○木内四郎君 今回補正
予算を提出されるに
当りまして、昨日
大藏大臣から詳細な御
説明があ
つたのでありまするが、極めて厖大なる
追加予算でありまするが、当初
予算を
編成、提出されてから後におきまして、各般の情勢が変わ
つておりますので、この
追加予算を提出するの余儀なき事情につきましては、我々はこれを諒とする者であります。
この補正
予算を眺めまするというと、当局の苦心の跡が誠に歴然たるものがあるのでありまして、
大藏大臣及び事務当局の苦労に対しましては大いにこれを多とし、且つ敬意を表する次第であります。併しながらこの補正
予算が第一号から八号までばらばらにな
つて提出され、又今後提出されようとしておるのでありまして、これがために國会は延長に延長を重ねるの止むなきに至り、この責任は一に
政府にあるということを、この機会に更に改めて明らかにいたして置きたいと存ずるのであります。(
拍手)
詳細の
質問につきましては、時間の
関係もありまするので、
予算委員会に譲りまして、ただ主なる二三の点につきまして、
政府の所信を質して置きたいと思うのであります。
先ず第一に、
予算そのものについて伺いたいと思うのでありますが、
大藏大臣は、
中央及び
地方を通じて、飽くまで
健全財政主義を堅持して行くということを言明されたのでありますが、我々はこの
方針に対しましては全く賛意を表するのであります。一号から八号までの
予算におきまして、九百二十億の追加額を提出され、本年度全体といたしましては二千六十六億の巨額に上がるのでありますけれども、今回の補正
予算によりまして、当初の
予算において
赤字を計上しておつたその分までも、普通歳入によ
つてこれを賄うことにされた。そうして
大藏大臣の
説明によれば、今度は実質的にも、亦形式的にも均衡を得た
予算にした、こういうことでありました。実質的に均衡を得ておるかどうかというようなことにつきましては、いずれは委員会におきまして詳細に檢討いたしたいと思うのでありまするが、とにかく少くも形式的には均衡を得た
予算を提出することができたということに対しましては、私共は大いにその労を多とするのであります。殊に満州事変この方絶えず
赤字公債によ
つて予算の大きな
部分を賄
つて來たのに、今日初めてここに少くも形式的には収支の均衡の得た
予算を作ることができたということは、確かに一つの成功であると思うのであります。併しながら、昨日
川上議員からもお話がありましたように、
予算は單に均衡を得ておるというだけでは、健全な
財政ということは困難であろうと思うのであります。例えば、仮に非常に野放図な
歳出額を認めてこれを
集計した
ところが、二千数百億円に
なつた。これに対して
國民から、これを賄うに必要な税金その他を取立てなければならんからというので、重い税金をかけ、酒や煙草の値段も非常に引上げて、そうして収支の
バランスを合せる。極端な例ではありますが、それでも収支の均衡を得た
予算であるということができると思うのであります。併しながらこの際、我々としては飽くまで、できるだけ
歳出はこれを抑えて、そうして税金もこれをできるだけ少くする。酒や煙草の値上げもできるだけこれを少くして、
國民の
負担を軽くするということでなければならないと思うのであります。
予算の収支の均衡を合せるために或る一定の限度を超えて
租税を引上げたり、或いは又酒や煙草の値段を限度を超えて上げるというようなことになりますれば、
予算はたとえ収支の
バランスを合せましても、先程
板谷議員からいろいろ述べられましたが、たとえ
予算は収支の均衡を得ましても、その税率の引上げ或いは專賣品の値上げそれ自体がすでに
インフレの原因となり、或いは
インフレを促進するものであることは、前欧州大戰後の欧州諸国においても、今回の大戰の後における
ところの欧州諸国の
実情を見ましても、明らかな
ところでありまして、又各国の
財政学者も等しく一致しておる
ところであります。又同時に、余りに税金が高くなるというようなことになりますれば、例えば酒について見ますれば、一方において密造が非常に多くなる、闇の煙草も多くなるというようなことでありまして、結局税金或いは値上げの
目的それ自体をも達しないというようなことになる虞れもあるのであります。例が少し違いますけれども、曾て我が國におきまして、ダイヤモンドの
輸入について関税をかけたことがある。初めは或る
程度の関税をかけておる当時は税の収入も相当あ
つたのであります。
ところが、贅沢品の関税としてこれを極端に引上げました
ところが、ダイヤモンドは相変わらず國内へ入
つておるのであるけれども、税収の方が少しも上がらないというような
状態になりました。これは或る
程度の限界を超えるというと、やはり危險を冒しても隠して
輸入した方が合う、或いは隠して
輸入し勝ちになるというようなことから來ていると思うのであります。
そこで今回の
國民の
負担が、先程
板谷議員が言われたように
國民所得の七割五分にもな
つているか、或いは
大藏大臣の言われるように二二%であるか、そういう問題は非常に大きな問題でありまするが、いずれそういう点については、委員会において詳細に檢討されると思うのでありまするが、
大藏大臣はすでに昨日の
財政演説におきましても、
予算編成方針の第二として、
財政、
企業、家計を通じ、
國民経済全体を綜合的に把握して、その再
生産に寄與し、
経済再建に資すると共に、
國民生活の安定確保を記する
予算たらしめねばならない。こういうことをすでに
言つておるのであります。又
大藏大臣は今回の
予算の
編成に当
つて最善を盡し、且つ最善を盛つたというようなことを
言つておられます。勿論
大藏大臣は、主観的にはさようでありましよう。併しそれが果してその
通りにな
つておるかどうか、この点についても勿論今後大いに檢討を要する点であると思うのであります。又昨日、
大藏大臣は
川上議員の
質問に対しまして、健全な国民
経済の
基礎の上に、
健全財政にしたか
つたのであるが、併し今回は均衡を第一にした。こういうようなことを
言つておられまするので、その口吻から見ますと、いかにも今度は
健全財政を均衡第一にしたと
言つているので、均衡第一であるが、健全ということは止むを得ず暫く後廻しにしたというふうにも聞えないのでもないのであります。こういう点につきまして、重ねて
大藏大臣から明らかにして置いて頂きたいと思うのであります。
更に
特別会計の
赤字の問題、或いはその補填の方法等につきまして、先ほど
板谷議員から詳細な御
質問があり、又各
大臣から御
答弁がありましたが、その点につきましては、一應各
大臣の
説明を了承する者でありまするが、ただ一つ私はここに伺
つて置きたいことは、
経済緊急対策におきましては、すでに
政府は六月にこういうことを
言つております。甚だしく過剰な從業者を抱えている
企業については、その
合理化及び健全化を図り、
政府事業においても率先して右の措置を講ずる。こういうことを
言つておる。又更に
経済緊急対策におきましては、
政府の
事業特別会計については独立採算制の本旨を徹底する。こういうことを
言つているのであります。又藏相は昨日
財政演説におきまして、合理的な経営を行な
つておらない
ところの
企業に対して、
赤字補填のための金融を行うごときことがあ
つてはならない。こういうことを
言つており、更に総理
大臣は昨日この席におきまして、自分は
経済緊急対策の実施に専念しておるとまで
言つておられるのであります。こういう
経済緊急対策にすでに六月掲げられたことを、今日尚これを実施に移されないで、先程運輸
大臣或いは逓信
大臣から伺いますというと、尚
將來研究するというようなお話でありまするが、これはどうも少し(「少しじやない」と呼ぶ者あり)公約に反しておりはしないかと思うのであります。総理
大臣は本日はここにおられませんが、すでに罷免権というようなものの発動についてさえも蛮勇を揮われたのであります。こういう公約の実行について更に勇氣を出されることが必要ではないかと思うのであります。(「いまに辞めるのだろう」と呼ぶ者あり)そういう点についてここにはおられませんが、(「総理
大臣を呼んだらよい」と呼ぶ者あり)責任ある御
答弁をお願いし、又
國民にこの点を明らかにして置かれることが必要ではないかと思うのであります。殊に先程からいろいろ御
説明がありましたけれども、どうも納得することができなかつた。殊にこの根本の
赤字を克服するためにどういう措置を取られた、又どういう措置を取ろうとしておるかということを、もつと
國民の納得の行くように御
説明して頂きたいと思うのであります。
尚この際それに関連しまして勿論
行政整理の点につきましても、もう少し具体的に御
説明を御願いいたしたいと思うのでございます。
今回のこの
予算につきましては、世状においては、千八百円ベースと
物價体系を崩壊するものである、こういうようなことを言う人もあります。又ある者は、すでに千八百円ベースを
物價体系は崩壊しているのである、今回の
予算によ
つて更にその幅を大きくするに過ぎない、こういうようなことを
言つておる者に対しまして、
政府においては、飽くまで千八百円ベースはこれを維持し、
物價体系はこれを維持して行くことができるというふうに
言つておるのでありまするが、議論はどうでもできると思うのであります。併し事実は爭うことができないと思います。今回の関東の水害において、私の知
つておる人が、表の門の
ところを閉めて、そうして水を防げたと思
つておつたら、いつの間にか、中へ入つたら、水が床の下まで來てお
つて、慌てて疊を上げた、こういうことを私に
言つてお
つたのでありますが、口先だけで千八百円のベースが維持できている、或いは
物價体系が維持できていると言つただけではいけないのでありまして、飽くまで事実を以てこれを証明して頂きたいと思うのであります。
大藏大臣はさすがに良心的でありまして、(
笑声)補正
予算は直接は
物價体系を動揺せしめるようなことはない、こういうふうに
言つております。又、今後配給物資の増加によ
つて実質賃金の充実を確保することができれば、
追加予算の施工によ
つて賃金水準を危殆ならしめるようなことがない、こういうことを
言つておられます。言葉の末を捕えるようでありますけれども、直接には
影響はないけれども、金融その他間接には
影響があるということを認められているようでもありまするし、又実質賃金の充実を図るということも極めて困難、或いは殆んど不可能にも近いのではないかと思うのであります。
大藏大臣としてはこういう言い方以外には或いは仕方がなか
つたのであるかも知れませんが、これ以上ここで議論をしまして水掛論をいたしましても致し方がありませんが、こういう点につきましても一應
大藏大臣から御
説明を願
つて置きたいと思うのであります。
次に今回の煙草の値上げでありまするけれども、これにつきましては現に國会開会中でもありまするので、
財政法の條項がたとえ施行されておらないにいたしましても、少なくも予め國会の了解を得るということは
財政法の精神に合
つてお
つたのではないかと思うのでありまするが、
政府の責任において行われましたことについて、この際ここでいま一應大蔵
大臣から御
説明を願
つて置きたいと思うのであります。総理或いは
大藏大臣も煙草を喫われないかもしれませんが、煙草は單なる嗜好品として片附けてしまうには今日は余りにも
國民生活に必要なものでありまして、
〔
議長退席、副
議長着席〕
この値段を著しく上げたり、或いは又家庭の配給を削減するようなことは、家計に極めて重大な
影響を及ぼしているのでありまして、殊に
國民はこれが
特別会計の
赤字の補填のために行われたというような経緯を聞いておりますので、若しそういう根本の点に手を触れなければ、
將來においても尚更にこれが引上げられ、或いは家庭の配給が少くなり、殆んどなくなるのではないかということを虞れているのであります。どうかこの点について
國民の納得の行くような御
説明をお願いいたしたいと思うのであります。
更に金融について簡單にお伺いいたしたいと思うのであります。大蔵
大臣は
財政を引締めた結果が金融面に轉嫁されることになれば、
健全財政は單なる計数の遊戯に過ぎんと
言つておられる。又
財政資金、
産業資金共蓄積
資金の範囲内で賄うことが必要であるということを
言つておられるのであります。私共はその
方針につきましては全く賛成するのでありますが、そこで
大藏大臣に伺いたいことは、飽くまで昨日言われたような健全金融の
方針を文字
通り一体行な
つて行かれるのかどうかという点であります。勿論これを行な
つて参りますれば、
産業資金その他の点でいろいろ支障を來すと思うのでありますが、こう言われることを、飽くまでその文字
通りに実行実施して行かれる考えであるかどうかということをこの際明らかにいたして置きたいと思うのであります。たとえ健全な金融を文字
通りに行
なつたといたしましても、昨日來ここで度々問題にな
つておりますように、
租税の
滞納はすでに百億円を超えている。又この
租税の納入と支出の方において時間的な非常な食い違いがある。又從來問題にな
つておりまする
貿易資金の運営、多額の金を使
つて國内の物資を買上げて、これを外國に
輸出している。外國から持
つて來た物は比較的安い値段で賣
つている。從
つてその間において多額の
資金が民間に撤布されているというような事情もあります。又復興金融債券は
大藏大臣がたびたび言われているように消化が極めて不成績であつた。又今後についても非常に危惧される。こういう点もありまするので、仮に健全金融が行われたといたしましても、今後相当に
通貨の膨張を來すのではないかと思うのであります。本年の上半期におきましては、
資金の需要が七百九十七億円に対して、供給の方は三百四十九億円である。不足が四百四十八億円もある。そうしてその結果
通貨が四百六億円も膨脹しておる。安本の
政府委員の
説明によりますれば、止むを得ないが、それは計画的の
通貨の増発であるというようなことも
言つておるのでありますが、又第三四半期におきまして、更に三百億円以上の
通貨の増発をすでに予定しておる。第四四半期においても相当な膨脹を來すでありましよう。そうすると、本年の初めにおいて、
大藏大臣の昨日の
説明によると、千億円であつたものが段々殖えて來たというが、年末になれば二千億円前後になる。或いは年度末になれば更にそれが殖えて行く。そういう
状態になるのではないこと思うのでありまするが、その点についても
大藏大臣の
所見を質して置きたいと思うのであります。
〔副
議長退席、
議長着席〕
そうして健全金融を行いましても、
通貨がかくのごとく膨脹して來る。そうして浮動
購買力が非常に増加して來る。又自由預金も
大藏大臣が昨日
説明されたように、最近も相当殖えておるらしいけれども、それも浮動性のものでありまして、潜在的の
購買力であります。そういうようなふうに、浮動
購買力が非常に多い場合におきまして、
一体物價が今後上らないで行くという見通しであるかどうか。勿論現在は
物價体系はまだ
政府の言うように崩れておらないにしましても、千八百円ベースは維持出來るといたしましても、かくのごとく毎日々々
通貨が膨脹し、浮動
購買力が増加されて行く。而も一方において
生産財、消費財の
生産が少くて物が少い。そういう
状態で、
一体今後において少くも年度末まで、それから先のことはいいのですが、年度末までの間において
物價が上
つて行くことはないと云うふうに考えておられるかどうか。こんな場合に
物價の上らない國はないと思います。我が國においては、上
つて行かないという見通しであるかどうか、或いは統制したり、マル公があるから上らないと言われるかも知れないけれども、その基盤がすでにこういうふうにな
つて参つた場合に、或いはマル公で抑え、或いは闇を抑制し、そうして
政府の言うように、流通秩序をそういう金融情勢の下において維持して行くことができるかどうかということを伺いたいと思うのであります。
尚今後においてこの
物價が若し仮にそういう
状態であるならば、騰貴が止むを得ないということでありまするならば、今安本は十一月黒字説を唱えておるようでありまするけれども、賃金水準の改訂の必要がないというふうに考えておられるかどうか、或いは又増俸や突破
資金を出す必要がないというふうに考えておられるかどうか、勿論
説明はどうでもいいのです。
政府は
物價水準、賃金水準を維持する必要があると思うんだが、中労委が決定するから仕方がない、こういうことであれば又それでもよいのですが、或いは又
政府の千八百円ベースというものは、飽くまで維持して行くのであるが、民間の賃金が高いから、そこまでは上げるんだと、理由はどうでも構いませんが、こういう金融情勢の下において、これを上げて行く必要がない、
物價が上
つて行かないというふうに考えておられるかどうかという点を伺
つて置きたいと思うのです。この点は今後の
追加予算にも
関係し、又明年度の
追加予算にも関して参りまするので、明瞭な御
説明をお願いいたして置きたいと思うのであります。
尚沢山ありますが、時間がありませんので省略いたしますが、只一点
大藏大臣は一方において貯蓄の増加を図ると共に、税収、納税成績の向上を図
つて行きたい。こういうことを
言つておられます。私共はその
方針自体には全く賛意を表するのでありまするが、大蔵
大臣は
財政演説におきましても、又昨日からの
演説におきましても、
租税の完納を図るために、或いは税務機構を拡充したり、職員の待遇の改善を図つたり、或いは脱税の摘発、処罰の強化、第三者通報制の活用、
滞納処分の促進等によ
つて、税収の増加を図
つて行くというふうに
言つておられるのでありまするが、税はやはり各人に理解させて、そうして納得して納めて貰うことが必要ではないかと思うのであります。從
つていかなる税法でありましても、それが
國民に理解されない、徹底しておらんということであれば、これはそれだけですでに悪税と見なければならんと思うのであります。現在の税制におきましても、どうも
國民に十分に理解されておらんような傾向があります。又
政府においてもその宣傳に十分に力を盡しておられないように思う。然るに一方において或いは罰則の適用、
滞納処分、こういうことだけでや
つて行かれるということは、余りにも
國民に不親切ではないかと思うのであります。勿論大蔵
大臣の真意は決してそこにあるのではないと思うのでありまして、飽くまでその税法を徹底して理解させて行くというふうにされる考えだろうと思うのでありまするが、その点について大蔵
大臣の
所見を伺い、尚今後税法を簡易化し、或いはもつと分り易いものにし、そうしてその徹底を図るというお考えがあるかどうか、そういう点についても併せて
所見を伺
つて置きたいと思うのであります。時間の
関係もありまするので、この
程度にいたして置きます。(
拍手)
〔
國務大臣片山哲君
登壇、
拍手〕