運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1948-06-28 第2回国会 衆議院 外務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十八日(月曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 安東 義良君    理事 原 健三郎君 理事 亘  四郎君    理事 細川 隆元君       植原悦二郎君    菊池 義郎君       仲内 憲治君    武藤 嘉一君       若松 虎雄君    竹内 克巳君       田中織之進君    馬場 秀夫君       和田 敏明君    園田  直君       坪川 信三君    多賀 安郎君  出席國務大臣         國 務 大 臣 船田 享二君  出席政府委員         外務政務次官  伊東 隆治君         外務事務官   朝海浩一郎君         外務事務官   倭島 英二君         外務事務官   與謝野 秀君         逓信事務官   小笠原光壽君  委員外出席者         外務事務官   西村 熊雄君         專門調査員   佐藤 敏人君         專門調査員   村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 六月二十八日委員山下春江君辞任につき、その補 欠として坪川信三君が議長の指名で委員に選任さ れた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  万國郵便條約及び小包郵便物に関する約定に加  入することについて承認を求めるの件(條約第  一号)   請 願  一 日系大陸孤兒救済に関する請願大野睦君    外一名紹介)(第一四六六号)  二 在外胞引揚促進請願並木芳雄君紹    介)(第一五七〇号)  三 ソ連領からの復員促進に関する請願(中曽    根康弘君外一名紹介)(第一六四八号)  四 在外胞引揚促進請願中島茂喜君外四    名紹介)(第一六四九号)   陳情書  一 在外胞引揚促進に関する陳情書外一件    (第三四七号)  二 同外一件    (第四一六号)  三 ソ連地区残留胞引揚促進に関する陳情書    (第四四一号)  四 未復員者引揚促進に関する陳情書    (第四五九号)  五 在外胞引揚促進に関する陳情書外三十件    (第四六四号)  六 同    (第五二三号)  七 長崎縣重要工場賠償撤去対象より除外    の陳情書(第    六四〇号)  八 在外胞引揚促進に関する陳情書    (第六四四号)  九 在外胞引揚促進に関する陳情書外六十四    件    (第六    五九号) 一〇 在外胞引揚促進に関する陳情書    (第六    九一号) 一一 同(第七一四    号)   日程追加  一 ソ連地区残留胞引揚促進に関する陳情書    (第七    五二号)  二 在外胞引揚促進に関する陳情書    (第八一五号)  三 在外公館借上金の返還並びに換算率に関す    する陳情書    (第八六    七号)     ―――――――――――――
  2. 安東義良

    安東委員長 これより会議を開きます。  前回委員会におきまして議題となつておりました万國郵便條約及び小包郵便物に関する約定加入することについて承認を求めるの件について、さらに御質疑がありますれば、御質疑願います。
  3. 若松虎雄

    若松委員 私は一昨日の委員会へ遅れてまいりましたので、大分聽きもらした点がたくさんあるのであります。一昨日から配付していただいた書類を拜見してみますと、そしてけさ登院して聽いたのですが、非常に政府はこの條約に参加を急いでおられるようで、今日にも審議を終えてくれというようなお話ですが、私ども乏しい経驗でありますが、どうもこれは非常に乱暴なやり方ではないかと一言で言えば申し上げたいのであります。一昨日どなたにかこれはきわめて簡單だからというようなお話がありましたが、とんでもない、大きな條約を二つ参加することになりますので、実は少くとも二、三箇月かからなくては審議ができないのではないかというような氣もいたすのであります。殊に旧憲法下では、いわゆる條約に関する件は天皇親裁事項で、枢密院の批准を得る程度でやつていけたのでありますけれども、今回新しい憲法ではすでに條約締結に関する承認権議会が與えられております。また常に旧憲法で非常に盡力された枢密院はないのであります。だから少くとも承認を與えるには、十分の審議をする時間を與えていただかなければならないことと思います。事前の予告もありませんで、きのう私は初めて書類を拜見いたしたのであります。おそらく外務当局の方々は非常な無理だということをお考えでしようが、しかも何らの——実は私は條約を昨晩ざつと続んでみたのですが、そう急にお急ぎになるような必要はないのではないかと思うのであります。そうしてまた万國郵便條約の最終議定書の十七條ですが、参加に関する特別の便宜が與えてありますが、これも期限附ではないよのであります。せつかくもう少し審議をした上で参加するということに取計らつてはいかがかと思います。  それから外務委員あり方ですが、從來今まで占領下でほとんど外交はいたしませんから、單なるいろいろな情報を聽くくらいのことであつたのですが、いよいよ條約に関する件が本委員会に付議されたにつきまして、私ども先例として枢密院審議ぶりを見るよりほかないのであります。私は必ずしも先例をそのまま受け入れようとは思いませんけれども、まず政府から回付を受けたら、一應事務当局で字句の審査をやり、また枢密院審査委員に該当するようなもの、政府代表者と、衆議院の専門調査員と、並びに委員を混成したような意味で、審査委員会をこしらえて十分審議して、そうしてこの委員会に諮るというような手続をとつてもらうことが望ましいと思うのであります。この前にそういうような提案をしたかつたのでありますけれども、こういう問題を、ほとんど顏を見ただけで、どんな内容かわからないようなことで審議を要請されるのは、ちよつと無理じやないかと思う。昨日私遅れてまいりまして、議論のあつたことはちよつと聞いておつたのでありますが、実際これは内容においては、これがために何も新しいめぼしい権利は設定されるわけでなし、むしろこの條約を続んでいきましても、義務の方がたいへんやつかいなような氣がいたしまして、おそらく参加はしたが動きがとないような、條約と日本あり方というものは、全然相反したような行き方にもなりはしないかということも懸念されるわけです。そういう点において、あるいは重視するかも存じませんが、政府委員から、この際、この條約は眞に急いで参加しなくてはならぬという点に関して、ひとつはつきりと御事情を承りたい。
  4. 伊東隆治

    伊東(隆)政府委員 枢密院がなくなりました今日、國会が條約の審議愼重にすべきであるという御意見、まことに私ども同感でありまして、先般もその説がありまして、私どももそれを十分に承服いたしたのでありますが、なるほど若松委員のおつしやる通り本條約には、これの参加期限はついておりませんが、せつかくこちらの從來の希望連合國側が容れまして、フランス政府から、ではひとつテキストを送るから、できるだけ早くはいつてもらいたいという勧誘のごときものを受けております関係からしまして、これに欣然と一日も早く参加して、今後日本國際諸機関に参加する態度をこの機会に最も強く表わすことが今後のためにもなろうかと考えましたことと、七月一日がちようどこの條約の発効期日でありますので、参加するならばその第一日の効力を発生する日から参加した方が氣持がいいという点もありまして、大いに急いだような次第であります。のみならず今後のパリ條約は昭和十四年のブエノス・アイレス條約とほとんど大同小異でありまして、その相違点につきましては、先般私二、三点をあげて説明いたしましたものの、ほとんど特記するほどのことでもないようであります。そのブエノス・アイレス條約には日本ははいつているのであります。また解釈によりましては、こりはその当時、條約局長からも説明がありました通り、多数國間の條約でありまして今日まで有効に日本がその一員として参加しておつたのだというような建前をとりますれば、昨年のパリ條約において改正せられまして、全然新たな條約ではありますけれども、実質的には参加しておるという関係もあるのであります。そういう事情からいたしまして、会期切迫した際にこういう二つ國際約定を提出いたしましたことは、まことに恐縮でありますが、ひとつこの点十分御了承願いたいと存じます。それにちよつと御参考までにこの機会に申し添えたいと思いますことは、やはりこういう國際約定はすべて例外なく國会においてこれを審議決定するアメリカ議会におきましては、この種のエグゼキユーテイヴ・アグリーメントは、これは政府に一任してあるのであります。それがためには、もとよりそういうエグゼキユーテイヴ・アグリーメント政府に一任するという立法をいたしまして、こういう技術的な條約は政府の一存でできるように、政府機動性を與えているという点をこの機会に御参考までに申し上げておきたいと思うのであります。もとより万國郵便條約の親條約も、またそれの子條約である小包に関する約定におきましても、重要な約定でありますけれども、取極め事項はきわめて技術的なことのみでありまして、もし今後幾十幾百という國際約定がどしどし出てきます場合には、あるいはまたわが國会におきましても、この種のエグゼキユーテイヴ・アグリーメント政府に一任した方が、國会がもつと重要な條約について精力を傾注し得る立場をとり得るようなことになるかもしれないと思つておる次第であります。そういうようなわけでございまして、まだ講和條約もできません前に、こういう二つ約定にはいります関係からしまして、私どもまことに重大視いたしておりますにかかわらず、急遽審議を進めていただくことをお願いすることは、実際心苦しいのでありますが、以上の事情をおくみとりあつて了承あらんことをお願いいたします。
  5. 若松虎雄

    若松委員 從來條約は立法府にまわさなかつたために、國民があまり知らなかつた。政府枢密院の間の話合いで條約は大体片づいたわけであります。そこでどんなことかわからないうちに條約ができて、しかもその内容新聞等で断片的に書く、ことに機微関係にあるものは、みな骨拔きにして発表したようなわけです。民主國家として行くこれからの日本としては、技術的なものはなおさらと思いますが、もう少し國民に周知させるような、また議会を通じていろいろ質疑應答をやるということ、われわれが任されているこの委員会等でやることが、やがて議会がその方面の仕事を分担したということで、非常に責任が重いような感じがするのです。殊に多数國間の條約というものは最大公約数だけでできるのですから、あまり急を要することもありますまい。殊に二箇國間條約は、これからまたずいぶん出てくると思うのでありまして、われわれはその煩にたえないで、今政務次官お話のように、エグゼキユーテイヴのものは政府に必要によつては任すような立法があるかもしれません。今占領下日本民主化の非常に重要なときだと思うので、こういう憲法上に與えられた権利をもち、またわれわれが大きな義務を背負つておるのですから、將來のことを考えれば、実は今手がすいておつて、時期のいいときなんです。だからそういうことをやつて手が足りない場合は初めて先ほどのアメリカ式立法も必要かも存じません。しかしながら今日の現状では私ども責任上一應ノルマル形式を整えてもらいたいような氣がいたすのであります。殊にいただいた新万國郵便條約成立の経緯その他という欄で、相当フランス会議でもいろいろな議論があつたといいますが、これは單なる技術上の点だけで、何も日本だけにあまりこまかい点は要らぬじやないかというお含みのようですが、私はそうはとれまいと思うのであります。そこで今度は、改正とありましても新しい條約になつておりますから、お配りになつたような程度で知つておけばいいと言えばそれまでの話かと思いますが、今度初めてのテスト・ケースを外務委員が手がけたのであつて、それをすべてのことから手を拔いて、殊にどんな原文がまいつておるのか、用語についてもわからずに——実は私は昨晩急いで読んだが意味がよくわからぬところが多々あるのですが、こういうことでアプルーヴアルを與えるということはちよつと早計ではないかと思うのであります。もし政府がやむを得ないということであつたら、憲法七十三條の三項によつて参加するということが必要かと思うのでありますが、そういう点はいかがですか。
  6. 伊東隆治

    伊東(隆)政府委員 若松委員の、國際約定最初加入であるから愼重にやれと力説せられる点は私ども同感でありますが、事情は先ほど私が申しました通り、とにかく先般來日本側としましてはこの條約及び約定にはいりたい希望連合國側に申し出ておつたのであります。それに対しましてちようど期限が七月一日から効力が発生するから、この機会にはいつたらいいだろうという意味郵便連合國際事務局からテキストを受けております。わが國としましてはどうしましてもこの機会にやはり七月一日までにはいることが、今後この種の條約にはいるときの氣持を最もよく現わすゆえんではなかろうか。こういうようなわけで、確かに参加期限はありませんけれども、この氣持を十分お酌みとり願いたい。理由というのは一にその点にあるのであります。なお條約局長からも御説明があると思いますが、どうぞ御了承を願いたいと思います。
  7. 安東義良

    安東委員長 若松委員に申し上げますが、先ほど若松委員から今後の委員会における條約審議の大要について貴重なサゼツシヨンがありました。私も実は同感であります。今回の審議方法は私としては前例といたしたくない。やむを得ざる事情を了として今審議しておるのでありますけれども、今回のやり口なるものは、もつて將來のわれわれ委員会の範とするには足らないのであるということは、はつきり申し上げておきたいと思います。しかしながら前回会議におきましてすでに皆樣の御了承を得て、審査委員会は今回は省略するということについてお諮りした次第でありまして、同時にまた佛文テキストも提出していないのは、政府の手落ちであることも明らかに認めます。しかしながら時間の都合上やむを得なかつたという御説明もあり、委員長のところには原本も持つてまいりましたので、一應これについて御了承願つてあとフランス文テキストを皆樣に配付するということにいたした次第であります。そういうようなわけでありますから、これらの点も若松委員において御了承願いたいと思います。
  8. 細川隆元

    細川(隆)委員 ちよつとお伺いいたしたいと思います。この前に申し上げたことの少し延長になるわけですが、今問題になつているような手続上の問題、すなわち占領下における國際條締結の問題に関連して質問が行われたのですが、これは各委員質問占領下にあるからいろいろな疑義が出てくるわけです。私は描象的な根本問題ですが、占領下において國際條約が締結された場合——こういう多角形的な條約の場合にはおそらく事実問題としてそういうことは起らないかもしれないが、占領下において特定國占領下日本が條約を締結した場合に、講和條約後、第三國から占領下に結んだ條約は無効であるというような一つ異議が出た場合に、この占領下に結んだ條約は講和條約を締結した以後といえども、これは絶対に効力に変化はないという法律上の御説明はつきり承つておきたいのであります。あるいはまた占領下に結んだ條約は、講和條約が締結されたあとにおいては、あらため効力について確認されるような手続をとられるものか、あるいはそのまま絶対不動に効力が続いていくものか、あるいは第三國が異議を申し出た場合には、この効力に何らかの異動を生ずるものか。占領下に結ぶ最初の條約であるから、この條約そのものからはそういうことは起らないかもしれないけれども、これは占領下に結ぶ條約の基本問題ですから、この点をひとつ條約局長からでもお伺いしておきたいと思います。
  9. 伊東隆治

    伊東(隆)政府委員 私からお答えいたします。これはちようど國條約の條項に明定してあるのでありまして、責任当局加入に適当な時期であると認めた場合には、ドイツ及び日本参加は三分の二の加入國の同意なくしても、簡單加入できるという條項が特に書いてあるのであります。責任当局と申しますのは、日本の場合は連合國司令部でありまして、これが加入に適当な時期と認めて、今度日本参加を許したのでありますから、今後そういう問題は起らないと思います。從つてこの二つ國際約定にはいりました日本権利義務講和條約が締結せられましても、何ら変更は起きないと思う次第でございます。
  10. 細川隆元

    細川(隆)委員 この万國條締についてはおそらくそういう規定もありますし、規定がなくともこれは多角形的な條約ですから、第三國から異義を申し立てることはない。特定のある一國と日本占領下に結んだ場合の効力について、今後起るべき事態を予想してという仮設の質問ですが、この問題をもう少し法律的な解釈をお伺いしたい。
  11. 西村熊雄

    西村説明員 仮設的御質問に対して御答弁申し上げるのは、なかなか機微な点が多いと思うのでありますが、一應御説明申し上げます。  連合軍占領下にある日本政府は、條約締結権はないと判断いたします。それは降服文書の最後の末項におきまして、日本天皇及び政府の権限は、連合國最高司令官のもとに從属するという規定がありますように、その規定から判断いたしまして、日本は單独に第三國と條約を結ぶ権能はないという結論が生れると思うのであります。從つて現実問題として、もしかりに今後第三國と條約を締結するというような問題が起るとしますならば、それは必ず連合國最高司令官許容のもとに初めて行われ得る事柄であると思います。從つてその許容を得て日本が條約を締結いたします場合には、その條約に関する限り日本行為能力を回復いたしまして、條約を締結するのでありますから、その條約は完全に成立する。占領軍当局からも、また第三國からも、將來その効力について云々される筋合はないと判断いたします。
  12. 若松虎雄

    若松委員 先ほど伊東政務次官質問したのでありますが、そんなにお急ぎになるならば、事後承認形式参加されるということも、一方法ではないかということを質問したのですが、その点はどうですか。
  13. 伊東隆治

    伊東(隆)政府委員 若松委員はどこまでもこの二つ約定は、特に最初のことであるから、愼重審議したいという御熱望で、そういうことをおつしやるのかと思いますが、事後承認を得ますことは本当にやむを得ない場合に、政府としてはいたしたいのでありまして、すべてのことが國会中心である今日は、できる限りそういうことは避けて、短かい時間に審議願つてはなはだ恐縮ではありますけれども参加の直前に國会の御承認を得たいと熱願いたしておるわけであります。
  14. 若松虎雄

    若松委員 短かい時間といつても、時間はほとんどありません。そうして、今の御説明を聽いておりましたところが、どうも少し感情の点で、せつかく國際事務局から來たものだし、何か國際多数國間の條約でありますので、はいつておけば枯木も山のにぎわいだというような氣持かもわかりません。はいつた方がよかろうと思うというような御説明ですが、そんなにお急ぎになるような必要はないのじやないか、殊にわれわれは占領下にあります。昨日細川委員からも大分質問があつたようですが、この條約ができたからといつて占領下でいろいろな制約を受けておるから、この点に関する限り條約で保障されたものは、利益がもたらされるという御説明があつたのですが、私はどうも納得いかないような氣がするのです。一例をとつて申し上げれば、郵便條約の第二十八條に継越の自由などという点につきましていろいろ、「航空小包継越の自由は、連合の全境域においてこれを保障する。」云々というようなことがありますが、実は継越などというのは、今の状態ではできないのぢやないか。平和を見越して、平和状態を基礎にして書かれたものですから、この條約にはいつても一向利益はなく、現に昨年連合國からのデイレクテイヴで、われわれが関與しておりますところの商業用の通信とか何とかいうことも、ほとんど現在アメリカ交互計算で処理していただいておるのでありますが、実益の点でそうでありますし、はたして今の占領下で、総司令部あたりでもこれをやらなければならぬというような氣持か何か、口吻でもあるのですか。その点も併せて伺いたい。
  15. 西村熊雄

    西村説明員 前回來説明を補足する意味において、一言附け加えさせていただきます。この新條約に加入する事実上の利益がどうかという問題が、大分論議されたようでございます。それを考えるときに、われわれ一つ忘れているような事実があると思うのですが、それは一昨年の秋から日本郵政廳は、郵便小包について國際業務を開始しているという点であります。開始するにつきましては、むろん連合國最高司令部の覚書によつて許容されたから始めたのでありますが、この業務をやるにしても、何によつてつておるかといいますと、それはブエノスアイレスの條約によつてやつたわけであります。郵便業務をやるについては、複雜取扱規則が要るわけでありますが、その規則は全部プエノスアイレスの條約によつておるのであります。そのブエノスアイレス條約が今年の七月一日からパリ條約に切りかえられるということになつておるわけであります。それでありますから、現在二つ業務について國際業務をやつております日本郵政廳といたしまして、七月一日以後各連合國員と同時にパリ條約による業務に切りかえる必要がある。これが日本郵政廳として最も強く——会期末でたいへん迫つていてこういう議案をもちこむのには、非常に御不自由、御不便を皆樣にかけるとは知りつつ、なおかつこの案件をもちこんだ最大の原因であります。從つてこの新條約に加入するということについては、大きな利益があるわけであります。利益というよりも、むしろ加入して始めて正統なる國際業務が、郵便小包について継続し得る。こういうことになるのでありますから、七月一日までに無理をしてはいらないでもいいじやないかというような考えは成立たないように思うのであります。  もう一つ國会外務委員として、條約の案件について前触れの手続をとつてもらつて、十分に審議をする余裕を與えてもらいたいという、強い御希望がございました。その点につきましても私ども事務当局としては、まことにもつともの御希望であると思つておりますので、今後は十二分に御希望に副うように努力するつもりであります。今回の案件につきましても、事務当局としてはできる限りの努力をいたしました、條約の案文を接受いたしましたのが六月八日でございます。政府として加入手続を取り得るという確信を得ましたのが、六月十二日であります。その当時國会は、大体月末までというような情勢がはつきりしておりましたので、はたして間に合うように今議会手続を取運び得るや否やという問題は、事務当局としてたいへんな頭痛の種でありました。しかしこのためには逓信省郵務当局の方は、四日間徹宵仕事をされた。われわれもそれでは徹宵仕事をやりましようというようなわけで、また法務廳におきましても極力御勉強をお願いしまして、やつと間に合つたような次第であります。私どもとしてはもつと早く手続が取進められまして、そうして十分御論議を願う余裕があつたならばと思いまして、その点をお責めになられますと、まことに汗顏の至りにたえません。將來はこういうことがないように、十二分に事務当局として努力いたしますということを、私條約局長として御答弁申し上げておきたいと思います。
  16. 若松虎雄

    若松委員 今西村局長の御説明によると、ブエノス・アイレス條約からパリ條約に変つたんだから、今度新しい條約においてやつていこうというのは、要するに日本参加すれば名実ともに動くということがありますけれども占領下にあれば、先ほどから私が言つておるように、継越しの自由とか何とかいうのを、こつちが制約を受けるのではないか、現在実際條約上書いたことがあつても、できないのではないかという点で、実際利益という点よりも、義務を果し得ないのではないかといううらみが多いのではないかという氣がいたしますが、この点についてはどうお考えでありますか。
  17. 西村熊雄

    西村説明員 今若松委員から例にとつて質問がありました継越しの自由につきましては、現在占領下にあるがゆえに何らの制限を受けていないそうであります。継越しの自由は日本についても嚴として存在しておる。
  18. 若松虎雄

    若松委員 責任をもつてつておりますか。
  19. 西村熊雄

    西村説明員 さようであります。名実ともに存在するという郵便当局の説明であります。
  20. 細川隆元

    細川(隆)委員 今度は委員長にお伺いしたいのですが、この條約が可決になるかどうかは、これから討論にはいるわけでありますが、可決としたならば、本会議あと二、三日ですが、きよう全衆議院議員に條約案は配付されておりますかどうか。
  21. 安東義良

    安東委員長 提出されたはずです。配付されておりますね。
  22. 西村熊雄

    西村説明員 配付されております。
  23. 細川隆元

    細川(隆)委員 それから分担金の問題でありますが、昨日和田委員から何か話があつたそうですが、私ちよつとわからないのですが、單位はどういうふうにきめてあるのですか。
  24. 小笠原光壽

    ○小笠原政府委員 連合の受入れの分担金につきましては、現行ブエノス・アイレス締結郵便條約につきましても、日本は一等になつておる。今度のパリ締結郵便條約の施行規則におきましても、日本を一等に予定いたしております。
  25. 若松虎雄

    若松委員 一等に加えられるのはまことに結構ですが、どうも「賞められて減るタバコかな」という狂歌のような氣がいたしますが、すべて日本の実情に即したようにこの点は勘案されて申出があつてしかるべきだと思います。殊に非常に苦しい予算で、委員長あたりも御明察のことだと思いますが、その点をお考えくださらぬと、かえつて関係方面あたりから、くすぐつたい思いをされるかもしれぬから、十分に御考慮をお願いいたします。
  26. 馬場秀夫

    ○馬場委員 それに伴つての予算の関係はどうなりますか。それから先日お伺いしたのですが決済の場合、どのぐらいの受取勘定になりまするか、見当がおつきですか。
  27. 小笠原光壽

    ○小笠原政府委員 外國郵便の取扱いに関します経費は、通信特別会計の予算に盛りまして、ただいま國会に提出いたしております。それから、この郵便の交換に伴いまして、いろいろ諸外國の郵便廳に支拂いをしなければならぬ、この点は御承知の通り、ワシントンの例のトラスト・フアンドから支拂いを受けることになつております。今日では國内の予算とは直接の関係はございません。
  28. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 前の委員会でお尋ねしたのですが、しつかり意味了承しませんでした。それは航空郵便で出す場合に、アメリカから二セントの普通の料金のほかに二十セントアメリカの金ではつてくるのに、こちらからは六十円の料金を普通料金の上に出しておるのですが、こういうのは、その條約にはいつた場合に、安くなるのですか、高くなるのですか、その辺の見透しをお聽きしたい。
  29. 小笠原光壽

    ○小笠原政府委員 ただいまの航空料金は、これまでの條約にきめてありましたところの規定に基いて、各國から申出てきた割当額を基礎にして計算いたしております。それで新しい條約によりまして、航空で送ります各國郵政廳の徴收します、いわば手数料に該当するようなものは、今度の條約では今までよりも多少低減されておりますので、將來の見透しといたしましては、現在よりは低減される可能性があるであろうと考えております。但しもちろん日本の円とドルとの換算の比率問題等もございますから、具体的にはたして現在より数字が小さくなるかどうかは、ちよつとただちに申し上げられませんけれども、傾向といたしましては、今度の郵便條約の改正は、特に航空の面におきまして非常に從來の規定と変つておりまして、航空の料金の負担を低減するというふうな点が一つの著しい点になつておりますので、航空で送る郵便物の料金も將來は低減されていく可能性があると考えます。
  30. 武藤嘉一

    ○武藤(嘉)委員 今のアメリカからは二十セントであるのを、こちらから航空便に六十円拂うということになりますと、換算は一ドル三百円にあたるのではないかと思うのですが、かような点は、今後はうんと安く航空便の出せるように、政府において向うと御折衝願いたいと思います。
  31. 小笠原光壽

    ○小笠原政府委員 御趣旨に副うように十分努力いたします。
  32. 安東義良

    安東委員長 それでは質問はこれをもつて打切ります。ただいまより討論に入ります。
  33. 竹内克巳

    ○竹内委員 昨日も私申し上げたのでございますが、私の考えを申しますると、加入した方がよい。かつ進駐軍の好意もあつてのことでございますから、この際加入した方がよい。但し、ただいまお話がありましたように、各委員の意見というものは、昨日私が申し上げた線にあるのではないか——ただいま植原君とも話したのでございますが、植原君も同樣な意見でございました。この案をここで可決いたしますると同時に、この委員の言わず語らずのうちにみな思つておることを條件としてこの際可決するということを、委員長から特に外務当局お話おきを願いたいと思います。もう一つ、私附け加えて申し上げたいのは、ただいま七十三條第三項の云というような議論が出ましたが、これを使用するということこそ、非常に將來に惡例を残す。現にその例は、欧州戰爭後の連盟加入に対しましてアメリカが非常に苦しんだ点であります。いかなる場合においても、これはなるべく將來御使用にならぬように、ただいま次官からもお話がありました。非常に結構でございます。條約局長以下徹夜でともかくも間に合うようにこれをお出しになつたことは、その御努力を私は認めてよいと思います。但し昨日申し上げましたように、この取扱い上に先例を残してはいけませんから、特にその点は委員長から嚴重な條件を出していただきたい。それに私はこの間も外相としての芦田氏にここで申し上げたのですが、どうもこの間も外務大臣がここへまいりましたときに、外務省から外務大臣お一人で、どなたもお出でにならない。要するにこの條約の取扱い方もありますが、平素委員会において、外務当局委員会とがもう一つしつくりいかない点がある。この点も一つ將來外務省の方々に十分御考慮願いたい。  さらに予算につきましても、私は昨日申し上げたのでございますが、もう少し予算についても申し上げたいこともございますが、もうすでにこういうふうにプリントまでされておりますから、いまさら申し上げてもいたし方がございませんが、この次の予算の御編成の場合においては、適当にこの外務委員会にそれぞれ御相談あつて、しかるべきものだと私は考えます。以上私は申し上げましたことを條件といたしまして、本案に賛成したいと思います。
  34. 若松虎雄

    若松委員 從來國際約束なんてものは、ほとんど政府のやることだというふうで、一般によく周知されていない憾みがあると思います。そこで外務省の方々の御答弁を聽いておつても、私の邪推かもしれませんが、未だにそういう氣分が残つていやしないか。憲法七十三條は主権在民の唯一の現われだと思います。しかも條約締結國民ためにやる、いわゆる國民の條約であるということならば、もう少し失礼だが脱皮されて、今のような事情を伺えばいろいろ御同情すべき点は多々ありますけれども、いやしくも事務当局がそういうふうなお氣持であれば、自然こういうふうな現われも少くなるのじやないかと思います。過ぎたことをあえて私は嘆こうというわけではありませんが、やはり新憲法下に新しいスタートをしたのですから、今後こういうことを繰返さないように、私は嚴重に警告を申し上げたいと思います。
  35. 安東義良

    安東委員長 それでは今後の條約審議の方法につきましては、皆樣多数の御希望のように、十分審査の余地をもつて愼重に取扱うということを條件として、この両條約を承認することについて採決いたしたいと思います。賛成の方は御起立を願います。
  36. 安東義良

    安東委員長 起立全員。よつて承認することに決しました。     —————————————
  37. 安東義良

    安東委員長 次に請願に移りたいと思います。日程第一、日系大陸孤兒救済に関する請願、大野伴睦君ほか一名紹介、第一四六六号を審議いたします。
  38. 若松虎雄

    若松委員 紹介者が今日見えられませんので、私代つて請願の趣旨を申し上げます。  終戰後在華邦人の引揚完了とともに、中國に在留する日系國際孤兒は、その父を失うとともに、その生活保護の道をも失い、街頭に漂泊し、浮浪の状態を呈するに至りつつあるのであります。殊に兒童賣買取引の行われる社会環境より考えれば、彼らの前途はまつたく悲惨であつて將來の日華親善関係一つの障害となることは自明であります。文化國家として再建せんとしつつある日本は、当然彼らを救済し保護する責任があることはもちろん、人道上よりするも看過することは許されない問題であります。もしそれ彼らを保護し、教養するに國家が最善を盡すならば、將來の日華親善に彼らが重大な貢献をすることは明らかである。ここにおいて政府はすべからく適切な方途を講ぜられて、速やかにこれを実施せられんことを請願する次第であります。  その理由として、日系在華孤兒の状態、終戰後昭和二十一年四月より六月までの華中方面における状態は、その数約二千九十名ぐらいであつて、日系の父親と離別し、苦境に立つた中國婦人の母親のもとにいた二、三才ぐらいの者がもつとも多いのであります。次に昭和二十一年六月より最近の調査によれば、これらの孤兒の相当数が上海、南京、武漢方面の浮浪孤兒の中に見出だされております。將來の見透しといたしまして、このままに放置すれば、すでに本要旨に述べたごとく、社会環境により彼らの將來がまつたく悲惨の状態に陥ることは自明であります。そこでその救済の方法としては、イ、國家が直接救済活動を展開すること。ロ、請願者を中國に派遣して保護事業を行わしめ、國家はこれに補助を與えること。ハ、請願者またはこれに代るべきものの中國への渡航許可を連合軍総司令部に請願すること。ニ、中國政府に本保護事業の許可を政府として請願すること。ホ、如上の許可を得て大陸佛子園ともいうべき保護施設を設けて、これにこれらの孤兒を收容しあらゆる方面より教化及び救済をはかること。ヘ、中國佛教團と連絡し本事業を経営すること。  この請願は福岡市材木町四三番地大西大善という人から出されたものであります。この請願者の履歴を述べますれば、今次事変勃発とともに日蓮宗布教師として中華民國に渡り、漢口に身延山別院武漢寺を建て、難民を救済し教化保護事業を起し、中國僧侶と連絡しつつその事業の拡大強化をはかりつつありましたが、終戰後最後に引揚げた者であります。  以上請願の趣旨を申し上げました。
  39. 安東義良

    安東委員長 ただいまの請願について、政府側の御見解を御説明願いたいと思います。
  40. 倭島英二

    ○倭島政府委員 現在どれくらい今請願に書いてありました種類の孤兒があるかについては、正直に申し上げて、まだはつきりした資料がございません。今の請願の趣旨によれば相当数あるように思うのでございますが、御存じの通り、現在調査をする機関その他についても、政府としてもちませんので、現地の方に残つております同胞の相互扶助機関のようなものを通じて調査するよりほかないと思いますが、調査をして実情を明らかにする措置をとりたいと思います。しかしそれを実際に保護するという問題につきましては、これまた人を派遣するにいたしましても、物資を送るにいたしましても、たいへん困難な状況にあります。実際われわれ同胞として数字あるいは居住のはつきりわかつている人たち、主として現在は戰犯関係あるいは留用者の人たちのことでございますが、その人たちの生協を何らか援護したいということを考えておりまして、物資を送る問題、人の問題をいろいろ関係方面と相談をいたしておりますが、中國につきましては、いまだに物資を送る問題も、中國政府の方との関係で、実現困難な状況にあります。実情かような状況でございまして、今のような請願に対しましては、政府としてはまずどういう実情にあるかということを調査する方法をとるのが第一だと思います。
  41. 安東義良

    安東委員長 ただいまの請願について御意見はありませんか。——ただいま政府委員説明によりますと、まだその事実についてはつきりしておらぬようでもありますから、これは政府側に事実を至急取調べてもらうことにしたらいかがですか。
  42. 安東義良

    安東委員長 それではさよう取計らいます。     —————————————
  43. 安東義良

    安東委員長 次に二、在外胞引揚促進請願並木芳雄紹介、第一五七〇号、三、ソ連領からの復員促進に関する請願、中曽根康弘君外一名紹介、第一六四八号、四、在外胞引揚促進請願中島茂喜君外四名紹介、第一六四九号、並びに陳情書といたしまして、一、在外胞引揚促進に関する陳情書外一件、東京都千代田区丸の内東京都議会議長石原永明外九名、第三四七号、二、同外一件、大阪府議会議長廣瀬勝外一名、第四一六号、三、ソ連地区残留胞引揚促進に関する陳情書、福井縣南條郡武生町字浪花天谷一雄外百六十七名、第四四一号、四、未復員者引揚促進に関する陳情書、長野縣長野市西鶴賀町麻場光久外千百八十八名、第四五九号、五、在外胞引揚促進に関する陳情書外三十件、群馬縣引揚促進委員会委員長北野重雄外三十名、第四六四号、六、同、兵庫縣城崎郡豊岡町議会議長松田吉五郎、第五二三号、八、在外胞引揚促進に関する陳情書、東京都二十三区会民生厚生委員連合会長藤井豊吉、第六四四号、九、在外胞引揚促進に関する陳情書外六十四件、長野縣上伊那郡赤穂町宮田伊那中澤村引揚促進大会倉田たね外二百四名、第六五九号、一〇、在外胞引揚促進に関する陳情書、福岡縣小倉市議会議長相良佐久郎外四名、第六九一号、一、一同、八南地区メーデー大会、第七一四号、並びにソ連地区残留胞引揚促進に関する陳情書、廣島市國泰寺町廣島市役所内廣島市在外同胞帰還促進連盟委員長任都栗司、第七五二号、在外胞引揚促進に関する陳情書在外同胞帰還促進新潟縣協議会大会代表者松木宏外一万八千五百名、第八一五号、以上在外同胞引揚げに関する陳情を合わせて一括議題にしたいと思います。右につきましては、從來ともいずれも採択いたしておりますから、今回も同樣に採択いたしたいと思います。御異議ありませんか。
  44. 安東義良

    安東委員長 御異議なしと認めます。     —————————————
  45. 安東義良

    安東委員長 次に七、長崎縣重要工場賠償撤去対象より除外の陳情書というのが出ております。これは長崎縣議会議長岡本直行提出第六四〇号でありますが、これにつきまして船田賠償長官より御説明を仰ぐことにいたします。
  46. 船田享二

    ○船田國務大臣 議題となつております工場施設の問題につきまして、一般的に申し上げますと、実はこれはあまり個別的に取扱うのもいかがかと思いますので、まず簡單に一般問題として賠償廳でどういうことをしているかというようなことを申し上げて御了解を得たいと思うのであります。大体民生安定の上から、あるいは輸出貿易の上からぜひともこちらに残しておいてもらいたいという必要を認める工場につきましては、賠償廳といたしましては、経済安定本部あるいは関係各省と協議をいたしまして、その上で賠償廳から連合軍総司令部に対しまして、できるだけ好意的な考慮をしてもらいたいということを願い出ることにいたしておるのでありますが、ただここで注意いたさなければならないことは、今申し上げたような民生安定上あるいは輸出振興の上からいつて欠くべからざるものだという十分な理由がございませんと、総司令部にもち出すわけにはまいらないわけでありますが、今日までいろいろな工場経営者からはもちろんでありますが、そのほか労働組合などからも、あるいはまた特定の都市などから、その都市の人口の大部分が特定の工場に依存して生活しているというような理由から、あるいはまた縣としてその縣の産業上、あるいはまた失業救済上重大だという理由で賠償廳の方に陳情もあつた次第でありまして、これらにつきましてそれぞれ関係各省とも連絡の上、適当なものであると考えましたものは、もちろん全部総司令部の方に取次ぎましてできるだけの努力をいたしておるのでありますが、現在といたしましては、こちらの陳情を総司令部としてはいわば聽きおくという程度に止まつておりまして、これに対して確定的な意思表示をもらうまでには至つておりません。この長崎縣の数工場の存置に関する陳情問題につきましても、今申し上げたような一般方針に從つて処理していくということを申し上げるほかないと思うのでありますが、ただここでただいま問題になつておりますような、長崎縣ばかりではありませんが、こういう問題につきましては、ストライク報告が先般公表されました際に、その一部分に関係工場の名が出ていたということから、地方新聞が大々的に取上げましたので、そのため関係各方面で非常に心配をいたして陳情をするというような段どりになつたと考えられるのであります。ところが御承知と思いますが、このストライク報告書等はまだアメリカの政策として決定したものではございませんし、引続きジヨンストン報告書も公表されたような次第でありまして、このような非公式の意見の発表に関連して、非常に心配したりあるいは喜んだりというようなことは行き過ぎではないかと考えられますので、その点はまだ決定しておりませんので、また総司令部の側でも、大体そういうような考え方であるということがわかつている次第でありまして、こういうようなことは長崎の問題につきまして、長崎の軍政当局から長崎の商工会議所の方にもある通牒が來ておりますが、その通牒などから見ましても、総司令部の態度というものがはつきりいたしておるのでありまして、つまり決定的にこれを取去るというようなところにまで至つておりませんので、從つてこちらから差出しまして陳情等も、前に申し上げましたように、聽きおくという程度に止まつているということを申し上げるよりほかないのであります。具体的な問題につきましてはあるいは個別的に何か別の機会に申し上げた方がよくないかと思いますが、一般的な取扱い方といたしましては、今申し方げたような状態になつておるのであります。
  47. 安東義良

    安東委員長 御質問ありませんか。——質問はないものと認めます。  では次に在外公館借上金の返還並びに換算率に関する陳情書、東京都中央区銀座四丁目教文館ビル山東協会会長鈴木格三郎、第八七六号を議題といたします。政府委員の御説明を願います。
  48. 倭島英二

    ○倭島政府委員 在外公館の借上金についての経緯を申し上げます。この在外公館の借上金の問題はすでに御承知かと思いますが、中國及び南方におきましては、同胞の現地引揚げまでに至る困難な状況を救うために、在外の外務省の出先機関が訓令に基きまして現地で金を借りた。それから滿州、朝鮮におきましては同樣のことを現地の民團、民会その他でおやりになるということで、從來の現地の在外公館なりあるいは民團、民会等で現地の金を借りて同胞の急場を救われたというのがもとでございまして、現地のそれぞれの通貨を一應その当地のレートでこちらに直してみますと、約九億円に達するわけでございます。この支拂問題につきましては、すでに從來たびたび問題になつておりまして、政府といたしましてはできるだけ早くその清算というか、支拂いをするようにしたいということで、ことしにおきましても、でき得るならば二十三年度予算に組んで、その清算をしたいということで司令部の関係方面、主として予算の係りでございますが、それとことしの二月ごろから交渉をいたしてまいつたのでありますが、結論といたしましては、未だに司令部の方の関係の筋の了解が得られないという状況であります。実は昨年の四月にもいろいろ事務当局が交渉いたしまして、最後には総理から向うの相当の上の関係当局へ交渉をしていただいた経緯もございましたが、そのときでも実は大体三つの理由で司令部の方はどうも同意しかねるという手紙が参つております。その理由は、御存知の通り在外財産というものは現在一種の凍結状態になつておりますが、この在外公館借上金同樣のふうに考えられておりまして、これを政府が支拂うということになりますれば、一部凍結の除外例をなすわけであります。それでこれを支拂うという際には、これまで凍結されたものを解くについて特別の了解をとらなければならぬ。司令部の方の見解といたしましては、現在例外を認めてまでも支拂う必要はないと言う。金を在外公館へ貸した人たちが帰つてきて、現在いろいろ生活上困るということで、金を返してほしいということであればその生活に困るという面については國内の救済規定があるのだからそれでやつたらいいだろう。なおインフレというような観点から言つても、この際これを拂うことは同意しかねるというのが、去年の四月の向うの回答であつたのでありますが、ことしにおきましても、二月からごく最近まで交渉を続けましたし、また一昨二十六日には総理からマーカツト代將との間に、本件についての解決について交渉をされたのでありますが、まだ先方の回答は得られないのでございます。一昨日の交渉の模樣では本件は從來もいろいろ経緯があり、事務当局でさらに研究をさせてみようという程度のものであつたわけであります。大体以上の通りであります。
  49. 安東義良

    安東委員長 結局これはなかなかうまくいかぬということですね。
  50. 倭島英二

    ○倭島政府委員 事務的の折衝におきましてはなかなか困難である。その理由はいろいろあると思いますが、たとえば今申し上げましたような全体の額が大体九億という程度のものでありまして、これはインフレという観点からどういうふうになるかというので去年はそういうことになつており、われわれのことしの事務的折衝にもインフレの問題が上つておりましたが、大体一番今この問題を解決するのに困難な点は、在外資産の凍結とか、諸般のいろいろな関係が凍結されておりますが、本件を支拂うといろいろな凍結解除の先例をなすという点が一番困難な問題ではないかとわれわれは見ております。
  51. 安東義良

    安東委員長 凍結解除の問題と切離すという方向にもつていくことができませんか。
  52. 倭島英二

    ○倭島政府委員 そういう趣旨から在外資産と言つても、これは政府の、何と言いますか。もしも金が送れたら、金を送つて——行政費と申しますか、全然在外資産というものと性質を異にするということは回を重ねて説明をしておるのであります。その性質が違うということはもう数回の説明によつてよくわかつておると思いますが、やはりいろいろな先例になるという点が関係のところでひつかかつておるのではないか、そう思います。
  53. 安東義良

    安東委員長 別に御質問はないようでありますからこれをもつて散会いたします。     午後零時三十分散会      ————◇—————