと思うのであります。なお健康診断につきまして、あるいは情誼のある医者の健康診断書はそのまま本人の指示通りに書かれているということがなきにしもあらずでありまして、この健康診断書のほかに血液並びに尿の檢査をするということも考えられるのではないかと私は思うのであります。そうすればいわゆる健康診断以上の効果があるのではないかと考えますので、この点についてお聽きしたいと思うのであります。  なお第九條でありますが、第九條は妊娠した者は医師の健康診断を受けなければならないというのでありますが、妊娠した者が健康診断を当然に受けるということは、非常に私は力強く思うのであります。その健康診断の結果につきましては、もちろんこれは届出制が嚴重にされなければならないと思うのであります。なおそれについてお尋ねいたしたいことは、現在まで完全なる健康診断が妊娠した者について行われなかつたというために、日本における乳兒の死亡率というものは非常に高率であります。殊に乳兒の死亡率の中において、いわゆる性病梅毒によるところの死亡率というものが相当の数であると考えられるのであります。これに対する何か調査あるいは統計というものはありましようが、この乳兒の死亡率というものが多く先天性の弱質による。こういうことにおきましても、いかにこの性病によるところの死亡率が多いかということが考えられる次第でありまして、この点につきましてお聽きしたいと思うのであります。
  39. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 お答え申します。若い者に対する性教育についてはまつたく仰せの通りでございまして、私たち國立病院診療所からの情勢を見まして、若き人の性病また特殊なる性病に対しまして非常に寒心にたえないのでありまして、これに対しましては極力性教育をいたしていきますことが一番必要と存ぜられますので、先般理研などでつくりもした映画を全國津々浦々に見せるベくやつております。なお展覧会を行い、あるいは書籍等も厚生省自身でつくりまして、一つのスタンダードをつくつております。そうして極力これをしてわからしめていきたいと努力しておりますので、さよう御承知願います。  なお第八條の診断書でありますが、この診断書は要するにからだをすつかり健康診断するという意味でありまして、仰せの通り、尿と血液の檢査を診断書に書き、尿の中に淋糸が見えるとか、血液がどうとかいうことを檢査する。実際から申しますると、私たち医者からいえば、血液檢査と尿だけでは、この間福澤委員榊原委員のお説のあつた通り不完全でありますが、それをワツセルマン反應をやるとか、また実際に局部を見て診断するというように、いろいろの観点から第八條に書いたように極力努めております。同時に仰せのごとく、性教育もどしどし実施しまして、將來はこういう問題はみんな普通のこととし、またそういう結果を心配なく避けていきたい。これを私たちのしなければならない努めだと思います。  妊娠した人の流産並びに早産ないしは死産の原因、または生れても先天性遺傳梅毒のある子供に対しては、まことに仰せの通りでございまして、これに対してはまだ全体的の調査というものはありませんが、個々の人のものされたものはございます。私はここにはつきりした数字は覚えておりませんが、これはちようど母子保護法でいろいろやつております。梅毒にかかつた人々の血液の診断を母子手帳に書くかといえば、これも氣の毒な点がありまして、書くのはよそう。そこで本人によく知らせてやつていくというふうにして、今後は母子保護関係性病関係と相互に連絡をとりまして、妊娠したら一日も早く血液の檢査をしてもらつて、それが早ければ早いほど効果がありますが、どつちにしても子供をりつぱに生むように性教育を行うべきである。数字は私手もとにもつておりませんが、後ほどわかつているものがございましたらお届けしたいと思います。
  40. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 第十二條特に必要を認めたときには府縣知事はその地区の健康診断を命ずるという條文でありますが、私が最初果し上げましたように、すでに中等学校においてすら性病が蔓延しておる。こういうことを医者を通じて中等学校長が聞いて非常に驚いて私どものところにかけつけた、こういう事実もありますので、特に必要と認めたという際には、どういう方法によつてその地域あるいはある團体の檢査を命ずるか、お聽きしたいと思うのであります。
  41. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 第十二條の「性病のまん延世著しい場合」というものを例示したしますと、つい最近の話でございますが、別府の温泉の一部からたいへん性病が附近にはやりました。またお手もとに差上げておる資料にもありますが、福岡縣の炭鉱の共同住宅の中でたいへん性病が出まして、子供さんが非常に目を痛めたことがあります。ないしは少し前でしたが山梨縣の甲府でふろがぬるいために性病が蔓延いたしました。そういうように一区画を限つて著しく性病が蔓延する場合でありますが、これは先般も申し上げましたように、できるだけ自然的に診察を受けられることが一番希望されるところでありますが、それがどうしても困難なときには、一定の傳染源と思われる人たちを見つけて、それを防ぐ意味におきましてこういう十二條を加えたのでありますが、これは人権蹂躙の問題が起りやすい。また調べることにつきましても、局部を見る、ないしは血液をとらなければならぬという点がございますので、その方法厚生大臣まで診察方法その他いろいろのものを書いてまいりまして、それを厚生大臣の方で認可したものによつて実施することになつております。今仰せのような学校みたいなものでありましたら、これは人の名誉に関することでありましようから、できるだけ秘密裡に性教育によつて順次これを御実施願いますれば、法律によらないで自発的に協同的にお願いできますれば、私たちとしては結構であります。またそういうようにいくように性教育の宣傳、指導については極力努力したいと思つております。
  42. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 第二十九條の2におきまして「健康診断をした当該吏員その他性病予防事務に從事した公務員又はこれらの職にあつた者が、その職務執行に関して知得した人の秘密を正当の理由なくして漏らしたときも、また前項と同様である」と罰則がございますが、実はこの性病というものが常識として指導されるにつきましては、このような公務員というものの考え自身から、変えてもらわなければならないと思うのであります。なぜかと申しますると、こういう公務員がいわゆる性病というものの秘密である。そういうような弱点につけこみまして、漏らすばかりでなく、こうした性病の事実というものをもつて脅迫する。こういうようなこともなきにしもあらずであります。そうしますればかえつてこの性病に対する考えを、惡化するというような状態もございます。そういうことでまた惡い結果も生むのでありまして、最近においては、はなはだ申しにくい話でありますが、多くの官吏というものが、官吏の役得というものは当然だというような考えを、ままもつておるのであります。そのために自分の役目を利用して、何かものにしたい。こういうことが到るところ枚挙にいとまがなく起つておるのでありまして、人の秘密というような弱点につけこむということも、当然考えられることであると思うのでありまして、ただ漏らしたばかりでなく、「漏らしたるときまたはその事実をもつて脅迫したるとき」こういうふうにここに挿入していただきまして、公務員に関する信義の向上につきまして、嚴罰主義をもつて臨まれたい。これを私はお願いするのであります。これについて御意見を聽きたいと思います。
  43. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 まことに結構なる御指示をいただきまして、ありがたいのでありますが、そういう問題につきましては、極力起りませんように努力していきたいと存じます。この関係します吏員は、二十三條ですか何かにございますように、身分証明書を持たせ、並びにそれには、この間有田議員の御注意で、写眞をはらせるようにしたいと思つております。なおまたその裏には注意事項をいろいろ書きます。その仕事あたります者は、大半は医者でありますが、お示しのように性病予防事務に從事し、その書類を整理しておつてつた者に、そういうことがありませんように、特に議会が済みましたならば、各地でブロック会議を開きまして、関係官にとくと話しまして、そういう問題の起りませんように、一層政府当局としましては努力したいと存じます。さよう御承知願います。
  44. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 へい獣の処理場に関する法案ができましたことを、私どもは喜ぶものであります。実はこれに関連いたすのでありますが、このへい獣の檢査につきまして、いわゆるへい獣の檢査員というものが町村に何名ぐらいあるか。あるいはまた保健所というものには何名くらいあるか。またこれに対する予算はどのくらいとつてあるか。これをお聽きしたいと思うのであります。
  45. 三木行治

    ○三木(行)政府委員 取締りにあたる人間は、一体どのくらいあるかという御質疑でございますが、このへい獣処理場につきましては現在のところでは、屠場の監督をしておりますところの屠畜檢査員、これが兼務をいたしておるわけでございまして、当該吏員といたしましては、屠畜檢査員がやつておるという実情でございます。從つて、これは從來ございました一警察に約一人という程度の人間でございまして、現行では保健所区域内に一人程度しかおらないのでございます。これは人数といたしましても非常に不足でございますので、この点については私どもも、充実しなければならぬと考えるのでありまして、いろいろと計画をいたしておる。こういう現状でございます。なおこの処理場の檢査の仕事は、屠畜檢査員がやるのでありますが、ある意味におきましては、補助的に食品衛生檢査員というものが、一保健所に大体三、四人程度おるのでございまして、この者もやはり補助的な仕事をしておる。かように考えてよろしいと存ずる次第であります。
  46. 山崎岩男

    山崎委員長 暫時休憩いたします。     午前十一時二十五分休憩      ————◇—————     午後二時四十六分開議
  47. 山崎岩男

    山崎委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  恩給法の一部を改正する法律案及び國立光明寮設置法案議題といたします。本日議題といたしまして審査いたしました國立光明寮設置法案につきましては質疑も終了していると思いますのでこれを打切りたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 山崎岩男

    山崎委員長 御異議なければ本案についての質疑を打切ります。  次に恩給法の一部を改正する法律案及び國立光明寮設置法案についての討論に入りますけれども、討論の通告もございませんので、これを省略してただちに採決に入りたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 山崎岩男

    山崎委員長 御異議なければさよう決します。  採決に入ります。恩給法の一部を改正する法律案及び國立光明寮設置法案を原案通り可決することに賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  50. 山崎岩男

    山崎委員長 起立総員。よつて両案は原案の通り可決いたされました。  なお本日可決てたしました両案について議長に提出いたします。報告書の作成に関しましては、委員長に一任していただきたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 山崎岩男

    山崎委員長 御異議なければさよう取計らいます。     —————————————
  52. 山崎岩男

    山崎委員長 次に性病予防法案、へい獣処理場等に関する法律案社会保險診療報酬支拂基金法案一括議題にいたします。質疑はこれを許します。 有田委員
  53. 有田二郎

    ○有田委員 第二十六條にも「傳染の虞がある性病にかかつている者が、賣いんをしたときは、これを二年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。」とあり、その他これに類した法律がありますが、これらの病氣にかかつておる者が懲役になりました場合に、刑務所の中に病院の設備がありますかどうか承りたい。
  54. 高橋眞清

    ○高橋説明員 ただいまの御質問についてお答えいたします。刑務所には原則としては病院の施設はありませんが、ただ看護の上に病棟を特別につくつております。そしていろいろの病氣にかかつておる者だけを、靜養と申しますか、病棟をつくつてその中に入れるわけであります。またそれに必要な医師を配属しておりまして、結局病院と同じ手当がほぼなされておるわけであります。
  55. 山崎岩男

    山崎委員長 有田君途中ですが、山崎君が局長の都合でこの際質問したいとのことでありますから、後刻お願いいたします。
  56. 有田二郎

    ○有田委員 承知いたしました。
  57. 山崎岩男

    山崎委員長 山崎道子君。
  58. 山崎道子

    山崎(道)委員 続けて質問しなけば熱が乗つてこないのでありますけれども、ちよつと局長の都合もあるそうでありますから、社会局長にお伺いしたい点を最初に申し上げてみたいと思います。性病予防法案が出しまして、いろいろとここに法案を拜見しておるのでございますが、これが施行されまして、私の聞くところによりますと、現在いわゆる街娼でございますが、これが取締られて、そうして檢査を受けて病院へはいり、そうしてその病院から退院してからはいる他の厚生施設、特殊施設と申しましようか、これがその後どういうふうな状態にあるか、その成績はどういうふうであるか、なおまた今後こういう法律で規定されますについてそれに対処するだけの御用意があるかということについてお伺いたします。
  59. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 お答えいたします。特殊婦人の收容保護施設は現在十七箇所設置いたしてございますが、これにはいることをいろいろ勧誘いたしまして、できるだけはいるようにいたしておるのでございますが、現在定員千百十名に対しまして、五百十三名を收容いたしておるにすぎないのでございます。これは四月の成績でございます。これは強制して入れるという方法は現在ありませんので、入院しております間にいろいろ相談して、いろいろ指導いたしました上で、これにはいることを勧めておるのでございます。最近における業態の婦人の方々が從來とは大分傾向が変つてきまして、非常にその方の仕事と申しますか、そういう業態になると申しますか、專門家というか、どう申し上げていいかわかりませんが、そういう常習の人が非常に殖えてまいつております関係上、いろいろ勧めましても、希望いたします者はだんだん減つておるといつたような状況であります。はいりました者のその後の成績は、大体において半数ぐらいは成績がいいようであります。残りの半数は途中で飛び出したりする者があるようであります。これらの実際のやり方が、なかなかむずかしいのでありまして、施設によつては非常によくいつておる所もあり、よくいつていない所もあります。今後こういう施設を拡充するにつきましても、そのやり方もよほど考えなければならぬ。またやる人を相当得なければならぬと思つております。現在においてはまだ施設に相当余裕がございますので、でき得る限りこの方面にはいるように指導いたすつもりでございますが、なおそれで不足するような状態になりましたならば、またその際には希望する者はみな十分にはいり得るようにいたしたい。また指導いたしまして、はいる資格者が非常に殖えた場合には逐次拡張していきたいと思つておりますが、現在ではただいま申しましたように、定員よりも非常に少いといつたような状態でありますので、そのやり方を今後どういうふうにするか、研究してみなければならぬと思つております。
  60. 山崎道子

    山崎(道)委員 私が調査したところによりますと、病院の当局と、それから「ぴんぷ」と申しますか、街娼の親方というのができておる。それとの連絡ができておりまして、退院ができるときにはまず病院の方から「ぴんぷ」に連絡しておる。それが迎えに來て、そうして再びそういう状態に落ちこんでいくのが多いようであります。なぜそういう親方ができるかと申しますと、これらは商賣のないときには親方から食事その他も運ばれて生活を保障されておる。そういうつながりができてきておる。そうしてこれらの食事その他を運んだりする役目に浮浪兒が使われて、そうして浮浪兒といわゆるパンパン・ガール、それからパンパン・ガールを搾取する階級との間に強烈なつながりができておる。そうしてそれを見開きしておるうちに、十三、四才の浮浪兒がすでにこういう途を覚えてくる。こういうような非常に嘆かわしい状態ができておるようでありますが、そうしたことに対しまして政府当局ではどのように考えておいでになりますか。こういう事実を知つておられるかどうかということを私はお伺いしたい。浮浪兒の対策が種々やかましく言われ、討議されておるにもかかわらず、今なお浮浪兒があとを絶たないでおるどころか、ますます惡質になつておる。こういうことが今日少年裁判所法と兒童福祉法との関係にまでなつてきておるのではないかと考えられるのでございますが、浮浪兒に対する対策は、これは兒童局長の管轄かもわかりませんけれども、社會局長としてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  61. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいまお話のような状態があるということはよく聽いておりまして、大体承知いたしておるのでありますが、これに対する対策としましては非常にむずかしいのではないか、またこれは兒童局の主管でありまして、私からはちよつとお答え申し上げかねますが、ただいまの病院と、それからそういう親方との関連性があるというようなお話につきましては、これは私はよく存じておりません。そういうことはあり得べきではなかろうと思つておりますが、これは濱野さんからでもひとつお答えを願つたらどうかと思います。われわれの方として兒童法の見地から言いまして、そういうことのないように十分努めなければならぬと思つております。
  62. 山崎道子

    山崎(道)委員 それから生活扶助料こういうものが少い。食事が惡い、こうしたことも相当に影響しておると思うのでありますが、生活保護法に対しての扶助料の増額、それはまだ決定していないのでございますか。それを伺いたい。  それから收容施設でございますが、これの保護費が非常に少いために実質は十名くらいであるのに、定員二十名くらいにして、置いておることにして、この扶助料をもらわなければやつていけないというようなことを私はしばしば耳にしますが、どうしてもやれない状態におかないで、施設がフルに動くためにはもつと考えなければならぬじやないか。名目だけの保護費でなく、ほんとうにやつていけるくらいに増額される必要があると考えておるのでありますが、政府はどのようにお考えになりますか。
  63. 高橋眞清

    ○高橋説明員 生活保護費の引上げについては、大体物價もきまつたようでありますから、早急に決定したいと思います。それについてはただいまお審議願つております予算におきましては、大体物價の値上げに相当する額だけの引上げを予想して組んでございます。しかしわれわれはそれでは不十分であると考えて、それについてはなおどの程度まで扶助額を上げるかということについては、できるだけ早く必要な額が出るようにいたしたい。  なお收容施設費用でございますが、これについても現在の額が非常に少いということは認めております。これもできるだけ実情に應じた額を支給するようにいたしたいと思います。  なお婦人保護施設については、生活保護費用が少い関係收容人員が少いということはないのであります。これは人数をいくらたくさん入れても受ける額は同じでございます。人員に應じた金額しか出ないのでございます。そのために少くするということはないのであります。
  64. 山崎道子

    山崎(道)委員 そうじやないのです。それはたしかに人数だけしか出さない。ただ幽霊人口をもつて來てやらなければ経営ができないというようなことを耳にしておりますから、そういう惡へ追いやらなければ施設が成り立たないようなことでは困るというわけであります。  それから予算が通つてからということでございますけれども、五人家族で千五百円という額は、何としても妥当ではないと思います。暫定的な措置としても、これは相当改正する必要に迫られておるのじやないかと存じますので、特に私は一日も早くこれが実行されることを強く要望したいのであります。
  65. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 私は午前中のへい獣処理に関する質問を続行いたします。午前の質問に対してお答えをいただきましたが、それによれば屠畜檢査員が一警察において一名、あるいは一保健所において一名であるという内容をお聽きしたのでありますが、私はこの屠畜の檢査についてお聽きしたのであります。実は先日福島のある保健所に参りましたところが、その保健所の檢査員が自分一人であるために、とうてい檢査が完全にいかない。こういう実情を訴えておるのであります。なお聞くところによれば、この檢査ができないために、へい獣の肉類で市場へ流れておるものがあるのではないか。こういうことを私は聞いたのであります。もしこれが事実であるといたしましたならば、かくのごときへい獣の肉類が流れるというようなことになりましたならば、おそらく重大な問題が起るではないか。重大なる傳染病の発生にいたしましても、社会衞生上から考えましても、ゆゆしき問題である。こう私は考えたのであります。このような事実を私聞きましたときに、この問題がかくのごとき状態に放置されましたならば、今後ともほんとうに慄然となるようなことが事実になる。こう思いましたので、あまりにも屠畜檢査員が少いということ、そうして万一にもこの檢査員が少いということによつて、へい獣の肉が市場に流れるという事実が今後において起りはしないか。現在においても起りつつあるということを聞きましたが、政府はこれに対していかなる処置をするか、お聽きしたいのであります。
  66. 三木行治

    ○三木(行)政府委員 お答えいたします。屠畜檢査員がある縣において非常に少いために、へい獣の肉等が市場に出ておるやの疑いがあるという御意見でございますが、御承知のように今日食肉といたしましては、屠場法その他の法令によりまして、屠場で殺した肉、檢査員が檢査をした肉以外は市場に出ないのが原則でございます。例外としては、自家用屠殺といたしまして、料理屋、旅館その他の店でないもの、そういう食料品を賣らないものが、自家用屠殺をやる場合それから牛馬等が死んだ場合に、その肉を食うことができるのは食品衞生法においてただ外傷等で死んだ場合に限る。しかもそれを屠畜檢査員が檢査をしてよしといたします場合だけ、肉が市場に出るようなことになつております。言いかえれば屠畜檢査員の手を経ない肉は市場に出ないわけであります。ただいま御指摘になりましたようなへい獸の行が外に出るということは、私ども一應常識として考えられないのであります。すなわち疾病で死亡した際においては、家畜防疫員がこれをへい獸処理場に運ぶことを指示いたしまして、一旦へい獸潮理場にはいりました肉は、日でもひずめでも何でも、病氣で死んだ場合においては屠畜檢査員の指示以外は外に出ないことになつております。ただ考えられることはそれ以外に密殺という問題がありますが、そういう密殺よりも何よりも、御指摘になつたへい獸の肉が外に出るようなことがありますと、これはまことに公衆衞生上ゆゆしき問題であると考えて、慄然とするような次第であります。私どもといたしましては万一さような不都合なこと、あるいは手違い等のことがあつて、市場に出るような場合には、食品衞生監視員というものがあつて、それぞれ市内を巡回しておりますから、これらがこれは適当な肉でない。檢査のはんこがない。あるいは疑わしい点があるというように巡回して、これを調べるという措置を講じておるような次第であります。ただいま御指摘のように人手が不足のために、檢査不足であるというようなことはたいへんなことと思いますので、その点については、私どもも、それぞれ行政運営の面で少い縣に人を派遣いたしまして、休んでおるものを補充 逮等適切な措置を講ずるとともに、これらの職員の増員という点に、保健所機構の整備とにらみ合せて、十分の努力をいたしたい。かように考える次第であります。
  67. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 ただいまのお答えによりますれば、へい獸の肉が市場に出るということは考えられないということでありますが、現在市場に出ておるということも私は聞いたのでありまして、檢査員が一警察に一人、保健所に一人であるという事実から考えまして、こういうことは躍想されることであります。もしそういうことであるとすれば、あまりにも重大な問題であるので、私はここに政府に対して提唱いたしたいことは、いわゆる獸類衞生というものに対して、政府がもつと積極的に考える意想があるかどうか、もつとも一般の衞生が完全でない今日において、獸類衞生ということまであるいはどうかと思いますが、しかし今のような事実を思いますときにはなはだ重大でありますので、いわゆる獸類衞生というものにつきまして、今後は重大なる関心をもつようにぜひこの際お願いしたい。なおそれにつきましても、獸類衞生について最も重大な関係のありますことは、いわゆる獸医に関することであります。ここに政府におきましても獸医課というふうな特殊な衞生課を置きまして、この獸類衞生を管理するということを私は現在の実情から考えまして要望するのでありまして、これに対する政府の所見をお聽きしたいと思います。
  68. 三木行治

    ○三木(行)政府委員 御指摘になりましたように、獸畜共通の傳染病を防遏いたしますことは非常に重要な問題であります。また今日わが國民が特に蛋白質の不足の食事をいたしておるのでありまして、これらに安全ないい物を供給することは、これまた必要なことであること言をまたないことであります。厚生省といたしましても、今後大いに努力をいたしたいと考えておる次第でありまして、御指摘になりました獸医課の設置という問題につきましても、これらの関係官の勇氣を高揚するのみならず、実際の成果をあげる上に必要であることは私ども感じておるところでございまして、御指摘になりました点に向いまして、御期待に副うような努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  69. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 なお私お願いしたいことは、屠畜檢査員が全國において何名おるか、府縣別に調査を願い、あるいはこれに対する予算がいくらであるか、これの調査をしてぜひ御提出を願いたいと考えております。
  70. 三木行治

    ○三木(行)政府委員 御要求ございました資料につきましては、早速取運びましてお手もとに提出することにいたします。
  71. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 それではなお條文についてお聽きしたいのでありまするが、第一條において「公衆衞生上不適当であると認めるときは、」とございますが、この「構造設備が公衆衞生上不適当であると認める」というのはいかなる内容であるか、お聽きしたいと思います。
  72. 三木行治

    ○三木(行)政府委員 へい獸処理場の建物につきましては、市街地建築物法によりまして一應の規格があるわけでございます。しかしながらここで申しまする構造設備というものは、これらの構造設備の市街地建築物法のわくにはまるものであつて、その運営の面であります。たとえば障壁が十分であるとか、門戸がよく閉されておるとか、あるいは内部の周辺の汚水溜りはどうであるか、あるいはその他の清潔の感じはどうなつておるかというようなことを指称するものでございまして、それらが「公衆衞生上不適当であると認めるときは、」という趣旨であります。
  73. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 第十一條におしまして、魚類がいわゆる魚脂として製造せられる場合においても、第二條より第七條までの規定はこれを準用する。こういうような規定でございまするが、そういたしますると、私どものところは海岸でありまするので、いわゆる魚脂というものが製造されるのであります。その魚脂の製造に当りましても、やはりこれと同じような準用を受けることになりますと、第四條において人家の密集し、あるいは飲料水が汚染される場所、そのほか府縣知事が衞生上において害のある場所と指定する場所、こういう條項にあてはまるのでありまして、そうするといかなる結果になるかお聽きしたいと思います。
  74. 三木行治

    ○三木(行)政府委員 準用規定を適用いたしました場合に、人家の密集しておる場所というのは具体的にどうかという御趣旨であります。この法律考え方といたしましては、大体この法律によりまして大網をきめる。そうして具体的の問題は都道府縣知事にお願いするという趣旨どございます。從いまして人家が密集しておりましても、これらの施設が決して密集地帶に対して公衆衞生上心配がないという場合におきましては、これを許可するということもあり得るわけでございます。從いましていわゆる人家密集というものは一平方キロに何人以上もつているというような固定観念をもつてするものではなくて、公衆衞生上の見地から実情に副うような人家密集という考え方でございます。
  75. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 ただ私が一應お聽きしたいのは、魚脂の製造というものをへい獸処理場と同じくここに準用するというものはどうかと実は考えるのであります。いわゆる魚脂の製造というものはまた別個に取扱うべきものであつて、いわゆるへい獸処理場とは別ではないか。何ゆえにここに準用させるという意思であるかということをお聽きしたいのであります。
  76. 三木行治

    ○三木(行)政府委員 魚類の場合におきましても、その取扱につきましては、いわゆる鼠族昆虫が跋扈いたしますると、公衆衞生上の問題が多数発生いたすわけでございます。從いましてこの法律に要求いたしまするような清潔、清掃とか、あるいは構造上の不適当なことのないようにということを要求いたす次第でありまして、ただ申し上げましたようにこの法律は大網でございまするので、実情に副わないようなめちやなことは都道府縣知事がやらないということに相なる次第でありまして、その点の御懸念はなかろうかと存ずるのであります。
  77. 齋藤晃

    齋藤(晃)委員 ただいま私がお聽きしましたことによりまして大体了承いたしたのでありますが、このへい獸の処理につきましては現在まであまり考えられなかつたのでありまして、今後文化日本として発足いたしますにつきましては、かくのごとき問題には特にこの際関心をもつて政府の完全な行政の運用を願うことを切望いたしまして私の質問を打切ります。
  78. 有田二郎

    ○有田委員 ただいま私が質問したのに対しまして、法務廳から刑務所の中に十分の設備があるというような御答弁でありました。幸か不幸か私はまだ刑務所のお世話になつたことのないものですから、刑務所の内容はよく知らないのでありますが、この性病予防法によりますると、相当多数の人が刑務所の御厄介になるわけでありまするが、その多数の人を入れて、しかもそれの治療をやるということに対しての法務廳としての御確信があるか、承りたい。
  79. 高橋眞清

    ○高橋説明員 これはただいまも仰せのごとく、多数の者がこの病氣にかかつているものと考えられますけれども、その者が全部仕事を休んで病棟にはいつておらなければならないというほどのこともないものと思います。ある者はもちろん病棟に收容する必要がありましようが、またある者は軽度の作業を行いながら手当を受ける、そういう方面でも賄い得るのではないかと考えます。私も刑務所は数回参観しましたが、まだどの程度の数の者が性病にかかつているかということは詳らかにいたしませんので、あらためて調査の上お答え申し上げたいと思います。
  80. 有田二郎

    ○有田委員 第二十七條の2「賣いんのあつ旋、勧誘又はその場所の提供をした者が、その賣いんをする者につき、その者が傳染の虞がある性病にかかつていることを、過失によつて知らなかつたときも、また同樣である。」つまり三年以下の懲役、または二万円以下の罰金に処するということになつておりますが、これはわが党の総務会でも妥当を欠くというので反対をいたしておるのでありまするが、これについて法務廳の方の御見解を承りたいと思います。
  81. 高橋眞清

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。二十七條の第一項は御存じの通り故意犯を処罰したものでありまして、第二項は過失犯を処罰するもので、故意犯と過失犯をこの場合に同等の刑をもつて処罰するということにつきましては、三つの理由を考えられるのでございます。  第一点は、この場合の故意犯と過失犯、これがどの程度行為において差があるか、法律論をもつてしますと、惡性の反社会性の対象というものが非常に見分けがつかないのではないか、從つて刑の点においてもこれを同一に扱う。たとえば第二項の場合に、自分は氣がつきませんでした。これだけをもつてもし刑を免れるものとし、あるいは軽い刑に処せられるものとしたならば、正直者は損をするというような結果になるのではないかと考えられるのでございます。  第二点は、本法のような國民の安寧、公益、社会保險、こういうような問題につきましては、これは個人的な理由よりも、反社会性の対象というものを大いに考える必要があるものと思います。前例といたしましては、ポツダム宣言受諾に関する法令で出ましたところの有毒飲食物等取締令の第四條「第一條ノ規定ニ違反シタル者ハ三年以上十五年以下ノ懲役又ハ二千円以上壹万円以下ノ罰金ニ処ス過失ニ因リ同條ノ規定ニ違反シタル者亦同ジ」これは故意犯も過失犯も同樣に扱つております。  第三点は、本法はもちろん從來ありましたところの花柳病予防法を受継いだものでございまして、この花柳病予防法の第五條には「傳染ノ虞アル花柳病に罹レルコトヲ知リ又ハ知ルベクシテ賣淫ノ媒合又は容止ヲ為シタル者ハ六月以下ノ懲役又ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス」こういうふうに規定されております。申し上げるまでもなく「又ハ知ルベクシテ」というのは過失によつて知らなかつた者を、処罰するという意味でございます。この場合においても六箇月、五百円という同一の刑をもつて処遇しておるのでございまして、本法はその流れをくんだものでございます。以上三点の理由によりまして、同一の刑をもつて処するが相当と考えます。
  82. 有田二郎

    ○有田委員 一應法務廳の御見解はわかつておるのでありますが、大体自分が淫賣をしたのと違うのでございますし、過失によつて知らなかつた、知らなかつたというはつきりした條項がこの法文の中にはいつておるわけですから、知らなかつたということは、少くとも、いわゆる新憲法によつて人権の擁護をやかましく言われておる折から、いかに過失犯であつたところで、この條項の中にはつきり知らなかつたという言葉がはいつておるものに対して、同じように三年以下、二万円というような非常な重罰に処する——予防局長のお話ではそんな重い罪にするつもりはないと言われが、かような御見解を法律として決定した以上は、裁判所においては知らなかつた者といえども、三年の刑に処する権限をもつわけです。われわれとしては知らなかつた過失犯が同じように三年の刑に処せられるということはどうしても了承ができない。このことについて厚生省当局の御意見を伺いたいと思います。
  83. 高橋眞清

    ○高橋説明員 法務廳の方からこの点もお答え申し上げたいと思います。と申し上げますのは、ここに第二項に過失によつて知らなかつたと明文をもつて規定してございますが、御存じのごとく過失には重過晴と軽過失と二つありまして、軽過失というのは通常人が通常の注意をもつてすべきである場合に、その注意を怠つた場合、すなわち一般人を標準にしております。ところが重過失になりますと、特別の業務、たとえば自動車の運轉士あるいは汽車の運轉士などは、これは非常に高度の注意を要請されるわけでございます。通常の人ならその場合に居眠りするのも差支えないであろうと考えられるような場合でも、電車の運轉中の運轉手が眠つてつては重大問題でございます。從つてこういう人の過失は同じような程度の過失ではなくて、相当程度の高いもの、すなわち通常人をもつては当然許しがたいような過失があつた場合を意味するのでございます。わが國の法律は申し上げるまでもなく、外國法の流れをくんでおりまして、ドイつ法、フランス法では故意と過失というものは嚴然と区別しておるのでありまして、過失犯を処罰する場合には、ただ法文に規定があつた場合に限るのでございますが、英米法の流れをくみますと、故意と過失というものはすなわち本人の責任である、この一点から区別があるわけでございます。この際にそれを運用する場合の刑に軽重があるのみでございます。本法もある意味では英米法の流れをくんでいるのでございます。そして刑を「三年以下の懲役又は二万円以下の罰金」と相当重いように考えられるのでありますけれども、これは裁判所の実際の運用によりまして賄えるのではないかと考えられるのであります。簡單に例を申し上げますと、もう一点これにつけ加えますと、たとえば女子の性病というものは自覚症状が割合に少い、しかし自分ではこれはおかしいな、ことによるとかかつておるかもしれぬということも承知し、またよし賣淫の斡旋、勧誘または場所を提供する者が、どうも怪しいなと思いながらやつた場合は、これは刑法上のいわゆる未必故意、もうこうなつてもしかたがないのだと、結果の発生を予想してやつておることでございますから、これは故意犯として、犯意のある場合と同樣に扱うわけでございます。從つて過失によつて知らなかつたという場合が処罰の対象になりますのは、非常に例の少い場合、その適用の範囲も非常に狹くなるのでございます。第三点、三年以下の懲役、二万円以支の罰金、これは刑の量定については非常に幅のあるものでございまして、裁判官がその事情々々によりまして、最も妥当であるという刑を選択するものと思います。御存じのごとく、ある場合には過失の場合も三年までいつてもしかたがないのではないか。これは仰せの通りでありますけれども、自発によつてたとえば賣淫すべからずということを知りながら賣淫の斡旋をして者の処罰、重大なる過失によつて知らずにたとえば二年も三年もその商賣を続けて、数千人の者に同じような梅毒を感染させた、こういう二つの事例を並べてみますというと、故意犯必ずしも重からず、過失犯必ずしも軽からず、こういうふうに考えられるのでございます。
  84. 有田二郎

    ○有田委員 しからば第二十六條に「傳染の虞のある性病にかかつている者が、賣いんとしたときは、これを二年以支の懲役又は一万円以下の罰金に処する。」斡旋または場所を提供した者、これは特に過失によつて、知らなかつた者が三年以下、二万円以下の罰金。自分が傳染のおそれある性病にかかつておることを知つて自分が賣淫したときに二年以下、一万円以下ということで、罪が軽くて、過失によつて知らなかつた者は三年以下、二万円以下ということは法務廳としてはどういう御見解でそういうふうに御賛成になつたのであるか。
  85. 高橋眞清

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。二十六條は行為者であります。すなわちか弱い男が通常の場合は女がした場合、また実際の例から申しまして割合に無智な者が多いと見えまして、相当数の者、パーセンテージで申しますと、一七%くらいの者が世の中に性病のあるということを知らないと申し立てておるのでありまして、そういう弱い者が、また無智のために自分性病にかかつておりながら賣淫した者が二年以下、ところが、それを知らないで場所を提供した者が三年以下というのは、一見不均衡があるようでございますけれども、先ほど申し上げました通り、こういう「賣いんのあつ旋、勧誘又はその場所の提供」ということは、今後の社会においては抹殺しなければならないものではないかと考えられます。これは法務廳から提出しました賣春の取締法に、性病にかかつておらない者でも、場所を提供した者、あるいはしよう家を経営した者は、五年という重い刑をもつて処断しておるのを見ても、このことは御了解いただけるのではないかと考えます。
  86. 有田二郎

    ○有田委員 賣春等処罰法案はこれから審議される問題であつて、まだ法律になつていない。それをもつてきて御論議になることは間違いであると思います。しかもただいまの御答弁によりますと、かよわい女性ということでありますがと男女は同権になつておるのであります。そういう御議論は、私は成り立たないと思う。しかもさつきの法務廳の御見解としては、法の運営において、裁判所の運営においてやるのだ。こういうような御見解であるのですから、この場合において、あとが三年になつて、こちらが二年であつていいという、そういうふうにかよわい女性であるから、罪を軽くしてやりたいという裁判所の御見解であれば、いかような方法もとれるのでありまして、すでにそういうことはさつきの御答弁にもおつしやつておる。こういうような法律は、あなたの方で出したのであるから、これにこだわつておられるのだろうと思いますが、私はどう考えても公平に見て、みずから賣いんした者は二年以下の懲役、一万円以下の罰金である。過失によつて知らなかつた者は三年以下の懲役、二万円以下の罰金というのは、公平妥当なものであると私は思わないであります。さらにこれについての御見解を承りたい。
  87. 高橋眞清

    ○高橋説明員 ただいまの仰せは一應ごもつとものように考えます。なお私たちもよく考慮いたすことにいたします。ただ御存じのごとく、刑法には罪刑法定主義の原則がございまして、法律に成條なきものは何らの所為といえども、これを処罰することはできないのでございます。三年以下の懲役、二年以下の懲役と規定されておる場合には、累犯加重あるいは併罪加重というような、法律上に特別な理由がなければ、これを超えて裁判官といえども、いかに重大なる事犯といえども、この法律に定められた刑以上の処分はできないものでございます。刑の範囲内で処分する。申し上げるまでもなく、法三章をもつて足るというこの思想は、どこまでも尊いのでございますけれども、やはり裁判官の活動を基礎とし、國民の総意を反映させる上において、刑の上に軽重をつけて、その法の運営の全きをある意味でチエックし、保障する必要があると考えます。
  88. 有田二郎

    ○有田委員 法務廳の御説明を聽くまでもなく、定められたる法律以上に刑を科することができないのは当然である。これは法務廳から御説明を聽くまでもないことであります。かるがゆえにこの懲役の年限、あるいは罰金の多寡については、立法府としては愼重に扱うべきである。裁判官をして勝手なことをさせないように、最高の限界をつけるわけでありますが、私どもは第二十七條第二項について、過失によつて、知らなかつた者が三年以下の懲役あるいは二万円以下の罰金に処せられるということが妥当でない。もちろん実情は勘案いたします。過失によつて、知らなかつたからといつて、私はそれによつて幾分の罰刑の科せられることはいたし方がない。かように思うのでありますけれども、どうも三年以下、二万円以下ということは、故意に知つておる者、あるいは自分が傳染のおそれがあるということを知つてつて自分が賣いんした者よりも重い刑に処せられるということは、私はどうしても解せないのであります。少くともこの過失によつて知らなかつた者は五千円以下の罰金とか、あるいはその次の第二十八條の項にある一年以下の懲役、または五千円以下の罰金というような意味合いにおいて、差等をつけるべきだと思います。法務廳はどういう御見解をとつておられますか。
  89. 高橋眞清

    ○高橋説明員 事案によつては過失犯と故為犯は、やはり差等を設けられてしかるべきもとの考えます。先ほども申し上げました通り、またこれは厚生省からなる御説明があつたものと存じますが、本法のように公衆の保健衞生ということを主眼点とするものにつきましては、個人々々の公益を侵害したものに対する罪とは違つて、ほぼ同等の刑をもつて、一應の社会的威嚇と申しますか、みんなに警戒を與える。実際の運用の面では、これは裁判官がもちろん斟酌する。こういういき方でいくのがよいではないかと考えております。
  90. 有田二郎

    ○有田委員 過失によつて知らなかつたときは、少くとも一年以下の懲役、五千円以下の罰金であれば、十分こと足りると思うのでありますが、過失によつて知らなかつたものでも三年にすることが、妥当であるとお考えになつておられますかどうか。さらに承りたい。
  91. 高橋眞清

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。たとえば刑法の第二百十一條に「業務上必要ナル注意ヲ怠リ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ三年以下ノ禁錮又ハ千円以下ノ罰金に処ス、重大ナル過失ニ因リ人ヲ死傷ニ致シタル者亦同シ」とありますが、このうち「重大ナル過失ニ因リ人ヲ死傷ニ致シタル者亦同シ」は第一回國会で改正されたものでございます。第一項は先ほど申しました通り自動車の運轉手等の注意力を必要とする行動にある者が、過失によつて人を死傷さしたもので、第二項は通常人が重大な過失によつて人を死傷したものも、高度の注意力を必要とされている人たちと同じように扱う。こういうふうになつておりますので、この例から申し上げても、二十七條は運用の点にさえ全きを得れば、あまり支障の生じないものではないかと考えております。
  92. 有田二郎

    ○有田委員 ちよつとお尋ねしますが、人を過失によつて死傷した場合は何年でありますか。
  93. 高橋眞清

    ○高橋説明員 三年以下の禁錮または千円以下の罰金であります。
  94. 有田二郎

    ○有田委員 人を過失によつて殺した場合でも三年以下であります。自動車で過失で人を殺した場合に三年である。そうした過失によつて知らなかつた者も同じく三年である。人を殺した場合に三年が許されるならば、二十七條などはむしろ第一項も第二項も、二年とかあるいは一年に格下げすべきじやないか。かように考えるのですが、御見解はいかがですか。御見解をもつておられますか。
  95. 高橋眞清

    ○高橋説明員 私が今刑法の例を申し上げましたのは、御存じの通り刑法は明治四十二年にできたものでございまして、この前の國会ではただ罰金刑についてはある程度刑を上げておりますけれども、懲香については何も手が加えてないのでございます。これは私も裁判官の経驗があるものでございますが、正直に申し上げました刑をいくらに定めるか、これは裁判官の一生の問題であります。現在におきましても六十五才、七十五才という定年に達するまで、最後まで悩まされるものは、刑をいくらにするかという問題であると思います。私たちも場合によつては、寝ることもできなすほど悩んで、一つの刑を決定しておるのでございます。從いましてこれを三年にしたがいいか、あるいは人を死傷した場合が三年だから、もつと軽くしていいかということになると、やはり裁判官の良心と運営、これ以外には三年がいい、二年がいいと言い切ることは、私としてもできないことを率直に申し上げねばなりません。なおこの点については十分考慮いたすつもりではございます。
  96. 有田二郎

    ○有田委員 さらに今度は厚生省の方にお尋ねしたいのですが、第二十七條の第二項の過失によつて知らなかつたときもたま同樣であるというのを、一年以下の懲役または五千円以下の罰金——委員会において相談をして、こういう刑罰がいいということになりましたら、政府としてはどういう御方針をとられますか、そういうようにかえられたら、政府案を撤回するというようなおつもりであるか、修正されたならばいたしかたがないというようなお考えであるか、いかがであるか、伺います。
  97. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 お答えいたします。私どもとしてはこの原案でぜひお進み願いたいという考えであります。ただいま法務廳からお話がありましたように、ある研究されてここまで來たものでありますから、ぜひそうお願いしたいと思います。
  98. 有田二郎

    ○有田委員 過失によつて知らなかつたという範囲をひとつ説明願いたいと思います。
  99. 高橋眞清

    ○高橋説明員 過失によつて知らなかつたというのは、先ほど申し上げました通り、これが適用されるのは非常に狹いではないか、と申しますのは、自分は大体かかつているなということを承知の上でやつたとすれば、はつきりとかかつていることを知らなくても、かかつているなと考え自分はどうせ商賣だから、せつかく來たお客を帰すのもばかばかしいと考えてやつたというような場合ですと、これはもちろん故意犯として扱われるもので、先ほど申し上げました未必の故意犯であつて、過失犯ではないのであります。純粹な過失犯といいますのは、いろいろな手を盡したけれども知らなかつた——手を盡すというのはちよつと語弊がありますが、そのそぶり、あるいは朋輩その他からいろいろうわさを聞いておつたけれども、どうもそこまで病氣にかかつているということを知らなかつたというのが純粹の過失犯であると思います。しかもその過失というのは、先ほども申し上げましたが、軽過失でございまして、この場合は過失という言葉はついても、本法の対象にはならないと考えます。  重大な過失——すなわちその女の人か賣藥を買つて飲んでいる、あるいは身体に吹出物が出ているとか、そういうようなものを見ておりながら、しかも性病にかかつていることを知らなかつたというような例を申し上げますと、待合のおかみが、そこに出入りする女に吹出物が出ている、通常の常識で判断して当然女は性病にかかつているのだと知るべきであるにかかわらず、それを知らなかつたというような場合が、この場合の過失に該当すると考えます。
  100. 有田二郎

    ○有田委員 しからばこれらの賣淫の斡旋、またはその場合を提供した者が過失でなく知らなかつたというのはどの範囲ですか。
  101. 高橋眞清

    ○高橋説明員 実際問題として、過失ではなく知らなかつたというのは、相当デリケートではないかと思います。
  102. 有田二郎

    ○有田委員 過失によつてという言葉はとつたらどうですか。
  103. 高橋眞清

    ○高橋説明員 たとえば初めて会つた女であるが、その女はいろいろな状態から見て、そういう病氣にかかつている樣子はないというような場合、たとえかかつてつたとしても知らなかつた、しかもその間に過失がないということになると思います。
  104. 有田二郎

    ○有田委員 たとえば病院の方で治つたというので帰つてきて、その人が商賣をしておつた場合、病氣がうつつた。こういう場合には、やはり過失にはいるのですか、過失にはいらないのですか。
  105. 高橋眞清

    ○高橋説明員 たとえば本人が、以前病氣にかかつて病院に行つてきたんだ、では治つたという証明書を見せてくれというようにして、証明書を示されて、その証明書にちやんと全治したということが書ていあつたので、自分はいいと思つてつたところが、あにはからんやかかつてつたというような場合には、過失ではない。結局知らなかつたということで処罰の対象には全然ならないものと思います。
  106. 有田二郎

    ○有田委員 この問題はいろいろ論議しても結論には到達しないのでありまして、各派の理事会に諮りまして、御相談申し上げて、修正すべきものがありましたら修正したいと思います。
  107. 田中松月

    田中(松)委員 ただいま有田委員と当局との間で質疑應答されましたことについて、参考のために伺つておきたいと思います。もちろんこれから皆樣と相談してでなければなりませんので、原案の通りになるか、あるいは多少修正をするか、それは結論は出ませんが、そういう場合がかりにあるとした場合、当局においてはどういうお考えでしようか。これは何もその御意見によつてども左右されるわれでございませんが、言われないようなことで非常に困るというようなお含みでございますか、あるいは十分研究された末に、ここでいかように修正をやろうとも、それは國会の御自由だだというよなことでしようか。これは念のためにお伺いするので、決して当局がどう言われたから、こう言われたからといつて、それにわれわれ左右されるわけにはいかぬのでございます。その点をお含みの上、ひとつ意見を聽かしておいていただきたいと思います。
  108. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 お答え申し上げます。この法律につきましてはずいぶん長い間、ある意味においては小一年かかりましていろいろ関係方面とも御相談いたし、また関係の官廳とも相談をいたしまして、本議会に提出いたしましたもので、重大なる何か問題がおりますれば、立法府において御修正もしかたがないと思いますが、私たちとしましては、ずいぶん長い間研究をいたしまして、私たちの至らなかつた点は申訳ありませんが、重大なる過失でもありませんで、問題がなれれば、ぜひこのままで御通過願いますれば、非常に幸いだと思うのであります。
  109. 田中松月

    田中(松)委員 そういう重大なことを長い間研究してきたものを、そういうふうにされるとどうも都合が惡いというようなぐあいに納得できますけれども、いわばそれほど大きな問題でもない、多少色をつけるというような程度のことならという、そういう場合のことを私はお伺いしたわれでございます。
  110. 喜多楢治郎

    喜多政府委員 田中委員なり有田委員の御意見ごもつともと存じておる次第であります。本法案につきましても不審査以來長らく御審査つておる法案であると存じますので、でき得べくんば原案通り御承認願いたいと存じましてお題い申し上げる次第であります。
  111. 田中松月

    田中(松)委員 こういう場合は、たとえばわれわれがここで考えておること、意見を述べたことについて、それは言葉のあやでおつしやつたと言えばそれまででございますが、十分そういう点はもつともであるとか、同意見であるとかいうようなことも出ましたが、同意見であり、もつともであると思われるようなことを、それが私どもは、これはいわゆる法律技術のことはまつたく素人でありますから、いわゆる本質的なことを主として申し上げるので、その本質的なことを申し上げたことについては、ある点同感され、同意された点がありますが、しかしそれはそれとして、法文の上ではどうもこれ以外には書きようがないという場合、ではその法文をそのままにしておいて、われわれの意見を活かすような方法というか、工夫というか、こういう方法があります、こういう便法もあります、というようなことができるかどうか、そういう点についてひとつお聽かせを願つておきたいと思います。
  112. 喜多楢治郎

    喜多政府委員 田中委員の御意見に対しまして、法文につきましては、この通り立法いたします場合においても、具体的に実行する面においてはこういうふうにしたらいいというような問題がございますれば、それを運営の面によつて十分に活かしていくようにいたしたい。その一例を申しますれば、この間有田委員もおつしやつたように、法文にはございませんが、写眞を添附するようにしたらどうか。これはそういうふうにしたいと思います。この法文を活していただきまして、具体的な問題の場合におきましては、そういう方針をとりたいと思つておるのであります。
  113. 武田キヨ

    ○武田委員 性病の点につきまして、これは前に質問があつたと思うのでありますが、國民の全体にわたつて性病の診断は、これではできないわけになつておるのであります。ここでは結婚とか、妊娠とか、あるいは特殊な場合に性病に対する診断とか、それに対する注射という措置が講ぜられておりますけれども、現在の段階では私はこの法文だけで、はたして性病予防がどの程度までできるかということについては、非常に疑いをもつものであります。それについて、殊に最近賣淫取締法というものが発せられるといたしましたならば、私どもの一番恐れておりますことは、こういう性病が取締りの中から下の方にはいつてしまいまして、そこであるいは予想外のものが現われはしないか、こういうおそれをもつております。それに対しての対策を伺います。
  114. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 この疾病のいろいろな予防は、ほんとうに取締るというよりか、よく知識を教えまして、率先してそれに参加していただく。早期診断、つまり予防の徹底、こういう言葉を私どもよく使いますが、私たちのいたします衛生のいろいろな仕事に皆様方が協力されて、それによつて進んでいただけることが、私たちの衛生の仕事のプリンシプルであると思つておるのであります。この性病予防法におきましては、國民の徹底的な治療、それから予防衛生教育によつて、個人々々が病氣を防いでくれというようなことを初めに書きまして、その第六條あたりからいろいろ病氣のことが出てまいりまして、病氣を診たらお医者が、早目に直すようにしろ、またその人が他の人にうつすとあぶのうございますから、こういうことをしてうつさないようにしろ、あるいはおふろにはいるときはこうしろ、あるいは目にはいると淋病はあぶないから氣をつけろとか、いろいろな予防法を教える。またもらつてきたら、どこからもらつてきたかということがよくわかりましたら、それを届け出て、それを早く治してあげるということが、一番必要であると私は思うのであります。今朝ほど申しましたアメリカなどでは、戀人からうつされたら、戀人を連れて一緒に保健所に來る。こういうかつこうにまでなりますれば、衛生は満点であると私は思います。そういう意味において今後は性教育とか性病予防的な知識の普及とか、そういう方面で極力努力いたしまして、私たちのやる衛生行政はこういう一つの法則のもとにいたしますが、一番その根本は、よく教えて、自発的に協力していただく、こういう趣旨で性病予防法を実施していきたいと思います。
  115. 武田キヨ

    ○武田委員 予防局長のお話は一應よくわかるのでございますが、アメリカのように戀人が病氣にかかつた場合に一緒に病院に伴うというふうになれば非常にらくなんでございますけれども、現在の状態でございますと、むしろ日本ではこれを不名誉だというようなことで隠蔽する。結婚の場合でも、健康診断ということを一應申しましても、時にはこれが話を壊すようなことになつたというようなことで、どうも形式的なものになります。それから罰則によつてこれは相当重くされておりますが、この手続が非常に煩わしい。医師の方でこれを届けましても、二十四時間以内にこれを届けろとか、あるいは患者がある医師治療からほかの所に移轉するとかいうときに、この手続がはたしてとられるかどうか。また一方においては現にこれは私は山口縣のある保健所で聽いたのでございますが、保健所の方でこれを届れましても、これは表向きになつてはいけないから、内緒で医者治療を受けたい、それも医者の裏を叩いていくというふうな形になつているのがしばしばあると聞いております。ですから表面性病はあまり殖えておりませんが、実際において実に驚くべき数のものになつていると思うのでございます。こういうものをこの罰則によつて縛る、そうしてこれに対する監督といいますか、取締りといいますか、そういうものも今のこの法文にある程度の状態でやつてつたのであるならば、これは表にのみ流れて、実際治したいと思う者でも、あるいは表に出るから治せないというふうな状態になりはしないかというおそれもあります。これについて治療に対して、この法文にあります以外の自宅治療ということは今はほとんど考えられない状態でございますが、それでやはりこれ一方で押切つていくべきものとお考えでございましようか。
  116. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 要するに性病にかかつた人が早く性病を氣づきまして、徹底的に治療していただくことが一番結構なのであります。そういう意味におきまして性病教育を徹底的にいたしたい。たとえば「肉体と惡魔」、あの映画を見てから、あの附近の医者にたくさんの人が集まつてきまして、ある意味では恐怖症を招いたようなことがありますが、またああいうものを表に出すのはどうかとも思いますが、徹底的に治していく。こういうふう一方においてはよくわからせると同時に、一方においては治療の徹底をしていく。たとえばサルバルサンのごときは一、二本打つただけで放つておいたら將來重大なことになるのでありますが、これをほんとうに治していくということが、この法律で定められた点であります。そういう意味におきまして、この治療は自宅治療でも十分なのでありますが、ここに書いた強制治療は、人にうつす心配のある人が自宅におつたのではしようがないのであります。治療は全部家でして結構なのでありまして、何ら問題はありませんし、治療を速やかにしていただけば、数日間で治つてきます。またほんとうに治つたか治らぬか徹底的に調べまして、かかつた人は心配なく治せる、また治してあげることができると思います。しかしながら病毒をうつす心配のある人は、どうも仕方がないから強制入所させることになります。なお御指摘の二十四時間は、要するに二十四時間以内に郵便を出してもらえば結構なのであります。これも封緘はがきで出しまして無料になつております。それで縣内においてはどれだけの性病患者があり、またどれだけの人が治療をやつて、どれだけの人が治療を怠つておるということを漸次把握いたしまして、そうして性病対策に過ちなきを期していく。そうして性病の多いところから漸次教育する。こういうふうに漸を追うてやりたい。けさほども申し上げましたように、アメリカにおきましては戰爭前までは日本と同じ状態であつた、ところが戰時中に衛生局長が、性病は恥かしいものではない。臭いものにふたをするなと言つて、敢然として乘り出して、保健所で治療するようにしまして非常に減りました。先ほど申しましたように、数年ならずして戀人を連れていくようになつた。これまでの臭いものにふたをする観念をやめて、徹底的にわからしていく方がいいのではないかと存じます。なお私たちの手もとにあるものを見ますと、午前中齋藤委員から質問がありましたように、まつたく本に書いてあるような典型的な症状を見るのであります。こういう点は速やかにわからして、性の教育という問題について——これはちよつと上にいくと猥褻罪になりますので、そこのところは非常にむつかしいものがありますが、これも法務廳その他と連絡をいたしまして、この程度ならよかろうという線を引き引きやりたいと思います。
  117. 武田キヨ

    ○武田委員 今のは自宅療法ということですが、医者に通つております場合に、お互いの間で医者の方ではこれならば数日間で治るだろう。それじや頼むというようなとき、こういう場合は届け出なくてもいいことになりますか。
  118. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 性病傳染病なりというカテゴリーのもとにおきまして、全部届け出る。そして病氣の実情を知つて、縣がそういう対策を講じていく。それが性病予防の一番の要点であります。それですからぜひ届けていただく、こういうのであります。今はほんとうの名前を言うのが恥かしい人も、中にもあるかもしれませんが、これは今に平氣なことになるのではないかと思います。また自然にそういう病氣にかからなくなるのではないかと存じます。そういう性病予防法をきめていただきました趣旨に則りまして、極力努力していきたいと存じております。
  119. 武田キヨ

    ○武田委員 それでは性病傳染病として取扱われるけれども、ほかの傳染病のように不用意にうつるという場合もまずないと言つていい。ほんとうの特定の場合でなければ傳染しないのでございます。そういう場合も届出をして、そうして傳染病としての取扱いをなさなければならないということは、一應にわかるのでございますけれども、ただ自宅療法といいますか、もつと強いて言えば自己療法といいますか、そういうものはどうお考えになりますか。
  120. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 性病治療は、藥を飲めばうみが止まる。たとえば痳病であればすぐうみが止まると治つたと思う。昔は洗滌をいたしましたが、洗滌するとすぐうみが止まりますが、ほんとうに根治いたしませんので、かえつて慢性痳になつて人にうつす。そのくらいにまで、私たちの教科書にはありました。今後とチアゾール・スルファミん剤その他ができまして、これを飲みますと、徹底的に速やかに治ります。けさほど申しましたように、淋病は第一回の療法を五十二錠と計算して出しておりますが、それだけお飲みになれば治る。それだけで治らぬ人は、痳病であれば細菌檢査をする。黴毒であれば血液檢査をする。そうしてお前さんほんとうに治つたかどうか、しばらく経つたらまたいらつしやい。こういうふうに親切にしてやつて、一遍治つたら將來はさらに心配がないということが、この法律の一番の要点です。そういう意味におきまして患者の実数を知り、現將を知るということが第一番の要点であります。その意味におきまして届出その他の制度が設けられたわけでありますので、御了承願いたいと思います。
  121. 有田二郎

    ○有田委員 少年法の改正の問題につきまして、司法当局並びに委員長にお尋ねいたします。少年法の問題は第一國会で通りました兒童福祉と関連があるのであります。聞くところによりますと、司法委員会に合同審議を個人的に委員長はお申し込みになつたが、司法委員会の方で断つたというようなことを傳え聞いておるのでありますが、その間の交渉状況を承りたい。
  122. 山崎岩男

    山崎委員長 司法委員会の方へ対しましては、少年法の改正案につきまして、私の方から実はきのう出向きまして、委員長として委員外発言を求めまして委員長の許可を得まして、私に與えられた範囲内で、できるだけの努力を遂げまして説明を申し上げて帰つたわけであります。午後からは有田委員並びに田中委員等も出向かれまして、詳細にいろいろ説明を加えておいでであつて、たいへん有意義だつたろうと考えます。その後におきましてどうも少年法の改正案につきましては、空氣がおもしろからざるものがありますので、私も党内に帰りましてから司法案員の方々と懇談的にいろいろ話を進めておつたのでございます。その後本委員会におきましても、ぜひ合同審議を申しこんでみたらどうかというお話がございました。その際私もこれを申し上げまして、ただいまから合同審議を申しこむということは、本案を流すつもりであるならばできるが、なにしろ日程もないことであります。衆議院がそれを可決しまして、参議院に回付されることになりますので、日程もきわめて少いので、私の方から合同審議を申しこむための諸良の手続をとつておる間にはこの法案が流れるおそれがある。ところが少年法を改正する法律案だけは是が非でも通さなければならないといつたようなその節からの命令がある。そこで私といたしましては委員外発表でもつてその効果を上げていつた方がいいのではないかという考えをもつておりましたが、一應司法委員会に対しまして、厚生委員会との間において合同審査をするように申しこんでみろというお話でございました。それで先ほど司法委員長に会いまして、厚生委員会の空氣は合同審議を進めていただきたいというようなのだけれども、あなたの方の御都合はどうかという点を聽きましたところが、緊急を要することであつて、ぜひきよう中にでも上げてしまわなければならぬような状態である。そこで厚生委員の方から、合同審議を申しこんでくるということになれば日程がないことでありますし、かえつて委員会を運営する上においても都合が惡いような状況になるのであるがゆえに、どうか委員外発言を許しますから、委員の方においでを願つて発言をしていただきたい。委員外の発言を許されることがあれば、合同審議と同樣の効果があるのではないが、こういうお話でありましたので、私の方も事情は万やむを得ないことでありますので山崎道子女史の委員外発言をお願い申し上げて引取つてまいつたような次第であります。
  123. 有田二郎

    ○有田委員 ちようど法務廳の方がお越しになつておられるので、その御見解をお答う願いたい。昨年第一國会におきまして、参議院において佐藤政府委員程度の低い不良の少年までも全部少年裁判所で扱うとか、あるいは法務総裁が管理するということまでは考えておらないのであります。それはすべて仰せのように厚生省の所管として、なるべく刑事処分に付しないで、社会政策的な意味において温かい保護をしようというのが、この附則として現われた條文なのであります。こういう答弁があつたのであります。  さらに國務大臣として鈴木義男君が、つまり一般の不良少年と大部分の虞犯少年というものは、厚生省にお讓りをしたのであります。しかしここにいう少年裁判所で特に決定をしてまで強制保護施設に入れなければならぬ少年だけは、人身の自由を非常に拘束するのでありまして、普通に、厚生大臣にはやれないことになるのであります。これはどうしても一つの強制力、檢察権のようなものをもつたものが干與しなければならない部面でありますので、ごく少数だと思います。虞犯少年の中の特に少年裁判所によつて保護処分に付する旨の決定のあつた少年だけをお引取する。その他の大部分の虞犯少年はみな厚生省に属するのであります。かような政府としての答弁があるのでありますが、今回の少年法の問題について、政府原案に法務廳は反対であるというような御意向がありましたが。これについての御見解を伺いたい。
  124. 高橋眞清

    ○高橋説明員 ただいま御質問の事項は、私申訳ないことですが存じません。それは法務行政関係の少年矯正局で扱つておりますが、私は檢務局の方におります関係上、そのことについては全然存じておりません。御質問の趣旨は帰りましてから、よくお傳えすることにいたします。
  125. 有田二郎

    ○有田委員 このことにつきましては委員長においてよく法務廳の意見もひとつ聽いていただいて、われわれ委員会に御報告あらんことをお願いいたしまして、質問を打切ります。
  126. 山崎岩男

    山崎委員長 承知いたしました。
  127. 山崎道子

    山崎(道)委員 すでに同僚委員から愼重審議を進められておりますので、私から特に伺いたい点だけをごく簡單にお伺いいたします。  私がまず最初にお伺いいたしたいことは、昭和二十年十月十六日附で、連合國最高司令部から大日本帝國政府あてというので、花柳病対策に関する覚書というのが、この参考資料の中にいただいているのであります。こういう強い向うの命令がございまして、その後政府が今日までにおとりになりました対策について、ひとつお伺いをいたしたいと存じます。
  128. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 この命令は先ほど申し上げたように、これまで花柳病傳染病のカテゴリーに入れておらなかつたのでありますが、今度はこれを傳染病のカテゴリーの中に入れてやれということでありまして、ただちにこれによりまして、性病花柳病の特例を設けまして、これまでは一般の人は関係がなかつたのを今度は一般の人も入れて徹底的にやる。それから業態者の面をより一層嚴重にいたすようになりました。と同時に強制入所に必要な病院、診療所を相当数設けまして、極力花柳病の傳播を防ぐべく努力いたしておりましたが、昨年より一般の人々の診療に一層拍車をかけて從事してまいりました。毎月一千万円近くの治療費を出しまして、ここずつと続けてまいつている次第であります。  性病は戰後には、敗戰國といたしましては蔓延するのが当然であるのであります。私どもといたしましてはどうかそういうことにならぬように、極力努力をしてまいりましたが、皆さん方の御指摘のように若干殖えているというような氣持ももつのでありますが、一齊檢査その他等で、極力性に対する知識、それから性病、性観念を教えまして、一方この治療に対して拍車をかけている次第であります。
  129. 山崎道子

    山崎(道)委員 この際私よくわかりませんので、明らかにしていただきたい点は、この業態者というものでございますが、酌婦というのはどういう仕事をするものか。接待婦というのはどういうものか、その見解をひとつ聽かせていただきたいと思います。女給とか藝者はわかりますが、接待婦や酌婦のやる仕事がわからないのでございます。
  130. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 酌婦というのは客席へ出ましてお酌をいたす女性でございます。それをもつと引くるめて言うと、客の求めに應ずるものですが、要するに藝者は藝で鑑札を受けておりますが、酌婦はそうでありませんで、酌婦として鑑札を受けまして、そうして大した藝はないのであまりす。お酌をいたしますが客の求めに應ずるというのが酌婦であります。接待婦というのは昔はこれを娼妓と申しておりましたが、娼妓は女性解放でああいうことはいけないというので、すつかりああいう商賣は日本からなくなりました。それに代るべきものがこの接待婦という名前のもので、私たちが統計上使つておる次第であります。
  131. 山崎道子

    山崎(道)委員 大体わかりました。そこで私はこの法案を通讀いたしまして非常に弱いと思うんです。最初の書出しはまことによろしい。「知識の普及を図らなければならない。」「性病にかからないようにつとめるとともに、性病にかかつたときは、速やかに医師治療を受けなければならない。」というふうになつておるのでございます。それが第十一條、第十二條の方にまいりますと。逆に非常に弱くなつておる。「都道府縣知事は、正当な理由により賣いん常習の疑の著しい者に対して、性病にかかつているかどうかについて医師の健康診断を受くべきことを命じ、又は当該吏員に健康診断をさせることができる。」それから第十二條はやはり「健康診断をさせることができる。」というふうに相なつておりますが、これではたしてこの覚書による強い命令、これの趣旨が徹底できるお考えでございましようか。
  132. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 大体できるつもりでおるのであります。またこの問題は人権蹂躙とも関係いたしますので、一層そういうことのないように努力はいたしておるんですが、覚書の線には大体これでできると存じております。
  133. 山崎道子

    山崎(道)委員 できると存じておられましても、私は不可能だと思います。ぜひこれは強くやらなければ、何でも憲法違反であるとか、人権蹂躙であるとかいうようなことを言つていたならば、画期的な法律はできないと思います。それと同じでございますが、第七條では「医師は、性病にかかつていると診断した患者又はその診療している患者が、前條の規定による指示に從わないとき、云々」の條文があるのであります。居所の變更すら届け出でることになつておるのに、一方にはこういう條文では、この條文は私は死文にひとしいと思います。  それから第八條の「婚姻をしようとする者は、あらかじめ、相互に、性病にかかつているかどうかに関する医師の診断書を交換するようにつとめなければならない。」という條文でございます。私はこんな申訳的な條文で、はたしてこの目途とするものが果せるであろうかということを考えますと、日本の現段階においてはこれは死文にひとしいものになつてしまう。私はこれは断じて健康診断書を交換しなければならないというふうに、これを改正しなければならないと考えるのでありますが、その点についての局長のお考えを伺いたい。
  134. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 第十一條は、昔はこういう法律が一つもなかつたのであります。早く言いますとパンパン・ガールの檢診はよく議会でも問題になりましたが、政府といたしましては檢診が一切できなかつた。あれは先樣の御命令によつて連れてこられて、御命令によつて檢診した。今度の十一條で初めて、もしああいうことが必要であれば、当該吏員が檢診できることになる。もちろん変な人があればひつぱつてくる。それが檢診できることになる。私らといたしましては、性病予防関係で、これが一番困つておりました。そういう往來に立つてこびを賣つて商賣をしておる人たちの檢診が、要するに淫賣によつて挙らない以上檢診ができない。今度そういう心配のある人の檢診ができるようになりましたのが十一條でございます。これだけは非常に画期的なものになつております。これを逆に言えば、山崎さんもおつしやるような人権蹂躙ということもあつて、ここらあたりなかなかデリケートな問題になります。  それから婚姻のときの健康診断、これの望ましいことは私たち大臣を初めみな申しておりますが、実際問題といたしまして、ほんとうの健康診断ということは、実はむずかしいのであります。診断というものは皆さんも御指摘になりましたように、血液と小水だけで調べる。ところが血液と小水だけでは、それで梅毒がないとははつきり言い切れるものではない。失礼なことを申しますけれども、陰部を見なければほんとうの檢診はできない。そういうような関係もありますし、また血液檢査にいたしましても、普通簡單な血液檢査はワッセルマン反應であります。日本の実情ではワッセルマン反應を調べる設備が十分とは言えない。そういう意味において速やかに保健所を拡充され、あらゆる設備ができますれば、そういう血液檢査もできると思いますが、血液檢査だけでは梅毒は決定できない。梅毒は三、三、三と言つて、三週間目に初めて第一期症状が現われる。三月目に第二期症状が現われる。三年経つて第三期症状が現われる。初めて三週間ぐらいのところは、傷があつたくらいでは血液反應が出てまいりません。そういうのが非常にうつりやすい。そういうような関係で、これだけでもつて信用されますことも、医者としては困るところがあります。要はそういう病氣をお互いに知つて、かからないことが第一であります。どうしても必要があれば——ほんとうに心配ならば、話し合つて局部まで診てもらう。そんなことを法律に書けるものではありません。診断書には小水と血液反應、そのほかの点は当事者同志でよく話し合つていく。こういうように技術的の面、それから設備の面からいたしまして、困難ではないかと思いますが、つとめてそういう方向へ行くべきものと存じます。御了承を願います。
  135. 山崎道子

    山崎(道)委員 設備が足らないという御答弁でありますが、この設備は可及的速やかに完備しなければならないと考えます。それはどのくらいの期間があつたらできるのでございますか。
  136. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 設備の方から申しますと、このワッセルマン反應は血液をとりまして、それにやぎの血、モルモツトの血を加えまして試験をするのであります。相当の設備が要ります。保健所が拡充されまして、そこの設備も全部整えればよいが、今の保健所は人口十万の所に一箇所であります。そういうところで現在普通一週間に二件ぐらい。動物の関係で戰爭前でもそれくらいしかできない。そういう点で設備万端整つた所でなければできない。ワツセルマン反應だけでもそういう問題が起ります。同時に今申しましたように、ワツセルマン反應だけできめられるものでない。向うがどこまでも見せて差支えない、こういうことがおのずから性教育によつてできてくれば、私は当然できると思います。
  137. 山崎道子

    山崎(道)委員 どうも局長の言葉は少し私は變だと思います。やらなければならないということになれば、さような方向へもつていくのが私たちの立場であろうと思う。今政府法律はこうしておくということであるが、私は反対であります。法律はあくまでも理想であります。この理想へもつていくべくわれわれは努力しなければならぬ。なぜこれを強調するかと申しますと、このごろの花柳病の蔓延ははなはだしいものがあります。殊にこれが從來と違いまして、家庭に深くはいつております。先日私が耳にしたなまなましい話でございますが、結婚して三日目に花婿さんが失明をした。しかもその母の未亡人が生きる希望をただ一人の子供に托して教育して花嫁さんをもらつて、やれやれと思つたところが、三日目に失明した。いろいろ調査したところが、お嫁さんが性病をもつていたということがわかつた。こうした不幸なことが各所に繰返されておる。こういうことを考え、また生れた子供が流産したり、あるいは白痴になり、犯罪人になる。あらゆる品会惡の根源をなしておるものが性病であることを考えますとき、恥かしいから云々ということは、性教育の徹底によつて改められることでございまして、診断することによつて自分は潔白なからだであるという自信がもてる方法を、なぜいいまでもそういう状態に政府みずから置かんければならないかということに対しては、私は深い疑問をもつものでありまして、この條文はあくまでも診断書を交換しなければならないというふうにしなければならぬと思います。つとめなければならないというなまぬるい法律であるならば、交換する者は一人もありません、ただ新しい法律らしく見せかけるつもりのものならば何をか言わんやであります。
  138. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 第八條の問題は山崎委員御指摘の通り、そういう意味においては重要な問題でありまして、これについては再三再四診断書交換に対する請願も出ております。政府におきましても、この八條、九條について特に関係の人の公徳会式のものを数回開きまして、こういう問題に対してはいろいろ討論をいたしましたが、実際においてそういう診断は非常にむずかしいようで、医者の方から申しますと、そういう診断書を書けと言つても書ききれぬというのであります。書けない診断書を法律によつて書けというのは無理であります。実際においてそういう問題が起きておりますので、この意味においてその設備万端をよくし、そうして家庭教育、性教育、あらゆるものをいたしまして、性病をもつていることは罪惡であるという観念をもたせるように徹底的な教育運動を起しまして、みずから人が求めてくるようにならなければいかぬということを念願しておるものでございます。御指摘の点、私自身衷心残念に思うぐらい、弱い点が多々ありますが、氣持は非常に熱望に燃えておる者であるということを御承知願いたいと思います。
  139. 山崎道子

    山崎(道)委員 私はただいまの局長の御答弁はやむを得ず了承という程度にいたしておきまして、速やかに今言われたようにこの條文が改正されることを私は強く要望いたしますと同時に、この法案審議にあたりまして、公聽会等を開かれていろいろ審議したと言われますけれども、少くともこういうわれわれに関係のある法律ができたときには、われわれ厚生委員の中からも、こういうことに参画してよいのではないか。私たちは何にもこういうことを関知していないということを非常に残念に思います。  それから第十一條のところにまた返るのでありますが、非常に弱いと申されましたと同時に、人権蹂躙云々ということでございましたが、また何でもない者は断じてやらないのだというお言葉でございましてので、私はここにこういう事業をもつてとつお伺いしたいと思います。連れて行つたら遮二無二やらなければならないということでございます。これは六月二十四日の婦人民主新聞に取上げられた記事でございますが、「ぶり返すかその本性、耐えられぬ辱め、不当檢診、今度は夜の有樂町街頭から」というので、去る五月四日、聖路加病院の看護婦さん、大藏省の講習所教官の娘さんで、銀座教会の英語教師をしておられる方が、夜の八時ごろ勤務の帰りを有樂町ガード附近を通りかかると、やにわに警官隊が現われ、弁解も聽かばこね、むりやりに捕えてトラツクに乘せ、麹町署に連行された。トラツクで運ばれた二百余名のうち、小倉さんたちほか三十名は取調べの結果、身許が明らかになつたにもかかわらず豊多摩病院に運ばれ、一晩泊められて強制檢診の上、ようやく翌日帰された。その上病院では入院料として二百円を請求、早く帰りたさに一同は泣く泣く言う通りの料金まで支拂つてつてきたというのであります。そうして被害者の人たちは、言うに忍びない屈辱のシヨツクは生涯忘れられないでしよう。警察では私どもがやみの女でないとわかつても、平氣で、おもしろ半分に扱つていました。東京の女はみんな一度ははいる方がいいのだなどと暴言を吐いていました。その上、病院の寝具の不潔なこと、一晩で皮膚病に感染してしまいました。むりに連れて行つて一晩二百円の料金を拂えと言うのです。拂わなければ帰してもらえないと思うので、お金のない人は借りて拂いました。まじめな働く女性を罪人扱いはまつたくひどいと思います。こういうのに続いて山川局長、あるいはいろいろな人の談話が載つております。これは昨年もこういう問題が起りまして、私たちはうこれは重大問題だとして取上げて、G・H・Qまで繰りこんで行つたことがありますが、また再びこういうことがぶり返してきたというのは非常に遺憾でございます。夜が非常に遅かつたというならばいざ知らず、サンマー・タイムの八時といえばまだ明るいのであります。こういうことになりますと、勤める女性は安心して勤務もできないということになりますから、ここにもあるように、一應連れて行つて、その身分等が明らかになつた場合にもこれを病院に連れて行くということこそ、私は人権蹂躙だと思うのでございますが、予防局長は、連れて行つたらどうしても診断しなければならないというような指示をなされているのかどうか。この点を伺います。
  140. 濱野規矩雄

    濱野政府委員 これは速記をやめていただきます。
  141. 山崎岩男

    山崎委員長 速記をやめて……。     〔速記中止〕
  142. 山崎岩男

    山崎委員長 本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。     午後四時四十五分散会