○楠見
義男君
只今上程せられました三つの案件につきまして、
農林委員会における
審議の
経過並びに結果について御
報告申上げます。
先ず
農地開発営團の行う
農地開発事業を
政府において引き継いだ場合の
措置に関する
法律案について御
説明申上げます。この
法律案は御
承知のように、去る九月二日附を以ちまして
農地開発営團が
閉鎖機関に指定せられましたので、
從來農地開発営團が行な
つておりました
農地開発事業を
政府において引き継ぐことといたしまして、その場合の
善後措置を
内容といたしたものでございます。元
來農地開発営團は
昭和十六年
法律第六十五号を以て制定せられました
農地開発法に
基ずいて設立せられました
特殊法人でございまして、この
農地開発法は当時の
食糧需給状況に鑑みまして、國内における
食糧自給力の増大を企図いたしまするために、
農地の
造成及び
改良を促進する
目的を以て制定せられた
法律でございます。而してこの
目的達成のために
政府代行機関といたしまして、
農地開発営團が
資本金三千万円、内
半額政府出資により設立せられ、爾來
営團は
法律の規定に從いまして、
農地の
造成及び
農業水利改良の
事業を
実施して参
つたのであります。又一昨年
緊急開拓事業が國の大
方針として
決定せられまするや、この
事業の
相当部分をこれ亦
政府代行機関として
実施して参
つたのでありまして、
農地の
開発のためには從来相当の功績を挙げて参
つたのでありますが、今申上げましたように、今回
閉鎖機関に指定せらるるに当りまして、もともと
政府の
代行機関でございましたが故に、その
代行の仕事は勢い
委託者である國の
事業に吸収せられることが極めて自然でありまするし、旁々大規模な
開拓事業のごときものは、その性質上やはり
政府の
責任において
実施することが必要でございまするので、これらの
観点から、
営團の施行して参りました
農地開発事業を
緊急開拓事業と合せて、すべて
政府においてこれを引き継ぐことといたしておるのであります。而して一面において、現在
政府みずからが行な
つておりまするところの
開拓事業におきまする
土地或いは
物件の
取得処分につきましては、
自作農創設特別措置法及び同
特別会計法によ
つて行な
つておりまするので、今回
営團から引き継ぎましたこれらの
土地物件につきましても、同様に
自作農創設特別措置法によ
つて買収したと同一の取扱いをいたすこととしておるのであります。又
営團が現在
農業水利改良事業について
事業をいたしまする場合に、その利益を負担いたしまするいわゆる
受益者負担の
制度が
農地開発法において認められておりまするので、今回
営團から
政府が引き継ぎまするこれらの
農業水利改良事業につきましても、同様の
受益者負担の
制度を存続せしめることといたしておるのであります。
以上が
法案の
内容でございまするが、
委員会におきまして
質疑の主な対象になりましたのは、
政府が
事業を引き継ぐに当りまして、往々にして生ずることのある
事業実施上の
空白状態や工事の遅延が、
差し迫つた食料増産の
観点から大きな
支障を來すことのなきや否や、或いは引き継いだ後における
政府の
機関の活動について、從來の
営團との比較上その間大なる
支障、或いは懸隔がなきや否やというようなことが中心でございましたが、これらの問題につきましては、
政府よりそれぞれ善処する旨の
答弁があ
つたのであります。又
開拓と
治山治水との
関係につきましても重要な
質疑がございましたが、これは先般
開拓関係の
法案について
委員長報告をいたしましたところと大同小異でございますので、ここではこれを省略いたしまして、詳細は
速記録によ
つて御覧を願うことにいたしたいと存ずるのであります。
質疑終了後
討論に附しましたところ、別に御
発議もなく、直ちに
採決に入りまして、その結果は
全会一致を以て原案
通り可決すべきものと
決定いたした次第であります。
次に、
重要肥料業統制法等を廃止する
法律案について御
説明申上げます。この
法律案の
内容は、
重要肥料業統制法と
日本輸出農産物株式会社法を廃止する
法律案でございます。
重要肥料業統制法は御
承知のように
昭和十一年に制定せられまして、その
目的といたしまするところは、
肥料の
需給の円滑及び
價格の公正を図り、以て
肥料製造業及び
農業経営の
改善発達を期するにあるのでありますが、その
内容といたしまするところは、全く
肥料製造業組合に関するものでございます。即ち硫安、
石灰窒素、過
燐酸石灰につきまして、それぞれ
製造業者をして
組合を設立せしめ、この
組合の主なる
目的は、
肥料の
製造総数量の
決定、或いは
組合員に対する
製造量の
割当決定、
肥料價格の
決定等の
事業をなすことにあ
つたのであります。然るにこれらの重要な
事業は、その後の
情勢変化に伴いまして、すべて
政府がみずからこれを行うことになりましたので、
組合は事実上單に
政府の
決定に参画するのみで、
法律所定の本來の
機能を喪失するに
至つておるのであります。又一面「
私的独占の
禁止及び
公正取引の
確保に関する
法律」の
趣旨にも反しまするので、本年三月三十一日附を以て各
組合はそれぞれ解散をいたしたような次第であります。
從つて現行法は全くその存在の
理由を失
つておりますので、今回この
法律を廃止せんとするものであります。
又
日本輸出農産物株式会社法は
昭和十五年に制定せられたものでございまして、この
法律によ
つて、当時いわゆる
國策会社として一千万円、内、
政府半額出資の
日本輸出農産物株式会社を設立いたしまして、「じよちゆうぎく」「
はつか」について一元的な集荷及び配給を行な
つて参つたのでありますが、同様に
私的独占禁止法の
趣旨に反しまするので、今回この
法律も廃止せんとする次第であります。
以上の二つの
法律の廃止につきましては、その
理由からいたしまして極めて当然でございまして、さして問題もないわけでありますが、
法案審議に際しまして、これと関連して、例えば
肥料需給の現状及びその將來の
見通しその他に関し、種々
質疑が行われたのでありますが、これらの点につきましては、或るものは
速記録に割愛し、或るものにつきましはて、更に他の
関係法案の
審議に際して一段と掘り下げた上で別の
機会に御報書いたしたいと存ずるのであります。
本件につきましても、
討論においては別に御
発議もなく、
採決に入り、
全会一致を以て原案
通り可決すべきものと
決定いたした次第であります。
次に
薪炭需給調節特別会計法を
改正する
法律案について御
報告申上げます。
先ず
法律案の
内容を御
説明いたします。御
承知のように現在、
政府は
薪炭の
需給調節のために
特別会計を設けまして、これによ
つて販賣用薪炭の
買入、賣渡又は貯藏の
事業をいたして参
つておるのでありますが、これらの
事業の
実施上必要な
資金は、
現行法におきましてはすべて
特別会計の
借入金によ
つて賄われており、而もその限度は
据置運轉資金一千万円を含めて総額五億一千百万円に限定せられておりまするために、
事業分量の割合に、
据置運轉資金が少額に過ぎることは勿論でありますが、全体としても
事業運営の上から申して
資金繰りは極めて窮屈でございまして、これがため最近においては本來の
機能発揮上遺憾の点が多いために、今回
現行法を
改正いたしまして、
薪炭の
買入資金調達のために一年内に償還する
証券発行の途を開き、又
買入代金支拂上、一時現金に
不足を生じましたときは、
当該年度内に償還する
証券を発行し得ることといたし、尚、
借入金、一時
借入金及び
証券の借換のためにも更に
証券を発行し又は
借入金をなすことのできる途を開きますると共に、これらの
証券、
借入金、一時
借入金の
最高額は、通じて三十億円とせんとするものでございます。尚これと同時に、
財政法及び
改正会計法の
施行等に伴いまして所要の
改正をも併せ行うことといたしておるのであります。
改正法律案の
趣旨といたしまするところ及びその
内容は以下申上げました
通りでありして、現在の
薪炭供給不円滑のいろいろの原因の中の
一つとして
政府の
薪炭買入
資金の
不足のために支拂が惡く、それによ
つて供出にも惡影響を與えておることが挙げられており、
從つて供給確保対策の
一つとして、この
買入資金の充足が必要とせられておりまする
実情からいたしまして、本
法案の制定亦必要と言わなければならないのであります。併しながら御
承知のように本年冬の燃料問題は、
国民生活の安定というよりは、むしろ
最低限維持の
観点から、極めて重大な問題といたしまして、すでに本院の
電氣委員会におかれましても、
ひとり電力の
観点からのみでなく、
綜合的燃料対策の
観点からいろいろご心配にな
つておられるのであります。又先日の
自由討議におきましても、各
議員の方々から
眞劍な
討議が行われた
通りでございます。
農林委員会といたしましても、
石炭不定の
実情からいたしまして、本年の
冬季渇水期における
燃料事情が非常に憂慮せられておりましたので、本年七月、
研究会の形式を以ちまして、
冬季の
燃料対策について
農林当局から
説明を聽取いたしまして、同時に必要な助言及び推進をして参
つたのでありますが、当時やや好轉を期待せられました
薪炭事情も、東北、
関東水害を契機といたしまして、最近とみに惡化して参りましたことは御
承知の
通りでありまして、本
法案が付託せられました
機会に更に愼重且つ熱心なる
審議が重ねられた次第であります。
而してこの
委員会の
審議を通じて明らかにいたしましたところを以下御
報告を申上げたいと存じます。これらの
経過を、最近における
薪炭需給状況と今後の
見通しという形に取纏めまして以下申上げまする次第でございまするが、これは
法案審議に際して
政府委員の
説明、各
委員と
政府との間における
質疑應答の結果をコンデンスしたものと御
承知願いたいのであります。
先ず最初に本年との比較の便宜上、昨年度の
事情から振返
つて見たいと存じます。即ち
政府説明による昨年度の
薪炭配給実績は、木炭が百八万二千トン、普通燃料用薪……ガス用薪の外に普通燃料用薪と称しておるのでありますが、これが千五百三十五万九千層積石でございまして、計画に対する実績比率は、木炭が五二%、薪が二八%の成績でございます。而して右の全体の配給総量の内、家庭配給の実績は、木炭が六十一万二千トン、薪が千四十七万八千層積石でございます。これを東京都の例によ
つて家庭配給の実績を見ますと、家族五人を標準世帶として、一世帶当り木炭三俵、薪が十二束及び豆炭、煉炭等の加工炭が三包で、木炭換算にいたしまして約七・四俵で、年間計画の七四%に当
つておるのであります。先ず以上のことで我々の直ちに氣付きますことは、第一に、計画と配給実績との間に極めて大なる相違があるということであります。第二に、東京都の例に徹しましても明らかでございますように、全國の状況と比較して大都市に相当の重点的配慮がなされておるということであります。第三には、木炭にしましても又薪にいたしましても、家庭用以外に輸送用とか重要産業用その他の用途向けが相当大量のものが充てられておるということであります。第四に、綜合
燃料対策の
観点から、各種の熱源についてその間完全な綜合対策の実行が必要でありますると共に、本年度の
見通しと昨年の実績及び経験とを比較いたしました場合、本年は
薪炭に余程大きな負担が掛
つて來るということでございます。
次に本年度の状況でございますが、
薪炭の供出計画は、年間木炭において百八十七万一千トン、普通薪は四千二百五十九万五千層積石で、配給計画もほぼこれと同数量でございまして、この配給計画は、昨年度の配給実績に比較いたしますると、木炭において約八割の増、普通薪において約二倍半の増でございます。併しこの計画は、後程述べまするように、その後産地に水害その他の困難な
事情が起りましたとはいえ、昨年度と同様、実績から振返
つて見ました場合に、余りにも架空な計画数字でございまして、今後の問題といたしましては、確乎たる基礎の上に立
つて実行可能性ある計画を立て、その計画を一〇〇%完遂することに最善の努力を拂うというやり方が最も大切であるということを示唆いたしておるのであります。(
拍手)而して本年度第一四半期の状況は、農山村における労務者の増加、前年の冬山増産運動の影響、特に前年度なか
つた食糧加配
制度の
実施等のために、供出実績は計画よりは遥かに及ばなか
つたのでりますけれども、それでも前年同期に比較いたしますと、木炭において約二〇%、薪において約一五%増加を見ておるのであります。併し第二四半期に入りましてからは、折角の食糧加配
制度も生産縣における食糧
事情等から継続が困難になりました。又その他のいろいろの
事情に伴
つて漸次実績が挙らなくな
つて参りました。結局上半期を通じての配給実績は、東京都の例を取
つて見ましても、木炭、薪及び加工炭を通じて木炭換算で標準一戸当り三・三三俵で、昨年度の上半期の実績と比較いたしますと、昨年は三・一四俵でありまするから、約〇・二俵の増加を見た程度に過ぎぬ実績でございます。
次に最も問題となる本年下半期の状況でございますが、通常の年におきましても、この期間は新穀の出廻り或いは石炭輸送等と競合いたしまして、輸送面において著しい困難を伴うことは御
承知の
通りでありますが、前半期の不成績のために消費地に在庫として見るべきもののない
実情から致しまして全國的に問題でございますが、特にその供給背後地でありまする東北、関東の大水害の影響を受けておりまする京浜地方の
需給の状況は、結論的に申上げますと極めて悲観的でございまして、
政府の計画でありまする綜合
燃料対策において、例えば東京都については、一戸当り電氣、ガスを含めて木炭換算九俵と申しておりますが、その中、木炭一・四俵、薪一・二俵、加工炭三俵、合計五・六俵を予定しておりますが、この数字は、昨年度下半期の実績でありまする木炭、薪、加工炭を合して四・三四俵に比較いたしますれば約三割の増加でございますけれども、先日の
自由討議におきましても種種論議のございましたように、この計画数字は
冬季において暖を採るというような程度のものではなくて、食生活をするに漸く間に合う、即ち煮炊きのための最低の熱源でございまするから、経済安定本部は勿論、農林、商工、運輸の眞に強力なる実現完遂への努力が望まれる次第でございます。而してこの計画実現のために、その対策として
政府は一面現在の隘路打開方策をも兼ねまして、例えば食糧加配
制度の復元とか、供出リンク報奨物資の放出、或いは生産者及び消費者
價格の差額の縮減、國有林官行製炭及び立木処分による
薪炭増産、豆炭、煉炭等の加工炭の増産とこれが都市への集中、
薪炭輸送力の増強と滞荷の一掃、横流れ防止とその取締強化等のいろいろの対策を立てておりまするけれども、
委員会の
質疑を通じ最も重要視せられましたことは、差当り当面の問題として
薪炭輸送力の増強と滞荷一掃の問題でございます。即ち差し迫
つた問題として
資金と輸送の問題が挙げられるのでありますが、
資金の問題はこの
法律案の施行によりまして解決を見るわけでございまするから、輸送強化によ
つて、現在生産地方に夥しく滞荷いたしておりまする
薪炭をこの際全力を挙げて消費地に輸送することが、最も重要とせられておるのでございまして、
委員会の
審議に参加せられました一松商業
委員長から、輸送計画の立つまで今後の生産を止めるべきではないかというような
質疑が出た程でございます。
政府は輸送計画については、現在北海道において釧路に集結し、それを海上輸送するために、釧路集結のための特別配車計画、或いは岩手、福島地方に対しまする臨時貨物列車の増発、秋田縣における船川、土崎港集結のための特別の配車計画、その他青森、山形、関東、信越等の諸縣に対する配車計画等を種々計画されておるのでありますが、それらの計画の中で未だ確定実行にまで
至つていないものも少くない
実情でありまして、積雪地方におきまする今後の小運送問題と共に、將來一層の努力が強く要請せられました次第でございます。
以上のような
経過を経て
質疑を
終了いたしまて、去る十一月一日
討論に付しましたるところ、別段の御
発議もなく、次いで
採決に入り、
全会一致本案は原案
通り可決すべきものと
決定いたした次第でございます。以上御
報告申上げます。(
拍手)