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1948-07-02 第2回国会 衆議院 運輸及び交通委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月二日(金曜日)     午前十一時三十三分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 前田  郁君 理事 島上善五郎君    理事 佐伯 宗義君 理事 高瀬  傳君       大澤嘉平治君   小笠原八十美君      岡村利右衞門君    尾崎 末吉君       田村 虎一君    中野 武雄君       前田 正男君    増田甲子七君       井谷 正吉君    川島 金次君       佐々木更三君    重井 鹿治君       島田 晋作君    館  俊三君       志賀健次郎君    橘  直治君       原   彪君    矢野 政男君       飯田 義茂君    堀江 實藏君  出席國務大臣         運 輸 大 臣 岡田 勢一君  出席政府委員         運輸政務次官  木下  榮君         運輸事務官   加賀山之雄君         運輸事務官   三木  正君         運輸事務官   藪谷 虎芳君  委員外出席者         專門調査員   岩村  勝君         專門調査員   堤  正威君     ————————————— 本日の会議に付した事件  國有鉄道運賃法案内閣提出)(第七七号)     —————————————
  2. 川野芳滿

    川野委員長 会議を開きます。  これより國有鉄道運賃法案を議題として討論に入ります。討論はこれを許します。前田郁君。
  3. 前田郁

    前田(郁)委員 私はこの機会において、國有鉄道運賃法案に対する民主自由党修正案要旨を述ぶるとともに、わが党の本問題に関する所見を申し上げたいと存じます。  わが民主自由党修正案要旨は、旅客運賃現行運賃の十割増とし、特に学生定期はすえおき、普通定期は五割増とする、貨物運賃現行運賃の二十割増とするというのであります。法案第三條第一号中「百五十キロメートルまでは一円二十五銭、百五十キロメートルをこえる部分は九十銭とする。」とありますが、これを「百五十キロメートルまでは七十銭、百五十キロメートルより五百キロメートルまでは五十銭とし、五百キロメートルをこえる部分は三十銭とする。」と改めるとともに、別表第一、第二及び第三中所要の修正をするものであります。  政府原案によりますれば、旅客貨物とも同率の二十五割の値上げをせんとするのでありまして、その理由としては、旅客貨物とも現行運賃戰前に比して同じく約二十二倍になつておるにすぎないから、今回は右率値上げをすることとしたと言つておるのでありますが、右のごとき主張は、單に数字のみに基礎を置いたはなはだしき暴論であつて旅客貨物ともに一挙に二十五割の値上げは、直接に國民生活に非常なる重圧を加えることとなるのみならず、いよいよインフレの高進に拍車をかけ、國民生活を破局に追いこむものと断ぜざるを得ないのでありまして、吾人の絶対に反対せざるを得ないところであります。  旅客運賃については、生計費の大部分飲食物費に充てざるを得ない今日において、運賃大幅値上げ國民生活重圧を加えることを否定することはできないと考えます。特に定期値上げは、勤労階級生活に甚大な影響を及ぼす結果となり、政府原案のごとき高率値上げは、近距離旅行については戰災後、都市生活圏の拡張に鑑み、郊外生活者生活をはなはだしく困難に陷らしむるものであり、また中距離以上の旅行については禁止的値上げと言うべきであります。  政府予算面において、旅客收入につき値上げによる五%の利用減を見込んでいることは、右の事実を政府みずから是認するものであると言わなければならないのであります。わが党としては生活費國民所得、三千七百円賃金ペースとの関係を考慮いたまして、旅客運賃は從來に比して運賃負担の過重とならない限度の十割増の値上げが最も妥当であると考えたのであります。  なお学生定期については、前申し上げた理由学生生活を保護するため、これをすえおきとし、普通定期については、大生活圏内生活する勤労大衆負担をなるべく軽からしめるため、これが値上げは五割増に止めるを適当と考えるものであります。  次に貨物運賃については二十五割の値上げをするも、なお物價中に占める運賃割合戰前に比して低位にあると言われるのでありますが、よし運賃物價のうちに占める割合は、その個々について見るときは低いとしても、関連資材の價格中に占める運賃を合算すれば、雪だるまのごとく運賃は増加するのでありまして、運賃値上げ物價影響するところは少くないと考えられるのであります。また鉄道運賃値上げ伴つて小運送、荷役等関連運賃引上げも必ず行われるのでありまして、これらを合算した輸送費物價に占める割合は、はなはだ大であると言わねばならないのであります。しかもやみ物價運賃引上額以上に騰貴するのでありますから、心理的作用も加わつて貨物運賃高率引上げはいよいよインフレ拍車をかけるのは必至であります。これらの点を愼重に考慮して、貨物運賃値上げをなるべく低位に止め、二十割の値上げをもつて最も妥当なものと判断し、ここにこの修正案を提出することとした次第であります  なおわが党といたしましては、この修正によつて生ずる收入不足三百一億円の補填は、國鉄現状に鑑み、貨物増送による増收、私鉄賣却、不用財産賣拂い、経営合理化の徹底、二十五割値上げの場合の收入減削除、その他冗費の節減をはからしめること等によりまして生ずる予算節約、もしくは收入額八十一億円、修繕費中のレール、枕木、通信、電力施設等、財産とすべきものを生産公債によつて賄うこととし、右公債額四十億円を除きなお不足額百八十億円は、一般会計よりの繰入金増額によらんとするものであります。  以上がわが民主自由党修正案要旨であります。何とぞ各位の御賛同を得たいと存じます、(拍手
  4. 川野芳滿

  5. 佐伯宗義

    佐伯委員 私は社会党並びに國民協同党及び民主党の共同提案といたしまして、本案に対し、その内容に以下のごとき修正を加えんとするものであります。  今回の國有鉄道運賃値上げは、政府案によりますると、旅客並びに貨物とも約三倍半でありましたが、貨物運賃原案通り三倍半といたしまして、旅客運賃値上げにつきましては基本賃率を約二・五五倍として、その端数を整理しまして、次のごとく修正したいのであります。普通旅客運賃は一人一キロにつきまして百五十キロまでは九十銭、百五十一キロ以上は六十五銭とせんとするのであります。從つて法案の第三條を左のごとく修正せんとするのであります。第三條「鉄道普通旅客運賃は、左の各号の定めるところによる。一、三等の賃率は、営業キロ一キロメートルごとに、百五十キロメートルまでは一円二十五銭」とあるのを、「九十銭」「百五十キロメートルをこえる部分は九十銭」とあるのを「六十五銭」とする。「一、二等の運賃は三等の三倍、一等の運賃は三等の六倍の額とする。」次にこの修正のために旅客運賃改正の手続が遅れますので、改正貨物及び旅客運賃実施期日を別々にする必要が生じましたので、第十條を以下のように修正せんとするものであります。第十條「この法律施行期日は、公布の日から七日」とあるのを、「二十日をこえない期間内において」また「政令でこれを定める。」とありますのを「各規定につき政令でこれを定める。」かように修正を加えんとするのであります。  かくのごとく修正を加えんといたしましたる理由といたしましては、御承知通り旅客運賃が三倍半、並びに貨物運賃の三倍半という政府提案は、われわれの調査によりますと、貨物運賃はまつたく適当であるという結論に到達したのであります。その理由といたしましては、幾多政府員説明をしておりまするが、特に基準年次昭和九年から十一年までにおけるところの國民所得に対する國民鉄道運賃担率と申しまするのが、昭和十一年の基準年度におきまして一・七%となつておるのであります。今回の三倍半の運賃値上げちようどその率と同率になつておるのであります。この点はいろいろ政府はこれとは異なる案をもつておられまして、ちようど貨物賃率という点から推されまして、五倍ぐらいが適当でないかという御説明がありましたが、わが党といたしまして、われわれの考えにおきましては、國民所得日本の國の全生産力生産総額に対しまして、貨物運賃占むる割合がいくらかということが、最も公平妥当だと考えられましたので、この三倍半が最も適当なりとされたのであります。  次に旅客運賃におけるところの三倍半は、これは二、五五倍が最も妥当であるということにつきまして、御説明を申し上げたいと思います。この点は、政府は御承知通り三倍半を、運賃の占める國民生計費割合は、基準年次同率だと御説明しておられるのでありますが、われわれは國民所得におけるところの運賃比率同一でなければならぬ、こういう見地に立つて調査いたしました結果、政府提案におきましては、ちようど基準年次の二・一%というのが、今回は三・九%に当つているのであります。これは非常に高過ぎるのでありまして、從つて國民負担に應じられないだろう。もつともこの基準年次同一比率にいたしますと、ちようど一倍半となるのであります。かようにわれわれは根拠をその点に置きまして、政府提案修正せんとするのでございます。ただ概念的におきましては一倍半が非常に高いような感じは起しますけれども、わが國の健全財政の堅持、インフレ克服においても、あながち、運賃が高いことがインフレを促進するゆえんではないのでありまして、要するにおのおのの経済の実態に即した自立経済それ自体こそ、インフレ克服最大の原因になると信じているのであります、現在におけるところの國有鉄道は、まつたく数百億円の赤字財政をもつているのでありまして、この赤字なるものは、それを一般会計の、國民の別個の徴税によるところの負担をもつて運賃に補助をせんと欲しますることは、かえつて経済を跛行的ならしむるものでありまして、國有事業でありましても、企業でありまする限りには、これは独立採算制を堅持するのは当然のことと思うのであります。独立採算制を堅持いたしますにつきましては、その事業が本來もつている経済力を発揮しなければならないと私は考えるのであります。從つて國有鉄道がいたずらに高い運賃を掲げましても、結局國有鉄道経済力がみずからもつている本來の價値以上の要求は、決して期待するごとき結果を生じません。その点におきまして三倍半ないし四倍の値上げは、いたずらに数字の羅列に終りまして、総收入においては減ずるであろう、かように私は考えるのであります。この二・五五倍というものは、われわれ利用いたしまする一般旅客が、その利用いたしました價値に対する正当な対價であると信ぜられるのであります。かような見地に立ちまして、今回の修正なるものは、國有鉄道本來の性格に鑑みまして、健全財政の一環として、將來この線に沿つて鉄道当局にあらゆる角度から経営合理化を要請せんとするのであります。もちろん今回これによりまして生ずるところの損害金は、現在百億の一般会計繰入れ以外に、なお二百億に余るところの厖大な繰入れを要するのであります。この点につきましては、國有鉄道当局におかれましては、石炭の非常に不当な負担に重点を置いておられますけれども、もちろんこの点はいうまでもないのでありますが、なお私どもの見るところによりますと、より以上に経費節減をする点が多々あろうと思うのであります。しかしながら敗戰後のわが國を建て直しますにつきましては、それは將來のことでありまして、現実の問題としては何としても日本全國におけるところの全産業、全経済に現われておる現象といたしましてはやむを得ない一つの段階が考えられますから、この点からいたしまして、今回の三百数十億円の損害なるものは逐次これを補填せられまして、そうして本当の收支パランス合つた経営鉄道当局がなされるようにという要請を、われわれは徹底的にせんとするのであります。かような理由におきまして、この修正案を提出いたす次第であります。御賛成を願います。
  6. 川野芳滿

  7. 川島金次

    川島委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま佐伯君から提案になりました運賃修正案に対して賛成をいたすものであります。ただこの機会修正案賛成するにあたりまして、わが党が主張いたしてまいりました態度を明確にいたしておきたいと思うのであります。  政府昭和二十三年度の予算編成にあたりまして、おおむね企業赤字を補償し、一般國民の、殊に勤労大衆生計赤字克服するためにとつてまいりました予算編成の方針は、もつぱら物價改訂並びに特別会計におけめ鉄道逓信料金改訂にのみ、その主点を置いたということ、この考え方に対しては、わが党といたしましては必ずしも賛成いたしかねる点が多いのであります。殊に國鉄料金國民経済に及ぼします影響重大性に鑑みまして、同時に一方、政府が今度とりました賃金改訂にあたりまして、三千七百九十一円というこのベース問題自身においても、わが党は必ずしも賛成いたしかねておる点があるのであります。しかしながらこの三千七百円ベースについて、われわれ党の立場においてこれが徹底的な檢討を加えますことは、ひいて一般会計並びに特別両会計にわたつての全面的、根本的な修正を必要とするという結論になる事柄に鑑みまして、そのことはやがて予算の全面的な成立に必常な時期を要することになるのでありまして、そのためにかえつて現実國民経済に及ぼすところの影響の甚大なる点に鑑み、わが党といたしましては、この三千七百九十一円という賃金ベースは、暫定的予算單價といたしまして、これを一應了承するという建前に立つておるのであります。本來でありましたならば、政府の言明しておりまするがごとく、昭和二十二年度の日本財政経済現状に鑑みまして、一箇年間一千二百億円の赤字を背負わなければならないということが言明されておるのであります。もしこの千二百億円の赤字克服の基本的な態度において、われわれの考えております点と同樣の態度政府がとりますならば、あえてここに倉皇として物價料金改訂をせなくても、完全に財政経済並びに國民生活の均衡をとり得る確信をわれわれはもつておるのであります。この点につきましては、いずれ本会議において総予算修正案賛成の場合において、わが党の同僚から具体的な趣旨の言明があろうと思いますので、この点はこの機会には省略いたします。とにもかくにもわが党といたしましては、以上のような基本的な態度に立つて、この鉄道運賃改正法に臨んでまいつてきた次第であります。本來でございますれば、冒頭に申し上げました企業並びに家計の赤字克服の政策として、わが党の基本的な立場からいたしますならば、この鉄道料金値上げ等のごときも、少くとも二倍程度に止め得べき性質のものであるということをわれわれは確信しておるのであります。しかしながらわが党といたしましては、冒頭に申し上げましたごとく、基本的な前提が、賃金ベース改訂には非常なる時期を必要とし、そのためには予算の一時的不成立という事情を勘案いたしまして、それから來る國民経済の不安と混乱とを最小限度に止めたいというこの観点に立ちまして、できるだけ本予算は速やかに成立せしめたいという考え方も、わが党の基本的な態度であつたのであります。從つて予算の全面的な成立を予期いたしまするがためには、民主的に國会の多数を有する與党、すなわち三派の間においてできるだけわが党の主張に近いところの妥結点を見出すことに、最大、最善の努力を傾注いたしたのであります。その結果といたしまして、貨物運賃の三・五倍の案は、これは今日の國民経済と同時に、日本全体の財政内容とに鑑みまして、これを一應了承するということに決定いたしたのであります。  さらに旅客運賃の問題に至りましては、前提條件を満たすならば、旅客運賃はおおむね二倍で事足りるとの確信をもつておるのでありますが、ただいま申し上げましたような事情に鑑みまして、二・五倍案を主張したのであります。けれども、ただいま申しましたごとき三党の妥結点を見出すための契機といたしまして、眞にやむを得ざることなりといたしまして、旅客運賃倍率二・五五を承認するに至つた次第であります。しかしながらわれわれ日本社会党といたしましては、鉄道特別会計内には未だ合理的ならざるものの要素が、少くとも多分に含んでおるという考え方をもつておるのであります。殊に運輸省を中心として設立されておりまするところの外郭團体性格、あるいわその外郭團体が行つておりまする事業の運営の実情、あるいはまた外郭團体運輸省との間における、必ずしも満足といえない纏綿したいろいろの実情をわれわれは聞知いたしておるのであります。この意味において運輸省は、本日からでも決して遅くはないのでありますから、この面に向つて十分なる再檢討を行い、いたずらなる從業員の馘首ということを前提といたさないところの國鉄自身、並びに國鉄外郭團体の再檢討をいたしまして、一日も速やかにこれが合理化を実現すべきであるということは、われわれが強く主張いたしておきたい点であるのであります。  次に、この機会運輸大臣に特に申し上げておきたい事柄は、われわれの主張いたしました定期運賃の問題は、これまた前提に申し上げました條件が整いますならば、党といたしましては、旅客定期のごときは少くとも五割程度で食い止めるべきであるという基本的態度をもつておるのであります。しかしながらわが党が二・五五倍というこの基本倍率を承認する以上は、運輸当局において今後その法律実施にあたりましては、少くとも定期旅客運賃にいろいろの端数が生ずる場合におきましても、われわれが承認する二・五五を断じて超えないという、この基本線だけは嚴守をいたしてもらいたいということを、嚴に強く要望いたす次第であります。  さらにまた該法案八條に「全体として國有鉄道の総收入に著しい影響を及ぼすことがない運賃又は料金の軽微な変更は、」というきわめて抽象的な法文がここにあるのでありますが、この点についても運輸大臣考え方いかんによりますと、この法の精神がややもすれば生かされないという事態が生ずるのではないかという心配を、われわれはもつておるのであります。そこで私どもは特にこの点も重ねて運輸当局に強く要望いたしておく次第でありますが、この第八條法文の本來の精神を必ず貫徹すべく、運輸大臣は明確な態度を、この機会に最後でよろしいのでありますから、示しておいていただきたい。そういうことをわれわれは前提といたしまして、ただいま佐伯君から提案になりました修正案に、万やむを得ざることとして賛意を表する次第であります。(拍手
  8. 川野芳滿

  9. 飯田義茂

    飯田委員 今提案になつておりますところの國有鉄道運賃法案中の値上げ問題でありますが、この運賃値上げに対しましては、國民たれ一人といたしまして望むものはないと思うのであります。國民協同党といたしましても、現行運賃でいけるならば、これに越してのことはないのでありまして、この点については相当審議を重ねたのでありますけれども、今日の日本経済状態から見まして、その理想的希望ということはとうてい許さないのであります。そこでやむを得ずいたしまして、ただいま修正案佐伯君より出されましたが、國民協同党といたしましても、やむなくこの修正案賛成をしなくてはならないのであります。各委員よりいろいろの御説明がありましたから、私は重複を避けまするが、ただ私はここに政府希望を附したいのであります。  戰時中はやむを得ないといたしましても、終戰後國鉄の貨客輸送状態はいかがであつたでありましようか。むろん修理その他いろいろの物資の欠乏もありますけれども、幾多の事情に対しまして、國民國鉄に対して満足をしておつたでありましようか、ほとんど私は満足したものはないと思います。のみならずのろいの的となつてつたような時期もあつたのではないかと思うのであります。政府は今回大幅の運賃値上げ提案せられまして、いろいろ理由は拜聽いたしましたが、今後輸送向上をはかるとともに、國民に対して大いにサービスに重きを置くということをしばしば言明せられたのであります。このサービス問題は第一回國会におきまして、片山内閣当時の値上げのときにも、関係大臣はこのことは力説せられたのでありますけれども、一向にそれに基いて行われていないと思うのであります。それで今回政府におきましても、國民に対するところのサービスということにつきましては、大いに注意を拂つてこの公約を実行してもらいたいと思うのであります。私どもの見る目からいたしますと、國鉄というものは、大臣にしましても、また事務的、技術的現業者一丸のものだと思うのであります。ゆえに関係者は一体となりまして、今政府が申されます通り輸送向上サービスに対して公約通り実施せられんことを希望いたしまして、佐伯委員修正案賛成するものであります。(拍手
  10. 川野芳滿

  11. 高瀬傳

    高瀬委員 私は今回付議されました國有鉄道運賃法案に対しまして、二つばから修正意見を提出するものであります。  すなわち、第一條第二項を削除したいのであります。第一條第二項には「前項の運賃及び料金は、左の原則によつてこれを定める。」という趣旨のもとに四つ條項があげられております。すなわち「公正妥当なものであること。」第二番目には「原價を償うものであること。」第三番目には「産業の発達に資すること。」第四番目には「賃金及び物價の安定に寄與すること。」この四つであります。これらの原則は、今回の運賃値上げ審議に際して種々討論いたしましたが、私の見まするところでは、國有鉄道國家によつて運営され、しかも國家官吏によつて管理されておる以上、これらの原則は当然の原則であり——ここにあげても何ら害はない程度だから、あげてもいいではないかという議論もありましようが、私はこんなくだらない原則をここにあげても、いわゆる羊頭を掲げて狗肉を賣る式のものになつて法律としては全然必要がないという建前のもとに、この條文からこれを削除することを提案いたします。鉄道國家官吏によつて、非常に注意深く、また行き届いて管理されておる以上、運賃値上げの場合、あるいはその他のことについて、これらの四原則がとられることは当然でありますから、かくのごとき蛇足的な條項は不必要なりと考えます。從つてこの四つ條項削除提案いたします。  なお第三條第一号中の賃率でありますが、「一円二十五銭」とあるのを「七十銭」に、「九十銭」とあるのを「五十銭」に改めるわけであります。すなわちこれは旅客二倍、貨物三倍、学生定期すえおき——これは運輸大臣の権限に属しておりますが、学生定期はすえおき、それから一般定期は一倍半、こういうような値上率を私は提唱いたします。今回提案せられましたこの政府の三倍半という原案に対しまして、その態度の決定を一昨日まで見なかつたのは、私どものはなはだ遺憾とするところであります。三倍半については、私どもは何ら合理的な理由が発見できない。しかもそれに対するわれわれの反対意見は、先ほど自由党前田委員よりお話がありましたことくでありまして、私どもは大体同じような考えをもつております。從つてわれわれは、單なる收支会計を合わすという——独立採算制を支持するの余りに、國民生活を圧迫し、インフレを非常に高騰させ、また勤労大衆実質賃金を削るがごとき傾向を助長する今回の運賃値上げには、賛成できないのであります。おそらく政府提案のごとくでいけば、すでに怪しくなつておる三千七百円ベースは維持できない。また独立採算制前提である経営合理代経費節約のごときは、約十六回の委員会において、大臣政府委員よりわれわれは説明を聽取いたしましたが、何ら納得すべき点がないのであります。しかもかくのごとき重大な法案が、一体閣議において旅客貨物とも三倍半という決定を見たにかかわらず、一昨日までこれが與党間において決定を見なかつたということは、われわれはまことに意外とするところでありまして、昨日もこの委員会において討論終結を見るはずでありましたが、與党の出席がないために、本日にもち越された。おそらくこの運賃の決定が政治的に利用されるから、議会に付議するのは反対であるというのが、運輸当局の腹でありましようが、絶対に與党側さえはつきりしておれば、かくのごとく時間を遷延し、六月十五日の値上げ予定なのが、七月十五日も怪しいというような、かくのごときくだらぬことは起きなかつたろうと私は思うのであります。從つてどもはこの運賃値上げが遅延しましたことによつて生ずる赤字は、政府が当然考慮すべきものとして、私は討論の基準には置いておらないのであります。なお結論としまして、國民は何ら独立採算制のモルモツトになる必要はない。結局独立採算制を維持するために、國民がその犧牲になる必要はないということを重ねて強調いたします。  しかして私どもは提出されました今回の総予算、約四千億の予算に対して、二割天引を主張いたしております。それはそれによつて約七百二十億を節約いたしまして、行政整理、あるいは官廳費の節約、取引高税の廃止、あるいは事業税の廃止、所得税の軽減、運賃修正、そういうような点をわれわれは考えております。必要なる六・三制であるとか、災害復旧費とか、そういうものは削除いたしませんが、総予算のわくを縮めることによつて、約七百二十億の経費節約を提唱いたします。從つてこの鉄道に対する財源の点について、一言触れたいと思いますが、本年度の経費中おもなるものは人件費が三百四十九億、物件費が五百六十億、このうちに石炭費が二百四十六億、百七億が物價改訂によつて二百四十六億になります。その他の経費を加えますと、おもなる経費だけで九百八十一億という巨額に上るわけであります。從つて以上の、われわれの提唱いたしまする旅客二倍、貨物三倍、学生定期券すえおき、定期券一倍半という案によつて旅客貨物の総收入を想定いたしますると、約六百三十五億になるのであります。この六百三十五億のうちその收入と、総経費の九百八十一億を差引いたしますと、赤字が約三百四十六億に相なります。しかし政府は百億この中に繰入れるという予定をしておりまするから、それを差引きまして二百四十六億、この二百四十六億の財源をわれわれは以下のような方法で求めたいと思います。すなわち國有鉄道が非常に重大なる國家産業組織であるに鑑みまして、石炭の面において國有鉄道を重要産業並に指定すべきであると考えるのであります。すなわち特定の消費者たる重要産業の石炭の消費者價格は、千円であります。しかし國有鉄道が使用する石炭は三千百四十七円、これは改訂による價格であります。從つて國有鉄道も石炭の面において重要産業並に指定されるならば、その差額は約百四十億に相なります。これは鉄道が重要産業に指定されることによつて、百四十億の財源を節約することができます。なおこの鉄道の九百八十億の経費のうち、私は天引一〇%の節約を提唱いたします。この中には行政整理その他を含むことはもちろんであります。そのほかに無賃乘車証の整理、あるいは構内営業、廣告料金の合理的増收策、または不用資材、施設物件、その他の特殊物件の拂下げというような積極的な方法によつて、約二十五億は十分増收の見込みがあると思います。かようにいたしますると、いわゆる余つてつりがまいります。そういうわけで、私はかくのごとき財源を求めて、結局この修正案を提出した次第であります。  なお最後に、別に私はくどいことを申しませんが、運輸当局に特にお願いいたしたいのは、貨物の点においても、貨物の等級を全然改正せずに、賃率審議しておる点が間違いなのでありまして、昭和十五年に貨物の等級を改正して以來、運輸当局は何ら貨物運賃等級をかえておりません。從つてこの等級をかえることによつて——物價の高騰とインフレの高進をにらみ合わせて、適当に貨物賃率等級をかえるべきであろうという意見を運輸省に提唱いたします。もちろんサービスの改善、経営合理化は、この際独立採算制をとらんとする以上は、当然であろうと思います。  なお一つ、労働組合の協力でありますが、この運賃値上げについて、労働組合は何らの興味をもつておらないようであります。はなはだしきは先般労働組合の指導者によつて、全然運賃改正の必要なしという提案すらされておることは、運輸当局承知されるところと考えます。私はいくらつぢつまだけ合わしても、六十一万の勤労大衆、いわゆる現場の諸君の協力がなくして、國有鉄道赤字を一掃することはまつたく不可能であろうと思います。こういう点について、たとえば労働組合が地区的にストライキができるとか、あるいはダイヤの改正についていろいろ意見があるとか、こういう点はわれわれは非常に遺憾とするところであります。どうぞそういう点につきましても、十分御注意あられんことを希望いたします。國民鉄道として、眞に正しい、いわゆる國民に愛される鉄道をつくつていただきたいために、私はかくのごとき修正案を提出する次第であります。
  12. 川野芳滿

    川野委員長 堀江實藏君。
  13. 堀江實藏

    ○堀江委員 時間が大分遅くなりましたので、きわめて簡單に私の修正案並びに意見を申し述べます。私の修正案要旨は、第三條第一号中「一円二十五銭」とあるのを「三十五銭」に、「九十銭」とあるのを「二十五銭」に改める。別表第一、第二及び第三を改める。貨物賃率のみ〇・五倍の値上げとする。つまり旅客運賃現状すえおきであります。この根拠は、私がここにるる述べる必要もないわけでありまして、國民大衆は、今回の政府の大衆收奪を基礎とするところの厖大な予算に対して反対であり、從つてその根幹をなすところの物價値上げに反対であるという見地に立つものでありまして、物價値上げ反対につきましては、國民の輿論として各地に物價値上げ反対大会があるのは御存じであると思います。こうした物價値上げ日本インフレを促進し、從つて日本経済の再建を妨害していく、日本経済を破滅に陷れる第一歩であるという観点に立つて、この鉄道運賃値上げに対して絶対反対するものであります。この問題の詳しいことは皆さんもすでに御承知通りでありまして、きわめて簡單に結論だけ申し上げたいと思います。  鉄道独立採算制の問題であります。國鉄は戰時中非常に酷使され、そうして戰災を受けておる。こうした際、國鉄の復興をはかるには、独立採算制はとるべきではない。この段階においては國鉄の再建に力を入れるべきである。しかしながら今回與党三派の二・五五倍の値上げにしましても——前の政府原案でも、進駐軍費用でありますとか、あるいは一般行政費を一般会計の経理にやりましても、百億の繰入金が要つた。なお今回の二五五倍の値上げによりまして、今百億見当の一般会計からの繰入れが要るという事実は、独立採算制はとられていないと言えるのであります。そうして政府原案の三倍半、あるいは與党の二・五五倍の値上げにいたしましても、こうした赤字がある今日、値上げをすることは、結局また次の値上げをしなければならないということになると思うのであります。三千七百九十一円ベースの問題を見ましても、すでに三千七百九十一円ベースは崩れて、國鉄労組及び全官公廳が一致して五千二百円ベースを要求しておる。政府原案にしても、與党の二・五五倍にしても、必ず近いうちに崩れて、再び値上げするか、あるいは補正予算を組んで一般会計から繰入れをしなければならないということは明らかな事実である。われわれは物價引上げることに反対し、日本経済を再建するために力を入れておるにかかわらず、安易なる方法によつて物價値上げをする、その一環としての國鉄運賃値上げについては、断固として反対せざるを得ないのであります。  なお國鉄当局に要望しておきたいことは、外郭團体の整理、あるいは経営合理化、その中におきましても土建業者等の請負の関係を公正にし、やみの追放、不用品拂下げの適正、軍拂下げ物資の公正化、そうした点、それからさきにも触れましたように、從業員の待遇をよくしない限りはストライキは起る、労働攻勢は起る。労働者の最低生活の保障なくしては、國鉄の再建というものは断じてあり得ない。そういう点におきまして、行政の整理その他についても愼重に善処されたいということを要望いたしまして、政府原案並びに與党修正案、あるいは各党の修正案に対して反対し、ここに私の修正案を提出するものであります。
  14. 川野芳滿

    川野委員長 討論は終局いたしました。  この際岡田運輸大臣より発言を求められておりますので、これを許します。岡田運輸大臣
  15. 岡田勢一

    ○岡田國務大臣 ただいま御討論中、各委員からお述べになりました國有鉄道経営合理化企業の整備並びに外郭團体の再檢討の点につきましては、御趣旨に副いまして十分努力を盡したいと存じております。  なお高瀬委員のお述べになりました貨物等級表の改正につきましては、物價がもう少しおちつくのをまちまして、檢討いたしたいと存じます。  次に川島委員からお述べになりました法案中の、第八條実施取扱いの上の注意といたしまして、國会で御決定になられます基本賃率の倍数を、操作の上において超えないことということでございます。これも御趣旨に副いまして、さようにいたしたいと存じます。なお対キロ運賃をつくります場合に、ごく軽微な端数の四捨五入は御了承をお願いしておきたいと存じます。  それから特に御趣旨にありました中で、学生通学定期、学生の特定の休暇時における帰省の運賃等につきましては、十分に考慮いたしたいと存じます。
  16. 川野芳滿

    川野委員長 それではこれより採決に入ります。なお念のためにその順序を申し上げます。まず第一に堀江實藏君提出の修正案、次に民主自由党より提出の修正案、次に社会革新党よりの提出の修正案、次に社会党、民主党及び國民協同党の三派より共同提出の修正案、最後に修正部分を除く原案について採決いたします。  まず堀江實藏君提出の修正案について、採決いたします。本修正案賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  17. 川野芳滿

    川野委員長 起立少数。よつて修正案は否決されました。  次に民主自由党提出の修正案について、採決いたします。本修正案賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  18. 川野芳滿

    川野委員長 起立少数。よつて修正案は否決されました。  次に社会革新党より提出の修正案について、採決いたします。本修正案賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  19. 川野芳滿

    川野委員長 起立少数。よつて修正案は否決されました。  次に社会党、民主党及び國民協同党三派共同提案になる修正案について、採決いたします。本修正案賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  20. 川野芳滿

    川野委員長 可否同数であります。よつて國会法第五十條により、可否同数のときは委員長の決するところでありますので、委員長は本修正案賛成であります。(拍手)よつて修正案は決定いたしました。  続いてただいまの三派共同提案による、修正部分を除く原案賛成の諸君の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  21. 川野芳滿

    川野委員長 可否同数でございます。委員長賛成であります。よつて國有鉄道運賃法案は、修正議決されました。(拍手)  なお衆議院規則第八十六條による、報告書作成の件は、委員長に一任するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 川野芳滿

    川野委員長 御異議なしと認めます。さよう決しました。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十分散会