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1948-04-16 第2回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月十六日(金曜日)     午後二時九分開議  出席委員    委員長代理 理事 若松 虎雄君    理事 中嶋 勝一君 理事 水谷  昇君    理事 川合 彰武君 理事 成島 憲子君       菊池 義郎君    竹尾  弌君       亘  四郎君    今澄  勇君       成田 知巳君    藤原繁太郎君       門司  亮君    和田 敏明君       天野  久君    西山冨佐太君       村瀬 宣親君    高瀬  傳君       東井三代次君  出席政府委員         総理廳事務官  三橋 則雄君         外務事務官   倭島 英二君         復員事務官   荒尾 興功君  委員外出席者         復員事務官   岡林 醇吉君         厚生事務官   大山  正君         厚生事務官   加藤 直市君 四月十三日川村善八郎君及び松谷天光光君が委員 を辞任した。 同月同日伊藤恭一君、門司亮君及び川橋豊治郎君 が議長の指名で委員に補欠選任された。 四月十六日天野久君が委員長を辞任した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  委員長辞任に関する件  ソ連関係地域よりの引揚再開問題に関する件  傷病者処遇に関する件     —————————————
  2. 若松虎雄

    若松委員長代理 これより会議を開きます。  本日天野委員長政務次官に御昇進に相なつたので、私が委員長代理を勤めさせていただきます。  建設院政務次官天野久君から、今回政務次官に御就任になられましたので委員長辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 若松虎雄

    若松委員長代理 御異議なしと認めます。それではさよう決定いたします。  前委員長天野久君より御挨拶を述べられたいとの申出がありますから、これを許します。
  4. 天野久

    天野委員 一言挨拶を申し述べさしていただきます。不肖私、第一回、第二回國会を通じまして、微力にもかかわらず、各位の絶大なる御支援によりまして、大過なく今日まで委員長を務めさしていただきましたことに対して、まことにありがたく、衷心より感謝の意を捧げて、厚く御礼申し上げます。なお委員のみならず、政府役職員各位、とりわけ副委員長各位におかれましてもいろいろと御支援願いまして、まことにありがたく御礼申し上げます。実は私といたしましてこの引揚げ完了を見ずしてこの委員会から去ることは、まことに自分の心情忍びざるものがありますが、はからずも今回政府より建設院政務次官を仰せつけられましたので、心ならずもこの委員会委員長を辞さなければならないはめになりましたのでありますが、どうかその心情をお察し願いたいと存じます。なお私は在職中から引揚げ四月再開を期して、本年内に必ず引揚げ完了ができるようにということを念願いたしておりましたので、実は本日はこれに対する各位の御意見を伺い、政府当局においでを願い、なお声なきあの傷病兵に対する諸手当、あるいは未復員給與法改正、その他諸手当等に対して、ぜひ自分在職中に解決を見たいと考えておつたのでございますが、その解決を見ずして辞することになつたのでありますけれども、どうかこの点につきましては各委員とも、これが委員会目的通り解決ができますよう、今後ともこれに対して御協力お願いいたしたいと存じます。なお今後とも、この委員にはいらずとも、この問題につきましては皆樣の御指導を得まして、でき得る限りの協力をいたしたいと考えておりますので、その点よろしくお含み置きを願いたいと存じます。はなはだ簡單でありましたが、一言各位に厚く御礼を申し上げて御挨拶にかえた次第であります。     —————————————
  5. 若松虎雄

    若松委員長代理 これより議事にはいります。本日の議題は、ソ連関係地区よりの引揚再開問題、次に傷病者処遇の件並びに未復員者給與法改正の件、この三つになつておりますが、まず審議にはいりますに先だつて皆さんにお諮りいたしたいことがあります。本日の議題は、委員会開催の御通知に書いてありました通りソ連関係地区よりの引揚問題や、ただいま申し上げました件でありますが、本委員会從來から審議してまいりました経緯もありますので、ただいま申し上げました問題を、まず委員長からその順序に総括的に政府側説明を求めまして、これを聽取した上で、委員諸君質疑にはいりたいと存じます。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 若松虎雄

    若松委員長代理 それではまず外務省に、ソ連地区からの引揚再開の問題につきまして説明を求めたいと存じます。先日の新聞発表によりますれば、米國側質問に対してソ連側代表から、五月から日本人の還送を始める旨の回答があつたというのでありますが、この経緯をできるだけ詳細に伺いたいと存ずるのであります。なおこの件について日本側への通告はいかがになつておるか、この辺を御説明を願います。また先日の新聞発表では、五月に再開するというだけで、五月初めから開始するのかどうかははつきりいたしません。引揚中止期間五箇月の間に引揚予定していた二十五万人を、月月五万人の引揚げにプラスして引揚げてくるのか、國民としては最も関心の深いところでありますが、これが不明でありますために、國民の一部では、ほんとうに引揚げが始まるのであろうかといろいろ心配いたしておるような次第であります。なるべくくわしい御説明を願いたい。もし正式の通告を受けておられぬ部分がありますならば、その点について政府のお見込みでも承りたいと存ずるのであります。
  7. 倭島英二

    ○倭島政府委員 ソ連地区からの引揚再開の問題について今御質問がありました点について、政府として承知しておる点を御説明申し上げたいと思います。  すでに新聞で御承知通りでございますが、今月の十二日の総司令部発表がありました通りに、対日理事会ソ連代表キスレンコ少將から総司令部宛に四月五日附の手紙で、本來四月から始まることになつておつたのを、今年は五月から再開する。なおこの再開が五月に延びました理由としては、今年は天候の状況が思わしくないし、運輸とか技術的方面のことも考えてこうなつたのであるという発表があつたのでございますが、この発表があります前に、政府といたしましては、昨年十二月から四月の大体一日ごろまで引揚げは一時中止せられるという司令部の方からの通知がございましたので、三月ごろからほとんど毎日のように司令部の方へ連絡をいたしまして、大体四月一日から再開せられるだろうということになつておりますのについて、いつごろになるでありましようか、何とぞ國民の期待の実現するようにお願いしたいということを頼んできたわけでありますが、結局今申しました四月の十二日の発表までは、総司令部の方にもまだ発表すべき何ものもないからということで推移してきたわけでありますが、五月前半の計画といたしまして、五月三日、五日、七日、九日、十一日、十三日、十五日の七回にわたつて、一日の收容力ナホトカへ参ります船は二千人、眞岡へ参ります勝は千五百人という收容力の船をナホトカ並び眞岡へ送りまして、合計半月の間にナホトカよりは一万四千人、眞岡よりは一万五百人帰還させる予定になつております。政府としましても、この司令部の方の計画に即應しまして、万全の準備を行つておるのでございます。御承知通り司令部からの四月九日の発表によりますと、これが一番最近の発表でございますが、樺太千島方面には、まだ十九万八千二百九十二名の同胞引揚げを待つておりますし、シベリアの地方においては四十九万四千二百二十六名の同胞が残つておりますので、ソ連地域から引揚げをせられます者といたしましては、合計六十九万二千五百十八名まだあるわけでございます。一昨年、すなわち昭和二十一年の十二月十九日の米國ソ連との間の取極めによりますと、一箇月の引揚げ平均五万人がソ連地区から引揚げてくることになつておりますが、この割で現在残つている約七十万に近い同胞引揚げることになりますと、今後まだ十四箇月はかかるという計算になりまして、すでに三回酷寒の地に冬を迎えました同胞のうち、ある人たちはさらにもう一回彼地に冬を越さねばならぬわけでありまして、日本政府といたしましては、何とか四回目の冬は越さないようにしてもらいたいと思いまして、総司令部の方にもこのことは從來何回もお願いしておるところでありまして、総司令部の方もこの事情に同情せられて、現に昨年十月二十九日の対日理事会においてシーボルト議長から、総司令部としてはソ連との合意が成立するにおいては、ソ連の方から予告があつた四十八時間以内に、最初の月においては十三万一千五百人の引揚げを行い、さらに三十日以内には船を増加して月に十六万を帰還させて、五箇月以内にはソ連地区から引揚げを完了する計画を実行することができるという案をもつてソ連側に提議せられた経緯もございまして、もしソ連側の方で承諾してくれるならば、総司令部としては毎月五万より以上の引揚げを実行する用意がある模樣でありまして、何とかこのような計画実現せられて、今年中に一日も早く引揚が完了するようにしていただきたいものだと熱望しておる次第でございます。なお先ほど委員長から、昨年の十二月から今年の四月まで——実際は十一月に出た船が十二月に入つてまいりましたので、引揚げがとぎれたのは一月からでございますが、一月から四月までとぎれておりまして、その間の月々五万というものが月割にしてあるのではないか、それはどうなるだろうかという御質問があつたのでありますが、この点につきましては、まだ総司令部の方から何らの指示がありません。
  8. 若松虎雄

    若松委員長代理 御質疑なり御意見がございますれば御発表願います。
  9. 藤原繁太郎

    藤原委員 シベリア地区におけるわが同胞引揚に関しては身寄りの方々はもちろん、八千万同胞のひとしく待望し非常な関心をもつてながめておることでありまして、われわれ議会人といたしましても、全力をあげてその促進をはからねばならぬのであります。ただいま今までの司令部との交渉並びにその経過について、外務当局よりるる御説明がありました。われわれとして非常に意を強うするものであります。  さてわれわれが全面的に引揚げ受入れるというふうな情勢なつてきた場合に、今日どれだけの用意引揚当局としてもつておるか。たとえば船の数において、あるいはまたその他國内における態勢において、その用意の点について御説明を願いたいと存じます。
  10. 荒尾興功

    荒尾政府委員 私は復員廳の者でありますので、全般的にお答えをする担任者ではありませんが、担当の方がおられませんので、從前、前厚生大臣が答えられたところをまとめて申し上げます。  船舶につきましては、ただいま倭島局長のお話がありました量についての準備が可能であることは明瞭であります。それから上陸地における收容施設は、ただいま御紹介になりましたような数字を消化することは、現在の施設を何ら拡張せずしてただちに受入れが可能であります。鉄道輸送につきましては、舞鶴から各地に帰郷せられるところの鉄道は問題はございません。また函館から青函線を通して内地へ送られるものの船の準備は、随時できるということであります。從つて各港に着きましてから郷里に帰られるまでの應急受入態勢につきましては、何らの支障なく確信をもつて実行できるということに、本会議におきまして大臣は答弁せられております。私どももそういうふうに事務的によく了解しております。ただ帰着先におけるところの恆久的な諸援護対策につきましては、議会におきまして各方面から本委員会あるいは厚生委員会等におきまして、各種の御献策、御協力があるにもかかわらず、十分でないことは現時局上やむを得ないと思いますが、そういう点につきましては御非難に点があるかと思いますが、とりあえずの應急施設につきましては、確信をもつてお答えできるということを代弁いたします。
  11. 藤原繁太郎

    藤原委員 ただいまの御用意月々五万人の用意でないかと思いまするが、月々五万人では本年度凍結期までに約七箇月くらいしかありませんので、本年内引揚げを完了するとするならば、月々十万人程度引揚げをやらねばならぬ。そういう場合の船舶並びにいろいろな受入れ態勢についてはいかがでございましようか。
  12. 荒尾興功

    荒尾政府委員 ただいま私のお答えいたしました数字は十五万人に應ずるお答えであります。從つて十五万人月々帰りましても、應急準備といたしましては現在の施設を何ら拡張せずして、多少の手配をいたしますれば万全の措置がとれるということであります。
  13. 藤原繁太郎

    藤原委員 外務当局にお伺いしますが、なお連合軍の筋を待たずして何か具体的に引揚げ促進に関して方法を講じておられますかどうか。
  14. 倭島英二

    ○倭島政府委員 本件は——あるいはほかの件でも同じでございますが、現在日本政府司令部以外のところへ直接正式の交渉をすることを差止められております。從つて政府当局としまして、本問題については、総司令部担当当局連絡をしお願いをするという以外に途がないわけであります。從つてその以外のところはやり得ないという状況にありまして、やつておりません。
  15. 成田知巳

    成田委員 ただいま倭島政府委員の御説明では、樺太千島が約十九万、シベリヤ方面が四十九万、合計約七十万の未復員者があります。その樺太千島シベリヤ以外に、滿州を中心としまして中共地区、それから南方の未復員者は大体どれくらいあるのですか。
  16. 倭島英二

    ○倭島政府委員 四月九日附の司令部発表によりますと、滿州の未復員者は六万五千二百八十五名、中華民國は三千二百二十四名、ついでに申しますと、大連地区が三千名、台湾が二百二十五名、北鮮地区が四百九十七名という数字なつております。南方方面は大体完了しておる状況でございますが、佛印の北部に百十名、フイリツピンに四十七名、あとは総司令部発表によりますと、ゼロになつております。
  17. 成田知巳

    成田委員 ただいまの御説明では約七万ばかりのものがソ連地区以外にまだ残つているらしいのでありますが、これの引揚の見込、ソ連関係につきましてはただいま詳細な御説明を拜聽しましたので、特に中共地区引揚見込について御説明を願いたいと思います。
  18. 倭島英二

    ○倭島政府委員 今申しました数字の大体のもの、特に滿州、中華民國方面では大部分留用者並びにその家族でございまして、一部分戰犯関係あるいは戰犯容疑者というものでございます。南方地区の今申しました残りのものは、ほとんど全部と言つてよいくらい戰犯関係容疑者でございます。滿州地区及び中華御国よりの引揚げの問題は、満州地区におきましては、最近三月十八日ころ新京の方から便りがありましたが、それによりますと、大体奉天を中心として集まつておるらしいのでありますが、満州國民軍地区に三千名、北支と申しましても主として北京、天津世区でありますが二百名 台湾に二百五十名、上海に百十名、この程度同胞が今帰還を持つておることがあわかりましたで、できるだけ早く船をまわして引揚げ実現を期するということで、すでに総理令部の方にいろいろお願いをしております。総理令部の方としては関係方面へ御連絡願つて、まだ返事がございませんが、われわれとしては間もなくそれの実現の運びへ行くようにと熟望しておる次第であります。
  19. 成田知巳

    成田委員 ただいまの御説明南方方面は総司令部発表によりますと、ほとんど完了しているようでありますが、私どもよく問合せを受けるのでありまして、南方方面の出征して未だに生死不明だというのが問合せ相当数を占めているのであります。そうすると、総司令部発表から推察すると、大分部戰死と見なければいけませんが、遺族は相続だとかあるいは配偶者の身の振り方の問題で相当悩んでおるような状況でございますから、この際もの総司令部発表が信をおけるといたしましたならば、何らかの形ではつきり戰死公報なりを壮く出していただくようにしていただきたいと思います。
  20. 荒尾興功

    荒尾政府委員 お答えいたします。終戰後ことしの三月三十一日までに死歿公報処理いたしました陸軍関係は約百十五万、なお南方関係で未だに生死状況もはつきりしておらない者が約十五万でありまして、この十五万の方のお留守宅では一日も早くその公報をはつきりしていただきたいという氣持もあると思いますが、実は日露戰爭後には数年かかつたものを二年くらいで片づけましたので、相当解強したつもでありますが、お留守では相当御不満だと思います。なおこの十五万ございますけれども、これは今大体業務の目標といたしまして、八月ころまでにその大部分生死の模様を判定いたしまして確実なところを、正確な條件下に急いで調査を進めておりますので、御了承願いたいと思います。おるす宅の方ではただいまお話のありました南方に残つている者は、戰犯の者を入れますと、実は約四千名でございます。それ以外の方は死んでいるだろう、こう簡單に言えませんのは、ことしの春もバラワン島から、ちよつと覚えておりませんが、二百人くらい帰つてきているのであります。そういうこともありますので、生きている見込みのあるという人を戰爭中のように、簡單に全滅したというて公表処理をするわけにいきませんので、これらのことを確実にしたい。從つて事情事情でありますから、なるべく急いでやるように努力をいたします。初め百十五万を処理した時期に比べますと、最後に残つた方は、実を申しますと不明瞭の方が多いのでありまして、お留守宅では、いつ出発したのか、日どりも知らないし、所属部隊も知らないというようなことでありますので、なかなか調査の方も推捗いたしません。しかしなるべき鞭撻して処理したいと思つております。これがために非改にお急ぎの御要求を受けますと、急いでやる関係上間違いの起つた場合のことも御了承願わなければならぬと思いますが、一般のおるす宅におきましては生きているという情報もありますので、草の根をわけても探してくれ、從つて死亡公報をそんなに急いで出してもらう必要もないというお宅もありますので、一昨年きらいから、十五、六名議員の方に搜査状況を見ていただきまして、そのとき現在やつている処理方針を一日ごらんを願つたのですが、希望意見として、とにかく親の氣持をもつて正確にやつてくれという強い御要望でありました。ただいまは社会情勢もだくだく変つてまいりましたので、さらにこれらがもつと促進すことになりましたならば、とにかく努力してみますが、その間に國会の方で國民の声として処理について御意見がありますれば、政府の考え方も変つてくるじやないか。私どもとしてはあまり軽率にきめるわけにいきませんが、ただいまはもつぱら正確に、しかもなるべく急いでやるという方針でやつております。
  21. 成田知巳

    成田委員 ちよつと一口お尋ねいたします。ただいまの倭島政府委員お話でありますが、総司令部発表によりますと、南方方面はほとんど完了して二、三百名ぐらい未復員軍人があるように承つたのであります。ただいまのお話で四千名ぐらいということを非常に意を強うしておりますか、何か特別な根拠があるのですか。よろしかつたら御説明願いたいと思います。
  22. 若松虎雄

    若松委員長代理 ちよつと速記を止めてください。     〔速記中止
  23. 若松虎雄

    若松委員長代理 速記を始めて……。  ほかに御質問なる御意見はありませんか。——この問題に関する審議あとにまた議題がありますので、本日はこの程度に止めたいと思いますが、この問題は本委員会にとつてももちろんでありまするが、國民全般にとつても最も大なる問題であることは皆様御承知通りであります。二月十二日の本委員会で定めました本年中にぜひとも全部の引揚を完了するという引揚目標が達成できるかどうかという重大問題になるのであります。あるいは本委員会から発動して衆議院としての意思発表にまでいかなければならないかとも考えるのでありますが、この点はさらに委員諸君のお諮りするつもりであります。それでは次の問題に移ります。     —————————————
  24. 若松虎雄

    若松委員長代理 次に傷病者処週の問題に移りたいのでありますが、帰還のしてくる人々の中には、現地での労働に起因する傷病者等もおられるものと想像されるのでありますが、五月からの引揚再開にあたりましては相当数傷病者もありましようが、一体幾パーセントくらいの傷病者があるお見込みでありましようか、復員局の方から從來の統計でも結構でありますから御説明を願いたいと思います。
  25. 荒尾興功

    荒尾政府委員 舞鶴におきまして昨年引揚げてまいりました者の総数に対しまして、患者の数がどれくらいであるかということは、この前ちよつと御紹介申し上げましたが、大体引揚総数の一九・三%、約二〇%が患者であります。そのうち入院を要するものは四・五%、入欠しないで自宅で済むものが一四・八%であります。この患者の内訳を見ますると、昨年度はやはり栄養失調の患者が一番パーセンテーじが多かつた、それから次が外傷、次が結核という順位であります。が末期になるに從いまして外傷患者が逐次殖えてまいりました。また結核患者も殖えてまいつております。この点憂慮いたしておるのであります。その外傷患者のうち昨年度におきましては、総外傷患者の一五%くらいは戰傷患者でありましたが、逐次それが漸増しておる状況であります。また最近三十五箇所の收容所から帰つて來られた方につきましていろいろお尋ねいたしました際の患者の総平均は、一日に患者の発生する数が大体一七%であります。こういう数字から見まして、本年度におきましてはやはり同数以上の患者がはいつてくるということを基礎として收容施設をつくらなければならぬと考えておるのでありまして、一番多いソ連地区におきましては、收容所における待遇その他は漸次改善せられつつあるかつこうでありまして、労働時間、給與その他も逐次よくなつておりますが、藥等の不十分、軍医の不十分ということは、皆さま御承知通りでありまして、先ほど御質問のありました受入れといたしましては、患者の問題につきましては、今度機帆船にも專門の医者を乘せるという処置もとつております。また港における受入れとしては、大体昨年度並以上患者の來るということを予想して準備を進めておる次第であります。
  26. 若松虎雄

    若松委員長代理 なるほど引揚傷病者のパーセンテージも相当高いようでありますが、應急收容には手落ない施設もあるのであります。その治療等にはぜひとも遺憾のないように希望いたしたいのであります。大体、この戰爭で死んだり傷ついて不具になつた方方が最も痛ましい戰爭犠牲者であることはもちろんであります。一体今までわかつておる戰歿者の数はどのくらいありましようか。それから死歿と判定される見込みのある数はどのくらいありましようか。戰歿者についてはどんな措置がとられましたか。復員局の方には御調査もありましようが、これを御説明願いたいと思います。また元の軍人軍属傷病恩給をもらつている人が何人くらいありますか。また將來もらうこととなる見込みの人数はどのくらいありましようか。一体復員局ではわかつておるのでありましようか。この際お示しを願いたいのであります。なお一体どの程度の金額となつておるか、併せて御説明が願えれば結構と存じます。私どもが始終聞いておるところは、傷病恩給が低すぎるとか、またそれも終戰後軍人恩給指令によつて停止されたのに、傷病恩給だけは最低限度を認められたということでありますが、その指令内容をでき得るならば詳細に承りたいのであります。またこの指令にもとづいて傷病者に対し現在支給されている恩給内容はどうであるか、低過ぎるという非難に対して、この時勢に適するように改正することについていかように努力されておりますか、お伺いいたしたいのであります。なお終戰後連合軍側強制労働のため死傷者ができておる、この死傷者はいわゆる軍隊としての勤務によるものではないようであるが、この方の処遇一体どうなつておるのでありますか、この際併せて御説明を願いたいと思うのであります。
  27. 荒尾興功

    荒尾政府委員 私から死歿者の数だけをまず申し上げます。傷病関係は專門の者が來ておりますから……。死歿者の数につきましては、先ほどちよつと申し上げましたが、次のような数字なつております。まず旧陸軍関係につきましては、昭和十六年十二月八日から昭和二十年八月十五日までに死亡公報をもつて処理せられました数は約二十三万であります。二十年の八月十六日以降本年の三月三十一日までの死亡公報処理された数字は百十五万、そのうちソ連地域において死亡された方が約四万であります。今後四月一日以降処理すべき数字南方の十五万、その他の地域を合わせまして約二十万と見込んでおります。從つて陸軍関係におきましては、百五十八万という死亡の処理をしなければならぬ次第であります。そのうち大部分は、先ほど申し上げましたように、相当進捗しております。なお今後処理すべき二十万は、これを予想でありまして、あるいはもう少し殖えるかもしれません。旧海軍関係におきましては、本年の三月三十一日までに処理しました死亡公報は約二十一万であります。四月以降処理すべき数字は約八千でありまして、合計して二十一万八千、約二十二万と推定をしております。從つて合計いたしました百八十万というのが死歿者の総数でありまして、非常に大きな犠牲の点につきましては、まことに申訳ないと思いますし、またこれを迅速に処理いたすべき件につきましては、ただいま御質問のありましたような御樣子でありますので、極力公報処理を正確な條件のもとに急いでやろうと心得ております。
  28. 岡林醇吉

    ○岡林説明員 私、復員局の業務部長であります。ただいま委員長からお尋ねになりました点につきましてお答えをいたします。  まず最初に戰歿者措置がどうなつておるか。すなわち処遇の問題でありますが、ただいまお手もとにお配りしました資料、これは早急の間に整えましたので、内容は不十分でありますが、それの二枚目の紙をちよつと見ていただきます。表題は上の方に積に公務災害時の旧軍人軍属に対する補償と他の補償との比較一覧表というものがございます。それから一番左の部分を見ていただきます。公務死亡の補償、公務上の不具癈疾の補償、公務傷病の療養補償、これが現在の旧軍人軍属に対する処遇であります。それを見ていただきますと、旧軍人軍属に対しましては、現在遺骨埋葬費の三百十円というものが支給せられておるだけであります。その左の官吏、次に嘱託、雇員、傭人、工員、次は一般の労働者、それからその下の方が一般人というふうにわけまして、これと比較対照いたしますと官吏は恩給法というものがございます。それに対しましては旧軍属の中の判任文官の大部分の者は一般の恩給法の適用を受けます。傭人等はやはり雇員扶助令、傭人扶助令というものによつて遺族扶助料を受けます。それから労働者の方は前には厚生年金保險法というものによつて遺族年金を出しておりました。以上によりました官吏、雇傭員、労働者の関係は、今後は昨年九月一日以後の者については労働基準法によつて遺族補償及び葬祭料が受けられることになつております。ただ一般人の方には何にもないわけでありますが、これは生活困窮者に対しては生活保護法の適用があるという改正になりました。総じて言いますと、軍人軍属、殊に元の軍人一般が大体対象になつております。これを表わした表でございます。  戰歿者処遇につきましては、恩給の廃止の指令がございまして、扶助料がいただけなくなつたのでありますが、一昨年厚生年金保險法の遺族年金というものを何とか差上げられるようにできないかというので研究いたしましたが、遂に連合軍側の御了解を得ることができませんのでさたやみとなりました。結局現在通り遺骨埋葬費の三百十円をいただけるだけでございます。  次の御質問傷病恩給を現在受けている者の数及ば將來の見込数はどうかという問題でございますが、現在受けておる者の数につきましては、これは恩給局の方で調査をしていただきませんと、はつきりした数字は私の方としてはつかめませんから、大体の私の観察を申し上げます。明治以來の傷病者傷病恩給を現に受けている者は大体五万余ではないかと考えております。恩給には年金の者と一時金の者とがありますが、この五万の者は現在年金を受けている者でありまして、そのほかに過去においてすでに一時金をもらつた傷病者は二十八万余あるのでありまして、それを合せますと三十四万ぐらいの人員になります。それの金額を申しますと、結局現在もなお年金を引続いてもらつている約五万五千ぐらいの者に対する金額でありますが、これは大体年に二千五百万円ぐらいいただいているのではないかと考えております。  次は今後の見込みであります。これはいろいろ不明不定な因子がありますので、はつきりした数字はつかめませんが、いろいろの資料等から臆測をいたしますと、陸海軍を合わせて大体五万人余あるのではないか。その五万人の中で年金をいただく程度の者はどれくらいあるかと判断をいたしますと、まず二万人ぐらいで、あと三万人ぐらいは一時金をいただく程度のものではないかと判断をしております。この五万人の主力は今後復員を予想せられる。殊にソヴイエト方面から帰つてこられる者であります。そのほかに現在すでに郷里に帰つておる者の中でも、恩給を請求しない者が現在相等数残つておるようであります。それはなぜかと申しますと、軍人の恩給は廃止になつたのだ。從つてもう傷病恩給もないのだというような考えをもつておる者、それからもう一つは、恩給のあることは知つておるけれども、現在のような傷病恩給のきわめて低いものを、わざわざめんどうな手続までして、金まで使つて手続する必要はない。こう考えるものと二通りあるようでありまして、これが相等数残つております。いわゆる潜在受恩給者と申しますか、そういう者を合わせました者が相当多いようであります。そこでこれの金額はどれくらいになるかと想像しますと、年金関係のものにつきましては大体一千万円くらいではないか。從つて現在過去のもので現に年金を受取つておる者が年に二千五百万円、今後の予想が約一千万円、計三千五百万円というものが、年金関係の今後の金額ということになると考えております。そのほかに一時金をもろう者が、三万人くらいおると予想されるのであります。これが大体ただいま御質問に対する御答弁であります。  その次は傷病恩給指令内容という点に触れて申し上げます。これはただいま差上げました資料の中の、旧軍人の傷病恩給増額問題研究資料の初めの一に書いてありますように、「旧軍人軍属に対しては昭和二十年十一月二十四百附連合軍指令、「恩給年金及利得に関する覚書」に基き、」これが基礎であります。昭和二十一年二月一日の勅令第六十八号というものが制定されて、現在の傷病恩給ができておるのであります。その指令内容はどういうものか。その抜萃を次に書いてございます。それは次のような恩給とか、あるいは利得を支給することを停止するというので、その中に(イ)として「軍隊勤務の理由によるもの」それの恩給利得が停止になつております。「右は離職退職手当金又は同種の賞與若くは手当を含む」「但し」とその次に但書があります。「但し受給者の勤労能力を制限する肉体的不具癈疾に対する補償金は軍部以外の勤務により生じたる同程度の肉体的不具癈疾に対する最低補償を越えざる率にて支給することを得」すなわち公務に基因しております不具癈疾者、軍人軍属の不具癈疾者、それに対する補償はそれ以外のやはり勤務に基因をする不具癈疾者の受ける補償等の、最低補償を超えない程度でやつてよろしいということであります。それを先ほどの表について見ていただきますと、眞中の欄がそうであります。公務上の不具癈疾の補償としまして、旧軍人軍属、これは勅令第六十八号の傷病恩給を受けております。そうするとそれの対象となります官吏、雇傭人、労働者、あるいは一般人という区分について申しますと、官吏は恩給法による傷病恩給を受ける。これはもちろん軍人軍属などとは程度は違います。雇傭人は雇傭人扶助令により障害扶助料を受けております。労働者は厚生年金保險法の障害年金、傷害保險を受けております。そのうちで旧軍人軍属の中の判任文官は、一般の官吏同様に恩給法の適用を受けております。これはまつたく同様であります。それから雇傭人は恩給を受ける資格がありませんので、雇傭人扶助令によつて扶助を受けております。それから旧軍人及び高等文官は、何に基礎をおいたかと申しますと、厚生年金はすなわち労働者に対する厚生年金保險法のうちの、業務上で障害を受けた場合の年金、あるいは保險手当金を対象として、傷病恩給というものができたわけであります。そのことが逐次先ほどの御質問の中の傷病恩給内容という点に触れてまいります。これらの研究資料の中の二にそのことが書いてあります。二は細部の説明は省略しますが、今申しましたように、勅令第六十八号、すなわち現在の傷病恩給は前述の軍部以外の勤務上の障害補償を対象といたしまして、その当時すなわち一昨年の二月一日当時の厚生年金保險法という、保險の中の業務上の障害保險を基礎として定められております。その関係は左表の通りでありまして、恩給額計算基礎の方法につきましては、厚生年金保險法は標準報酬引額というものがありまして、これが大体三十円から六百円の間になつております。それから旧軍人の方は仮定俸給というものがありまして、それぞれ兵から大將までの階級に分けて、本表のごとくにこしらえてあります。それから障害の程度に應ずる乘月数というのが(2)に書いてありますが、これは両眼がつぶれたというような一番重い程度の傷病、これが厚生年金保險法の方では第一級となり、傷病恩給の方では特別項傷となりますが、それは八箇月であります。すなわち八箇月分とその前の基礎俸給とかけ合わせたものが、恩給額の年額ということになります。  この表でごらんの通りに、ほとんど厚生年金保險法と傷病恩給の今のかける月数は同じであります。ではどうして同じであるのに傷病恩給が少いかと申しますと、基礎の俸給が少いということに大体帰着するわけであります。  現在の労働基準法によります災害補償法は、すべて平均賃金を基礎としておりまして、平均賃金は最近三箇月の間における実際の報酬の平均額ということになつてまいります。現在の報酬月額というものは、厚生年金保險法の三十円から六百円という月額、あるいは兵の仮定俸給の八十円から五百円というものに対しては、まつたく比べものにならないというところに、大きな差異があるわけであります。そこで今の紙を開けていただきますと、次の紙に註として一例を書いておきましたが、労働基準法による災害補償は、平均賃金が現在の実報酬となつているから補償額は高額である。たとえば平均賃金三十円、すなわち月收にすれば千五百円の労働者が、業務上の災害で両眼盲になつた場合の障害補償額は一時拂いならば四万二百円、これを六箇年の分割拂いにいたしますと、年に七万二千円を受けられますけれども、元兵の両眼盲の場合は年に六百四十円、現状はそうであります。これだけの違いがあるのであります。そこで傷病恩給が非常に低額であるということにつきましては、それぞれの関係方面で目下御檢討になつておるようでございます。四に書いてありますように、傷病恩給の増額のためには、この決定の基準となつた厚生年金保險法の業務上の障害年金及び障害手当を増額することが先行しなくてはならない。すなわち昨年八月三十一日以前、すなわち九月一日以後は、労働基準法によりまして非常に高額な手当が受けられますが、八月三十一日以前はそれが受けられないのでありますから、八月三十一日以前の業務上で障害を受けた労働者及びその遺族に対して、現在支拂つている低額の障害保險金を増額する必要がある。これができれば傷病恩給の増額はそれに関連してできる可能性があると考えます。これは恩給局の方もそういうお考えのように聞いております。そこでこの厚生年金法はどこがやつておるかと申しますと、厚生省の保險局の方でやつておるのでありまして、保險局の厚生年金課が主務のように承つております。厚生年金課としてもこの厚学年金法の過去のものにさかのぼつて改正という点について、ただいま御研究中のように聞いております。以上大体傷病恩給関係につきましては私の方の答弁を終りたいと思います。  次の問題は、終戰後傷病者処遇の問題をお尋ねであります。その点につきましては次の資料を見ていただきます。終戰後のものも終戰前のものも、現在は同一に取扱つておられると思います。すなわち死亡者につきましては、院族埋葬費の三百十円だけ。また傷病者につきましては、治療費は原則として有料、また傷病恩給は現在の低額の傷病恩給をやるということになつております。そこでこれについてのいろいろ私どもとして考えておりますことを御参考までにここで申し上げたいと思います。その第一は連合軍指令、先ほど前の研究資料に書いてあります指令でありますが、これは軍隊勤務の理由による者の恩給が停止になつておるのであります。しかしながら終戰後の軍人、軍属の状態を考えてみますと、なるほど軍人という身分は、殊にこの新憲法の施行まではもつておる。また形も軍隊的の形を、向うの秩序維持の関係あるいは連合軍側の要求によつてそのままもつております。しかしながらその勤務というものは、決して軍隊勤務ではないということははつきり言えると思います。從つて終戰後の旧軍人、軍属の中で、死んだりあるいはけがしたり、病氣になつたものにつきましては、これの恩給というものはこの連合軍指令に直接関係はないのではないか。すなわちこの指令の対象外であるというようにも考えられるのであります。  次は向う側の抑留せられております間の勤務というものは、これは國家の再建あるいは生産の増強というような面から見ますと、直接的にこれに寄與はいたしておりませんけれども、すべてこれは本人の自由意思からきたものではありません。また受けた災害、すなわち死んだりあるいはけがしたり、病氣になつたものにつきましても、これは本人としては不可抗力のものが大部分であります。從つてこれは勤務上の災害である、こう見てやるべきではないかと考えます。この点につきましては、現在の傷病恩給傷病者に対して適用をせられております。特に議会の方で恩給局の方にいろいろ御要望になつた結果というように、私どももありがたく感じておるのでありますが、すなわち終戰後のこれらの傷病者につきましては、公務起因、すなわちその原因は公務であるというように恩給局としても認められて、公務傷病恩給がわたるようになつた次第でありますので、これは全般的に勤務上に起因をしておるということを言つてもよいではないかと考えます。  それからこういう災害を受けた人に対する補償というものについて考えますと、將來あるいは講和会議その他のときにおいて、損害賠償というような形式で取扱われるようになるかもしれませんけれども、それはいつのことかわかりません。現に災害を受けた人は困る。またその家の遺族も現に困つておるのであります。また思想的方面から見ましても、いろいろと問題があるのではないかとも考えますので、國、國民政府といたしましては、これをこのまま放つておくということはまことに忍びないことではないかと考えるのであります。  次は身分的にこれを見ますと、軍人は新憲法施行まではあります。すなわち軍人としての公務員であります。また新憲法施行後においても、現在公務員の一つとして認められております。但し恩給法というものからは軍人というものは除きましたために、現在恩給法上の公務員ではないわけであります。そこでこれらの処遇を何とか改善をしていただきたいというのが、私どもの熱願するところであります。  その案としましては、まつたくの意見試希でありますが、その一、二をあげてここに掲げておきまして、その第一は一般恩給法を適用する案であります。これは先ほどから申しますように、連合軍側指令の対象ではありませんので、これを公務員と認め、その死んだり、けがしたり、病氣になつたことを公務によるものと認めるならば、一般の恩給法を適用しても差支えないではないかというようにも考えられるのであります。しかしながら現在の恩給法の公務員の中からは除いておりますから、これに適用さすためには特別の法律が要ることになります。第二の案といたしましては、労働基準法及び厚生年金保險法を適用させる案であります。これは昭和二十二年すなわち昨年の九月一日以後、すなわち労働基準法の施行以後につきましては、労働基準法を基礎としてできました政府職員に対する公務災害補償法を適用さしていただいたらどうだろうか、この点につきましては大藏省側、すなわち政府側といたしましても、大体適用していいじやないかという考えのもとに進んでおりますが、まだ連合軍の了解は得ておりませんので、これと折衝中であります。これを受けられるようになりますれば、傷病者手当、すなわち傷害補償というものは格段とよくなりますのみならず、死歿者に対しましては現在何もありませんけれども、この遺族補償というものを受ければ、平均賃金の一千日分を受けられることになるので、これはまつたく飛び拔けてよくなつてくるわけであります。九月一日以後の分につきましてはそういう方法がありますが、それでは八月三十一日以前、すなわち終戰後から昨年の八月三十一日までの間に傷病した者に対しましては何とか方法がないか、こう考えるのであります。これは公務員として適当な該当の法令がありませんので、やむを得ませんから一般の傷病者に対する厚生年金保險法というものを、これに適用してもらつたらどうだろうか。先ほども申し上げましたように、一昨年遺族の、死亡者に対する恩給がなくなつた場合に、厚生年金保險法を何とか適用してもらおうということを研究したけれども、結局だめであつたことは先ほど申し上げましたが、これはいわゆる戰爭中の者に対するものでありまして、終戰後の者については、先ほど來申しますように、別個の性格のものでありますから、これに厚生年金保險法を適用することは、筋合上間違いはないじやないか、こういうように考えるのであります。なお厚生年金保險法を直接適用できない場合におきましては、現在の勅令第六十八号、軍人恩給傷病恩給を支給いたしますとともに、これを改正いたしまして、終戰後の公務死亡者に対する遺族扶助料を支給する途を何とか開いてもらう途はないか。こういうぐあいに考えた次第であります。これはまつたく私の試案でありまして、さらにいろいろ御檢討をお願いしたいのでありますが、いずれにいたしましても終戰以後の傷病者というものは、まつたく性格の別のものであるから、何らかの方法によつて見ていただくように、御協力を願いたいと念願するものでございます。長くなりましたがこれで答弁を終ります。  最初の長い表がありますが、これは結局もう一つの表と照らし合わせていただきますとわかりますが、長い表の方はたとえば死んだ場合、あるいはけがした場合は、一体どれぐらいのものをもらうようになるかという、細部の事項まで書いてあります。その点あとでひまな時にでも見ていただけばありがたい仕合せと思います。
  29. 若松虎雄

    若松委員長代理 この際厚生省の社会局の方にお伺いいたしますが、傷病恩給の合理化のために、厚生省では厚生年金の改正の意向がありますか、どうでしようか。
  30. 大山正

    ○大山説明員 ただいま保險局の関係の係官が見えておりませんので、私から詳細申し上げることができないのでありますが、私どもが承つておりますところによりますれば、ただいま復員局の方からお話がありましたような次第で、厚生年金保險法の方を改正いたしたいと考えて、目下関係方面と折衝中であるように伺つております。
  31. 若松虎雄

    若松委員長代理 重ねて伺いますが、もしか改正されるとするならば、過去にさかのぼつて適用されるつもりであるかどうか、また改正案は第二國会に御提出になる御意向かどうか、また提出されるとすれば、これに要する予算はどのくらいのものになるか、承つておきたいのでありますが、なお先ほど承つたところによれば、終戰後抑留中に災害を受けた人たちに厚生年金保險法を適用するということが一つの重要な問題になつておるように考えられますが、この点はいかがでありましようか。もしわかりますればできるだけ今申し上げた点にふれて御答弁いただきたいと思います。
  32. 大山正

    ○大山説明員 第一点の過去にさかのぼつて改正するかという点は、もちろんその考えによりまして案が進んでおるように伺つております。それ以下の点については私ただいま詳細に答弁できませんので、いずれ機会がありましたならば担当の保險局の方から御答弁をいたします。
  33. 若松虎雄

    若松委員長代理 次に恩給局長にお尋ねいたしますが、厚生年金保險法がかりに改正されるといたしますと、傷病恩給もこれに伴つて増額できるように思いますが、実際はどうでありましようか。傷病恩給に関する法律の改正案も厚生年金保險法と同時に、これに併せて第二國会にてされる用意がありましようか、またそれに必要なる予算はどうなつておるか、御説明を願いたいのでありますが、先ほどから問題になりました終戰後抑留中に起つた災害による傷病者恩給法を適用することについてのお考え並びに死亡者の扶助料の支給ができるように、勅令第六十八号を改正することについてのお考えを併せて承りたいのであります。
  34. 三橋則雄

    ○三橋政府委員 第一点の厚生年金保險法が改正せられまして、過去の年金受給者の金額が増額された場合においては、傷病軍人に対する恩給の増額ができるかどうかという御質問に対しては、増額に関する厚生年金炭險法の改正法律案がどういう法律案になるか、これもまだ見きわめておりませんので、はつきりしたことをここど申し上げることもできかねますが、連合軍の最高司令部から日本政府に発せられました覚書の線に沿うて、厚生年金保險法による傷害年金が増額せられました場合においては措置いたしたいと考えております。從いましてこれに関する法律案を國会に出しますとか、あるいはまた出します場合における恩給の予算の金額はどれくらいになるかということにつきましては、まだ十分の檢討をするまでに至つておりません。御了承を願いたいと思います。  第二点の、終戰後連合國側に抑留されていた軍人の処遇の問題につきまして、これらの人々の中に傷病者あるいは死亡者に対して、一般恩給法を適用したらどうかということにつきましては、これは私は相当困難な問題じやなかろうかと考えております。現在未復員の軍人に対しまして、恩給法上のとりあえずの処置としまして、軍人に準じた取扱いをいたしておりますけれども、これを拡げまして恩給法上の公務員とするためには、いろいろ檢討、研究を要する問題が少くないと考えておりますから、今ここではつきりと適用し得ると明言することは、ちよつと躊躇せざるを得ない実情でございます。
  35. 若松虎雄

    若松委員長代理 なおこの際引揚傷病者処遇の問題の一つとして、最近やかましい國立病院の入院患者の有料問題につきまして、厚生省の方に確かめたいと思います。この問題について本委員会や厚生委員会で論議されたこともあるのであります。現在は入院傷病者の療養費はどうなつておりますか。無料となつていますか。実情を御説明願いたいのであります。生活保護法を適用するという説明を以前に伺つたのでありますが、これはどう考えても合理的でない、何とか方法がなかろうかと思うのでありますが、この点厚生省医務局の方から御説明を願いたいのであります。
  36. 加藤直市

    ○加藤説明員 國立病院、療養所の有料問題につきましては、この前の國会でも御審議を願つたわけでありますが、國立病院、國立療養所が一般國民の医療に開放いたされまして、特に傷痍軍人、軍属に対して優先的な取扱いができなくなつたのでございますので、生活困窮のために医療費を拂う途のない者は、生活保護法の適用を受けるように今でもいたしております。ただ実際に引揚げてこられまして、生活保護法の適用のありますまでの期間は病院、療養所とも減免の規定がありますので、つとめてそれを適用するようにいたし、実際上経済的な問題で医療が受けられないということのないように努めておるのでございます。
  37. 若松虎雄

    若松委員長代理 傷病者処遇の問題につきましては、私からお尋ねすることは以上でございますが、なお委員各位から御質疑なり御意見があればどうぞ。
  38. 成田知巳

    成田委員 これに関連してお尋ねしたいのですが、特に今傷病者の方が多いのですが、引揚げてきて職がない場新、普通内地の労働者でしたら過去一箇年以内に六箇月以上働いておつたという條件によつて失業手当法並びに失業保險法の適用を受ける。ところが外地にいた者は強制労働に從事しておつたにもかかわらず、そういう事實がないために、働いていなかつたという見透しのもとに失業手当法、失業保險法の適用を受けられないのではないかという氣がするのですが、ただいまの政府の御答弁にあつたように、これを公務員と考えましたら、やはり一應仕事に從事しておつた者と見て、失業保險法の適用をさせてしかるべきだと考えておりますが、その点について後ほどで結構ですから御答弁願いたいと思います。
  39. 若松虎雄

    若松委員長代理 今関係の方がお見えでありませんから、伺つておいて、あとで御答弁いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時四十八分散会