○稻垣平太郎君
只今議題と相成りましたる臨時石炭鉱業管理
法案につき鉱工業
委員会におきまする
審議の
経過並びに結果について御
報告申上げます。石炭の増産が
経済再建のうえに不可欠の問題でありまするだけに、本
法案につきましては朝野の視聽を集めておる
関係もありまして、本
委員会におきましても慎重
審議を重ねたのでございます。
只今この
法案の
内容につきまして、簡單に御
説明申上げたいと存ずるのでありまするが、御承知のように本
法案が重要
法案でありまする
関係上、去る九月二十九日の本会議におきまして、当院の要求により商工大臣より詳細御
説明があ
つたのでありまするが、今その要点を簡單に御
報告いたしたいと存じます。増産上國家管理が必要であるという具体的
理由につき、
政府当局が挙げておられるところを要約いたしますると、次の三点に帰するのであります。第一は石炭の重点主義政策を実施するに当りまして、
生産実態の把握とこれによる
生産要素の確保の問題、第二の点は石炭
生産上の人的條件、特に石炭鉱業における現場組織の
確立、第三の点は石炭鉱業の運営に関しまする民主的体制の
整備の三点でございます。
本管理
法案は、
政府の
原案によりますれば、附則を入れまして六十九條に及び、又衆議院におきまして可決、送付されました、いわゆる
修正案なるものによりましても六十四か條に達する相当廣汎なる
法案であります。ここでは法文の一つ一つに触れることは省略いたしまするが、前に述べましたごとく、本管理
法案の骨子ともいうべき三つの点が、
法案の
内容においていかなる項目により、いかに配列されておるかということを一応述べて置く必要があろうかと存ずるのであります。以下
政府当局の御
説明に従いまして、この点について御
報告を申上げます。
先ず第一の点についてでありまするが、周知のごとく石炭鉱業に対してはいわゆる傾斜
生産主義が採用せられておるのでありまして、乏しい國力の中から、又他の
産業の犠牲におきまして資金、資材等の物的國力が石炭に集中されておるのであります。從
つて政府としては一般
産業及び
國民生活に対する責務の上からも石炭
生産の実態を正確に把握し、真に必要な資材の量並びに資金の額を炭鉱ごとに確認すると共に、これを迅速適切に供給し、これが最も有効に活用される様指導して行かなければならないという建前から、先づ実態把握の手段として炭鉱別事業計画又は
業務計画を策定することの方法を取り、
政府原案においては一般炭鉱については第五條乃至第七條にこれを
規定し、指定炭鉱については第十六條乃至第二十二條に
業務計画として詳細に
規定しておるのであります。又事業計画或いは
業務計画の実施の状況を監査監督するためには、
原案第八條乃至第十條にこれをきていしているのであります。尚計画達成のためには、石炭の
生産に密接な関連を持つ事業部門、いわゆる関連部門の協力を得る必要があるのでありまして、いわゆる資材の原物化、設備の修理建設、貨物の
輸送等につきまして、強力な
措置を講じ得るように、
原案第四十三條に強力命令の
規定を置いておるのであります。
次に第二の点でありますが、即ち現場組織の
確立の問題でありますが、石炭鉱業は一般の鉱業部門と異なり、その
生産要素としての勞働力は、全体の上に七十%の割合を占めておるのでありまして、
生産実績は勞働者の勤勞意欲の欠如によ
つて決定的に左右されるというも過言でないのであります。固より勞働者の勤勞意欲の向上には、種々なる
方策が考えられるのでありますが、
政府は本管理
法案において、いわゆる現場組織の
確立と、その法制化によ
つて、これが実現を図らんとし、指定炭鉱の
生産協議会を以て問題解決の鍵としようといたしておるのであります。
原案第三十條乃至第四十條に
規定する
生産協議会がこれでありまして、端的に言いまして勞働者の経営参加の法制化であります。
次に第三の点、即ち石炭鉱業運営上の体制
整備についてでありまするが、先ず行政と経営との
関係において、監督するものと監督を受ける者とが直接対立する従來の
弊害を避け、石炭の
生産に関する技術、勞働、経理、それぞれの面における民間
企業のエキスパートが
生産行政に融け込むように
措置すると共に、又従來のごとき形式的な
委員会制度とは異なる行政
民主化のための実のある組織を設定しなければならないという見地から、本管理
法案におきましては、
原案第四十五條乃至第五十三條に
規定する石炭局を、又第五十四條乃至第六十一條に
規定する炭鉱管理
委員会を組織して、叙上の要請に応えんとしているのであります。次に
企業内部の
関係においては、事業主が現場に一切の努力を集中して弾力性のある運用を行うためには、特別の責任者を必要とするという建前から、本管理
法案においてはこれを炭鉱管理者と称し、その選任及び職務に関する詳細なる
規定を
原案第三十三條乃至第二十九條に明文化しているのであります。以上が大体
政府の
原案でありましたが、これに対し去る十一月二十五日衆議院におきまして
修正議決いたされました、いわゆる衆議院
修正案は、
原案に対しまして、量的に又質的に相当廣範囲に
修正されておるのでありまして、その詳細は十一月二十六日配付の閣第七十二号の資料によ
つて御検討願うことといたしまして、ここではその
修正された重要なる項目の二三を御紹介するに止めたいと存ずるのであります。
先ず官聽の一方的
権限を抑制いたしましたこと、いわゆる第五條の事業計画の変更に対する不服の申立て、又第八條の臨検検査の
修正、第九條の削除、
修正、第十條において炭鉱の休
廃止に対する商工大臣の許可が全國炭鉱管理
委員会の諮問じこうとなしたること、又
修正第十三條において指定炭鉱の基準を明示した点等もかような観点に基ずくものと考えられるのであります。第二に、指定炭鉱の管理について相手方を事業主といたしましたことであります。これは大きなる
修正であまりす。
政府案が炭鉱現場
業務の即決処理を促進する現実的な建前から、いわゆる炭鉱管理者と行政とが直結するというのにあ
つたのであります。炭鉱管理者に対するこの
権限に対しまして、
修正案においては
企業一体の観念を重視する建前から、事業主に全般的に
権限を留保いたしたのであります。
修正第十六條、第十七條、十八條、第二十條、第二十一條等かかような
意味での
修正でありまするが、これによりまして、指定炭鉱のいわゆる事業主の
企業権、人事権が
確立され、事業主の立場は明確と相成りまして、考え方によりましては著しく
強化されたと申してよいかと存ずるのであります。第三に、炭鉱管理者の選任及び解任の方式を変更するの外、その身分的地位に相当大幅の
修正をなしたことであります。炭鉱管理者を選任又は解任する場合、
原案においては
生産協議会の議を経なければならんことにな
つていたのでありまするが、
修正案ではその必要なしとし、又選任が
原案では商工大臣の承認事項にな
つておりましたのを、單にこれを届出事項にいたしたのであります。又炭鉱管理者の解任又は選任を登記によ
つて第三者に対抗することにな
つてお
つたのでありまするが、これを削除したのでありまして、これらの諸点は
修正第二十二條、同二十四條、
原案第二十七條であります。次に、炭鉱管理者は、
原案によりますれば、第二十八條の
規定により当然に事業主に代理権が賦與されていたのでありまするが、
修正案におきましては同條を削除し、新たに
修正第二十五條を追加いたしました結果、炭鉱管理者の事務計画実施に関する必要な
権限は、事業主から委任せられることに相成
つたのであります。
かくて炭鉱管理者は、それ自体の身分
関係からして、且つ又事業主との相互
関係において、考え方によりますれば
原案に比しまして相当弱体化されたというべきでありましよう。次に罰則の適用におきまして、指定炭鉱と一般炭鉱との間に区別を設け、前者即ち指定炭鉱に重く、後者に軽くいたしまして、懲役及び罰金を併科しないことにいたしたのであります。次に施行期日のことでありまするが、各
規定について改令でこれを定めるという
意味合いのことに相成
つておりましたのを施行期日を
昭和二十三年四月一日と明記いたしたことであります。
以上が
修正案の主たる諸点であります。以上によりまして大体
衆議院送付の案、
原案の御
説明を申上げたわけでありまするが、さて鉱工業
委員会におきましては、
政府原案、
衆議院送付修正案、並びにこれと密接なる
関係がありますところの石炭非常増産対策要綱、炭鉱特別運轉資
金融資要綱、更には又石炭増産五ケ年計画等を一括いたしまして、審査の対象といたしたのであります。慎重
審議を遂げて來たのであります。即ち去る十月一日、第一回の予備審査を皮切りに、予備審査を行うこと七回、この間二日間に亘
つて公聽会を開催いたしまして、本
法案に対しまするところの勞資両面の代表者、学識
経験者、又一般公述人の
意見を聽いたのでありまするが、本
法案が十一月二十五日衆議院において
修正議決されるや、その翌日より本審査に取掛かり、爾來連日に亘
つて、而も長時間熱心に
審議を続けて來たのであります。本
法案が果して
政府の言明しておるごとく、石炭増産のための組織法たり得るかどうか、その結論を見出すために、一切の論議は集中されたのであります。殊に衆議院の鉱工業
委員会におきまして、相当応範囲に亘る
修正案が、殆んど
審議を行うの余裕なくして、本会議に上程された経緯に徴しまして、國会においてこれを
審議するのは、ひとり我が参議院のみなりとの観点に立ちまして、(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)その使命の且つ重大なるを自覚し、本審査に当
つては特段の考慮が拂われたのであります。予備審査を合わせ十二月六日
質疑終了まで、前後十七会延時間にしまして、五十六時間に及ぶ審査を行
つたのであります。
審議延時間五十六時間は、衆議院鉱工業
委員会における四十三時間をはるかに突破する記録でありまして、(
拍手)その間における千万語に達する
質疑応答の殆んど全部を
速記録に割愛するの止むを得ないことを甚だ遺憾とするものでありまするが、以下主要な
質疑につきまして、要約して次に御
報告申上げたいと存ずるのであります。
先ず第一に
質疑のありました点は、石炭非常増産対策要綱と本
法案との
関係如何という問題であります。これに対する
政府の答弁は、去る十月三日閣議決定の石炭非常増産対策要綱は、
マツカーサー元帥より片山総理宛の
書翰を契機といたしまして、従來
政府が、石炭増産のために行い來つたことを再確認すると共に、今後
措置すべき具体策を明示したものである。即ちマ元帥は、その
書翰におきまして、石炭増産の手段として、一、最優秀な土木その他の技術能力を結集して作業の指導に当らしめること、一、交替制を採用して石炭業を一般的に二十四時間作業体制にすること、一、勞働者の
生産性を最大限に発揮させるために必要な住宅と
食糧を供給すること、一、地質学上妥当なときは新鉱脈及び新鉱を開発すること、一、合法的な工業
目的以外に採掘された石炭が振向けられることを厳重に防止すること、一、本事業の達成を故意に妨害する者は厳重にこれを訴追すること、以上の六項目を指示されているのでありますが、これに応えた非常増産対策要綱には更にその具体的施策を詳細に明示しているのであります。これは固より石炭増産の緊急性に鑑み、國営法の施行の如何に拘わらず、
政府が強力に推進せんとする非常対策であります。かかる
意味において、組織法であるところの本
法案とはこれ又一応は形式的に別個のものでありまするが、現に
政府は本対策要綱に
基ずいて石炭増産特別
調査團を組織し、現地に派遣して要綱に支持されたところの作業方式による勞働協約の締結に指導的役割を担当せしめつつあるのでありまして、又炭鉱経営の徹底的改善と
生産効率の飛躍的向上を前提とする炭鉱特別運轉資
金融資要綱を決定し、炭鉱
融資に画期的な
措置を講じつつあるのである。併しながら非常対策要綱並びに特別運轉資
金融資要綱に謳
つているところの炭鉱経営の徹底的改善、
生産効率の飛躍的向上、勞働規律の
確立並びに二十四時間制の推進等々一連の施策を、一時的ではなく継続的に、或いは恒常的に推進していくためには、國管法という組織法の裏付けが必要であり、かかる大きなる支柱を得てその増産効果は完璧を期し得ると確信しておるとの答弁でありました。
次に石炭五ヶ年計画と本
法案の
関係如何という問題であります。これに対する
政府の答弁は、
政府が樹立しておるところの五ヶ月計画は
昭和二十三年を初
年度といたしまして、量質両面より増産を図らんとするものでありまして、その
生産目標は二十三
年度三千三百万トン、品位五千六百カロリー、二十四
年度三千六百万トン、五千八百カロリー。二十五
年度三千八百万トン、五千九百カロリー、二十六
年度四十万トン、六千カロリー、二十七
年度四千二百万トン、六千カロリーとな
つておる。この計画は形式的には一応管理法とは別個のものである。併しながら各
年度を通じて新鉱開発に依存する量は、初
年度二十万トン、二
年度五十万トン、三
年度百五十万トン、四
年度三百二十万トン、五
年度五百七十万トンである。現在設備による出炭増加は、初
年度と最終
年度と比較して四百五十万トンに対しまして、新鉱開発による出炭増は初
年度と最終
年度と比較するときには、実に五百五十万トンの増加とな
つておるのであります。即ちこの数字は今後の出炭増の大きな部分は新鉱開発によ
つてなされねばならんということを雄弁に物語
つておるのでありますが、かかる大規模な新鉱開発は到底従來のごとく私
企業單独の力では不可能でありまして、どうしても國家の積極的援助と力の集中が行わなければならない。かかる
意味において増産の基盤たるべき組織法が絶対に必要にな
つて來るのであり、一応形式的には別個のものでありながら、増産目標管遂という立場からは、実質的に五ヶ年計画と管理法が表裏一体をなす所以も亦ここにあるのだという御
説明でありました。
次の
質疑は、本
法案において
官僚統制の色彩が依然として濃厚なるものあるやに思われるが如何という問題であります。これに対する
政府の答弁は、特定勢力を背景とし、指導者原理を基調とするがごとき従來の
官僚統制方式は全然採られていないのであり、更に又考え方によ
つては、尚且つ官廳の一方的
権限と思われるような個所には不服申立等の項目が追加され、
修正が加えられたのでありますが、本
法案自体としては、むしろ行政の
民主化を目標としているのであり、一例を挙げまするというと、
地方機関として主要な役割を持
つている石炭局長のごとき、形式上は商工省の一
機構でありますが、実際上は学識経験ある民間人で構成し、民間
企業のエキスパートが
生産行政に解けこむよう意図しているのであるという答弁でありました。(「そこだ」「分つたか」と呼ぶ者あり)
次はこれは大分長く、亦も繰返して論議された点でありますが、
政府が本
法案を以て特定のイデオロギーによるものにあらずとする
理由如何という問題であります。これに対して商工大臣の御答弁は、形式的には四等政策協定乃至緊急
経済対策の線に沿うて立案されたものであり、実質的に検討するも、社会主義
経済体制の根幹をなす
企業権の否定、若しくは資本と経営の分離等の考え方が本
法案には全然織り込まれいないものであ
つて、本
法案は増産第一主義を以て
目的といたしておるものであるという御答弁であ
つたのであります。
次の
質疑は、本
法案を繞る対立的論爭の経緯について見るときに、果して、
政府の企図する経営者、勞働者、
政府の三位一体的増産協力体制の
確立可能なりや否やという問題であります。これに対する
政府の答弁は、
政府としては、この
法案を
提出するに当
つて、現段階における社会的、
経済的
事情を考慮し、百パーセント経営者の立場に立つことは間違いであり、又同時に百パーセント勞働者の意図通りになることも誤まりであ
つて、経営者の希望と勞働者側の要求との間のどこに一線を引くかということが
政府の要諦と心得て作成した
関係上、勞資双方から、それぞれの立場において論議が分かれていることを率直に認めるものである。併しながら一度この
法案が國家最高の意思決定
機関である國会を通過した暁には、
賛成者、反対者を問わず、この最高意思に服従すべきが
國民としての厳粛なる義務であるとの見地から、一応この
法案の遂行に支障なきものと信ずるものであるが、尚
政府自身としても、
法案通過後は、特に反対の立場にあつた人々に対し、誠意を披瀝して積極的な協力方を依頼するつもりである。これにより反対者も欣然と協力するものと期待するのであ
つて、かねてより意図するように、
政府、経営者、勞働者が三位一体とな
つて増産でき得るものと確信するものであるという答弁でありました。尚本
法案が衆議院通過後今日までの短かい期間でありますけれども、勞資両面に現れつつある現実の動きが我々のこの固き信念を裏書き立証しつつあるものであるという商工大臣の後答弁であ
つたのであります。
次にこれも非常に長時間
質疑に時間を費した問題でありますが、
生産協議会の法的性格如何という問題であります。法理論的に見まして單なる詰問
機関でないことは、法文の各所に出て参
つておりますところの「議を経て」という問題でありますが、これは法理論的に見て單なる詰問
機関でないことは言うまでもありませんが、併しながら完全なる決議
機関でもないのであ
つて、全く新しい、どちらかというと、その中間に属すべきものであるが、強いてこれを旧來の用語を借りて言えば、一種の條件附決議
機関とでもいうべきものである。即ち完全なる決議
機関では議が纏まらぬときには、そのまま決裂
状態に入るのであるが、
生産協議会においては「議を経る」ことができぬときは、所轄石炭局長の裁定を求むることができるのであり、而も当事者はその裁定に服さねばならないのである。かようない
意味合におきまして完全なる決議
機関とは申せないのであ
つて、一種の中間的協議体であるという御答弁でありました。
次にこれに関連いたしまして、
生産協議会の性格が不明確のために運用上支障なきや否やという問題が提起されたのであります。これに対する答弁といたしましては、現在各
企業における経営協議会が、専ら勞働條件を中心とするいわゆる分配闘爭を主体として、増産問題を第二義的に取扱
つておるに対して、
生産協議会においては
生産の向上を第一目標としておる点において大なる差異があるのでありまするが、その他の点においては大体に経営協議会の構想を法制化したものであります。よ
つて各山々における現在の経営協議会は、勞働
組合が非常に発達しておる所では決議
機関の傾向が強い。反対に勞働
組合が未発達の所では詰問期間的傾向があるのでありまするが、それがそのまま
生産協議会に反映されるのであ
つて、
生産協議会を諮問
機関と決議
機関の中間に置いていても実際上の運用には何ら支障を來さないのみならず、
却つてその方が弾力性のある運用となり、実情に即した実際的
措置であると思う。こういう御答弁でありました。
その次の
質疑は、この
生産協議会を通じて経営に参加するということによ
つて、果して
政府の意図するがごとき勞働者の勤勞意欲の昂揚は可能なりや否やという問題であります。これに対しまして
政府の御答弁は、
生産協議会が従來の経営協議会と異な
つて生産の向上を第一の目標としておることは、先の
質疑に対して答えた通りでありまするが、法文おいても
修正第三十四條に
業務計画の樹立、勞働能率の向上を明記しておるのでありまして、経営者と勞働者が互いにその立場を活かしつつ納得ずくで設定した
生産設計図は、これが実施に当
つて当然に勞働者を拘束し、その責務において達成されねばならんことは論ずるまでもないところである。今日の社会的、
経済的
情勢よりいたしまして、戰時中のごとき掠奪的な強制勞働による能率増進策は再び実施の余地がないのでありまして、目覚めたる勞働者が救國の熱意に燃えて立上がるところに唯一の期待が掛けられておるのでありまする。而して
生産協議会こそはかかる目覚めた勞働者
諸君にと
つて新しく開かれた門である。
かくて尚勞働者の勤勞意欲が上らんとするならば、それは勞働者にと
つて一種の自殺行爲であると言わなければならんという御答弁でありました。
次にこれも可なり長く論議されたのでありまするが、本
法案においては勞働
強化に関する積極的
規定がないが、これに対する
政府の施策如何という問題であります。これに封する答弁といたしまして、立案の過程にあ
つては石炭勞働者に関する條件を考慮したのでありまするが、程々の経緯から削除の止むなきに至
つて、一般の勞働問題と共に扱うことにな
つたのでありまするが、本
法案と表裏一体をなす非常増産対策要綱においては、基本方針の一として二十四時間制の完全実施を求めており、又炭鉱特別運轉資
金融資要綱においては、「非常増産対策要綱に揚げている三作業方式のいずれかを実行し、
生産効率の向上につき明確なる團体協約成の立せること」を前提條件といたしまして、勞働力の
強化に努めておるのでありまして、
政府としては、その種の勞働施策は飽くまで経営者及で勞働者の自主的協力に
従つてこれを推進せんとするものであり、現在までの
経過に徴すると、漸次この線に沿うて動きつつあるようでありまするが、石炭
生産の緊急性に鑑み、尚所期の成果を挙げ得ない場合におきましては必要な法的
措置を講ずる決意であり、故意の妨害者に対しては断固たる方針を以て臨むべきことを闡明するものであるという御答弁でありました。
次にいわゆる炭鉱の民主的運営の方法でありまする炭鉱管理
委員会の法的性格如何ということが問題に相成
つたのであります。これに対する答弁といたしましては、全國炭鉱管理
委員会は商工大臣の、
地方炭鉱管理
委員会は石炭局長の、それぞれ詰問
機関といたしておるものであります。併し炭鉱管理
委員会と行政廳との
関係は二位一体の立場にあり、商工大臣及び石炭局長は全國及で
地方の各管理
委員会の会長でありまするから、そこで決定された事項は当然に決議同様に尊重して行かなければならないところでありまして、一部においては炭鉱管理
委員会の持つ役割の重要性を考慮して決議
機関となすべしとの御議論もあるようであるが、
法律的拘束力もない詰問
機関としたのは、行政上の責任を明確にしたためであるという御答弁でありました。
次に
損失補償に関する限界如何という問題であります。(「簡單」と呼ぶ者あり)これは
修正案第四十條に対するものでありまするが、これに対する答弁は、この
損失の
意味は「通常生ずべき
損失」であ
つて、直接この
法律に
基ずいた命令、例えば新鉱開発に関する
損失補償等を指しておるのであ
つて、インフレの昂進に伴う
生産費の根上りにより炭價との間に生じたる経営上のいわゆる赤字は、一般
物價政策として別途に講ぜらるべきであり、又石炭行政の衝に当るところの
官吏の過失、事故等による違法行爲等によ
つて被つた経営上の
損失等は國家賠償法の
規定に譲るべきであり、これ亦当該
損失とは別個のものであるという答弁であります。尚事業主の不服の申立てについては法文に明記されていないが、
損失の認定がこの
法律の
趣旨と合致せず、通常生ずべき
損失と客観的に認知されながら、尚
審議会の議決において然らずと裁定された場合においては、当然に新
憲法によ
つて裁判所に提訴する権利を持つものであると解釈しておるという答弁でありました。
大体以上のような
質疑があ
つたのでありまするが、
かくて今朝午前十時より最後の
委員会を開催いたしまして、本
法案に対する討議に入
つたのでありまするが、
日本共産党細川
委員より右炭鉱業團営人民管理
法案と題する
修正案のご
提出がありました。又緑風会帆足
委員より、この題名を臨時炭鉱増産管理
法案と改める
修正案の御
提出があり、更に緑風会中川
委員より
修正案の
提出がありましたのでありますが、大体その骨子は、一、題名を臨時石炭増産
法案に改めること、二、第十三條の指定炭鉱基準をより明確にすること、三、第二十三條に指定炭鉱の従業者の協力
規定を追加すること、四、第二十四條に
業務計画の実施に著しく協力しない従業者に対する制裁
規定を追加すること、五、
生産協議会の
業務員及び勞働
委員に予備
委員を選任し置くこと、かような
修正案でございまして、以上三つの
修正案と
衆議院送付の
原案に対し、緑風会田村、宿谷、玉置、
日本自由党小林、
日本社会党下條、カニエ、民主党林屋、無所属懇談会佐々木、
日本共産党細川の各
委員が賛否それぞれの立場において
意見の御開陳があり、
討論を終
つて採決に入
つたのであります。先づ細川、帆足両
委員の
修正案は少数否決され、中川
委員提出の
修正案は賛否同数となり、
委員長は國会法第五十條の
規定によりまして、これを否決と裁定いたしました結果、
修正案は全部否決されたのでございます。(
拍手)次いで
衆議院送付の
原案について
採決いたしたのでありまするが、総投票数二十八票のうち
賛成十三票、反対十五票でありまして、(
拍手)少数を以て否決されたのであります。
以上を以て私の御
報告を終ります。(
拍手)