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1948-06-21 第2回国会 衆議院 運輸及び交通委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十一日(月曜日)     午後一時四十五分開議  出席委員    委員長 川野 芳滿君    理事 前田  郁君 理事 佐伯 宗義君    理事 高瀬  傳君       大澤嘉平治君   小笠原八十美君       尾崎 末吉君    中野 武雄君       増田甲子七君    井谷 正吉君       川島 金次君    佐々木更三君       重井 鹿治君    館  俊三君       志賀健次郎君    原   彪君       矢野 政男君  出席國務大臣         運 輸 大 臣 岡田 勢一君  出席政府委員         運輸政務次官  木下  榮君         運輸事務官   加賀山之雄君         運輸事務官   三木  正君  委員外出席者         專門調査員   岩村  勝君         專門調査員   堤  正威君     ――――――――――――― 六月十九日  道路運送監理事務所存続請願大石武一君紹  介)(第一四七三号)  佐田岬突端航路標識設置請願井谷正吉君  外九名紹介)(第一五一一号)  稻荷山、姥捨両駅前間停車場設置請願(坂  東幸太郎紹介)(第一五二七号)  瀧川、濱益間に鉄道敷設請願小川原政信君  紹介)(第一五二八号)  福山貨物取扱場拡張予定地変更請願(平川  篤雄君外五名紹介)(第一五二九号)  北海道植民軌道藻琴線福山より東洋駅まで延  長の請願永井勝次郎紹介)(第一五三〇  号)  二俣、佐久間間鉄道敷設促進請願神田博君  紹介)(第一五七九号) の審査を本委員会に付託された。 六月十九日  高松海運監理部海運局に昇格の陳情書  (第七四九号)  自動車運賃値上の陳情書  (第  七五三号)  伊丹駅に準急行車停車陳情書  (第七七四号)  加古川線播丹鉄道株式会社に拂下の陳情書  (第  七七五号)  門司外陸運局設置陳情書  (第七九二号)  日高、膽振間鉄道敷設工業継続陳情書  (第八二〇  号)  鉄道運賃の値上反対等に関する陳情書外千二百  件  (第八二五号)  宗谷線氷山、比布駅間に停車場設置陳情書  (第八  三六号)  指宿線列車増発並びに山川、枕崎間鉄道敷設等  に関する陳情書  (第八四六号)  運賃平衡に関する陳情書  (第八五一号)  福島、米澤間電化促進に関する陳情書  (第八五四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  國有鉄道運賃法案内閣提出)(第七七号)     ―――――――――――――
  2. 川野芳滿

    川野委員長 会議を開きます。  前会に引続き、國有鉄道運賃法案を議題として質疑を続行いたします。佐伯宗義君。
  3. 佐伯宗義

    佐伯委員 鉄道企業の本質は、大体独立採算制を採用していくことが本來の性格に一致している、こういうようにお認めになるか。またこれは行政的な意味を含めていくべきが経営上最も妥当であるかということに対して、政府当局の御意見をちよつとお伺いしたいのであります。
  4. 加賀山之雄

    加賀山政府委員 今佐伯さんから御指摘になりました点は、確かに私は二途あると考えるのでございまして、そこに必ずそれに伴う一長一短があるというふうに考えております。私どもといたしましては、日本の経済が再建されていきますためには、その再建の基盤である國在鉄道がまず経済的に成り立ち、健全な姿で運営されるということが必須の條件であるというふうに考えますので、つまり経済原則に合うような経営をすることがよいのではないかというふうに考えているわけであります。從いまして独立採算制をとつてその方面に進んでいくということが、なすべきことではないかというふうに考えている次第であります。
  5. 佐伯宗義

    佐伯委員 この問題は、今回の予算の編成並びに鉄道運賃値上問題に対する、われわれ委員といたしましての根本問題になるのであります。独立採算制を本來の建前とするという場合の態度と、あるいはまた國家行政面から見た意義を重大に見ます場合において、たいへんに解釈が異なるのでありまして、少くともこの点に見解を明らかにしてわれわれ委員は審議をしなければならぬと思うのであります。今までのいろいろの質疑應答を見ますると、この点が紛淆しているようでありまして、今の長官お答えのように、独立採算制をあくまでも堅持せられるという立場におかせられますと、一般会計から繰入れるという金の性格——、どういうふうに判断されて一般会計から繰入るべき必要な金が生れてくるかということについてお伺いしてみたいと思います。
  6. 加賀山之雄

    加賀山政府委員 先ほど独立採算制方向に進むべきものであるというようにお答え申し上げましたが、しからばと申しまして、現下経済情勢のもとに、独立採算制を一氣に解決することができるかということに相なりますと、私はそこに非常に多くの難点を見出すものでありまして、この点に関しましては、おそらく佐伯さんにおかれましても、今すぐやれといつても無理であろうということは、お考えになるであろうと考えるのであります。そういう見地から申しまして、方向としてはあくまでも独立採算制方向に行くのではあるが、現下財政経済、産業、そういつたいろいろの事情、並びにそれに関連するところの経済政策なり、あるいは物價政策なり、財政方策なり、そういつたものをいろいろ勘案いたしまして、独立採算制を唱道しつつ、そういつた方策を加味して進んでいくということが、現下情勢として、やむを得ない点ではないかというふうに考えている次第であります。從いまして今回の運賃政策におきましても、純然たる経済法則に即應する政策とは相なつておらないというのも、そういう点からまいつていると私は理解をいたしまして、また皆樣方にもそういうふうに御理解願えないものかと考えている次第でございます。
  7. 佐伯宗義

    佐伯委員 この点は一番むずかしいのでありますが、また最も究めておかなければならない点でありまして、一般会計から繰入れて政府補助を受ける、補給金を受けるということにつきましては、その補給金を受けるところの限界、何らかそこに理由——お話のごとく足らないから補給金を受けるという意味でなくして、それぞれの理由が明らかにならなければならない。独立採算制であります限りにおきましては……。もし理由がなかつたならば、やはり自己整理をする。その理由國家社会のために当然起つてくる支出増であるということや、あるいはまた社会政策のためであるということに基いてのみ、初めて一般会計から繰入れることができるのだと私は思うのであります。ところで、そういう見地に立ちまして、今回は貨物運賃三倍半、旅客三倍半にいたしまして、その不足分は、運輸当局の御説明では、旅客運賃並びに貨物運賃はまだ高いのが当然であるのに、安くしておるから、それによつて起るところの損金政府負担すべし、こういうように私は聽くのでありますが、今回三倍半の運賃値上げをいたしましても、なおかつ改良実施というものを加えてみますると、約二百数十億の損金があるように考えるのであります。この損金なるものは、一般國民が正当に支拂うべきところの貨客の運賃それ自体よりも、社会政策上安くしてやる、それがためによつてつてくるところの損金二百数十億円を國庫負担すべし、こういうことにあるのだろうと私は思うのでありますが、もしそうであるといたしまするならば、旅客運賃ははたして何倍が適当であり、貨物運賃は何倍が適当であるかということについてお伺いしてみたいと思います。
  8. 加賀山之雄

    加賀山政府委員 この補給金の問題、特にこの不足分一般会計負担並びに一部を公債財源によりますことについての御指摘があつたわけでございますが、今言われましたように、六月十五日から政府が提案いたしておりますように、三倍半と三倍半、両方三倍半にいたしまして生じますところの赤字が百億でございまして、そのほかに、今回はいわゆる取替費用的なものを減價償却によつて見ておりません。わずかに帳簿價格減價償却を見ているだけでございますので、そういつたものに充て、なおかつ他の一部の建設、改良をいたしますための百八億、これらを見込みますと、二百数十億になることは佐伯さんの言われる通りであります。しからばこの補給金を受ける限界は百億でなければならぬという、その理由はどうかというお尋ねでございますが、その点に関しましては、結局補給金の額からそう申しますよりは、むしろ物價対策なり、社会政策面なりから、旅客貨物をどの程度負担力と見るのが妥当であるかということから考えるべきではないかというふうに思う次第であります。從いましてまず物價対策中の貨物運賃をとつて考えました場合に、これは明らかに物價構成要素一つをなしておりまして、貨物運賃を上げることによつて物價がある基準を超すという問題が出るわけでございます。たとえば運賃を四倍半なり、五倍にいたしますと、いわゆる安定帶物資價格がその分だけ上まわる。從いましてそれはいわゆる消費者價格を上げるか、あるいはそういつた物資に対する政府補給金を増すかという問題に相なつてくるわけであります。從いまして貨物運賃の場合は三倍半という計算に基きまして、安定帶物資價格構成ができ上り、從いましていわゆる消費者價格が算定され、それによつて政府補給金が定められる。こうい経済をたどるわけであります。一方旅客運賃の方は貨物運賃同率にしなければならぬということはないのでありまして、たまたま今回は三倍半、三倍半、また前回も同率なつたわけでありますけれども、これはやはり旅客負担力限度といたさなければなるまい。從いましてこれに一番関係の深いのは、賃金水準であろうかと考えられるわけであります。從いまして今回引上げ旅客運賃は、賃金水準との権衡が保つているものかどうか、つまり大衆負担力限度内かどうかということが檢討されなければならないと存ずるのでありまして、その点に関しましては、私ども見解といたしまして、相当大幅な値上げではあるが、利用される國民各位にも何とか御辛抱願えるのではないかという限度である。この点につきましては、過日大臣から提案理由のときに御説明なつたところでございますが、かように考える次第でございます。從いまして一方は物價対策、一方はそういう社会政策上の見地から限度をもつてくる。そうしてきめられて、國有鉄道收入をその倍率によつて計算いたしますと、六月十五日から実施できるといたしまして、百億の赤字がなおかつ残る。それではこれを一般会計方面からの補給金とにらみ合わせてどうなるかという問題になつてまいりまして、結局財源的にはこの限度一般会計としても負担し得る、許容し得る限度であるというふうに立てられたのが、今回の対策であります。從いまして言葉をかえて言えば、そういつた運賃政策だけに徹底できなかつた、憾みはあるのでございますが、現下情勢といたしましては、何といたしましても、そういつた財経政策と歩調を合わせ、これと一体として考えなければならなかつたというところに、今回の三倍半、三倍半の理由があるというふうに御了解願いたいと存ずる次第でございます。
  9. 佐伯宗義

    佐伯委員 鉄道企業独立採算制をとるというゆえんのものは、その取入それ自体國家の徴税と異なりまして、外から決定していくら收入があるということは予断を許さない問題でありまして、鉄道自体経済力をもつておる。國家一般財政のごとく外から定められたことにおいて國家財政が賄えるというものでないというところがありまして、それが鉄道経営独立採算制をとらねばならぬ唯一の根本原理であります。從つてお答え運賃を定める場合におきまして、三倍半とか五倍半とかということは、税金と異なつてはたしてその收入があり得るやなきや。これは一つ統計に基く以外には、確定的のものではないのであります。これは、言うまでもないことであります。從つて少くとも鉄道経営支出面は既成的なものであろうと思うのでありますが、それに伴うように收入考えていくというような、確定的な性格をもつておるとは言いがたい。從つて増收になるところの根本というもの、何によつてその基本を定められたかということは、たいへんむずかしい問題になつてまいると思うのであります。今回運輸当局の出されたいわゆる増收予想なるものは、いろいろ過去におけるところの統計を比較されまして、そうして昭和十一年と申しますか、基準年次のあらゆる生計費その他の比較比率とともに、その水準一定のところに置いておられるのでありまして、私どももこの経済状態におきましては、それは的確な頭をもつて判断されるならば、的中すると思われるのであります。しかしながらこの收入面においてどういうところに重点を置いておられるかというと、一人当り賃率について物價上昇率を非常に低いところに置かれておる、であるから、それを基準年次同一比率でいつたとすれば、三倍半にも達し得るのである。こういうような御説明になつておるのであります。また支出方面は、何が正確な基本であるかということの御説明の骨子は、何と言いましても支出の中枢は人件費である。人件費の適正な判断は從來業務量——取扱う旅客貨物に対する人員量に対して業務量が殖えたから、同一比率に基いて人員が必要である。つまり旧來の業務量の三倍になつたから、從つて從事員も三倍になるべきものなりということが、支出根本原則となつておるのであります。おそらくこれ以外のりくつがあれば当局からあとでお伺いしたいと思いますが、要するに收入根本建前といたしましては、基準年次賃率よりも現在の賃率が非常に低いのである。それを同一賃率まで高めることができるのである。こういうことがこの税金の取立てでないところの收入予想根本原則となつておりますし、支出面におきましては、取扱業務量の増加に伴つて同一数量に基く同一人件費が必要である。こういう建前考えられるのであります。ところでこれは私は非常に錯覚を起しておるというように判断されますので、この炭を一、二お伺いしてみたいと思うのであります。いろいろの統計も私は資料として申し受けましたが、收入面におきましてどういうことが矛盾しておるかと申しますと、なるほど賃率は低い。しかしながら利用率が殖えれば、賃率の低いのを高いところまで引上げても減收するという原則は生れてきません。賃率は低いが、当時よりも利用率が三倍にもなつておるということでありますと、大体國民所得並びに國民生計費占むる割合は三倍になつてまいるのであります。今回の鉄道当局の一切の書類を見ますと、その点には少しもふれておらない、申し上げてみますならば、過去におきまして一人が一回鉄道利用した、こういうことから申しまして、その当時は三分の一の安い賃金であつた。だからこれを三倍にしても一人当り負担は増加せぬということになるのでありますが、今回は賃率は安いが、三倍乘つておる。こういうことになりますから、どういう結果になるかと申しますと、今のように三分の一の安い運賃ならば、一人の負担額同一額になりますけれども、これを高くいたしますと、基準年次よりも國民の一人当り交通負担金は三倍になるという関係が生じてまいりますが、この点に対しては、一切の書類がそういうふうにできておらない。そこに今回の三倍半という値上げは、驚くべき狂いを生ずるところのものが含まれておるように私は考えるのであります。これは旅客方面から見たのでありまして、最近地方鉄道におきまして七割五分の値上げをいたしましたが、全國におきましても、これは驚くべきところの減收をしておるのであります。こまかい数字はなるべく避けまして、政治的な大きな問題を当局お尋ねし、また参考にして大いに御善処願つておきたいと思うために、概念的に申し上げておきたいのでありまするが、ちよつと考えてみましても、当時の千六百円ベースが、その後千八百円ベースになり、二千九百円ベースになり、今回は三千七百円ベース予想しておりますけれども賃金ベース上昇率は千六百円ベーす当時より二倍半になつておるのであります。そういたしますと、賃金ベース基本的なものは私は旅客運賃であると思うのであります。この旅客運賃が二倍半まででありまするならば、これを現行の賃率にプラスをしても差支えないが、三倍半になりますると、実際において現在の賃率それ自体から、その間に大きな狂いが生じまするので、私は三倍半の旅客運賃値上げは、正当な判断からいきまして、國民負担から申しますると、二倍半以上の実收を見るという考えは私は誤つておるといす観察をくだすのであります。  それから貨物運賃につきましては、まさに三販半はある程度安いと思います。御承知通りわが國の貨物数量海運並びに自動車その他による機関から、鉄道を轉嫁されたものである。これが値段の相当に安いという事情から、現在のように一億数千万トンに達するのでありますが、この運賃もある一定限度を超しますると、他の機関に轉用されるべき本性をもつておる。鉄道当局は五箇年計画をお立てになつて、一億六、七千万トンお取扱いになると申しておられますがゐそういうときの輸送におきまして、運賃を高くなさつた場合には、他にその取扱数量が轉嫁されるということは当然あることでありまして、現在の数量そのままを確保しつつ、運賃値上げのみにおいて数が減らないというお考え方は、たいへんに誤つておると思うのであります。しかしながら、いずれにいたしましても、貨物運賃の方は、一般物價基礎になるのでありますから、これはいろいろな統計を調べてみますと、四倍半、旅客運賃は二倍半ということが適当であると考えられるのであります。貨物運賃は四倍半ということが、いろいろの基準年次との比率から適合するように思われます。しかしその場合におけるところの損金は約八十億円、この貨物運賃不足分に対しましては、当然これは國家政策上やつておられることでありますから、補助金を仰ぐという意味において、百億の一般会計の受入れはまことに正当なものであると考えるのであります。旅客運賃賃率が低いということから起つてきて、三倍半の收入を確定づけられておるが、私の見ました見地からしますと、実際國民購買力負担力は、三千七百円べースになりましても、二倍半ということならば、総收入を減らさないことになると思います。それ以上になりますと、現在とはふつり合いになる、かように考えられるのであります。この点の反証を何らかおあげ願いたいと思うのであります。
  10. 岡田勢一

    岡田國務大臣 佐伯さんの経営原價から起算いたしますところの運賃倍率、それからもう一つ國民大衆負担力からする、すなわち賃金の方からくる負担力等お話でありますが、佐伯さんのお考えになつておられまする方向からしますると、今言われました旅客二倍半、貨物四倍半というふうなことも一應適当であるということに相なると私は思いまするけれども、ただ今回は前から御答弁を申し上げておりますように、インフレの抑制から、物價相当低い水準で抑えなければならぬという必要から、貨物運賃の方は相当抑制せられまして、三・五倍になつ——その欠陷旅客運賃で補うという考えでは決してないのでありますけれども、あまり大きな赤字になるまするということは、また一般國民全部の方方に相当租税等負担も値わなければならないという関係も考慮いたしまして、先ほど加賀山長官お答え申し上げておりましたように、まずこの程度なら國民負担も願えるのではないか、こういうようなことで政府は決定をいたしましたわけでございまして、その間におきまして、若干政府の内部におきましては、いろいろ異論もございましたが、佐伯さんの所属せられております民主党出身閣僚方々経済閣僚として最も有力な地位をお占めになつておりますその方々も参加せられまして、大体一同がこういうことでいかなければならぬのではないかというようなことで、決定いたしました次第でございますので、その間のいきさつ等につきましては、安本長官なり一藏大臣からお聽きではなかろうかと思うのであります。それはともかくといたしまして、見解の相違になると言えば言えることになると思いますが、まず政府といたしましては、この案を適当なりと考えまして、御笠議に提供いたしました次第であります。政府といたしましては、何とかこの案に御賛成を願いつて通過させていただくことを切望いたしますが、万一國会におかれまして今日の負担力、それから経営採算の面、あるいはまた総合物價調整の面、あるいは國家財政面等から考慮せられまして、何らかの修正を加えられるというようなことになる場合、もちろん立法の最高権威國会にあるのであります、私らといたしましたならば、そういう案が決定されましたときは、その内歩を檢討させてもらいまして、それを考慮いたしたい、こういう考えをもつております。
  11. 佐伯宗義

    佐伯委員 今の私のお尋ねを、たいへん違つたように御解釈になつておられるようでありますが、私は三倍半を惡いというのではないのであります。私の申し上げたいのは、三倍半の收入予想しておられるが、それが予想通り三倍半の收入であるであろうかということをお聽きするのであります。その点を誤解のないようにお受取り願いたいのであります。私のお尋ねは、旅客運賃を三倍半ということは、鉄道運賃國民に対する税金と違うのであるから、三倍半と独断されても、はたして國民がそれだけの利用をしなかつたならば、三倍半が減ずるのではないか、かようなことをお尋ね申し上げたのであります。從つて当初私は、鉄道事業独立採算制をとられるかどうかということを御質問申し上げた次第でありまして、少くとも鉄道收入財政を見積られます場合におきましては、三倍半という形式的な手続ではなくして、三倍半に値上げいたしましたならば、実質的に三倍半の收入がなくちやならぬ。ところが政府におかれましては、三倍半の收入があるという御説明をどこからされたかというと、基準年次賃率が今安いのでありますから、その賃率を高むることにおいて——國民の当時の生計費に対する交通負担率よりも多くならぬのであるから、ただいま三倍半くらい上げても、收入は減ぜぬ。これだけの收入はあるのであるという説明に終始されておるのであります。私はそこに非常なる錯覚があると存ずるのであります。何とならば、昭和十一年の基準年次は、御承知通り利用者——乘車率は今の三分の一である。非常にゆとりのある樂しい旅行がされ得たのであります。しかるに爾來この利用率は、国民の実際の経済力がどんどん低下していくにかかわらず、反対乘車率がどんどん膨脹いたしまして、三倍になつており、ほとんどぶた箱みたいな現状であります。これを申し上げるのは、基準年次においては、かりに國民が一年に一回しか利用せぬといたしますれば、今回は三回利用しておる。ところが三回利用しておりますけれども、その人が基準年次に一回利用した運賃より安かつたから三回利用されたのである、今回の算定の基礎を見ますと、前のごとく一回乘つた賃率と同じようにいたしますれば、なるほど收入は三倍にもなりましよう。そういうことは、ほんとうの國民所得に対して、交通費占むる位置が非常に大きなものになつてまいると私は考えるのであります。從つて國民一人当り賃率基礎にして出しておられるが、私が國民一人当りの総所得に対して、総交通費いくらを占めるかという見地に立つて判断をいたしますと、二倍半の收入にしかならぬ。現在の國民所得をそう落さないで、これだけの收入を上げますには、数字では三倍半でも五倍でも上げられるが、二倍半しか收入は上げられない。これがまた國民としては、基準年次交通費に対して、負担率が一致するのである。こういうふうに判断されると申し上げたのであります。二倍半が三倍半になつてもよろしいのでありますが、それを申し上げるのではないのであります。一例をちよつと申し上げますと、千六百円ベースが現在の賃率基礎であります。それが千八百円、二千九百円、三千七百ベースとなり、ちようど二倍半になつた。旅客運賃は御承知通り賃金基礎になる。それでありますから、三千七百円ベース以上に運賃を上げると、当然賃金ベース狂いがくるか、ないしは收入が減ずることは、これはいかなることにおいても原則である。この点は私はお伺いするのであります。三倍半が五倍になつても、鉄道事業は主体性をもつているものでありまして、みずから生き物である。みずからが経済力をもつているのでありますから、國家が命令を下していくら收入を多くして予算を立てましても、鉄道自体の本來の生命、本來の力、本來の経済力以上の負担には應じ切れない。從つて鉄道経済力はどこまでであろうかということを見拔いて予算を定めることが大切である。この点に鑑みまして、旅客運賃を三倍半に値上げしたことは、鉄道自体がもつている自主的経済力に対して、國民は三倍半の負担力があるということになるのであります。これのいわゆる統計的な基礎になるものが、何であろうかということに対してお伺いしておくことは、國有鉄道財政今後一箇年にわたる根本問題になるのであります。かように考えてこの点を伺つているのであります。
  12. 岡田勢一

    岡田國務大臣 よくわかりました。お話税金と違つて政府できめた通りの徴收をするわけにいかないのだから、三倍半に上げたからといつて、はたして予定通り收入を得るという確信をもつているかどうか、佐伯さんのお説では、三倍半に上げても三倍半の收入は得られないと思うがどうかというお尋ねだと思います。なるほど昭和十一年基準年次の時分には、今の交通量の約三分の一くらいの交通量で、鉄道旅行も樂しくできたというお話は、まさにその通りであります。賃金が千六百円ベースから三千七百円ベースになりまして、約二倍半の値上りをしておるから、それから考えれば二倍半が適当ではないか。その方面からの考察は一應それもごもつともであると思います。ただ運賃が安いから一回旅行していいところを、三回することにもなるではないかというお話でありますが、その点につきましては、私は多少異論があります。ただ大幅に三倍半にいたしましたときに、はたして今考えておる利用減五%という政府考えている通りの結果が、現われてくるかどうかということについては、私も相当の疑問をもつておりますが、運賃が高くなつたから、すなわちそれに比例して交通量が減るのではないかというように、簡單には私は考えられないだろうと思います。そのわけは昭和十一年ごろから今日までの間に、私たちも始終鉄道を毎月何回か利用いたしました大阪、東京間、あるいはその他の地域に往復いたしておるのでありますが、そのときには統制経済というようなものがかように強化されておりませんときでありましたし、また食糧初めいろいろの工業用の原料資材などの獲得にいたしましても、電報が手紙で樂に入手ができておつたものが、支那事変が始まりまして以來、だんだん統制経済、計画経済になつてまいりまして、中央に行つて運動せなければ、物資の割当がもらえない、あるいはまた事業家同士が契約をいたしておりましても、出向いて行つて督促をしないと、品物を発送してくれないというようなこと、もう一つは、食糧が不足でありますので、やみのものを買うために、かつぎに行かねば食糧が手に入らない、あるいはまた、ある失業者の連中は、自分の生活を維持せんがために、かつぎのやみ屋をやる、変態的ではありますが、これを一つの生業としてやつていかなければならないというようなことが起つてまいりまして、それらの関係が総合的になつてまいりまして、今日の旅客の動きが大きく殖えておるようになつておると思われます。それで三倍半の値上げをしましたにつきまして、利用減を五%しか見積つておりませんことは、あるいは私もこれが十分であるとは考えておりませんが、これは鉄道特別会計といたしましても、收入を比較的よけい見積らされて、支出をこれまた節約をなされてまして、そうして鉄道特別会計の企業自体が緊縮節約をしてやつていかなければならぬという考え方から、若干の不満はありましたが、利用減五%には賛成したのであります。しかしその事情は別とといたしまして、はたして利用減五%が今年度末までの間にどういう結果を得るかということになりますと、これは現実の問題といたしまして、あるいは佐伯さんの言われますように、今鉄道の予定しております收入から、ぐつと減つてまいる現象がないとは私は言えないと思います。その点は佐伯さんの言われることを全面的に否認しようとはいたしませんが、しかしそれは、一つには今後における物價、貨幣價値の問題、換言いたしますれば、今後インフレがもつと進行していくかどうかということ、あるいはインフレはこれが頂上であつて、あと物價がだんだん漸減傾向をたどつてデフレに向つていくかどうかというところに、一番大きな利用減の結果が現われてくるのではないか。なおまた計画経済、統制経済にいたしましても、物が少し潤沢になつてまいりまして、ある部分においては統制のわくをはずしまして統制を緩和していく。それからまた一般の工場経営あるいは企業経営等につきましても、資材の入手が比較的樂に向いていくというふうにもなり、一般國民の生活が樂になつてまいりまして、今のようなかつぎのやみ屋が米、芋その他の食糧等をかついでいつて、それを唯一のいわゆる生命を維持する、飢餓を免れる途としなければならぬというような、切迫した事情が緩和されてまいるとかいうようなことになりましたら、相当にただいまの交通量は減つてこようと思われますが、これは將來の問題でありまして、それらの関係がどうなるかということによりまして、はたして今の三倍半の予定しておる收入のうちから、利用減五%だけを引いた実績になつて現われてくるかどうかということが決定される問題であると思います。ただここで、それは決定的に減收になるという説、あるいは維持ができるという説をいたしましても、これは先のことでありますので、結論は立たぬと思われます。まず政府といたしましては、この程度では不十分であるとは考えるけれども鉄道企業の節約をして、そうして努力をして、なるべく運賃を低目に抑えなければならぬというような氣分も織りこみまして、この利用減は見積りましたものであります。いろいろこの問題を申し上げておつても、その程度よりいたし方がないのではないかと思つております。
  13. 佐伯宗義

    佐伯委員 今のことは將來に起る問題でありますが、やはり委員の一人といたしまして、將來がどうかということについては、つとめて判断を誤らぬようにしておかなければならぬと思うのでございます。鉄道は今大臣お話通り、二つの意味をもつておる。御承知通り鉄道運賃の問題は國民の大きな世論となつておりますのみならず、鉄道は國営にされているという大きな政治的生命をもつておるのであります。でありますがために、財政のいかんにかかわらず、最も正当妥当な運賃率であるということを一面に考えると同時に、一面におきましては、その予想なるものは的確でなければならない。まつたくあらゆる角度から將來の予想を確立しておかなければならぬということは、先ほど申しましたように、國家の権力をもつて取立て得る税金と異なるのであるのであるということを前提にして考えなければならぬからであります。この二つの面から、適正な運賃でありますならば、國民に対して三倍では五倍でもいくらでも要求はできます。ところでその適正いかんと申しますことは、先ほど私が申し上げたように、千六百円に対しては、三千七百円の今度の新しい賃金ベースは二倍半である。現在國民負担する運賃は千六百円を基準といたしまして、安いがために三回も五回も乘つたかもしれません。しかし現在におけるところの國民交通負担率というものを基準にして考えますと、その收入を減せないという建前におきましては、やはり二倍半ということがどうしても生れてくる。ところで、運輸当局におかれましては、現在までの間に運賃賃金との開きが生じてきたのであるという答弁をなされまして、今度は一般物價は七割程度しかしらぬが、鉄道運賃だけは三倍半上る、けれども、こういう矛盾は何とか解決ができるだろう、こういう御答弁に聽くのでありますが、私はその内容にわたりまして、それがそもそも誤りでなかろえか、かように申し上げるのであります。安いということは、千六百円ベースの時代の賃率であればこそ、そうなのであつて國民一人当りから申しますと、交通機関が三回も四回も利用されておる。全体の負担率を同じような上げ方をしていくということと、賃率との両面から見られて、そうしてこの收入を立てられるならば、私は合理的だと考えるのであります。つまり單位賃率というものと、國民一人当りの総交通負担費、これとの上昇率を比較していかれるならば、私は妥当であると考えられるのでございますが、現在のところから申しますと、解釈いたします上に最も都合のいい賃率だけの比較をなされまして、総負担率いくらでもいい。今もし大臣のようなお考えでありますと、三倍半が四倍ないし五倍にもつてつても差支えないのではないか、こういうように聞える点があるのでありますが、少くとも國民経済力限度を超えますと、利用率というものが絶対に減ずるということは、経済原則であり、建前であると私は信ずるのであります。從つてこの質問は、ある点に行きますと、大分技術的にむずかしくなつてまいりますから、私の想像では今申し上げました通り、あらゆる点におきまして、鉄道が今日サービスを提供しておる正当な價値というのは、二倍半である。二倍半以上の價値というものは無價値なものを提供して國民に強うるものである。こういうことがどうしても私には出てまいるのであります。從つて將來この予想が裏切られまして、收入減になるか、しからずんばこの問題が賃金ベース基本を誤りまして、狂いを生じてくる。こういうところの原因を含むか、二つの禍因がこの中に存在するということを私は記録していただき、また運輸当局におかせられましても、御参考にしておいていただきたいと思うのであります。  その次に承りたいと思いますのは、何といたしましても、鉄道独立採算制をとるべき経済現象である。この点におきまして支出の面から檢討していきたいと思うのでありますが、支出の面における物件費、物の面と、人件費、人の面、私は人の面から論じていきたいと思うのであります。鉄道当局支出の最下位のものまで御節約なさつたということは、いろいろの点からうかがい知ることができるのでありますが、さて支出と申しましても、経済力に應じて必要な鉄道自体支出力というものがあるのであります。それはどの限度であるか、こういうことになつてきますと、鉄道当局の御説明は、昭和基準年次におけるところの業務量に対して、人件費なるものが一対一であつたといたしますならば、業務量が三倍に殖えた、だから並行して三倍に殖えべきが妥当であるということが建前になつておるのであります。これまた私は非常に大きな錯覚であろうと考えるのでありまして、一体平易な言葉で申しますならば、五十人乘りの電車のところへ四十人のお客がありまして、十人の乘務員があつたといたしますならば、その比率で、業務量が殖えると同時に、從業員が同一に殖えていくのだ。こういう考え方は、少くとも実際の経済に携わつておられる方であるならば、妥当でないということは明らかなる事実と私は思うのであります。鉄道企業は、実に組織的に機械的に、有機的にできておるところの事業でありまして、單に業務量ぐらいが殖えた程度で、全設備に対するところの從業員が同一に殖えていくというのであれば、文明の利器を使うことはできません。まつたく文明から野蛮にかえるのである。文明はどういうものであるかと申しまするに、かような大なる施設をいたしまして業務量がどんどん殖えましても、これに要るところの費用というものは、それと伴わないということがわれわれ人類の最も大きな研究の課題になつておる。また動物から人間的文化を求められる最大の要素である。例をあげでみますならば、原始的に荷車でもつて一人の人をひつぱつた。ところが自動車なつた。十人の人をひつぱつていく。こういうところに文明の段階があるのでありまするが、自動車になりましても十人の人が要るのであるという原則は私は成立たぬと考えるのであります。この点は敗戰後におけるところのわが國の設備が非常に荒廃いたしましてり、また從業員が不慣れであつたりして、その設備を人力でもつて補うておるということから、ある程度の増加はやむを得ぬものと思うのでありますけれども、この前にもお伺い申し上げました原則といたしましては、かような考え方は経営根本を破壞するものでありまするのみならず、経営担当者たるところの能力を私どもは疑わざるを得ないのである。もつとも最近は労働問題が非常にやかましいために、心の中にいかなる計画を立てられても、容易に言い得ないこともたくさんありましよう。しかしながら、私は國有鉄道は救いがたい驚くべき苦境に陷つておると思う。また私ども経済人としてこれをながめてみましたならば、まつたく戰慄を催すという内容であろうと考えられるのであります。この点におきまして私はまだ詳しい統計は目下調査中でありますが、総じて國有というものになりますと、比較するものがなくなる、そこに刺激力が衰えまして、能率が低下するという原因になるのでありまするという原因になるのでありまするが、わが國におきましては御承知通り國有鉄道に対して民間鉄道というものは、最初はより以上に発達しておつた歴史をもつておる。しかも現在におきましても、國有鉄道の三分の一ないし四分の一の民間鉄道経営というものが行われておるのでありますから、事情は多少異なるにいたしましても、これは比較するところのものがあるのであります。私のちよつと見ましたところによりますと、一万人トン・キロ、これを輸送いたしますのに國有鉄道は民間経営の約倍の人員を必要としておるのじやないか。かように見られる点が多々あるのであります。これは國有鉄道であろうと、地方鉄道であろうと、延トン・キロというものを單位といたしますならば、國有であつた場合といつても、多くの人を要するということは言い得ません。もしこのことが事実といたしますならば、國有鉄道経営というものは、もう破局的な段階に立つておるものであるというこが言い得るのであります。この点に対しましては、私の憂うるごとく、國有鉄道旅客運賃におきまして二倍半が実質の國民負担の正当なものであるということが断定を下されますと、約二百数十億の赤字が出ます。現在のところにおきましても、一般会計から繰入れておりますものを加算いたしますと、約二百数十億と見られます。両方合わせまして四百数十億の欠損金というものは私は妥当でないと考える。日本の今回の財政というのは三千九百九十二億円、日本の國の荒廃した公共事業費、治山治水、あらゆる國民國家全体にわたるところの復興公共事業費が四百数十億円、地方公與税が四百数十億円、これにも匹敵するがごとき國有鉄道の欠損がもし見られたといたしますならば、國民は耳目を新たにして國有鉄道を凝視せねばならぬという大問題が起つてくるように私ども考えるのであります。この点につきまして、現在の経営の中で、運輸当局はすでに全部節約してしまつたから、この中には少しもむだがないのだ、この中に入れるわけにはいかない、あとは國家負担並びに國民運賃負担において賄うべしと言われることに対して、正当なりと確信をもたれるやいかんということについて、お伺いしてみたいと思うのであります。
  14. 岡田勢一

    岡田國務大臣 大体佐伯さんのお述べになつておられますところは、人件費、物件費その他の経営費において、もつと節約しろというおねらいであろうと存ぜられます。御説明くださいました一トン・キロあたりに対する人員につきましては、なるほど施設等と比較いたしますと、若干多くなつておろうと思います。私らもこの國営企業なるものが民営の企業、しかも大きさにおきまして、民営の私鉄などと比べまして、とても比較にならない、何十倍という大きな規模で経営をしております國営の企業、これについては、何と監督をいたしましても、從業員の氣持も違い、人員も多くなりますし、経費面においても多少膨脹するであろうことを否認しようとは考えておりません。しかしながら、私らも事業経営、企業経営については、相当に長年経驗を経てきておるものでございまして、佐伯さんのおつしやるように、業務量と從業員の数とは正比例して考えてはいけないくらいのことは、私もわかつておるつもりであります。それだからといつて、何も現在の國鉄の経営の実態なるものが、一から百まで合理的であるということを申し上げようとはいたしておりません。整理すべきものは大いに整理いたし、また減される人員は減す、そのためには配置の轉換もいたします。経営の合理化も十分にやつていかなければならぬと考えております。それで國営の鉄道は、ほかに比較するものが私鉄だけであるということでありますので、刺激される面が少いけれども、私鉄に比較せよというお話はよくわかるのであります。今後において大いに努力をいたしたいと存じておりますが、ただ経費の具体的節約、それから人員の具体的減員という問題になりますと、相当に事が複雜でございまして、予算の編成をあと数日に迫られておる現在といたしまして、その間にそれを完成するというように、簡單にはいきかねると思います。それには今日では、何と申しても人員方面においては、労働基準法を初め、労働関係の法規に縛られる面もございます。また民主主義を高調さしておるただいまの社会情勢から考えて、芦田内閣ができます前の三党政策協定においても、今日の経済実態から考えて、機械的の人員整理はしないというような申合せもできておりまして、まず人員整理をいたしますには、失業対策を考究しなければいけない面もあることは御承知通りでございます。それからまた経費面においては、今回の予算編成にあたつても、國の財政がきわめて困難である実情をよくわれわれも弁えております。また大藏当局も極力経費の節減を主張されて、物件費の面においても、重要物資の平均七割ないし八割の高騰を予定しておりますが、鉄道が使う物品につきましては、重要な物を一品々々檢討を加えまして、ある物は二割五分しか上らない、ある物は五割しか上らない、ある物は七割上るというふうに、これを精密に査定檢討を加えまして、平均の物件費は五割上りで査定を切り詰めてやつております。それからまた人員の面においても、しばしば御説明を申し上げたように、労働関係法規などの面、増送の面から要請せられます人員のうち、予算編成にあたつて約六万人近くを所要面から節減をいたしております。また石炭の面においても大体從來から石炭の消費節約の研究を続けてまいつておりまして、これもできるだけ努力しております。本年度の石炭消費量においても、相当切り詰めた計算をいたしておりますが、ただいまの石炭生産の現状から考えると、五千四百カロリーを予定いたしておりましても、数量的に石炭の供給がなかなかすかすかとまいりませんので、実際面においては、多少カロリーの低いものでもがまんをして受け取らなければならぬ実情も予想されます。それで今までその面からも節減いたしておりますが、さらに今から大なる節減ということは、はなはだ困難であると考えております。殊にただいまの経済難局を乘り切るには、どうしても生産の飛躍的増強を策さなければ、インフレーシヨンは抑制かできなかろうと思つておりますが、その生産を飛躍的に増強するために、輸送力を強化せねばならぬ。すなわち増送せねばならぬ。安本の計画によります石炭三千六百万トン生産にマツチするためには、年間一億三千万トンの鉄道輸送量が要請せられております。しかしながらこの一億三千万トンを達成いたしますためには、ただいまの疲弊衰耗いたしておりまする説備に急速な改良と補修が加えられ、また同時に少令車輛を補充いたす。もう一つかんじんなことは、從來供給がほとんど問題にならないほど低位におかれておりました労務者の作業衣、軍手、地下たび、石鹸、また寒冷地帶における長ぐつというようなものの供給が相当増加されなければなりませんこと、あるいはまた重労働者に対する食糧の増配がもう少し行われなければならぬこと等々の、いろいろたくさんの要素が、われわれ鉄道当局の希望いたしておりまする通りに達成されなければ、一億三千万トンの輸送完遂は困難であることが今予想されておるのでございます。このときにあたりまして、今日まで予算編成期以來節減を加えてまいりました人員と、並びに物件費その他の補修改良費等の面におきまして、これ以上の大幅の節減を加えられることになりますと、私は経費節減という目的は達せられましても、インフレ克服という面から積極的な増送計画は実現できないことになるのではないか、そう考えられますので、今日以後おきまして鉄道企業に加えられまする大幅の経費節減は、これは角をためて牛を殺す結果になるのではないか、まことに困難であると私は考えております。  もう一つこのついでに御説明申し上げておきたいのは、経費節減に関連してでございまするが、佐伯さんも鉄道経営につきましてはまことに深い知識と経驗をもつておられます。ただいま鉄道の外廓團体であります弘済会、交通公社など、これらに対して大きな整理をすれば、経費が生れてくるかのごとく世間の一部には考えられておりますけれども、これは相当に誤解がある問題だと私は考えております。今日交通公社を全廃いたしましたところで、あの施設寿において受けもつてくれております鉄道の宣傳、殊に切符の販賣まであれが扱つております。あの数量がないことになりますと、たちまち鉄道職員の数を殖やし、切符を賣る窓口を増加しなければ行われないことになります。そこでとても原則として交通公社を全廃するわけにはいかないのでございますが、もしかりに全廃いたしたといたしましても、差引き節減されます経費はごくわずかなものしか上つてこない。十億とか五億とかいう大きなものは、とうてい残らないであろうことを佐伯さんも十分御承知くだすつておることと思います。また引済会につきましては、引済会が一年中に收支をいたしております金額はわずかに二億四、五千万円でございます。これは引済会が駅賣りでありますとか、あるいは鉄道のもつております施設のうちガード下でありますとか、あるいは土地家屋の一部を貸しておるというようなものを利用しまして営業をいたしておるのでありますが、これらのものの賃貸料も、今回の予算編成にあたりましては、相当値上額を大幅に折りこみまして予算に編成をしております。そして引済会は、救済團体でございますから、鉄道の殉職者あるいは殉職員の遺族、あるいは負傷者等で保護を加えなければならない者に保護を加えていきつつあるのでございますが、それらに対する國からの補助金はわずかに百四、五十万円しか出しておらぬわけでありまして、あとは引済会が営業いたしました利益の中から出しておるということになつております。この引済会を全廃いたしましたところで、そこに浮いてまいります費用は、わずかのものにしかなつてまいらないのでございます。こういう場合におきまして、今日のこの切迫いたしました時間内に、なお大幅の経費を節減しろというお声もあるやに承りますけれども、かれこれ諸情勢考えましてなかなか困難である。もう一つ國有鉄道がもつております土地、家屋等が若干ございます。また戰時中に買い上げました私鉄もございますが、これらを処分いたせばいいじやないか、こういうお声もあるようでございます。一應ごもつともなお話でございますが、土地、家屋等で処分のできるものはごくわずかでございます。これらのうち不用なものは、この際私たちも、処分できるものは処分しなければならぬと考えております。これも大きな金額には上りません。しこうして今回予算面に組み入れておりまする雜收入約九億何千万円の中には、それらのものの一部と、もつておりまする不用資材の賣上げなども組みこんであります。私鉄の拂下げにつきましては、これがはたして今年度内にできるかできないかということは未定の問題でございます。これらの私鉄も、戰時中にはただいまの時價とは違いまして、戰時中における安い單價で評價がされまして戸慎 マ領大数の長い高いものでも、これを千五百万円とか一千万円とか、小さいキロ数のものになりましたら二百万、三百万というような額で買い上げておるのでございまして、本年度に十社あるいは五社を処分できたといたしましても、これとても大きな費目は見込まれないのであります。それよりも問題は、かようなものを賣却いたしますためには、その地方の産業経済の実態、交通量、そうしてその引受けたいという会社が信用できるか、堅実なものであるか、不堅実な脆弱なものであるかの内容を檢討いたしますこと、それを拂い下げてから後に、はたして黒字の経営ができていくものであろうかどうか、赤字経営ということになりますと、成り立たないことに相なります。そういうようなこと、また評價の問題にいたしましても、これは相当の方に御審議を願つて決定されなければならぬ問題にも相なります。そういう複雜な関係にありまする私鉄を、今、予算を編成いたします前に、その費目を三億とか五億とか賣つて得ることを予想して、予算に組み入れるということの絶対にできませんことは、國民もまた國会議員の方々も、否定できないことであろうと私は考えるのであります。かれこれいたしまして、われわれは今日まで人員及び物件費の面におきまして、できるだけ努力して節減したのでありますが、しかしながら今日のこの困難な経済界において、國民生活の負担の苦しい中において、大幅の値上げをするのでありますから、これは皆さんの御説のごとく、考えといたしましては、なお一層節減に努力を仕りまして、そうして運賃負担を助けるという方向には、できるだけの知惠を搾つてやらなければならぬと考えておりまして、今後大いになるつもりにしておりますが、さしあたりといたしまして、ただいま申し上げましたいろいろの要素の中から、若干の費目は考えたいと存じまして、先般來から頻々は省内で調査をいたしつつあるのであります。その費目は、いずれ國会において原案をお通しになる——あるいはお通しにならなくて、何らかの修正意見をお出しになりまするか、そういうはつきりいたしました時分には、御要求によりまして申し上げたいと存じますが、今一部に言われておりまする三十億であるとか、あるいは物件費で五%であるなどとかいうような大きな費目を、今日の段階において出しまするということは、きわめて困難であると私は信じておりますので、一應御説明を申し上げます。
  15. 川野芳滿

    川野委員長 ちよつと質問の方並びに應答の方にお願い申し上げますが、実はあとで懇談会にはいりたいと考えますので、ひとつ要点のみを質疑並びに應答願いたいと存じます。
  16. 佐伯宗義

    佐伯委員 今大臣お話の後段に、経費の節減問題を具体的におあげになりましたが、これは私もやはりある程度同感と存ずる点が非常に多うございます。私はそういう問題を申し上げておるのじやないことを最後にお話申し上げて、終りたいと思うのでありますが、最初にお尋ね申し上げました、國有鉄道独立採算制をとるのかとらざるのかということを前提におきまして、そうして行政制度を紛淆せないような限界をもつて、どつしりと経営に携わつていかないと、國有鉄道の再建復旧問題は解決し得ないという出発点から立つておるのであります。それでとかく國営となりますると、その点が紛淆するおそれが多分にありますので、もし独立採算制を採用するところの考えであるといたしまするならばいかなる場合においても——大臣の御説明のようなことが、いたし得たとしましても、金の出ようがない、金の出ようがないから、みずからの経済力に應じてこれを切り詰める以外に方法がないという一つの事実を御承知おき願いたいということになるのであります。國家に対して、國民に対して、つまり行政的、政治的な部門になつて考える徴税の性格をもつておるものと、その点で違つておるのでございます。國有鉄道の自力はどの限界であるか、これによつてやはり一つの計画をお立て願つて、自力以外のものでは、どういうものがどういう政治的生命をもつておるか、それをしつかり研究いたしまして、その限度において、國家の繰入れその他を要求する、こういうようにはつきりと分野を定めていきたい。こういうのが私の見方であります。現在出しておられまするところの予算は非常に正当であると私は思う。これは独立採算制を堅持しておる。また現在におきまして人員が多いと申しましても、急にこれは整理のできるものじやありません。やはりこれは社会情勢関係上、これ以上に私もできぬと思うのであります。ただ要するに、現在予算に立てられておりまするところの收入支出の面が、税金のごとき的確性をもたぬものであるから、それが誤つておるといたしますと、その金というものは、一体どこから出すのか、こういう問題が起つてまいるのであります。鉄道当局におかれましては、支出とのバランスをとられまするがために、結局は收支というものを三倍半と見られた点が多いのではないか、こういうことを私は申し上げるのであります。現在の國庫負担一般負担となつておりまする百億円が私は正当だと思うということは、先ほど御説明申し上げたように貨物運賃なるものは、一般物價基準になる。ところで國有鉄道貨物運賃は安い。実際はもう少し高くとれる。独立採算制であるならば、高くとるのが当然であるけれども、現在の日本の物價体系のために、犠牲になりました金が約一倍といたしますれば、九十億、八十何億になるから、この百億というものは堂々として國有鉄道が調整金を受取るところの資格があると思うのであります。そしてあと一般の今回の保守改良費百九十億、これは赤字公債で、國有鉄道それ自体負担になつておりまするから、私は現在の予算面は、とにかく独立採算制を堅持する上において、何ら異議がないのであります。ただ問題となりますのは、この旅客運賃で、國有鉄道は実際にサービスを提供しているが、これが國有鉄道経済力に副うか副わぬかということが論題になつてまいりまして、私の見たところでは、先ほど申し上げたように少くとも約三倍、二倍半——二倍半となりますと二百億になります。三倍となりますと約百億であります。これは私どう考えても國有鉄道が実際の経済力がないのである。その分は、結局國有鉄道そのものが、独立採算制から、自分の支出面において能力のないものをよけい支出しているのである、こういうことが考えられますがために、当然そういう場合にはこれはその経費を節約せにやならぬと考えられるのであります。しかしながら、これは鉄道当局の現在の三倍半というものを値下げしろという原理にはなりません。実際やつてみなければわからぬのであります。そこで問題となりますのは、國民がこの三倍半を二倍半にしろという場合と、國有鉄道経営当局者がその三倍半はコストに対して正当に要求する價値である。こうなりますと、もし政府がこれを政策的に二倍半にするというときには、政府補給金を出さなければならぬのは当然である。ただ補給金を出さずして、いたずらに運賃値上げしろということは、政府みずからが独立採算制を破壞するものである、こういう結論になると私は思います。そこで問題は、結局三倍半が正しいか正しくないかというようなことが、論議の中心となつてまいりますがために、私は先ほどの数字をあげて比較檢討いたしまして、どうも二倍半が正しいように考えられる。こういうことを論及いたしたのでありまして、いたずらに三倍半を二倍半にせよと言うたのではありません。この点をよくお含みを願いたい。あとは一個の政治問題でありますから、これを何倍に引下げろ、あるいはどういう節約をしろという問題は、私はこの席上で御要求申し上げるのではありません。つまりそういう判断基礎資料として、ただいままで御質問を申し上げた次第であります。私の質問はこれをもつて打切ります。
  17. 川野芳滿

    川野委員長 それではあとで懇談会を開きたいと思いますので、委員会はこの程度で散会いたしたいと思います。いかがでございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 川野芳滿

    川野委員長 それでは次会は公報をもつて御通知申し上げることにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十分散会