○
秋山政府委員 本日
有田海運総局長官が参りまして御
説明を申し上げるはずでございましたが、やむを得ない差支えがございまして出張いたしておりまするために、私より代りまして御
説明を申し上げたいと思います。
わが
海運は
戰爭中非常な打撃を受けまして、ごく大ざつぱに申し上げますと、六百三十万
トンほど船をも
つておりましたのに、いわゆる
戰時標準型と申しまする急
造船を
戰爭中に三百万
トンつくりまして、総計九百三十万
トンのうち、八百万
トンほど
戰爭で喪失いたしたのでございます。從いまして残りました船は約百三十万総
トンでありまして、その中の七割ないし七割五分が
戰時標準船でございます。残りの約三〇%が
戰前よりも
つております船でありますが、その全部を通じた
平均年齢が二十二年になります。船のライフは大体二十年ということに
なつておりますが、在來船の船齢が全部
平均いたしまして二十二年というのでございますから、いかに今も
つております船の質の
惡いかということも御了承がいくと思うのであります。その上に
戰爭中に非常に
むりな使い方をいたしましたために、各部の
故障が非常に多いのでありまして、
戰爭の終了いたしましたときには、も
つておりました船が、
貨物船と
客船で
重量トンで八十五万
トンという
状況でありました。そのおよそ半分
程度が動くことができなか
つたという
状況であ
つたのであります。そのほかに
戰傷を受けましてなお浮いておりました船が
重量トンで七十二万
トンございます。隻数で二百二十二隻あ
つたのであります。そのほかに沈んではおりますが、どうにか
救助ができるという船が百二十五隻、四十二万
重量トン、大体こういうような
状態で
終戰後の
海運を出発いたした次第でございます。ここにごく簡單にグラフにいたしまして、
終戰後の
汽船海上輸送状況をお示しいたしますと、こういうようなぐあいに
なつておりまして、九月には二十万
トン足らずでありました
輸送が、漸次
船腹の増加、あるいは
修繕の
進行等に伴いまして
上昇いたしてまいりました。昨年の六月には九十二万
トンというレコードに達しております。なお十一月には九十六万
トン、輸出、
輸入、内
國輸送、こう
なつております。
そういうふうに逐次
回復してまい
つておりますが、現在の
輸送状況から見て、
輸送力はどうかという問題でございますが、昨年の夏は
——夏は
海上の
條件が非常によろしゆうございまして、船の能率が最も上る時期でございます。この時期には大体月に一、四回轉ぐらい船が回轉いたしております。ところが
荷物の方から申しますと、
出炭の夏は非常にうございますし、またいわゆる
貨物が夏枯れと申しまして、
動きが少いのでありまして、この時期にはやや
船腹が余
つたような感じをいたしたのでございます。しかるに十二月にはいりましてから
——昨年は非常に冬の來方が早うございまして、しかも非常な冬型の
天氣に災いされまして、十二月には今のところ八十五万
トン程度に止まる、こういうような
状況でございます。一月もそれと大体大差のない成績だと考えられております。そういたしますと、
ちようど出炭が十二月から急カーブに
上昇いたしておりますために、
石炭には優先配船いたしておりますから、
輸送上の御迷惑はかけておりませんが、その他のものについては
相当の
輸送上の御迷惑をかけておるということになるのであります。これは
輸送の
要求がずれてまいておりますので、二月を予想いたしてみますと、大体百二十五万
トンぐらい
輸送の要請があるように考えられております。その中には
輸送の
申込みはありますが、
荷物はちよつと出ないというふうな
見込みのものもございますので、こういうものも今整理をいたしておりますが、それで
輸送の
見込みは、
條件が非常にいいとしても、まず九十万
トンということになります。從いまして大体三割
程度のものは
輸送の
要求をお断りしなければならぬような
状況に
なつておるわけでございます。
こういうような
状況に
なつておりまするのに対しまして、われわれはどういうような
対策をと
つておるかということが第一の問題なのでございます。
海上の
輸送力は
船腹の量と、これの何箇月働くかという実際に働く割合、それから何回轉してくれるかという計数、これだけで
見積りが立つわけでございます。現在の船は九箇月しか働かないのであります。と申しますと
稼働率七五%ということになるのであります。これは
戰前でございますと、普通の船でございますと、十一箇月働かなければならないのでございます。これが
平均で七五%しか働かないということに
なつておりますのは、
船質が非常に
劣惡でありまするために、
修繕が非常に多いということであります。それから
回轉率が今申し上げました通り、最高で一・四、
平均で一・二ぐらいの
回轉率と
なつております。ということはどういうことかと申しますると、これは
戰前では少くとも二回轉、多い船は三回轉ぐらいしなければ、
海運の
経済は成り立
つていかないわけでございますが、これがその
程度に止ま
つておるのはどういうわけかと申しますと、もちろん
機械の
故障その他のトラブルがございますけれども、一番大きいのは、何と申しましても荷繰りの不円滑ということでございます。ただいまの
輸送統制は
石炭重点主義であ
つて、特に
石炭は
積出港にも
消費地にも、
ストツクというものが全然ございません。いわゆる手から口へという
状態に
なつておりまするために、到着いたしました
石炭を、ただちに
消費地に運ばなければならない、こういうことに
なつております。またその
石炭の
生産見積り、あるいは
港頭到着見積りが、往々にして予定通り参らないのであります。しかし船は、あらかじめ
計画された
数量に対しまして、十分なだけつけておるわけでございます。この荷繰りの不円滑から來る
船腹回轉の阻害は
相当なものでございまして、たとえば小樽の港を見ましても、今月の十日ごろから先は、
平均毎日二万
トンないし二万五千
トンの船がつけてある。積み方は大体三千五百
トンから四千
トンぐらいのところを動いておるということでありますから、
相当の
船腹がそこに縛りつけられておる。しからばそれだけの余剩
船腹があれば、他の方にまわしたらどうかという御疑問があると思いますが、これを一遍他の方に轉用いたしますと、その船が帰
つてきますまでに、すくとも二十五日ぐらいはかかるわけでございます。そうしますと、全体の
数量にうまく合わないという
状態になるのでございます。この
ストツクのない、手から口へという
状態で
経済をまわしており、それの
輸送に合うように船を動かしておるということが、一番
回轉率の上らない理由だと思います。そういうことになると、結局
輸送をよくいたしまするためには、不経消ではございますが、
船腹を
よけいにもつということが一番必要でございます。
船腹を
よけいにもちまする一番手近な
方法は、先ほど申し上げました
稼働率の、九箇月働くものを、九箇月半働かすというような
考え方が一番手近なわけでございます。それをやりますためには、
修繕を減らすということと、
修繕の
スピードを上げることが問題になるわけでございます。
修繕を減らす方は、
船員が船をいかに注意して使
つてくれるかということに帰するのでございまして、この点は
船員組合の
方面ともいろいろ話し合
つておるわけでございます。
修繕の
スピードを上げるという面におきましては、これもいろいろと手を盡しておるところでございます。その隘路はどこにあるかと申しますと、やはり電力の
不足と
資材の
不足、特に
カーバイトとか酸素とか、あるいは
船底塗料とか、こうい
つたような副
資材の入手がなかなか困難でございまして、そのために
スピード・アツプのできないということが
相当あるように考えられております。この点につきましては
関係方面ともしじゆう繁密なる連絡をとりまして、遺憾なきを期しておるわけでございますが、なかなか思うようにいかず、七五%というレベルを上げることがはなはだ困難なのは、まことに残念に存ずる次第でございます。
その次には
戰傷を受けておりました船を
修繕いたすという面でございますが、この点は昨年の一月ごろから、特別に
運営会にも予算をと
つておりますし、また
船主方面に
金融の斡旋をいたしまして、これによ
つて現在
計画が
進行中でございまして、
終戰の当時二百二十二隻ありました
戰傷船が現在は七十五隻に減
つております。七十二万
トン重量トンのものが、二十四万
トンに減
つております。約五十万
トンの船が配船されてきておるわけであります。これがこういう
輸送力の上
つております一番大きなワアクターに
なつておるのでございます。
その次は
救助可能船の
引揚げでございますが、この
救助の問題はなかなか水ものでございまして、
船主といたしましても非常に決心を要する点があり、思うように進まないのはまことに遺憾でございます。しかし百二十五隻の中で現在
残つておりますのは百三隻、二十二隻の船はすでに
救助されて、かつ
修繕も済んでおるのであります。その他
救助に着手しておるものもございますが、この
救助作業は冬季間は
天候のぐあいでできないのでございまして、三月ごろから
天候が安定いたしましたならば、またこれを大いに馬力をかけてやりたい、かように考えておる次第でございます。
それからその次には新
造船の問題でございます。何分現在の船は、冒頭に申し上げましたごとく非常に
劣惡な船でございますので、これをこの
まま使つていくということは、ほとんど望みがないようにも考えられるのであります。そこで新
造船ということが非常に重要な問題だと思
つておるのであります。まず新
造船の中で一番にやりました問題は、
戰爭中につく
つておりました戰標船で、
工事が
進行中に
戰爭が終結したために、船台に中途半端な
造船が
残つてお
つたわけでございます。これを早く完成さすということが非常に大事でございます。しかしながらそのときの
工事が
戰爭中と同じでありましては、これは意味がないわけでございますから、
戰爭中と
違つて、丁寧につくりまして
——しかし根本的に設計をかえるわけにいきませんから、これはしかたないといたしまして、できるだけ根本的に注意してつくり、かつ補強する、こうい
つたような
方法で
続行船の進捗をはかりました。これが
終戰後五十八隻、十六万六千
トンばかり、これは総
トンでございますが、でき上
つております。もうあとわずか
残つておりますが、これは年度内にはぜひ完成いたしたい、遅くとも五月までにぜひ打切りたい、かような考えで督励いたしておる次第でございます。
〔
委員長退席、
佐伯委員長代理着席〕
その後平時型の
りつぱな船もつくりたいと思いまして、
資材の乏しい中を各
方面から
資材を集めまして、現在
進行いたしております
造船は、
小型客船が二十八隻、総
トンで二万四千
トンばかり
建造が
進行いたしております。そのうち一、二のものはすでに完成して就船を開始しておる。こういう
現状でございます。なお
貨物船といたしましては総
トン二千
トン型の船を八隻、ほかに
続行船から振りかえましたものが六隻、十四隻
進行いたしております。それから総
トンで五百
トン型の船が十五隻
建造中でございます。來年度の
計画といたしましては、
鉄鋼生産なり何なりの
見込みが立ちませんので、今ここにはつきりと
トン数を申し上げることができないのはまことに残念でございますが、できるだけの努力をいたしまして、
船腹の拡充をはかりたい。かように考えておる次第でございます。これが
鋼船の
輸送に関します大体の
状況でございます。
そのほかに
機帆船がごせいます。
機帆船は、これも
戰爭中相当徴用その他によりまして損傷は受けておりますが、急造の
戰時標準型の
木船も
相当たくさんつく
つておりますので、大体全体の
トン数におきましては
戰前とあまり変りがないようでございます。しかしながら
戰時標準型木船というものは、非常に急造いたしました
関係その他で
故障が多く、あるいは脆弱である、
事故が多い、というようなことで、困
つておりますことは、
鋼船の場合と同樣でございます。
輸送は一に油に規制されておるのでありまして、油さえ潤沢でありますれば、まだ
輸送力はもつと出る。從いまして、
輸送量は油の
供給量に比例しておりますが、最近では大体二百万
トンほど毎月運んでおります。
中央でコントロールのできる
機帆船の大きな会社の分が大体六、七十万
トン、それから
地方にたくさんあります
小型の
機帆船の方が百三、四十万
トンというところが大体現在の
状況に
なつております。しかしこの
機帆船で特に注意しなければならぬと思いますのは、
九州炭の
輸送でございまして、これは昔から非常に
機帆船に依存するところが多か
つたわけでございますが、現在でも
西日本社を中心にして大体
月間五、六十万
トンの
九州炭を
瀬戸内方面、遠くは
名古屋まで
輸送いたしております。
機帆船の
燃料は昨年の十二月において七千六百キロ
程度配給いたしておるのでありますが、これがただいま申し上げました二百万
トン余の
輸送力になるのであります。しからばどの
程度まで
輸送力を伸ばし得るかと申しますと、
燃料が十分でありますれば、まず
月間三百万
トンというところが
機帆船の
輸送力の最もいい
見積りであろうというふうに考えます。從いまして油といたしましては、現在の油の約半分三千五百キロほど増配することができれば、
機帆船の
輸送力は大体フルに使える。こういうことに
なつておるわけでございます。
これがごく大ざつぱな御
説明でございますが、なお御質問に應じまして、いろいろお答えいたしたいと思います。