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栗山良夫君 私は
職業安定法案、竝びに
只今提出いたされました
修正動議、
竝びに附帶決議にいずれも
贊成を申上げる者であります。ただこの際二、三
意見を申述べまして、本
法案を
機動力のある
サービス本位の
法案といたしまして、十分に機能を發揮されるように希望をいたしたいのであります。その
一つは
只今附帶決議の第一
項目に、
職業安定所に對しまするところの
職員に對して
奉仕の
精神を十分に理解せしめ、更に
施設の
改善、
職員の
待遇、こういうものについても十分なる豫算をと
つて、
政府はできるだけの努力を拂われたい、こういうことが明らかにせられましたが、この場合に私は
奉仕の
精神を理解せしめるということは、永年の
日本の
官僚機構の姿を考えてみまするときに、極めて困難な問題であろうと思うのであります。今度
勞働省の設置される場合におきましても、各方面から
勞働省こそ決して官僚化されてはならん、
勞働省こそ
日本の
官僚機構民主化の先頭を切らなければならない、こういうことが要望せられたのでありますが、分けてもこの
職業安定行政におきましては、あらゆる
勞働省の
内部における
行政において
民主化という點、
國民に
サービスをするという點におきましては率先せられるべきものであると考えるのであります。この點においては
行政の面に當られる方は、心身新たにせられまして、この新らしい
法案の
運用に全きを期せられたいと思うのであります。
次に現在國内は資金の面におきましても、
資材の面におきましても、その地あらゆる面において窮乏の極に達しておりまするが、この現段階において
日本において現在あり餘るくらいにあるのは
勞働力だけでございます。そうしてこの
勞働力をいかに有效に、百パーセントに……百パーセントを超えまして利用するか、しないかということが、
日本の
産業再建に大きな
役割を決定づけるものであると考えるのであります。若しこの
勞働力の利用を過ちまするならば、
日本の
再建は恐らく不可能であらうと思います。
勞働力は
生産増進のために極めて大きな
役割を持
つておるのであります。從いましてこの第一條に
職業安定法案の目的がはつきりと謳われておるのでありますけれども、これを更に大きく
解釋をせられまして、經濟の興隆のために寄與するということを文字通りに實踐せられたいのであります。その中で
只今産業の
合理化が叫ばれ、これがややもいたしますると、直ちに現在職に就いておるところの
勞働者の整理に直結せられた考え方を持たれておりまするが、私は現在の
勞働者を現在の職に安定させる、このことがやはり
一つの大きな
職業安定でございまして、現在
勞働階級は
生活の不安によりまして、相當大きな
動搖をいたしておりますが、
政府においては、特に
勞働者の
生活の安定という問題については、十二分の
措置をとられまして、そうしてとにかく現役の
勞働者を先ず完全に
職場に置いて、
生産に挺身させる、そうしてその
勞働者の人達が
生産の増強によ
つて擴げて行きますところの
職場に、現在
失業の
状態にあるところの
人々を吸收して行く、こういうような形を是非とも強力に進めて頂きたい、こう考えるのでございます。
それから
法案の
内部について、
運用の面で二、三
意見を申上げたいのであります。その
一つはこのたび、嘗て搾取的な、
基本的人權をも蹂躙したかの感を抱かせましたところの
人夫供給業というものが廢止せられましたが、これが廢止は極めて
日本の
産業界に大きな影響をいろいろな
意味で與えておるのでありまするが、
安定所として最も大きく考えて頂かなければならないことは、この
供給業を閉鎖したということではなくて、この
供給業者たちが嘗て相當な困難があり、好ましくないものではありましたけれども、とにかく功績を殘してお
つたことは認めなければならないのであります。結局
供給業者の下におりましたところの
自由勞働者は十萬を超えてお
つたといわれておるのであります。この
勞働力を全部
安定所が一手で引受けて、今後
産業界に盡さなければならないのでありまして、こういう
意味におきまして
職業安定所が持つところの
人夫供給業的な
役割というものは、實に重大な問題であると思います。この點についても現地の
機關によくその趣旨を徹底せられまして、過ちなきよう期して頂きたい、こういう考えであります。
それからもう
一つは、過日の本
委員會の
研究課題といたしまして、地方へ一
般勞働行政の
研究に
參つたのでありますが、その時に私が最も關心を持ちましたのは、現在のこの
失業者の中で
中年以上の人が非常に不安定の
状態におかれているということであります。現在の
勞働者の募集を見ましても、殆ど年齡の
制限が付けられております。
扶養家族の
制限がやはり
求人者から附けられておるのであります。そうして三十歳を超えた人は、極めて就職の效率が低いのであります。私はその中でも特に目頭を熱くいたしましたのは、主人を失
つたところの
婦人の
人々が、子供があるが故に職に就けないという
悲慘な人の數が多いのであります。
政府は更に大きな
觀點に立ちまして、この
中年以上の
婦人に對して
託見所の設備、その他あらゆる公共的の
施設を以ちまして、そうして
生活の脅威に暴されておる、而も
生活の
再建のために眞面目に働こうとしている
婦人の救濟のために
萬全の
措置を講ぜられたいのであります。又男子の
中年以上の
人々も、その能力において、或いは知力におきまして、
日本の
再建のために働いて頂かなければならない力は絶大なるものがあります。特に四十歳を超えた人が失職に入りました場合に、まだ一人前に
活動のできない婦女子を多
數扶養家族として控えまして、誠に
悲慘な
状態に現在あるのであります。こういう
人々が、一日も早く
職業を得まして、そうして安定した
生活の中に、その
勞働力を
國家に
奉仕し得るような途を、これ亦積極的に、
一つ講じて頂きたい、こういうことを考えるのであります。
最後に私は、
委員會の
豫備審査の時にも強く
主張をいたしたことでありまするが、この
主張は、今度の現在視察におきまして北九州における特殊な
勞働場所といたしまして、
炭鑛、或いは
港灣の荷役、或いは
日鐵の八幡製鐵所のごとき、ああいう重
勞働者の
作業所、或いは三菱化成のごとき
化學工場、こういう特殊な
勞働場所を見るに及びまして、更にその感を深くいたしたのでありますが、
職業の
選擇の自由が第
二條によ
つてはつきりと明示せられ、憲法の指示するところによりまして明らかにせられたのでありまするが、このために今後こうい
つたような苛酷な勞働を期待しなければならない、特殊な危險な
作業場所といたしまして
勞働者を得るということは相當困難な
状態に入ると思うのであります。若しこうい
つたような人が、忌避するような
職場に十分な
勞働力を得ない場合には、やはり
日本の
産業は總括的に見まして十分な
活動を期待し得ないのであります。何としても、こういうような
萬人が忌避するような
職場は、
人數は少いかも知れませんが、十分に
勞働力を確保しなければならないのであります。このためには、
政府はよろしく特別の
措置を講ぜられまして、
附帶決議にもありますように、喜んでこうい
つた職場に
勞働者が集りまするような手配を講じて、
施設の面において、或いは
給與の面においてその他萬々の
措置を講じて頂きたいということを希望いたす次第であります。以上
意見を述べまして本
法案に
贊成し、そうして速かな施行を希望するものであります。