○船田國務大臣 議題とな
つております工場施設の問題につきまして、一般的に申し上げますと、実はこれはあまり個別的に取扱うのもいかがかと思いますので、まず
簡單に一般問題として賠償廳でどういうことをしているかというようなことを申し上げて御了解を得たいと思うのであります。大体民生安定の上から、あるいは輸出貿易の上からぜひともこちらに残しておいてもらいたいという必要を認める工場につきましては、賠償廳といたしましては、経済安定本部あるいは
関係各省と協議をいたしまして、その上で賠償廳から
連合軍総司令部に対しまして、できるだけ好意的な考慮をしてもらいたいということを願い出ることにいたしておるのでありますが、ただここで注意いたさなければならないことは、今申し上げたような民生安定上あるいは輸出振興の上からい
つて欠くべからざるものだという十分な理由がございませんと、総司令部にもち出すわけにはまいらないわけでありますが、今日までいろいろな工場経営者からはもちろんでありますが、そのほか労働組合などからも、あるいはまた
特定の都市などから、その都市の人口の大部分が
特定の工場に依存して生活しているというような理由から、あるいはまた縣としてその縣の産業上、あるいはまた失業救済上重大だという理由で賠償廳の方に陳情もあつた次第でありまして、これらにつきましてそれぞれ
関係各省とも連絡の上、適当なものであると
考えましたものは、もちろん全部総司令部の方に取次ぎましてできるだけの努力をいたしておるのでありますが、現在といたしましては、こちらの陳情を総司令部としてはいわば聽きおくという
程度に止ま
つておりまして、これに対して確定的な意思表示をもらうまでには至
つておりません。この
長崎縣の数工場の存置に関する陳情問題につきましても、今申し上げたような一般方針に
從つて処理していくということを申し上げるほかないと思うのでありますが、ただここでただいま問題にな
つておりますような、
長崎縣ばかりではありませんが、こういう問題につきましては、ストライク報告が先般公表されました際に、その一部分に
関係工場の名が出ていたということから、地方新聞が大々的に取上げましたので、その
ために
関係各方面で非常に心配をいたして陳情をするというような段どりに
なつたと
考えられるのであります。ところが御承知と思いますが、このストライク報告書等はまだ
アメリカの政策として決定したものではございませんし、引続きジヨンストン報告書も公表されたような次第でありまして、このような非公式の意見の発表に関連して、非常に心配したりあるいは喜んだりというようなことは行き過ぎではないかと
考えられますので、その点はまだ決定しておりませんので、また総司令部の側でも、大体そういうような
考え方であるということがわか
つている次第でありまして、こういうようなことは長崎の問題につきまして、長崎の軍政当局から長崎の商工
会議所の方にもある通牒が來ておりますが、その通牒などから見ましても、総司令部の態度というものが
はつきりいたしておるのでありまして、つまり決定的にこれを取去るというようなところにまで至
つておりませんので、
從つてこちらから差出しまして陳情等も、前に申し上げましたように、聽きおくという
程度に止ま
つているということを申し上げるよりほかないのであります。具体的な問題につきましてはあるいは個別的に何か別の
機会に申し上げた方がよくないかと思いますが、一般的な取扱い方といたしましては、今申し方げたような
状態にな
つておるのであります。