○國務大臣(北村徳太郎君) 只今鈴木議員により、極めて現下の國鉄の
状況に対しまして御熱心なる御
質問を受けたのでございます。私この度運輸大臣の任を受けたのでございまするが、まだ十分に國鉄の現状等について把握したとは申されんのでございますけれども、少なくとも今日國鉄の経営の危機というものが相当深刻にな
つておるということだけは認めざるを得ないのであります。これを要約いたしまして、大体三つの現象に現れておると思うのでございまするが、只今お尋ね以外のことは暫く措くといたしますけれども、例えば財政収支の不均衡の状態、それから敗戰後の復旧整備が極めて不完全の状態に尚ある。この復旧が容易でないという現状に置かれておる点、それから只今
鈴木委員の御指摘になりました労働情勢、特に業務の能率の不振の点、これらの三つのものが現在國鉄の危機をなしておる。何としてもこれらの根本に手を入れて、これを改善し、あらゆるこれらの條件というものを排除して行かなければならないということを痛感いたしておるのであります。而もこれらの原因が國鉄自身の中にのみあるとは考えられませんのでありまして、輸送力の確保は只今仰せになりましたように、日本産業経済活動の基盤であることは申すまでもなく、その産業の動脈たる國鉄がお話のごとき事情にあるということは、これは誠に遺憾の点でございます。全力を挙げましてこれらの不合理なものの根源を突いて、一日も早く根本の危機を突破いたしまして、國鉄の復興をしなければならんという点については極めて強く責任を感じております。これがためには國鉄の超重点産業的性格について十分なる御認識を仰ぎたい。これは朝野の御協力を願わなければならんのでございます。無論國鉄部内といたしましても、この綱紀を引締めまして、從業員の総力を結集して、國鉄としての重大なる任務を果すために、新らたな決意をして起ち上らねばならんというような点について、これ又非常に責任の重いことを感じているのであります。
國鉄労組といたしましては、本年九月の経営協議会において、当局の
提案いたしました國鉄再建方策というものに同意を表しておるのであります。今後これに基ずきまして
関係各方面、各廳との協力を求めると共に、國鉄労組の積極的なる協力を得まして、再建方策を推進したいと思うのでございますが、國鉄労組の中央執行部においても、今月一日に陣容が新らたになりまして、このことは可なり私は大きく取上げていいと思うのであります。
從來とは構成が変りまして陣容が新らたになりまして、健全化と申しますか、穏健化と申しますか、そういう方面に向
つておる、これが段々下部機構にまで滲透いたして参りますならば、
從來とはやや趣の変
つた方向に向うのではないか、全体としてそういう方向にあるということをまあ認めておるのでございます。併しながら何と申しましても、從業員の経済不安、生活不安、これを除くということが、これが絶対的な要件であると存じまして、あらゆる方法を講じて労働條件を一面においては改善しなければならない。一方においては綱紀を粛正する。同時に労働條件も改善を図りたい。尚又勤労用物資等につきましての各種資材の供給不円滑のために、勤労意欲を挫折せしめるような虞れがないではないのでございまして、かような点につきましても、その不合理性を改めて行きたい。一方において締めるところは締めるが、例えばこれは一例でございますけれども、九州、北海道その他の炭鉱地区において、炭鉱労働の中、特に
鉄道の從業員と余り変らない坑外作業をやる人と、それから
鉄道從業員と労働の程度が余り違わないのでありますけれども、石炭鉱業であるが故に非常な差がある、待遇に非常な差がある。こういうようなことが又段々この労働情勢を惡くするような傾向もございますので、かような点についても根本的に一つ考えを新らたにして方策を講じたい、かように存じておるのであります。
只今御
質問にありました青森機関区、仙台管内のいわゆる山猫サボ等の真相その他につきまして、率直に事実を御
報告申上げまして、御了解を得たいと存じますのであります。
青森機関区におきましては、十一月の十日に、その所属の機関助十二名が労働組合の代表
委員と共に管理部長に面会交渉のため所定の列車に遅れまして、これがために
二つの列車がそれぞれ十三分と二十八分遅れて発車した。かような
事件を知りましたので事を重大視しまして、本省より係官を特に
調査のために派遣いたしましたのであります。ところが、右は必ずしも計画的に争議行為をや
つたものとは認められない。且つ両名共平素の勤務
成績も良好であるというようなことが分りましたので、取敢えず乗務停止の処分にいたしたのであります。又十一月二十七日に、この頃から乗務員約四十名が欠勤いたしました。乗務員の総数は三百五十名でございますが、それがために列車運轉に支障がございまして、平均約二列車の運休をするというような誠に遺憾な事態を起こしたのであります。二十七日に管理部長の出勤命令を出しましたことによ
つて、逐次出勤
状況がよくなりまして、現在においてはほぼ正常に復しております。青森地区の過激なる思想の持主であるところの一部の者が、青森支部の地方労働
委員会に提訴いたしまして以來、殆んど連日同機関区に出入いたして、種々煽動いたしておるのであります。これについても十分な警戒をいたしつつあります。
青森縣保線区でございますが、これは本月四日助役以下一部の者を除きまして、全員が出勤しない、同日保線区長は仙臺
鉄道局に出張いたしておりましたその不在中の出來事でございましたのでございますが、直ちに管理部長は組合闘争
委員長を呼び出しまして事態を確めたのでありますが、組合といたしましては別に指令を出していないし、
委員長としてはただ手を拱いて傍観しておるよりしようがないというような、こういう回答でございましたので、平素の連絡網によりまして、それぞれ從業員に対して出勤命令を出した。ところが百二十八名は直ちに命令に
從つて出勤をいたしました。翌十二月五日は総員四百六名中三百六十七名が出勤いたしまして、ほぼ平常に近い状態に復したのでございます。
次に大湊自動車区では、十二月四日、この自動車区の欠勤者が非常に多くて、午後の運行に相当支障を來したのでございます。十二月五日本区の欠勤者がやはり多いために二運行しかできなか
つた。但し川内支区は別に欠勤者もなく、平常の通り持続しておる、こういうふうな
実情にな
つておるのであります。
それから、弘前の機関区におきましては、十月中乗務員の欠勤者が多く、それがために貨物列車二箇列車、この程度の運休を続けたのでありますが、その後出勤率が好轉いたしまして、これ亦運轉は平常に復しております。十二月一日現在の欠勤率は一三%でございまして、先ず大体これは平常に復したものと見てよろしいと存じております。
次に札幌管内でございますが、これは大体仙臺と同様でございまして、
從來から比較的急進且つ闘争的な傾向が強か
つたのでございますが、その状態は現在においても余り変化はしておりません。特に石炭の値上りは寒冷地蔕の勤務者の生活に重大なる影響を與えておりまして、管内各所においていろいろの問題を起こしておる。從業員の職場離脱、職場放棄等の事例も数ヶ所に発生したのでございますが、今のところ幸いにして大事には及んでない。それぞれ所属長との交渉によりまして職場に復帰いたしております。十月二十八日、北海道地方労働
委員会が寒冷地手当等につきまして調停案を提示したのでございますが、組合はその実行を強硬且つ執拗に迫
つておるのであります。生活補給金の支給はこの意味からも急がねばならない
状況に置かれておるのでございますが、当局といたしましては早くこの問題を解決いたしたいと考えております。
尚具体的な事例といたしましては、釧路管理部内の池田保線区の厚内線路班外三ヶ所の線路工事手が約四十名、十一月二十八日頃から職場を離脱いたしましたのでありますが、これらは管理部長との交渉によりまして、十二月五日には全員職場に復帰いたしました。
北見車掌区分会が十一月二十四日大会を開きまして、乗務旅費値上げ、配給物資代金の支給等を要求いたしまして、要求が容れられないときには二十八日を期してストライキに入るというようなことを決議したのでございますが、組合支部がこれを抑えまして、その後問題は解決し、ストは延期することと相成
つたのであります。
苗穂工機部、これは十一月二十五日機関車職場組合が工機部長との約束を無視いたしまして、一時間以上に亘る職場大会を開催し、時間を超過いたしましたので、これに対して争議行為とみなしまして給料支拂いを停止いたしたのであります。又十一月二十一日札幌における要求貫徹労働者大会を開催いたしました際に、部長との協定以上の從事員が参加したことの事実がございましたが、これに対して右同様の処置をと
つたのでございますが、組合側も一應止むを得ないものとしてこれを承認いたした次第であります。
仙臺及び札幌の輸送
状況等につきまして尚
簡單に申上げたいのでございますが、御
承知の通り、冬は、平年においても仙鉄及び札鉄管内の輸送は幾分澁滞を免れないのでありますが、北海道、青森地方の輸送を確保することは、北海道が現下最も重要な石炭、先程御指摘になりました石炭並びに木材等の給源地でございますだけに極めて重大なるものがございまして、從事員はその重責をわきまえて、食糧不足と寒冷に耐えながらこれが遂行に現在努力をしておるのでございます。
先般青森操車場を中心として若干の輸送上の混乱を見たのでございますが、これは青森方面の特種輸送があり、この方面に相当の貨車が使われておる、これがどうも重大な、例えば東京都に送られるべき冬期用の薪炭等の輸送にも影響いたしますが漸次これも好轉いたしまして、輸送の能力はこの方面において回復を見つつあるのでございます。ただ前申述べましたような、從事員の一部に出勤不良等のことがございまして、貨物列車の運休をやらなければならなくな
つたというようなことも、誠にこれは遺憾に堪えんのでございますが、一面又天候不良、それから荷役機械の不完全、それから石炭の質の低下、これは極めて重大なことと考えておりますのでありますが、石炭の質の低下等、そういう惡い條件が加わ
つておるということも、これは又混乱を來した一つの原因であると存じております。
以上大体事実を率直に御
報告申上げたのでありまするが、今のところこの労働情勢は、必ずしも要求貫徹手段として明白な争議行為の形態をと
つておるというところまでは入
つておりませんのでありまして、欠勤者が多い個所も、管理部長、所属個所長等の出勤命令がございますと、概ねこれに服して出ておるというような現状でございまして、今の現状では労働事情が輸送に非常に大きな支障を與えておることは申しにくいのであります。ただかような事態があるということは誠に遺憾でありまして、あらゆる手段を講じまして緊張せしめて能率を挙げることに努力することは勿論でございますけれども、現在の輸送が停頓しておることの最大なる原因が労働事情にあるとは考えておりませんのであります。從いまして現段階におきましては、適時所要の措置を講ずることは勿論でございますが、命令に服しない者に対しては、この際断乎給料の支拂いはしないというようなことも、すでに命じておりまして実行いたしておるのでございます。今後事態の推移に十分注意をいたしまして、若し明白なる集團的争議行為に移りますような場合がございましたならば、これは職場規律維持のため、強硬なる処置をとらねばならんということを期しております。
尚國鉄所要資材、労務用物資の優先的割当等をやらなければならない現状につきましては、先程ちよつと申述べたのでございますが、これは本年九月の経営協議会におきましても、組合側からも強くこれを求めております。特に寒冷地に勤務する從事員に対しましては、軍手、地下足袋或いは作業衣が、これはもう絶対必要なのでございますけれども、安本の割当量が実はなかなか実現をいたしておりません。非常な窮状にありますのでございまして、これらの点の改善につきましては今後皆様の御協力を仰いで、一方においてはこれからの改善に十分努力いたしたい、かように存じておるのでございます。
尚國鉄全体といたしましては、計画輸送を実現するために、今後も十分に綱紀を引締め努力を続けたいと存じておりますのでありまするが、何分現在相当財政上には赤字を持
つておる、而もこれは独立採算制を採
つてやらなければならんというような大きな問題を控えておりまして、而も
一般会計から一應繰入れられた金も、借金として償還すべしというような示唆も受けておる、かようないろいろな情勢から、輸送力は非常に低下しておる上に、輸送量は増して來る。こういう現状でございまして、この際物の欠乏しておる、或いは設備の甚だ傷んで使用に堪えないところを、人間の力で補いながら、國鉄の機能をどうにか発揮しようとしておる際に、労働情勢によ
つて発揮ができないということになれば、これは誠に申訳ないことでありますから、この点に対しまして、今後もますます怠らず、これは一方において引締めるところは引締め、又給與等については必要なる改善を行いたい、かように考えておる次第でございます。
御
質問の要旨に十分答えたかどうか分りませんが、以上仙臺並びに北海道地方等における労働情勢の現状を御
報告申し上げまして御了解を仰ぐ次第でございます。(
拍手)
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