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1948-04-01 第2回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月一日(木曜日)     午前十一時四十一分開議  出席委員    委員長 安東 義良君    理事 加藤シヅエ君 理事 細川 隆元君    理事 武藤 嘉一君       岡田 春夫君    高瀬  傳君       竹内 克巳君    戸叶 里子君       馬場 秀夫君    和田 敏明君       鈴木 強平君    中山 マサ君      長野重右ヱ門君    菊池 義郎君       佐々木盛雄君    竹尾  弌君       仲内 憲治君    多賀 安郎君  出席國務大臣         内閣総理大臣  芦田  均君  委員外出席者         專門調査員   佐藤 敏人君         專門調査員   村瀬 忠夫君 三月三十一日委員堀江實藏君辞任につき、その補 欠として相馬助治君が議長の指名委員に選任さ れた。     ――――――――――――― 三月十六日  大相撲本場所に際し國技館借用に関する請願(  佐藤觀次郎紹介)(第一〇一号) 三月二十五日  ソ連領からの復員促進に関する請願小川原政  信君紹介)(第一九一号)の審査を本委員会に  付託された。 三月十三日  在外同胞引揚促進に関する陳情書外八件  (第八一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  外資導入の問題その他に関する説明聽取
  2. 安東義良

    安東委員長 ただいまより会議を開きます。  総理大臣外務大臣に対する質問にはいりたいと思います。佐々木委員
  3. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は現下曽有國難に対処されまする芦田総理大臣の悲壯なる決意熱意敬意を表しつつ、以下数箇の点につきまして、國民の最も聽かんと欲するところを卒直にお伺いしたいと思うのであります。  まず芦田総理は、先般の施政演説におかれまして、われわれは新憲法において一切の軍備を放棄し、戰爭を否認する決意を示した。世界がこの崇高なる理想において、日本國民と歩調を同じくすることを熱望するとお述べになりました。また平和と自由と正義の支配する世界建設に、特段の努力をいたす決意を強調されたのでありまして、まことに戰爭惨禍をみずからの犠牲において痛感いたしましたわれわれといたしましては、実に切実なる言葉であります。しかしながらわれわれのこの切実なる願いにもかかわらず、世界は今や第三次大戰可能性に震えておるのが現実の姿であるということは、これまた総理施政演説においてはつきりと指摘された通りであります。しかりとするならば、一切の軍備戰爭を放棄して身に寸鉄を帶びない日本が、いよいよ現実にわれわれの脚下に迫つてきたこの戰爭危機に直面して、いかにして平和を確保し、自由と正義の支配する世界を具現せんとするのか。世界大戰の大あらしの禍中に投げこまれようとする日本が、新憲法によつて一切の軍備戰爭を放棄したというだけの消極的な無抵抗主義のみで、日本の平和が確保できるとは考えられません。もとより武力の面において無抵抗主義ならざるを得ないことはもちろんであります。しかしわれわれは、武力によらない平和的な手段によつて日本を防衞せねばならぬと考えるわけであります。総理はそれらの行為はあるいはたとえば永久中立というようなことでも提唱しようというお考えであるのか。それらの平和確保の具体的な構想を承りたいと思うのであります。
  4. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまの御質問に対して、その前半にお述べになつ佐々木君の考え方は、全然私の同感に思う点であります。日本は平和の理想を高く掲げて世界に呼びかける。そしてどこまでもその理想の貫徹に國民あげて力を盡す以外に、みずから武力をもつて國を護り、もしくは武力によつて世界の平和に貢献するという力はもつていないのであります。從つて今日わが國がこの世界情勢に鑑みて、どうすれば國民生活を安全に営んでいくことができるかという問題は、必ずや國民多数の頭に往來しておることと信ずるのでありますが、私の考えをもつてすれば、おそらく現在の日本に対して、侵略の手を差伸ばすというがごとき國が世界にあるとは少しも考えておりません。われわれの理想もと世界に向つて平和を唱え、そして正義と自由の理想を実践に移して世界に示すならば、必ずや諸外國はこの理想とわれわれの行動とに顧みて、いかなる場合にも平和なる日本國民生活脅威することはない。私はさように深く信じておるのであります。むろん平和会議開催せられ、平和條約締結後においてさらに日本國際連合に参加をするとか、あるいはまた先ほどお話永世中立國たる地位を進んでとるべきかどうかという問題に当面するのでありますが、いろいろの環境から考えてみて、今日日本がすぐに國際連合に参加し得られる時期が迫つておるとも考えられず、いわんやそれ以上さらに永世中立態度をとるという問題についても、今日確たる見透しをつけるだけの事態には達していない。かように考えておる次第であります。
  5. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 次に、第二次世界大戰が主として各國当面に利害よりする離合集散によつて戰われたのに反しまして、今想定される第三次大戰というものは、明らかに民主主義と全体主義との思想的決算ではなかろうかと考えるわけであります。すなわち二つ世界対立相剋ということと、從つてまたその解決ということは、今や歴史の宿命となつたと言えます。そこでヨーロツパにおきましても、御承知通り、フインランド、チエツコ等における共産クーデターなどの事件の発生によりましてソ連の鉄のカーテンがますます拡大いたしまして、遂に西欧マーシヤル陣営一角イタリーにまで進展せんとするような現状であります。ここにおきましてか、今まで米ソいずれとも結ばずしてあいまいな中間主義をとることによつて戰禍を回避しようとしておりました西ヨーロツパの國々も、遂に去る三月十七日に西欧五箇國同盟を締結いたしまして、経済的、軍事的な共同防衞態勢をとるとともに、他方トルーマン大統領まだこれに対して米國全面的援助を確約いたしまして、ここに共産主義勢力に対する西ヨーロツパ防壁はいよいよ軍備をも背景として高潮したような現状であります。しかして私たちは共産主義勢力脅威というものが決してヨーロツパのみの問題ではない。アジアにおきましても満州に、朝鮮に、われわれの周辺に肉薄する問題である。また日本の國内におきましても、社会不安に乘じてますますその勢力を拡大しつつあることは注目しなければならぬと思います。それゆえにわれわれは、トルーマン大統領が、世界の自由なる人々が自由への脅威に対し勇敢に直面せねばならぬときが來たということを強調し、また共産主義民主主義の存在を脅かす限り、アメリカ共産党支配下に脅かされている國々を援助するだけの武力をもたなければならないとさえ力説しております。この言葉が單にヨーロツパのみに適用されるアメリカ原則であるとは考えられません。よつてわれわれは日本の平和と自由と正義確保のためにも、アメリカ援助決意に即應するためにも、トルーマン大統領の力説するような自由への脅威に対し、勇敢に直面すべきときが日本にも來たのではなかろうかと考えるわけであります。総理のこれに対する御所見を承りたいと思います。
  6. 芦田均

    芦田國務大臣 共産思想、あるいは共産主義政党が、わが國内において合法的に活動を認められていることは御承知通りであります。私どもの考え方からいえば、イデオロギーの衝突は力によつて解決のできる問題ではないと思うのであります。イデオロギー戰いイデオロギー論爭によつてのみ解決せらるべきものであるが、力によつてイデオロギー爭い解決することは、國際的にも國内的にも所詮不可能な問題である。ただ合法的に認められたる思想及び言論の域を越えて、いかなるイデオロギーの名のもとに行われるにもせよ、平和と自由の原則に反するごとき実際行動が現われたときには、合法的にこれを鎭圧するだけの國家権力は、どこの國にも維持されていると、かように考えるのであります。從つてわが國内における共産主義思想、あるいはその思想に基く言論、これを鎭圧すべき何らの理由もわれわれはもつておりませんが、その領域を越えて、いやしくも力によつてわれわれの平和と自由を破壞せんとするがごとき行動に対しては、官民一致断固としてこれら当らなければならぬという趣意においては、佐々木君の御意見と全然見解を一にするものであります。  なお世界的に種々の緊張せる状態を生んでいる今日の國際情勢に対しては、衷心平和と自由の原則に基いて行動する人々同感協力を惜しむものではありませんが、現在わが國がおかれている環境においては、そのわれわれの協力も、またわれわれの同感も、きわめて制約せられたる範囲にすぎないということは、諸君の御承知通りであります。そういう意味において、トルーマン大統領演説の趣旨には、われわれは同感熱意をもつものであるけれども、今日わが國がおかれている周囲の情勢からみて、そのわれわれの行動には多くの制約を受けなければならぬと考えております。
  7. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 共産主義民主主義とが相容れないことは、アメリカ当局の言明をまつまでもなく明確なところであります。そういたしますると日本民主化ということが、ポツダム宣言の絶対命令である以上、日本共産化ということはポツダム宣言の忠実なる履行を阻害するものであることもまたきわめて明白でありまして、この点において政府並びにわれわれ國民は、決して無責任であつてはならないと考えるのであります。もとより思想の自由は何人たりといえども憲法によつて保障されておりますが、しかしそれはあくまでも思想としての範疇におけるところの自由でありまして、その行動公共の福祉を破壞するというような場合におきましては、ただいま総理が述べられましたごとく、その行動制約を受けることは言うまでもありません。ところが今や日本アメリカ当局の絶大なる経済援助を受けつつあることは、國民ひとしく感謝にたえないところでありますが、このときにあたつて、去る三月二十五日の渉外局発表によりますと、訪日中のドレーパー陸軍次官は、芦田総理との会見におきまして、日本に新援助を約したる最後に、今後の経済援助継続に関する米國決定は、日本主要物資生産増強外國貿易の復活及び財政均衡化への進歩達成において、みずからを助け、創意と勤勉の実を記録することによつて決定的に影響されると、こう結んだ言葉をわれわれは重視するものであります。そうしてこれは総理施政方針において外國資本家をして喜んでわが國に投資せしめるような受入態勢を整えなければならぬと指摘された言葉と照らし合わせまして、きわめて重要であろうと考えます。しかるに日本現状というものは、日米政府当局者の期待とは反しまして、三百六十五日常時ストライキサボタージユで、生産不振とインフレ激化に拍車をかけておるというのが偽わらざる姿であると思います。もとよりかくのごとき労働不安というものが政治の貧困、勤労者生活難の所産であることはもちろんでありますが、しかしその反面においては、一部極端なる主義者政治的策動というものが大きく作用しておりますことは、終戰以來労働運動における天下の通念とさえなつております。このことは先般連合軍司令部ヒギンズ中佐北海道炭鉱視察談におきまして、生産があがらないのは坑夫のストライキあるいはサボタージユのためであると言明し、さらにまた石炭産業のみならず、その他の産業においても共産主義勢力が働いておることは今日では公然の事実となつておる、これが生産を阻害しておる実例はいくらでもあげることができると公表しておる通りであります。この事実は政府においても卒直に認めるところであると思いますが、政府は故意に社会不安を誘発し、産業再建を阻害するごとき分子の行動に対しましては、取締りの処置を講ずる方針であると承りますが、その点に対する総理の御所信を承りたい。  なおこの問題とも密接に関連する問題でありますが、終戰以來のわが國労働運動には幾多の不信あり、今日の段階においてもこの傾向は依然として続いております。殊に敗戰によるところの惨禍占領による制約という特殊事情もとにおかれた日本労働運動が手放しに放任されるはずはありません。すなわち日本労働攻勢に明確なる限界点のあることは先般の二・一スト並びに今回の全逓ストに対する総司令部当局禁止命令によつても明白であります。端的に言つてゼネスト連合軍によつて禁止されておる実情であります。從つて政府にはおのずからかくのごときゼネストを防止する強力なる措置を講ずる責任が課せられておるのでありまして、このことは今回の全逓スト禁止メモランダムにおいても、経済復興並びに公共利益に重大なる不利益を及ぼすこの罷業を防止する必要な措置を講ずべきことを日本政府に期待すると通達されておるところによつても、明らかなところだと思います。しかりとするならば日本政府占領軍当局によつて日本政府に期待されております罷業防止措置日本政府みずからの意思と力によつて法律化するというような意思はあるのかないのか、すなわちアメリカにおいてさえ労働運動の行き過ぎが共産党政治的策謀を封ずるために、労働憲章であるワグナー法の修正いたしまして、一九四七年労資関係法つまりタフト・ハートレー法の成立をみたのでありますが、日本政府におきましても、現下事態に即應するため、関係労働法規改正用意があるとも傳えられまするが、はたしてその意思があるのかどうか。これらの点は労働問題ではありまするが、現下外資導入從つてまた國際情勢と重大なる関連のある問題でありまするがゆえに、総理大臣であり、外務大臣である芦田さんから承りたいと思います。
  8. 芦田均

    芦田國務大臣 この問題を外務委員会でいろいろ私からお答えすることが、はたして当を得ておるかどうかと思いますが、お尋ねでありますから、私の考えておることを率直に申し上げておきたいと思います。労働運動憲法に保障されておる程度にきわめて正当な手段によつて行われる限りは、当然認められておる権利であり、また政府としてこれに関與すべき何らの権限をももたないと考えます。しかしながら最近に現われたごとき罷業は、あるいは政治的な意図をもつて行われておる部分が相当に濃厚であると認められますが、政治的意図をもつて行われる罷業は、労働組合法に認められておる正当な罷業ではないのであります。殊に各國の実例に鑑みても、ゼネラルストライキによつて國家機能を麻痺し、社会生活を極端に混乱に陷れるごとき罷業が、常に非合法なる罷業として禁圧されておることは、アメリカにおいても、ヨーロツパ諸國においても同樣であります。わが國においてもまたこれが例外ではあり得ないと思います。現在のわが國の法制においても、ポツダム宣言に基いて発せられたる政令三百十一号というものの中に、今回のゼネラルストライキ禁止命令に違反したるごときものを処罰する規定ができておるのであります。また行政的処分としては官公廳服務紀律によつて、これを自由に処断することができるのでありまして、現在のところこれだけの法規をもつてして不都合はないと考えております。なおアメリカにおいて最近立法せられたるタフト・ハートレー法のごときものを、日本にはたして急遽制定する必要があるかどうかということは、目下政府においても考慮しております、現在のところすぐにこれを立法化するかどうかということを決定いたしておりません。後日政府決定をみた場合には、それぞれ國会において審議を願う必要が起るかと思います。
  9. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 次に最近アメリカ政府要人來訪契機といたしまして、日本をして共産勢力に対する防壁たらしめるとか、あるいは日本東洋工場たらしめるとかいう報道がしきりに傳えられております。このことは、共産主議に対する防壁たらしめることや、東洋工場たらしめることが、決して日本軍事的潜在力再建や、東洋軍需工場建設意味するものでないことを確信をするのでありますが、これは全國民のひとしく抱いております重大関心事であるのみならず、外國電報は早くもオーストラリア、中國等におきまして、この点において日本軍事力再建に対する疑念と反対の意向を表明している向きもあることを報じているのでありますから、この際特にこれらの問題に対して総理の御所見を承りたいと思うのであります。
  10. 芦田均

    芦田國務大臣 新聞に各國の政治家実業家等意見が出ておりますが、私の承知している限り日本側アメリカ官憲側との間に、日本をして共産主義に対する防壁たらしめるというがごとき言葉が交換されたことは、今日まではなかつたと固く信じております。またアメリカ賠償撤去に関してはとりあえずの措置として今日までにわが國の軍需工場の施設を撤去することに全力をあげてきたのでありまして、すでに軍工場においては続々その設備を撤去して、それぞれ連合國に引渡しているのであります。かような点から考えてみましても、わが國の工場連合國軍需工場として使用するごとき意向のないことは、すでに明白であると思います。その点については、われわれ日本國民は、すでに憲法においても一切の軍備及び一切の軍需工場を撤廃することの固き決意をしているのでありますから、もし連合國の一部分にわが國に対する多少の疑念が残つているとするならば、それは現に行われておる占領政策の内容にまだ通暁しない、また現に行われつつあるわが國の民主化に十分の知識のないために、かような疑問を起しているというほかに説明のしようはないと考えております。
  11. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 次にわれわれの待望しておりました講和会議がいつ開かれるかという見透しが困難になりましたことは、総理が再三述べられたところでもありますし、かつまたマツカーサー司令官ローヤル陸軍長官あてメツセージによつても、予見し得る將來に各連合國が対日講和條約に対して意見一致に到達できるという望みは非常に薄くなつたということによつて明らかなところであります。しかし総理の指摘されまするごとく、占領軍の公正寛大な措置によりまして、未だ平和條約の調印なくして、すでに平和的生活に一歩を踏み出し得たことをわれわれは非常に喜ぶものでありまして、これまたマツカーサー司令官メツセージにおきましても、平和克服への進展が行き詰りとなつているこの期間において、單独にあるいは同樣の考えをもつ他の連合國とともに貿易商業上の制約をできるだけ解除し、日本人権利日本人海外渡航海外市民との交際その他の自由を再び受くるべき権利を、外交的特権の正常なる限度にまで復活すべきであると強調しておりますところによつても、われわれの大いに意を強うするところであります。すなわち諸般の國際情勢より見まして講和会議の見透しは困難でありまするが、しかしアメリカ講和條約が締結された場合と同じような事態を事実において具現すべく、その占領政策に画期的な局面をもたらしつつありますることは、最近のアメリカ要人來訪契機とする賠償撤去の緩和であるとか、各種の経済援助等によつて明らかに看取されるのであります。從つて講和会議という形式はとらないが、実質的の意味における講和條件なるものは、現在急速かつ着実に伸暢しつつあると言うても差支えないと思います。この重要なる段階に、万全を期するためにも総理專任外相を置くという意思があるのかないのか。総理が外相を兼攝することにはもとより一長一短はありまするが、片山氏を專任外相に非常に熱望されましたことは、組閣当時の新聞の報ずるところでもありまするし、その実現を見ずして遂に片山氏を外交顧問に就任せしめましたいきさつ等よりいたしまして、総理專任外相を置くことと希望されておるのではなかろうかと考えますが、それらの点に対する総理の御所見を承りたいと存じます。
  12. 芦田均

    芦田國務大臣 適当な機会、なるべく早く機会專任外相を選びたいと考えております。
  13. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それでは最後にもう一つ聽きしておきたいと思いまするが、連立内閣というものがきわめて不合理であつて從つてその政治力も薄弱であるから片山内閣解散を断行して、民意に問うて強力なる政治力の結集をはかるべきであるということを、私は第一國会においても要望したのでありまするが、この國民的な要望にもかかわらず、遂に片山内閣芦田内閣へと推移いたしまして、依然として連立体制を踏襲したのであります。さりとて私は單独政権をもつて理想とは確信いたしまするが、しかしながら現下の過渡的にしてかつ変体的な客観情勢下におきましては、連立形体というものもまたやむを得ざる面をも肯定するにやぶさかではありません。否先刻來述べ來りました米ソ関係などをめぐる國際情勢危機に脅かされつつある刻下の実情におきましては、事態の推移はわれわれの好むと好まざるとにかかわらず、挙國連立体制の強化をも余儀なくせしめられることをも、率直に認めなければならぬと思うのでありまして、この点に関する限りにおきましては、首班指名以來終始連立構想を堅持されました総理熱意と信念に対しましては敬意を表する次第でございまするが、他方國会解散要求の声もまた強いのであります。從つてこの際國会解散要求に対する政府態度と、國際局面の急展開に対処する政府政治体制につきまして、率直に総理の御所見を承りたいと考えるのであります。
  14. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまお尋ねの点は、先般來の本会議においても、また昨日の予算委員会においても私の考え方政府のとらんとする方向をほぼ明らかにいたしておいたのであります。今日佐々木君の御質問に対しても特に新たに附け加える点はありませんが、繰返して申せば、現在の國会世論の趨向と一致しないという事実が比較的明白になる機会においては、当然衆議院は解散せらるべきものと考えておる次第であります。
  15. 馬場秀夫

    馬場委員 私はごく端的に二つの問題についてお伺いいたしたいと思うのであります。一つ講和会議の問題、もう一つ外資導入の問題であります。講和会議に関しましては、総理の御演説あるいは御説明通り世論といたしましても、その見透しがかつての見透しよりさらに遠くなつたということは、了承いたしていると思うのであります。しかしながら私はこの講和会議開催が遠くなるということは、國民関心をそれだけ遠ざけるということではなしに、講和会議あり方國民がもつと率直に知るということが今日われわれのおかれている國際情勢に対しての見解を正しくもち得るあり方であると思うのであります。從いまして講和会議の見透しが遠くなつても、政府といたしましては國民講和会議に対する國民あり方というものを、あるいは講和会議というものが敗戰國独立國家となる第一歩として最大なる関心事であるということを、もつと端的に率直にあるいは丁寧に國民に示すことが、今日の段階としては私は最も必要であると思うのであります。これに対しまして政府は何か國民敗戰國独立國家として立直る第一段階の最も重大なるこの会議に対しての関心を高めるということに対して、御処置をされるお考えがあるかどうか。もう一つ講和会議開催前に、自立條件として連合國経済復興その他わが國に非常な好意を示されておりますることは、國民のひとしく感謝しておるところでありまするが、この自立條件といたしまして、平和会議の際にきめられる多くの問題の中で、自立條件としてすでにその前に懇請して決定した方が、その條件に適合するものが多々あると思うのであります。一例を申しますると、裁判管轄権すなわち國籍の問題、それに伴う問題などは明らかに自立條件の大きな問題として速やかに解決しておく方が有利である。かように感じますが、これに対して何か懇請される用意あるいは懇請された事実があるかどうかということをお伺いしておきたいと思います。  第二に外資導入でありまするが、これは独立國家とならざる今日のわが國にとつて、まさに國民の希望といたしまして非常に感謝するところでありますが、総理は常にこの問題に対して、國民の心構えを要請されておりますが、心を構える基礎條件としては、これがはたしてどういうような形ではいつてくるのかということを、確実に國民が知るということが前提條件をなすと思うのであります。從つて現在の段階において、確実なる外資導入の数字的なものを御説明願うと同時に、國民の心構えとしての受入態勢をどうすればよいのか、ただ心構え、精神的な問題でなしに、いかようなことをすればよいのかということをもう少し具体的に説明を願うと同時に、政府としては万遺憾なき処置として、いかなることをお考えになつておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  16. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまお尋ねになりました点を順次お答えいたしますが、講和会議の見透しが何人にもつけかねるという事情は、すでに馬場君も御承知通りでありますが、それ以前にわが國としては自立條件連合國に通告をして、講和会議を待たずしてある程度の了解をつけておくべきである、またそういう点についてどの点まで政府は実行し來つたかと、こういう点が御質問一つであつたと思います。申すまでもなく、今日わだ國はいずれの國とも外交関係をもたないのでありまして、正式に講和條件等について話合いを進めることは、とうてい期待し得ないことは言うまでもないのであります。それ以外の方法はむろん考える余地はありますが、それをどの程度にどういう問題を取扱うかというような点については、しばらく何事をも論議しないことが、大局の上において日本のために有利であると考えますから、この点は言及することを差控えておきたいと思います。  次に外資導入について、数字的にどの程度まで確定しておるかという御質問であります。御承知通り一九四八年度のアメリカ予算は、目下アメリカ議会において討議されております。その中に現われておる数字は、議員の中から絶えず修正案が出るというアメリカ議会の状態において、的確に六月末にどれだけの金額が米國國会において承認せられるかは、はつきりと見透しをつけることが困難であります。現にわが國において最近ストライキが起つたというだけの事実をもつて、一昨日のアメリカ國会においては、一億八千万ドルの日本復興金庫資金の討議を一應延期したのであります。この事実のみを考えてみても、外資導入に対する日本國民の心構えがいかにあるべきかということはおわかりと思います。私が施政演説において、きわめて抽象的に述べたのでありますが、具体的に考えてみれば、われわれの日常の二十四時間の言動、ほんとうに日本國民が民主國家として日本再建のために全力をあげておるという情勢が向うに映れば、われわれは相当に多大の援助を期待することができると思います。しかしながら日本から行く労働不安の電報一つでも、一億、二億ドルの援助資金は一晩に吹き飛んでしまう、それが今日の実情であります。そういう点から考えてみても、今後はたしてどれだけの援助が與えられるかということは、一にわれわれの二十四時間の言動によつて変化が起るのでありますから、これを的確につかむことは非常に困難であります。しかしわれわれがもし連合國の信頼を博するに足る行動を示すならば、今日アメリカ政府予算に載つておる各種の援助、及びクレジツトのみでも六億ないし七億の金額が出ておるが、そのほかになお民間の貿易回轉基金であるとか、あるいは綿花のクレジツト貸與であるとか、その他民間工業に対するクレジツトの獲得を待望することができる、しかしそれは一にかかつて今後のわれわれの行動いかんによつて決せられる、かように私は考えておるのであります。政府がどういうふうに講和会議あり方について國民を指導しておるかという御質問でありますが、いわゆる指導者的政治の行われた時代と違つて、今日は政府が先頭に立つて國民を指導するなどという考え方をもつべきではない。われわれは國民の忠僕にすぎない。人民の公僕たる人間が政府に働いておる。それはいやしくも國民を指導するといつたような考え方で行くべきではなくて、國民諸君みずからの力によつて起ち上つてもらうその國民の起ち上る力を、できるだけすくすく伸びていくことのできるように、政府の役人が影になつて働く、というふうに私は考えておるのであります。日本國民の文化は、今日それだけの責任を果すに十分な程度に達しているのだと、かように考えておる次第であります。なお御質問の中で漏れたものがあるかもしれませんが、ありましたら御指摘をいただいてすぐにお答えいたします。
  17. 和田敏明

    ○和田委員 私も大体芦田・ドレーパー会談のこと、並びに本日新聞に発表された一月十八日のマツカーサー声明に関連して、逐次質問したいと思います。第一点は、今世界の問題となつている米ソの問題でありますが、私は実は芦田外務大臣なり、また佐々木君が述べられたような戰爭の切迫感、米ソ戰爭が非常に近づいているという考え方に反対なのであります。殊に日本人の間には、そういつた世界危機、第三次世界戰爭というようなものをめぐつて、再び日本がこの間にうまいしるを吸おうといつた考えも國内の一部に擡頭しつつあります。佐々木君は共産主義の危險性を非常に強調されるが、私どもはむしろ今日、世界危機というものを夢に描きつつ國家主義的な思想日本に逐次擡頭しつつある傾向を、最も日本の將來のために危いと思つているものでありますが、その点まず芦田さんの御意見をお伺いしたいと思います。
  18. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまいろいろ御意見をお述べになりましたが、この点はそれぞれその観点によつて見解を異にする問題でありまして、世界戰爭危機が何パーセントになつているかといつたような問題、まだ日本の國内において國家主義思想がどの程度まで擡頭しておるかというようなことは、それぞれその立場により、また観察の方法によつて違うことでありまして、私から政府見解としてこれらの問題に的確なお答えをすることは非常に困難であります。さよう御了承願います。
  19. 和田敏明

    ○和田委員 三月二十五日の芦田・ドレーパー会談に関連しましてU・P通信は、芦田さんがその会談においてドレーパー氏に対し、アメリカ日本共産主義の防砦たらしめんとする政策に協力すると言つたということを傳えております。もちろん芦田外務大臣がそういつたはつきりした態度をまさか言われたとは思いません、そのことはその後における渉外局の発表をつぶさに読んでみても、そういうふうなことはないのでありますが、しかし今日アメリカ日本に対して行つているところのいろいろの緩和政策、これに関連して世界の輿論というものは、何といつてもそのU・P通信が傳えたような、日本共産主義の防塞とする、そういつた緩和政策をしているのだという声がもちろんそれと反対の声明はあるにもかかわらず、そういつた見方が非常に有力になつているのです。現に今の佐々木君に述べられた点から言つても、いわゆる民主主義と全体主義思想戰であるというふうな考え方が、日本にはかなり強いのでありますが、しかし私どもの立場からするならば、実は思想戰は決して戰爭の原因にはなり得ない、戰爭の原因はあくまで経済的な要因のみであるという立場をとるのでありますが、そういつた際にともかく世界の有力な通信社が、日本総理大臣外務大臣芦田・ドレーパー会談において、日本共産主義の防塞とする政策に協力することを誓つたというような報道がされておるということは、われわれとしてはなはだ遺憾なことであります。先ほども外務大臣は、アメリカ側の有力な人が、日本共産主義の防塞とするというような表現はだれもしなかつたと思うとおつしやいましたが、まあ名前ははばかりますが、そういつた表現を確かにアメリカの有力な人はしておられます。その際当然に新聞の想像があの会談においても、芦田氏がそういつた言明をされたというようなことを傳えても無理からぬ点もあるのでありますが、この際その点ははつきりと外務大臣の処見をお伺いしたいと思うのです。
  20. 芦田均

    芦田國務大臣 過去一両日の議会で、この点をどなたかの質問に答えたように記憶しておりますが、あるいは記憶違いかも知れません。ただいま御指摘になつた、アメリカ日本共産主義防衞の障壁たらしめようというような意向を述べたという事実も、私の会つたアメリカ人に関する限り、何人も申したことはありません。またかような問題について日本協力を誓うといつたようなことを、私はもとより現政府の閣僚が、アメリカ側の要人に話したこともないというふうに私は記憶しております。
  21. 和田敏明

    ○和田委員 この点は私は日本のおかれておる立場からして、もつとも重要な点であり、今日國民がいろいろと危惧をもつておる点でもあると思いますが、外務大臣がそうはつきりおつしやることをわれわれは信頼いたします。殊にまた総理大臣施政方針演説において、日本として世界列強の信用を博するということを特にうたわれておる。世界列強と申しますれば、もちろんそこにはアメリカ、イギリス、あるいはソヴイエト等ですが、あらゆる世界列強の信用を博するということが、日本の一番必要な点であるという意味からしまして、われわれとしては日本の今後の外交が、ある一國に偏つたものであつてはいけないという立場を強く主張するものでありますが、その点芦田さんも同樣であると思つて、この質問は一應打切ります。  次に本日のマツカーサー発表は、二月十八日のマツカーサー声明に関連いたしますが、ああいつた重要な声明、殊にあの中においてはいろいろと今までに、たとえば講和條約の見透しの問題にしても、どうも最近においてはなかなか早急に開催が困難であるというようなことを、しばしばあなたはこの委員会でも、あるいは本会議においてもおつしやつたわけですが、ああいつたマツカーサーの本國議会に送つた声明については、何か今まですでに内示されていた点があるのでありましようか、その点をお伺いしたいと思います。
  22. 芦田均

    芦田國務大臣 連合國司令部と日本政府と間の話合については、これを全部公表することの、必ずしもわが國の大局にとつてと利益でないことが相当に含まれておりますから、現在の日本のおかれている環境においては、かような問題に関する限り、政府みずからいろいろな事実を発表することは困難でありますので、この事情を御了承願います。
  23. 和田敏明

    ○和田委員 その声明の中に、やがて貿易も、いわゆる講和條約の問題を待たずして、相当通常の貿易関係を再開されるであろうということが示唆されておりますし、また外交関係も再開されるのじやないかというふうなことが多少示唆されているのです。これはマツカーサー元帥の意見でありますが、それに対する米國側の反響というようなことを、この際お聽きしておいて、今後の講和條約とのにらみ合せにおいて、日本はいろいろの方針を立てていかなくちやならぬと思うのですが、その点はいかがでありますか。
  24. 芦田均

    芦田國務大臣 まだアメリカ側からの電報が、マツカーサーの意見の反響として見るべきものを傳えてきておりません、あるいは一両日のうちに手入するかとも思いますが、今日まで、私が知つている限り、そういう反響はまだ受取つておりません。
  25. 和田敏明

    ○和田委員 われわれとしては、やはり講和條約をもつて、そして日本の自主的な立場を回復することが、何と言つて國民的な要望でありまするが、私は実はマツカーサー声明に関連して質問する関係上、非常にお答えにくい関係もあると思いますが、講和條約ができない前に漸次平和状態に移行していき、貿易も開かれる、あるいは海外渡航さえ許されるのではないかというふうな見透しがいろいろとありまするが、そういつた実例は、過去における歴史においては、平和條約ができない前には、貿易が再開されるとか、あるいは海外渡航が許されるなどということは、通常の國際関係の歴史においてはあり得ないことでありまして、特例が開かれようとしているのですが、この際外務大臣として、外交関係の再開ということは、講和條約締結以前にあり得るとお考えかどうか、その点を重ねてお聽きしたいと思います。
  26. 芦田均

    芦田國務大臣 その問題に答えることが、予想以上にまた多方面に種々の波紋を與えることを考えて、私からお答えをしない方がよろしかろうと考えております。
  27. 竹尾弌

    ○竹尾委員 米ソ関係、コミンフオルムの動向、これに対する日本態度、あるいは立場というような点について質問を通告しておいたのでございますけれども、今までの総理大臣の御答弁によつて大体わかりましたから、私は質問をやめます。
  28. 安東義良

    安東委員長 中山委員
  29. 中山マサ

    ○中山委員 私も同じような質問をしたいと思つておりましたが、私の見誤りかも存じませんが、占領下にございますドイツでも西欧ブロツクにはいつているように考えているのでございますが、今総理大臣のお言葉に、日本ストが行われているという電報一本のために、日本に対する援助というものが変更されております。ストをやつている人たちが全部の日本人ではございませんで、そのほかの人々はどこまでも平和をもちこたえていくために熱意を示している人たちですから、そういう人たちの立場として、私どももそのブロックにはいるようなことは、武器も何もございませんからできないかもしれませんが、平和愛好者の精神的ブロツクに日本國民の大多数がいるということを、外務大臣として向うに何とか御通告の方法をとつていただくことができないかと思いまして、私は今まで病氣をしていて昨日地方から帰つてまいりましたが、大阪方面においてもそういう熱意が高くあがつておりますので、このことをひとつ御質問申し上げたいと思います。
  30. 芦田均

    芦田國務大臣 中山さんのお考え方はまことにごもつともなことでありまして、私どももそういうふうに諸外國日本の國情を見てくれることを希望していることは全然同一であります。不幸にして世の中は、子供が近所で憎まれると、遂には親まで排斥されるといつたような例も多少あることでありまして、たまたま日本國内の一部分の者が労働不安を起しておつても、日本の將來の再建に対して、それが一つの不安の種になるということは、また一面から考えて人情やむを得ないところもあると思いますが、今日、日本人がただ口で言うだけでは外國人は信用をとりもどさない。ほんとうに二十四時間のわれわれの行動によつて日本國民信頼すべしという観念を與えるよりほかに有効な方法はないと考えております。
  31. 安東義良

    安東委員長 菊池君。
  32. 菊池義郎

    ○菊池(義)委員 マツカーサーが日本人に対して旅行を許されるという覚書を発表しておりますが、この旅行を許されるということは、やがては海外の移住も許してくれるという可能性を看取し得ると思いますが、御承知のごとく日本人は今領土の狹隘のために行き詰つている。とうてい、この狹隘な國土でもつてこれだけの人口を養うことはできないのは諸外國もみな知つておりますから、この際政府は進んで海外移住の陳情を懇請する必要があると思います。最近衆議院議長の松岡駒吉君が会長になつて、これまで日本の海外移民のことについて非常に努力をして來られた有力な人たちがメンバーとなつて、海外移住協会というものができ上つて、あつちこつちで講演会を開かれているのですが、占領政策下におけるところのいろいろの羈絆より日本人を解放するという言明が、すでにあちら側から出されておるのでありますから、この際移民の問題について総理大臣はいたずらに沈思黙考することなく、むしろ進んで陳情を懇請せられてはどうか、現に南米からも移民の注文がきておる、インドネシヤ共和國のスカル大統領も國籍を脱してくるならば二千万人くらいは引受けるということを言つておると聞いておる、國籍を脱していつてもよろしい、少しも差支えない、あまりに多過ぎるのです。そういう條件附でもつて海外移民を懇請されてはどんなものか、これに対する総理の御意見をお伺いいたしたい。  もう一つは先ほどからも米ソ戰の第三次大戰に関する話がありますが、日本の立場は、講和会議が締結されずして、もしもこの戰爭が起つたといたしまするならば、日本は無條件で降服した以上、結局戰爭にかりたてられるという危險性が十二分にあるのであります。軍需工場の取立ての中止、その他あらゆる賠償の取立ての中止、あらゆる方面を総合的に各方面から観察いたしまして、どうもそういう危險性のあることをわれわれは心配するのでありますが、総理大臣は本会議におきまして、わが党の幹事長の質問にはつきりしたお答えをされなかつたのであります。第三次大戰の幻に世界戰いておる。しかして大戰可能性があるといつたようなことをほのめかされて、いかにして平和を維持するかという方法手段構想についてははつきりしたことを言われなかつたのであります。結局講和会議成立たずして、もしも第三次大戰が起つたといたしまするならば、わが日本はとうてい局外中立に立ち得ることはできないと思う。この点について総理はどういう考えをもつておられまするか、もう一度この委員会においてお伺いいたしたいと思います。
  33. 芦田均

    芦田國務大臣 第一の移民の問題については政府においてもいろいろ考えておりますが、これは諸般の関係上いよいよ問題が解決したときまで何ごとをも政府としては申し述べないことが一番至当かと存じます。さよう御了承を願います。  第二の、万一世界に大戰爭が起つた場合には、日本は局外中立ではあり得ないという御見解については、むろん日本占領下にあるので、日本人全体が連合軍の俘虜として見られておる今日、局外中立とかあるいは同盟とかいう問題が起り得る可能性はないと思います。それが將來戰爭にかりたてられるであろうというようなお話がありましたが、私はどうもそうは考えておりません。日本人は現在のごとく武器をもたない、戰爭を否認する民族としての生活を続け得るものである。かように私は考えております。
  34. 安東義良

    安東委員長 最後お尋ねいたしたいと思いますが、ワシントン三十日発U・P共同電によりますると、総司令官の参謀副長のフオツクス代將が、月末にアメリカ下院委員会で、日本人は共和政体に同意はしておるが、まだこれを受入れるだけの準備ができていない。こう申しております。私はこの共和政体に同意はしておるがという意味は、新憲法の実質的内容を漠然と指したものであつて、天皇制を廃止するというような意味合を含んでおるものとは思わないのでありますが、この際総理大臣の御見解を承つておきたいと思います。
  35. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいま安東君の御指摘の点は、私もおそらくそうだろうとは思いますが、不幸にしてフオツクス代將の心事並びにその言動を確める方法をもたないのでありまして、的確にいずれとも私からお答え申し上げかねることははなはだ残念であります。
  36. 安東義良

    安東委員長 ではこれをもつて閉会いたします。     午後零時五十一分散会