○
櫻内辰郎君
只今議題となりました
昭和二十二年度
一般会計予算補正(第七号)並びに(第八号)及び
昭和二十二年度
特別会計予算補正(特第三号)案の
予算委員会における審議の
経過並びに結果を御
報告いたします。
去る十一月十日より十一月二十八日まで総会を開くこと九回、
分科会を開くこと十五回に外に、二十一日及び二十二日の
両日公聴会を開きます等、愼重に審議いたしまして、
質疑應答の後、十一月二十八日討論に入り、採決の結果多数を以て原案
通り可決すべきものと決定いたしたのであります。
先ず第一に、
昭和二十二年度
一般会計予算補正(第七号)案について申上げます。本案は先に本
國会において
大蔵大臣の
説明にもありました
通り、本年度当初
予算編成後におきまして、新
物價体系の制定、
賃金水準の引上げ、貿易の再開、その他の財政の
基盤をなしております
経済的諸
條件に著しい変化を見ましたために、これが
全面的補正をなし、
歳入歳出共に八百五十六億二百三十六万八千円を増額せんとするものであります。
先ずその
歳出について概要を申上げますと、
終戰処理費において総額三百九十億円の増額を必要といたしますが、先に
一般会計予算補正(第五号)により決定いたしました五十億円と、
賠償施設処理費に組替えられます十七億二千七百万円とを差引きまして、三百二十二億七千三百万円の増加となり、又
賠償施設処理費においては、旧
軍工廠の
機械類の撤去に伴いまして、
終戰処理費より組替えられます十七億二千七百万円を含めて四十億円の増加となり、又公共
事業費においては六・三制実施に伴う校舎の新築、その他災害復旧工事等によりまして、五十二億四千六百二十二万一千円の増加となり、又價格調整費においては、新
物價体系の制定に伴いまして石炭、鉄鋼、肥料等基礎
物資の生産價格を、いわゆる價格安定帯の限界まで引下がるために要する價格差補給金五十八億円の増加となり、又
政府職員等の待遇改善費においては給與
水準の引き上げにより総額五十四億円七千九百八十一万六千円を必要といたしますが、先に
一般会計予算補正(第四号)並びに(第五号)にて決定せられました分を差引きまして、三十八億六千八百四十八万九千円の増加となる外、租税収入の増加に伴う
地方税分與税分與金の増八十一億七千六百三十八万八千円、欠損補填のため国有鉄道
事業特別会計への繰入れ五十億円、並びに通信
事業特別会計への繰入れ二十五億円、復興金融金庫に対する出資四十億円、その他貿易資金への繰入れ、生活保護費の増と金融再建補償金の減を差引き、四十七億円三千八百二十七万円の増加となり、以上を合計いたしますと、八百五十六億二百三十六万八千円と相成る次第であります。
次に、これが財源といたしましては、税制の改正及び自然増収による租税及び印紙収入の増五百七十五億二千百万円、煙草の値上げによる専賣局益金の受入れ等による官業及び官有財産収入の増二百六十億六百九十四万五千円、新
物價体系実施に伴う價格差益納付金の受入等による雑収入の増六十九億四千六百九十五万百千円、当初予算に計上した公債金収入を普通歳入により賄うこととなりましたため公債金収入の減四十八億七千三百万円、前年度剰余金の受入れの増四十六万九千円、以上合計八百五十六億二百三十六万八千円を充当するものであります。
次に
昭和二十二年度
一般会計予算補正(第八号)案について申上げます。本案は規定予算の節約に関する事項を主体として、
只今説明いたしました
一般会計予算補正第七号案に計上するに至らなかつた経費の増加を見込んだ予算補正案であります。即ち
歳出において規定予算の人件費、物件費等に対し、原則として一割程度の節約をなす外、補助費の減等によりまして十五億一千四百六十九万八千円の経費減となりますが、経理の現況に鑑み、大蔵省預金部特別会計への繰入れの増その他によりまして十三億一千五万一千円の経費増となりまするので、差引き二億四百六十四万円七千円を修正減少し、又歳入において前年度剰余金受入れの減少等により二億四百六十四万円七千円を修正減少するものであります。
而して以上
説明いたしました補正予算第七号及び第八号案と、すでに決定いたしました予算とを総計いたしますと、本年度一般会計予算は
歳入歳出共二千六十六億一千十七万六千円と相成る次第であります。
次に
昭和二十二年度
特別会計予算補正(特第三号)案について申上げます。特別会計予算においても一般会計予算の場合と同様、鉄道運賃及び通信料金の改正、新
物價体系の設定、職員の待遇改善、既定経費の節約等により、
歳入歳出共著しき変動がありました外、失業保険特別会計の新設、船員保険特別会計の独立等に伴いまして、この際全面的な予算の補正をなさんとするものであります。
先ず増加金額の主なるものを会計別に申上げますと、食糧管理特別会計において
歳入歳出共六百六十五億九千八百十二万九千円、國債整理基金特別会計においては
歳入歳出共三百四十七億三千四十八万六千円、鉄道
事業特別会計においては
歳入歳出共二百六十八億四千九百九十六万三千円、通信
事業特別会計においては百億二千三百六十六万三千円、專賣局特別会計においては歳入二百八十億八千百六十一万四千円、
歳出四十三億一千五百六万四千円、その他の特別会計においては歳入二百六億四千五万一千円、
歳出二百八億五千九百九十五万三千円でありまして、以上を合計いたしますと、歳入一千八百六十九億二千三百九十万六千円、
歳出一千六百三十三億七千七百二十五万八千円の増加となるのであります。尚鉄道
事業特別会計の損益勘定においては去る七月約三倍半の運賃引上げを行いましたに拘わらず、諸経費の増加によりまして年間を通じ百十一億九千百三十六万七千円の欠損となりますので、臨時特別の措置として一般会計の普通歳入より五十億円を繰入れ、又通信
事業特別会計の損益勘定においても去る四月約四倍の料金引上げを行いましたが、鉄道の場合と同様の
理由によりまして、年間を通じ四十三億六千二百六十三万六千円の欠損となりますので二十五億円を一般会計より繰入るることにな
つているのであります。而して本補正予算とすでに決定いたしました予算とを総計いたしますと、本年度特別会計予算は、歳入四千四百八十六億四千七百四十一万円、
歳出四千七億円八百十八万四千円と相成る次第であります。
扨て本案審議に当りましては各委員より熱心なる
質疑があり、
政府又これに対して懇切なる
答弁がありましたが、今その
質疑應答の主なるものを申上げますれば、一委員より今回の予算は健全財政、健全金融を根本方針として編成せられたとのことでありますが、復興金融金庫証券、鉄道その他特別会計の赤字公債並びに借入金、一千三百億に上る租税収入の徴収の困難及び時間的ずれによる大蔵省証券等、相当多額に上り、一般金融市場における消化が困難なるために
日本銀行券の増発となり、健全金融どころか、
日本銀行券が單なる支拂用具たる不換紙幣となる虞れがないかとの
質疑に対し、
大蔵大臣より、
政府としては一般会計において収支の均衡を図るのみならず、特別会計の赤字の相当額を一般会計にて負担することとし、止むを得ず発行する證券も、貯蓄の増強、金利
水準の引上げ等によりまして、極力一般金融市場において消化に努め、又税務機構の拡大強化等によりまして徴税事務の進捗を図り、
日本銀行券の増発を來さないようにする積りである。又生産の増強、資材の輸入等によりまして貨幣に対する物の裏附けをなし、
日本銀行券の眞に通貨たる信用を維持することに努めたいとの
答弁があり、又一委員より、現在までの徴税成績は良好でないとのことであるが、
政府においては果たして千三百億円に上る租税収入を完納せしめ得る用意があるかとの
質疑に対し、
政府委員より、納税の成績如何は健全財政の鍵でありますので、徴税機構の拡充強化、税務官吏の待遇改善、徴税費の増額等によりまして、活溌なる税務官吏の
活動を期待いたしますと共に、納税を怠る者に対しては罰金、場合によりては体刑、又は第三者の通報制の活用等、あらゆる
手段により徴税の完璧を期したいとの
答弁がありましたが、又六・三制の予算につきましては特に熱心なる
質疑がありましたが、一委員より、七億円の予算はいかにも僅少であるが、これを増額する見込みはないかとの
質疑に対し、
政府委員より、最初予定しておつた十四億円中、差当り七億円を追加予算に計上いたしましたが、残りの七億円につきましては、資材その他の状況を勘案して、別途何らかの形でこれを補足したいとの
答弁があり、又一委員より、六・三制は理想として結構であるが、國家も個人も破産の状況にあるので、これが実施を延期したいとの意見もあるが、
政府のこれに対する見解如何との
質疑に対し、文部
大臣より、六・三制の実施は
國民に対し相当の負担を掛けることになりますが、新らしい
日本が立直るには新らしい次代を育てて行かなければならないのであ
つて、この窮乏の間にも新らしい
日本を作ることを怠
つてはならない。殊に
日本が将来
世界に尊ばれ、愛せられる
國民になるにはどうしても苦しい中にも次代を育てて行く
教育制度を完備しなければならないとの
答弁があ
つたのであります。又一委員より、金融機関再建整備法により、当初の予算に計上せられておつた補償金百億円が削減されて、これに引当てられておつた財源が他に流用されておるが、これはどういうわけかとの
質疑に対し、
政府委員より、金融機関再建整備がなかなか進捗せず、本年度中に支出する見込がないので削減いたしましたが、勿論明年度に必要となるわけであります。又補償金は交付公債で
処理することにな
つておりますので、金額公債の発行によりますか、又は別途歳入を調達して公債を買入るることにいたしますかは、明年度
予算編成の際決定したいとの
答弁がありました。又一委員より、健全財政の建前からも、亦給與改善をなすためにも、この際行政整理を断行せねばならんのではないかと思わるるが、これに対する
政府の所見如何との
質疑に対し、齋藤
國務大臣より、行政整理の内容は行政機構並びに公務員制度の改革とその運用、及びこれと併せて人員の整理による経費の節約等となる思いますが、目下行政
調査部で
調査中であり、すでに
中央官庁の
地方出先き機関整理等、具体的立案の域に達しておるものもありますが、人員整理にはこれが受入れ態勢をも併せ
考える必要があるのみならず、各
方面に重大なる影響がありますので、明年度予算とも睨み合せ、
政府全体として具体案の決定をいたしたいと思いますとの
答弁がありました。更に一委員より、健全財政の要件は第一に収支の均衡、第二に
國民生活の安定、第三に再生産を助成することであろうと思うが、この第二の観点から現在の物價高においては千八百円
水準を引上げる必要があるのではないかとの
質疑に対し、和田
國務大臣より、
物價体系を崩さない範囲内において適当に是正することは必要であると思う。即ち一般賃金においては、企業の合理化による生産増加に伴い、物價に影響なく賃金の引上げができるし、又
政府職員等の給與についても、予算の範囲内又は妥当なる歳入により一般賃金と均衡を失しない程度に引上げを行うことは支障ないとの
答弁がありました。又一委員より、現在の世相におきましては、不良少年少女の保護
事業が特に大切であるのにも拘わらず、予算の不足のために十分な保護ができないのではないかとの
質疑に対し、司法
大臣より、少年の犯罪並びに不良化は実に憂慮すべきことでありまして、これが保護を
徹底的にやるためには相当の増額を要すると思いますが、差当たり少年の一人一日当りの委託補給金を三円から四十円に増額するつもりであるとの
答弁がありました。更に又一委員より、明年度の
予算編成に際しては、先ず財政の長期計画を立て、これに基ずき
終戰処理費その他諸般の費用を綜合調整して、積極的に
日本再建に資することが必要ではないかとの
質疑に対し、
大蔵大臣より、本年度の予算は戰後の應急的
処置に重点を置かざるを得なか
つたのでありますが、明年度におきましては、新らしい
日本再建の諸
政策の一環として財政の長期計画を立て、平和産業の振興、文化の建設等、積極的
方面をも十分に織り込んだ予算を編成するつもりでありますとの
答弁がありました。その他重要なる
質疑應答がありましたが、詳細は
速記録により御承知を願いたいと存じます。
而して十一月二十五日、各分科の主査より
分科会の
報告がありましたが、第一分科においては、中西委員より予算返上の反対意見がありましたため多数決となり、他の分科においては、全会一致原案
通り可決すべきものと決定したとの
報告であります。尚租税徴収の成績如何が予算の実行上重要な
関係がありますので、
予算委員会においては、特に「徴税機関の予備
調査に関する小委員会」を設けまして、
調査をお願いいたしたのでありまするが、木村小
委員長より次の
通りの
報告があ
つたのであります。即ち本年度における徴税の実績は、九月末現在において、
調査決定済額五百四十九億円に対し、収納済額は三百七十七億円であ
つて、本年度租税収入予算額約千三百億円対し僅かに二八%に過ぎず、滞納額は、昨年度末四十九億円であつたが、本年七月末は九十九億円に激増しており、而も税務署職員は、定員約六万七千人に対し、実員約三万七千人、即ち約五五%に過ぎないような実情でありまして、
政府も種々対策を講じておるようでありますが、本小委員会においては、第一に、税務官吏の待遇に関しては、一般官吏に比し著しく悪い部分については至急是正をなすと共に、その職務の重要性、特殊性に鑑み、特別なる考慮をなすこと。第二に、
昭和二十二年度予算の徴税費は不十分と思わるるから、事情の許す限りこれを考慮すること。第三に、
政府の計画せる全國的納税運動の際しては、租税の性質内容等につき十分理解せしむる機会と資料とを提供して、
國民が納得して納税する態勢を取ること。右三点を
政府に要望する旨の決議せりとの
報告でありました。
又文教
委員長田中耕太郎君より特に発言があり、六・三制の問題については、当初予定せられた十四億円に対し本予算においては七億円計上せられたとのことであるが残りの七億円に対しても是非共予算の割当を受けるようにとの強い希望がありましたが、特に
大蔵大臣よりも発言を求められ、田中文教
委員長の御希望については十分考慮するとのことでありました。
十一月二十八日討論に入りましたが、中西功、
藤田芳雄両委員は、本案に反対する旨を述べられ、姫井伊介委員は、本案に賛成なるも、これが実行及び明年度
予算編成に当りては、租税徴収の共同
責任制度を樹立し、生産の増強、特別会計の赤字克服等、
徹底的な
政策を実施すべきであるとの希望を述べられ、又石坂豊一、木村禧八郎、西郷吉之助、木内四郎、川上嘉市、服部教一諸委員は、いずれも原案に賛成の旨を述べられ、且つ賛否両討論者は、その論旨は各党より本
会議において行う代表討論によりて明らかにすべしとのことでありまして、討論を終局いたし、採決の結果、多数を以て原案
通り可決すべきものと決定した次第であります。ここに御
報告申上げます。(
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