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1948-05-26 第2回国会 衆議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月二十六日(水曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 松原 一彦君    理事 久保 猛夫君 理事 竹谷源太郎君    理事 冨田  照君       中山 マサ君    平井 義一君       片島  港君    河合 義一君       高津 正道君    玉井 祐吉君       戸叶 里子君    田中源三郎君       中曽根康弘君    後藤 悦治君       田中 健吉君    早川  崇君       木村  榮君  出席政府委員         経済安定政務次         官       西村 榮一君         経済安定本部副         長官      田中己代治君         総理廳事務官  國塩耕一郎君         経済安定本部経         済査察官    司波  實君 五月二十五日  久保猛夫君が議長指名委員に補任された。 同月同日  委員西田隆男君辞任につき、その補欠として後  藤悦治君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  理事大宮伍三郎君の補欠として久保猛夫君が理  事に当選した。     ————————————— 五月二十五日  行政官廳法等の一部を改正する法律案内閣提  出)(第六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事補欠選任に関する件  経済査察廳法案内閣提出)(第六〇号)     —————————————
  2. 松原一彦

    松原委員長 開会いたします。  さきに人選の都合で理事一名の決定を保留されておりましたが、これは御了承通り委員長指名となつておりますので、ただちに指名いたします。昨二十五日決算委員になられました久保猛夫理事にお願いいたします。
  3. 松原一彦

    松原委員長 昨日に引続いて経済査察廳法案に対する質疑を継続いたします。田中君。
  4. 田中健吉

    田中(健)委員 私はきのうおらなかつたものですから、あるいは前の質問と重視する点があるかもしれませんが、総括的に質問をしてみたいと思います。  まず第一章の中央経済査察廳査察という意味と、それから経済範囲についてお伺いいたします。またこれが取締りを含む意味査察であるか、あるいはまた監査を含む意味査察であるか、これらの点についても御説明を願いたいと思います。
  5. 司波實

    司波政府委員 ただいま御質疑のまず査察意味から申し上げます。言葉自体といたしましては、非常に漠然とした言葉でございますが、これに含ませようとしておりますのは、一口で言いますならば、統制経済励行確保のための諸方策、諸行為でありまして、その中には、取締り監査隠退藏物資摘発、その他統烈経済励行確保のためにする啓発宣傳とか、その他の行政的な方法意味するのであります。また経済範囲は、第一條の一項に掲げてありますように、物資生産配給及び消費並びに賃金を除くところの物價に関する問題でありまして、廣く経済といわれる中から、たとえば金融とかあるいは賃金統制とかいうものを除く意味であります。
  6. 田中健吉

    田中(健)委員 調査というのはどの程度意味をもつのでありますか。
  7. 司波實

    司波政府委員 ここに調査とありますのは、実質的には経済事犯捜査というのと似た内容をもつておるのでありますが、あとの各條にも現われておりますように、経済査察官の行う犯罪調査は、從來檢察官とか司法警察官行つてつたところの犯罪捜査方法その他におきまして相当異つた点があります。要するに、実力行使を背景としないところの、いわば頭で捜査するというような意味で、異なる言葉を用いておるのであります。法律的には檢察官なり司法警察官の行う犯罪捜査刑事訴訟に基くものでありますが、ここにいう調査はこの法律によつて行うものであります。その他、ただいまの例示の中には漏れましたが、要するに第一号から第八号までに掲げられておる経済統制励行を確保するための、もろもろの手段全部をこの査察の中に含ましめておるのであります。
  8. 田中健吉

    田中(健)委員 供出促進という言葉はどういうことを意味するのですか。供出促進査察官がやらなくても皆やつておると思うのですが、この供出促進ということは、権力を含んでやるのですか。どういう意味促進ですか。單なる精神的なものであるかどうか。
  9. 司波實

    司波政府委員 ここに供出促進と書いてありますのは、権力を含む意味でありませんで、隠退藏物資調査いたしました結果、最近出ました過剩物資等活用規則にいわゆる不正保有物資と認められた場合に、あるいは場合によつては檢察廳その他の正規の犯罪捜査機関に告発して、起訴してもらつて、没收してもらうとか、その程度に至らないものにつきましては、その所有者にこちらから政府買上げてもらうような処置をとるように勧告するという程度でありまして、査察官自体といたしましては、強制的にそれを出せというような強制買上げ命令というものは出す権限をもたないのでありまして、そういう強権的なものは含んでおりません。
  10. 田中健吉

    田中(健)委員 これは、たとえば農家主食糧供出の場合に、今事前割当というものがあります。そこで、事前割当されておる範囲において農家供出がはかどらないというような場合にもやはり経済査察官はこれに関與する、そういう意味供出促進か。隠退藏物資にかかわる供出促進であるのか。この点を明確にしていただきたいと思います。
  11. 司波實

    司波政府委員 ただいま御指摘食糧供出というような問題は、第八号の「隠退藏物資調査及び供出促進」の中には当然含まれないのであります。この隠退藏物資という概念は法律的には若干疑義があるのでありますが、從來のいきさつからいろいろな諸法令にも取上げられておるのでありまして、嚴密に言いますと、昨年の三月に公布になりました隠匿物資等緊急措置令ににわゆる隠退物資、退藏物資等、その他隠退藏物資に関する諸法令が出ておりますが、そこについておる範囲であります。從つて主食糧等につきましては、いわゆる隠退藏物資の中にはいらないわけであります。供出促進というのは、隠退藏物資調査隠退藏物資供出促進の両方へこの隠退藏物資がかかるわけであります。その点法文上でも明瞭ではないかと思うのであります。
  12. 田中健吉

    田中(健)委員 隠退藏物資調査及び供出という中には遊休物資ははいりませんか。私の言う遊休物資というのはこういうのであります。正当に使用されなければならないものであるけれども、資金関係その他いろいろな関係で使われておらないものがあります。こういつたようなものが隠退藏物資にはいるかはいらないか。この点をお聽きいたします。
  13. 司波實

    司波政府委員 遊休物資というのは未だ法律語にはなつていない用語でありまして、その範囲は必ずしも明確を欠くのであります。ただ、ここにいわゆる隠退藏物資というのは、今年の三月二十四日附で公布されました過剩物資等活用規則の中の不正保有物資、言いかえますと、入手径路が不正だ、やみ購入してもつておるものであるとか、あるいはいろいろな諸法令で書かれた申告義務に違反して所有しておる物資とか、そういう不正な物資なのでありまして、遊休物資の中にはもちろんそういう不正なものも含まれておりますから、その限りにおきましてはこの中に含まれる。しかし何ら法規にも触れていなくて、ただ遊んでおる、それが現に活用されていないというような物資経済査察官が扱うところのここにいう隠退藏物資の中には含まれておらないのであります。
  14. 田中健吉

    田中(健)委員 私のこれから申し上げることは、あるいはちよつとピントがはずれておるかもしれませんが、その場合にはお許しを願います。建築の場合ですが、建築には建築統制規則があります。そこで建築も、ある意味において、建築統制が行われておる限りにおいては、やはり第一條経済統制にはいるのではないかと思います。そこで、隠退藏という言葉は適切でないかもしれませんが、たしかに遊休的な建築物があると思います。空家があると思います。しかもその中に設備されてありますところのいろいろの家具、什器、そういつたようなものは明らかに隠退藏じやないか、かように考えられますが、私はそういうこまかいことを議論しようというのでなく、遊休建物のようなものもこういうような場合にいかがいたすものであるか、このことについてお伺いしたい。
  15. 司波實

    司波政府委員 ただいま御質問のような遊休建物というような不動産は、隠退藏物資の中には含まれておりません。またこれに附属する家具その他のもので遊休しておるというようなものにつきましては、從來申告義務を課した諸法令の中にはないように記憶しておるのでありまして、結局隠退藏物資の観念の中にははいらないのであります。
  16. 田中健吉

    田中(健)委員 建物の問題は國民生活上きわめて大きい問題ですが、この法律は住の方は相当疎んぜられておると思います。それを別項を設けてこれに入れ得ることができるかできないか、入れる御意思があるかどうかというところの御感想、御意見をお聽きします。
  17. 司波實

    司波政府委員 その問題につきましては、実は昨年の秋ごろに当院の隠退藏物資特別委員会で、独自の法案をつくろうということが審議された当時にも問題になつた事柄でありまするが、政府といたしましては、あまりに対象廣汎にすることについては考慮を要するという考えから、隠退藏物資摘発対象をそこまで拡げるということについては、現在においては考えていないのであります。
  18. 西村榮一

    西村政府委員 ただいま田中委員の御質問は、法律的にこれを一項加える意思があるかどうかということでありましたか、本法案性格上、これに加えるということは少し至難なように思うのであります。ただ御指摘の点については、今建設院その他において計画中でございまする庶民住宅の問題も、資材並びに資金の問題において多くの制約を受けておりまして十分に進展いたしておりません。そういうふうなさなかにおいて、田中委員の御指摘のような、遊んでおる家屋はそのままに放つておくということは、申すまでもなく社会正義に反するのでありまして、これに対してどう取扱うかということは、一面においては社会道徳に照らして、社会的な圧力によつてそれを解決するということと、それからその居住しておる人々の疊の数とか部屋の数とかいうふうなものを対象といたしまして、課税その他の方法においてそういうふうな空いておる大きな屋敷が、急速に道徳課税方法において開放されるような方法をとりたい。これは本法とは関係ございませんが、経済安定本部としてはさような方針で今研究中でございますので、御了解を願いたいと思います。
  19. 田中健吉

    田中(健)委員 先走つたことをお伺いするようですが、今予算も追加しておるようなお話でありまするが、大体全國のどことどこに置くということは、管区の下にざらに各府縣に置くと思いまするが、廳の廳舍のようなものはどういうふうな手当をなさつておるか、現在のところはいかがでしようか。
  20. 司波實

    司波政府委員 お尋ねの問題につきましては、現在建築その他に非常に隘路のあるときで困難を感じておるわけでありますが、現在のやり方といたしましては、地方経済安定局長中心になりまして、各府縣の知事あるいは檢事正その他に建物斡旋方を依頼いたしまして、縣廳廳舍の一部を借り受け、あるいはその方の多少余つておる建造物の一部を借りるとかいうようなことで、目下折衝し準備を進めておるのであります。最近の各地からの報告によりますと、半数以上は大体見透しもついたように了承しております。
  21. 田中健吉

    田中(健)委員 係官のようなものも、大体雇入れる下準備はできておるのですか。
  22. 司波實

    司波政府委員 人員整備の問題につきましても、中央におきまして幹部の人選について準備を進めております。そして現在のところにおきましては、大体中央課長管区課長はもちろん、地方廳長、部長の程度におきましては、ある程度人選ができております。それのスタツフにつきましては、大体地方に任せまして、あるいは從來経済警察に從事していた頭脳優秀な警部補以上の者とか、あるいは民間人商工局その他の職員という方面に物色の手を伸ばしまして、着々準備を進めております。從つてこの法案が今月中に御審議が終了いたしまして、六月一日から実施になるとしますと、五千人の定員がただちに充足して発足するということは大体不可能とは存じますが、三分の一程度人員を充足することは可能ではないかという見透しでおります。
  23. 田中健吉

    田中(健)委員 出先廳を設けるにあたりまして、地方寄附とか、何か威圧を加えて建物を出さしたりすることは絶対いたさないという御約束ができますか。從來出先廳を設けると、よく寄新を募つて建物を建てさせるやら、また盛大な祝賀会をやらせるやら、協賛会を設けさしておりましたが、今後は特に廳の性格に鑑みて、全部國庫賄つて地方に迷惑をかけないと御約束ができますか。
  24. 西村榮一

    西村政府委員 ただいまの御質問に対しましては、廳舍新築等はなるべく避けまして、活用すべきものは各府縣廳の隅つこであるとか、倉庫を改造するとか、万やむを得ないものはその土地の資材とにらみ合わせまして新築いたしまするが、なるべくならば、新しく國庫の負担にかからぬように廳舍準備いたしたいと存ずるのであります。從つてあなたが御指摘のように、廳舍をつくる寄附、あるいは開廳祝賀会に対する費用を地方民に懇請するというふうなことは絶対にしない方針でございます。また將來そういうことが起きましたならば、嚴重にこれは処罰するつもりでございますので、御了承を願いたいと思います。
  25. 田中健吉

    田中(健)委員 最後にもう一項目だけ、これは念のためにお伺いしておきたいと思いますが、よくこういう廳ができますると相当に経理が問題になります。こういう廳ができますと、査察官中心といたしまして、地方においてはグループができ上ります。調べられそうな連中が中心となつて纖維工業会であるとか、あるいはまた石炭の何会であるとか、野菜物の何会であるとかつくり、一席宴を設けて食わしてもらうことが今日までの通習であります。例を言えばたくさんありますが、略します。そういつたように、とかくこの役人が中心となつて、世間に疑惑を起すようなグループをつくつたり、あるいは会合に臨んだりする。これは限度の問題でありまして、私は何もかもみな縛りつけてしますことを申し上げるのではないけれども、会ができ上る。現在私の縣においても、それを目撃しております。現に商工課の纖維係を中心として、後援会のようなものをつくり、子供に対しては奬学資金をやるというようなことがさらに行われている。そういつたようなまぎらわしいことを一切やらせないだけの固い決心のほどを、この際西村政務次官からお伺いしたいと私は思います。  なお最後に附け加えておきたいことは、経済査察廳名称監察廳としたらいかがですか、この点もそういうように直す御意見があるかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  26. 西村榮一

    西村政府委員 ただいまの査察官のみならず、一般経済を担任しておる官吏中心となつて民間との間にグループができるということは、私もよく聞いておるのでありまして、特に統制経済下においてはその弊害が著しいということは、田中委員指摘通りでございます。しかしながら本査察官におきましては、これは單に経済違反を取締るという警察的な立場から、日本産業を育成し、それを保育するという任務の一面を担任いたしておりまするとともに、將來経済違反を犯すべき危險のある場合においては、これをなるべく犯罪人を出さないように防衞していくというふうな、保育取締りというものを兼ねておりますので、その立場から経済査察官も、從來警察官よりも、より一層民間の方々との接触は多いと思うのであります。しかしながらそういうふうな任務性格はもちますけれども、同時にその任務性格からくる接触面は多くはございまするが、それがまた一方に犯罪的な行為、あるいは世人の誤解を招くというふうな行為まで発展するということは、嚴に愼みたい、責任をもつてその範囲限界を嚴守していきたい、こう考えておるのであります。  それから第二点においては、経済査察廳名称監察廳にしたらどうかというお言葉でありましたが、当初監察廳という名前も考慮されたのでありまするが、何か監察廳ということになるとおつかないような氣がして、どうもそこに官民遊離の感情がわいてくるというので、一番無難な経済査察廳といたしたのでありまして、私の考え方、安本の考え方といたしましては、監察廳よりも査察廳の方が、言葉がやわらかくていいのじやないかと解釈しております。
  27. 田中健吉

    田中(健)委員 終りました。
  28. 松原一彦

  29. 中曽根康弘

    中曽根委員 一般的なことをお尋ねしたいと思います。まず第一に、私はやはり統制経済というものが必要であつて、今まで警察がそれをやつてつたのが、警察が解体された結果、何らかの機関によつてこれが代替されなければならぬということは認めるのでありますが、しかし今の経済の実態を考えてみると、やはり政府というものは、経済に対する自分の能力限界を知らなければならないと思います。統制波及という原則によつて統制の波が末端にまで及ぶということはわかりますが、ごく全般にわたつてこの統制の完璧を期するということはできないのであつて、やはり自然的な面というものを敬重しなければ、経済の円滑な運営はできないと思います。そういう面から考えますと、私はこれくらいの中央経済査察廳というような一つの経済構成励行させる機関をつくる面と、反面においては統制をまた解除して、これくらいはもう一般に任せるのだ、つまり整理強化というか、ごく大事な部分だけは政府が徹底的にやるが、しかしそれ以外は民間の自然的な力に任せる。こういうことが同時的に行われなければ、私はこの中央経済査察廳を能率的に運営することはできないと思う。從つてこの法案を成立させる條件として、現行の統制経済を徹底的に改善し、不必要なものは徹底的にこれを削減する、こういう御決意がありや否や、まずお伺いしておきたいと思います。
  30. 西村榮一

    西村政府委員 お説の通りでございまして、統制経済を実行いたしますには、その統制が十分に行われるかどうかということの行政上の能力を判断するとともに、政治的な強弱という政治能力というものも考えて統制経済を実行しなければならないということは、まつたくお説の通りであります。從つて今後日本のとるべき体制は、一面においては外國から食糧その他の原資材の輸入を懇請しておる。しかもその支拂代金が支拂えないで当分借りておるというこの現実から言いますならば、物資をむだにしないでそれを合理的に配給し、かつまたそれを使用するという意味において、統制は嚴格に行わなければならぬと私うのでありますが、一面においてただいま御指摘のように、統制経済を実行する行政的な能力というものを考えてみますならば、同時に日本経済ソヴイエト流計画経済が実行できないということも、現実的な日本経済立場を考えてみますと、今後においては統制経済は、私個人といたしましては、大幅にはずすべきものであると考えておるであります。從つてこの経済査察廳の問題も、当初は統制経済励行経済違反取締り重点をおきますが、漸次それは日本経済の育成という方面任務が移行していかなければならないと考えておるのであります。しからば日本統制経済行政能力が那辺まであつて、どの辺において統制のわくが大幅に撤廃されるものかということになりますと、ただいま経済安定本部においては鋭意事務的にそれを檢討するとともに、関係方面にもまた御了解を求めなければならない事項がございまして、われわれの希望通り達成するや否やは疑問でございますが、私はあなたの御指摘の御趣旨とはまつた同感であります。この意味において事務当局において、はずし得られるものは大幅にはずすというふうな方面に、準備を急いでおります。但しそれは自由主義経済に復元するという意味でなしに、統制経済を最も集約的に、それを効果あらしむるための末梢的な統制をはずす。かような意味において、御趣旨を体して事務的に今檢討中でございます。
  31. 中曽根康弘

    中曽根委員 西村政府委員のお答えにまつた同感でありますが、この中央経済査察廳法案というものは、実質的に活動する時期を考えてみますと、かりに六月に実施するとしても、大体四箇月間の査察官吏訓練期間その他を考えると、十月以降に実質的な活動が展開されると考えます。十月以降における日本経済の見透しというものを考えると、私はやはりある程度外資の援助が実効を発揮してきて、そうしてかなり物も出まわるようになるだろうし、人心も明るくなるだろうと思います。そういう矢先に、またこれに逆行するような冷たいあいくちを國民の前に投げかけるような感じを、この経済査察廳法案というものを実施することによつて、與えやしないかということを実は危惧するものであります。実際日本のインフレを考えてみますと、もちろん財政面あるいは金融面における赤字を克服するということは大事でありますが、やはり生産を殖やすことが絶対大事である。いろいろ経済條件から見て、日本再建の緒につくのは十二月以降くらいのように考えられるのでありますが、その際に大事なことは、日本経済安定恐慌に耐え得るだけの抵抗力を培つておくことである。それをやるためには今のような統制をそのままやつてつたのでは、私は絶対にできないと思う。ちようどソ連がネツプをやつて漸次共産主義から脱却したときのように、相当な勇断をもつて、不必要なものは一切撤廃して民心を明るくする、これ以外ないと思うのですが、ちようどその時期が、私はこの経済査察廳法案というものが実質的に活動するころ行われるのではないかということを考えておるのであります。そういう点からどうしても整理強化というか、ともかく今おつしやつたようにごく緊要な部面について徹底的に行うということが必要であろうと思うのですが、具体的にどの方向にまたどういう時期にどういう程度統制を改革していくか。この点をはつきり聽きしておかぬと、今までの政府の御答弁では非常にあいまいであつて、私は納得できないでありますが、もう少し具体的にお聽かせ願いたいと思います。
  32. 西村榮一

    西村政府委員 御指摘のごとく日本経済の安定は、大体十月、十一月ごろから國民経済並びに産業界安定度が深まるという私どもは明るい見透しをもつておるのであります。從つてその経済の安定化する際に冷たい水をかけるような本官廳ができることは少し矛盾しておるじやないかというふうなお言葉でありましたが、私はこれは御説のごとく統制経済を効果的に集約的に実行するためにはどうしても必要であると申し上げたいのは、その理由は主として防犯に主力を注ぐということと同時に、この日本経済の安定は主として外資の導入によるのでありまして、從つて導入された外資が最も効果的に活用されるか否やということを監視するとともに、それがむだなく海外に出ていく、貿易その他の形において出ていくというふうなために、これを保育並びに監視するという立場におきましては、最も有効なる経済査察の必要があると存じておるのであります。私はここに中曽根君のきわめて適切な御質問に対しまして、しからばどういうふうなものがはずし得て、どういうふうなものが残るかということを御答弁申し上げるというのが、これは当然であるのでありまして、さもなければ画龍点睛を欠くのでありますが、現在のところはその品目について御説明を申し上げるということがいろいろな関係からできないことははなはだ遺憾でございます。いましばらくお待ちを願いたいと思うのであります。從つて今申し上げました結論としまして、主として防犯並びに経済産業再建に対する保育任務重点といたしておりますがゆえに、名古屋あるいは関西、九州等に配置いたします管区廳長性格であるとか能力であるとかいうものと、東北、北海道というふうなところの米の供出とかそういう地域とはおのずと別にいたしまして、それぞれ適材適所に人選をいたしまして、もつて指摘のような日本産業の再建に本官廳が役立つように人選をいたしたいと存ずるのでありまして、この点御了解を願いたいと存じます。
  33. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の点についてもう少しお伺いしたいのですが、西村政府委員は今後四箇月以内くらいに統制経済の改善、不必要なものの撤廃を行う。こういう趣旨のことを、具体的には申されないけれども、やるということをおつしやつたが、これは確かでございますか。
  34. 西村榮一

    西村政府委員 大体そういう方向で現在事務的な問題を研究中であるというところに御了解を願いたいと思います。
  35. 中曽根康弘

    中曽根委員 われわれはこの法案を通すに際してはどうしても不必要な統制を撤廃するということが必須條件であるというくらいに実は考えておるのです。從つてその点に関する政府のかなり明確な御答弁がない限り、私はこういう法案國民の前に出すことはかなり躊躇せざるを得ないのでありますが、しからば具体的に今の統制経済の根幹をなしておるところの、たとえば指定生産資材の割当規則、あるいは指定配給物資配給手続規定、あるいは輸送証明規定あるいはマル公の問題、こういう問題も、今の四つの法令について、不必要な統制撤廃についてのもう少し具体的な御答弁を承りたいと思います。
  36. 西村榮一

    西村政府委員 先ほど申し上げましたように原則としては不必要であるというかどうか、統制する行政能力とにらみ合わせまして、相なるべくならば大幅にこれをはずして、民間の自主的な活動にまつということが現下の日本経済としては適当であると考えまして、その方向に向つて事務的な準備を進めております。しかしながらその明確なる方針がなければ本法案が御審議願えないということになりますと少し困るのと、それは誤解が今の質問者の中に含まれておるのではないかと思うのでありますが、先般本案提案のときに御説明申し上げましたように、三月八日に警察法が改正せられまして以來、経済に対する取締りちよつと空間を生じておるのであります。そしてそれは從來のいわゆる警察的な立場においてのみこれが取締りが行われておるのでありまして、いわゆるかゆいところに手が届くという親切さもなければ、あるいは大きなやみ事犯その芳に対しましてにらみがきかないというふうな欠陷を生じておるのでありまして、その意味において政府といたしましては、実は三月八日の警察法が改正せられましたから、四月一日本法案を提案申し上げて御審議を願いたいと思つたのでありますが、それが五月一日になり、また六月一日になつたのであまして、そういうふうな事情もひとつ御了察を願いまして、いずれ一政府委員から御説明申し上昌ますよりも、統制問題に対する大きな問題は内閣全体として、総理大臣あるいは安本長官から御説明申し上げると存じます。今その手続を進めておりますから、それとはひとつ切り離していただいて本法案を御審議願いたい。こう切にお願いいたしたいのであります。
  37. 中曽根康弘

    中曽根委員 警察制度が改革になつたその空間を埋めるので早くしたいという御趣旨はわかるのでありますが、しかし警察法が改正になつても、やはり統制経済に対する監査はかなり進んでおります。けさの新聞によれば東京都内の某所に相当の繊維製品を摘発しておる。あるいはまた福井人絹のやみ追究というような新聞記事すら載つております。從つてそう機能が低下しておるとは思えない。それよりもやはり日本経済の死命を制するような大きな法案に対して、私は國民の代表として愼重に考えなければいかぬと思う次第であります。そこで統制の問題については、いずれ他の方々からお聽かせになるというお話でございましたが、私はこういう経済法令を担当するこの委員会において、総理大臣なりあるいは安本長官より責任あるお話をお聽きしたいと思います。この点について委員長において適当な機会に今のお二人をお呼び願いたいと思います。
  38. 松原一彦

    松原委員長 承知いたしました。
  39. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次は、しからばこの経済査察廳法案を実施することを考えてみた場合に、現行の内容ではたしてできるかどうかということを私は非常に疑問に思います。それはなぜかというと、この中に五千人の経済査察官を設けるということが書いてあります。しかしこれははなはだ中途半端な数字であります。やるなら今警察官が十三万人まいるように、もつと多くの人間が要るのじやないか。やらないなら、お茶を濁す程度であるならば、こんなに五千人も要りはしない。どつちかにきめる必要があると思います。これが第一。  第二は、経済査察官という地位は相当重大な地位であります。從つて今までのような警察官吏、あるいは安本の安定局に從事しているような職員が当つたのでは、これは全然意味がない。相当学識経驗もあつて、世情の通じた能力のある人がならなければならない。しかるにそういう人を官廳に招聘するためには、相当な予算をもつて待遇を與えなければならない。ところがお聞きするところによると、経済査察廳の費用は約七億とか、八億とか言つておりますが、その程度の費用ではこれはとてもできないのではないか。かえつてその程度のものをやるならやらぬ方がいいじやないか、こういうふうに具体的には考える。この点を一つお聽きしたい。
  40. 司波實

    司波政府委員 第一点の定員の問題でございますが、これについてはいろいろ論議の余地はあろうと思われますが、経済査察官は、もちろん重要な事安の調査ということには直接当りますが、それ以外にも、ここに並べてあるようないろいろな行政方法を通じて、励行確保に邁進しようというのでありまして、経済査察廳の職員のみでこの励行確保をやろうというのでない。その責任者として、あるいは経済各省にそれぞれ統制励行をやるように勧告するとか、あるいは警察官廳に勧告するとか、要するに経済査察廳で立てたそういう基本方針從つて、あらゆる力を動員してこの励行確保の任務を遂行しようというのでありまして、いわば中核体的な役割を課せられておるのであります。そういう意味で、優秀なる人員を整備することができますならば、一應はこの五千名でやり得るのではないかというような考えから、一應定員を五千名といたしたのであります。これを実施してみた上で足りないということになりまするならば、さらにこれが増員につきまして考慮いたしたいと考えております。  第二点の、この任務に当る者に相当の学識経驗者を充てるについて、待遇等の問題から非常に困難じやないかという御説でありました。一應その通りでありますが、現在は御承知のように、いずれの職域においても相当國民の生活が最低のきりきりのところだということは共通の事実でありまして、経済査察官については前回の委員会で御説明申し上げましたように、大体一般官吏の三割増の俸給でできるだけいい人材を集めようという構えでおるわけであります。民間から非常に優秀な人がとれるかどうかということについては、待遇面のみから考えまするならば相当悲観的な見方もあるのでありまするが、日本経済の再建に果す経済査察廳の役割、こういう使命観に大いに共鳴して御協力くださる民間人もなきにしもあらずということで、各方面に手を伸ばして現在努力しておるのでありまして、ある程度の優秀な人を民間からとり得るということについては可能性があるのではないかと考えております。
  41. 中曽根康弘

    中曽根委員 私は今の御答弁を聽いてはなはだ奇怪に思うのですが、わずか一般官吏の三割増くらいでこの経済査察廳の意義に感じて使命観のもとに集まるというような人があるということはとても期待できない、集まるのはそでの下を期待してむしろ生活を豊かにしようとする連中が集まる、これは実際の話であります。この経済査察廳というのはもし有効に働くならば、五億の金を使い、十億の金を使つても、百億や百五十億の國費を節減する、あるいは生産を増大するというならば、これはいくら使つてもよいと思いますけれども、実態は今の経済界や人心の傾向から言うと、反対の方向にいくことは明らかであります。そういう点から見ると、わずか三割増俸その他のことによつて行われるということはとんでもない見当違いであるということを私は御警告申し上げたい。もう一つはほかの官廳を利用するということを言われますが、これまた官廳の心理を知らないお考えじやないかと思う。この法令の中にも警察官その他の常極的な責任義務を軽減するものではないということが書いてありますが、結局こういうことはほかの官廳がそつぽを向くことになりやすい。今までの例を見ても、なわ張りや面子ということが官廳には牢固としてあるのでありまして、これがある場合によつては上級機関にほかの機関はこういうことをやつておるということを勧告する、意見具申をする、そういうような條文が書いてありますが、こういうのを見ただけでも、今の役人からするとそつぽを向く原因になつておるのでありまして、おそらく警察官廳その他というものとこの経済査察廳というものは今まで以上にうまくいかないのではないかと危惧するのでありまして、ほかのものを利用するというわうなことはとても期待できないと思う。そういう点であまい考えがないか、もう一回お尋ねいたしたい。
  42. 司波實

    司波政府委員 優秀なる人員の登用問題については御説のような点もなきにしもあらずということは率直に認めるのであります。しかしそれかといいまして、漫然手をこまねいて何らの手段を施すことがないというわけにまいりませず、とにかくわれわれとしては最善を盡して何とかよい人を選ぶことに努力するということ以上に申し上げることができないのを遺憾といたします。それから他官廳との関係でございますが御指摘のような弊害のあつたこと、なおまた現在においてもいろいろそういう事実のあることはその通りであると思いますけれども、経済安定本部監査局がおかれて以來の一年間の実績を考えてみますと、行政監査を通じていろいろ経済行政の実施面の行政改善が行われたという事実を否めない点でありまして、やはりこういう中心的な機関ができまして、それぞれの権限なり、あるいはそれにプラスするに人と人との連絡を密にすることによりまして、その点の効果が相当あるのじやないかと考えております。たとえば昨年の暮以來の生鮮食糧品の確保という問題については、安本が中心になりまして農林買、商工省、その他の力を総動員して、それらの諸官廳の緊密なる連絡によりまして、そのことに從事しました結果、満足とは言えませんが、相当の成果をあげ得た事実に照らしましても、今後この機関の運用のいかんによりましては、相当の成果をあげ得るのではないかというふうに考えております。
  43. 中曽根康弘

    中曽根委員 今度は機構の点についてお伺いいたしますが、まず第一に、警察制度の改正の理由は、人権の擁護という面にあつたのでありますが、戰爭中以來警察というものが非常に憎まれた理由はどこにあるかというと、大体の事件の中心経済問題にあつたように思います。もちろん特高関係の思想問題もあつたけれども、一般國民の憎惡を受けたという理由はこの経済問題、統制経済摘発や、そういう問題にあつたように思います。その問題が今度は経済査察廳という方向に移行してまいります。しかるに一方警察制度の方においては、大改革が行われて、かなり民主的な機構にまとまつてきている。たとえば自治体警察ができ、あるいは公安委員会というものができて、民間人によつて警察をコントロールするという考慮がなされております。ところが、この経済面に関しては、経済査察廳というものができて、一向そういう配慮がみられておりません。各地に委員会というようなものができるようでありますが、これは官廳相互の連絡機関であつて民間人の声というものは入れるものではない。中央地方その他について、民間人の声によつて経済査察廳の動きをコントロールするというような、民主的な考慮を何ゆえにおとりにならなかつたのか、この点を伺いたいと思います。
  44. 司波實

    司波政府委員 この六條に規定しております経済査察委員会は、経済統制の企画または実施官廳と檢察廳等の取締り官廳との間におきまして、統制の立案実施及び励行の実情につきまして意見を交換して、その方針につきまして協議し、その結果、経済施策と取締りとが表裏一体となりまして、完全な経済統制励行が行われるようにすることを目的としているのであります。行政機関相互間の事務の連絡、調整という点が主眼なのであります。御説の民間人の声をこの機関の運用に反映せしめる問題につきましては、別に民間の業界代表者でもつて官民連絡協議会というようなものを組織する、このことにつきましては別途考慮いたしまして、いろいろ研究中であります。
  45. 中曽根康弘

    中曽根委員 官民連絡協議会というようなものは、今までずいぶん方々で行われておりますが、これは一種の諮問機関的なものであつて、何ら権限のないものであります。そういうような今までのやり方では、これはだめなのであつて、民主的な國民の声を代表する機関に相当な権限を與えて、有効にこの経済査察廳の動きをコントロールするという措置がなければ、私は実質的な効果をあげることはできないと思います。そういうものをおつくりになる意思はないのか、ちよつとお伺いいたします。
  46. 司波實

    司波政府委員 現在警察にある公安委員会のようなコントロールする権限をもつた委員会をつくることにつきましては考慮いたしておりません。と申しますのは、現在日本行政機構の実体を考えてみますと、特に経済行政面を考えましても、商工省なり農林省なりの專門的な、技術的な——それぞれの專門家といいますか、行政技術の專門家をもつて構成する、そういう各省に分掌されているわけでありまして、それらの行政機関には、これをコントロールするような民間のアメリカ式な委員会をその上に据えるというようなことは、現在の日本行政機構では全然考えられておらないのであります。私の考えでは、行政というものは相当技術的な要素を含んでおりまするので、むしろ民間の意向を政策面に織りこむというのは、いわゆる政治の問題でありまして、これは國会議員から選ばれました内閣においてやるべき問題でありまして、その政策を受けて、これをいかに実施面に行政的に移していくかという問題は行政機関の機能であります。そういう意味経済行政並びに統制励行をやる今度の査察廳、こういう問題に民間人をもつて構成する委員会を、コントロールする行政機関としておくということについては、現在のところ全然考えていないわけであります。
  47. 中曽根康弘

    中曽根委員 言葉を返すようでありますが、この経済査察廳のやるお仕事は、今まで経済警察といわれた仕事であります。商工省や農林省のような行政機関というものは強制執行権をもつておらない。警察は強制執行権をもつております。それと同じように、この経済査察廳の系統は、ことによつた警察官を滯同して、それによつて差押えその他の強制執行を行う権限をもつておる。これは國民の権利義務に重大な影響を及ぼす立場でありまして、普通の行政官廳とは違う性質のものであります。そういう点からすると、まつたく普通の司法警察その他の警察と同じような実質的な意味をもつておると思う。そういうふうに実質的にほかの官廳と違うのであるから、警察と同じような観点から、國民の声を反映させるような、コントロールする機関がぜひ必要であると思う。この警察との関係はどうでございますか。もう一回お伺いいたします。
  48. 司波實

    司波政府委員 経済査察廳性格につきましては、前回の審議の際にも御説明申し上げたと思いますが、経済査察廳をして警察的な性格をもたしめないという点に、相当重点をおいてこの法案が構成されておると信ずるのであります。その一つは、まず取締りの面を考えましても、経済査察官警察的ないわゆる実力行使を全然行わない。そしてそれらの強制調査をやる場合におきましても、裁判官の令状に基いて、その許可状を受けてそれを執行する。その執行する際には、多くの場合には原則として警察官の同行を要する。そのうちでも身体の搜査とか、あるいは物の差押えとかいうように、権利義務に重大なる影響を及ばす事柄につきましては、警察官をして行わしめる。從つてその警察官の行う職務行為につきましては、刑事訴訟法の適用を受け、また警察の運営の一般原則に從いまして、たとえば公安委員会のコントロールのもとに服するというふうに、そういう実力行使の点は全部警察機関の責任においておるのであります。その文面経済査察官実力行使の点につきましては全然乗り出さないという建前にしております。のみならずこの査察廳の職務といたしまして、西村政府委員からもしばしば申し上げましたように、この取締り搜査という点は、その一部の仕事にすぎないのでありまして、その他にいわゆる防犯的な、予防を目的とするいろいろな行政的な方法あるいは行政監査を通じてやみの根源を研究してそれを衝くとかいうようなふうに、取締りというのはその一部でありまして、いわゆる警察的な色彩を全然なくするという点にこの経済査察廳の新しい性格があるわけでありますから、人民の人権保障を目的として、警察官に公安委員会が置かれたというのと多少意味が違うかと考えます。
  49. 中曽根康弘

    中曽根委員 取締りが一部であつて、予防や教育や訓練というものが主であるというならば、私はこんなに厖大な機関をつくる必要はないと思います。副長官を置いて全國に網を張るというようなことは國費の濫費であると考えます。そうして副長官を置いて、全國に八つの管区を設けてやるということは、やはり國民の権利義務に相当な関係があることであるから愼重にやらなければいかぬというのでお置きになる趣旨ではないかと思います。そういう観点から言うと、やはり形式的には警察とは違うかもしれませんが、強制執行をするイニシアテイブをとるのはだれであるかと言えば、これは経済査察官で、警察官というものはその場合には單なる機械的な地位にある使用人にすぎない。責任はどこにあるかといえば、そういう判断を下す経済査察官にある。從つて経済査察官の頭脳というものが國民の権利義務の急所を握ることになるだろうと思う。そういう点についてはやはり國民の声をもつて訴える、特に経済査察廳の運用や人事に対して國民の公正な声を反映せしめるような機関が必要であると思います。この点についてもう一回伺いたいのであります。
  50. 司波實

    司波政府委員 前にも御説明申し上げまして、あるいは足りないかもしれませんが、取締り査察廳の一部と申し上げましたのは、形式的なものだという意味ではないので、誤解のないようにお願いしたいのであります。一部であるということは宣傳、啓発等を主として、違反はつけたりだという意味ではございません。從つて実際の運用の面で犯罪調査ということも相当の割合を占めることは事実でありますが、そのやり方につきましては十分に人権を尊重する、それを保障するという趣旨から、この裁判官の令状ということを條件にしたこと、またその実力の行使についてその衝に当る者を警察官にしたという点で、十分にその点が考慮されておると考えるのでありまして、いろいろお説のような委員会をこの上に置くということは、今のところ必要ないように考えるわけであります。
  51. 中曽根康弘

    中曽根委員 どうも納得がいきませんが、時間の関係で次に移ります。  その次は機構の問題ですが、経済査察廳を置く趣旨というものが、どうもはつきりしない。從つてこれを大きくすべきか、これを小さく縮少すべきか、われわれはまだ判定の基準を得られないでおりますが、われわれが今まで御答弁をいただいた限りにおいては、どうもこのような厖大なものをつくることは不必要である、そういうふうに考えます。たとえばこの構想は國家地方警察の構想に準じておつくりになつたような感じが非常にする。一般の司法警察行政警察については國家地方警察というものが網を張る。そこで経済査察についてはそれに併行的になくてはいかぬという考えから、やはり同じように八つの管区にわかつて、本部長と申しますか、長官のようなものを置いて都道府縣警察廳のようなものをまた置くという御構想のもとにつくつたような氣がするのですが、一方五千人というような警察官に比べてみると、少ない人員をもつているにかかわらず、中央においては長官一人、副長官一人、局長二人、部長一人と一級官が五人もおる。こういうのは警察の規模と機能から比べてみて、單に経済関係を担当するものとしてはあまりに厖大ではないか、形式的に警察系統がああいうものであるから、自分たちもこういうように対等にしたらというようなお考えではないかと思うのであります。中央官廳における一級官の厖大であるという点については、どういう見解でこれをお置きになつたのか承りたい。
  52. 司波實

    司波政府委員 中央機構の組立て方でございますが、これにつきましては、予定は監査局と査察局と物資調査部という三つの部門にわけるつもりでおりますが、その職務権限は監査局におきましては、從來経済安定本部監査局で担当いたしておりました経済行政の監察事務、それから物資調査部におきましては隠退藏物資調査に関する事務、その他の経済法令違反事件の調査とか、啓発、宣傳、予防、それからその前に企画立案というような問題につきましては査察局で扱う。大体この三つの仕事は相関連はいたしておりますが、相当仕事の性質が異なつておりますので、そういう三つの部局をおくということにいたしておるのであります。いたずらに役人のポストをつくるために、そういう部局をおいたというような考えは毛頭ないつもりであります。現在の安本の機構と比べてむしろ中央機構等は非常に小さいものになつているのであります。
  53. 中曽根康弘

    中曽根委員 ここに「長官一人、副長官一人、局長二人及び部長一人並びに政令の定めるところにより」云々と書いてありますが、この副長官を置くという理由は、おそらく長官が國務大臣であつて、閣議やその他で忙がしいからるすを預かるという御趣旨で、この副長官を置いたのだと思いますが、その通りですか。
  54. 田中己代治

    田中(己)政府委員 大体この副長官を置きました理由は、ただいまお話の通りでありますが、この中央機構以外に地方管区経済査察廳地方経済査察廳とがございますので、それらとの調整をはかる必要もあるために、長官のもとに副長官を置いて、それらに当らせるというようなことで、かような仕組みにいたした次第であります。
  55. 中曽根康弘

    中曽根委員 今安本に監査局やあるいは地方経済安定局というようなものがあるようでありますが、あの機構を使つて、ダブつてやるといふことはできないのですか。
  56. 司波實

    司波政府委員 立案の当初におきましてはそういう考えもあつたのでございますが、大体現在の監査局の定員を申しますと、監査局及び地方安定局の定員を通じて一千名足らずで、約その五倍以上になる機構であります。しかも経済安定本部は元來は企画官廳であるべき性格のものに、その実際面の監査をやる監査局がついた、その限りにおきましては安本の性格と、それほど違うものではないのでありますが、さらに取締りその他の事務を行うところの新しい任務を附加した、査察廳の職務を附加した機構を安本内に置くことは、あまりに厖大になる。そして安本自体の性格を多少変えやしないかというような配慮から、むしろ安本の外に出して、しかも兄弟の関係で相連絡してやられるように、長官を兼務するという構想を採用したのであります。
  57. 中曽根康弘

    中曽根委員 しからば安本の監査局や経済安定局はこれと同時に廃止になりますか。
  58. 司波實

    司波政府委員 本部の監査局は廃止になり、また地方安定局は現在監査部と調整部という二つの部からなつておりますが、その監査部は廃止になります。そしてあとは経済安定局が調整部といういわゆるサービスの任務をもつた部門が残りまして、経済査察廳長が地方経済安定局長を兼務するという形で残ります。
  59. 中曽根康弘

    中曽根委員 その次に警察官との関係を聽きたいのですが、前に聽く機会を得なかつたので、経済査察官及び経済査官廳と警察並びに警察官吏との関係をもう一回御説明願いたいと思います。
  60. 司波實

    司波政府委員 関係と申しますと権限上の関係でございますか。
  61. 中曽根康弘

    中曽根委員 一切の関係です。
  62. 司波實

    司波政府委員 警察官経済査察官とが関連する部面は、この法律の第四章に掲げてある権限の問題につきまして、査察官が令状をもらつて、それを執行する場合に同行するとか、あるいは物の差押えの場合に警察官をしてやらしめるという部面において関連をもちます。さらに警察法によりますと、警察官もまた経済取締り任務をもつ、その任務は本法によつて軽減するものでないという規定の通り、そういう任務をもつております。それの任務をもつておる警察官に対して経済査察官は予防及び捜査関係で種々の勧告をする。そういう関係でやはり関連をもつておるのであります。また第一條の第五号で、経済法令の規定の趣旨について警察官及び警察吏員を啓発する、いわゆる教養の関係で関連をもつてまいります。また六号に規定してありますように「経済法令に関する違反行為について、警察その他の行政機関の行う予防及び捜査の状況並びにその改善についての一般的情報收集」すなわち警察がどういうやり方で経済違反を予防し、またこれを捜査しておるかということについての一般的な情報を集めまして、そしてこういうやり方はよくないじやないかというような場合には、本部の長官から警察の方の最高の長官に対して勧告をするというような関係で関連してくるのであります。その他の面におきましては、身分その他何等関係のない併行した機関であります。
  63. 中曽根康弘

    中曽根委員 この條文の中に「この法律は、経済法令に関する違反事件を積極的に捜査すべき警察官及び警察吏員その他の行政機関の責務を軽減するものではない。」こういう條文がございますが、これから見ると、今やつておるような経済統制に屋上屋を架するという印象をぬぐえないのであります。この経済査察廳ができても、やはり警察は依然として経済行為に対する取締りをする。野菜であろうが、石炭であろうが、やつておる。それに対してまたこの上に経済査察廳というものができてやはり同じようなことをやる。御当局の方は大物は査察廳がやる。あるいは教育宣傳は経済査察廳がやる。こうおつしやるかもしれませんが、実質的な仕事は経済事犯の事件が中心になるだろうと思います。そういう点で前とまつたくダブつたものが出てくるのであつて、こういう屋上屋を架するというような構想でなしに、今ある國家地方警察なり自治体警察を指揮し得るようなもつと簡素な官廳をつくることがでないかをお伺いいたします。
  64. 司波實

    司波政府委員 形の上では、ただいまお説のように、屋上屋を架するような感じがしないかというように見えるのでありますが、この本質的な任務を考えてみます場合に、警察は御承知のように今度の警察法の制定によりまして自治体警察と國家地方警察の二つにわかれたのであります。そしてこの経済違反というものは、その性質上有機的な國民経済を基盤として発生する関係上、國全体を一元的に見て取締るという機関がどうしても必要になつてくるのであります。從來の実績から考えましても、各府縣経済ブロツク主義から生ずる弊害というものは、殊に経済違反の檢挙という面に從來の國家警察の当時においてすら相当現われてきておつたことは御承知の通りであります。そういう弊害を除去する意味におきましても、一元的な國家機関というものが必要なのでありまして、そういう意味でこの経済査察廳を置いて、一面において警察の行う予防及び捜査を推進するとともに、みずからも相当重大な事件について直接これを行つて経済統制励行の完璧を期そうという点に本法を制定するねらいがあるのであります。
  65. 中曽根康弘

    中曽根委員 取締りをやるというときにはやはり一番大事なのは何であるかというと、末端ともう一つは判断を下す方です。末端というものはこの場合は大体警察になるようであります。それから判断を下す所はどこであるかというと、檢事あるいは裁判官——許可状を與えるのは裁判官であります。そういう間に挾まつた一つの中間機関のような形にどうしてもならざるを得ない。やはりいかなる官廳があつた場合でも、最後の懷ろ刀というか、最後の押しのきくものをもつていないと、そういうものは実際的には有効に働けないのはどこの場合でも同じですが、この経済査察廳というものはイニシアテイーブはとるが、しかし最後の判断を下す所はないようです。そういう点から見て今までの末端の警察あるいは檢事ないしは裁判官、この有機的な結合によつて私はやはり今まで以上の効果を上げられる國家的な統一を確保するということをおつしやいますが、それは裁判官あるいは檢察廳というものはやはりそういう機能は一面あると思います。防犯とかあるいはそのためのいろいろな調査ということもあるだろうと思います。そういうものによつてどうしても私は代用できると思いますが、何ゆえにそれ以上にこういう中間機関が必要であるか判断に苦しみます。この点をもう少し御説明願いたいと思います。
  66. 司波實

    司波政府委員 ただいまの御質疑の点は御承知のように檢察廳なり警察はむしろ一般の治安の確保という点がねらいでありますが、経済違反もその犯罪の一つの種類でありますから、もちろん檢察の対象になるのでありますが、経済事犯の檢挙の方針の樹立というような問題は、やはり経済施策を企画立案するような官廳と密接な関係のある官廳でその方針を樹立する。そうしてそれを経済統制励行関係のある諸機関を何か統制していく。そういう機関が必要じやないか、そういう意味でこの檢察廳が、檢事がどういう事件を檢挙すべきかという判断の問題と、いろいろな経済情勢に照らして、どういうふうな経済事犯をこの際やるべきかというような判断の問題と角度が違うように考えます。そういう意味で全國統一的な組織をもつておる檢察廳とは別個に、この経済査察廳をつくろうというねらいなのであります。
  67. 中曽根康弘

    中曽根委員 今の御答弁でありますが、檢事がある事件を起訴する。裁判官が判決を下す。その場合にはやはり経済状態の動きというものがよく認識されておらなければ、そういうことはできないと思うのでありまして、当然いろいろな経済の動きや、人心の動きというものを、檢事あるいは裁判官はキヤツチしておらなければならない立場にあると思います。そういう点でもこれはダブると思います。結局官廳というものは末端の最後の決断を下す所が一番の重要な点で、その中間機関などというものはなるたけなくするのが、國民的な行政組織であろうと思うのであります。そういう点についてどうも私は今の御答弁では納得いきませんが、きようはこの程度質問を打切つておきます。
  68. 松原一彦

    松原委員長 ちよつと速記を止めて。     〔速記中止〕
  69. 松原一彦

    松原委員長 それでは速記を始めます。お諮りいたしますが、本日中曽根君から御発言になりました経済統制問題の根本方針について首相または安本長官からはつきりと言明を聽きたい。これは統制すべきものは徹底的に統制し、解除するものは十二分に解除する、その首尾想應ずるものがなければ、かかる法律案は審議できない、國民の前に示されないという重大な発案であつたのであります。その意味におきまして首相または安本長官に出席を求めることの御同意を得たいと思うのでありますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 松原一彦

    松原委員長 それではさように取計らいます。  本日はこの程度といたしまして、明日は午前十時から開会いたします。これにて散会いたします。     午後零時三十分散会