○一松政二君
只今議題となりました
請願第二百六十五号外二件及び
陳情第百六十四号外四件につきまして、商業
委員会における
審議の
経過並びに結果につきまして御
報告いたします。
商業
委員会におきましては右
請願並びに
陳情に関し
委員会を開催すること五回でありまして、
政府当局から各件につきそれぞれ説明
意見を聴取し、愼重に
審議いたしたのであります。
先ず
請願第二百六十五号は、石綿の輸入促進に関する
陳情でありまして、
請願者は朝日スレート株式
会社專務取締役秦孝治郎君であります。
請願の要旨は、石綿が硫安肥料製造、耐火軽量屋根材、その他戰災復興建築
資材の供給、輸出用石綿スレート、石綿製造品等に不可欠な配合剤であるが、現在の手持品は辛うじて数箇月を支える程度に過ぎないから、この新しい化学工業を維持し、我が國産業の機能を減退しない
ようこれが輸入を配慮されたいとの
請願であります。本件に関する
商工省当局から、石綿の輸入については
関係各物資局の策定に基き、貿易廳において輸入要請書を作成し、これを総司令部に
提出すると共に、申請の理由並びに國内における石綿事情等を説明して、輸入実現について
関係各官廳協力の下に、その促進方に努力しておる。一九四八年度においては一万二百五十二トンを要請しておる。総司令部におきましてもこれに理解ある態度を持ち、本物資が日本経済
再建のため相当重要物資であることを認められ、現在米國から石綿隔膜の輸入は二十二年八月一日現在で二万二千九百七十一キロであ
つて、これを硫安並びに曹達製造のために配分しておるが、更に石棉原鉱輸入の実現方をも考えておると思われる。併しながらこの供給地である米國、カナダでも供給が十分でなく、又船腹事情も逼迫しておるので、我が國の輸入が制約されておる。貿易廳としても更に総司令部に対して重ねて石綿の輸入実現方について一層の努力を拂いその促進方を懇請しておるとの説明があ
つたのであります。
第二、
請願第三百九十三号は
東北証券取引所設置に関する
請願でありまして、
請願の要旨は、戰後の復興に東北
地方が日本経済に占める地位が飛躍的に重大性を加えつつある。これが開発に要する資金を迅速、豊富に調達するため、東北
地方に新しい証券取引所を設置したく、而も政治、経済、交通の
関係から仙台市を最適地と確信するから、これが設置に関し配慮されたいとの
請願であります。本件に関しまして
大藏省当局から現在我が國では清算取引所は認められていないが、実物取引については取引所設置の必要があると認められる地域にはこれを
許可する方針であ
つて、すでに数ヶ所に対し設立を
許可したとの説明でありました。
第三、
請願第四百六十号は
中小商工業の振興に関する
請願でありまして、
請願者は日本商工
会議所会頭高橋龍太郎君外八名でありまして、
請願の要旨は我が國産業経済の健全なる
再建を図るためには、その中核をなす
中小商工業の振興なくしてはその達成を期し得ないが、終戰以來二箇年有余を
経過して尚その健全な振興を見ない現状に鑑み、全國の
中小商工業者が大同團結して次の
ような決議をしたから、この際
國会及び
政府において適正妥当な諸施策を急速的確に実現されたいとの
請願でありまして、決議の
内容は、(一)、生活協同組合法の不当な法制化
反対、(二)、
商工協同組合法の
実情に副わない
改正反対、(三)、公團法の濫用
反対、(四)、不当な課税
反対、(五)、中小
企業金融の拡充強化、(六)、
資材資金の割当の機会均等、(七)、中小
企業振興対策の急速な樹立実現につき適正な施策を急速に実現されたいというのであります。本件に関する
商工省政府委員の説明は次の通りであります。即ち
中小商工業は技術、経営を改善してその高度化を図る必要がある。そこで十一月七日に中小
企業対策要綱に関する閣議
決定がなされたが、それによると、中小
企業の審査、診断を行
つて中小
企業を指導し、優良
企業に対しては
資材資金等を割当てることとし、又
商工省に中小
企業総局とでも名付ける一局を創設して、中小
企業振興に関する
事務を綜合することにな
つており、目下その
手続を進めておる。又中小
企業に対する金融に関しては、商工中央金庫とは別な強力な金融
機関を作ることを研究しており、目下
大藏省とも打合せ中であるとの説明があ
つたのであります。
次に
陳情第百六十四号は、
中小商工業の
再建に関する
陳情でありまして、東京実連協会会長中野金次郎君外一名からの
陳情であります。本件に関しましては、
只今請願がありました第百六十五号と殆んど同様でありまして、
中小商工業の振興に関する
事務を綜合する振興局を創設するということの
陳情であります。
只今申上げたと同一でありますから説明は省略することにいたします。
五、
陳情第二百八十九号は
マツチ産業公團制の
実施反対に関する
陳情でありまして、その要旨はマツチの製造は業者の努力により
生産を増加し、今や需給の均衡を保つべき傾向にあるから統制を強化する必要はなく、マツチ産業の公團制実施には
反対であるというのが
陳情の要旨であります。
商工省当局の説明によりますれば、マツチの配給を円滑確実ならしめるため、その配給機構について研究を続けておる。公團制を考慮したこともあつたが、現在においては切符
制度を採用する案を練
つておるとのことであります。
六、
陳情第三百四号は板ガラスの配給機構及び取扱に関する
陳情でありまして、その要旨は現在施行中の臨時物資需給調整法及びその
関係法令の骨子はすべてが間に合せ式であり、旧統制法の蒸し返しであります。特約販賣店即ち卸商が
從來特殊の因縁情実
関係によ
つて結び付けられて、小賣業者が不当な取扱いを受けており、最終需要者及び末端配給業務に関する点で不便且つ不合理な点が多いから配給
制度に対する一般の信用回復のためにも万全の対策を即時断行されたいというのが
陳情の要旨であります。
商工省当局の
意見によりますると、板ガラスは破損し易い品であ
つて、輸送、荷扱い等に特別の注意を要するので、特約販賣店即ち卸商の存在が必要であるが、一部の卸商のみが配給市場を独占する
ような行動は独占禁止法にも牴触することになるので、適者生存主義により卸商間の公正な競爭が常に行われる
ように運用しており、又卸商と小賣業者とは配給上正しい意味の自由競爭によ
つて需要者に奉仕することができる
ように努めておるとのことであります。本件に関しまして、或る
委員から板ガラスの破損は卸商の
段階で調整する建前にな
つておるのに、
実情はこれに反して小賣業者又は最終需要者が破損を負担し、卸商は不当な利益を受ける結果とな
つており、又一般需要に対しては破損調整として数量の一割が増加割当てられているが、これが闇取引の原因ともな
つている。そこで破損調整又は破損率の
制度を
廃止し、むしろ包装等に十分注意して、破損を防止する
よう指導する等の方策を講じて、以上の不合理を絶滅して明朗な配給
制度を樹立すべきであるとの
意見が述べられましたのであります。
七、
陳情第四百二十八号は
商工協同組合法の
改正に関する
陳情でありまして、商工協同組合中央会からの
陳情であります。その要旨は、
政府は私的独占禁止法の
趣旨に基ずく
商工協同組合法の一部
改正案を
國会に
提出するとのことであるが、
改正内容如何によ
つては中小
企業の
再建振興に重大な影響を及ぼすことになるから、右
改正に際しては一、個人業者と同様の地位にある小規模
会社の組合加入を認めること。二、相互扶助としての金融事業を共同施設として認めること。その他につき考慮されたいというのであります。本件に関する
商工省政府委員の
意見を御紹介いたしますと、商工協同組合を
改正するかどうかについては未確定であるが、各個人の力は弱いので、その力を強めるために協同組合を組織するのがその
目的であるから、すでに法人を組織して力を強められたものが協同組合に加入することは不合理である
ように思われるし、又金融事業はその事業の性質上健全性が大切であるので、同一の協同組合で金融事業を兼ねて行うと、協同組合の他の事業の成績如何によ
つてこの健全性を害することがあり得るから、むしろ金融事業については独立した協同組合を作ることが適当であろうとの
意見であります。右に対し
委員の一人から、我が國の中小
企業の
実情に鑑み、個人業者と同様の地位にある小規模の法人の組合加入を認めることは極めて必要であるのみならず、農業協同組合法に課税その他の保護
規定がある以上、
商工協同組合法においてもこれと取扱いを同一にせねば頗る片手落となる。必ずさ
ようなことのない
ようにすること、金融についても農業協同組合法に認めておる以上、商工協同組合にもこれを認めよとの強い
意見が述べられました。
八、
陳情第五百六十一号は繊維
資材配給制規則
改正に関する
陳情でありまして、その要旨は、今回の繊維
資材配給規則による販賣業者の登録制は、同規則第三條のために、
生産者と需要者間の配給ルートが二本建てとなり、種種の欠陥を招來するから、右三條を
廃止する
ように
改正されたいというのであります。本件に関する
商工省当局の
意見は、衣料ごとき生活必需物資については
生産者から直接購入する
制度は採られていないが、
生産資材はその需要者が事業者及び商業者であ
つて、自由競爭をさせる必要があるので、
生産者から直接購入することもできるという二本建ての
制度を採用した。併しこの
制度には勿論弊害もあるので、実施の
実情を見た上、混乱が著しい
ようでもあれば再檢討を要するのであろうとのことであります。
以上
請願及び
陳情に関し、その要旨、
政府の
答弁意見及び
委員の
意見のうち主なものを御披露いたしたのでありますが、各
委員からあらゆる角度から質疑がなされ、熱心に審査が行われた次第であります。各件ごとに質疑が終わりましてから
討論に入り、のち
採決に入
つたのでありますが、各件いずれも妥当な
請願及び
陳情であ
つて、これを採択して
政府に送付すべきであるとの
意見が
委員から述べられましたので、この
意見に基ずいて
採決に入りましたところ、全員一致で採択して、これを議院の
会議に付し、
意見書を附して内閣に送付することを要することに
決定した次第であります。以上御
報告申上げる次第であります。(
拍手)