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受田新吉君
恩給増額の
請願が多数出ておりまするが、私この多くの
請願の中で
相当数紹介をしておる
責任者として、この
請願の
趣旨の
説明をいたしたいと思います。
今未曾有の物價高騰の際に、
社会のあらゆる面は
一つとして革新を見ていないものはないのであります。しかし残念ながら
退職官公吏とか
教職員とか、こういう者の
恩給が昔のままでありまして、ために
恩給を受けておる適格者は悲痛の叫びをしており、困苦窮乏の苦しみは言語に絶するものがあるのであります。この点に対し受
恩給者がここにその
生活の打開をはかり、も
つて再建日本の基盤となろうと強く決意して、ここにこの
恩給増額の
請願をいたしまして、國家の恩養、
保護を受けたいと申出をしておるわけであります。特にこの
恩給生活者が現在どういうふうに
立場で他の一般
國民との間にギヤツプがついておるかということについて、
請願者の総意を推しはか
つてみますのに、
恩給を受けておる者は、か
つて國家の公務員として一切の営利事業に関與することが許されなくて、低給に甘んじて黙々としてその職責に邁進してお
つた人たちである。その
人たちが者退職後
恩給を保障されたがために、他の仕事にもつくことができなくて、目下ま
つたく五里霧中の中で
生活力を喪失しておるのであります。また新たに
制定されましたところの國家公務員法及びその関係法規は、退職後の
恩給支給をはつきり規定しておりますし、また今後規定しようとしておるのでありますが、これは当然にすでに権利を得ておる者にも及び、現行
恩給法の
改正が行われるということを信じておるますけれ
ども、それら
恩給を受ける
人たちの日常
生活は、そうした徐々とした手続の遷延を待つことができないほど急を告げておるのでありまして、その点につきまして、その実現を見るに至るまで、臨時の暫定処置を講じて緊急事態に対処せられたい、これが
請願者の根本的な
趣旨なのであります。ここで
昭和二十一年十月に
恩給に関する暫定措置法が施行せられまして、例の八百万ベースが実施せられたし同時に過程温給を定めまして、四十五円ないし六万五十円がきめられたと思いますが、これは当時の八万円ベースが水ぶくれの俸給であるというのでこの過程
恩給をきめたのでありますけれ
ども、今や
政府職員に対するところの新給與に関する
法律案が、六月一日かる実施されておるこの際、一千円ないし一万円の新しいこの俸給に対して、未だ依然として
從來の、あのささやかなりし時代の
恩給算定基礎をも
つてしておるということは矛盾もはなはだしいと思うのであります。この点につきまして、速やかに
恩給に関する暫定措置法の別表を
改正して、新しい給與に基く率をこの際速やかに実施の上に移していただきたい、こういう点
紹介議員として特に申し添えたい点なのであります。わけて
恩給生活者はその思想の堅固なること、及び平素
生活の上における黙々として國策に順應しておるという点においては、他のあらゆる階層の
人たちよりも、も
つて範とする
人たちばかりでありますし、この
人たちは
生活保護法の適用を受けることを快しとしていないという点もあります。七十、八十の老人が、
恩給の増額がないためにその
生活に苦しんで、巡礼行脚をや
つてこじきのような
生活をしているという例も聞いておりますし、また七十に近い受
恩給者が家族を多数抱えて、しかもそれらがかたわとか病人というような者を多数抱えて、その日の
生活にも困
つて、遂に罪を犯していたというふうな実例は、幾多
社会に起
つている現象なのであります。その在職中の尊い多くの國家への奉仕、それに対する報いとしてはありまに残酷であると思います。この点につきまして、國家として速やかにこれら
恩給生活者に、その
生活をある程度保障し得るに足るだけの
恩給増額を期せられたい。そして少くとも新して給與に基くところの
恩給の率を高めることに速やかに手をつけていただきたい。私この点に関しまして、
政府当局において
恩給増額に関して現にいかなる用意をしつつあるのか。わずかに
恩給を受けている一例を普通
恩給を受ける者にとりまするならば、普通
恩給の受給者の平均金額が四百六十六円にすぎません。これは
生活保護法の扶養を受けている
人たちに比べても、はるかに下まわ
つている現状であります。こういうような実例で
恩給とは名ばかりであ
つて、ほとんど燒石に水のようなことに対して、何とか手を打という御努力をされていることは十分お察ししますが、現実の上に六月一日、きのうから実施されたこと俸給に対する
恩給生活者の
保護という点についてどいうい御用意をしているか、そして御用意がしてあるならばたいへん結構でありますから、速やかに実施していただきたい。なお用意が不十分であるならば、この際根本的に、
恩給生活者の、現在わずか三億円に過きない
國庫負担に対して速やかに増額をせられて、これらの
人たちに対して、喜んで日本再建の大業を完遂することができるように一役員わしていただきたい。こう
考えるものであります。先般教育会館において全國約一千名に余る受
恩給者が集
つて、ある老骨たとが
ほんとうに悲壯な叫びをしておりましたけれ
ども、この点に関しましても國家は速やかに何らか愛情のこも
つた政治を断行していただいて、この敗戰後の日本を強く起ち上らせるところの男氣をも
つた人たちを、
政府として一人でも多くつく
つていただくことに政治の面を向けていただきたいと思います。
恩給増額の
請願の
趣旨を申し述べたついでに、
紹介議員としての
意見をこれに加えまして、特に
政府当局の絶大なる御支援をお願い申し上げたいと思う次第であります。