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1948-05-18 第2回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月十八日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 安東 義良君    理事 加藤シヅエ君 理事 細川 隆元君       菊池 義郎君    佐々木盛雄君       竹尾  弌君    仲内 憲治君       猪俣 浩三君    戸叶 里子君       馬場 秀夫君    和田 敏明君       小澤專七郎君    園田  直君      唐木田藤五郎君    多賀 安郎君       高瀬  傳君    花月 純誠君  出席政府委員           外務事務官 與謝野 秀君  委員外出席者           外務事務官 高野 藤吉君           厚生事務官 高木  玄君           專門調査員 佐藤 敏人君           專門調査員 村瀬 忠夫君 四月六日  委員綱島正興君、鈴木強平君及び長野重右ェ門  君が委員辞任した。 同月同日  花月純誠君、園田直君及び山下春江君が議長の  指名委員に補欠選任された。 同月十三日  委員岡田春夫君辞任につき、その補欠として田  中織之進君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十五日  在外胞引揚促進請願外三十六件(並木芳雄  君紹介)(第四五六号) 五月十一日  在外胞引揚促進請願河合義一紹介)(  第六六四号) の審査を本委員会に付託された。 四月八日  在外胞引揚促進に関する陳情書外一件  (第  九二号)  民族の差別待遇反対に関する陳情書  (第一〇七号)  外資導入に関する陳情書  (第一六七  号) 五月十日  在外胞引揚促進に関する陳情書  (第二〇六号)  同(第二四四号)  同  (第二五八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  最近の國際情勢に関する説明聽取  ソ連領からの復員促進に関する請願小川原政  信君紹介)(第一九一号)  在外胞引揚促進請願外三十六件(並木芳雄  君紹介)(第四五六号)  在外胞引揚促進に関する陳情書外八件  (第八一号)  在外胞引揚促進に関する陳情書外一件  (第  九二号)  在外胞引揚促進に関する陳情書  (第二〇六号)  同(第二四四号)  同  (第二五八号)     ―――――――――――――
  2. 安東義良

    安東委員長 ただいまより会議を開きます。  國際情勢について外務省の情報部長與謝野君より説明を聽取いたしたいと思います。
  3. 與謝野秀

    與謝野政府委員 今年の一月の末に本委員会におきまして、当時の國際情勢につきまして概括的なことを御説明申し上げました。その後の國際情勢につきまして御参考までに概括的なことを御説明申し上げたいと存じます。別に特に変つた資料はあるわけでもございませんので、御承知のことが多かろうかと思うのであります。大体今日の國際情勢の大きな問題はいずれもアメリカソヴイエトとの関係ということに帰するものが多いのでありまして、米ソ関係ということを中心として最近の情勢についてお話申し方げたいと思います。  実は昨年以來いわゆるマーシヤル・プランアメリカ欧州復興援助計画、またソヴイエトのいわゆる國際共産党情報機関の設置というようなことがございまして、米ソの対立ということはヨーロツパでも漸次はつきりしてまいつたのでありますが、ドイツとの講和條約の問題をめぐりまして、昨年十二月のロンドン会議が決裂をいたしまして以來、漸次米ソ関係はさらに惡化してまいつたようにみられておつたのでございますが、今年の一月、二月になりますといろいろこまかな問題で米ソ間に紛爭があつたのでございます。たとえば北アフリカ飛行場の使用に関して、ソヴイエトアメリカは條約違反であるというようなことを言つて抗議を申込んだ事件もございましたし、また一月の末にアメリカの軍艦がイタリーに入港したのに対して、ソヴイエトイタリーとの講和條約の違反であるというようなことを言つて抗議した事件もありました。またイランという所はソヴイエトにとつては相当重要な所でありまして、そのイランにおきましてアメリカ軍事使節が活躍しているということについて、イラン政府にたびたび抗議を行うばかりでなく、アメリカに対してもソヴイエト抗議を申込んだというような事件もあつたのであります。その他東洋におきましても、日本海、黄海等におきまするソヴイエトの艦船の行動をアメリカの飛行機が偵察しているというようなことに関してソヴイエト抗議を申込んだ。その他ヨーロツパ占領地域におきまして両軍が接触している部面、特にベルリンにおきましては毎日のように小さな事件が頻発しておつたのでありますが、特に米ソ関係が急に惡化してまいつたというのは今年二月の末以来のことでありまして、これはヨーロツパにおきましてはチエコの政変、及びソヴイエトフインランドに対する進出、また東洋におきましては時を同じくして朝鮮の事態というものがはつきりとしてまいつたために、米ソ関係は急に惡化してまいつたように思われるのであります。チエコスロバキヤはいわゆる鉄のカーテンの中に必ずしも含まれておらなかつたわけでありますが、今年の二月にチエコ共産党がまだ大多数を議会で占めているのではないのでありますが、内務大臣の要職を共産党員が占めて、それによつて一種のクーデタを行いまして遂に内閣を乘つ取り、チエコ共産化に成功したわけであります。この事件のめにチエコ外務大臣が自殺するというような事件が、ありまして、アメリカ輿論に対して非常なセンセーションを與えた。またときを同じくして二月の末にスターリン首相フインランドに対して、ソヴイエトルーマニアやハンガリーなどとの間に結んだ相互援助條約に似たものの締結を提議いたしまして、ソヴイエト北の方に出てきたという印象を與えました。これもまたアメリカ輿論には非常な影響を與えたのであります。そこでアメリカが最も心配いたしましたのは、御承知通り四月十八日に行われることになつてつたイタリーの総選挙でありまして、つまりチエコ共産党が内閣を乘つ取つたばかりにチエコ全体がソヴイエト勢力下に帰してしまつた、これと同じことがイタリーで起れば、つまりイタリーの総選挙共産党が大多数を占めれば、イタリー全土ソヴイエトの傘下に收められる、こういう危險があることになつてまいりましたために、アメリカとしてはイタリー共産化を防ぐということにあらゆる手を盡すということになつてまいつたのでありまして、これがとりもなおさず米ソ関係が非常に緊張したように思われた一つ原因つたのであります。アメリカ政府では三月中旬にトルーマン大統領声明を発し、マーシヤル長官声明を発したのでありますが、特にトルーマン大統領議会特別教書を送りまして、ソヴイエト対外政策を非常に強く攻撃いたしまして、米國のとるべき措置として、マーシヤル・プランによる欧州復興援助計画を至急立法化する、また一般の軍事訓練法を制定する、また選拔徴兵法というものを一時的に制定する、同時に当時ヨーロッパで成立いたしましたイギリスフランスベルギーオランダルクセンブルグ五箇國同盟を全面的に支持する、こういうことを述べて、ソヴイエトヨーロツパの西の方に対する進出に対しては強くこれを反対するという態度を明らかにするとともに、米國内の輿論に訴えたわけであります。同時にイタリー共産化を防ぐ手段といたしまして、アメリカ政府ソヴイエトに対してトリエストイタリーに返還してやろう、こういうことも提議したのでありまして、御承知のように昨年できましたイタリー連合國との間の條約によりまして、トリエストのステータスというものははつきりときまつておるのであります。トリエストの憲法まで條約の附属文となつておるくらいに、イタリーから取り上げられたトリエストの地位というものは連合國間にきまつておるのでありますが、アメリカはこれもイタリアに返そうではないかという提議をして、イタリア輿論自分の方にひきつけよう。またイタリアがもし共産化したならばマーシヤル・プランによるイタリアへの援助ということはやめるというようなこともアメリカ声明してイタリア共産化を防ぐべく努力をしたのであります。その他傳えられるところによりますと、アメリカにたくさんおりまするイタリアの移民を通じて、その縁故の者にいろいろ共産化を防ぐ運動をしたというようなことも傳えられておるのでありまするが、イタリア選挙は去る四日十八日行われまして、御承知通り共産党はあまり進出できなかつたのであります。上院下院を通じまして投票数のそれぞれ三〇%、三一%程度に止まつたのでありまして、大体イタリアの政局というものも一時安定した形になつております。しかしながら選挙の結果を詳細に見ますと、やはりイタリア共産党得票というものは約八百万あるのでありまして、またイタリア共産党員になつておる者が二百数十万ということが傳えられているのでありまして、選挙の結果政権を握るということはできなかつたのでありまするが、ともかく八百万の得票を得ているということは、やはりイタリアにおける共産党の潜勢力というものは相当強いものである。從つてイタリア共産化についてアメリカのみならず西欧の諸國というものは非常な関心をもつておるということがうかがわれるわけであります。また北の方フインランドに対するソヴイエト進出につきましては、フインランド政府は非常な苦境に立ちまして、長い間ソヴイエト側交渉を重ねまして、結局ソヴイエト側フインランドの立場を考慮いたしまして、ルーマニア、ブルガリアその他の國と結んだ相互援助條約とはなはだ性質の違つた非常に穏健な相互援助條約と申しますか、フインランドの立場を考慮した相互援助條約を締結したのであります。たとえばフインランドの出兵の義務というものは、フインランドの土地が侵されない限り、そういう義務はないという点において、ほかの諸國との結ばれました條約とは大分性質を異にしているわけであります。  なお米ソ関係の惡化いたしました一つ原因は、西においてチエツコ問題、フインランド問題が起つたと時期を同じくして朝鮮の問題が起つた、つまり朝鮮は今年の三月の末に國際連合の指導のもとに南北朝鮮を通ずる総選挙行つて独立政府をつくることが昨年の國際連合の総会できまつてつたのでございますが、國際連合委員が今年の一月以來朝鮮へ参りましていろいろ調査をいたします際に、ソヴイエト側は北緯三十八度以北にこの國際連合委員を入れないのでありまして、結局國際連合の企画した南北朝鮮を通ずる総選挙というものは実行不可能になり、國際連合委員長中間報告のためにアメリカに帰りますと、アメリカ飛行場へ着いたところで受取つたニユースは、北朝鮮独立民主政府ができた。しかもその政府は二十五万の常備軍と申しますか、兵力を養成してもつている。こういうニユースつたのでありまして、あたかもチエツコの問題が起きていた当時でありますから、同じようなやり口でまた朝鮮にもこれが起つたということで、アメリカソヴイエトというものの出方について非常な警戒心をもち、輿論も硬化したように思われるのであります。  その後イタリアの総選挙が済みまして以來米ソ関係というものは多少小康を得た形になりまして、イギリスの主導のもとに目下西ヨーロツパ五箇國イギリスフランスオランダベルギールクセンブルグという五箇國同盟ができまして、これがいろいろ会合を行い、またアメリカ援助を要請しているのでありますが、イタリアの総選挙以來これらの動きもそれほど緊張したものとは見られないで今日に及んでまいつたのであります。專門家の言うところによりますと、今年の五月一日のメーデーにおけるソヴイエト側と申しますか、共産党のスローガンというようなものも昨年と比べますと、大分米英に対して協調的なことになつているというようなことも言つているのでありまして、やや小康を得たように見られておつたのでありますが、アメリカ政府は五月の初めにモスコーに駐在するスミス大使を通じましてアメリカ米ソ関係に対する見解というものを申し入れ、これをソヴイエトがこの五月十日に発表したことは御承知通りであります。アメリカスミス大使を通じてソヴイエト政府に送りました覚書の中で、アメリカが現在の外交政策を今後も実行していく、またアメリカの今日とつている強硬政策というものは、國内における選挙というようなものでは影響されない、同時にアメリカの経済がいずれパニツクがくるというようなことを言う者があるが、何らそういう心配はないのであつて、結局アメリカソヴイエトとの関係というものが惡化している現在の状態というものは、ソヴイエト東ヨーロツパ隣國に圧力を加えていることが原因となつて招來されているのである。しかしながらアメリカとしてはソヴイエトに対して何らこれを損う意図はもつておらないのであるから、両國関係の改善の途は開いているというような趣旨を覚書として申し入れたのであります。これに対してソヴイエト側は、五月九日にアメリカソヴイエト交渉を開始して両國の關係を改善しようというアメリカ側の提案には同意する、しかしながら現在の米ソ関係が惡くなつている。それはソヴイエトの行動の結果だというアメリカ側見解にはソヴイエトとしては同意できない。ソヴイエトは今後とも東欧諸國との関係を一層強化していく方針である。アメリカの方はソ連をめぐるいろいろな所に基地を得ているが、これは自衞上の方策とは見られないじやないかというようなことを語りまして、しかもその両國の話合いというものが極祕の話合いであつたにもかかわらず、ソヴイエト側は外交上の慣例を無視いたしまして、一方的にこれを発表いたしたのであります。発表いたしたばかりでなく、ソヴイエトの國内においても非常に宣傳をいたしまして、アメリカ側があたかもひざを屈してソヴイエト側米ソ関係の改善を申し入れてきた、こういう印象を國内に與え、同時に今日西欧國家間の同盟をつくり、アメリカ援助を得て西ヨーロツパソヴイエトと対抗しようとしておりますイギリスフランスその他の諸國に対して、アメリカ自分たちを拔きにしてソヴイエトにこういう話をもちかけている、けしからぬという疑心暗鬼を起させるような結果になりまして、アメリカ側としても、このソヴイエト側米ソ関係に関する覚書を発表したことに関して、またさらに声明を出すというようなことが今繰返されております。またアメリカ覚書をよく見ましても、今ただちに米ソ関係を改善するための國際会議ないし首脳者の会談を提議しているというようなことはないのでありますが、ソヴイエト側がそういうふうにとつて発表したという点を、非常に意外としているのでありまして、ただいまのところこの覚書の交換によつて、ただちに米ソ関係が打開されるというような形勢にはなく、むしろちよつとこの交渉も一頓坐を來してしまつた。こういう形になつているのであります。しかしながらいずれにしてもアメリカ当局者が、ソヴイエト側に対して自分の國の外交政策なり見解なりを率直に傳えると同時に、米ソ関係の打開のとびらは開かれているということを申し傳えたわけでありますから、今日チエツコ事件以來アメリカ議会において陸軍や空軍の拡張案が討議されているのでありますし、その他いろいろ米ソ関係の緊迫を傳える材料が多いのでありますが、両國の首脳者間には、さらにいろいろな折衝も行われる途が残つているのではないかと考えられるのであります。  國際情勢の一切の問題はいずれも米ソ関係に帰することができるのでありますが、これを離れて具体的に個々の問題について少し申し上げますと、先ほど申し上げました朝鮮の問題でありますが、朝鮮國際連合の当初の予定であつた三月に南北朝鮮を通ずる選挙を行うということが実行できなかつたのでありまして、その後極東委員会その他においてもいろいろ問題が討議されたのでありますが、結局五月十日に南朝鮮だけで選挙を行うということをきめまして、御承知のように、十日に選挙が行われたのであります。この選挙には共産党、右翼の一部その他の反対がございまして、済州島その他各地においてテロ行為等もあつた模樣でありますが、結局アメリカホツヂ司令官も発表しておりますように、満足すべき状態でこの選挙終つた模樣であります。選挙の結果につきましてはまだ公式に発表されておらないのでありますが、大韓独立促成國民会李承晩氏の率いるこの会が五十六名、韓國民主党が二十八名、その他の小会派二十九名、無所属が八十二名というような結果になつているということが傳えられています。また南北朝鮮間のいろいろの交渉につきましても、新聞等に傳えられるいろいろな問題がありまして、この選挙に先だちまして南鮮の一部政治家北鮮政治家との間に会議があつたりしたこともあるのでありますが、今日さしあたり問題になつているのは、北朝鮮から南朝鮮への電力供給の問題であります。北朝鮮は前から南朝鮮に対する電力供給を断つということを言つていたのでありますが、この十四日の正午にいよいよ南朝鮮に対する電力供給を断つということを通告したのであります。アメリカ側でも、前からこういう問題がございましたために、準備を進めておりまして、発電設備をもつた船を控えさせておりまして、南鮮に対する電力供給が断たれた一時間後にはもう公共施設への供給には差支えない程度に電力供給している。こういうことが今さしあたりの問題になつているのでありますが、これは南朝鮮から北朝鮮に対する電力に対する支拂いがアメリカ側がドルで支拂うと言うのに対して、北鮮側では施設その他に要する現物で支拂つてくれということでもめている。またアメリカ側ソヴイエトとこの問題を直接交渉をしようとするのに対して、ソヴイエト側はいわゆる北鮮側には人民共和國政府があるからそれと交渉してくれというふうなことを言つて、なかなか交渉がめんどうになつているということがいわれているのであります。  次にヨーロツパにおきまして、ドイツソヴイエト占領下英米佛占領下に両分されておることは御承知通りでありますが、昨年十二月のロンドン会議以來ドイツとの講和條約の問題が当分望み薄になつてきた現在、どういうかつこうで個々の統治が行われているかということを簡單に申し上げますと、去る四月二十日からロンドンにおきまして英米佛の三國がドイツ占領地域をどうするかということにつきまして非公開の会議を開いております。この会議でいかなることが討議されたかまだ詳しくわかつていないのでありますが、この会議にはベルギーオランダルクセンブルグ——つまり英佛西欧同盟をつくつておる國もオブザーバーとして参加しておるのであります。今後ヨーロツパ復興について、西ドイツ東ドイツとを統一した國家をつくるという方向にもつていくのを一時断念して、西ドイツだけの形でヨーロツパ復興に参加さしていくということが、今日英米佛が考えておる大体の方向ではないかと傳えられておるのであります。イギリスロバートソン軍政官が最近、ドイツドイツ全部の統一は当分期待できないから、西ドイツ東ドイツと遊離した形において一つ國家の形態ができることにドイツ人は満足しなくてはならぬと語つておる点でもうかがわれるのであります。これに対してソヴイエト側ソヴイエト側で、また東ドイツ占領地域を強化し、政策を強化するとともに、ドイツ人の民心の把握ということをいろいろ考えておる模樣でありまして、從來資本家、地主その他いろいろ企業等を取上げたのでありますが、これも今後は行わない、個人の財産をとらない、國有化は從來やつた以外はもう行わないというようなことをドイツ人に宣言しまして、東ドイツだけで投票を行つて一つ政府をつくるというような政策に出ておる模樣であります。これは西ドイツの方におきまして、最近西ドイツだけを一丸とした総選挙行つて、首府をフランクフルト・アン・マインにおき、西ドイツ政府をつくることに対抗して、東ドイツの方でまたソヴイエト東ドイツ政府をつくり、西ドイツをなるべくそれにひきつけよう——ちようど朝鮮においてソヴイエト北鮮政府をつくり、これが南鮮に非常な力で働きかけておる。それと同じ方法でもつて東ドイツ政府をつくり、西ドイツをなるべくひきつけよう、こういう政策に出ておることが傳えられておりますが、まだこれについては詳細なことはわかつていない形であります。  次に中國の問題を簡單に申し上げます。中國では國民大会が今年の三月末に行われまして、蒋介石氏は自分総統になることを辞退するということを申し出たのでありますが、総統の権限を相当拡大いたしまして、蒋介石氏も遂に選挙されるということを承諾しましたために、大多数をもつて総統選挙されたのでありますが、続いて行われました副総統の問題につきましていろいろ紛糾がありまして、國民党の主流が孫科氏を推したのでありますが、孫科氏と李宗仁、程潜、この三氏の得票が非常に接近いたしまして、三回副総統選挙をやつてもなおきまらなかつた。その間に國民党内部にいろいろなグループの策動等がありまして、孫科氏も辞退をする。李宗仁氏も辞退をするというようなことがあつて、一時どうなるかといわれていたのでありますが、結局李宗仁氏が副総統選挙されまして、國民党の主流の支持のもとに立つている孫科氏を破つたということは、やはり國民党内でいろいろな対立があることを示しているといわれているのであります。  なお中共軍國民政府軍との戰況につきましては、さきに一月にも申し上げておいたのでありますが、今日では満州の九九%が中共軍に押えられてしまつたのであります。最近は長春が攻撃されておりますし、奉天も圧迫されております。また中國の本土の方では河北、大同、張家口山東方面にも中共軍の勢力が非常に殖えてまいりました。延安もすでに四月二十一日に國民政府軍が撤退した、結局國民政府軍黄河以南において防禦する、こういうような態勢になつておるということが傳えられているのでありますが、同時に蒋介石氏は今後六箇月以内に華北から中共軍を追拂つてみせるという声明行つているのでありますが、いろいろ困難のあることはすでに御承知通りであります。  またアメリカに対しましていろいろなミツシヨン等が参りまして、國民政府に対する援助を懇請しておつた模樣でありますが、アメリカは四億六千三百万ドルという借款を議会で可決いたしまして、これを中國の援助のために充てることになつたのでありますが、國民政府としては目下最も必要なのは、アメリカ政府軍事的援助でありまして、この軍事的援助についてはアメリカトルーマン大統領もこれを行わないということは言つておらないのでありまして、その可能性は示しているのでありますが、この四億六千万ドルの借款の場合においても、経済援助ということだけを言つているのでありまして、中國としてはなお一層の援助を得るために努力をしておるのではないかというふうに傳えられてるのであります。  なおアメリカにおきましては、御承知のようにボゴタにおきまして三月以來汎米会議が開かれておつたのでありますが、時を同じくしてボゴタにおきまして暴動が起りましたために、この会議が一時中絶されまして、四月の十四日からもう一遍この会議が再開されたのであります。議題の一番おもな問題でありましたラテン・アメリカに対する経済援助問題につきましては、結局今年の末ごろにブエノス・アイレスで経済会議を開催して細目の討議を行う、今回の会議では單に基本的の問題の審議に止めるということで終つたようであります。そのほか米州機構憲章というものの採択が行われたのでありますが、從來の汎米連合というものを再組織しまして、國際連合憲章のわく内における西半球の地域的機構の確立ということを目的とした一つのチヤーターが採択された模樣であります。  大体去る一月以來國際情勢のおもなる問題はこの程度でありまして、まだこまかい点は多々ございますが、これは省略いたしまして、最後に対日講和條約の問題はどうなつているかということを簡單に申し上げたいと思います。対日講和條約の問題は、一月に本委員会で御説明申し上げました通りに、手続上の問題のために連合國側で意見が一致しない、その上に対独講和條約の問題が昨年末のロンドン会議で決裂してしまいまして、それ以來公に連合國側の交渉の材料になることはなく、今日に及んでしまつたのであります。その間に米國の対日経済自立を援助するという政策が着々実行されてまいつたことは、御説明するまでもなく御承知通りでありまして、これが対日講和が遅れている一面を現わしているものであるという印象をもたれておつたのでありますが、最近二、三この対日講和條約問題が取上げられた例がありまして、その第一は中國であります。中國におきましては、四月中旬に、國民大会が対日講和に対する政府への勧告というものを決議して、政府に建言いたしたのでありますが、中國としてはやはり從來通りアメリカソヴイエトイギリス中國の四大國が拒否権をもつた講和会議でなければいかぬという、この方式を堅持する。また講和会議会議地としては中國でやるべきである、こういうことを主張しておるのでありますが、その他に條約の内容といたしまして、天皇制を廃止する、工業水準を一九二八年から三〇年くらいに止めておく、賠償の総額の五〇%は中國がもらうべきだ、また今後五十箇年間日本を連合軍が管理すべきだ、また連合國側はこの講和條約をつくつた、後に條約実施の保証を相当嚴重にとつておかなくてはならぬ、こういうようなことを國民大会の外交委員会が採択し、同時に國民大会もこれを採択し、政府に建言したのでありますが、政府当局の方はまたこれは別でありまして、四月十四日に王外交部長はその外交演説におきまして、日本の軍國主義再興に対する一つの防止の保証があれば、今日アメリカ行つている対日経済復興政策に反対しない、こういうことを声明しておりますし、またアメリカ政策に対しまして、その他の國民政府首脳部の態度も協調的になつたということが傳えられているのであります。また昨年の末に蒋介石氏も、日本に対して行き過ぎた警戒心をもつことは不可であるということを訓戒しているのでありまして、最近の中國とソヴイエト関係國民政府中共軍関係というものから、中國のアメリカに対する接近の空氣が濃くなつているということが傳えられておりますために、政府当局の対日態度と申しますか、アメリカの対日経済政策に対する批判の態度ないし講和條約に対する態度というものも、國民大会で決議されたようなこういうものとは、また別の方向に向つているというふうに思われるのであります。またイギリスでは先月の十二日に議会におきまして、一体対日講和條約はどうなつているのかという質問が出まして、イギリスの外務次官は、日本との講和條約の問題については、一切の問題について英連邦の各國間で緊密な連絡をとつている、またアメリカとも緊密な連絡をとつているのだが、今日のところ、日本の武装解除、非軍事化というものは満足すべき状態にあると思うというようなことを答弁しているのであります。それから濠州におきましては、外務大臣のエヴアツト氏は最近下院におきまして、大國間の一般的な危惧が除去されたならば、日本との早い講和ということも適当であろうが、ただまだ十分信用のおけないうちにあまり早く日本の再武装を行わせるようなことをアメリカ当局が考えていたならば、これは濠州にとつて重大問題だ。日本は東洋の経済的な工場になる権利は與えられても、兵器廠になるような権利は許してはいかぬというような非常に警告的な演説をしておりますし、また講和條約の内容についても、日本の生活水準は日本が侵略して荒した太平洋諸國の水準より高くてはいかぬというようなことを述べておる模樣であります。最近ヨーロツパ連合の討議のためにロンドン会議が行われておりますが、その会議の後に引続いて対日講和の問題について非公式に話合わなければならぬということが外電等に傳えられておるのでありますが、これも未だはつきりしたことはわかつておらないのでありまして、その他においては日本の講和條約締結が促進されるというような氣運は今日のところ見受けられない、こういう状況であります。はなはだ簡單でございましたが、一應御説明といたします。
  4. 馬場秀夫

    ○馬場委員 ちよつとお伺いしますが、米ソ貿易の何か数字がわかつておりましたら……。
  5. 與謝野秀

    與謝野政府委員 今日係官を連れてまいつておらないものですから、数字をもつてまいつておらないのです。高野事務官は別の問題で出席しております。
  6. 馬場秀夫

    ○馬場委員 数字でなくて、最近の傾向はどうですか、あまり政治の方ばかりでなくて、米ソ貿易の問題について……。
  7. 與謝野秀

    與謝野政府委員 統計をもつてこの次の機会に説明いたします。
  8. 安東義良

    安東委員長 では特に御質問がございませんでしたならば請願に移りたいと思います。     —————————————
  9. 安東義良

    安東委員長 ソ連領からの復員促進に関する請願、第一九一号、在外胞引揚促進請願、第四五六号、前者は紹介議員は小川原政信君、後者は並木芳雄君でありますが、いずれも今までこの委員会で審議いたしました請願と同趣旨のものでありますから、内容は省かせていただきたいと思います。ただ今までわれわれの委員会におきまして、これらの請願を採択し、政府側におきましても十分努力をいたされたにかかわらず、最近の報道によりますと、ソ連地区にはなお六十九万二千余名、中共軍の支配下の満州において六万五千余名の在外同胞があるということははなはだ遺憾にたえない次第でありまして、われわれはさらに努力を新たにしてこれらの同胞の帰還を一日も速かならしめるようにいたしたいと存じます。  なおこれに関連いたしまして、同じ趣旨の陳情が出ております。陳情第八一号、第九二号、第二〇六号、二四四号、二五八号がそれであります。これらのものはいずれも採択するに御異議ありませんか。
  10. 安東義良

    安東委員長 つきましては、これらに関連いたしまして、最近の情勢について政府当局の説明を聽取いたしたいと思います。説明員外務省引揚課長高野藤吉君。
  11. 高野藤吉

    ○高野説明員 ソ連領からの引揚問題について最近の経緯を簡單に御説明申し上げたいと思います。  先刻來御承知通りソ連領からの引揚げは昨年の十一月から中断されまして、大体四月一日から再開される予定でございましたが、四月に入りましても、ソ連から何らの通報がまいつておりませず、四月一ぱいは結局再開の運びに至りませんでした。それで五月から再開されるという通報が四月十二日にまいりました。遅れた理由といたしましては、氣候の状況及び技術的な問題によつて一月遅れ、五月から再開されるという通報がございまして、御承知通り、五月から樺太及びシベリア地区からそれぞれ現在引揚げ続行中でございます。その間政府側といたしまして、司令部に折衝連絡いたしまして、早く引揚げが開始されるように連絡しておつたのですが、逐に一月遅れた次第でございました。現在におきましては、御承知通り、五月中の引揚予定は四万五千五百、六月中の配船の予定はまだついておりませんが、大体米ソ協定に基き五万ずつの人員はずつと引揚げてくるものと思つております。しかし政府側といたしましても、また司令部側といたしましても、五万では、現在残つているシベリア及び樺太地区の総計約七十万の人員を本年一ぱいに引揚げを完了することはできないということで、その毎月の引揚人員の増加について努力いたしております。御案内の通り、昨年十一月シーボルト議長が対日理事会で提案をいたしました。しかしこれに対してはソ側からは何らの回答もございません。また一週間ばかり前、新聞ですでに御案内かと存じますが、十四日に司令部の引揚係のアンダーソン中佐が内外の新聞記者を集めまして、プレス・コンフアランスをいたしまして、その際にアメリカ司令部側の態度といたしまして、こちら側には昨年シーボルト議長が提案した通り、現在月に十六万だけ返す準備がいつでもある、これに対してソ側と折衝しているが、なかなからちがあかないというようなプレス、コンフアランスがございました。日本政府といたしましても、今後ともこの毎月の五万の割当をもつと殖やすように、そして少くとも本年一ぱいには全部ソ連地区の引揚げを完了いたしたいと始終努力し、また司令部にお願いしていきたいと存じている次第であります。以上簡單でございますが、大体の概要を御報告申し上げます。
  12. 安東義良

    安東委員長 同じく説明厚生事務官引揚援護院の高木玄君。
  13. 高木玄

    ○高木説明員 引揚者の援護の状況につきまして概略御説明申し上げます。  引揚者が引揚船によりまして港にはいつてきまして、上陸してから一應の落着先に帰られるまでの援護を應急援護、引揚者がそれぞれの家に帰られましてからのいろいろなおせわを定着援護とわけて呼んでおりますが、まず應急援護の概要について簡單申にし上げます。  現在引揚者を受ける港に地方引揚援護局という役所ができております。御承知通り、樺太からの引揚者は函館の援護局、シベリアの引揚者は舞鶴の援護局、大陸の方面は佐世保の援護局に現在それぞれはいつております。援護局にはいられますと、まず最初に檢疫処置を済ませまして、檢疫処置の済んだ引揚者は一應宿舎に落着いていただきます。檢疫処置の中には全員に対してばい毒檢診、結核檢診を実施しております。その際ばい毒なり結核なり相当注意ずべき状況でありましたならば、すぐさま注意しまして檢疫病院に收容するなり、あるいはそこで全治しない方はもよりの國立病院、療養所に移して全治するまでおせわしております。そのほか帰郷するまで差支えのないような病人、軽症患者でございましたら、局内の病院に入れまして治療を加え、重症患者でございましたら、これもやはり國立病院、國立療養所に送つて全治するまでおせわをしております。收容所にはいつた引揚者には、いろいろな援護の手続が加えられますが、まず引揚者は、殊に終戰後三年経ちました今日、非常に惨めな状況で帰つてこられ、今回の引揚げにおきましても、シベリアの引揚者はもうほとんど無一物、小さなふろしきを一つというような状況で帰つてきておられます。とりあえず全部の方々に帽子からくつに至るまで、新品の被服類を二十点ばかり給與しております。舞鶴の援護局におきましては、上陸されましてから、すぐ引揚者をおふろに入れまして、その際向うから着てきた被服類を全部脱がして、ふろから出てくる者をふんどしから洋服、帽子、全部新品にその場で着かえていただくようにしております、そのほか嗜好品、菓子、タバコの類を支給いたしております。それから持帰り金の交換、持帰り金の全然ない方には、應急援護金として、とりあえず帰郷なされるまでの帰郷雜費といたしまして、一人当り四百五十円支給いたしております。そのほか局内にあります間、引揚証明書の交付とか、あるいは軍人でありましたら復員手続とか、その他所要の手続をしていただきます。とりあえずお家の方に無事に帰つたという知らせをされるために、三十字まで至急電報が無料で打てるようにしてあります。理髪についても相当額國費で補助して、非常に廉價に全員が理髪できるような設備もできております。こういうふうにいたしまして、一應向うから非常に汚れた服で惨めな状況で帰つてこられた引揚者がある程度こざつぱりした状況になつてお帰りになることができるように、できるだけのおせわをしております。お帰りになるときは無賃乘車券を渡しまして、それぞれ行先まで無賃でお帰りになられるようにせわしております。そのほか列車内では特別に医療班を組織いたしまして、もし列車内で急病人が出た場合には應急の措置を講ずる手配を進めております。主要駅には、たとえば青森駅だとか、東舞鶴駅あるいは東京の上野駅、こういつた所には主要駅援護と申しまして、引揚げた方々が休憩なさる場所とか、いろいろ相談案内する場所を設けてありまして、またお茶とか粉みそをここには特別に配りまして、引揚者がお休みの間いろいろおねぎらいするようにしてあります。こうして引揚者がそれぞれ郷里に帰られるわけでありますが、何と申しましても無一物で永年内地から遮断されておつたのでほとんど内地に何ら縁故もないし、また起ち上るための手掛りになるものもないという非常に惨めな状況でありますので、私どももといたしましてもできるだけ手厚い援護をやりまして一刻も早く再起していただくようにやつております。現在引揚援護院で特に定着援護と銘うつてつておりますことは生業資金の貸付、これは昨年の九日から実施してまいりまして、今日まで約十八億円に近い國費が出ております。これは庶民金庫を通じて貸出すのでありまして、一人当り七千円の割当で貸しております。引揚者は多年海外におりまして異邦人の間に伍して生活してこられたので、多くが生活力と申しますか、知識、経験、技能をもつておられ、本來的の意味での生活困窮者でなく、境遇の激変によつてたまたま身を落したという人たちでございますから、再起のためのきつかけさえ與えれば十分に起ち上る能力があるのでありまして、この生業資金が引揚者援護の核心だと私ども考えております。このほか最近復興金融全庫の方から特別融資一億円に限つて引揚者に貸出すような措置も講じてあります。それから引揚げた方々がとりあえずのいろいろな家財道具に困らぬように、應急家財、なべ、かまといつた厨房用品を五百円の範囲内で無償で差上げております。何と申しましても引揚者は非常に惨めなものでございますが、一般困窮者というわく内での援護でございますので、非常に至らぬ点があるのははなはだ遺憾でありますが、一般困窮者援護のわく内でもできるだけ引揚者の実情に應ずるよう実施の面において手心を加えるように努力しております。  最近問題になつております事項を申し上げますと、今度樺太から引揚げてこられた第一船の千歳丸がこの五日に入港したのでありますが、無縁故者が非常に多いのであります。從來樺太方面の引揚げに非常に無縁故者が多いので、昨年とりあえず三万人分の無縁故者の收容施設を北海道、東北六縣にいたしましたが、そのときは大体それまでの状況では樺太引揚げの一六・五%が無縁故者であるという計算で三万人分を準備しておりまして、今度の引揚げが始まります前に一万五千人分余裕がありまして、引揚げの無縁故率がこの程度であつたら大丈夫であろうと思つておりましたが、第一船の千歳丸では最初八〇%の無縁故者があると傳えられて私ども愕然としたのでありますが、その後判明したところでは正確には四一%の無縁故者であります。千歳丸は農業に從事しておつた方ばかりでございまして、明治の時代に向うへ行つてすでに向うで二世、三世というような、ほとんど内地の縁の切れていた人たちで、殊にそういつた事情で無縁故者が多かつたのではないかと思つておりましたが、第二船の白龍丸、続いてはいりました新興丸もやはり三〇%上まわる無縁故率であります。そこでただいまこれらの無縁故者の收容施設の設置について緊急に対策を立てまして、関係方面と折衝をいたしております。これがただいまの引揚援護についての当面の非常に大きな問題として、私どもが努力いたしておることでございます。はなはだ簡單でございますが、大体以上申し上げた通りであります。
  14. 馬場秀夫

    ○馬場委員 二点お尋ねしたいと思います。一つは、二冬を越しておるので大体身体が慣れておると思うのですが、昨年の引揚者に比較して、今度の引揚者はわずかですからわかりませんでしようが、今までに引揚げた方々の身体、あるいは残つている人の状況がおわかりになるかどうか。  もう一つは、今帰つてきている人はどういう順序で帰つてきているか、ちよつとぐあいが惡いかもしれませんが、何かヒントがあつたらお聽かせ願いたいと思います。
  15. 高野藤吉

    ○高野説明員 第一の問題につきましては、私は函館に第一船を迎えに参りましたが、樺太方面の引揚者は今高木説明員から話があつたように、農民が多うございまして、農民はその職業の性質上、ほかの労働者とか、都会人に比較して終戰後あまり居を轉々とかえませんで、元通りにおります。と同時に食糧もほかの職業と違つて惠まれておりまして、非常に健康状態、栄養状態は良好に見受けられました。農民以外におきましても、シベリアから引揚げてきた人の話を聽きますと、初めの年はいろいろ設備が不十分で、向うも慣れなかつたので、食糧状態は惡かつたのでございますが、傾向的に漸次向うの設備がよくなり、組織が整つてまいりまして、非常に食糧はよくなつているように見えます。もちろん都市と辺鄙な土地、または寒い所とかいう地方的な差はございますが、傾向的にはそうであろうかと思います。殊に昨年末切符制度の廃止以來、物が出まわつた関係上、これも收容所にある程度響いていると一引揚者は言つておりまして、だんだんよくなつているというふうに感知しております。  それから第二点の引揚げの標準と申しますか、順序と申しますか、これもちよつと機徴の点があると思います。また推測の程度で、はつきりいたしませんが、樺太地区におきましては、大体残つておる者は労働力の利用できる者、または技術的に利用できる者が多く残されており、またそういう者が最後まで残るのではないか。帰る者は病人とか、老人とか、働き手がない女世帶とか、または家族ばかり多くて働き手が一人しかいないというような者が先に帰されているように見受けられます。それからシベリア地区でも、これは概括的には申されないが、やはり最近帰つてきた人の話を聽きますと、弱い者とか、年取つた者が多くて、ピンピンしている者、非常によく働ける者はあとまわしになつていると自分は思う、と言つておりますが、大体そういうような傾向ではないかと考えております。
  16. 高木玄

    ○高木説明員 ただいまのお尋ねにつきましてお答えいたします。まず健康状況でございますが、引揚援護院に今までにはいつております情報では、今度の引揚げは樺太もシベリアも、ともに昨年までに比べて健康状況は非常にいいということになつております。これはどういう理由か、はつきりしませんが、おそらくただいま高野説明員から話がありました通り、現地の状況が漸次好轉してきている証拠ではないかと見ております。  それから引揚げの順序でございますが、私どもただいま、この一箇月ないし、二箇月間、樺太引揚者全員につきまして特別に調査表を配つて、現地の残留者の生活状況、それから引揚見込みを調べる仕事を進めておりますので、その結果が出てきましたらはつきりすると思いますが、私どもの考えるところでは、一つには樺太あたりでは向うの労力政策といいますか、向うで代替があつて補充がきくようになつてから漸次帰す。今度の集團的に引揚げてきました農業從事者の例を見ましても、コルホーズ農園に新しくソ連から人がはいつてきて、向うからはみ出て帰つてきたという状況になつておりますので、樺太のように産業の割に労働力の少いところでは、そういつた労力の点から必要不可欠の人は帰るのが遅くなるのではないか、代替がつき次第順序帰つてくるようになるのではないかと思つております。
  17. 仲内憲治

    ○仲内委員 実は同じような質問をいたしたいと思つてつたのですが、最近の引揚者の談話として先日の新聞に報道されたのですが、シベリア方面に七十万残つているというお話だが、どう考えてもそうはいようがない、三十万ぐらいの犠牲者が出ているのではないかということが、一引揚者の談話として出ておりました。もちろんこれは権威のある報告とは言えないでありましようが、もしもこういうことが事実であるということでありますれば、関係者としても、國民としても非常に憂慮しなければならない問題であると思います。何かそういう話について特に調査せられ、あるいはその結果でもおわかりになつておることがあればお伺いいたしたいと思います。
  18. 高野藤吉

    ○高野説明員 今の御質問の記事は私もちよつと読みましたが、あの引揚者の数字の考え方は何か誤解があるようで、約六十九万ですが、簡單に七十万といたしまして、これは樺太とシベリアと両方含めてで、シベリア地区に四十九万、樺太に二十万であります。あの引揚者は、自分はシベリアには三十九万内外しかいないと言つておりますが、大体四十九万として差が十万、その中には樺太の二十万を頭に入れてないから二十万余計におるわけであります。損耗率は、これはこの間アンダーソン中佐も申しておりましたが、推測であつて、何ら正式なインフオーメーシヨンはございませんから、ここでいたずらに推測するのはどうかと思います。
  19. 花月純誠

    花月委員 ただいまの御説明でわかりました。政府の御努力に感謝いたしたいと思います。最近私どもの手もとに抑留されておる軍人の親からでありますが、議会は一体引揚げに対して何もやらぬのはどういうわけですかという手紙が來ておるのであります。それでわれわれに、もつと打つべき手があるのか。もつと熱意を示すと何とかできるのか。あるいは國民の輿論でも起すと非常に効果があるのか。それを伺いたい。そういうことをやらぬからできぬのならば、それをやらなければならぬと思います。  それから政府が連合軍の方へいろいろ連絡してくださつておりますが、連合軍の方に交渉せられるほかに、政府としていろいろやつておるとおつしやいますが、どういうことをやつておられるのか。  それからもう一つ、先般シベリアから引揚げてきた者から私ども報告を受けたのでありますが、これは極端なのでありまして、簡單に言いますと三分の二は死んでおるというのであります。私どもはそれを信用いたしておりませんけれども、引揚げて帰つた人の話を聽きますと、かなり非惨なことを申す人と、割合に樂だつたようなことを申す人がありますが、その辺が政府においておわかりになつておりますならば、一体どれを信用したらいいか、またどういう状況であるかということをお話願いたいと思います。一体どをれ信用したらいいか、またどういう状況であるかということをお話願いたいと思います。われわれは直接引揚げた人にいろいろ聽いたのでありますが、全部を信用しなくても、見てきた人の説明であれば一應重要な参考にしなければならぬ。それは非常に極端な説明をする人がありますので、その辺をおわかりになつておる点だけをお話願いたいと思います。
  20. 安東義良

    安東委員長 ただいまの花月委員の御質問中、初めの点でありますが、本問題に関する議会の活動につきましては、御承知通り、衆議院としては、先ほども問題になりましたように、引揚げに関する請願は当委員会においてやり、在外同胞引揚げの特別委員会もあつて、特に國内方面の援護問題について力を注いでおられるという状況であります。そしてやはりこの委員会を通じて國民の意思というものが、議会の本議会の採沢と相まつて政府にも、あるいはまたG・H・Qの方にも傳えられておるわけであります。國民の意思それ自身は議会を通じて表明せられておるのであります。  なおまだ國民的運動といたしましては、御承知通り幾多の会合が行われておるということでありまするが、遺憾ながら未だ十分の実効があがつていないというところに、われわれの非常に遺憾とするところがあるわけであります。なおその他の問題につきましては政府委員から御答弁をしていただきたいと思います。
  21. 高野藤吉

    ○高野説明員 引揚促進に関して、政府として、司令部を通ずる以外に何かやつておるかというような御質問だつたと了解いたしましたが、御承知通り、現在日本政府としては、司令部を通ずる以外に、日本における外國政府の代表とは交渉できないものでございまして、すべて司令部を通じて連絡いたしておる次第であります。ただそれ以外に、政府といたしましては、各引揚者團体からの司令部あての陳情、請願等のお取次ぎ、その他あらゆる面についていろいろお援けをしているということでございまして、本筋の引揚促進は、すべて司令部を通じてなされておるのでございます。  それから第二のシベリアにおける実際の状況はどうかということは、これは各個人の体驗で非常にまちまちでございまして、非常に非惨なことを言う人もいるし、また非常にのんきだつたという人もおるようでございまして、それはどちらもほんとうであろうと思います。ただ個人の体驗または感情、ないしその土地、相手の係官なんかでいろいろの感情問題も加わつているのじやないかと思いますので、概括的にいつてどういうふうに申し上げたらよろしいですか、ちよつと困難でございますが、千差万別である。しかし先ほど申し上げたように漸次食糧も待遇も整備されてきているということは事実のようでございます。それから死亡率につきましても、先ほど申し上げたように推測を申し上げてはかえつていろいろ障害があるのじやないか、あらゆる方面でちよつとまずいことがあるのじやないかと思いますから、單なる推測はこういう席上では申し上げない方がいいのじやないかと私は思つております。
  22. 山下春江

    ○山下(春)委員 ただいまの花月さんの世論を喚起したらどうかというような御意見でございましたが、それについての関連したことをちよつと申し上げたいと思います。昨年の十月私どもが引揚促進の歎願に対日理事会議長のシーボルト氏の所に参りましたときに、シーボルト氏が、アメリカ側としては何ら法律上の権利はないけれども、人道上の問題としていくたびかこの交渉はしている、從つて今後においてなすべき手は、ただ日本の國民の方々がどうぞ輿論を喚起してなお熱心にこの運動を続けていただきたい。そういうことを申されておりました。從つて輿論を喚起しながら私どもはどこまでも努力しなければならないと思つております。  それからもう一つは、先ほど無縁故者に対しての施設が約三万人くらいを予定しておりましたが、続々着く船を見ますと、大体この無縁故者の数が予定していたよりも多い、從つてその施設を早く完備しなければならないというようなお話でありますが、ぜひとも早くその施設を完備していただきたいと思います。と申しますのは、私がこのごろ農村をまわつて見ますと、いわゆる集團こじきというものが農村を非常に脅かしているそうです。そうしてその人たちの身元を調べてみますと、大抵引揚者で、相当のインテリも多いそうです。あるいは外語を出た人とか、あるいは高等学校を出た人で、しかも縁故のない人たちが集團こじきになつているというようなことを聞いておりますので、一刻も早くそういうような設備を整えていただきたいということを要望いたしておきます。
  23. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 関連した問題でありますが、最近新聞で、引揚の出迎えに共産党の諸君が出かけていきまして、いろいろ問題を起しておるようなことを聞くのでありますが、それらのことに関しまして何か情報とか詳しい眞相がわかりましたら承りたいと思います。
  24. 高野藤吉

    ○高野説明員 私詳細なことは関知しておりませんが、品川駅、あるいは最近では沼津あたりで、学生同盟共産党員の衝突事件があつたということが新聞にも報道されております。現在では、そういう不祥事をなくすために、大体品川駅、上野駅も一切駅員が出迎えを入れないようにしておるようでござでますので、そういう問題は今後なくなると思います。学生同盟の諸君は沼津あたりから引揚列車に乘りこんで、ずつと上野駅までその間のいろいろなおせわに当つておられるようでありまして、こういつた引揚者、殊に長年外地におりました引揚者を迎えるという國民的なこういつた感激に滿ちた問題を、政治的な問題といいますか、そういつたつた方向にもつていくというのはよくないことと思いますが、とにかく最近では、引揚列車に対して上野駅、品川駅では出迎えを入れておりませんので、この問題は今後なくなるだろうと思います。
  25. 安東義良

    安東委員長 それでは、大体御質問も盡きたと思いますから、これをもつて散会いたしたいと思いますが、次会は木曜日午前十時から南方ポンド地域との貿易問題並びに貿易手続の簡素化の問題を主として議題に供したいと思います。これをもつて散会いたします。     午前十一時五十一分散会      ————◇—————