○遠山丙市君
家庭燃料は、これを
薪炭、
電氣、
ガスに分けまして研究を要し、而もこれが統合したるもの、即ち
綜合計画を樹立しなければならんのであります。併しながら限られておりまする時間の中でありまするから、要点のみを抽出いたしまして、私の意のあるところを盡して見たいと考えておるのであります。併しながら午前中において同僚各位よりこの問題について相当各般に亙
つて触れておられますので、重複いたしまするという部分だけはこれを努めて除きたいと考えておるのであります。
先ず私はこの例を
東京に取
つて見ますると、
木炭の本年度
配給割当量は八百三十万俵であります。こういうことに相成
つておるのでありまする。
家庭用一世帶は先程來いろいろ話があ
つたのでありますが、大体四俵之至五俵であります。而して四月から九月までの上半期の
配給量は僅かに二百三十万俵であります。その比率は
配給割当量の二割六分にしか達しておらないのであります。
家庭用の標準
ガスなし世帶では、この間僅かに一俵だけ辛うじて
配給しておるという実情であります。然るに
政府の
下半期計画案の内容を見て見ますると、
配給割当量は
下半期は三百六十四万俵でありますが、実際の
配給は驚くなかれ当初
計画の六割に切り詰めようと、
政府は懸命の努力を拂
つておるという実態であります。
家庭用については、
ガス、
電氣、
薪炭を合せてこの間九俵分
確保するといたしましても、
木炭は一世帶
当り一俵半に過ぎないという状態でありまする。この僅か一俵半の
木炭で今後半年に亙りまする実際冬季間
使用いたします
燃料であるというに至りましては、全く驚くより外に途がないのでありまする。又本年度の
綜合計画は、
電氣、
ガス、
薪炭類はおのおの異な
つたる立場で、異な
つたる事情の下に、各部面ごとに
責任のなすり合いであ
つて、全く収拾すべからざる状況でありまする。更にこの実施
計画が予定
通りに行われたといたしましても、絶対量は遺憾ながら不足をいたしておるのでありまする。その結果
國民は生きるがために、金力の続く限りは、不本意ではありましようが、闇
生活をやらなければならんのでありまする。而して金の切れ目がいよいよ窃盗となり、或いは臓物故買、強盗若しくは脅喝というようなことに追い込まれて行かなければならんという状態に陥
つてるのであります。尚
政府の一枚看板でありますところの千八百円ペースは、先ず光熱費から総崩れに崩れると考えておる次第であります。尚
薪炭類は米と密接不可分の
関係にあるに拘わらず、食糧
対策だけに
政府は汲々といたしておるのであるまする。これが重点的に、否、超重点的に遂行せられまして、
薪炭類は全く継子扱いで、
生産、
輸送、
配給、あらゆる分野において跛行的に劣弱に施策されておるのは遺憾至極であります。人間は鳥や動物と異なりまして、煮炊きしたるものを食することによ
つて生命を全うしておるものでありまする。故に食糧と
燃料は並行的に施策せられなければならないのでありまする。この跛行的
燃料対策は全國都市
國民を脅かし、殊に
水害を契機といたしまして、京浜地区における
燃料は現在のごとく放漫
政策は断じて許し得ない段階にまで達しておると言わなければならんのであります。故に
政府は少くとも食糧と同樣な施策を行う用意をしなければならんのでありまする。過ぎまする七月以來改訂せられましたる
薪炭價格内容でありまするが、
生産者價格と
政府卸賣
價格との
價格の差が驚くべき大きな開きを見せておるのでありまする。その
價格の差が
消費地において、例えば
木炭、
墨炭でありまするが、これが
生産價格が五十三円でありまして、
政府卸賣
價格が八十五円、その差額は実に三十二円に及んでおるのであります。薪の雜が
生産地價格六円二十銭、
政府卸賣
價格が十四円十銭であ
つて、その差額は七円九十銭であります。かくのごとくに、
木炭は
生産地價格より六割四厘高く、薪は
生産地價格より驚くべし十二割七分四厘高く、
消費者へ
配給の美名の下に背負わされております状態であります。この
價格の差について
政府の弁明はいろいろ
言つておるのでありまするが、その重要なる点は
輸送途上経費の増と、昨年七月より十二月に至る
價格の改訂までの
生産供出補給金の支出による欠損の補填であると説明をいたしておるのであります。
價格差の補給金はこれは当然に國庫が負担いたすべきものでありまして、その後の値上りに便乗いたしまして
消費者に轉嫁するがごときことは
政府の怠惰であり、
政府の横著でありまして、又
政府が公然この経費を徴収する惡習は地方に反映いたしまして、諸都市において協力費と称して公價に振り掛け徴収しておることも黙認しなければならない結果になり、
生産者たると
消費者たるとを問わず、怨嗟の声正に巷に漲
つておるという状態であります。(
拍手)この
價格差は民有林の賣買にも災いいたしまして、山主は
消費者價格から割り出しまして
原木を手離す
関係上、
生産者は
原木の取得が容易でないというような状況であるのであります。
政府は
原木の
確保につきまして、最近
國有林の開放に著手いたしましたが、このような措置は公定
價格改訂の裏附けといたしまして直ちに実施されなければならんのでありまするが、今日これを行うということは正に時期を外れておると言わなければならんのであります。又民有林の開放は他の物價との
関係上からも非常に困難なる問題を含んでおるのでありますから、先ず根本の
價格差から解決するのが緊要であると思われるのであります。
生産者の最も不審に考えておりますることは、産地地場の
配給品が目の前で驚くべき
價格差を附けて賣買されておることでありまして、
生産者の
價格差に対する反感となり、且つは
生産供出意欲を鈍らしておるということに相成るのであります。各産地では、薪は
生産地價格に五六円プラスいたしましても、勿論消費
價格より著しく低廉でありまするから、直接の取引が行われ、
配給を拒否しておる実情でありまする。よろしく同一部府縣内においても最終
價格の段階を附けて
配給させなければならんと考えておる次第でありまする。これを要するのに、
價格の差は全面的且つ地区的段階圧縮を行う必要があるのでありまして、
政府所管の物資に巧妙なる課税を断行せるものでありまして、
國民を毒するもの甚だしいと言わなければならんのであります。この陰險なる徴収的行爲を断乎排斥せなければならんのでありまする。而もその金で出先
官廳の拡張等を行
つておるという噂さえ立
つておるのでありまする。当面する重大懸案といたしまして、
政府は早急に解決すべきものであると思われるのでありまする。
公價の改正と共に
生産者一時的負担は増大しておるのに拘わらず、現在まで不問視されておりまするのは誠に不可思議千万でありまする。これは岩手縣のごとくに森林事業により
生活する縣民の多い所では死活問題であり、
價格差の問題と共に默過されておりまする結果がブローカーの跳梁となり、又横流れの主因にな
つておるのであります。これが解決策といたしましては、金融
機関の資金の貸出については
政府補償の挺入れを行い、融資を速やかにすると共に、
薪炭代金のいわゆる
前渡し乃至は概算拂の併用によりまして、この問題を解決しなければならんと思われるのでありまする。
薪炭供出報償につきましては、米と同樣に重要であるのに拘わらず、米程関心が拂われていないのは誠に遺憾といたしておるのであります。
生産者登録勿論結構でありまするが、供出
促進に裏附ける所の報償物資、特に
生産資材の放出については、魚類集荷に対する船舶用の油の裏附けのごとく、時期を失うことなく一定
生産過程において行われるべきであると考えられるのであります。
薪炭生産地は、御
承知のようにいずれも山間僻地でありまして、食糧事情は極めて緊迫をいたしておるのでありまする。
山元は年々に奥地に追込まれて参ります
関係上、食糧の携行は特に必要であるのであります。
加配米は都道府縣内の食糧事情によりまして毎年制約され、現物入手が大変遅れておる地区があるのであります。
加配米及び一定限の携行食は、
政府において
責任を以て必要なる時期において
確保しなければならんのでありまする。食糧
生産縣と
薪炭生産縣との間のバーターなどは、断じて行わしめないようにすると同時に、
生産者に対する背信行爲、即ち
政府の約束は必ず
責任を持
つて実行すべきことは論を俟たないものでありまして、これがいわゆる
責任政治の実を挙げるか否かの運命にかか
つていると言わなければならないのであります。
今秋の台風による
水害は誠に甚大でありました。幸いにも先般運輸大臣の御説明によりますると、鉄道幹線の大部分は復旧いたしたいということは喜びに堪えないのであります。今年の冬の
燃料対策は、第一に
駅頭滯荷の一掃に置かれなければならんのであります。然るに幸いにも
被害から免れましたる北海道の道外移出
木炭の港頭集積に要する貨車
輸送は極度に制約され、而も種馬鈴薯、木材等の
輸送の競合はいよいよ深刻であると聞き及んでおるのであります。その他内地においても米を含む主食等の競合は必至でありまして、このために
薪炭の移出入に與える影響は又甚大であります。このような
輸送状況の場合は、先ずいろいろな考え方はあるのでありまするけれども、海上
輸送轉移というものは、先ず第一に考えなければならんのであります。それから北海道、岩手縣、福島縣等の大
生産地から大
消費地との間に行う汽車便であります。新聞によりまするというと、相当これがために運行すると書いておるのでありまするが、いわゆる泥繩式のやり方ではいけんと考えておるのであります。一年間無休の
薪炭列車を或る
程度運行して、
消費地國民生活の安定を図らねばならんと考えておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
結論的に申上げますれば、
政府燃料の
対策は、炊くに何物もない六大都府縣に第一段といたして施策を集中することが、やがて全國各都市の
燃料解決の途ともなり、且つ寒中の治安維持上重大要素であると考えられるのであります。これがために
政府は移出道縣並びに消費部府縣の
生産在荷並びに
配給状況を常に把握いたしまして、特に六大都市向の移出については、報償或いは特別の措置を講ずることが絶対に必要であると考えられます。
政府はこの
対策については全然公算がないのは遺憾といたしておるところであります。近來消費都府縣内に、荷引競争のために、協力費として木束一俵につき十円以上、薪一束につきまして三円以上を
消費者から取立て、これを
生産地に注ぎ込んでおります向もありまするが、これは昨年次官通牒によりて禁止されておることでもありますし、半面、
政府買上物資に半ば公然と闇を認めるものでありまするから、
薪炭價格差の問題と関連して速かにこれが措置を採るべきものであると考えておるのでありまする。
時間が來たようでもありまするので、結論だけ一二点申上げまして御免を蒙らして貰おうと考えておるのであります。現在主要都市において、自動車
ガス発生用
木炭の
配給量は、月によりますれば
家庭用木炭配給量を越えておるというようなる実情であるのであります。
東京におきましては、上半期において
家庭用配給量は百七万俵でありまするが、自動車
ガス発生用
木炭は四十五万俵とな
つておるのでありまする。この自動車
ガス発生用
木炭の節約は必然的に
家庭への増配となるは当然でありまするが、要は
政府のガソリン
確保に対する熱意が本問題解決の鍵であると言われておるのであります。
政府は誠意これに当るべきものでありまする。米につきましても一言触れて見ますれば、米については二キロまで縣外旅行用を認めておりまするが、
木炭についてもこの際一定量を大都市間旅行用として速かに認めなければならんと考えておるのであります。
政府はこの
下半期から
ガス、
電氣、
薪炭等の綜合
配給を
計画しておりまするが、そのおのおのに非常なる
隘路をなしておりまして、現実はじり貧に陥
つておるのであります。
電熱について見ますれば、定量及び從量
程度の区別でありまするが、メーターを持
つた世帶にのみ経済的負担が増加いたしまして、定額世帶の人々は盗用御自由という状態でありまする。又進駐軍
関係供給線に連なります家屋は不当なる恩惠を受けておると新聞は書いておるのであります。その他の地区は
需要時ごとに停電しておる現況でありますが、これを公平に消費せしめますには、
供給線の変更等相当資材を要すると思う面もありまするが、資材の見透しを付けまして実行しなければならんと考えておる次第であります。
ガスは現在
東京では中央地区約四万五千世帶が二十四時間
供給を受けております。この外周地区を入れますると、三十五万世帶が
ガス供給如何によ
つてはカバーすることができると考えるのであります。故に現在の
石炭事情から二十四時間
供給はとても望めぬでありませうけれども、朝晩二三時間の
供給には、一日六百トン乃至七百トンの発生炭の増加によ
つて可能なのであります。この問題は現在の
薪炭類の事情から推定いたしまして、
政府の熱意如何によ
つては実施できるものであると考えておる次第であります。その他
薪炭の穴を
加工炭でカバーする問題、並びに原料炭の
確保対策、及び炭團の問題、岐阜縣より亞炭を入手する等の問題がいろいろあるのでありまするが、時間の
関係上打切らして頂くことにいたします。(
拍手)
〔河井彌八君
発言者指名の
許可を求む〕