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1947-08-28 第1回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    付託事件昭和二十二年度一般會計豫算補正  (第一號)(内閣提出、衆議院送  付)   ————————————— 昭和二十二年八月二十八日(木曜日)    午後二時三十五分開會   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十二年度一般會計豫算補正  (第一號)   —————————————
  2. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) これより會議を開きます。前會に引續き質疑を續けます。中西功君。
  3. 中西功

    中西功君 私は先日來千八百圓基準の問題について安本當局答辯を求めるため長官の出席を要求しておつたのでありますが、毎會來られなかつた。今日も亦來られないのであります。私その點を非常に遺憾に思います。  最初たちに提出されましたこの表の二、三の個所について少し申上げますが、この一番最後住居費以下の項目は、これは八月から十一月まで皆同じ數字であります。これは不動の數字であります。そしてこの數字を我々が詳細に檢討いたしますと、全くこれはでたらめと言うより外に形容がないのであります。例えば一番最後交通通信費というところを見ますと、働く者の通勤代、それが六キロということになつております。六キロというならば、これは新宿澁谷間のキロ數でありまして、こえいうふうな短い距離がとにかく基準なつておる。以前の本會議において、ちよつと忘れましたが、もつと大きなキロ數通勤キロとして厚生大臣の方から確か言われたと思います。そういう數字とも全くこれは違つておる。更に通勤代に外に汽車その他という項目がありまして、二十九圓八十二銭が上つておりますが、これがいわゆる四・二家族、いわば五人家族の一ケ月のその他の交通費でありまして、この表の中には、闇購入部分食糧において相當あるわけでありま4。從つて買出しに行く場合もあるわけでありますが、そうした場合に、この二十九圓八十二錢では一體どこまで行けるか、これは實は私が計算して見ますと、薩澤までも行けないのであります。若しこの闇購入部分が一囘で済んで來たならば、恐らく十貫を超えると思いますが、そうなりますれば、お巡りさんに取つ捕つてどうにもこうにもならないという事情なのであります。更にもつと甚だしいのは、葉書が三ケ月に一囘しか出せない、手紙が又二ケ月に一囘、電報に至りましては驚くなかれ二十一年に一囘しか出せない。こういう計算なつておるのであります。こういう點はもう到る處にあるのでありまして、入場料に至りましては、いわゆる四人家族におきまして三ケ月、或いは四ケ月に一囘まあ映畫が見られる、こういう調子であります。その他娯樂費というふうなところでは、新聞、圖書、こういうものが擧がつておりますが、子供その他が使いますところの教科書は一年間に三册しか買えない、こういう状態であります。參考書至つては十七年に一册買える、こういう状態であります。更に理髮代を見ますと、理髮代はこれは四人で……これはパーマがありますから一應三人ぐらいといたしますと、三人が結局三ケけに一囘、ですからまあ三ケ月に一囘しか理髮に行けない。三ケ月に一囘の頭は一體どんな頭かよく考えて貰いたいと思うのです。憲法の第二十五條には、「すべて國民は、健康で文化的な最低限度生活を営む權利を有する。」又「國はすべての生活部面について、社會福祉社會保障及び公衆衞生の向上及び増進に努めなければならない。」ということがはつきりと規定してありますが、果して今言つたような、こういうふうな數字で、生活が文化的で健康的な生活かどうか、入沿は一ケ月に二囘という勘定になりますが、とにかく參考書一册が十七年に一囘しか買えないというような生活が、どうしてこれが文化的な生活と言えるか、全く動物と變らない生活で、こういう基礎の上に立つておるのがこの千八百圓基準であるということが非常にはつきりすると思うのでありますが、その他一々擧げますれば、これは切りがない程、とにかく全般に亙つてすべてそうであります。例えば厨房費或いは荒物類というところになりますが、皿が四年二ケ月に一枚しか買えない、湯呑に至つては二十一年に一ムしか買えない、こういうふうな計算であります。又蒲團といいますか、綿はいわば四十二年に煎餅蒲團が一枚一應買える、こういう基準なつております、まだ後澤山問題もありますが、一體にこういう基準安本當局は作つておるわけでありますが、これが果して我々にいわゆる最低限度生活にもなるものかどうか、一體これは本當に働く者を愚弄していないかどうか、これに對する安本當局の先ず囘答を要求いたします。
  4. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) お答申上げます。今擧げられました生計費基礎になま前笑りますところの諸物料は、去年の七月以來數ケ月の生計費實績から割出しました物料の單位でありまして、遺憾ながら現在の榮情としてはこの程度消費量しかない、この程度消費量耐乏生活をお願いする以外にない。こういう現状でありまして、その現質から見まして更に最近の物資需給状況等を勘案いたしましても、その當時と今と比べまして、今擧げられたような諸消費物朴需給關係がよくなつておりませんので、過去一ケ年間くらいの間の實情を更に飛躍的に増加えるという實情にない。遺憾ではございますが實際状況としてそういう物料計算いたしておるわけであります。從つてそういうものにつきましては、現在の状態としてはストツクその他を、特別の戰災者その他については別でありますが、そうでない限りストツクその他喰い潰すことによつて耐乏生活でこれせ切り拔けて頂く以外にないという状況をそのまま算定した數字でございます。
  5. 中西功

    中西功君 今までの安本竝びに政府の我々に對する約束では、千八百圓に一應決めて、そうして配給よくして實質賃銀を上げるから、これでやつて行けるというふうな説明であつたと思うのでありますが、併し實際にこういう内容を見て見ると、配給はよくなるどころが、全く殆んど配給しないのであります。若しさつき説明されるような非常に苦しい、こういう事情だというならば、これは何も配給をよくして實質賃銀を上げるというふうなことよはならんわけであります。結局において、はつきりとこれは食えない賃銀ではあるけれども、これで我慢してくれと、こうはつきり言うならば又筋が立つておると思いますが、一體こういうことで實質賃銀が上がるのかどうか。上つてはいないと思います。
  6. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) 實質賃銀充實につきましては、政府といたしましては、先ず飲食物費に重點を注ぐということにいたしまして、飲食物費の方は大體八月以降相當程度に増加する、特に副食物なり調味料等々についてはこれを増加して行くという豫定にしております。それから光熱費或いは衣料費につきましても、今後切符制その他で相當増額を今計畫しつつあるのでありますが、これはまだ統計數字として確たるものとして、數字的に擧げる段階に至つておりませんので、ここには計上してございません。
  7. 中西功

    中西功君 尚その上、實はこれに物として入つていないもので實際我々の必要物資の中に入つている物があるわけであります。それは我々日常消費しておつて分り切つたことで、ここに書いてある部分は極めて少いのであります。もつ澤山のものを我々は消費しております。その場合、その他という最後項目で、この表では四十圓八十九錢しか見積つておりません。こういうふうな四十圓では、勿論一つのものを買つてしまえばそれで終つてしまうわけであります。こういう點についても、この表はいかにでたらめであるかということは分りますが、これについてちよつとお尋ねいたしますれば、この表の最初の方に、家庭菜園から一日五十カロリーを攝取する見込であるということが書いてあります。一日一人五十カロリーというのは決して少い數字ではなくて、これは一日に四・二人に直しますれば二百十カロリーになりますし、それは又米でこれを計算して一ケ月に直しますと約一斗八升になる、大體二斗近くになる。米に換算するとこういうふうな可なりの數字ではありますが、それではこういう家庭菜園では少くとも一畝以上或いは一畝半くらいの畑がなければならんわけであります。一般に我々働く者は平均してそんなに家庭菜園を持つておるかどうかということ自體が問題でありますが、一應それを別にいたしましても、それではこの家庭菜園に必要な資材或いは農機具その他のものは一體どこに見込んであるのかということが問題であると思うのです。そういうことを大體見込まずに、若し五十カロリー家庭菜園收入というようなことを考えておるとしたら實におかしいと思うが、その點はどうですか。
  8. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) お答えいたします。生計費の中の「その他」の金額は今四十圓八十九錢とおつしやいましたが、配給による支出金額が四十圓八十九錢でございまして、その他に自由購入によるものを四十一圓七十二錢を含めまして、合計八十二圓六十一錢を見込んでおります。尚ここの「その他」以外に各費目につきまして、若干その他を計上しておりますので、その中にも「その他」があることを御覽下さるようにお願いいたします。それから家庭菜園の五〇カロリーの問題でございますが、大體この家庭菜園その他によつて攝取せられる熱量一人平均五〇カロリーといいますのは、その前に書いてございますように、飲食物昭和二十二年二月から四月の東京給料生活者の家計調査の結果によつたものでありますが、その實績からして大體において一人平均五〇カロリーということになつておりますので、それを一應そのまま擧げているわけです。更に別の調べで東京都の家庭菜園自家菜園等々から收穫せられる大體の數を、東京都の人口で割つた結果も大體においてこれと同じで、その兩面から見て大體五〇カロリーということになつておりますので、これを豫定して統計の中に入れた次第であります。
  9. 中西功

    中西功君 問題は五〇カロリー數字ではなく、その五〇カロリーを若し我々が平均して攝つておるとすれば、當然それに必要な種子代とか農機具というものが可なりの數擧げてなければならないわけなんです。それがあるのかないのか……。
  10. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) お答えいたします。大體「その他」に入つておりますし、それから先刻申上げましたようなその他の費目の中の「その他」の中にも分散して入つておると思いますが、月々に割りますと非常に少額になつております。それからのみならずこの現在の状態においては大體新らしくそういう農機具その他を買入れるということは豫定しておりません。
  11. 中西功

    中西功君 種子代、そうしたものは「その他」に入つておるわけですか。
  12. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) 大體入つておるのであります。
  13. 中西功

    中西功君 大體入つておるというが、本當に入れてあるのですか。
  14. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) そうです。それを見込んで……。
  15. 中西功

    中西功君 どのくらい見込んであるのですか。
  16. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) 今ここにちよつと種子代がこの中に幾ら現實に入つておるかという資料をここに手持ちがございませんが、調べれば分りますので、パーセントで幾らということは分るようになつております。
  17. 中西功

    中西功君 それじやそれはそれで一應お預けいたしまして、次には、この中には御存じのように入場料即ち映畫を見たりする場合の入場料はは三、四ケ月に一囘ということになり、金額では四圓七十八錢になつております。更にこの嗜好品飲食物嗜好品という項目においては、コーヒーその他は勘定に入れてないのであります。ところで私は米窪國務大臣質問したいのでありますが、米窪國務大臣は、一番最初のころ委員會における私の質問に對して、一五五〇カロリーで食えるか食えないかということを質問しましたときに、食える者もある食えない者もあるというふうな、極めて無責任な答辯をされたと思います。食えない者があるというふうなことで、若しこの平均賃金が決められたとしたら全く人を馬鹿にしておると思う。ところが問題はそれでなく、この二十六日付の東京新聞座談會において、米窪國務大臣はこういこと言つております。「これはこれ以上節約できないでしようが、國も企業も勞働者赤字でありますので、その他の家計費、例えば映畫とかコーヒーを飲むこと節約して頂きたい、」こういうふうに言つておるのであります。一體この千八百圓の中にどこにコーヒー代が書いてあるか、入れてあるか、或いは又四ケ月、三ケ月に一囘ただ僅かに四圓なんぼしかない入場料を節約して一體何になるか、僕は米窪國務大臣が全く出まかせで、その場を言つておると思うのです。はつきりした囘答を要求いたします。
  18. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) お答えします。經濟安定本部の調査によりますというと、一五五〇カロリー、更に自家菜園から五〇カロリー自家菜園のある勞働者もない勞働者もあると思いますが、自家菜園を持つておる勞働者においては五〇カロリーが更にこれを足すことができ、大體一六〇〇カロリーくらいになる、併しこれは大人も子供も男も女も込めた平均でございまして、青年男子においては大體二二〇〇カロリーになるだろう、そこでえらいお叱りを受けましたが、食える者もあれば食えない者もあるとこうお答えしたのは、その人の體力にもよりますし、生活の考え方、いわゆる生活觀というものもあるので、私としては決して不まじめな答えではない。そういういろいろのケースを考えて行くと、そういうお答えをするより外に方法はない。日本は今日敗戰國であるということ、これがすべての經濟問題、今日の經濟危機をわれわれが考える前提になつております。諸外國、いわゆる戰爭後の戰敗國の例を見ましても、日本人の取つておる二二〇〇カロリーというものは、決していわゆるノーマルの状態から言うと勿論これは少いのであるが、こういつた敗戰國の立場から見ると、諸外國殊に歐洲の敗戰國現状に比べて見ると決してそう惡くない。惡くないからしてどうこうということでなしに、そういう敗戰國である日本が經濟を復興して行くのには、一部の闇成金やブローカーを除いては全部いわゆる赤字の財政である今日においては、お互に辛抱して行かなければならんじやないか、こういうことを申上げたのであります。
  19. 中西功

    中西功君 コーヒーは……
  20. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) コーヒーというものを節約してどれくらい出て來るかということは、一例として申上げたので、必ずしもコーヒーや映畫で以ていわゆる窮乏生活耐乏生活というものが全部解消されるものではない。即ち私は三つ方法で大體吸收し得る、即ち勞働者の主張しておる二千六百圓と標準賃金千八百圓の差の約八百圓というものを吸收する方法としては、いわゆる流通秩序の確立ということと、それから物價の安定、公定價格によつて物配給されるという面と、それから税の方の基礎控除額を百三十圓に上げる。この三つ吸收方法で吸收して尚且つ八、九、十月は赤字が出て來る。その赤字をどうするかということについては、固より全部コーヒーだとか映晝ではこれは解消しませんが、一つの例を申上げたので、そういつたことで以て、勞働者のいわゆる家計費の若干は自分のいわゆる家計費の節約で何とかなるじやないかという一例を申上げたのであります。
  21. 中西功

    中西功君 問題はその一例なんです。この千八百圓においては、ここで煙草のところを見ましても、この煙草は實は五本配給なつております。こんなことは、四本配究なつているぐらいのことは、政府委員としてもう少し考えておいた方がいいと思うのです。で、只今四本しか配給にならんというこ徳は分り切つたことじやないかと思うのです。それでこういうふうに……併しこの煙草の方では、この千八百圓では闇で一本も買えないのです。多くの人は、可なりの人がピースやコチナを實際つておる。買つておるが、とにかくこの表では、この千八百圓では買えない。そういうふうな切り詰めた、もう全く問題にならん程切り詰めた生活にしてある。先のお話のように散髪は三ケ月に一囘ぐらい、ぼうぼう髪を生やして置かなければいけないというような調子なつている。併しこういうふうに新聞で談話を發表……言われると、まるつ切りまだ餘裕があるかのような、切り詰められる可能性があるかのようなことを、とにかく言つておることになると思う。で、實際コーヒーということなんか全然掲げていないのに、而もこれをあるかのようにして、千八百圓でこれが飲めるかのようにして言つておるということは、非常に僕は無責任だと思います。  更に一五五〇カロリーの問題でありますが、これはこの前質問申上げたので、ただ一點だけ質問いたします。さつき敗戰國だからこういうふうな状態は止むを得ないということを申されておるのでありますが、これはこの前も私が質問申しましたように、或る特殊な事情でこれを減らしておるのか、それとも實際にこれで食えるから、この表を、この數字を出しておるのかということを、私ははつきり聽きました時に、恐らく米窪國務大臣囘答したと思いますが、これではつきり食えるから出しておるのだ、決してその他の政治考慮はないのだということを申されたと思うのであります。ところが今日の説明を聽いておると、何か敗戰國であるという特殊な事情であるから、これで止むを得ないのだというふうな説明ばかりなのであります。その説明が全く矛盾しておると思います。一五五〇カロリー、これは勿論子供も赤子もすべて平均しての數字であります。併し問題は平均がこの一五五〇カロリーでは、ただ我々が何もせずに生きておるというだけの數字なんであります。ベイサル・メタポリズムというようなものに近い數字なんであります。そうして又經濟白書の中でも、或いは又政府が發表したもの中でも、平均二一四〇カロリー要るというのは、これはもう殆んどの榮養學者その他の者が皆が認めておる。又實際に我々の生活を見ましても、誰しも一五五〇カロリーだけしか食つていない者はないのであります。皆もつ澤山食つておる。これは確實なんです。而もそういうふうに……これはもう誰だつてそうです。實際において一五五〇カロリーよりも澤山食つている。又一般榮養學者の一致した見解でも二一四〇カロリーは要るということになつておる。私はここで問題にしたいのは、こういうふうな闇は止めて貰いたいということであります。はつきりと要るものは要るものとして計算してその基準に出さなければ、決して日本食糧問題は解決されない。一五五〇カロリーも何とか辻褄を合せて、あとは闇で買つてくれ、闇で處理してくれ、こういうふうなことでは永久に食糧の闇は絶えないのであります。でありますから私は敗戰國であるとか何とかといふうなことに拘泥せず、我々が本當に生きて行くこと、これはポツダム宣言においてはつきり認められておる。私たち政府のこの問題に對する囘答を聽いておりますと、恰も敗戰國をであるとか、そういう事情に事寄せて、自分のその出たらめな數字を合理化しようというふうに聞えるわけでありますが、私はここで一つの提案といたしましては、もつはつきりと二一四〇カロリー要るなら要ると、その基礎に立つてはつきり家計費計算して貰いたい。それでこそ初めて闇がなくなるわけであります。そうして又若しいろいろの都合で、急にそれができないならば、もつ廣範圍に民間の學識經驗者を集めて、どれだけ實際に要つておるかということを計算して、それを基準にして食糧政策を立てて貰わなければ、いつまでも我我には闇が附いている、闇は解決されない、そう思います。安本當局或い政府當局において、そういうふうにこの基準を……これは我々の食糧問題の根本です。この基準を最も公正妥當な上に置くような措置を取る意思があるかどうか、それをお聽きしたいのであります。
  22. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) 御質問煙草の問題からお答えいたしますが、煙草は五本となつておりますが、おつしやる通りに男一人は四本でございますが、一世帶でございますから、女一人を一本にしまして五本で、決して出たらめな無責任なことにはなつておりません考えであります。それからカロリーの問題でございますが、平均いたしまして一五五〇カロリーが大體生計費物量基礎なつておるのでございますが、これは世帶主につきましては二二〇〇カロリー、妻において一七九五カロリーというようなふうに、子供その他においても相違がございますので、平均一五五〇となつております。併し夫においては二二〇〇カロリーなつております。尚主人が勞働者であつて勞務加配がある場合には二四〇〇カロリーということになつておりますので、現在の日本食糧事情からすれば、大體これで我慢して頂く以外に方法はないのではないかと思います。尚一五五〇カロリーが非常に過少なものであるというお話でありますが、過去一年間の生計費調査その他によります實績から見て參りますと、大體去年の實績が一五〇〇カロリーでございますから、それから考えても、そんなに今おつしやるように、非常に不可能な數字ではないと思つております。併し勿論今おつしやいましたように、平均一五五〇カロリーというものが人間の生活を保持する上において十分であるとは私たちも思つておりません。非常に不足したカロリーであると思つておりますので、勿論食糧需給について格段の努力をして、成るべくカロリーを上げるようには努力いたしますが、さつき米窪大臣の方からのお話もありましたように、國際的の影響もございますので、手放しの楽觀は許されないということを申上げて置きます。
  23. 中西功

    中西功君 それで次に質問いたしますが、實はこの間も大藏大臣のここでの説明にもありましたように、この千六百圓水準基礎内閣統計局司令部指導の下に、全國主要都市において調査しております消費者價格調査によつているのでありまして、この調査は各階層各職業を通ずる平均的な生計費として、最も客觀的な信用のできる數字と認められるのであります。こういうふうに言つております。これは司令部指導の下に行われました調査でありますが、この調査と、それから千八百圓のこの基準との關係が極めて曖昧になつておると思うのであります。私の所見を述べれば、千六百圓基準の時には、確かこういうふうな權威ある調査をされた。ところがこれは確か今年の一月から三月頃の……はつきり私覺えていませんが、とにかく今年の三月或いは六月の數字ではないと思います。それでそれに基ずい調査をされたわけでありますが、ところがこういういい調査が現にあるのに、千八百圓平均のときにはその調査がさつぱり反映されていないかのごとく見えるのであります。一體それはどういうわけでありますか。
  24. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) お答えいたします。千八百圓を決めましたのは、御承知のように、當時勞働者賃金の全國的な現実の賃銀調査基礎にして千六百圓という數字が出まして、それに撥ね返りその他を考えまして、千八百圓という水準に決めましたので、あの消費者價格基ずく生計費基礎にして調べたというものではございませんので、その相違がそこに現われておると思います。
  25. 中西功

    中西功君 非常にはつきりしたと思うのであります。千六百圓水準の時にはそういうふうな權威ある調査をされた。ところが千八百圓というのが問題になつたときには、そういう調査ではなくて、大體の賃金調査によつて行われておる、こういうまあ二本建であります。それは非常に奇々怪々だと思うのでありますが、なぜ政府當局がその千六百圓を決めるときの權威ある調査を科學的に補正して、そうして新らしい賃金水準を決めなかつたか、恐らくこうだろうと思うのであります。その完全なフオーム……こういう杜撰なものではないのであります。もつと完全なフオームでされたならば、恐らく今年の三月には三千圓、或いは四千圓の間を行くような數字が出ただろうと思います。或いはそれを今年六月末に適用したならば、恐らく五千圓を超える數字が出ただろうと思うのであります。然るに現實にそういう權威のある調査というふうな數字がありながら、わざわざ別の計算によつて千八百圓を決定しておると思うのであります。それに對する所見如何
  26. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) お答えいたします。内閣統計局消費者價格調査は、御承知通り勞働者、俸給生活者その他闇屋等々の至るまで、すべての人々の消費者價格を含んでおりますので、而もそれは直接生計費を出した調査ではございませんの、個人價格を主として調査しておるのでございます。從つてそこから生計費を推算するとすれば、それは便宜的な推算に過ぎないわけであつて生計費調査として完全なものだとは私たち考俣えておりません。更にそれから尚それにいろいろな修正を加えて、勞費を推算するということになりますと、非常に想像、推算が混つて來て、殆んど捕捉し得ないような状態になると思いましたので、それよりも直接に現實の賃金が出ておりますので、現實に行なわれておる賃金基礎にして、賃金の大體の平均を出すということに努めたわけであります。
  27. 中西功

    中西功君 そういたしますと、大藏大臣竝びに政府當局が、非常に自信を以て表明した最も容觀的な信用のできる數字と認めるのでありますというこの聲明は、インチキだということにならざるを得ないのでありますが、これはいかがでしようか。
  28. 佐多忠隆

    政府委員佐多忠隆君) 今お讀み上げの答辯は、いつの場合の答辯か、よく私たち存じませんが、恐らくそれを政府の方で使いましたのは、物價の現實の騰貴率の問題を算定する時の基礎にそれを使つておるのじやないかと思うのでございます。
  29. 中西功

    中西功君 念のために言いますれば、これは官公廳の勞働組合と政府當管が團體交渉によつて、千六百圓を決定された時の話であります。
  30. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 中西君、質問をお續け下さい。
  31. 中西功

    中西功君 それでは、次にもうあと二點であります。(「成るべく簡單に願います」と呼ぶ者あり)米窪國務大臣質問いたします。今までのいろいろのこの問題に關する討議を見て見ますと、結局この千八百圓基準というのは、計算の上の基準であつて、決してこれが賃金を抑えようというのではないというので政府答辯であります。それだから民間企業において、十分餘力のある所は、それ以上貰えばよろしいというわけでありますが、何故そうすれバ、單なる計算基礎であるものだけを、官吏の場合だけ、この豫算において千八百圓基準として組むのかどうか、尚現在官公廳の勞働者は、三千圓以上の要求とか、或いは二千百三十圓の要求とか、いろいろ問題になつております。現在長野縣の諏訪で全遞の中央委員會が、この問題を眞劍に討論しております。こういうふうに、千八百圓では駄目だというわけで、恐らく非常な勞働者の不滿が昂じて來る。こういう時に、民間の企業においてはまあいいんだが、ただ政府企業では駄目だということになるわけであります。その點極めて片手落ちである。賃金を抑えないと言つておりながら、結局この豫算においてはつきり抑えておる。私はこの豫算が實行できるかどうかというふうな意味から見て、その問題が非常に重要であると思うので、質問をするわけであります。
  32. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 答辯がありません。
  33. 中西功

    中西功君 米窪國務大臣答辯を要求いたしますが、普通の民間においては、そういうふうに單なる基準であると言つておりながら、何故豫算の面においてはつきりと、即ち官公廳の場合においては、はつきりとこれで抑えたか、何故抑えるのかという問題であります。
  34. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) お答えいたします。七月の初めの給與審議會において、新物價體系を算出する基礎的なフアクターの一つして、企業の企業費というか經営費の大部分を占めるところの、私の計算によると六割ないし七割の大きな部分を占めるところの賃金を、どこにその標準を求めるかということが非常な重大な問題であつたのであります。從つてこれは當時の各種の調査、情報によつて、民間の三十五種の重要な工業の業種別の平均賃金を求めると、大體千五百八十何圓、約千六百圓、又當時官公廳は千二百圓ベースが千六百圓に上げられておつた。各種のそういうデーターを基礎として千六百圓が當時物價體系を一應算出する標準名目賃金ということに決めたのであります。但し先程すら度々お話があつた新物價體系を決めたために、賃金の撥ね返り等を考慮して、二百圓というものを追加して千八百円ということに決めたのであります。これは仰せのごとく民間においては千八百圓乃至は二千三百圓も拂つておる所もおれば、或いは千八百圓以上の所もあるし、官廳側においてはそういつた最高最低のいわゆる幅が非常に少いので、この點は大體において千六百圓乃至は千八百圓程度平均化されておるということで、まあ餘裕がないことは政府としても誠に遺憾でございまするが、政府としては一日も早くいわゆる實質賃金に近づけるために、各種の實際標準賃金との、いわゆる各自賃金と實質賃金との差を吸收する方法について考慮しておおのでございまして、この點は勞働者側と雖ども政府賃金政策に御協力下さらなければ、どうしてもこの三ケ月ぐらいでもつて吸收するというところの政府の案が樹立できないということを御了承願いたいと思うのでございます。
  35. 中西功

    中西功君 最後に先立つてもここで問題になりましたがゐ今後政府の支出は國會の承認を受けなければいけない、緊急的な支出も國會の承認を要するという傾向になつていると思いますが、現にこの千八百圓ではもう駄目だということは、これは今起こりつつある廣範ゐ賃金値上げ運動を見れば分ることであります。そういう場合に、今の政府としては何かそういうための餘地として、即ち賃金値上は運動に對する餘地として、何から策を考えておるかどうか、その場合に結局これは國会の承認を要するからと言つて逃げるのか、それとももう一度よく勞働者或いは從業員の實情を考えて、必要とあれば何か特別の措置が講ぜられるようなことを、この豫算委員會或いは國會に諮つて置くのかどうか、その點ちよつと聽いて置きたいと思います。
  36. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) お答えいたします。全官公廳の方からの要求は、本人に二千圓、家族一人に對して千圓という生活突破資金を最近に要需して來ております。これは概算大体百億圓を突破することでございまして、當然これはその筋のいわゆる警告によつて、これを承認するかしないか、或いはそれが半分になつた場合にも、或いはそれが寺分の一になつた場合にも、當然これは國會にかけるべき筋合のものと考えております。そういう手續きの問題はさて措いて、政府としてはこういう巨額のものを承知し、承認することは、今日段階はおいての、いわゆる圭追加豫算を編成した時分の政府の見解としましては、そういう財源がないということと、もう一つは假に財源があつても、それを承認することは、師角政府が決めて國會の承認を得たところの、經済緊急對策の中心題目であるところの物價賃金との惡循環を繼ち切るという根柢がすつかり崩壊してしまう、こういうことからしてこれをお斷りしておるのでございます。從つて中西さんの今のお尋ねは若しも新らしい財源が或いは新らしい方法においてそういう臨時のものが支給することが國會において假に承認を受けた場合においても、それが政府の方針であるところの經済緊急對策の根柢が崩れないということを政府が認めた場合には、政府はこれに對して支出を考慮する考えでおります。
  37. 中西功

    中西功君 この官公廳の要求は、今は二千圓で突破資金の問題で出ておりますが、恐らく今後基本即ち基準の問題に觸れて來る、これは當然の問題だと思います。それは現にここで見られるように、この千八百圓基準が、どう考えても實情に合つていないというところから見て、當然なことだと思います。從つて又この千八百圓ではもう維持できない時期が直ぐに來る、從つて又この豫算案もこれに結局實行に當ると種々の點に破綻を來して來る、そう思うわけなんでありますが、政府としては今言われましたように餘裕はない、即ち豫算面に餘裕はないから要求が容れられないという場合と、それともう一つは、自分たちが作つておる新物價體系が崩れるからこれを容れるわけには行かないという二通りがあると思います。で、豫算の餘裕の問題について言えば、これは尚我々に外に財源を求めることが十分できます。それは勿論社會黨自身が總選擧に公約したような方法でも、十分が財源出て來ます。公債利子を打切つただけでも八十億圓の餘裕が出て來る。だから餘裕は決してないわけじやなく、これは何とかつくと思います。そうして又新物價體系の問題も、これも實際に他の産業において今どんどん給與が上つております。上つておるのに、ただ官公廳だけが幾らこれを頑張つたところで無意味な時期が來る。そう思うわけでありますが、まあそういうふうな場合において、特に現在の場合その二通りの問題があるわけでありますが、最後に即ちこの豫算面において、そういう要求を今後は容れるか容れないか、或いは又新物價體系等の關係から見て、そういう要求を容れるか容れないか、そのはつきりした米窪國務大臣の見解を聽いて浄の質問を終ろうと思います。
  38. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) お答えします。中西さんの最後の御質問た對しては、先程私の答辯で盡きておると思いますが、折角繰返してのお尋ねでありますからお答えします。政府はすでに國會の御承認を受けた經済緊急對策のその中核條項である即ち物價賃金との惡循環を切るためには、どうしてもああいう方法を採つて物價體系を立てなければならないという確信を以てやつたのでございます。從つて、新しい財源が政府の方では今日見當らないと思つておりまするが、假に中西さんの方で新しい財源があると、こういうことにして、そうして政府の國家財政ということからは、その要求に應ずることができないというその根據がそれで破られた場合において、而もそれがその方法によつて見ても、政府のインフレーシヨンを喰い止めて行こうという見地から發表した經済緊急對策が、尚且つその新しい新求を容れても崩れないと、こういうことであるならば、政府は支出の臨時的の面から見ても、その筋の注意もありまして、これは國會へかけることになつておる。國會にすべてをかけまして、決して政府は責任を逃れるわけじやないんです。官公廳の場合においては、政府が雇主——一應雇主の形になつておりますが、政府の支出する金は國民の金を支出するのでありまして、某新聞の社説にもありまする通り實際國民が官公廳の役人を雇つておるといつても差支えない、從つて事は國民の負擔に關する問題でございまするから、國民に代表する國會にすべてをかけて、そうして國會がよろしいという御決定があれば、政府はこの財源の見継かり次第そういう支出をしても差支ない。こういう工合に考えておるのであります。
  39. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 勞働者の設置は前内閣以來の懸案でございました。官僚勢力を盛り済させないように本院で行いました修正が衆議院ど同調せられ、又この豫算が本院を通過しますならば、いよいよ九月一日を以てこの意義深き産聲が揚がるのであります。この機会において、政府は特に松榮ある初代勞働大臣に豫定せられる米窪國務大臣に私の希望を申上げてその御所信を伺つて置きたいと存じます。  祖國再建の成否が一に懸つて生産の振うか振わざるかにあることは、改めて言うまでもありません。社會黨の一枚看板であります分配の公正固より大切でありますが、この窮乏の祖國において生産の昂揚こそ、その必須の先決條件でなければならません。私共自由黨の最も意を用いておりますのはこの點であります。厚生省から新たに勞働省へと、我々がこの大きな豫算を認めますのは、正に生産省として、積極的な生産推進省として大きな希望を持つからであります。各國の勞働省設置當初の過渡期を見ますると、勞働者の團結權の保護、社會政策の實施、福利増進というような方面に主力が向けられて、産業效率の増進とか、生産意欲の向上ということが、一時的ではありましようが、餘り問題にされないか、或いは却て低下したような實例が多いのであります。我が國のごとき敗惻後最も生産の必要な時、勞働省設財のために一時でも停頓がありますならば由々しき大事であります。勞働者の設立は、國家が勤勞大衆に特別の敬意を關心とを拂うことの表現ぶありますが、併しかりそめにもこれを以て階級組織の威力で、我等が圓い取つた勝利の城壁だ、これを據点としてますます權利を伸長し、擴大しようというようなふうの思い誤りがありまするならば、國家百年のために深火に堪えないことであります。權利には必ず義務が伴い、自由には先ず自律が裏付けられなければならん。本省の設立は勤勞大衆の榮譽であると共に、又必ずこれに應え、これに價すべき國家に對する至上義務の嚴存することを十分徹底せしめることが最も必要だと思います。これに對して章府はいかなる用意を持つておられる、單に大衆に迎合したり、煽動したりして、目の前の評判を氣にするようなオポチユニストにならずに、幾十百年の後にかくのごとき深き元慮と信念とを以て生産再建の礎石になられ、後世の史家をして初めとその價値を認識せしめるような名大臣となられることを、特に一生を勞働に捧げて來られた米窪さんにお願いしたいのであります。これに對する國務大臣の所信を伺いたいと思います。
  40. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) お答えいたします。佐藤さんの懇切なる激勵的なる御質問を受けて、感激に堪えないのであります。勞働者を設置することは、勞働省設置法案の第一條にございます通り勞働者を社會的地位を確保すると同時に、その勞働條件を維持改善する、更に後段において、かくすることによつて産業の復興を圖り國民生活の安定を圖る、こういうことが勞働省設置法案の第一條の目的であります。從つて今御質問中に御述べになつた御意見については、私全然御同感でございます。そこで勿論勞働基準法によつて決められたような條件、或いは勞働者に對する勞務の加配米確保、生活必要品の確保等は、今日委廢した日本の經済、殊に識金及び識材の面において殆んど餘裕のない日本において、勞働者の生産性の昂揚ことが經済復興の唯一の原動力と言つて差支えないこの現状において、勞働者の勞働能率を高め、その生産意慾を向上せしめるためには、やはり勞働者の地位を確保し、そうしてその勞働者のいわゆる保護を講ずる勞働基準法の實施を我々圖ることは當然でございまするが、これを以て勞働者をスポイルするというような結果になることは嚴に戒めて參りたいと存じまして、政府は一方において健全なる勞働組合主義の確立を期して參りたい。即ち勞働者の權利は政府においてあくまでも守るが、同時に勞働者において社會人としての義務を果すために、是非共勞働者がこの敗戰後の日本の經濟復興に協力することを勞働者に懇請するがためには、いわゆる勞働教育の重要性を考えまして、そうして勞働者がいわゆる正しきを踐んで誤らない、そうしてその目的は單に階級的利害の達成のみでなくして、いわゆる國民的利害というものを背景として、自分らこそこの日本産業の復興のいわゆる主人公であるという矜持を持つて貰うように勞働政策を運んで行きたい。從つて我々としては、この産業復興會議というものを相當重要視しまして、そうして勞働者が階級的利害の達成にのみ走らず、一方において政府、經營者と協力して産業復興のために生産鬪爭をやつて貰いたい。又一方においては重大なる消費者、重大なる消費者として、いわゆる流通秩序の確立、いわゆる闇の撲滅のためにも勞働者が協力して貰うということを勞働者に懇請して參りたいと思います。同時にそういう意味において、我々は現在の生活給というものを土臺としたところの賃金制度も行く行くはこれを能率給の點を加味して、そうして勞働超過にならない程度に、勞働者の能率増進というものを達成するために、特殊の施設を施して參りたいと思いまするし、又能率が上つた勞働者に對しては、これを顯彰する方法も考える。勞働者が社會人としての名譽、そうして能率を擧げて行くところの生産者としてのいわゆる表彰も講じて參りたい。そうして大體今日の勞働組合において十分だと思いますが、若し必要があるならば、この勞働組合なり、勞働關係調整法を改正しても、いわゆる健全なる勞働組合主義を確立して、そうして勞働者がその勞働組合を組織的鬪爭の目的から逸脱しないような方向に導いて參りたい、こういうふうな工合に考えておる次第であります。
  41. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 只今力強い御所信を伺いました。殊に法規を改正してでも只今私のお願いしたような方向に進んで行きたいという御信念でありますが、只今健全なる勞働組合主義というお言葉がありましたが、勿論組合の歴史が淺い我が國で、職場を離れて組合事務にのみ專念する者の若干あることは止むを得ないと思いますが、併しそれが一年も二年もその方向に職場から遊離してしまつて、いわゆる世間で申します勞働ブローカーというか、組合ボスというか、というような極端な場合が存外まだ殘つておるのじやないか、下手をすると、そういうものが殖えて行く心配があるじやないか、杞憂ならば結構でございますが、立派な料理屋が組合の事務所が、或いはクラブになつた。勤勞大衆がそこで眞に文化的な、明日の生産へのよき休養をする場所ならば結構でありますが、世間傳うる所にはいわゆる勞働貴族の一部の獨占的なものになつておるというような噂も巷に飛んでおる。そういうことから實際汗を流し職場で働いておる人に、どういうような影響を與えるか、私はこの點において特に多年勤勞者の味方でありました米窪國務大臣に、場合によつては私情を滅してでも餘程私は力を入れて頂かねばならん。役所といたしましてはどうしてもそういう組合の首腦部と申しますか、組合運動をする人と、極端に言えばボスを相手にして仕事をする方が話が早く付くということで、どうしてもそういうものが相手にされやすいというところに私は弊害が起りやすいと思うのであります。こういうことに對しまして、本當に現場で働いて生産に打込んである人たちに直結するように、今後の勞働者の運用についていかなる用意と所信とを持つておられるかを伺つて置きたいと思うのであります。
  42. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) お尋ねの點は極めて重要でございまして、結論から先に申しますと、そういうことにならないように勞働教育をして參りたいと思いまするが、私としては大體勞働教育の基本的條件としては、各組合の自主的な方法で教育を進めて貰いたい。これを言い換えますと、そういつたボス的存在というものが組合員自體によつて排斥されるような時代が來なければ健全なる勞働組合主義にならない。即ち公正なる方法によつて役員を選ぶ、選ばれたる役員は民主主義の觀念からして、常にその組合の多數の意見を反映する。そうして最近その筋の注意にもありました通り、度々役員會を開いて、そうして自分らが役員として行動したことを組合に報告する。そうして組合の一般の、英語で言えばランク・アンド・フアイルの意見をそこで聽いて、そうしてそれを文字通りに相手側に傳える。即ち幹部の横暴獨占ということでなしに、極めて民主的な方法で、役員が選ばれ、選ばれたる役員極めて民主的な方法で上層部の意見を採入れる。これが私は健全な勞働組合主義の一つの現れであると思う。一部の幹部が獨斷専行して多數の意見を求めずに居ながら、いかにも——多數の者の意見のごとく振舞うということは、これは勞働組合の邪道であるというふうに考えておるのでありまして、私左藤さんの御趣旨が實現するような方向に勞働政策を持つて行きたい、かように考えております。
  43. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 今一つ完全雇傭の問題でありますが、貿易の再開を前にしまして産業の合理化は必須の要請であります。これに對して組合側では事業の經營等よりも、先ず完全雇傭の先行というような聲を往々聞くのであります。最近頻發しております各種の機場鑛山等の爭議等にも、その閃きを見るのであります。失業問題だけならば厚生省で十分であります。産業を推進しようとするには勞働者にはもつと私は積極的な、時には捨身になつて涙を振つて馬謖を斬るような私は意氣がなくちやならないと思う。各職場を通じ一人でも多く就職せしめ、以て失業を少からしめるのは勿論でありますが、失業を少くする半面には、現在に職場で働いておる人々が敗戰日本の建直しのために、平素より以上に生産效率を上げりということが最も必要である。その眞劍な働きぶりに聊かでも惡い影響を與えないということが、私は勞働省の最も今後注意しなければならん點だと思うのであります。完全雇傭におきましても、效率如何ということが先ず重要問題であります。この點において勞働者は失業を少くすることに專念する餘り、生産昂揚に聊かでも弛みのないように、そういうようなたとい杞憂でも現場の人に與えないように、その點に十分注意を願いたいと思うのであります。これに對する今後の御方針を伺つて置きたいと思います。
  44. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) お答えいたします。完全雇傭——フル・エンプロイメントの理論につきましては、諸外國においても相當いろいろ違つた意見があるのであります。勿論理そとしては我が國の憲法においても規定されておる通り、人たるものは完全なる勞働意思と勞働體力を持つておるものは、皆それぞれ職を得る權利がある。生存する權利と同じように勞働する權利があるというその建前から言えば、失業者の一人でも出るという状態は決して理想的な状態ではないと思いまするが、今日日本のこの現状から行くというと、遺憾ながら直ちに完全雇傭の域に達することは到底困難である。從つて我が國の近い將來の勞働行政として完全雇傭に進むような状態が實現することを理想としながらも、尚且つそれのできない現實というものを直視しまして、そうしてそれについては勞働の機會を廣くする。就職の機會を廣くする。或いは職業の轉換をやる。そうして尚且つ救い得ない場合においては各種の公共事業等を起して新らしい事業に勞働者を吸收する。そうして救われない場合において最後方法、失業保險、失業手當を實施するということでありまして、これを以て見ても決してこれは惰民を養成し、そうして勞働者の能率を折角上げるものを、こういつた方法によつてむしろスボイルするというような結果にならないということを念頭に常に置いて、そうして失業對策も行なつて參りたい。こういうように考えております。
  45. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 この問題につきましては勞働省に全方を注いで頂きたい。かりそめにも一般に誤まつたという印象を與えないように御努力を願いたいと思います。  最後にともかく新らしい役所が設置され運營されるに當りましては、その人達は單なる各省の寄せ集めという嫌いがありまして、この意義深き發足をいたします際には、特に勤勞者の生産推進の原動力であるべき勞働省の人選につきましては、特に注意を願いたいと思うのでありまして、私の希望しますことは、職場においてみずから汗して業務に從つて來た勤勞者、技術者、事務員、そういう人々の中からいわゆる勞働運動のボス的存在でなくして、實際県場に直結したそういう指導的な人々の中から相當數をそれぞれ重要なポストに起用して頂きたい。思い切つた起用をして頂きたい。これについてどういうような只今意圖を持つておられますか、伺いたいと思います。
  46. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) お答えいたします。勞働省設置法案に確か衆議院において附けた附帶決議の中にも、その一つの決議はお尋ねのものであつたと記憶しておりまするが、英國でも勞働省のことを勞働及び社會奉仕者という名が附いておるくらいで、いわゆるサーヴイス省でありまして、從つて日本で今度できる勞働者もその趣旨に副う省であらしめたいということは私の念願するところであります。從つて私は事務當局に對しても、勞働省においてはいわゆる相當の係官、或いは少くとも係長ぐらいのものは第一線の窓口に出ろ、こういう方針を示しておるような状態でありまして、いわゆるサーヴイス第一本位で參りたい。從つてそれと相竝んで必要なのは今仰せの通りに民間側から成るべく有能者を簡拔したいということであります。但し勞働省は御承知通り三局が厚生省から參ります關係がございまして、全然新らしい無から有のできる省ではないのでございまするから、それらの點も考慮して、そうしていわゆる新らしくできる局には成るべく民間人を採用したいという方針で參りたい、こういう工合に考えております。
  47. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 申上げたいことはございますが、時間の關係上省略いたします。只今大臣の力強いお言葉と申しますか、約束と申しますか、これが必ず新らしい勞働省の運營に實現されますよう、いずれ明年度豫算を審議いたします通常議會までに、腕前と申しますか、成果を一つ刮目いたしまして、十分なる御奮鬪を念願いたします。
  48. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 御通告による質疑はこれで全部終了いたしました。他に御質疑はございませんか。別に御發言もないようでありまするから、直ちに討論に移ることに御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 御異議ないと認め、討論に入ります。原案に對して贊成、反對、修正等、御發言の上御趣旨をお述べを願いたいと存じます。
  50. 西郷吉之助

    ○西郷吉之助君 本豫算は、勞働省設置法案に對する豫算が先般内閣から提出されまして、各委員からいろいろの御意見も出て、勞働省設置ということが今日必要であるということは、私がここにその理由を申上げる必要もないのであります。又この豫算はすでに最終の帝國議會におきまして一部協贊を與えておりますし、又本院におきましては先般勞働省設置法案に對しまして修正可決しておるような現状であり、この豫算は補正豫算でもありまして、先般來政府の意見も聽きましたが、我我その詳細の點におきましては納得の行かない點もあるのでありまするが、大體了承いたしましたので、私はこの勞働省設置法案に對するところの豫算に關しては、政府原案に贊成の意を表する者であります。(「贊成」と呼ぶ者あり)
  51. 石坂豊一

    ○石坂豊一君 私は本案に對して贊成の意を表する者であります。本省は我が國における行政機構の最初の新機構でございまして、それの運營につきましても、過般來各委員から總理及び國務大臣に對してそれぞれ微に入り細を穿つた質問によつて討議されておりますし、政府も亦非常に親切なる御答辯があつたのであります。これら質疑應答の趣旨を十分に體得せられまして、本省の運營について國民の期待に副うように、十分に御注意あらんことに切に要望いたしまして本豫算に贊成いたします。
  52. 中西功

    中西功君 私は殘念ながらこの予算案に滿足することができないわけであります。勿論私も勞働省設置には贊成であります。それが勞働基準法を忠實に守つて勞働者の福祉を増進して貰うという點においては更に贊成であります。併し長い間質疑をいたしました結果、非常に判明いたしましたことは、千八本圓基準ではもうやれない。瞬く間にこの金が破綻せざるを得ないということは非常にはつきりしていると思うのであります。從つてこの案の組み方では結局實行ができない、再び又同じようないろいろのややこしい社會問題を生む、特に千八百圓によつて官公廳勞働者の俸給水準を固定する、釘附けてしまうということが非常に重大な社會問題を生む、その原因を作るということ、そういうことについて非常な憂慮をしておりますが故に、それらに贊成することができないのでありまして、この豫算案を私としては政府に返上したい、そう思つております。
  53. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 外に御發言はございませんか、別に御發言もないようでありますから、討論終局したものと認めて直ちに採決いたします。昭和二十二年度一般會計豫算補正第一號を原案通り可決することに贊成の方の御起立を願います。    〔起立者多數〕
  54. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 多數と認めます。よつて本案は可決と決定いたしました。  尚本會議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつて豫め多數意見者の承認を經なければならんことになつておりますが、これは委員長において本法案の内容、委員會におけめ質疑應答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとし、御承認を願うことに御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 御異議ないと認めます。尚八月十八日大藏大臣の報告せられたる官廳職員給與に關する説明要旨については、報告を受けたるのみでありまして、未だ審議を盡しておりませんから、これが審議は後日に讓ることとし、取敢えず緊急を要する昭和二十二年度一般會計豫算補正第一號に對する審議の經過と結果のみを本會議場で報告することといたしたいと存じまするが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 御異議ないと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書に多數意見書の署名を附することになつておりますから、本案を可とする方は順次御署名を願います。    〔多數意見者署名〕
  57. 櫻内辰郎

    ○委員長(櫻内辰郎君) 御署名漏れはございませんか……、なしと認めます。本日はこれにて散會いたします。    午後四時三分散會  出席者は左の通り。    委員長     櫻内 辰郎君    理事            木村禧八郎君            西川 昌夫君            西郷吉之助君            村上 義一君            中西  功君    委員            大野 幸一君            カニエ邦彦君            木下 源吾君            村尾 重雄君            石坂 豊一君            小串 清一君            左藤 義詮君            鈴木 安孝君            寺尾  豊君            大島 定吉君            木内 四郎君            佐々木鹿藏君            飯田精太郎君            江熊 哲翁君            岡部  常君            岡本 愛祐君            川上 嘉市君            島村 軍次君            鈴木 直人君            高田  寛君            渡邊 甚吉君            池田 恒雄君            川上  嘉君            藤田 芳雄君   國務大臣    國 務 大 臣 米窪 滿亮君   政府委員    經済安定本部財    政金融局長   佐多 忠隆君    大藏事務官    (主計局長)  野田 卯一君    大藏事務官    (主計局第一部    長)      東條 猛猪君    厚生事務官    (勞政局長)  吉武 惠市君