○木下辰雄君
只今議題となりました
請願第百三十三号、同百四十五号外六件と、
請願第三百二十五号外三件及び
陳情第百六十七号外四件につきまして、水産常任
委員会における
審議の
経過並びに結果について御
報告いたします。
請願第百三十三号、第百四十五号は、
熊本縣牛深漁港修築に関する
請願であります。
紹介議員田方進君並びに内村清次君から
請願の要旨について御
説明がありましたが、同漁港は我が國重要なる漁場たる天草灘の根拠地で、漁獲高は年間一万五千トン、加工水産物三千トンその他海藻類を加えますと、二十一年度におきまして二億円の生産があり、同漁港に繋留する漁船は大小合せて六百隻、その外各種運搬船も多く、
從つて暴風雨の際港湾に收容できず、港外島影に避難するも被害多く、二十一年度被害漁船大小合せて百三十五隻にも達しておるような状態であります。この際港湾修築工事を速かに完成したいから、二十三年度より継続工事として國庫補助を仰ぎたいというのであります。
請願第二百十九号は岩手縣八漁港修築に関する
請願でありまするが、
紹介議員千田正君からその要旨について御
説明がありました。同港は青森縣八戸港と岩手縣宮古港の間四十里の海岸線に唯一の良漁港であり、避難港であります。又同漁港は三陸漁業の中心地であるばかりでなく、本州と北海道との中継港として重要なる
位置にあります。然るに港内経隘、設備不十分で、而も漁船の急増、船型の増大はますます修築の急を要するので、國庫補助を仰ぎたいというのであります。
請願二百二十五号は福島藤
江名漁港改修工事費國庫補助に関する
請願でああます。
紹介議員橋本萬右衞門君から
請願の要旨の
説明がありました。同漁港は太平洋漁場の重要漁港で、四季を通じて揚繰、底曳、「かつお」漁業等重要漁業の根拠地で地元の漁船のみでも百三十隻を数え、二十一年度の水揚高は五百八十七万四千余貫、一億一千二百余万円に達しております。然るに港湾内に岩礁があり、繋船荷揚に不適当であるから、速かに國庫補助により改修を仰ぎたいというのであります。
請願第二百二十六号は、同じく福島縣
中之作漁港改修工事費國庫補助に関する
請願でありまして同港は江名漁港と共に、重要漁港で、機船底曳網漁船その他多くの漁船の根拠地でありますが、港内に岩礁があり、盛漁期にが完全に繋船することができない
状況にあります。目下福島縣においても、工費千九百三十五万円で修築計画を樹てておりますが、縣内及び地元のみにては負担に堪えないから、国庫補助を仰ぎたいというものであります。
請願第二百四十七号は、
兵庫縣柴山漁港改修工事に関する
請願で、同港は京都府舞鶴港と鳥取縣境港との中間における唯一の避難港であり、重要な漁港でありますが、水深浅く、このため毎年十回内外の暴風雨時に避難する船が損害を被ることが甚だしいのであります。
昭和十三年に農林省の助成を得て防波堤を構築したが、完成しないから、この際國庫補助の下に防波堤の延長と内港の浚渫を仰ぎたいというのであります。
〔副
議長退席、
議長着席〕
請願第二百五十五号は、
焼津漁港構築に関する
請願であります。
紹介議員河井彌八君から詳細なる
説明がありました。焼津の地は太平洋岸で、かつお漁業の根拠地として極めて重要なるところであり、
昭和十五年度の生産高は、鮮魚、生節、鰹節、蒲鉾、塩辛、塩「さば」を合せて一万四千五十六トンを算し、東京、大阪、名古屋に出荷され、又漁船のごときも大型船八十余隻を有しておりますが、岸壁がないため、天候のいいときにおいても資材の積込み、漁獲物の陸揚げに多大の時間と労力を空費し、その損失は年間四千余万円に達し、時化の時には遠く清水港に避難して、繋船、水揚げ、資材の積込み等をなす状態であるから漁港の構築が必要である。尚農林省においてもその必要を認め、
昭和十四年より七ヶ年計画で築港に着手したが、戰争のため中絶しておる状態であるから、この際速かに構築を仰ぎたいというのであります。
請願第二百七十三一号は、伊豆半島
伊東漁港改修に関する
請願であります。
紹介議員藤井新一君から
説明がありましたが、同港は伊豆相模沿岸の各種漁業の重要な根拠地であり、
昭和十一年度に漁港修築の工事をなしたが、土砂沈積し、漁船の出入に
支障を來しておるから、國庫補助の下に改修工事を
実施して貰いたいというものであります。
右に関しまして、
委員会においては十月七日、同十五日の両日慎重
審議をいたし、又各
委員と
政府当局との間に
質疑應答を重ねましたが、この漁港修築に対し、
政府当局の
説明の要旨を申上げます。農林省における漁港修築の計画は、北海道五十四港を五ヶ年計画を以て
実施する計画を樹てておる、即ち二十三年度十七港、二十四年度に十二港、二十五年度に十港、二十六年度に八港、二十七年度に七港である。又内地においては現在薦手中のもの五十八港、明年度から五年計画で修築するもの九十港で、二十三年度三十五港、二十四年度二十港、二十五年度十五港、二十六年度及び二十七年度各十港でありまして、工事費は北海道四億二千八百万円、内地八億二千万円を要する計画であるというのであります。而してこの
請願の中、牛深漁港、中之作漁港、焼津漁港、伊東漁港、江名漁港はいずれも農林省の修築計画中のものでありまして、速かに修築に着手いたす計画であるが、八木漁港及び柴山漁港は商港としての性能をも兼ねて、
運輸省において目下修築計画中であるから、その完成を待
つて、或いはこれと並行して漁港として築設する計画であるとの
答弁がありました。
尚
政府委員の
説明によりますと、北海道の漁港の修築は全額國庫負担で、内地は五割補助とな
つておるとの
説明がありましたので、千田
委員から北海道の全額國庫負担は結構だが、どうして内地の漁港のみ五割補助とするかとの
質問に対しまして
政府の
答弁は北海道は從來拓殖費から全額支出しておつた関係もあり、まだ内地程負担力がないから、今後も全額支出とな
つておるとの
説明がありました。これに対しまして千田、緒方、江熊の三
委員から将來は内地も北海道同様全額国庫支出の途を開くの要があると希望
意見を述べ、
質疑を終了いたしました。
討論に入りましたが別に
発言もなく、
全会一致を以てこの
請願六件はいずれも議院の会議に付し、
意見書を内閣に
送付することに決定いたしました。
次に、
請願第三百二十五号外三件は
委員会において十一月六日と十一月十日の両日にわたり
審議いたしました。即ち
請願第三百二十五号は
舞阪漁港修築費國庫補助に関する
請願であります。同港は静岡縣西部における唯一の漁港で、
昭和十九年十月暴風雨により東端防波堤が決壊したため流砂が多く、航路を埋没して漁船の航行不能とな
つたので、本港の持つ
重要性を考慮されて、國庫補助を以て本港の改良工事を
実現されたいというのであります。
請願第三百五十六号は
鴛泊漁港築設に関する
請願であります。
紹介議員堀末治君から
説明がありましたが、同港は北海道利尻島の北端にある良港で、近海は四季を通じて活溌に漁撈が行われておる北海道の宝庫である。更に近海航路の最難関である小樽、稚内間の避難港でもあ
つて、地理的にも重要な所であるが、港内が狭いので一朝時化の場合はその対策がなく惨状を呈するので、この防止のため新たに外港として
鴛泊漁港を築設せられたいというのであります。
請願第三百六十六号は、小濱漁港浚渫に関する
請願であります。
紹介議員松下松治郎君の
説明がありました。同港は構築以來十年余、未だ港内の浚渫を行
なつたことかないので、毎年樹氷時には河口に土砂を流出し、沖合よりは波浪のため砂礫を打上げ、水深著しく浅くなり、干潮時における漁船の出入は不可能な状態であるから、國費を以て港口及び港内の浚渫を
実施されたいというのであります。
請願第三百七十四号は、
廣田漁港修築工事継続施行に関する
請願であります。
紹介議員千田正君から
説明がありました。同港は岩手縣の南端にある重要な漁獲物陸揚げの縣指定港である。同港の第二期工事は物價暴騰のため、工事半ばを
施行したのみでありますから、このまま中止するとすれば、現在までに費した長年月と、莫大な経費は十分なる効果を挙げることができず、又漁業生産上甚だ遺憾であるから、当港の修築工事を続行されたいというのであります。
以上四件について、各
委員と
政府当局との間に、種々
質疑應答を重ねました。而して
政府当局の
答弁によれば、以上四漁港はいずれも重要であるから、速かに修築に着手する計画がある。尤も
鴛泊漁港は商港としても重要なる性格を持
つておるから、
運輸省において修築計画があるから、農林省はその完成を待
つて漁港としての
施設をなす計画であるとのことでありました。これで
質疑を終了、
討論に入りましたが、別に
発言もなく、
全会一致を以てこの
請願四件はいずれも議院の会議に付し、
意見書を附し内閣に
送付することに決定いたしました。
意見書案を申上げます。
請願第百三十三号第百四十五号
熊本縣牛深漁港修築に関する件外九件
右の
請願は我が國における漁場の根拠地たる漁港を改修することは、食糧増産上極めて重要であるから何れも速かに國庫補助によ
つて之が
実現を計られたいとの
趣旨であ
つて参議院は、願意の大体は妥当なものなりと思う。よ
つて内閣は鋭意これが
実現に努力せられたい。ここに
國会法第八十
一條により別冊を
送付する。
請願は以上であります。
次に
陳情第百六十七号外四件につきましては、九月二十六日と十月一日の両日に亘りまして、小
委員会を開いて慎重
審議が行われ、十一月六日と十一月十日に
委員会を開会いたしまして
審議をいたしました。十一月六日の
委員会におきしまして、江熊小
委員長から次の通りの
報告がありました。以下は江熊
委員長の
報告であります。
陳情第百六十七号は便宜上第二百四号と一括して
審議をいたしましたところ、青山
委員より
漁業法の
改正、
漁業協同組合法の制定を遅延せしむることは、漁業者の
精神的不安を醸し、生産意欲の減退を招來する虞れがあり、又
漁業権は漁業
協同組合の共有とし、又これが開放は真に働く漁民にすることが極めて適切であり、又漁業会の
民主化を図ることも極めて必要なことであるから、
本件はこれを採択し、
意見を附して内閣に
送付するを適当と認む、との
意見があり、
討論に入り更に
採決いたしましたところ、全員
異議なく可決いたしました。次に、
陳情第百七十一号沿岸漁民の加配米に関する件は慎重
審議いたしましたところ、沿岸漁業者も遠洋漁業者と同様重
労働であり、現在漁業労務者の加配米は二十トン以上の以西底曳網漁業及びトロール漁業、「かつお、まぐろ」漁業、三十トン以上の捕鯨業及び魚類運般業從事者については、一人一日二合五勺の定量加配米があります。代るに沿岸漁業者に対しては、單に鮮魚百貫供出に対して二升五合のリンク配給があるのみでありますから、この際沿岸漁業に対しても遠洋漁業と同様漁獲物に対し自家用消費を除き完全供出、計画配給を前提として加配米制度を改善し、遠洋漁業同様定量配給をなすの要がある。よ
つて意見を附して内閣に
送付すべきであるという
意見が多く、
討論に移り
採決いれしましたところ、全員
異議なく決定いたしました。
次は、
陳情第百七十二号
機船底曳網漁業取締に関する件を
審議いたしましたところ、戰時中食糧不足と漁業労力不足のため、
禁止区域丙の機船底曳が黙認されておつたが、終戰後漁業労力も充実し、沿岸漁業者の保護並びに魚族の増殖の上からも、
禁止区域侵犯は嚴に取締るの要があり、殊に瀬戸内海は重要なる海面であるから、関係府縣の取締船による取締ののみに委せず、農林省が取締船を常置して違反漁業の徹底的取締をするの要があるという
意見に一致しました。これに対し水産局長の
答弁を求めたるところ、水産局長も
禁止区域侵犯を徹底的に取縛る
方針である旨の
答弁があり、
討論に移りましたところ、青山
委員より、
本件は極めて重要であるからこれを採択し、
意見書を附して内閣に
送付する旨
意見があり、丹羽
委員の
賛成意見もあり、これを
採決いたしましたところ、全員
異議なく可決いたしました。
次に、第百七十三号、
海中沈没物速時引揚に関する件につきまして、
審議の
経過を申上げます。
本件についても慎重
審議しましたところ、丹羽
委員より瀬戸内海は我が國重要なる漁場であるが、この漁場内に戰時中艦船、飛行機等沈没物が多く、これがために漁撈に甚だしく
支障を來し、漁具、漁網等の損傷も甚だしいので、速かに大型沈没物の引揚を
政府においてなすことは極めて必要であるから、これを採択し、
意見書を附して内閣に
送付するより決定すべきであるという
意見がありましたので、これを
採決いたしましたところ、全員の
賛成を以て可決いたしました。
以上が江熊小
委員長の
報告であります。そうして更に十一月十日の
委員会におきまして、
政府当局との
質疑應答が行われました。その概略を御
報告申上げます。即ち江熊
委員、千田
委員、青山
委員、小川
委員等より、
漁業法の
改正並びに
漁業協同組合法の制定については、本
國会開会の初め
政府当局は準備の都合上、この
國会には間に合わないが、來
國会には初頭において提出すると明言せられた。而して本
國会もすでに二回に亘り而も約三箇月の会期延長にな
つておる。その間相当期間の予裕があつたにも拘わらず、
政府当局より
法案の提出がないことは甚だ遺憾である。殊に
漁業協同組合法の制定前に、中央水
産業会は近く閉鎖されるというようなことを聞く。若し事実なりとすれば漁権並びに漁民の指導の中心を失い、漁民の
精神的不安は多くなり、生産意欲を減退し、延いては我が國食糧増産上甚だ遺憾である。又水産局の一部の者より流布されたと称し、巷間傳うるところによれば、現在の漁業会系統
機関の役員は、新たに制定される漁業
協同組合関係の役員にはなれないと言われておるが、この点はどうかという
質問に対しまして、
政府当局は、
漁業法の
改正並びに
漁業協同組合法の制定に関する現在の見通しは、
漁業権制度の
改正につき若干未解決の点があるが、できるだけ早く完了し、來
國会初頭において提出する考である。又現益の漁業会系統
機関の役員は、すでに公職追放関係は済んでおるから、漁業
協同組合系統
機関が設立された場合に、その指導的地位に選任されることは何ら差支ないと信ずる。以上のような
答弁がありました。そうして
討論に入りましたが、別に
発言する者もなく、小
委員長の
報告通り議院の会議に付し、内閣に
送付することに
全会一致を以て可決いたしました。以上を以て御
報告といたします。(
拍手)