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國務大臣(
米窪滿亮君) お答えいたします。佐藤さんの懇切なる激勵的なる御
質問を受けて、感激に堪えないのであります。
勞働者を設置することは、勞働省設置法案の第一條にございます
通り、
勞働者を社會的地位を確保すると同時に、その勞働條件を維持改善する、更に後段において、かくすることによ
つて産業の復興を圖り
國民生活の安定を圖る、こういうことが勞働省設置法案の第一條の目的であります。
從つて今御
質問中に御述べに
なつた御意見については、私全然御同感でございます。そこで勿論勞働
基準法によ
つて決められたような條件、或いは
勞働者に對する勞務の加配米確保、
生活必要品の確保等は、今日委廢した
日本の經済、殊に識金及び識材の面において殆んど餘裕のない
日本において、
勞働者の生産性の昂揚ことが經済復興の唯一の原動力と言
つて差支えないこの
現状において、
勞働者の勞働能率を高め、その生産意慾を向上せしめるためには、やはり
勞働者の地位を確保し、そうしてその
勞働者のいわゆる保護を講ずる勞働
基準法の實施を我々圖ることは當然でございまするが、これを以て
勞働者をスポイルするというような結果になることは嚴に戒めて參りたいと存じまして、
政府は一方において健全なる勞働組合主義の確立を期して參りたい。即ち
勞働者の權利は
政府においてあくまでも守るが、同時に
勞働者において社會人としての義務を果すために、是非共
勞働者がこの敗戰後の
日本の經濟復興に協力することを
勞働者に懇請するがためには、いわゆる勞働教育の重要性を考えまして、そうして
勞働者がいわゆる正しきを踐んで誤らない、そうしてその目的は單に階級的利害の達成のみでなくして、いわゆる
國民的利害というものを背景として、
自分らこそこの
日本産業の復興のいわゆる主人公であるという矜持を持
つて貰うように勞働政策を運んで行きたい。
從つて我々としては、この産業復興
會議というものを相當重要視しまして、そうして
勞働者が階級的利害の達成にのみ走らず、一方において
政府、經營者と協力して産業復興のために生産鬪爭をや
つて貰いたい。又一方においては重大なる消費者、重大なる消費者として、いわゆる
流通秩序の確立、いわゆる闇の撲滅のためにも
勞働者が協力して貰うということを
勞働者に懇請して參りたいと思います。同時にそういう意味において、我々は現在の
生活給というものを土臺としたところの
賃金制度も行く行くはこれを能率給の點を加味して、そうして勞働超過にならない
程度に、
勞働者の能率増進というものを達成するために、特殊の施設を施して參りたいと思いまするし、又能率が上つた
勞働者に對しては、これを顯彰する
方法も考える。
勞働者が社會人としての名譽、そうして能率を擧げて行くところの生産者としてのいわゆる表彰も講じて參りたい。そうして大體今日の勞働組合において十分だと思いますが、若し必要があるならば、この勞働組合なり、勞働
關係調整法を改正しても、いわゆる健全なる勞働組合主義を確立して、そうして
勞働者がその勞働組合を組織的鬪爭の目的から逸脱しないような方向に導いて參りたい、こういうふうな工合に考えておる次第であります。