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與謝野政府委員 最近の
國際情勢につきまして、御參考までに御説明申し上げます。
まず最初に、いわば
國際情勢の外観と申しますようなことを簡單に述べまして、個々の問題についての御説明にはいりたいと存じます。
連合國側と
ドイツ、オースタリーとの
講和條約の問題につきまして、昨年三月十日から開かれました
モスコー会談が決裂しましたあとを受けまして、昨年の末、十一月末から十二月十五日まで
ロンドンで米、英、ソ、佛四國の間の
外相会議が開かれたのでありまするが、この会議におきましては、若干の手続問題その他のこまかい問題について意見の一致を見ただけで、賠償問題、その他
ドイツの経済問題、將來の
政治機構の
問題等の根本問題について意見の一致が見られず、この会議が決裂になりましたことは御承知の通りであります。その後欧州の復興のために計画されましたいわゆる米國の
マーシヤル案と申しますものが着々具体化されまして、昨年
夏以來アメリカの議会に提出され、今年の一月に議会が再開されました後に、目下その審議が続けられているのであります。
一方この
マーシヤル計画というものに最初から反対の態度を示しておりました
ソヴイエト及び
東ヨーロツパの
衞星國の政府は、
マーシヤル案をもつてこれを
アメリカの
ヨーロツパ支配にほかならないと主張して、これに対抗するために種々経済的、政治的の條約を結んで、これに対應する態勢を整えつつあるのであります。また御承知の通り昨年十月公表されましたいわゆるコミンフオルムの形成、またこの成立に際しまして、
ソヴイエトのジユダノフ氏は、
マーシヤル計画をあらゆる努力を続けて爆破すると述べて、態度をはつきりさせておりますが、昨年十一月
以來ドイツ、イタリーでは大規模な
ストライキが勃発いたしまして、これは
共産党の一つの
マーシヤル計画に対する攻勢であるとも見られたのでありますが、この
ストライキは結局
共産党側の失敗に
終つたのであります。またこの
外相会議の決裂後、
アメリカ、
イギリス当局は、
ドイツの
米英占領地の
経済統合ということを一層強化するために、いろいろ協議してお
つたのでありますが、
ソヴイエト政府は、この米英の
占領地の統合は
ポツダム宣言の違反であるということを指摘するとともに、
ソヴイエト占領地域の方の
共産党の指導に服さない政党を彈圧する等の方法をとつて、みずからの
占領地域の粛正を強化しており、また御承知の通り、去る二十二日
イギリスの下院におきまして、
西ヨーロパツ諸國の
連合結成を唱えられました
ベヴイン外相の演説というものがございまして、これと
アメリカ議会で
目下マーシヤル案の審議に伴つて行われておるいろいろの
演説等を見ますときには、
米英側が
ソヴイエトの政策に対しまして断乎たる決意をもつて臨もうとしておることがうかがわれるのでありまして、米ソの対立ということがだんだんとはつきり浮び上つてきておるというような感じをもつのであります。
また対
日講和條約の問題につきましては、昨年七月十一日に米國が初めて
講和会議の開催の提案を
関係國になしまして、爾
來関係國間にしばしば意見の交換が行われたのでありますが、
アメリカ、
ソヴイエト、中國等の諸國の見解が
お互いに対立を示したまま、今日までその対立の打開ないし緩和ということに関する情報は何も得られない状況なのであります。ただ今年にはいりましてから、去る一月六日に
アメリカの
陸軍長官がサンフラシスコにおきまして、日本が自立するに至るようにこれを再建すべしと述べまして以來、あるいは六千万ドルの綿花の借款に関する外電、また去る二十二日、
極東委員会におきまして
マツコイ將軍が日本の
経済自立に関する報告をなした等の、いろいろ朗らかな情報がはいつてきておる状況でございますが、対
日講和予備会議に関する米、英、ソ、中の四大國の意見の歩み寄りということに関する見透しは、今日のところ困難ではないかと見られておるのであります。
これから
國際関係のおもなる問題につきまして、詳細に御説明申し上げたいと思います。まず最初に対
日講和会議の問題がどうなつておるかということを御説明申し上げます。御承知のように、対
日平和予備会議の招請につきましては、昨年の七月に
アメリカが、大國の
拒否権というものを認めないで、
極東委員会を構成している十一箇國の三分の二の
多数決による、これによ
つて予備会議を開催したいという見解を示したのでありますが、米、英、ソ、中四大國の会議だけで、しかも
拒否権を保有して会議を開催しようという
ソヴイエトの見解と
米國側の見解とは対立してお
つたのでありますが、昨年の八月の末から九月の二日に至るまで、キャンベラで開催されました英國の
連邦会議におきまして、
英連邦の対
日講和会議に関する方針が米國の提案を支持しこれと同調するという確信をも
つたので、あるいは米國は、九月の中旬から開かれました
國際連合総会の間に、場合によつては
ソヴイエト連邦を除外しても
平和予備会議を招請するのではないかという観測をもつ者も一部にはあ
つたのであります。しかるに昨年の九月九日に、中國の
張群行政院長は、
ソヴイエト連邦の参加のない対
日講和会議は中國も参加できないということを声明いたしまして、爾
來ソヴイエトを除外した
單独講和反対、
拒否権の
保持主張ということを唱えておりまするので、米國の対
日平和予備会議招請の努力も頓挫した形でありまして、
アメリカと
ソヴイエトの見解の対立を打開するという以外に、
アメリカと
中華民國の対立の打開もまた重要な問題として起つてまい
つたのであります。
アメリカと中國との交渉につきましては、昨年
王外交部長が
國際連合の総会に出席のため
アメリカに渡りました機会に、何らか交渉が行われたかということも傳えられたのでありますが、中
國政府は、昨年の十一月十七日に、
アメリカ、
イギリス、
ソヴイエト三
國政府に一つの提案を
行つたのであります。この要点は、できるだけ早い時期に対
日平和條約の草案を作成して、
最終平和会議に関する事項を決定するために、
極東委員会の全
構成國から成る
予備会議を招請する。ただ
右会議の決定は四大國の
賛成投票を含む
会議構成國の
多数決によつて行われる、こういう中國側の提案があ
つたのでおりまして、会議の
構成國を
極東委員会の
参加國とするという点では
アメリカ案を支持してをるのでありますが、四大國の
賛成投票を含む
多数決ということは、四大國の
拒否権を認めておる。この点においてまた
ソヴイエト側のかねての主張に同調した
折衷案なのであります。この中國側の提案に対しまして、
米國政府は何ら正式の回答を行つておらないのでありますが、
ソヴイエト連邦は昨年十一月二十七日に、一九四八年の一月、つまり本年の一月、中國において対
日平和條約の
準備事項を討議するために、
四箇國の
特別外相会議を招集するということを提案したのであります。しかしながら、中
國政府はこの
ソヴイエト側の提案は、從來の
ソヴイエトの態度と何ら変化はないものであると認めまして、昨年の十二月の五日に重ねて対
日予備会議の構成及び表決の手続につきましては、
極東委員会の例になろうという、從來の中
國政府の立場を重ねて
ソヴイエト連邦に申入れたのであります。
イギリス政府は中國及び
ソヴイエトの昨年の十一月の提案に対しまして、十二月の十四日に
イギリスとしては、極東におけるすべての
利害関係國の平等な参加を主張するということを通告いたしまして、
拒否権というものを含むいかなる手続も
早期和平の締結を遅らせるものである、日本の敗北に寄與したという理由だけでなく、日本の侵略によ
つて損害を受けた度合い及び
太平洋地域の將來の
平和的発展に関する重大な関心をもつ國々が平等に対
日処理会議に代表を出す資格をもつものであると考えると主張しまして、
予備会議を四大國だけに限ろうとする
ソヴイエトの案に反対を通告したのであります。昨年十二月の中ごろに、
ロンドンの
外相会議が決裂したのでありますが、昨年十二月三十日に至りまして、
ソ連政府は中
國政府の十二月五日の第二次覚書に対しまして、急に回答を寄せまして、
四箇國の
外相会議が対日の
講和條約を準備すべきである。ただ対日戰に協力した他の諸外國の利益ないし公権というものを考慮することは、
講和会議の準備の過程において考慮されればよい。つまり言葉をかえますならば
予備会議におきまして、四大國以外の
参加協議を認めるけれども、
表決権は四大國に限るという提案をなしたのであります。この提案に対しまして、中國の政府は、公式にはまだ意見を述べておらないのでありまするが、
イギリス外務省のスポークスマンは、
イギリスは從來の態度を変えないということを語つておるのであります。またU・P電報によりますると、
マーシヤル長官も、四大國に
拒否権を認めるソ連の方式は受諾できないと
語つたということが傳えられているのであります。このような段階にございまして、対
日講和会議が急速に実現するかどうかは、昨年言われておりましたように、
アメリカ政府が
ソヴイエトを除外しても
予備会議を招集するかどうか、そういう問題だけではなく、米ソの間に介在して中
國政府が、今後いかなる態度をとるかということにもかかつてくるとみられるのであります。米國の
通信員の電報によりますと、中國のこの態度の背景をなすものについては、やはり米國からの中
國経済的援助を確保するための考慮であるとか、また対
日講和会議において、抗戰八年の犧犧を受けた中國の特殊の立場を強く会議に反映さすための考慮であるとか、また中
ソ関係の特殊性というようなものをいろいろ考慮した複雜なものがあると報じておるのでありますが、本年にはいりましてから、中國のある新聞の論説におきましては、中國はどうしても
拒否権をもたなければ安全感をもなてい。しかしながら中國が今日までいかなる会議においても
拒否権を使用したことはないではないか、こういうことを論じておる者もあるのであります。また戰時中にできました中國と
ソヴイエトとの條約においては、
お互いに日本との
單独講和を禁じておるのでありますが、中國の新聞の傳うるところでは、現在の
日本政府というものは、当時の
日本政府とはまた異なつたものであるから、
單独講和を禁じておる中ソ條約の適用ということは、この場合はあてはまらないということを論じておる者もおるわけであります。大体現在のところこういうような状況にありまして、その後何らこの
講和予備会議の手続問題に関して四大國間の交渉というものは進展を示しておらないのであります。
次に、簡單に最近の中國の情勢について述べたいと存じます。今日國共の戰爭というものは、滿洲を中心にいたしまして華北、華中に廣がつております。
國民政府軍は大体都市と
交通線の防禦に追われまして、
中共軍が自由に
攻撃作戰を実施してくるのに対しまして、もつ
ぱら受動的立場に轉じておるという観を呈しているのであります。また満洲は絶対に放棄しないと
國民政府側はしばしば声明しているのでありまするが、外國の
軍事通信員等ははなはだこれを危惧している模樣でありまして、奉天における
英米人に引揚が命ぜられたとか、奉天の運命も今明日に迫つているというような外電は、しばしば傳えられておるのであります。両軍の
現有勢力につきましてはいろいろな数字がありまして、
共産軍が大体百五十万の兵力をもつているのに対して、
國民政府軍は三百五十万といい、あるいは四百万、五百万という数字もあげられているのでありまするが、何分にも
國民政府軍の方は廣汎な
交通線と都市の防衞のために追われているわけでありまして、また装備の点においても、昨年ほど両軍の差異はない、
中央軍の各所における攻勢に対処するのには、相当の苦労があるように傳えられているのであります。現在のところ満洲の九三%、華北の七〇%が中共の支配下にあるといわれているのであります。また
國民政府側の拠点としておりまする各都市は、非常に深刻な
インフレーシヨンに悩まされておる、しかるに
共産軍の拠点は比較的
インフレーシヨンの影響を受けることの少い農村であるということも、両軍の勢力を判定する上に影響があるということを傳えるものもあります。
このような中國の情勢でありまするから、米國においてはこの情勢に多大の注意を拂つている模樣でございまして、昨年の
臨時議会では千八百万ドルの対華借款で供與されたほかに、去る二十二日
マーシヤル國務長官は、
目下政府は中
國援助の
具体案を作成中であると述べているのであります。なお中國の
経済安定借款の交渉のために、
目下貝租怡氏が渡米中でありまして、今後米國がいかなる中國の援助に出るかということは、目下注目されておるところでございます。
次に、
ヨーロツパの情勢について申し上げますが、昨年十二月
ロンドンの
外相会議が決裂いたしましたことは先ほど申し述べた通りでありまするが、この会議におきましては、こまかい点において多少意見の一致を見たものもあ
つたのであります。たとえば共通の
輸入計画を作成することであるとか、
ドイツの鋼鉄の生産の水準を引上げることであるとか、あるいは
ドイツ産の石炭を他の欧州諸國に公平に分配するように勧告することであるとか、あるいは
賠償工場撤去の方法の問題であるとか、こういう問題について多少四
國外相間に、意見の一致を見た点もあるのでありまするが、主たる問題は、特に
ソヴイエト言邦が今後
ドイツから二十箇年開に百億ドるの賠償を要求するという案につきまして、とうてい
米英佛三國の受諾するところとならないで、決裂に
至つたのであります。また
オーストリアとの
講和條約につきましても、結局妥結に至らなか
つたのでありまするが、
ロンドン外相会議の散会後に、
モロトフ外相は多少妥協してもいいという案を出しました。その後
外相代理の間で
オーストリア條約の審議が多少続行されたのでありまするが、今日まで結局妥結を見ないで終つているのであります。この
外相会議が決裂いしました後に、
英米佛三國の代表部の間では、今後の
占領地域をどうやつて経営していくかということについて、いろいろ
話合いが行われた模樣でありまするが、今年の一月六日から三日間フランクフルトに
米英占領地区の各州の長官、また
経済委員会の委員というものが招致されまして、英國の
占領地区と米國の
占領地区、両地区にわたりまして、立法部、
行政部、
最高裁判所等を有する新しい機構を設立するという計画を立てまして、
アメリカ、
イギリス側はこれをもつて
ドイツ経済の復興を促進するための
経済措置として、これの実行、実施を進めているのでありまするが、これは
ソヴイエト占領地区と
英米占領地区との対立を、むしろはつきりさせるものでありまして、
ドイツを東西へ分割してしまうものだということで、
ドイツの一部社会民主党その他の政党の中から、反対の声もあがつているとのことであります。ところが
フランスはこの英米の
占領地区の統合問題に関しまして、事前に協議を受けておらなかつたというために、
アメリカ、
イギリスに対しまして抗議することになりまして、また近く
ベルリンにおきまして、米英に
フランスを加えた
三國会議が、開催されるだろうということになつているのであります。一方
ソヴイエト政府は
米英側の
占領地を統合する案に努しまして、これは
ポツダム宣言の違反であるということを唱えて、これに反対しているのであります。なお最近
ベルリン・ウイーンその他
ソ連軍と
米國軍との接触している地客におきまして、いろいろこまかい事件が起きまして、
アメリカ占領軍としては
ソヴイエトがいかなるいやがらせをしても、われわれはこの
占領地区、
ベルリンを離れることはないというような声明を、いたしたりしたこともあるのであります。なお米英の
占領地区におきまして、最近
食糧事情が非常に惡化しまして、これは農民が食糧をやみに流すことが、主たる原因と傳えられているのでありまするが、
食糧事情の惡化のために國民の食糧の配給量というものが減らされる。これに対する不満から本年の一月六日以來、ハンブルグその他の都市におきまして、
ストライキが起つてまい
つたのであります。
米英軍の当局は、この
ストライキは
共産党が後押ししておる。米英に対する
反抗運動であるというふうに、みなしてお
つたようでありまして、この
ストライキもまた米英と
ソヴイエトとの微妙な関係を、反映しておるように見られていたのでありますが、最近の
新聞電報によりますと、大体この
ストライキも一時收ま
つたように見られます。
次に
マーシヤル・プランというものに対應する
東ヨーロツパ諸國の大勢について、簡單に申し上げます。昨年の十二月、
アメリカの
臨時議会におきまして、
トルーマン大統領は
ヨーロツパ援助計画に対する教書を送
つたのでありますが、この教書の中に対
欧援助の最初の計画といたしまして、最初の十五箇月分に六十八億ドルという金の支出を要請したのであります。
目下アメリカの議会はこのいわゆる
マーシヤル・プランの実施、対
欧援助計画案について審議を開始し、
外交委員会において官民各方面の意見を聽取しておるのでありますが、この最初の十五箇月間に支出を予定されております六十八億ドルのおもな割当は、
イギリスに対して十七億六千万ドル、
フランスに対して十四億三千四百万ドル、西
ドイツに対して九億ドル余り、イタリヤに対して八億ドル、ギリシヤに対して一億八千万ドルという金が、大体予定されておるのであります。かくのごとく
マーシヤル・プランが一方において具体的に進められております反面、
ソヴイエトの
勢力圈内にあります
東ヨーロツパの諸國におきましては、ブルガリアであるとか、ルーマニア、ハンガリアまた
ユーゴスラビア等を加えましたあるいは連邦の結成である、ないしは
軍事同盟の締結説である、いろいろなことが昨年來傳えられてお
つたのでありますが、これらの諸國の間に昨年の
夏以來、あるいは
相互援助條約、あるいは
経済協定その他多角的ないろいろな
同盟関係が結ばれておりまして、
東ヨーロツパにおきましては着々
ソヴイエトの
圈内諸國は、一つに固まつてまいつているという情勢であります。これに対しまして去る二十二日
ベヴイン外相が
イギリスの下院で、四大國の一つが
弱小國に対して、自己の政治的、経済的の権利を押付けようとする限りは、四大國の協議ということはもう同意できない。
イギリスとしては
ソヴイエトが
ヨーロツパ大陸を支配するという強い意思に対坑するために、
西ヨーロツパの
連合結成の措置を講じておる。すでに
イギリスはこの目的のために、ベルギー、
オランダ、
ルクセンブルグ諸國との間に交渉を進めておるし、また
フランスとの
同盟関係をさらに強化して、
イタリアその他の諸國をもこの中に加えようと考えておるということを声明したのでありまして、これに対しましては米國におきましても非常な観迎を受け、またべルギー、
オランダ、
ルクセンブルグ三國はもちろんこれを歓迎しておる模樣でありまして、
フランス、
イタリアにおいても大体みな
英國政府が議会で発表しましたこの方針に、贊意を表しておるのであります。ただ
西ヨーロツパのその他の諸國、スエーデンであるとかスイスであるとか、
從來中立を守つていた國におきましては、まだこれに対して沈默を守つておるのでありますが、
東ヨーロツパ諸國が
ソヴイエトの
勢力圏内におきまして、一つの同盟を形成しようとしておるのに対しまして、これに対坑する
西ヨーロツパのまた一つのブロツクというものが形成されかかつているという状況にあるのであります。なお昨年十一月
以來フランスの罷業は熾烈をきわめまして、これは
共産党がもつぱら指導したということに対しまして、米國としても、いわゆる
マーシヤル・プランというものが成果をあげますためには、この問題が非常に重要な問題でありますがために注視していたのでありまして、昨年の十二月には
ロンドンに滯在しておりました
アメリカの特使のダレス氏を
フランスに派遣して、各方面の意向を打診させたということもあ
つたのでありまするが、目下のところ
フランス政府の彈圧政策が成功いたしまして、
共産党の
ストライキは大体失敗に終つた模樣であります。
イタリアにおきましてもまた十一月の初めに
フランスにおける騒擾と大体時期を同じくして騒動があ
つたのであります。十二月の中ごろには遂に内閣の改造を行うことにもな
つたのでありまするが、
イタリアにおける左翼の攻勢というものは、
アメリカの重大関心をもつところであつて、場合によつて
共産党の支配下に入つた場合には、
アメリカは
イタリアの経済援助を停止するという考えも発表したのでありまするが、大体において今日のところ
イタリアにおける
共産党の
ストライキ戰術というものも失敗に終
つたように見られております。
次に、簡單に昨年開催されました
國際連合総合について申し上げますと、第二回の
國際連合の総会は、昨年の九月十六日に開会されまして、十二月二十九日閉会とな
つたのであります。ところがこの会議の一般討論におきまして、
アメリカと
ソヴイエト代表の演説というものは、すぐ対立を示したのでありまして、その後連合にかけられました問題につきましては、バレスタイン問題で
ソヴイエトの反対がなかつただけで、あらゆる問題において米ソの対立ということが示されたのであります。今回の
國際連合の総会の決定しましたおもなるものとしては、次の総会までに継続的に暫定の常設安全保障
委員会つまり総会の小さな形、小総会を設置すること、バルカンの紛爭監視
委員会を設置すること、朝鮮に
國際連合の監視
委員会を派遣してその監視のもとに、本年の三月三十一日までに総選挙を実施させ、早急に朝鮮の独立実現をはかる。また八月一日までにパレスタインにおける
イギリスの委任統治を終了させまして、十月一日を期してユダヤ、アラブの二つの独立國にわけ、エルサレムは
國際連合の信託統治地域にすること、この四つの問題がきま
つたのでありまするが、小総会を設置すること、バルカン及び朝鮮に
委員会を置くこと、これはいずれも
ソヴイエト側が烈しい反対をなしたのでありまして、この反対を押し切つて可決したものでありまして、
ソヴイエト側はこれに絶対に協力しないということを宣言しているのであります。バルカン紛爭監視
委員会ができましたが、ギリシヤにおきましては
共産党のマルコスという將軍に統率されました
共産軍が叛乱を起しておりまして、新しい共産政府を設立したということを声明して紡爭が起つておるのでありますが、この
共産軍政府は
國際連合の紛爭監視
委員会に対する協力はしないということを言つておりますし、またユーゴスラビヤその他の國においても同樣なのでありまして、この
國際連合のバルカン紛爭監視
委員会の活動は困難が予想されるのであります。また
國際連合の朝鮮
委員会の方は去る一月十一日から京城で会合を開いておりまして、南北両
占領地域の選挙の運営その他について討議しているのでありまするが、
委員会が北緯三十度以北の北鮮に入ることも
ソヴイエトはこれを拒否しておるのでありまして、
委員会の活動ということはその成果が疑問視されている状況でございます。結局
國際連合の加盟國、特に五大國の間に本質的な異見がある間は、
國際連合は十分な機能を発揮し得ないということを
國際連合の事務総長が申しているのであります。
ソヴイエト連邦はこの
國際連合の総会で宣傳禁止という提案を出したのでありますが、これは否決されまして、これをいわば骨拔きにした平和を脅威する一切の宣傳を禁止する、また友好関係促進のため、適切な措置をとるという妥協案が代つて採択されたのでありました。
その他極東の問題につきまして、いろいろこまかい御報告すべき点もあるのでありますが、簡單に申し上げます。
第一に最近廣東で起りました
イギリス公館の燒討事件というものがございました。これは昨年の末以來、香港政廳が香港の対岸の九龍にあります城内の一部に在住しておりました中國民の難民約二千名に対しまして、保健、保安の理由から立退きを命じたのであります。ところが中
國政府はその土地は中國側の行政権のもとにあるということで、イギリキ大使に抗議をしていたのでありますが、
イギリスは從來自分の方ゐ行政権を行使していたということを根拠といたしまして、強制立退きを本年一月十二日に実施してしま
つたのであります。この香港政廳の措置に対しまして、南京、上海、廣東、漢口の学生が大規模の反英デモを
行つたのでありますが、一月の十六日に約一万五千名の群集が廣東の沙面の英國総領事館をはじめ
イギリス銀行等を燒討ちした事件が発生したのであります。これは一九二七年のいわゆる南京事件に匹敵するような反英民衆運動に発展するのではないかという危險性を示していた模樣でありますが、中
國政府も遺憾の意を表しまして、
イギリス人の生命財産の保護ということを嚴命いたしまして、鎭圧に努めて、大体今日收まつた模樣であります。これに対しまして廣東省の主席であります宋子文氏は、これは中共の分子に煽動された暴徒がデモを利用して暴行を
行つたのだという声明を出したのでありますが、米國の
通信員その他の電報によりますと、反英運動ではあつたけれども、反米的のところは一つもなかつた。
從つて中共の策動であるかどうかは非常に疑わしく、むしろ國民運動、國権回復運動という色彩をもつたものではないかという見方が、かなり多いのであります。
次に、昨年の十二月十日ビルマ独立法が公布されましてから、独立の準備を進めておりましたビルマ政府は、一月四日に完全な独立協和國として発足したことは御承知の通りであります。
また長い間紛爭を続けておりました蘭領インドにおきまして、
オランダとインドネシヤとの交渉が行われていたのでありますが、
國際連合の安全保障理事会が昨年派遣いたしました三國調停
委員会の斡旋のもとに、いろいろ交渉が行われ、結局去る十七日
オランダ側とインドネシヤ側との間に停戰協定ができました。別に細目等は申し上げませんが、これも御承知の通りであります。
その他イラン等におきましても、昨年米
ソヴイエト側との紛爭に基いて政変等もあ
つたのでありまするが、その他のこまかい問題については今日は省略いたしたいと思います。
大体これだけであります。