○川上嘉市君 一千億円に達せんとする
追加予算が、本日本院に提出せられました。この数字は数年前におきましては、我々が夢想だもしなか
つたような大きな数字であります。何故我々がかかる大きい数字を取扱わなければならんかということは、これは
原因は結局戰後のいろいろの施設、それに対する
支出も大いなる
原因ではありますが、最大なる
原因は今日のインフレによるものであると考えます。
大藏大臣の先程の
演説の中にも、我が國の
経済状態は正に
空前の
危機に直面しておるということを率直に認められております。然るに
政府の
物價安定に対する諸施設は、輿論の大勢を判定いたしますのに重大なる過誤を犯しておるというような結論であると考えております。その結果
物價昂騰はいよいよ拍車せられまして、國家の
財政は勿論のこと、
国民生活を脅威いたします。そうして善良なる
國民は現在の
生活並びに將來の
生活に対する非常な不安に慄いておる有様であります。而して國の
経済は將に破綻に瀕せんとしておる現状であります。
私はここに憂國の至情に駆られ、
國民の困苦を傍観するに忍びませず、以下少しく
政府に対して苦言を呈し、その反省を促したいと考えておる次第であります。願わくば率直に、懇切に私の質問に対してお答えあらんことを予めお願いして置きます。
大藏大臣は來ておらんぞ」と呼ぶ者あり)
第一の質問は、
物價安定のために
政府は今日
昭和九年、十年、十一年の平均
物價の六十五倍という安定帶を仮定しております。勿論
物價安定のために或る
目標を立てるということは是非必要なことでありますが、一体こうい
つた大問題を決するに当りましては、確乎たる根拠がなければならんと考えるのであります。然るに
政府の六十五倍という決定には、余り根拠のないように私は信じておるのであります。若しこれに対して確たる理論的若しくはこれに代るべき実際の根拠があ
つて六十五倍に殖えたというのでありますならば、何故そう決めたかという
理由を御説明願いたい。これが第一の質問であります。
次には、今日千八百円というベースの
生活でありますが、これは先程申しました六十五倍の
物價安定帶と両方が歩み合
つてここに
物價を六十五倍の
程度に安定しようという構想でありますが、ところがなかなかこの千八百円を今日では維持することは容易でない。日日の新聞を見ましても、最近の官廳その外のいろいろの争議におきまして、この千八百円を動かしてくれ、もつと殖やしてくれという運動が非常に盛んであります。恐らくはこのままで暮すということは容易でないということを我々は察するのであります。
一つの例をお話申しましよう。私が
昭和八年にフランスにおりました当時に、その時分のフランス人の月給、
物價というものを調べて見たことがありますが、当時普通のサラリーメンの給料が千フラン乃至五千フランというのが普通でありました。そのフランをそのまま円に直すというと、今日の日本の我々の月給とほぼ匹敵するのであります。その時分にそれではフランスの
物價はどうだ、こう申しますというと、ほんの一部分の例でありますが、例えば富士絹のワイシヤツが十五フランでありました。であるからして、もし先の月給と同じ割合で以てフランをそのまま円に直してワイシヤツが十五円であれば、当時のフランス人と同じ
生活を行い得るのでありますが、ところが恐らく今日は富士絹のワイシヤツは千円するでありましよう。それから上等の羽二重のワイシヤツが四十フランでありました。そのフランをそのまま円にして四十円であればよいのですが、そのワイシヤツが千五百円或いはそれ以上であります。結局物債はパリの当時の値段に比べて日本は今日三十倍、四十倍、こうな
つておりまして、而も收入の方は殆んど同じだということになると、どうしてや
つて行くことができるか、我々は非常に痛切に前途の不安を感ずるのであります。結局我我の
物價が高過ぎる。高過ぎるが故に同じ文化の
生活を暮すことができない。今日の状態を考えて見るというと、結局は殆んど文化というものが我我の
生活からみんな奪い去られて、そうして僅かに食
つて行くことができる。こういうだけのような状態にな
つておるのであります。ところが、日本が新らたに出発いたしまして、民主主義の日本、文化の日本、これを作る以外に我々の
目標はないのであります。戰争はしません。我々は武を持ちません。文によ
つて立つときに、我々の中から文化というものを取り除いたならば、何が新らしい日本ができましようか。そういう点を考えて見ると、本当に日本人が將來や
つて行くためには、この物債というものを或る処に引き下げて、本当に文化
水準を保ち得る適当な文化
水準を保ち得るようにしなか
つたならば、日本人というものは結局ただ食うだけの、殆んど三等国、四等國、或いは殆んど野蛮人と同じような
生活に甘んじなければならんという結果になることを懸念するのであります。それで、そうかと申しまして、千八百円の基準を今度崩す、こうなるとどうなるかと申しますと、いわゆる安定帶というものが、これが崩れてしまう。六十五倍。仮りに千八百円を四千円に上げる。或いは三千円に上げる。そうして食う方が幾らか樂に
なつたというときには、又今度は
物價の六十五倍というその安定帶が崩れてしま
つて、この方が又百三十倍になり、或いは二百倍になり二百五十倍になる、こうなると、今までと同じように、いつまでもいたちごつこにな
つてしまうということにな
つてしまうのでありまして、現に民間のいろいろの会社では、或いは三千円とかいうようなところに突入しておる例も幾つかあるように考えております。
そこで私がここでお尋ねしたいと思うことは、
政府は千八百円のこういう基準を果して維持し得る自信があるかどうか。あるとすれば、その具体策はどうするかということをお伺いしたいと考えます。若しこの千八百円の基準が維持し得ないと仮定したときに、そのとき又更に
物價が順送りになる。丁度今日厖大なる
追加予算を提出されておりますが、この際に果して第二の
追加予算を提出せずに済む自信があるかどうか、このお考えを伺いたいと考えるのであります。
それからマル公を六十五倍に上げました。今回の
追加予算がその
物價の上
つただけのためにどれだけ殖えたかということは、これは委員会のときに
大藏大臣に質問いたしました。そうしたところが、約六十億円程、今後の内閣に
なつたためにマル公を上げただけに上
つておるというお話であ
つたのでありますが、若しその六十五倍の安定帶が崩れるときにおきましては、恐らくはもつと、來
年度の
予算が幾らになるかということをも考えて見たのでありますが、恐らくは一千億円、或いは悪くすれば一兆億、一兆という数字が初めて我々の國に現われるような時代が來やせんか、こういうことも我々は懸念しておるのであります。こういう場合に、つまり千八百円のベースが守り切れない場合、そのときに果して
政府はインフレを止め得る自信があるかどうか。若しありとすればどうしてお止めになるか。それについてのお考えを総理大臣にお伺いしたいと思います。
それから
物價廳のや
つております最近のマル公の決定の
方法でありますが 私はこれは非常に概念的に机上の議論でや
つておるようなふうに、結果から見て判断されるのであります。これは闇を禁ずる。闇を禁ずるためには
赤字ではいかん。つまり或る
程度まで引合うようにさして置いて、そうしてその代り或る
程度闇を止めてやろうという親心から出ておるとは考えておりますが、ところがその上げ方が甚だ杜撰であると考えられる節があるのであります。例えば最近、最近と申しましてもここ二三ケ月前でありますが、木材のマル公を上げた。二倍余りに上げた。その当時には木材の市價は闇よりも少し安か
つたのであります。そのくらいにな
つてお
つて、上げる必要はない。そういうときにこれをぽかつと二倍幾らに上げて、当業者も面喰ら
つた。何故かと申しますと、役所でやられますときに、私は机上の室論で、或いは事務が非常に遅いために、半年前に或いは四ヶ月前に調べてお
つて、その時分には必要であ
つたというものが、この頃のような時勢の急変する場合におきましては、忽ちに昨日の状態が今日は変るというようなことがよくあるので、そういうときにその前の調査に基いて段々に判が遅か
つた。それがや
つた時分には特に時代に取残されたというようなことがあり得るのでありまして、木材なんかは確かにその一つであ
つた。ところが、上げてみると、又今度その二倍に上げたものの闇がそれに比例的に又上
つて來ます。結局するに、
政府のいわゆる六十五倍の安定帶というようなものが、若し機械的にや
つておると、ただ
物價を上げる手傳いをしておるような結果になるのでございまして、これは私は非常に遺憾至極だと思うのであります。最近において化学薬品を五倍に上げた。
物價を五倍に上げるという理窟は一つもない。我々工業の
経営に当
つておる者が、いわゆる原價計算というものを少しでも知
つておる人間から見れば、一度に五倍に上げる必要は少しもない。或いは火薬を六倍に一度に上げた。どういうわけかと申しますと、これは一つの例であります。仮りに千五百万円の会社がある。月に千二百万円の火薬を造
つておる。それを六倍に上げたときには、月の
生産が七千二百万円、こうなる。そうすると、一年にして八億円以上の製品になる。ところが、同じ量であります。値段が上
つただけで同じ量を造るに、同じ工場であ
つて、同じ工員で、販賣費とかすべての
経費というものは皆同じ、ただ使
つておる原料の化学藥品が五倍に
なつたというために六倍に上げると仮定する。そうすると、八億円の賣上げの中で、恐らくは原價は三億円か三億五千万円で済む。そうすると、利益は一躍して三億円にも四億円にもなる。資本に対して二十倍くらいの一年に利益が挙がる結果になりやせんかと、自分の想像でありますが、概念的にいうとそういうふうに感ぜられる。これは工業家の常識であります。こういうようなことがいかにも杜撰過ぎる。これでは
物價を上げるだけの話であ
つて、殆んど何らの意味をなさないように我我は考えるのであります。
それでつまり
政府のや
つておられるこの
物價政策、マル公というものを六十五倍なら六十五倍と決めたところが、それは物によ
つてみな違う。製品によ
つてみな違う。例えば我々が聽いておるラヂオ、ラヂオは仮りに聽取者が百万人あろうとも一千万人あろうとも、本の方は同じですから、だからしてここに他の
物價がどれだけ上
つたからとい
つて、それに比例的に上げる必要は一つもない。そういうことがいろいろあります。そういういろいろな場合をもう少しよくや
つて貰わんと、結局は
物價政策というものがインフレ破綻の手傳いをするというような結果になると考えられます。私は
政府は今までのようなやり方をすつかり変えて頂くことを希望するのでありまして、これに対する若し御意見があり或いは何かいいお考えがあ
つたならば、これも承りたいと考えるのであります。
それから六十五倍にマル公を上げましたその目的は、結局するにすつかり闇を止めてしまおう、このマル公だけで十分に行くようにしようという親心からであるならば、ここに上げた以上はどこまでも責任を持
つて、その後始末の闇を止めなければならん。それはどうかと申しますと、実際に止ま
つておらん。例えば、我々がこの頃本が高く
なつた。本が高くな
つて紙一連が、印刷用紙一連が今幾らしますか知りませんが、二千何百円。それがマル公は二百円くらいで、十倍くらいにな
つておるというようなことは、これはもう公知の事実であります。そうい
つたようなことが一向に取締りが行き届いておらん。こうなりますと、先程申しましたように、ただこの
物價政策というものは段々上げる一方で以て一向にうまく行かない。そこで他の
食糧品についてもそうでありますが、
食糧品の方は実を申しますというと、この頃は或いは連合軍の好意によりまして或る
程度の
食糧が輸入されますために、我々の食べる物はどうにか賄いがついておる。こういう
実情であると考えるのであります。これは市中を歩いて見ても、殆んどいわゆる栄養失調というような、状態はこの頃は止
つてしま
つた。そうしてなかなか若い人などは溌剌たる元氣を以て歩いておるのを見る。そうして餓死者というものは殆んどないのであります。これらを見まするというと結局総量においてこの
食糧というものは皆が食べるだけどうにかある。あるが故に皆が餓死せずにや
つて行く。それにも拘わらず我々が苦しむ所以は結局はその配給が悪い。或いは非常に廻り道を通
つて買わなければならん。而もそれをマル公の何倍かに買わなければならん。こういう点にあるのであります。これを直す工夫は結局闇を完全に止めること、そうして配給を適正にするというより外にないのであります。ところがこれが一向にできない。私はこれに対してもつと根本的の
対策を
政府にや
つて頂きたいと思う。これに対する考えを聽きたいと考えるのであります。
それから、それでは
物價をどうしたら止め得るか。こういうのでありますが、私は
物價の循環高の根本になる、第一段に根本になるものは何であるかというと、結局は我々の
生活費が上がるが故に、給料も上げなければならん。給料を上げると工業
生産費も高くなる。その外の
生産費も全部高くなる。こういうふうに循環の最も根源をなすものは
食糧品であると考えます。そういう点において
食糧品をもう少し安定させる。少くも上がらないようにする必要がある。或いは下げる必要がある。端的に言えば下げる必要がある。こう考えるのであります。今同じ日本人の中で非常に收入の不
均衡があります。例えば農山漁村の收入と、サラリーメン、或いは
勤労者などの收入を比べますと雲泥の差がある。これは甚だしい一つの例でありますが、例えば「みかん」が、我々の縣は「みかん」の産地でありますが、「みかん」が一町歩の收穫高が今年は百万円ぐらいであります。又「りんご」は今日の朝日新聞にも載
つておりましたけれども、「りんご」は今までのマル公で申しますというと、一町歩について少くとも百万円、多いときは三百万円ぐらいの收入になるらしい。それからお茶であります。お茶の一町歩の收穫がやはり二百五十万円ぐらいであります。これは少し多過ぎる。どう多いかという比較を申しますと、例えば工業会社、我々が事業を
経営して二百五十万円利益を上げるためには、恐らくは千万円、千五百万円の資本を以て、そうして千人、二千人の従業員がお
つて、そうして一年に二百五十万円の利益はないと思う。それは法人税が可なり高くて八割ぐらい税に取られると、どうしてもそんな利益が得られない。それに拘らず茶園を持
つておる、或いは「みかん」園を持
つておるという人が自分の一家族だけで、殆んどその資本が百万円もなく、十万円もなく、それでその收入が同じ二百五十万円、千五百人を使うより多いということはどう考えて見ても我々は不合理だと思う。ところが実際の
食糧品などの決定のときはどうな
つておるかと申しますと、こつちの方が値段が高いから、「みかん」を作
つておる人に比して米を作
つておる人は割が惡い。だからしてそれに釣合うように上げるという議論が多い。高過ぎるから下げようという議論は一回も聞いたことがない。それで段々上
つてしま
つて、或る一方では非常に不当と思われるような收入がある。片方では一向に收入がない。殊に
勤労者、サラリーメンに至りましては、
物價が上がる一方でどうにもこうにもやり切れんというのが現状だと考えます。それで今後もこの
物價を安定させるためには、どうしても先ず
食糧品を安定させる。少くとも上げないようにするというのでなければいかんと思うのであります。例えば今申しましたいろいろの青果物、青果物を高い高いということは皆我々眼前に見ております。どこの「みかん」屋の前、或いは果物屋の前に行
つて「りんご」一山幾らとか、百匁幾らとか書いておるのを見ると、それから勘定すると、一町歩で幾らできるということが直ぐ分る。そういう高い値段でも、これは実は安定本部の或る高官の人にちよつと話したのですが、なぜこういうふうな眼の前にあるものを取締らないかとい
つたところが、これは自由販賣だ、こういうふうな話である。私はそのときにこうい
つた。一体自由販賣というけれども、これは自由販賣だからいいと見ておるのは安本の仕事ではないと思う。安本は國の
経済、
國民の
生活、或いは
財政、こういうものを安定させるまでが責任であ
つて、これを若し自由販賣だからどんどん上
つてもいいのだと云うのは、いわゆる属僚の考え方である。責任を持
つてこの安定本部の使命を遂行するならば、最後の結果を見るまでやらなければいかんのじやないかということを申したことがあります。そういう意味において
物價の取締り、その他に当
つておる方が、最後まで責任を持
つて本当に國全体の
國民の
均衡とか、收入の
均衡とか、凸凹を止める。そうして本当に國の
経済を安定させるという方向に、もつと指導をして頂きたいと考える次第であります。
それから
政府は
健全財政ということを、先程
大藏大臣のお話にも度々ありました。ところが、私共感ずることは、この
健全財政というのほ單に收入と
支出、これが釣合うから健全であるということはどうしても考えられない。本当に健全であるというためには、丁度工場なら工場が一つの
経営をする。そうしてただ
政府の補助で辻褄を合わせる、或いは賣値を非常にマル公を上げて高くする、それだから引合うというのを以て、我々は健全な
経営とは考えません。本当に健全であるためには、その
内容が眞によく
整備され、そうして能率が上
つて、そして無駄がないというときにな
つて、初めて健全であると考えるのであります。その点になるというと、今回の
追加予算の中で以て私がお伺いしたいことは、
政府はどれだけの行政機構の整理をしたか、或いは能率化とか、或いは人員の整理とか、或いは配置轉、こうい
つたようなことをいたしまして、それで
予算からして、そうい
つた眞に能率を上げ、眞に整理をして、それでどれだけ減らすことができたか。先程不急な事業を止めるとか、ただ止めたということは、それは都合であちこち差引きしただけでは、本当の
健全財政はそういうものではないと考える。この今回の
追加予算で今申したように本当に中の整理ができて、配置轉換をやるとか、人員の整理をやるということは当然の話でありまして、それが今まで形のあるやつを一つも聞いておりません。これは將來やるということは聞いておりますが、まだや
つておりません。この新らしい
追加予算の中で、どれだけそれが見込んであるか、その
総額だけをお伺いしたいと思います。
それから税の話ですが、(「要領だけ」と呼ぶ者あり)税の未納者が非常に多い。こういう話が先程のお話にありました。これも
総額においてどれだけの未納があるか。これらもただ帳面の紙上で計算して、これだけ收入があるとい
つても、若し本当に拂う力がない者があり、それが
相当に多く上るということになると、これも
健全財政でない、こういう感じを持つのであります。この未納者の未納の秘の
総額は現在幾らあるか、その現在高、それからそれに対する、必らずそれを徴收し得るか得ないかというそのお見込みを伺いたいと考えるのであります。
それからこれは商工大臣にお伺いしたいのですが、今
物價が非常に上る、上るために、買わなくてもいいような不急な物は我々は買わなくても済みますけれども、ところが仮りに工場を動かしておると、そうすると何千人の人がおるときに、いわゆる原料高で高くな
つても買わなければならん。併しながら製品を上げて見たところが、もうすでに購買力を超過するということになりますと、これが賣れない。これは先程確かお話の中にあ
つたと思いますが、実際の状況がそんな時代に入りつつあります。若しこのままで行くというと、ここに事業の
危機というものが必らず來るように我々は考えておるのであります。こうい
つた事業の破綻が若し將來起るときに、これに対して商工大臣はどんなふうな
方法を以て対処しようとされておりますか。これをお伺いしたいと思います。
それから輸出入の問題でありますが、昨年の
食糧の輸入超過が確か一億八千万ドルと聞いております。本年の上期は一億四千万ドル、
合計して本年の上期までに三億二千万ドル、こういうふうな数字を聞いておりますが、その後の輸入、それから又本年末までの輸入のお見込み、これを一つお尋ねしたいと思います。
それから輸出入の收支がどうな
つておるか。今日ドルの爲替がまだ決ま
つておらんようでありますが、若し仮りに一ドルを二百円と仮定するというと、そうすると仮りに四億ドル入超があるといたしますると、八百億円だけ入超になるのであります。若しこれが四百円になるというと、一千六百億円というような入超になる。ところが、これに見合うべき輸出の方はどうか。これも一つお尋ねしたいと思います。実はこの間の第一回の
貿易團が参りまして、雑貨なんかの注文をした。円で行くと億という数字に達しておりますけれども、ドルにすると三百万ドルしかなか
つたというような話を聞いております。こうい
つたような勘定で参りますと、一体日本のいわゆる
健全財政も何もあ
つたものではなくて、皆つかり飛んで行
つてしまいはせんかという感じがするのであります。特に
財政当局にお願いして置きたいことは、若し円の爲替が非常に下りましたときに、それで而も講和條約ができたと、そのときに、外國の資本が参りまして日本の事業に投資をする。これは現にそういうふうな話がありつつあります。そういうようなときにな
つて、仮りに五百円が一ドルだというようなことにな
つて参りますならば、そのときには僅か一億ドルの金で、アメリカで申しますれば、五千億の國の富があるとすれば、五千円持
つておる人が一円出すようなはした金で以て、日本の株は一株五十円の株が十セントになりますから、そうすると一億ドル持
つて來ると、日本の事業会社の株は全部買占めができるというふうな結果にもなり得ると思うのであります。そんなことは勿論ないと思いますけれども、併しながら理屈から申せば、それはアメリカでなくても、外の國でも同様であります。こうなるというと、ここに輸出入の收支という問題は大問題にな
つて來るのでありまして、これに対してどんなふうな実際の数字にな
つておるか。そうしてこれに対してどういう將來お見込みであるかという点をお伺いしたいと思うのであります。
それからもう一つは、現在の輸出の爲替でありますが、爲替のレートというものは決ま
つておりません。そうして輸出いたしますときには、ドルの値段で以て決めておるのでありますが、その内地の値段が高いものは、ドルを円に換算するときに円を高くする。例えば最高はこの頃は恐らくは四百円くらいにな
つておりはせんかと考えておりますが、或いは最低の方は百円くらいのものもあるようであります。その間をずつと階段的にいろいろの換算率で勘定しておるのでありますが、これが輸出の奬励のためにはよさそうであ
つて、又一方において非常に注意せんければならんと考えることは、若し外國へ出すときに、余り円を沢山戻して來て内地の値段と非常に差があるとということになると、そのときは内地の
物價を上げさせる結果になります。今度逆に内地の非常に高いやつを無理に出そうとすると、円が非常に安くなる。そうして或る商品は四百円だと、こういうことになると、結局はそういうものが沢山ありますと、円の相場というものが非常に下がる結果になるのでありますからしてこれらの点は、つまり内地の値段が高過ぎて出せないやつを無理に出そうとすると、そうなるのであります。そこらについて、公平に行きまするように、而も円を下げたいような注意が是非必要だと思いますが、これらの点について御注意を願いたいと思うのであります。
最後に
健全財政についで、自由
貯蓄でありますが、これは先程数ヶ月間の実数をお話になりましたけれども、今日全体として
貯蓄がどれぐらい占めるか。それから
通貨の
総額は先程お話がありましたけれども、その
貯蓄がどういうふうに殖えて、
通貨の中のどれだけの割合を占めて、そうして死藏
通貨というものがどのくらいあるか。そうして將來若しこれを
財政の上に、或いは事業の
資金の上に運轉しようとするときに、その残
つておるやつをどういうふうな
方法で以て運轉する案をお持ちであるか。これらの点についてお話を承わりたいと考え参るのであります。
以上長々と申しましたけれども、どうぞ懇切に御答弁あることを希望いたします。(拍手)
〔
國務大臣片山哲君登壇、拍手〕