○
木村(忠)
政府委員 お答えいたします。
從來の
民生委員命と本
法案との異
つておりまする要点は、大体大臣の
提案理由の説明の際に要旨だけは説明してありますが、若干詳細に申し上げてみたいと思います。
從來の
民生委員命と本
法案とのおもな差異は、大体八つに要約できるかと思うのであります。第一は
民生委員の選出方法の民主化をはかつたことであります。第二は
民生委員の資格要件を明らかにきめたことでございます。第三は
民生委員の心構えを法文の上に明らかに示したことでございます。第四は
民生委員の解職の
規定を詳細に
規定したことでございます。第五は
民生委員の任期を三年といたしたことでございます。第六は
民生委員の指導訓練に関する
規定を設けたことでございます。第七は
民生委員協議会の常務
委員並びに
民生委員事務所に関する
規定を設けたことであります。第八は
民生委員に関する費用についての國庫補助の
規定を設けたことでございます。以上の八つの点が
從來と変
つている点であります。これらにつきまして各項別に簡單に御説明申し上げます。
まず
民生委員の選出方法の民主化をはかつた点につきましては、現行の
民生委員命は必ずしも適当であつたとは言えない面もあるように
考えられますので、次のごとき三点につきまして
改正をいたしたのであります。その一つは、
民生委員の推薦母体である
民生委員推薦会の構成でありますが、これは
從來民生委員推薦
委員会という名をつけておりまして、そのこまかい点は省令の方に
規定いたしておりました。省令ではこの
委員会の
委員は
市町村長が單独でこれを委嘱することにな
つておりましたために、ややもしますと、
市町村長の独断に流れるおそれがありましたので、本
法案におきましては、これを
法案の第八條に明記いたしまして、推薦会の
委員は
市町村議会の議員、社会
事業の実施に
関係のある者、その他学識経驗のある者の中から
市町村長が
市町村議会の
意見を聽いてこれを委嘱する方法を採用したのであります。この
市町村議会の議員が推薦会の
委員に含まれておるのでありますが、これにつきましては議員の中から委嘱される
委員の数は、
委員総数の四分の一以内でなければならないというふうに
規定いたしまして、大部分の
委員を
市町村議会の議員で占めるということのないように制限いたした次第でございます。なお推薦会と名前をかえましたのは、
委員会という名称が使えなく
なつた結果、推薦会という名前にかえたのでありまして、性質といたしましては
從來の推薦
委員会と同樣でございます。
第二に改めました点は、推薦
委員会と同じようなものでありますが、
民生委員審査会の構成の点につきましてこれを改めたのであります。
從來民生委員審査会は
民生委員詮衡
委員会という名をつけてお
つたのであります。これもやはり省令で
規定いたしてお
つたのでありますが、本
法案におきましては、その名前を民主
委員審査会と改めまして、なおその詳細につきまして
法案第九條に明記いたしたのであります。会の名称を
審査会といたしましたのは、詮衡という文字が使えなくなりましたことと、
委員会の名称が使えない結果でございます。この
審査会の構成は三人以内の
都道府縣議会の議員、社会
事業の実施または兒童労働に
関係のある者、その他学識経驗にある者の中から
都道府
縣知事が委嘱することにしたのであります。その三名以内といたしましたのは、
委員全体が九人以内とな
つておりまして、大体その三分の一以内ということにいたそうというわけであります。
市町村の推薦
委員会におきまして四分の一という制限をつけたのと同一でございます。またこの
審査会の
委員長でございますが、これは
從來都道府
縣知事が委嘱することにな
つておりましたのを本
法案におきましては
委員の互選と
規定いたしたのであります。
最後に第三の点といたしまして、
從來規定のなかつた再推薦の
規定を
法案の第七條において
規定いたしたのであります。
市町村の
民生委員推薦会が推薦した者の中で、
民生委員として適当でない者が含まれておつたり、あるいは適当と思われる者がその中に推薦から漏れておつたりすることがままございますので、本
法案につきましてはそういうような場合においては、
都道府
縣知事が
審査会の網見を聽いた上で、
民生委員推薦会に対しまして
民生委員の再推薦を命ずることができることとしたのであります。なおこの再推薦を命じた場合において、
民生委員推薦会が再推薦をしない場合におきましては、
都道府
縣知事は当該
市町村長及び
審査会の
意見を聽いて、
民生委員として適当と認める者を定めて、これを
厚生大臣に推薦することができることとしたのであります。なおこの再推薦につきましては、再推薦をいたします期間を設けまして、いたずらに荏苒日を延ばすことのないように
規定してございます。
次に第二の
改正の点でありますが、これは
民生委員の資格要件を法文に明らかにきめた点でございます。これにつきましては旧來の
民生委員会におきましては、何ら
規定を設けていなか
つたのでありますが、本
法案におきましては第六條におきまして、当該
市町村の議会の議員の選挙権を有しておること、人格識見の高いこと、社会の実情に通じておること、社会福祉の増進に熱意のある人で、さらに
兒童委員としても適当であるということをその資格要件として明らかにいたしたのであります。特に最後の
兒童委員として適当であるということを明記いたしましたのは、社会福祉の増進に熱意があるということを中に含まれるようにも
考えられますけれ
ども、
民生委員が
兒童委員を兼ねるといいますか、
兒童委員は
民生委員をも
つて充てるということにいたしました
兒童福祉法の
法律上の精神からいたしまして、特にこれを明記いたしましてその点注意を喚起いたしたいと
考えましてこの文句を入れた次第であります。
次に第三の点でございますが、第三は
民生委員の心構えについて
規定を設けたのであります。
從來の
民生委員会におきましては、これらの点につきましては何ら
規定を設けていなか
つたのでありますが、本
法案におきましては第
二條、第十四條、第十五條におきましてこれを
規定することにいたしましたのであります。第
二條におきましては
民生委員は常に人格識見の向上と、職務上必要な知識及び技術の習得に努めなければならないということを示したのであります。これは
民生委員の努力目標を示したものでありまして、
民生委員の仕事が技術的になかなか複雜にな
つてまいりますし、
生活保護法、
兒童福祉法その他社会の
状態も複雜にな
つてまいりますから、その職務を執行する上におきまして知識技術が必要にな
つてくるのであります。從いましてその努力目標をここに
はつきりと現わしたのであります。
次に第十五條には
民生委員が職務遂行上心がけねばならぬ点を掲げました。それは個人の人格を尊重すること、個人の身上に関する秘密を守ること、次に人種、信條、性別、社会的身分、門地等によ
つて差別的な取扱いをしないこと、無差別平等に世話をしなければならぬということを明らかにしました。なおその取扱います事件の具体的な処理につきましては、合理的に行わなければならないということを
規定したのであります。人格の尊重、秘密の嚴守、無差別平等、合理的な処理、これらの四つの点を明らかにいたしました。さらに第十六條におきましては
民生委員はその職務上の
関係におきまして政治
活動に從事することを禁止する
規定を設けたのでございます。
次に第四の点でありますが、これは
民生委員の解職についての
規定を設けたのであります。
從來の
民生委員会においては第五條の但し書において、特別の事由がある場合には、任期中であ
つてもこれを解任することができるということを
規定したのであります。本
法案においては第十一條において、解嘱の事由を一々具体的かつ詳細に明文をも
つて規定したのであります。これは一つは「職務遂行に
支障があり、又はこれに堪えない場合、」次が「職務を怠り、又は職務上の義務に違反した場合」、三番目が「
民生委員たるにふさわしくない非行のあつた場合、」これらの場合においては
都道府
縣知事は、
民生委員の任期中においても、
民生委員審査会の同意を経た上でこれを解嘱することを
厚生大臣に具申することができるということを
規定したのであります。なおこの解嘱については、手続を愼重にいたしますことが必要でありますので、この場合においては、解嘱されようとする本人に対しまして、その旨を通告して、本人の
意見を聽いた上で、
民生委員審査会は
審査をすることを
規定したのであります。
民生委員には、二週間以内に
審査会に対して解嘱の
理由について
意見を述べる機会を與えることにしたのであります。
第五番目の点は
民生委員の任期の問題であります。
民生委員の任期については、
從來の
民生委員会においては、第五條においてその任期を二年と定めてお
つたのでありますが、
從來の経驗に鑑みて、二年でも
つてその任期を終えまして、さらに新しい人にかえるということはわずらわしいようにも
考えられますので、本
法案においては、いろいろな
状況を
考えまして、さらに一年延長しまして、任期を三年といたした次第であります。
第六番目の点は、
民生委員の指導訓練に関する
規定でありますが、
從來の
民生委員会においては、これらについては何ら
規定を設けていなか
つたのでありますが、先ほど申し上げましたように、
民生委員の職務はますます複雑になり、かつ職務上一定の知識技術を必要といたしますので、その指導訓練はきわめて肝要と
考えられますので、本
法案においては、第十七條と第十八條においてその
規定を設けたのであります。
次に第七番目でありますが、
民生委員会の常務
委員及び
民生委員事務所並びに
民生委員の常務
委員会の
規定を新たに設けたのであります。
從來の
民生委員会においては、これらについては何らの
規定も設けておりませんで、
都道府縣の施行細則等にその
規定を設けたのでありますが、本
法案においては、第二十一條においてその
民生委員会の
委員長とも言うべき常務
委員の
規定を詳細に
規定いたし、さらに二十五條において
厚生大臣の指定する市には、
民生委員事務所を設けることを
規定したものであります。この
民生委員事務所は
民生委員の事務を処理いたしまして、要保護者の便宜をはかることにしたのであります。もちろんこれは
從來から実際には設けてお
つたのでありますが、これを
本法では明らかに
規定として定めて設けさせることにしたのであります。
第八は、國庫補助の
規定でありますが、
從來の
民生委員令においては、第十三條において、
民生委員に関する一切の費用は、
都道府縣の費用として何らの
規定を設れてなか
つたのでありますが、本
法案においては、
民生委員、
民生委員推薦会、
民生委員審査会、
民生委員協議会及び
民生委員の指導訓練に関する費用は
都道府縣の
負担といたしまして、これに対してましては、國庫において二分の一の補助をすることを
規定いたしました。なお
民生委員事務所に関する費用は、市の
負担といたしまして、これに対しましては、國庫が二分の一、
都道府縣が四分の一を補助すべきことを
規定したのであります。
大体
從來の
規定と変
つておりますのは、以上の八点に帰着すると考おております。